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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09
管理番号 1296110 
審判番号 取消2013-300705 
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-08-23 
確定日 2014-12-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第1123055号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1123055号商標の指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1123055号商標(以下「本件商標」という。)は、「Impact」の欧文字を横書きしてなり、昭和46年12月29日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として同50年5月19日に設定登録、平成17年12月7日に、指定商品を、第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」、第10類「家庭用電気マッサージ器」、第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」、第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」、第16類「電気式鉛筆削り」、第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラシ」とする指定商品の書換登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録が同25年9月10日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書及び平成26年5月12日差出しの上申書において、要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用していないものであるから、その登録は商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)本件商標の使用の事実
被請求人の提出した乙第1号証及び乙第2号証において、使用されていると認められる商標は、「SD-MobileImpact」(以下「使用商標」という。)である。特に、乙第1号証において、使用商標は、白地の枠で囲まれたデザイン文字(ロゴ)で、一体的に構成されている。また、その他の表記においても、「SD-MobileImpact」と一体的に構成されており、「Impact」単独での使用は、全く存在しない。
(2)本件商標と使用商標の同一性
ア 本件商標は、「Impact」の文字のみからなる商標であり、上記(1)のとおり、一体的に構成された使用商標と本件商標は、明らかに外観において相違する商標である。
イ 被請求人は、使用商標の構成中「SD」の文字部分は「SDメモリーカード」、「Mobile」の文字部分は「携帯電話」の意味合いを有することから、本件商標の要部は、「Impact」の文字部分となり、それのみで独立して自他商品識別機能を果たす旨主張する。
しかしながら、「Mobile」の語は、必ずしも、「携帯電話」だけを意味する言葉ではなく、「動きやすい、移動できる」といった意味を持つ英語であり、英語が広く普及した我が国にあって、該意味もまた、広く知られているというべきである(甲2)から、その意味からみても、使用商標の構成中「Mobile」の文字部分は、直ちに、「携帯電話」又は「携帯電話用」といった品質を表示する語と認識させるものではない。
また、使用商標は、外観上、「MobileImpact」と一体的に構成されており、かかる態様からも、この「Mobile」が「携帯電話」を意味する付記的部分とは到底認識できないものであり、その称呼においても、「エスディーモバイルインパクト」と容易に一体的に称呼できるものである。
さらに、本件商標の「Impact」の文字は、単に「衝撃」を意味する英語として知られているのに対して、使用商標は、全体として、一種の造語商標(ただし、それぞれの言葉の意味から、「移動の衝撃・影響、携帯電話の衝撃・影響」といった漠然とした観念も生じ得る。)と認識できる。
このように、使用商標と、本件商標とは、外観、称呼、観念のいずれをみても、同一性のある商標とはいえないものである。
ウ 被請求人は、使用商標と同一の商標について、本件商標とは別に商標登録(登録第5058585号)を取得している(甲5)。
(3)本件商標と使用商標との社会通念上の同一性について
ア 商標法第50条第1項にいう「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」は、a)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、b)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、c)外観において同視される図形からなる商標に準ずるような、これと同程度のものをいうものと解される。なお、文言上、登録商標と「同一」と認められるものでなければならず、「類似」の商標は含まれない。
イ 本件商標は、「Impact」の文字からなり、「インパクト」という称呼を生じ、「衝撃、衝突、影響」という観念を直ちに生じるのに対し、使用商標は、いずれも、「SD」及び「Mobile」の文字を伴って、「SD-MobileImpact」の文字からなり、「エスディーモバイルインパクト」又は「モバイルインパクト」という称呼を生じ、かつ、全体として一種の造語(ただし、それぞれの言葉の意味から、「移動の衝撃・影響、携帯電話の衝撃・影響」といった漠然とした観念も生じ得る。)と認識できる。
そして、使用商標に係る「MobileImpact」は、「Mobile」と「Impact」が完全に一体化されて表されている。
ウ このように、使用商標は、本件商標と、商標法50条第1項が規定する社会通念上同一のものと認められる商標ということはできない。
使用商標から、「SD」や「Mobile」の文字が捨象されて、「Impact」そのものの商標と認識されることはあり得ず、この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの同一性を判断することは許されないというべきであり、たとえ、本件商標が、「携帯電話にダウンロードされるプログラム」に使用されているとしても、そのような「携帯電話に使用されるソフトウェア」が、使用商標のように、「Mobile○○○」と表記され、かつ、そのような表記が、取引者、需要者に認知されているというような業界の慣行も全く知らない。
3 口頭審理陳述要領書における陳述
(1)被請求人は、乙第3号証を提出して、本件商標が要証期間内(2010年9月7日から2013年9月6日(予告登録日))(審決注:予告登録日は平成25年9月10日であり、要証期間は,同22年(2010年)9月10日から同25年(2013年)9月9日である。)において、使用されていたことが明らかになったと主張する。
しかしながら、乙第3号証には、「NECパソコン付属パナソニック製ソフトおよび携帯電話付属ソフト『SD-MobileImpact』ユーザーサポート終了のお知らせ」、「電話によるお問い合わせ:2013年6月28日」、「電子メールによるお問い合わせ:2014年3月末日」とあるとおり、該ソフトウェアについての電話、電子メールによる「問い合わせを終了した」という案内にすぎないから、この書証は、該ソフトウェアが、実際に上記要証期間内に、販売されていたことを何ら立証するものではない。
(2)被請求人は、乙第3号証は、「広告」に該当すると主張する。
しかしながら、商標法第2条第3項第8号における「広告」とは、「商品若しくは役務」に関する「広告」に標章を付して展示等する行為を指すものであり、あくまで、「商品」や「役務」の製造販売に関するものであるというべきである。そして、請求人は、本件商標に関して、本件指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」について、その登録の取消しを求めているのであるから、同法が規定する「商品に関する広告」とは、例えば、コンピュータやコンピュータソフトウェアが、実際に、いくらの価格で販売されるのか、また、その内容・機能はいかなるものか等具体的なものでなければならない。
そうとすれば、該ソフトウェアについての電話、電子メールによる「ユーザーサポート終了」のお知らせにすぎない乙第3号証は、到底、商品の広告とはいえない。
乙第3号証は、「付属パナソニック製ソフト及び携帯電話付属ソフト『SD-MobileImpact』」と記載されているとおり、該ソフトウェアは、請求人の携帯電話専用のソフトウェアであり、同人の携帯電話の付属品として、その携帯電話とともに提供されていたとみられるものであり、そうであれば、あくまで、該ソフトウェアは、同携帯電話の付属品というべきであり、商標法上にいう独立して販売される商品としての「コンピュータソフトウェア」ではない。
被請求人の該ソフトウェアに関するページ(お客様サポート)(甲6)は、「※この情報は、2010年6月2日現在のものです。」の説明があるとおり、要証期間より、さらに前の情報である。そして、これによれば、「SD-MobileImpact」のソフトウェアは、Windows7に対応していないことが明示されており、かつ、「Windows7対応のアップグレード版が販売中である」との記載もない。これは、被請求人の他のソフトウェア「SD-Jukebox」について、「Windows7対応のアップグレード版が販売中です。」の記載があるのと好対照であり、Windows7がすでに導入され、そして、この案内が掲載された「2010年6月2日」時点で、すでに、「SD-MobileImpact」のソフトウェアはもはや提供されていない、と理解するのが合理的である。
以上のとおり、被請求人の提出した証拠は、何ら、「SD-MobileImpact」が使用された「コンピュータソフトウェア」が、要証期間内に譲渡されたこと、あるいは、本件商標が、その商品の広告に使用されたことを立証するものではない。
(3)被請求人は、パリ条約第5条C(2)の規定を根拠に、使用商標が、本件商標と実質的に同一であると主張する。
しかしながら、使用商標は、本件商標とは別商標の登録第5058585号として商標登録されている。
4 平成26年5月12日差出しの上申書における主張
(1)乙第3号証及び乙第4号証が本件商標の広告的使用を立証するものであるか否かについて
被請求人が、商標法第50条第1項の規定により、使用を立証しなければならないのは、「登録商標の使用」であり、これには「広告的使用」(同法第2条第3項第8号)が含まれるものであるが、「登録商標」の「使用」である以上、「登録商標」及び「商標」がそもそも前提として存在しなければならない。
そして、ここで、「商標」とは、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」(同法第2条第1項第1号)であるから、「商標」が存在するには、「商標」自体が存在することに加えて、それが使用された「商品」が「業として、生産、譲渡、証明」されていなければならない。
いいかえれば、「商品」が業として生産も譲渡も証明もされていないのに、何らかの標章(マーク)を広告しても、そのような広告への使用は、同法第50条第1項に規定する「(登録)商標の使用」ではない。
被請求人は、本件商標を使用した本件審判の請求に係る商品「電子応用機械器具及びその部品」が、要証期間内に生産、販売、証明されたことを全く立証していない。
したがって、被請求人は、登録商標の使用(広告的使用)を立証していない。
(2)使用商標と本件商標の同一性について
使用商標は、「Mobile」の文字と「Impact」の文字が「MobileImpact」と完全に一体化されて表されており、本件商標と同一性のあるものではない。仮に、同一性があるとするならば、逆に、「Impact」から「MobileImpact」が容易に認知、連想でき、そのように表示できる、というべきであるが、取引者、需要者がそのように認識することはありえない。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件取消の請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる登録商標を使用していたことを何ら立証しておらず、よって、本件商標の登録は商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、平成26年4月28日付け上申書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 答弁の理由
被請求人は、本件商標の使用を示す証拠として、「携帯電話でSDメモリーカードに録画したワンセグ(携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス)の動画ファイル(SD-Video規格準拠)をパソコンに移動して管理・再生ができるソフトウェア」(以下「本件商品」という。)の、商品紹介ウェブサイト(写し)を提出する(乙1)。
乙第1号証で表記されている「SD-MobileImpact」(使用商標)は、本件商標に「SD」及び「Mobile」が付加されたものであり、本件商品の分野において、「SD」は「SDメモリーカード」、「Mobile」は「携帯電話」の意味合いを有することから、使用商標の要部は「Impact」となり、それのみで独立して自他商品識別機能を果たしている。
また、本件商品は、「ソフトウェア」すなわち「電子計算機用プログラム」であり、本件商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品」に含まれている。
さらに、被請求人は、本件商標が審判請求の登録前3年以内に用いられている証拠として乙第2号証を提出する。乙第2号証は、本件商品を含む、他社製品同梱ソフトウェア(パソコン、携帯電話)のWindows8対応状況を示すウェブサイト(写し)であり、このウェブサイトに「SD-MobileImpact」の対応状況が示されると共に、「この情報は、2012年11月2日現在のものです。」とあることから、本件商標が審判請求の登録前3年以内(要証期間内)に用いられていることは明らかである。
2 口頭審理陳述要領書における陳述
(1)本件商標が要証期間内に公開されていたことを示す証拠について
乙第3号証は、商標権者のウェブサイトの写しであり、NECパソコン付属パナソニック製ソフト、及び携帯電話付属ソフト「SD-MobileImpact」のサポートを2013年7月から順次終了する旨が表示されている。このウェブサイトは、要証期間内である2013年5月17日に掲載されたものであり、そのことを示す証拠が、ウェブサイトの記事変更にあたり、内部起案が2013年5月9日にされ、同17日に承認され掲載に至っていることを示す乙第4号証である。
(2)本件商標の「使用」について
乙第3号証には、「NECパソコン付属パナソニック製ソフトおよび携帯電話付属ソフト『SD-MobileImpact』ユーザーサポート終了のお知らせ」とあるところ、本件商標の使用は、商標法第2条第3項第8号における「広告」に該当する。「広告」とは、文字通り広く世間に告げ知らせることであり、商品のサポート情報の動向をユーザーに伝えることは十分に「広告」に該当し、すなわち、商標法上の「使用」に該当することは疑いの余地がない。
(3)商標の同一性について
パリ条約第5条C(2)によれば、「商標の所有者が一の同盟国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合には、その商標の登録の効力は、失われず、また、その商標に対して与えられる保護は、縮減されない。」とされており、パリ条約の趣旨に基づけば、本件商標の使用においても登録商標との同一性が認められるべきであり、商標法上の「使用」に該当することは疑いの余地がない。
3 平成26年4月28日付け上申書における主張
(1)乙第3号証が登録商標の使用を立証するものではないという指摘について
請求人は「ユーザーサポート終了のお知らせ」(乙3)等は、当該ソフトウェアが要証期間内に販売されていたことを立証するものではないと主張するが、被請求人が主張する「商標の使用」は、商標法第2条第3項第2号ではなく、同項第8号である。
(2)商標法第2条第3項第8号における「広告」について
請求人は、商標法第2条第3項第8号における「広告」とは、商品等の製造販売に限定されるべきであり、価格や機能等を具体的に示すべきと主張するが、工業所有権法(産業財産権法)逐条解説によれば、広告について、「旧法の看板、引札を含む。さらに街頭のネオンサイン、飛行機が空に描いたもの、テレビによる広告、カレンダー等も含まれる。」とされている。看板やネオンサイン、飛行機が空に描いたものなど、伝えられる情報は必ずしも包括的なものではなく、むしろその指定商品等との関係が認識されるのであれば、商標の使用と認められるべきである。このことは同法第2条第3項第8号の条文が「広告、価格表若しくは取引書類」と、それぞれが並列に規定されていることからも明らかであり、価格や機能等を具体的に示すことは必ずしも求められてはいない。
(3)本件商標と登録第5058585号商標との関係について
請求人は、被請求人が本件商標とは別の登録商標を有していると主張するが、被請求人は、一貫して本件商標の使用を主張しており、別の登録商標が存在することのみにより、その主張が否定されるものではない。そもそも企業は、その事業活動において状況に応じたネーミングバリエーションを展開するものである。そして、そのようなバリエーションであっても、不使用取消の対象となっている商標の使用と認められ、登録が維持された例を挙げる(乙5及び乙6)。特に、乙第6号証においては、本件と同様に不使用取消の対象となっている商標と、使用商標が別の登録商標として存在するものの、商標の同一性が認められ、登録が維持されている。本件商標についても、同様に判断がされるべきである。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、審判請求の登録前3年以内に「電子応用機械器具及びその部品」について本件商標の使用をしていたことが明らかであるから、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について
(1)商標法第50条第1項による商標登録の取消しの審判の請求があったときは、同条第2項本文は、登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときを除き、「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定し、また、同規定において、登録商標と同一と認められる範囲について、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」を含む旨が規定されている。
そして、本件商標は、前記第1のとおり、「Impact」の欧文字を横書きしてなるところ、被請求人は、前記第3のとおり、使用の事実を証明する各証拠が「SD-MobileImpact」の文字からなる商標の使用を表すものであっても、その使用に係る商標「SD-MobileImpact」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である旨主張している。
そこで、以下検討する。
(2)被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第1号証は、商標権者の個人向けと思しき「ソフトウェアお客様サポート」とされるウェブサイト(写し)であるところ、「SD-MobileImpact」の商品紹介として、「SD-MobileImpactは、SD-Jukebox Ver.6.0 Light Editionの機能に加え、携帯電話で録画されたワンセグ動画を再生・管理する機能を備えたソフトウェアです。」と紹介され、「『動画モード』と『音楽モード』」、「多機能&多彩なメディア展開」の項目と共に、「SD-MobileImpact」を紹介する図が掲載されている。
イ 乙第2号証は、商標権者の個人向けと思しき「お客様サポート」とされるウェブサイト(写し)であるところ、「このページは、他社製品に同梱、または単体販売しているソフトウェアのWindows8への対応状況をお知らせするものです。この情報は、2012年11月2日現在のものです。」との記載、及び「他社製品同梱ソフトウェア(パソコン、携帯電話)」の項に、「カテゴリー:携帯電話、商品名:SD-MobileImpact、対応状況:×」等の記載がある。
ウ 乙第3号証は、商標権者の個人向けと思しき「ソフトウェアお客様サポート」とされるウェブサイト(写し)であるところ、「2.パソコン付属ソフトおよび携帯電話付属ソフトをお使いの方」の項に「NECパソコン付属パナソニック製ソフトおよび携帯電話付属ソフト『SD-MobileImpact』ユーザーサポート終了のお知らせ」、「サポート終了日」として「電話によるお問い合わせ:2013年6月26日、電子メールによるお問い合わせ:2014年3月末日」等の記載がある。
エ 乙第4号証は、商標権者の社内の文書と思しき「ホームページ掲載/変更依頼書」とされる文書(写し)であるところ、件名の欄には「NECパソコン付属および携帯付属ソフトのサポート終了に伴う事前告知の掲載」の記載及び内容の欄には「NECパソコン付属パナソニック製ソフト、および携帯電話付属ソフト『SD-MobileImpact』のサポートを2013年7月から順次終了いたします。」、掲載希望日として、2013/05/17の記載がある。
(3)本件商標と使用商標について
本件商標と使用商標については、以下のとおりである。
ア 本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「Impact」の欧文字を横書きしてなるものであり、これより「インパクト」の称呼が生じ、「衝撃」の観念が生じるものである。
イ 使用商標
使用商標は、上記(2)のとおり、いずれも「SD-MobileImpact」の欧文字からなるものであり、被請求人は、「Impact」の文字のみからなる商標を使用している証拠は提出していない。
被請求人は、「使用商標は、本件商標に『SD』及び『Mobile』が付加されたものであり、使用商品の分野において、『SD』は『SDメモリーカード』、『Mobile』は『携帯電話』の意味合いを有することから、使用商標の要部は『Impact』となり、それのみで独立して自他商品識別機能を果たしている。」旨主張する。
しかしながら、使用商標の構成中の「MobileImpact」の文字部分をみるに、該文字部分は、外観上、同じ書体、等しい間隔でまとまりよく一体的に表されているものであって、これより生じる「モバイルインパクト」の称呼も格別冗長なものとはいえず、無理なく一連に称呼し得るものである。しかも、観念上も、具体的な熟語的な意味合いまでを看取させるものではないとしても、「Mobile」及び「Impact」の各語の意味合いから、看者が可動性や機動性に衝撃を受ける旨を暗示するような印象を受けることも否定できないものといえる。
そうすると、使用商標は、少なくとも、「MobileImpact」の文字部分については、これに接する需要者に一体のものとして認識、把握されるものとみるのが自然であって、その構成中の「Impact」の文字部分のみを抽出して、商品の識別標識として認識するということはできないから、上記被請求人の主張は、採用することはできない。
ウ 本件商標と使用商標との同一性
使用商標は、上記イのとおり、少なくとも、「MobileImpact」の文字部分は一体不可分のものと認識されるものであるから「Impact」の欧文字からなる本件商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても同一ということができない。
そうとすれば、本件商標と使用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、異なるものであるから、社会通念上同一と認められる商標ということはできない。
その他、被請求人が提出した乙各号証に、要証期間内に、本件商標あるいは本件商標と社会通念上同一と認められる商標が本件取消の請求に係る指定商品について使用されていたと認め得る事実を見い出すことができない。
2 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件取消の請求に係る指定商品について、登録商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したということはできないし、また、登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「結論掲記の指定商品」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-09-30 
結審通知日 2014-10-02 
審決日 2014-10-27 
出願番号 商願昭47-348 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y09)
最終処分 成立  
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
守屋 友宏
登録日 1975-05-19 
登録番号 商標登録第1123055号(T1123055) 
商標の称呼 インパクト 
代理人 徳田 佳昭 
代理人 藤井 兼太郎 

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