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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 取り消して登録 W29 |
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管理番号 | 1297331 |
審判番号 | 不服2013-25809 |
総通号数 | 183 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2015-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-27 |
確定日 | 2015-03-02 |
事件の表示 | 商願2013-21887拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、「二名煮」の文字を標準文字で表してなり、第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,お茶漬けのり,ふりかけ,食用たんぱく」を指定商品として、平成25年3月27日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、「『二名煮』は、愛媛県松山市の三和食品株式会社(以下『三和食品』という。)が、明治時代から製造販売する商品(小魚の加工品)について、120年以上の長きにわたり使用する商標(以下『引用商標』という。)として、広く知られている。また、引用商標に係る『二名煮』の文字は、指定商品との関係からみて独創性を有するものといえる。そして、本願の指定商品は『加工水産物』をはじめとする食品であって、引用商標が使用されている商品と関連性の高い商品である。そうすると、本願商標と引用商標は同一の漢字から構成されていること、本願商標と引用商標を構成する『二名煮』の文字は独創性を有するといえること、引用商標が明治時代から120年以上使用されてきたこと、『二名煮』は松山市の名産として知られていること、両商標の商品は同一又は類似のものを含めて関連性が高いこと、取引者、需要者が共通することなどの取引の実情を踏まえ、本願商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すると、本願商標は、上記の三和食品ないし同社と経済的又は組織的に何らかの関連を有する者の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標といわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1)「二名煮」について 本願商標は、前記1のとおり、「二名煮」の文字を標準文字で表してなるところ、「二名煮」の文字は、原審において説示した証拠及び職権調査によれば、瀬戸内海の新鮮な海苔、海老、小鯵等の小魚を、上質醤油、砂糖、水飴等を用いて味付けし、乾燥釜に入れ、約20時間乾燥させた加工品(以下「小魚の加工品」という。)について、本願商標の商標登録出願時である平成25年3月27日より前に、三和食品の業務に係る商品を表示するものとして長年使用され、愛媛県松山市の産品として知られていた事実が認められる。 また、本願の指定商品中「加工水産物」は、「二名煮」の文字が使用されている小魚の加工品を含むものである。 (2)三和食品と請求人との関係について 請求人は、原審及び当審において、三和食品を甲とし、請求人を乙とする、甲乙間の覚え書を計3通提出している(以下、平成25年3月9日付け覚え書を「覚え書1」、同年3月11日付け覚え書を「覚え書2」、同26年3月31日付け覚え書を「覚え書3」という。)。 ア これらの覚え書1ないし3によれば、要旨以下の記載を認めることができる。 (ア)甲は、「二名煮」の営業権(製造販売の権利)を、乙に譲渡し、以後一切の権利を放棄する(覚え書1及び3)。 (イ)甲は、乙が「二名煮」を問題無く製造販売できるよう、指導協力する(覚え書1)。 (ウ)甲は、「二名煮」の営業権を譲渡したと同時に「二名煮」の商標を使用しないこととし、以後も「二名煮」の商標を出願し、商標権を取得する手続を行わないこととする(覚え書2及び3)。 (エ)甲は、乙が「二名煮」の商標を出願し、商標権を取得することに同意し、かつ、甲は、乙が「二名煮」の商標を使用することに同意する(覚え書2及び3)。 (オ)甲は、「二名煮」の営業権の譲渡後今までに、「二名煮」の商標及びその類似商標の使用をしたことはなく、「二名煮」の商標及びその類似商標を出願し、商標権を取得する手続を行ったこともないことを保証すると共に、甲は、今後も「二名煮」の商標及びその類似商標を出願し、商標権を取得する手続を行わないものとする(覚え書3)。 (カ)甲は、乙以外の第三者に「二名煮」の商標及びその類似商標を使用すうる営業権(製造販売の権利)を譲渡したことは一切ないこと、「二名煮」の商標及びその類似商標について、乙以外の第三者に使用許諾をしたことも一切ないことを保証する(覚え書3)。 イ 当審において職権をもって調査したところ、以下のとおり、請求人は「二名煮」の商標を小魚の加工品に使用している事実が認められる。 (ア)「楽天市場」における請求人のウェブサイトにおいて、「小魚の二名煮(ふたなに)」の見出しの下、「100年以上変わらぬ製法を受け継ぎ、守り続けている伝統の一品です。国内で獲れたての小魚をすぐに釜茹でした鮮度の良いものを使用。その中でも苦味が少なく、骨もやわらかな、食べ易い小振りサイズを厳選しております。味付けは、小魚本来の自然の風味を生かすため、少量の砂糖、水飴、醤油のみ。いわし、あじ、えび、かれい、魚の種類ごとに味付け具合を細かに調整して仕上げています。仕上げは独自の乾燥窯で乾燥。約20時間じっくり低温で乾燥させることで、サクッとした香ばしい食感が生まれます。」の記載がされ、その製造者として「株式会社龍宮堂」の記載とともに、「二名煮」の文字が表された商品の画像が表示されている。 (http://item.rakuten.co.jp/ryugudo/hutanani001/) (イ)「広島県」のウェブサイトにおける「資料提供 平成26年10月14日」とされる資料において、「『瀬戸内ブランド商品・サービス』認定しました」の見出しの下、【瀬戸内ブランド商品】の一つに「株式会社龍宮堂(愛媛県松前町)」及び「・小魚の二名煮」の記載がされるとともに、「『瀬戸内ブランド商品』一覧」の見出しの下、「・小魚の二名煮 株式会社龍宮堂(愛媛県松前町)」について、「<特長>鮮度の良い小魚を低温でじっくり乾燥させるため,小魚菓子にありがちな硬さや苦みはなく,独自の「乾燥窯」で柔らかくて香ばしい食感を生み出している。<瀬戸内ブランドとしての創意工夫>原料の小魚は,鮮度を重視し,サイズにもこだわり,目利きしながら仕入れるとともに,小魚本来の自然の味と風味を最大限活かすように薄味で仕上げている。また,愛媛県に留まらず四国の名産品にしたいという考えから,日本最古の歴史書である古事記に四国の旧名が「二名島」と有る事に因んで,120年前に「二名煮」と命名され今日に至っている。」の記載と、「二名煮」の文字が表された商品の画像が表示されている。 (http://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/142319.pdf) ウ 以上によれば、三和食品は、請求人に「二名煮」に関する営業譲渡を行い、それ以後「二名煮」の製造販売を行っておらず、請求人が「二名煮」を問題なく製造販売できるよう指導協力している。そして、請求人は、請求人の商品として「二名煮」の商標を用いた小魚の加工品を製造販売し、「二名煮」は請求人の小魚の加工品に係るブランドとして公にも「瀬戸内ブランド品」として認定されている事実が認められる。 また、請求人以外の者が「二名煮」の商標を用いて小魚の加工品を販売している事実は見いだすことができない。 そうとすれば、請求人は、三和食品が製造していた「二名煮」と実質的に同一の商品を製造し、「二名煮」の商標を用いて小魚の加工品を販売しているということができるものである。 (3)まとめ 本願商標は、仮に原審説示のとおり、三和食品の業務に係る小魚の加工品を表示するものとして周知であったとしても、上記(2)のとおり、請求人は、原審査定日前には三和食品から「二名煮」に関し営業譲渡されており、また、三和食品が製造していた「二名煮」と実質的に同一の商品を継続して製造販売しているから、請求人は、「二名煮」の営業に関する正当な譲受人であると判断するのが相当である。そうとすれば、本願商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標というべきものではない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2015-02-16 |
出願番号 | 商願2013-21887(T2013-21887) |
審決分類 |
T
1
8・
271-
WY
(W29)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 内田 直樹 |
特許庁審判長 |
土井 敬子 |
特許庁審判官 |
大森 健司 大橋 洋子 |
商標の称呼 | フタナニ、フタツナニ、ニメーニ、フタナ、フタツナ、ニメー |
代理人 | 佐藤 富徳 |