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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W42
管理番号 1295082 
異議申立番号 異議2013-900289 
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-01-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-08-28 
確定日 2014-11-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第5598675号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5598675号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5598675号商標(以下「本件商標」という。)は,「ゆうびん大臣」の文字を標準文字で表してなり,平成25年2月18日に登録出願,第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用データベースへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として,同年6月25日に登録査定,同年7月12日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は,以下のとおりである(以下,これらを総称するときは「引用商標」という。)。
1 登録第5341010号商標は,別掲1のとおりの構成からなり,平成22年1月20日に登録出願,第16類,第35類,第39類,第40類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同年6月22日に登録査定,同年7月30日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
2 登録第5252110号商標は,別掲2のとおりの構成からなり,平成19年6月15日に登録出願,第6類,第7類,第9類,第12類,第14類ないし第18類,第20類ないし第22類,第24類,第27類,第28類及び第32類ないし第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同21年7月3日に登録査定,同年7月31日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
3 登録第5573480号商標は,「日本郵便」の文字を標準文字で表してなり,平成24年7月11日に登録出願,第3類ないし第5類,第8類ないし第11類,第16類,第18類,第20類,第21類,第24類,第29類ないし第33類,第35類ないし第37類,第39類,第41類,第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同25年3月19日に登録査定,同年4月12日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第44号証を提出している。
1 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は,「ゆうびん大臣」の文字から構成されるものであるところ,申立人の100%子会社である「日本郵便株式会社」の著名な略称「ゆうびん」を含むものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に規定する「他人の名称の著名な略称を含む商標」に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号について
本件商標は,国務大臣を指称する「大臣」の文字及び申立人の有する著名な商標「郵便(ゆうびん)」を結合させたものであることから,旧「郵政省(郵政大臣)」を前身とする「日本郵便株式会社」と何ら関わりのない商標権者に本件商標の使用を認めることは,国民の行政に対する信頼を損ね,社会公共の利益に反するというべきである。さらに,本件商標は,著名商標である「郵便(ゆうびん)」の文字が有する表象力・顧客吸引力及びイメージにただ乗りし,不正の利益を得る目的をもって使用するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当する。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,申立人が所有する,先願・先登録の引用商標と類似する商標であって,かつ,引用商標の指定役務と同一又は類似の役務である第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用データベースへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機用プログラムの提供」,さらに,引用に係る登録第5573480号商標の指定役務と同一の役務である第42類「電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」について使用するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
引用商標は,本件商標の登録出願時である平成25年2月18日の時点において,申立人の役務を表すものとしてわが国において著名であったから,本件商標に接する者は,本件商標から直ちに申立人の著名な引用商標を連想・想起し,本件商標の商標権者により提供される役務が,申立人又はその関連団体により提供されるものであるかのごとく,その役務の出所について誤認・混同することは必定である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当する。

第4 当審において通知した取消理由
商標権者に対して,平成26年3月3日付けで通知した本件商標の取消理由は,要旨次のとおりである。
1 「ゆうびん大臣」の語について
(1)本件商標について
本件商標は,上記第1のとおり,「ゆうびん大臣」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の前半部の「ゆうびん」の平仮名は,「郵便」の語に通じ,「信書(書状・はがき)その他所定の物品を国内・国外へ送達する通信制度。郵便物の略。」を意味するものとして,また,後半部の「大臣」の漢字は,「国務大臣または各省大臣の称」を意味するもの(「郵便」及び「大臣」ともに「広辞苑 第六版」による。)として,それぞれ親しまれているものである。そして,本件商標を構成する前半部の「ゆうびん」の文字が意味する「郵便」については下記(2),また,後半部の「大臣」については下記(3)の状況が認められる。
(2)「郵便」(ゆうびん)について
ア 「郵便」(ゆうびん)の語は,「信書(書状・はがき)その他所定の物品を国内・国外へ送達する通信制度。郵便物の略。」を意味するものであるところ,郵便事業は,平成13年1月の中央省庁再編前は郵政省の長である郵政大臣が担当し,当時の郵政省設置法第3条には,当該省の任務として郵便事業に関する行政事務等が規定され,また,現在では,総務省の長である総務大臣が担当し,総務省設置法第3条に,当該省の任務として郵政事業の適性かつ確実な実施の確保がある旨,同4条には,総務省の所掌事務として郵政事業に関することなどが規定されているものである。
イ 郵便については,郵便の役務をなるべく安い料金で,あまねく,公平に提供することによって,公共の福祉を増進することを目的に郵便法が定められており,同法には,郵便禁制品の総務大臣の指定(第12条),郵便認証司の総務大臣による任命(第59条),郵便認証司に対する総務大臣による監督命令(第64条),料金に関する総務大臣への届出や総務大臣の認可(第67条),郵便約款の総務大臣による認可(第68条),郵便業務管理規定の総務大臣による認可(第70条),総務大臣による郵便料金,郵便約款又は郵便業務管理規程の変更命令(第71条)に関する規定などが設けられている。
また,郵便法には,郵便の業務が日本郵便株式会社の独占である旨が定められており(第2条及び第4条),同社について定める日本郵便株式会社法には,同社は事業計画を定めて総務大臣の認可を受けなければならない旨(第10条),同社は重要な財産の譲渡等をしようとするときは総務大臣の認可を受けなければならない旨(第11条),同社の定款の変更等は総務大臣の認可を受けなければ効力を生じない旨(第12条),同社は財務諸表を総務大臣に提出しなければならない旨(第13条),同社は収支の状況を総務大臣に提出しなければならない旨(第14条),同社は総務大臣が監督する旨(第15条)などが定められている。
(3)「大臣」について
ア 「大臣」の語は,内閣の構成員である国務大臣を意味し,多くの場合,国の行政機関として設けられた「総務省」,「法務省」,「外務省」,「財務省」,「文部科学省」,「厚生労働省」,「農林水産省」,「経済産業省」,「国土交通省」,「環境省」及び「防衛省」(国家行政組織法第3条第4項に基づく別表第一)の各省の長として,それぞれの省の事務を統括する(同法第5条第1項及び第10条)者を表すために,「総務大臣」,「法務大臣」,「外務大臣」などのように,各省の名称から「省」を除いた事務分野を想起させる表示を冠して称されている。
イ 国家行政組織法によれば,各省の大臣には,法令,告示,訓令,通達などについて権限がある旨規定されている(第11条ないし第14条)。そして,各省の大臣は,その所掌する行政事務に関して,各種事業等の許認可等を行っているところ,商品又は役務に係る事業者においては,その許認可等を,例えば,「○○大臣認定」,「○○大臣認可」,「○○大臣指定」のように表示し,国の行政機関が設けた基準や規格を満たしているなど,その商品や役務の優位性や優秀性を訴えているところがある。このことは,例えば,申立人提出の甲第7号証ないし甲第9号証のほか,下記ウに記載の新聞記事情報及びインターネット情報からもうかがえるものであり,それは,本件商標の指定役務の分野においても同様といえる。
ウ 職権をもって,「○○大臣認定」,「○○大臣認可」,「○○大臣指定」のように表示している事例について,新聞記事情報及びインターネット情報を調査したところ,例えば,以下のような事例が認められる。
(ア)2001年9月21日付け「産経新聞」(大阪朝刊2頁)には,「公益法人改革省庁案,公表 検査・検定廃止は1業務」の見出しの下に,「政府の行政改革推進事務局は二十日,『公益法人改革の具体化方針』に基づいて各省庁が作成した所管法人の改革実施計画案を公表した。公益法人の行う技能審査に所管官庁が『大臣認定』といった“お墨付き”を与える制度を平成十七年度までに全廃することが決まったが,国から委託を受けている『検査・検定』制度廃止を打ち出したのは一つだけだった。」と記載されている。
(イ)2006年1月11日付け「日刊工業新聞」(3頁)には,「視点/マンション耐震強度偽装問題-適切な制度改革を」の見出しの下に,「昨年末に国交省は,(民間の)指定確認検査機関への一斉立ち入り検査を実施した。・・・『性善説』と『大臣認定プログラムに対する過信』状態が浮き彫りとなり,監督強化などを検討している。」と記載されている。
(ウ)2008年2月26日付け「日刊工業新聞」(27頁)には,「国交省,NTTデータの構造計算プログラムに大臣認定」の見出しの下に,「国土交通省は,NTTデータが開発した改正建築基準法に対応する構造計算プログラムに大臣認定を与えたと発表した。建築確認の審査を迅速化するプログラムが正式に認定されたことで,建築着工の大幅減の原因だった建築確認の遅れが解消できると期待されている。認定を受けたのは同社の2種類のプログラム。同業他社も開発を進めているが,現時点で大臣認定を受けたのはNTTデータだけ。国交省は1月,同社のプログラムに仮認定を与え,設計事務所や確認審査機関に不具合をチェックさせるなど,早期認定を支援していた。」と記載されている。
(エ)2009年10月28日付け「電気新聞」(1頁)には,「空調の快適・省エネ両立 設計ソフトが国交省認定を取得/電中研」の見出しの下に,「電力中央研究所が開発した住宅用室内温熱環境設計ソフトウエアが,住宅の品質確保の促進などに関する法律(品確法)の国土交通省認定を取得した。開発したソフトは,建物の特性や生活スタイルに適した空調設計の提案を可能としたもので,・・・今回,国の認定を取得したことで,同ソフトの評価結果の正当性が担保された。・・・これまでにも大臣認可を受けているソフトはあるが,輻射(ふくしゃ)熱や実験データを基にした空調機の動作特性まで組み込んだソフトはなかった。」と記載されている。
(オ)2012年7月3日付け「住宅新報」(2面)には,「今週のことば ●レインズ(2面)」の見出しの下に,「国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営するコンピュータ・ネットワーク・システム。不動産業者同士で物件情報を交換する場となる。物件の登録が宅建業法上義務付けられているが,守られていないケースがあると以前から問題視されているため,その改善策が検討されている。」と記載されている。
(カ)株式会社LIXILのウェブサイトにおいて,「国土交通大臣認定防火戸FGシリーズ」の見出しの下に,「窓」について「防火戸FGシリーズは個々の品種毎に国土交通大臣の認定を受けています。新テクノロジーと高機能な複層ガラスを標準採用することで断熱性能を大幅に向上させました。」と,また,「ドア」について「防火戸FG-Eは個々の商品毎に国土交通大臣の認定を受けています。住まいの顔を美しく演出する『玄関ドア』と,機能充実の『アパートドア』をラインアップ。」と記載されている。
(http://www.lixil.co.jp/lineup/fire_guard/)
(キ)YKK AP株式会社のウェブサイトにおいて,「商品情報」及び「国土交通大臣認定 防火窓・防火ドア」の見出しの下に,「個別の商品毎に20分の防火性能について国土交通大臣の認定を受けた防火窓・防火ドア商品をご紹介します。」とし,「国土交通大臣認定 防火設備 防火窓Gシリーズ」,「国土交通大臣認定 防火設備 防火窓Gシリーズ 開き窓テラス/勝手口ドア」等と記載されている。
(https://www.ykkap.co.jp/search/item/itempage/Cate0007/Genre0001/index.asp)
(ク)株式会社建設システムのウェブサイトにおいて,「国土交通大臣認可 登録経営状況分析機関(登録No21)として経審分析センターオープン」の見出し及び「12年09月03日」の日付とともに,「いつも弊社製品をご愛用いただき誠にありがとうございます。去る平成24年3月30日,建設システムは国土交通大臣の認可を受け,経審のY点を算出する21番目の登録経営状況分析機関として登録されましたので,平成24年9月3日より,正式に『経審分析センター』として開設いたします。開設を記念して,お得なオープンキャンペーンを実施いたします。是非この機会に,建設システム『経審分析センター』の経営状況分析をご利用ください。」と記載されている。
(http://www.kentem.jp/news/important/120903.html)
2 本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することについて
本件商標は,漢字の「大臣」の文字に「郵便」の語に通じる「ゆうびん」の平仮名を冠したものであるところ,その構成中の「大臣」の文字は,上記1(3)アのとおり,内閣の構成員である国務大臣を意味し,国の行政機関の長を意味する語として国民に親しまれており,「総務省」,「法務省」,「外務省」などの行政機関である各省の事務を統括する者を表すため,各省の行政事務分野を想起させる表示を冠して「総務大臣」,「法務大臣」,「外務大臣」などのように称されている。
加えて,「大臣」の文字の前に置かれた「ゆうびん」の文字が意味する「郵便」(事業)は,上記1(2)のとおり,平成13年1月の中央省庁再編前は郵政大臣が,現在は総務大臣が,それぞれ担当している公共性の高い事業であり,郵便事業及び該事業に関する業務を独占する日本郵便株式会社について,郵便法や日本郵便株式会社法に総務大臣の許認可等が種々定められていることをも踏まえると,本件商標は,全体としても「郵便事業を担当する大臣」程度の意味合いを容易に認識させるものといえる。
そして,各省大臣は,その所掌事務に関して,各種事業等の許認可等を行っているところ,甲第7号証ないし甲第9号証及び上記1(3)ウのとおり,本件商標の指定役務の分野を含め,商取引の場においては,その許認可等を,例えば,「○○大臣認定」,「○○大臣認可」,「○○大臣指定」のように表示し,国の行政機関が設けた基準や規格を満たしているなど,その商品や役務の優位性や優秀性を訴えている実情があることを踏まえると,「○○大臣」は,国の行政機関の長を意味する言葉として広く一般国民に知られているだけでなく,実際の取引社会においては,これに対する国民の信頼が大きいものといえる。
そうすると,本件商標は,「大臣」の語に国の行政事務の一つである「郵便」に通じる「ゆうびん」の語を冠したものであり,その郵便事業について大臣が許認可等を行っていることを勘案するならば,「郵便事業を担当する大臣」として,国の行政機関の長を示す名称又は別称と認識される可能性があるものといえる。しかも,「大臣」の名を巡っては,上述のとおり,「○○大臣認定」,「○○大臣認可」,「○○大臣指定」のように表示して,商品や役務の優位性や優秀性を訴える取引の実情もあることから,本件商標は,その指定役務について使用したときは,その取引者,需要者に対し,たとえ「ゆうびん大臣」という名称の大臣が実在していなくとも,あたかも郵便事業を担当する大臣の名称又は別称であるかのように誤信させ,国の行政機関の長に対する国民の信頼を損ねるとともに,その役務の取引秩序を乱すおそれがあるといえるから,結局,本件商標は,社会公共の利益に反するものというべきである。
したがって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるといえるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第5 本件商標の商標権者の意見
本件商標権者は,上記第4の取消理由に対し,何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断
本件商標についてした先の取消理由は,妥当なものと認められる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたといわざるを得ないから,申立人のその余の申立理由について検討するまでもなく,本件商標の登録は,同法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 (1)別掲1(登録第5341010号商標)

(色彩は原本参照のこと)

(2)別掲2(登録第5252110号商標)

(色彩は原本参照のこと)

異議決定日 2014-06-03 
出願番号 商願2013-10454(T2013-10454) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W42)
最終処分 取消  
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 林 栄二
守屋 友宏
登録日 2013-07-12 
登録番号 商標登録第5598675号(T5598675) 
権利者 谷口 昭博
商標の称呼 ユウビンダイジン、ユービンダイジン 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 藤倉 大作 
代理人 松尾 和子 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 中村 稔 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 辻居 幸一 

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