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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 審決却下 Y26
管理番号 1289747 
審判番号 無効2013-890057 
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-08-07 
確定日 2014-06-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4642980号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4642980号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成14年2月28日に登録出願、第26類「針類,メリヤス機械用編み針」を指定商品として、同年12月12日に登録査定、同15年2月7日に設定登録されたものであり、その後、同24年10月9日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に該当し、その登録は無効にされるべきものである。
2 本件商標が無効とされるべき具体的理由
(1)本件商標は、別掲1のとおり、「ソーホー」の片仮名と「双鳳」の漢字との二段書きからなり、第26類「針類,メリヤス機械用編み針」を指定商品として、平成15年2月7日に登録されたものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、請求人が製造している商品「針」の包装紙に表示されている「双鳳」の文字である。
(3)本件商標と引用商標との対比
引用商標を使用している商品は、「針」であり、本件商標の指定商品である「針類,メリヤス機械用編み針」と同一の商品といえるものである。
また、本件商標と引用商標とは、「双鳳」の文字部分が共通し、本件商標の構成中の「ソーホー」の片仮名も、引用商標と称呼を同一とする類似商標である。
したがって、本件商標は、引用商標と同一及び類似の商品について登録された類似の商標である。
(4)引用商標の周知性
ア 引用商標は、請求人が先代より継続して使用しているものであって、昭和10年から針製品の製造、販売を始めた株式会社山本製針所(以下「山本製針所」という。)の製造した製品について使用されていたものであり、該製品の包装紙(その拡大図を含む。)には、引用商標とともに、「昭和10年に誕生」と表示されている(甲第4号証及び甲第5号証)。
その後、請求人は、昭和26年6月に先代を引き継ぎ、山本製針所を設立して、同所により針製品の製造、販売を行っていた。
イ 昭和36年4月1日の新聞記事(甲第6号証)には、「生産を計画したのが昭和五年、発売を始めたのが同十年、当時の輸入品防止、国産品愛用政策に乗って国内市場を独占するようになった。この時代まではメリケン針はすべて輸入に頼り、おもにイギリス製の象印カーベーバード(KIRBY BEARD)が世界一のメリケン針として日本でも愛されていた。・・・昭和十四年の象印の輸入禁止をみる前に、双鳳の名は広くテーラー方面へ定評をもって迎えられるようになった。発売と同時に販売は東京に八社、大阪に八社、名古屋に二社の各代理店をおきこれを双鳳会と名付けて体制を固め、これは今日まで続いている。現在の生産量は需要量と見合わせて月産一〇〇万本、第二次大戦中は二〇〇万本をオーバーしたこともある。」とあり、この記載からも、引用商標が針業界を独占していた著名商標であって、山本製針所のブランドとして広く日本全国に知られていたことが分かる。
ウ 山本製針所は、昭和56年3月31日の株主総会の決議により解散が決定され、同58年3月に清算が終了した(甲第7号証)。この際、請求人が山本製針所の業務を引き継ぎ、山本製針所の商号名にて「双鳳」の文字及び「二羽の鳳凰の図形」の商標を使用して針製品の製造、販売事業を行い、現在まで継続している(甲第8号証)。
現在、引用商標を付した商品は、店頭での小売(甲第9号証)のほか、「Amazon」や「楽天」におけるネットショップにおいても販売されている(甲第10号証及び甲第11号証)。
(5)不正競争の目的
ア 請求人と被請求人とは、以下に示すとおり、請求人が製造する引用商標を付した商品「針」を被請求人が受注し、販売する関係にあり、請求人の周知商標について、被請求人が商標の使用を許諾されている関係であった。
(ア)甲第12号証は、昭和47年に、請求人が被請求人の要求に応じて、引用商標を付した「針」を納品した納品書の一部である。
(イ)甲第13号証の1ないし6は、平成13年に、請求人と被請求人との間で、引用商標を付した商品の取引に使用された売掛伝票の一部である。
(ウ)甲第14号証の1ないし9は、平成13年に、請求人と被請求人との間で、引用商標を付した商品の取引に使用された配送伝票の一部である。
(エ)甲第15号証ないし甲第17号証は、それぞれ平成16年3月29日、同年9月10日及び同年12月2日に、請求人が被請求人の要求に応じて、引用商標を付した「針」を納品した際の受領書である。
イ 被請求人は、周知商標主である請求人から周知商標「双鳳」の使用を許諾された使用権者であったにもかかわらず、請求人に無断で本件商標を出願し、登録を得ており、「双鳳」が周知商標であることを知らずに出願をしたとはいい難い。
(6)除斥期間について
本件商標は、上記のとおり、不正競争の目的で商標登録を受けたことが明らかであるから、除斥期間の適用はない。
3 まとめ
以上のとおり、引用商標は、昭和10年から現在に至るまでの78年間、我が国において継続して使用され、新聞への掲載、店頭販売、インターネット販売を通じて、全国の需要者に広く知られた周知商標である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 引用商標の周知性について
(1)引用商標は、商標登録第317594号に係る登録商標(別掲3)であり、請求人が代表取締役である山本製針所が所有していたもの(乙第2号証)であるが、該商標権は、昭和57年7月8日に山本製針所から被請求人に譲渡され、その移転登録申請は、同年9月1日に行われ、同年10月25日に登録された(乙第1号証及び乙第3号証)。これにより、被請求人は、本件商標を指定商品について独占排他的に使用することができるようになったので、被請求人の許諾を得ない限り、他人による本件商標の使用が認められないことは明らかである。
(2)甲第8号証は、下水道設備に関する「氏名変更等届出書」であり、これをもって、請求人が山本製作所の事業全部を引き継いだことを示しているとはいえない。
また、仮に、請求人が上記事業を引き継いだとしても、商標登録第317594号の商標権は、清算手続完結日(昭和58年3月7日)前の昭和57年7月8日に被請求人に譲渡されているので、該引継ぎの対象とならないことは明らかである。
したがって、上記商標権の移転登録以降においては、「審判請求人の周知商標について、被請求人が商標の使用を許諾されている関係であった.」旨の請求人の主張は、認められない。
2 不正競争の目的について
(1)被請求人が商標登録第317594号の商標権の移転を受けた時点において引用商標が周知商標であれば、その周知商標主は、被請求人となり、また、その商標権が存続している間は、既に述べたとおり、被請求人の承諾がない限り、他人が該商標権に係る登録商標を使用することはできないので、この間において周知商標となれば、当然に被請求人が周知商標主となり、さらに、被請求人の使用継続により、本件商標の登録出願までの間に周知商標となっていれば、被請求人が周知商標主となることは明らかである。
そうとすれば、周知商標主は被請求人であると解されるので、本件商標は、商標法第4条第1項第10号にいう「他人の業務に係る・・・周知商標」には該当しないものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。
(2)商標登録第317594号の商標権は、平成元年6月14日に、存続期間満了により消滅した(乙第1号証)が、被請求人はそれに気付かず、該商標権に係る登録商標の使用を継続していた。その後、被請求人は、平成14年に該商標権の更新手続を失念したことに気付き、その代替として、本件商標を出願し、登録を受けた。
上記した本件商標の出願経緯からすれば、被請求人に不正競争の目的が存在しないことは明らかであり、また、本件審判の請求は、本件商標に係る商標権の設定登録日(平成15年2月7日)から5年を経過した後にされたものであるから、本件審判は、商標法第47条第1項の規定により、その請求をすることができないものに該当する。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすることはできない。

第4 当審の判断
1 商標法第47条該当性について
商標法第47条第1項は、商標登録が同法第4条第1項第10号に違反してされたとの理由により、同法第46条第1項に基づき、該商標登録の無効の審判を請求するときは、それが不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除き、該商標登録に係る商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、その請求をすることができない旨規定しているところ、本件商標は、前記第1のとおり、平成15年2月7日に設定登録されたものであり、また、本件審判の請求は、審判請求書に照らせば、該設定登録の日から5年を経過した後の同25年8月7日にされたものであって、本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたことを無効事由とするものであるから、本件審判の請求については、本案の審理をするに先立ち、本件商標が不正競争の目的で商標登録を受けたものであるか否かについて、以下検討する。
(1)不正競争の目的について
ア 請求人は、不正競争の目的につき、証拠方法として、甲第12号証ないし甲第17号証を提出しているところ、これらからは、以下の事実が認められる。
(ア)甲第12号証は、昭和47年に、請求人が、被請求人の要求に応じて、引用商標を付した「針」を納品した納品書の一部とされるものであるところ、これには、「47年7月16日」の記載、納品書に係るあて先として「越前屋多崎株式会社」の記載、発行元として「株式会社山本製作所」の記載があるほか、「品名」の欄に「双鳳メリケン針 9」及び「双鳳メリケン針 8」の記載があり、それらに応じた数量の記載及び合計金額の記載がある。
(イ)甲第13号証の1ないし6は、平成13年に、請求人と被請求人との間で、引用商標を付した商品の取引に使用された売掛伝票の一部とされるものであるところ、これらには、平成13年1月ないし6月の間の「振替伝票」であること及び借方科目、貸方科目、金額等の記載はあるものの、該取引に係る商品に引用商標が付されていた事実を示す記載はない上、そもそも該伝票が請求人と被請求人との間の取引に係るものである旨の記載も見当たらない。
(ウ)甲第14号証の1ないし9は、平成13年に、請求人と被請求人との間で、引用商標を付した商品の取引に使用された配送伝票の一部とされるものであるところ、これらのうち、甲第14号証の1、3、4、6ないし9には、平成13年の1月、2月、4月及び6月に、広島市南区在の「山本製針所」から「越前屋多崎株式会社」へ商品「針」が荷送りされた旨の記載はあるものの、該商品に引用商標が付されていた事実を示す記載はない上、そもそも該伝票が請求人と被請求人との間の取引に係るものである旨の記載も見当たらない。
なお、甲第14号証の2については、請求人又は被請求人のいずれに係る表示も見当たらず、また、甲第14号証の5については、荷送人として、被請求人に係る表示はあるものの、請求人に係る表示は見当たらない。
(エ)甲第15号証ないし甲第17号証は、それぞれ平成16年3月29日、同年9月10日及び同年12月2日に、請求人が、被請求人の要求に応じて、引用商標を付した「針」を納品した際の受領書とされるものであるところ、甲第15号証には、平成16年3月29日に、「越前屋多崎株式会社」の川本氏から「山本製針所」の山本社長にあてて、同日に別紙記載のメリケン針を受領した旨の記載等はあるものの、該メリケン針に引用商標が付されていた事実を示す記載はない。
また、甲第16号証には、平成16年9月10日に、「越前屋多崎株式会社」の川本氏から「山本製針所」の山本社長にあてて、別紙記載のメリケン針を入庫する旨の記載等はあるものの、該メリケン針に引用商標が付されていた事実を示す記載はない。
さらに、甲第17号証は、甲第16号証に係る別紙と同じ体裁からなる平成16年12月2日付けの入庫明細表であるものの、そこに引用商標が付されていた事実を示す記載はない。
イ 上記(ア)ないし(エ)で認定した事実によれば、山本製作所と被請求人との間で、昭和47年に品名を「双鳳メリケン針」とする商品の取引がなされ、その後、平成13年及び同16年に、商品「針」又は「メリケン針」に係る取引がなされたことはうかがえるものの、これらをもって、本件商標が不正競争の目的で商標登録を受けたものということはできない。
その他、請求人の主張及び同人の提出に係る証拠を総合してみても、被請求人が、本件商標について、不正競争の目的をもって商標登録を受けたと認めるに足る事実は見いだせない。
(2)小括
上記(1)によれば、被請求人は、引用商標の存在を知っていたとはいい得るものの、本件商標につき、不正競争の目的をもって登録出願をし、商標登録を受けたとは認めることができない。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、不正競争の目的で商標登録を受けたと認めることができないものであるから、本件商標の登録が商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるとの理由に基づく本件審判の請求は、同法第47条第1項の規定により、請求することのできる期間を経過した後にされたものといわなければならない。
したがって、本件審判の請求は、不適法なものであって、その補正をすることのできないものであるから、商標法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 引用商標

(色彩については、原本参照のこと。)

3 登録第317594号商標


審理終結日 2014-02-26 
結審通知日 2014-03-03 
審決日 2014-05-22 
出願番号 商願2002-15107(T2002-15107) 
審決分類 T 1 11・ 25- X (Y26)
最終処分 審決却下  
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 田中 敬規
梶原 良子
登録日 2003-02-07 
登録番号 商標登録第4642980号(T4642980) 
商標の称呼 ソーホー 
代理人 磯野 富彦 
代理人 山下 浩司 
代理人 伊藤 文彦 
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