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審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X25 審判 全部無効 商標の周知 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X25 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X25 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X25 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X25 |
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管理番号 | 1293665 |
審判番号 | 無効2013-890054 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2013-08-06 |
確定日 | 2014-10-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5343952号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5343952号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5343952号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成21年9月10日に登録出願、第25類「革靴,野球靴,ラグビー靴,スリッパ,サッカー靴,ハンドボール靴,レインコート,スカート,スラックス,アノラック,子供服,ジャケット,ブルージーンズ製のズボン,マウンテンパーカー,フード付きのスウェットパーカー,セーター類,スポーツシャツ,ティーシャツ,帽子,ベスト,アロハシャツ,ズボン,半ズボン,スカーフ,ショルダーラップ,タイツ及びタイツストッキング,靴下,プルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ,洋服,コート,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成22年6月23日に登録査定、同年8月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 2 請求人が引用している商標 (1)本件商標を商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するとして、請求人が引用している商標は、以下のとおりである(以下、これらの商標をまとめて「D&M商標」という場合がある。)。 ア 請求人がアンパサンド記号と称する記号を介した「D」及び「M」の欧文字からなる商標(以下「D&M文字商標」という。なお、そのうち、別掲2に表示されたものを「D&M文字商標1」と、別掲3に表示されたものを「D&M文字商標2」という場合がある。)。 イ 菱形の輪郭線の内部中央にD&M文字商標を配した図形と、その上部に表された頭部を右にした横向きの犬の図形からなる商標(以下「D&M図形商標」という。なお、そのうち、別掲4に表示されたものを「D&M図形商標1」と、別掲5に表示されたものを「D&M図形商標2」という場合がある。)。 (2)本件商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとして、請求人が引用している登録商標は、以下のとおりである(以下、これらの商標をまとめて「引用登録商標」という。)。 ア 登録第1346381号商標(以下「引用登録商標1」という。)は、別掲6のとおりの構成からなり、昭和50年6月3日に登録出願、第24類「サポーター」を指定商品として、同53年9月29日に設定登録、その後、平成21年1月21日に指定商品を第28類「サポーター」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 イ 登録第4502465号商標(以下「引用登録商標2」という。)は、別掲6のとおりの構成からなり、平成12年11月10日に登録出願、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、同13年8月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 ウ 登録第4505489号商標(以下「引用登録商標3」という。)は、別掲6のとおりの構成からなり、平成12年11月10日に登録出願、第28類「運動用具」を指定商品として、同13年9月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 エ 登録第4331311号商標(以下「引用登録商標4」という。)は、別掲7のとおりの構成からなり、平成10年9月7日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同11年11月5日に設定登録、その後、同13年1月24日に「指定商品中、『運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)』についての商標登録を取り消す。」との異議申立の確定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、その証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出している。 (1)商標法第4条第1項第10号及び同項第19号について ア 米国D&M社 本件商標は、米国D&M社が運動具について使用していた商標と同一又は類似するものである。その商標の由来はジェイソンFドレイパーのDとジョン・メイナードのM、この二人の共同経営者の名前のイニシャルである。米国D&M社は1880年代から1940年代にかけて米国で人気を博したスポーツ用品メーカーで、主に野球用グローブやバット、ゴルフクラブなどを製造販売しており、その当時プリモスの町の雇用人口の半分がD&M社と言われ、1916年にはレッドソックス時代のベーブルースがD&M社を訪れ、ボールを縫っている写真があり、1920年代には大リーグのプレーヤーの90%が米国D&M社のグローブを使用していたとされている(甲第2号証)。 イ 米国D&M社の商標の周知著名性 米国D&M社の商標を付した運動具等は、現在も海外のオークションサイトで販売されている。セカイモン(Sekaimon)は、株式会社ショップエアラインが運営する購入代行サービス付き海外オークションサイトであり、また株式会社ショップエアラインが本件商標の登録出願前の2007年12月に米国のeBay Inc.と提携して開始した、e-Bay公認のサービスである(甲第3号証)。 SekaimonについてD&M野球を入力した検索結果(甲第4号証、甲第7号証及び甲第10号証)によれば、米国D&M社の商標の付いたグローブ(甲第5号証)、バット(甲第6号証)、ルールブック、米国D&M社製用具の運動用具カタログ(甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証、甲第12号証)がオークションに掛けられており、米国D&M社の商標の付いたグローブ、バット等は、製造が行われた1880年代から現在に至るまで人々に永く愛され、その商標は、本件商標の登録出願時においても日本国内又は外国における需要者の間に広く認識され、周知商標となっている。 ウ 米国D&M社の商標と本件商標との対比 甲第5号証は、甲第4号証のグローブを拡大したものであり、甲第6号証は、甲第4号証のバットを拡大したものである。甲第5号証のグローブには、D&Mの商標が付されており、甲第6号証のバットには、甲第1号証と同様に、「猟犬の図柄」、下段に菱形内に一種のアンパサンド記号を介して「D」と「M」の文字を配している。第8号証のカタログには「猟犬の図柄」、その下に菱形内に一種のアンパサンド記号を介して「D」と「M」の文字を配している。また、甲第9号証のカタログには、上段に一種のアンパサンド記号を介して「D」と「M」の文字が配され、その下段の丸の中には「猟犬の図柄」、その下に菱形内に一種のアンパサンド記号を介して「D」と「M」の文字を配している(審決注:甲第9号証のカタログは別掲2に示したとおりであるところ、下段の丸の中は不鮮明であるため、図形や文字の詳細が明確でない。)。さらに、甲第11号証、甲第12号証のカタログには、下段に一種のアンパサンド記号を介して「D」と「M」の文字が配され、その中段の野球ボール内には「猟犬の図柄」とその下に菱形内に本件と同一のアンパサンド記号を介して「D」と「M」の文字を配している。 したがって、甲第5号証、甲第6号証又は甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証、甲第12号証の商標は、外観及び称呼において、本件商標と同一又は類似する。 エ D&M商標を使用した商品と本件商標の指定商品との対比 甲第5号証のグローブ、甲第6号証のバット等の野球道具と被請求人の指定商品である野球靴、ラグビー靴、サッカー靴、ハンドボール靴、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)は、抵触する関係にある。また、甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証、甲第12号証の米国D&M社製運動用具のカタログには上述の野球道具が含まれている。 オ 小括 以上のとおり、D&M商標は、本件商標の登録出願時において、既に周知となっており、本件商標とは同一又は類似のものであり、また、その商品も抵触する関係にある。また、本件商標は、D&M商標の周知性に便乗する、すなわち、不正の目的で商標登録を受けたものにほかならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第11号について(引用登録商標1ないし3との関係) ア 米国D&M社と請求人との関係 請求人の創業者である鈴木宇兵衛は明治に入り、渡米してサクラメントでホテルを経営し、1902年に帰国、当時、全米一のスポーツ用品メーカー、米国D&M社とエージェント契約(輸入販売に関する総代理人店契約)を結び、芝の三田にD&M商会を設立した(明治35年)。 そして、1912年(大正元年)に後継者として羽田野庄二(請求人の取締役会長の父)をスカウトしたところ、創業者の後を継いだ羽田野庄二は、米国D&M社からの輸入に加え、当時品質が向上したゴム織物からサポーター製造に着目、1933年(昭和8年)に、会社を三田から縫製業メリヤス業の中心である本所緑町に移転し、サポーター全般と国内で初めてブラジャー、コルセットも製造、各デパートにも納入していた。 請求人は、米国D&M社から輸入した本件商標等が付された運動用具を国内で販売し、また、請求人自ら製造したサポーター等について「D&M」を含む商標を付して国内で販売した(甲第16号証)。請求人は、「D&M」の社名を継承して、戦中、戦後、事業を継続し、また米国D&M社関連の商標については米国D&M社の同意を得て我が国で商標登録を受けている(甲第13号証?甲第15号証)。 イ 引用登録商標1ないし3と本件商標との対比 引用登録商標1ないし3と本件商標の構成中の下段の菱形内の商標を比較すると、引用登録商標1ないし3は、「D」と「M」の文字の間に一般的に使用されているアンパサンド記号の「&」を介在させており、「ディアンドエム」と称呼される。 一方、本件商標の構成中の下段の菱形内の商標についても、「D」と「M」の文字の間に介在されている記号は、「&」と同様に、広く使用されているアンパサンド記号であり、「ディアンドエム」との称呼が生ずる。 アンパサンド記号とは「・・・と・・・」を意味する記号である。英語の“and”に相当するラテン語の“et”の合字である。その使用は1世紀に遡ることができ、その書体変遷もあり、現在に至っているのであるが、現在においてもアンパサンド記号は「&」以外の書体で表記され(甲第18号証)、その一例は甲第19号証にも示されている。 D&M商標や、本件商標に使用されている記号を含め、これらは、すべてアンパサンド記号であり、本件商標は、引用登録商標1ないし3と同様に、「ディアンドエム」の称呼を生じ、両者は称呼上類似である。 さらに、本件商標は、上段に配した「Draper」と「Maynard」をハイフン記号(-)で結合してなるところ、この場合、ハイフン記号が「アンド」と称呼され、全体として上段の文字は「ドレイパーアンドメイナード」と称呼されるが、この関連において、下段の菱形内の「D」は「Draper」のイニシャル、「M」は「Maynard」のイニシャルであるから、「D」と「M」に介在する記号はハイフン記号と同義と解し、下段の菱形内の文字も「ディアンドエム」と称呼するのが自然である。 運動用具の需要者層には、昔からの商品の愛好者が多く、運動用具等に付された一種のアンパサンド記号を介して並記される「D」と「M」を見れば、「ディアンドエム」と称呼されるのが自然である。 なお、本件商標の記号がアンパサンド記号であるか否かは別にしても、「Draper」のイニシャルである「D」と「Maynard」のイニシャルである「M」を結合する結合記号であることは間違いがなく、「結合記号」であれば、その称呼は「アンド」であり、これが「D」と「M」の間に介在すれば、全体として「ディアンドエム」と称呼されるのが自然である。 ウ 引用登録商標1ないし3と本件商標の指定商品との対比 引用登録商標1ないし3は、それぞれ「サポーター」、「運動用具」、「運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品としており、一方、本件商標は、「野球靴、ラグビー靴、サッカー靴、ハンドボール靴、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品としており、両者は同一である。 エ 小括 以上のとおり、引用登録商標1ないし3は、本件商標の先願に係るものであって、両商標は類似しており、その指定商品も類似するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第11号について(引用登録商標4との関係) ア 引用登録商標4と本件商標との対比 引用登録商標4は、「D」と「M」を、それより大きめの白抜き状の「&」の記号で結合してなるものであり、これよりは「ディアンドエム」の称呼を生ずる。一方、本件商標は、上述のように「ディアンドエム」の称呼を生じるものである。 したがって、両者は、称呼上類似する。 イ 引用登録商標4と本件商標の指定商品との対比 引用登録商標4は、「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物」を指定商品としており、一方、本件商標は、「革靴、スリッパ、レインコート、スカート、スラックス、子供服、ジャケット、ブルージーンズ製のズボン、フード付きのスウェットパーカー、セーター類、スポーツシャツ、ティーシャツ、帽子、ベスト、アロハシャツ、ズボン、スカーフ、ショルダーラップ、タイツ及びタイツストッキング、靴下、プルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ、洋服、コート、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳帽、アイマスク、エプロン、えり巻き、ゲートル、毛皮製ストール、ショール、足袋、足袋カバー、手袋、布製幼児用おしめ、ネクタイ、ネッカチーフ、バンダナ、保温用サポーター、マフラー、耳覆い、ずきん、すげがさ、ナイトキャップ、防暑用ヘルメット、靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。」)、げた、草履類」(審決注:一部誤記と思われる箇所の修正を行っている。)を指定商品中に含むものであり、両者は同一である。 ウ 小括 以上のとおり、本件商標は、引用登録商標4に類似しており、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (4)むすび 本件商標は、以上のとおり、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その商標登録は無効にすべきである。 4 被請求人の主張 被請求人は、何ら答弁していない。 5 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第10号及び同項第19号について ア 本件商標とD&M商標との類否について (ア)本件商標とD&M図形商標との比較 a.外観について 本件商標は、別掲1のとおり、「Draper-Maynard」の文字からなる上段の部分と犬と菱形の図形からなる下段の部分とによって構成されているところ、上段の部分と下段の部分は重なることなく、間隔を置いて表示されており、そのうちの、上段の「Draper-Maynard」の文字部分は、必ずしも我が国で親しまれた成語で構成されているものではない。他方、下段部分は、外観上、本件商標において顕著に表示されている部分であり、看者が犬と菱形の図形からなるものとして容易に把握、理解し得るものといえる。その他、本件商標について、上段部分と下段部分とを一体不可分のものとして把握しなければならない事情は見いだしえない。そうとすると、本件商標は、その構成全体ばかりでなく、これに接する取引者、需要者に顕著な印象を与え、その構成を容易に把握し得る下段部分が独立して識別標識として機能し得る場合も少なくないといえる。 そして、本件商標の構成中の下段部分は、請求人がアンパサンド記号と称する記号を介した「D」及び「M」の欧文字、さらに、その下に小さな「1881」の数字を内部中央に配した輪郭線による菱形の図形、その上部に、目及び耳の周辺部、前脚及び後脚の上部各周辺部が濃色となっているいわゆるブチ模様で、長めの尾を水平状に伸ばしている犬が、頭部を右にした横向きで、左前脚及び右後脚を前方に出して立っている図形を表わしてなるものである。 他方、D&M図形商標についてみるに、そのうちのD&M図形商標1は、別掲4のとおり、請求人がアンパサンド記号と称する記号を介した「D」及び「M」の欧文字を内部中央に配した輪郭線による菱形の図形、その上部に、目及び耳の周辺部、前脚及び後脚の上部各周辺部が濃色となっているいわゆるブチ模様で、長めの尾を水平状に伸ばしている犬が、頭部を右にした横向きで、左前脚及び右後脚を前方に出して立っている図形を表わしてなるものである。 また、D&M図形商標2は、別掲5のとおり、請求人がアンパサンド記号と称する記号を介した「D」及び「M」の欧文字を内部中央に配した輪郭線による菱形の図形、その上部に、長めの尾を水平状に伸ばしている犬が、頭部を右にした横向きで、左前脚及び右後脚を前方に出して立っている図形を表わしてなるものである。 そうすると、本件商標の構成中の下段部分とD&M図形商標1とは、外観上、「1881」の数字の有無が異なるとしても、記号を介した「D」及び「M」の欧文字を内部に配した輪郭線による菱形の図形と、その上部に、目及び耳の周辺部、前脚及び後脚の上部各周辺部が濃色となっているいわゆるブチ模様で、長めの尾を水平状に伸ばしている犬が、頭部を右にした横向きで、左前脚及び右後脚を前方に出して立っている図形を表わしてなるという主要な点でその構成の軌を同じくするものといえる。 同じく、本件商標の構成中の下段部分とD&M図形商標2も、外観上、「1881」の数字の有無に加え、犬がブチ模様であるか否かが異なってはいるが、やはり、記号を介した「D」及び「M」の欧文字を内部に配した輪郭線による菱形の図形と、その上部に、長めの尾を水平状に伸ばしている犬が、頭部を右にした横向きで、左前脚及び右後脚を前方に出して立っている図形を表わしてなるという主要な点でその構成の軌を同じくするものといえる。しかも、本件商標とD&M図形商標2とは、記号を介した「D」及び「M」の欧文字の形状及び線の太さ等の態様も酷似しているものである。 b.称呼について 本件商標は、上記aのとおり、その構成中の下段部分が独立して識別標識として機能し得るものである。そして、本件商標の当該下段部分及びD&M図形商標は、別掲1、4及び5のとおり、いずれも、菱形図形内に表わされた請求人がアンパサンド記号と称する記号を介した「D」及び「M」の欧文字が顕著に表示されているものであり、該文字部分に看者の注意が惹かれることも少なくないといえる。 ところで、請求人は、「D」及び「M」の欧文字の間の記号をアンパサンド記号と称しているところ、甲第19号証によれば、同記号は、「and」(&)を意味する表語文字であることが認められ、同号証には、本件商標並びにD&M図形商標1及び2に係る記号と外観上近似しているもの(例えば、同号証4頁の表中の2段目の左から2番目の記号は、本件商標及びD&M図形商標2に係る記号に、また、同号証1頁右側や4頁表中の1又は2段目の右側周辺にある記号は、D&M図形商標1に係る記号に近似しているといえる。)も掲載されている。 そうすると、本件商標並びにD&M図形商標1及び2は、これら商標に接する取引者、需要者に、その構成中の記号が「&」と同旨のものと理解され、「D&M」の文字を表わしたものと認識されるとみるのが相当であるから、当該文字に相応して、ともに「デイアンドエム」の称呼をも生ずるものといえる(なお、「デイアンドエム」の称呼のみが生ずるとするものではない。)。 c.観念について 本件商標及びD&M図形商標は、別掲1、4及び5のとおりであるところ、それぞれが全体で一つの特定の意味合いを認識させるものとはいえないものであるから、両商標は、観念においては、比較し得ないものである。 d.類否のまとめ 本件商標は、その構成中の図形部分が独立して識別標識として機能し得る場合も少なくないところ、D&M図形商標とは、外観上、「D&M」と認識される文字を内部中央に配した輪郭線による菱形の図形と、その上部に、頭部を右にした横向きで、左前脚及び右後脚を前方に出している状態で立っている犬の図形によって構成される点において、その構成の軌を同じくし、しかも、その称呼においても、「デイアンドエム」の称呼を共通にするものであって、観念上においては、比較し得ないものであるから、本件商標とD&M図形商標1及び2とは、類似の商標ということができる。 なお、本件商標とD&M図形商標との間には、「Draper-Maynard」の文字や「1881」の数字の有無という差異があるが、請求人の主張並びに甲第2号証及び同第16号証によれば、米国D&M社は1880年代から1940年代にかけて米国で人気を博したスポーツ用品メーカーであるところ、該「1881」の数字は、同社がバックスキン手袋の生産を開始した時期、該「Draper-Maynard」の文字は、米国D&M社の当時の共同経営者(ジェイソンFドレイパーとジョン・メイナード)の名と一致するものであるから、これらの差異をもって、本件商標とD&M図形商標とを相紛れるおそれがないということはできない。 (イ)本件商標とD&M文字商標との比較 本件商標は、別掲1のとおりであるところ、上記(ア)で述べたとおり、菱形図形内に表わされた文字は、それに接する取引者、需要者に「D&M」の文字を表わしたものと認識されるとみるのが相当であるから、当該文字に相応して「デイアンドエム」の称呼が生ずるものであり、特定の意味合いを認識させないものといえる。 他方、D&M文字商標についてみるに、そのうちのD&M文字商標1は、別掲2のカタログ上部に、また、D&M文字商標2は、別掲3のカタログのボールの図形の下部に、それぞれ表示されたものであり、いずれも、請求人がアンパサンド記号と称する記号を介した「D」及び「M」の欧文字からなるものである。そして、請求人が述べるアンパサンド記号についてみると、同記号が「and」(&)を意味する表語文字であり、甲第19号証に本件商標に係る記号と外観上近似しているものが掲載されていることは、上記(ア)のとおりであるところ、同号証には、D&M文字商標1及び2に係る記号と外観上近似しているもの(例えば、同号証1頁右側や4頁表中の1又は2段目の右側周辺にある記号は、D&M文字商標1に係る記号に、また、同号証4頁表中の右下にある記号は、D&M文字商標2に係る記号に近似しているといえる。)も掲載されている。 そうすると、本件商標の菱形図形内の文字部分並びにD&M文字商標1及び2は、これら商標に接する取引者、需要者に、その構成中の記号が「&」と同旨のものと理解され、「D&M」の文字を表わしたものと認識されるとみるのが相当であるから、当該文字に相応して「デイアンドエム」の称呼が生じ、特定の意味合いを認識させないものといえる。 したがって、本件商標は、その構成中の菱形図形内に表わされた文字部分が独立して商取引に資されることも少なくないところ、当該文字部分とD&M文字商標1及び2とは、外観上、ともに「D&M」の文字を表わしたものとして認識され、称呼上も、「デイアンドエム」の称呼を共通にするものであって、これらを上回る観念上の差異も見いだし得ないものであるから,本件商標とD&M文字商標1及び2とは、類似の商標ということができる。 イ D&M商標の周知性について 本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するというためには、本件商標の登録出願時及び査定時に、D&M商標が我が国において周知となっていなければならず、また、本件商標が同項第19号に該当するというためには、本件商標の登録出願時及び査定時に、D&M商標が我が国又は外国において周知となっていなければならない。 しかし、請求人は、本件審判の請求に当たって、その証拠方法として甲第1号証ないし同第20号証を提出しているが、そのうち、周知性を立証するためのものは、米国D&M社の事業の推移を表わしたインターネット記事(甲第2号証)や、D&M商標が使用されたグローブ、バット、カタログ等の商品がオークションサイトにかけられていることを表わしたインターネット記事(甲第3号証ないし同第12号証)、全国運動用品商工団体連合会会長の羽田野隆司氏の寄稿文と思しき資料(甲第16号証)程度にとどまる。しかも、甲第2号証には、「同社は、ユニフォームを含むさまざまな野球製品を供給しました。・・・しかし、ビジネスはジョン・メイナードの死亡の後1937年にプリマスで閉まりました。」及び「シンシナティ(オハイオ)のP.ゴールドスミス・ソンス社は、Draper-メイナード名とLucky Dog商標がついているスポーツ用品を生産する権利を購入しました。・・・ゴールドスミスは1962年に服地商-メイナード製品を製造するのを止めました。」と、また、甲第16号証には「1937年、代表者のメイナードが亡くなり、後継者無くマクレガー社に売却し、D&M社は幕を閉じました。」との記載があり、これらの記載からは、D&M商標に係る商品の製造事業が1900年代半ばには中止されたことがうかがわれるところ、その製造中止後のD&M商標を使用した米国D&M社や、請求人の事業の状況等を他に明らかにするところがない。 したがって、本件商標の登録出願時である平成21年(2009年)9月10日、登録査定時である平成22年(2010年)6月23日の時点において、D&M商標が我が国又は外国において周知になっているということはできない。 ウ 小括 以上のとおり、本件商標は、D&M商標と類似するものではあるが、本件商標の登録出願時及び登録査定時にD&M商標が我が国又は外国において需要者の間で周知になっているということはできないから、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するということはできない。 なお、請求人は、甲第5号証のグローブにD&M文字商標が表示されている旨、さらに、甲第6号証のバット及び甲第9号証のカタログにもD&M図形商標が表示されている旨を主張し、これらの商標も引用している。しかし、これら証拠方法に表示された標章は、鮮明でなく、その構成及び態様を明確に特定できないうえ、これらを含めたD&M商標の周知性は、上記イのとおりであるから、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当しないとの判断を左右するということはできないものである。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標と引用登録商標との比較 本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、上記(1)のとおり、その構成全体ばかりでなく、犬と菱形の図形からなる下段部分が独立して識別標識として機能し得る場合も少なくないといえる。そして、本件商標は、その下段部分の中でも、顕著に表示され、看者の注意を惹くのは「D&M」の文字を表わしたものと認識される部分であり、当該文字に相応して「デイアンドエム」の称呼をも生じ、当該文字は特定の意味合いを認識させないものといえる。 他方、引用登録商標についてみるに、そのうちの引用登録商標1ないし3は、別掲6のとおり、請求人がアンパサンド記号と称する記号を介した「D」及び「M」の欧文字からなるものである。そして、請求人が述べるアンパサンド記号が「and」(&)を意味する表語文字であることは上記(1)ア(ア)のとおりであるところ、甲第19号証には、引用登録商標1ないし3に係る記号と外観上近似しているもの(例えば、同号証3頁上から6番目の記号や、4頁表中の2段目の左から1番目の記号は、近似しているといえる。)も掲載されている。そうすると、引用登録商標1ないし3は、これら商標に接する取引者、需要者に、その構成中の記号が「&」と同旨のものと理解され、「D&M」の文字を表わしたものと認識されるとみるのが相当であるから、その構成文字に相応して「デイアンドエム」の称呼が生じ、特定の意味合いを認識させないものといえる。 また、引用登録商標4は、別掲7のとおり、黒塗りの「D」と「M」の欧文字の間に、「&」の記号を輪郭線をもって表わしてなる構成からなるものであり、各文字が多少重なって表示されているとしても、これに接する取引者、需要者には、「D&M」の文字を表わしたものと容易に認識されるとみるのが相当であるから、その構成文字に相応して「デイアンドエム」の称呼が生じ、特定の意味合いを認識させないものといえる。 してみれば、本件商標は、その構成中の菱形図形内に表された文字部分が看者の注意をひくことも少なくないところ、当該文字部分と引用登録商標とは、ともに「D&M」の文字を表わしたものと認識され、その構成文字に相応して「デイアンドエム」の称呼が生じ、特定の意味合いを認識させないものであるから、本件商標と引用登録商標は、その外観、称呼及び観念を総合的に勘案すると、相紛れるおそれのある類似の商標ということができる。 イ 本件商標の指定商品と引用登録商標の指定商品との比較 本件商標の指定商品は、上記1のとおりであり、また、引用登録商標の指定商品は、上記2(2)のとおりである。 そこで、本件商標の指定商品と引用登録商標の指定商品を比較してみるに、まず、本件商標の指定商品中の「野球靴,ラグビー靴,サッカー靴,ハンドボール靴,アノラック,マウンテンパーカー,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」は、引用登録商標1ないし引用登録商標3の指定商品と、運動用の商品として共通するものであり、同一又は類似するといえるものである。 また、本件商標の指定商品中の「革靴,スリッパ,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類」及び「レインコート,スカート,スラックス,子供服,ジャケット,ブルージーンズ製のズボン,フード付きのスウェットパーカー,セーター類,スポーツシャツ,ティーシャツ,帽子,ベスト,アロハシャツ,ズボン,半ズボン,スカーフ,ショルダーラップ,タイツ及びタイツストッキング,靴下,プルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ,洋服,コート,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット」は、引用登録商標4の指定商品と、履物又は被服に当たる商品として共通するものであり、同一又は類似するといえるものである。 そうすると、本件商標の指定商品は、いずれも、引用登録商標のいずれかの指定商品と同一又は類似するものであるといえる。 ウ 小括 本件商標は、上記のとおり、引用登録商標とは、類似するものであり、かつ、その指定商品も同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえる。 (6)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号には該当しないとしても、同法第4条第1項第11号には該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) (色彩については、原本を参照されたい。) 別掲2(D&M文字商標1) (注)D&M文字商標1は、下記(カタログ)の上部に表示された記号を介した「D」及び「M」の欧文字からなる商標である。 別掲3(D&M文字商標2) (注)D&M文字商標2は、下記(カタログ)のボールの図形の下に表示された記号を介した「D」及び「M」の欧文字からなる商標である。 別掲4(D&M図形商標1) (注)D&M図形商標1は、下記(カタログ)の中央に表示されたD&M文字商標を中央に配した菱形の図形と犬の図形からなる商標である。 別掲5(D&M図形商標2) (注)D&M図形商標2は、別掲3におけるボールの表面に描かれた商標(D&M文字商標を中央に配した菱形の図形と犬の図形からなる商標)を拡大したものである。 別掲6(引用登録商標1ないし3) 別掲7(引用登録商標4) |
審理終結日 | 2014-05-19 |
結審通知日 | 2014-05-21 |
審決日 | 2014-06-05 |
出願番号 | 商願2009-69622(T2009-69622) |
審決分類 |
T
1
11・
255-
Z
(X25)
T 1 11・ 263- Z (X25) T 1 11・ 222- Z (X25) T 1 11・ 262- Z (X25) T 1 11・ 261- Z (X25) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
野口 美代子 |
特許庁審判官 |
高野 和行 林 栄二 |
登録日 | 2010-08-06 |
登録番号 | 商標登録第5343952号(T5343952) |
商標の称呼 | ドレーパーメイナード、ドレーパー、ドラパー、メイナード、デイアンドエム、デイエム |
代理人 | 田中 昭雄 |