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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900220 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
管理番号 1285562 
審判番号 無効2013-890045 
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-06-28 
確定日 2014-02-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第5567538号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5567538号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5567538号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成23年8月8日に登録出願、第35類「広告,販売促進・営業促進のための展示会・見本市・イベント・展覧会の企画・運営又は開催,ポイントカード会員の募集及び会員の管理,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,事業の管理及び運営,商業施設の事業の管理及び運営,小売事業の管理,ショッピングモール事業の管理及び運営,飲食施設の提供に係る事業の管理及び運営,商品の販売促進・役務の提供促進に関する助言及び指導,商品の販売促進・役務の提供促進のための企画及び運営,人材募集及びこれに関する情報の提供,建築物における来訪者の受付及び案内,建物の管理に関する事務の代理又は代行」及び第36類「クレジットカード・デビットカード発行者に代わってする会員の募集及びその管理,クレジットカード・デビットカードの利用金額に関する情報の提供,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,不動産賃料の回収代行」を指定役務として、平成25年3月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求める、と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第58号証(枝番を含む。なお、枝番のすべてを引用する場合は、枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 利害関係について
請求人は、福岡県粕屋郡久山町大字山田1111に所在する複合商業施設・不動産施設「TORIUS」(以下「本件施設」という。)を三井住友信託銀行株式会社(旧名称:中央三井信託銀行株式会社、以下「中央三井信託銀行」という。)から一括賃借しており、かつ、請求人が出願した商願2013-31008について、本件商標が引用されていることから、本件審判を請求する利害関係を有する者である。
2 無効の理由
本件商標は、以下の理由により、商標法(以下「法」という。)第3条第1項柱書の要件を具備しないのもかかわらず、さらに、法第4条第1項第15号、同第19号及び同第7号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は、法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
(1)本件施設を取り巻く権利関係等について
ア 本件施設は、平成8年7月1日に設立され(設立当初から平成18年4月までの名称は「トリアス久山」)(審決注:「平成8年7月1日」は、本件商標権者が設立された日付であり、本件施設の開業は、平成11年4月である。甲3、甲10、甲16、乙2等)、敷地面積27万4000平方メートル、建物面積約10万平方メートルの中に約160店舗が出店する複合商業施設である(甲1)。本件施設の至る所には、「TORIUS(トリアス)」の文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)が多数表示されている(甲2)。
イ 本件施設は、当初は本件商標権者によって設立・所有され、運営が行われていたが、本件商標権者は、資金調達の目的で平成17年5月18日に、株式会社ジェイ・ウィル・パートナーズ(以下「JWP社」という。)という地域再生ファンド事業を主に行う企業の指導のもと、本件施設に関する不動産及びこれに関する一切の権利を中央三井信託銀行に信託譲渡して、信託受益権(以下「本件信託受益権」という。)を取得することを内容とする「不動産管理処分信託契約」(以下「本件信託契約」といい、同契約書を「本件信託契約書」という。)を締結し、さらに、本件信託受益権(実質的には本件施設の所有権)を、JWP社が設立した有限会社トリアスホールディングス(以下「トリアスHD」という。)に約100億円で譲渡した(甲3)。そして、本件商標権者と中央三井信託銀行の間では、同日に、別途本件施設に関する「テナント対応・地権者対応」等を、本件商標権者に委託することを内容とする「プロパティマネジメント契約」(以下「PM契約」という。)が締結され(甲4)、この日以降、本件商標権者は、プロパティマネジメント業者という立場でのみ、本件施設との関係を有することとなった。
その後、本件信託受益権は、平成20年8月には、トリアスHDから、ラサールインベストメントマネージメント株式会社(以下「ラサール社」という。)の親会社の別の子会社によって運営される投資ファンド(以下「ラサール不動産ファンド」という。)が出資する久山プロパティー特定目的会社(以下「久山プロパティー」という。)に譲渡され、本件施設は、久山プロパティー及びその資産管理業務受託者であるラサール社の指示により、中央三井信託銀行から、同じくラサール不動産ファンドが100%出資する有限会社トリアスマネジメント(請求人:甲46)に対して一括して賃貸され、その結果、ラサール不動産ファンド、請求人及びラサール社が本件施設の実質的な所有者・運営者・管理者となった。
ウ 平成20年8月から平成23年2月28日までの本件施設の権利関係の全体像は、以下のような関係にあった(甲5)。
(ア)トリアスHDが所有していた本件信託受益権は、久山プロパティーに譲渡されたことから(1)、その後は、久山プロパティーが信託受益権者として中央三井信託銀行から信託配当((2):具体的には本件施設のテナント料等)を受け、一方、中央三井信託銀行は久山プロパティーから信託報酬(3)を受けている。
久山プロパティーとラサール社は、Asset Servicing and Administration Agreementを締結しており、ラサール社が久山プロパティーの資産管理業務(アセット・マネジメント業務)を提供し、久山プロパティーは当該業務に対する報酬をラサール社に支払っている(4)(5)。中央三井信託銀行は、信託を受けた結果、形式的に所有権を有する本件施設を、請求人にマスターリースしており(6)、施設に出店しているテナントに対しては、請求人がサブリース契約を行っている(7)。一方、中央三井信託銀行と本件商標権者の間では、本件施設のPM契約が締結され、中央三井信託銀行が本件商標権者に施設のテナント対応・地権者対応等を委託してその報酬を支払う一方(8)、本件商標権者は、本件施設の実質的な所有者である久山プロパティーの資産管理者(アセット・マネージャー)としてのラサール社からの運営指示・決済に基づいて(10)、本件施設の管理(テナント対応、地権者対応等)を行っていた(9)。
(イ)上記(ア)に示した(1)?(10)の事実を証明する(甲6?甲25)。
a.(1)?(3)の事実があったことを示す「受益権譲渡承諾依頼書兼承諾書」の写し(甲6)からは、当初委託者である本件商標権者から本件信託受益権を譲渡されたトリアスHDが、さらに久山プロパティーに本件信託受益権を売買したことが理解できる。
b.(4)及び(5)の如く、ラサール不動産ファンド、ラサール社が、本件施設を実質的に所有・運営していることを示す新聞記事の写し(甲7?甲19)は、いずれもラサール不動産ファンドが本件施設を買収したことを報じるものであり、朝日・毎日・読売といった一般紙を初め、10紙以上で取り上げられており、注目度の高さが窺い知れる内容となっている。
c.中央三井信託銀行と本件商標権者の間で締結された平成20年8月28日付け「プロパティマネジメント業務契約変更契約書」(本件信託受益権が久山プロパティーに譲渡されたことを契機に、甲4のPM契約を変更したもの。以下「PM変更契約」という。)の写し(甲20)には、(6)?(9)の事実について、PM変更契約書第1条(甲乙の関係)に示され、また、(10)についても、PM変更契約書第19条(通知)中、「通知・指図の写しの交付」の項目の中で、本件施設の実質的所有者である受益者(久山プロパティー)がアセット・マネージャーたるラサール社を介して中央三井信託銀行(甲)に対して同契約に関する指図を出す場合、この指図の写しが本件商標権者(乙)に到達した時点で、中央三井信託銀行から本件商標権者へ当該指図に係る事項について同意・承諾がなされたものとみなす旨の規定がある。これは、久山プロパティーのアセット・マネージャーであるラサール社による指図が、即、本件商標権者に及ぶことを意味するものである。
d.ラサール不動産ファンドが本件施設を所有した後、初めての大型改装を行った際の新聞記事の写し(甲21?甲25)は、いずれもこの大型改装がラサール社主導で行われたことを報じるものであり、特に西日本新聞社による記事(甲25)では、ラサール社の商業部門最高責任者にインタビューをし、改装のねらいや今後の戦略について尋ねている。このような記事は、ラサール不動産ファンド及びラサール社が本件施設を実際上所有・運営していなければ作成されるはずのないものである。
(ウ)以上のように、本件商標権者は、平成17年5月18日以降は、単に本件施設のプロパティマネジメント業者としての地位にいたにすぎず、この点は、平成20年8月以降、ラサール不動産ファンド及びラサール社が本件施設の実質的な所有者・運営者となった後も全く変わっておらず、本件商標権者は、本件施設の運営に関する意思決定を行う立場になかった。
一方、本件商標権者は、本件施設の実質的な所有者・運営者が、自身から他者に移った後においても、本件施設の名称に引き続き「TORIUS」が用いられることを、当然に了解していた。だからこそ、かつて本件商標権者が「TORIUS」の文字を含む4件の登録商標(登録第4171814、4176973、4181268、4221640号:いずれも存続期間満了により商標権消滅。)を有していた当時、関係者間に商標権に関する問題は生じていなかったのである。本件商標の拒絶査定不服審判(不服2012-18081、以下「本件査定不服審判」という。)において提出された平成24年10月19日付け手続補正書によれば、本件商標権者は「ショッピングセンターのビジネスそのものは、なお自社で行うことを目的としていたので、平成17年5月18日の時点では、登録商標権を信託受益権の対象としなかった」とし、また、更新登録申請を行わなかったのは「過誤によるもの」である旨主張するが、現実には、上述のとおり、本件商標権者自らが本件施設の運営に関する意思決定を行う立場になかったため、もはや商標権の保有は不要であるとして、更新登録を行わなかったのが実情といえる。
(エ)本件施設のこれまでの経緯は、第三者であるライターが、株式会社データ・マックスが開設するウェブページ「ネットアイビーニュース」(甲26)において発表した経済小説「トリアス久山物語『夢の始終』(1)?(46)」に詳しく記載されている(甲27)。
(2)「TORIUS」の周知・著名性について
ア 新聞報道
本件施設は、平成8年7月1日(審決注:平成11年4月の誤記と認める。)の開設当初は「トリアス久山」の名称であったが、平成18年4月から、「TORIUS」に名称が変更され、現在に至っている。
本件施設は、前記のとおり、日本国内でも有数の巨大商業施設・不動産施設であり、九州で初めて米資本「COSTCO(コストコ)」をテナントとするなど、「トリアス久山」の名称での開業当初から、大いに注目を集める存在であった。
そして、ラサール不動産ファンドがJWP社から本件施設の実質的な所有権を取得した平成20年8月には、新聞記事で大々的に取り上げられた(甲7?甲19)。ラサール社の不動産ファンドとしての実力・能力が背景にあったからこそ、このように大々的に取り上げられたのであって、本件施設のラサール社の取得は、流通業界、不動産業界の取引者・需要者には広く知られたものといえる。
イ 平成20年8月以降における広告・宣伝活動
(ア)本件施設では、毎月継続して、「Event Calendar」と題したチラシを配布し、需要者に日々の情報を提供している(甲28、甲29)。平成21年7月に配布された「サマーバーゲン」の開催に関するチラシ(甲30)には、配布された数・地域等に関する証拠はないが、平成22年の宣伝・販売促進実績に関する資料(甲31)によれば、チラシの配布数は、多い月だと50万部、少ない月でも10万部、平均すると月30万部(年間360万部)を継続して配布している。
(イ)テレビ広告も定期的に行っており、平成22年度は4月から5月にかけてと、11月から12月にかけて集中的に放映している。その他、「仮面ライダーショー」、「プリキュアショー」、「若手芸人ショー」などのイベントを毎月複数回にわたり開催しており、単なる商業施設に止まらない、一種の娯楽施設・レジャーランドのような印象を需要者に与え集客を図っている。
(ウ)平成23年4月から5月にかけての宣伝広告実績(甲32?甲46)
a.4月21日から5月7日にかけて「テレビ西日本」と「福岡放送」の2つのテレビ局で、テレビ広告がそれぞれ毎日平均3回程度を継続して放映された(甲32、甲33)。なお、この期間に放映されたCMの内容を示す資料の提出はないが、参考イメージとして、以前「サマーバーゲン」用の広告をした際の広告案の写しを添付する(甲34)。「TORIUS」の文字が両面に表示されるとともに、ナレーションでも「トリアス」の名が呼ばれている。
b.4月に配布された本件施設誕生12周年記念フェアーに関するチラシ(甲35)には、表紙中央に描かれた白い風船の中に大きく「TORIUS」と表示されているほか、商標的な態様で複数「TORIUS(トリアス)」が使用され、本件施設内のレストラン・店舗・映画館等が紹介されている。25万5千部が作成され、本件施設の半径10km圏内において、西日本・朝日・読売・毎日の各新聞に折込み広告がされた(甲36?甲38)。
c.4月及び5月に新聞折込みで配布された、本件施設内に設けられている生鮮食料品店「トリアス生鮮市場」に関するチラシ(甲39?甲43)のいずれにも、「トリアス」が使用されており、西日本・朝日・読売・毎日の各新聞に、4月中だけで計22万枚を配布した(甲44、甲45)。
d.以上のように、4月の1ヶ月間だけでも広告費の合計は約1140万円に上り、ラサール不動産ファンドが本件施設の実質的な所有者となって以降、多額の広告費を毎月支出している状況である。
ウ 以上のとおり、本件施設は、平成18年8月の段階で、全国紙・地方紙を問わず大々的に取り上げられ、その後も継続的かつ大量な広告宣伝活動が行われた。そして、このようなラサール社等の努力によって、本件施設の業績が大幅に改善・向上したのは、ネット上の経済小説に記載のとおりである(甲27)。
かかる状況からすれば、引用商標は、請求人及びラサール社を中心とする関係会社の商業施設・不動産施設の事業を表示するものとして、その事業の取得時である平成18年8月当時から本件商標の出願日においては、周知・著名となっていた。
(3)本件商標権者と中央三井信託銀行の訴訟、及び本件商標の登録がなされた真の目的について
ア PM変更契約の解除
本件商標権者がプロパティマネジメント業者となって5年以上が経過した平成22年8月31日、中央三井信託銀行は本件商標権者に対し、PM変更契約書(甲20)第5条第2項の規定に基づき、PM変更契約を平成23年2月28日をもって解約する旨の通知を行った(甲48)。
これに対し、本件商標権者は、何ら正当な理由がないにも関らず、上記契約の解約の無効を主張し、平成22年11月18日付けで中央三井信託銀行に対し、訴えを提起した(平成22年(ワ)第42975号)。この訴えに対して、平成24年11月26日付けで、請求棄却の判決がされ(甲49)、さらに、控訴審においても同様の判断がされた(甲50)。その後、本件商標権者は、上告して争っていたが、平成25年10月1日付けで、その上告を棄却する旨の決定がされた(甲58)。
イ 本件商標の出願
本件商標権者は、上記アのPM変更契約の解約通知が発せられた3ヶ月半後(上記民事訴訟(第一審)が提起された約20日後)の平成22年12月15日に、本件商標と同一商標の出願(商願2010-97223、以下「第1出願」という。)を行った。第1出願について、ラサール社は平成23年6月24日付けで刊行物等提出書を提出し、最終的には、法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するとした拒絶査定が確定した(甲47)。本件商標の出願は、第1出願について刊行物等提出書が提出された約1ヶ月後の平成23年8月8日にされた。第1出願が拒絶される蓋然性が高いことを察知した本件商標権者が、新たな対抗手段として、本件商標の出願を行ったことは明らかである。
そして、請求人の上記主張が妥当であることは、上記訴訟(平成22年(ワ)第42975号)における本件商標権者の和解提案から裏付けることができる。本件商標権者は、平成23年12月9日付けで「和解メモ」を提示、その中で、第1出願及び本件商標の出願に要した費用と引き換えに、これら出願の取下を提案した(甲51)。さらに、平成24年1月11日付け「和解提案について(改訂版)」においても、これら出願のために要した費用の支払いと引き換えに、これら2件の出願の取下を提案した(甲52)。これらの事実は、第1出願及び本件商標の出願が、本件商標権者自ら使用する予定なく、専らPM変更契約の解約に対する対抗手段として行われたものであることを、本件商標権者自らが認めたものに他ならない。
(4)法第3条第1項柱書について
第3条第1項柱書の趣旨は、「当初から自ら使用するものでない商標について排他独占的な権利である商標権を設定するのは妥当ではない」との考えによるものとされている(甲53)。
この点、本件商標は、前記(3)のとおり、本件商標権者自らがその出願の過程において、当該商標の出願等に要した実費と引き換えにその取下を提案してきており(甲51、甲52)、出願当初において本件商標を現に使用する目的がなかったことは明白である。
したがって、本件商標は、本件商標権者が「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」でないことは明らかであって、法第3条第1項柱書の要件を具備しないものである。
(5)法第4条第1項第15号について
引用商標は、本件商標の出願日の時点において、ラサール社及びその関係会社を中心とするグループが提供する商業施設・不動産施設に関する役務を表示するものとして周知・著名となっていた。本件商標権者は、かつてはプロパティマネジメント業者として本件施設に関わっていたが、現在は、ラサール社及びその関係会社を中心とするグループとは、組織的にも経済的にも何ら関係を有するものではない。
そして、本件商標の指定役務は、いずれも「商業施設・不動産施設」の運営・管理に何らかの形で関連を有するものであり、請求人及びラサール社を中心とする関係会社と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかのように、出所の混同を生じさせるおそれがあるものといえる。
したがって、本件商標は、法第4条第1項第15号に該当する。
(6)法第4条第1項第19号について
本件商標が、他人の周知・著名商標と同一類似の商標に使用するものであることは、前記のとおりである。
本号にいう「不正の目的」とは「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的」などを意味するとされているところ、本件商標は、本件商標権者に対して中央三井信託銀行より平成22年8月31日付けPM変更契約の解約通知後である平成23年8月8日に出願されたものである。本件商標の出願は、契約に基づいた中央三井信託銀行の正当な権利行使に不当に対抗するため、ラサール社等によって引用商標の出願がなされていないことを奇貨として行われたものであり、「他人に損害を加える目的」で行われたものであることは明らかである。
特に、第一出願に対し、ラサール社が刊行物等提出書を提出したことを知った後に敢えて本件商標を出願している点は、本件商標権者が強い「不正の目的」を有することを表しているといえる(甲54参照)。
したがって、本件商標は、法第4条第1項第19号にも該当する。
(7)法第4条第1項第7号について
前記のとおり、本件商標の登録は、本件商標権者が中央三井信託銀行の正当な権利行使に不当に対抗するため、ラサール社等によって引用商標の出願・登録がなされていないことを奇貨として行われたものである。本件商標の出願経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは商取引秩序を乱し、公序良俗に反することは明白である。
加えて、本件商標権者は、本件商標の商標権の侵害を主張して、平成25年5月20日付で、ラサール社(現:ラサール不動産投資顧問株式会社)、中央三井信託銀行 、株式会社ケーファ(平成24年2月28日以降、本件施設のプロパティマネジメント業務を行う企業、以下「ケーファ」という。)の3社に警告書を発し(甲55?甲57)、商取引秩序を乱す行為を行っている。
したがって、本件商標は、法第4条第1項第7号に該当する。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)を提出した。
1 無効の理由について
(1)法第3条第1項柱書の要件を具備すること
本件商標権者は、本件商標の出願当時から、本件商標を自己の業務に係る役務について使用していた(乙2、乙5?乙7)。
このことから、本件商標権者が本件商標を出願する際、真正な使用の意思を有していたことは明らかである。
(2)法第4条第1項第15号に該当しないこと
請求人は、本件商標権者から本件商標等の使用を許諾されている立場にあり(乙4)、ライセンシー側がライセンサーに対して使用許諾対象商標をライセンシー側に帰属するものと主張することは許されない。
また、仮に、引用商標が他人の表示であるとしても、引用商標は、本件査定不服審判の審決(乙8)において適法に認定したとおり、請求人等の出所識別標識として周知性を有するものではない。
(3)法第4条第1項第19号に該当しないこと
本件商標は、本件商標権者の社名の要部である(乙1、乙2)。本件商標権者は、自己の業務について本件商標を適法に使用(乙2、乙5?乙7)しているのであり、不正の目的で商標権を取得したものではない。
また、引用商標は他人の表示として周知性を有するものでもない(乙8)。
(4)法第4条第1項第7号に該当しないこと
本件商標権者は、本件商標の採択者(乙1)であり、使用者(乙1、乙2、乙5?乙7)であり、請求人側にその使用を許諾した者(乙4)である。
本件商標は、本件商標権者がその業務上の信用を守るために過誤により消滅した商標権の回復を図って出願したものであって、何ら社会的相当性を欠くところはない。
なお、請求人は、本件施設の一括賃借人であると主張するが、これは事実に反する。請求人は「トリアス」敷地内の一部の賃借人にすぎない。
2 被請求人の主張について
(1)本件商標に係る正当使用権限の帰属主体について
本件商標は、本件商標権者が自ら企画した大型総合商業施設の事業のために考え出したネーミングであり、自己の社名とし、平成11年に本件施設をオープンし、その使用の結果、本件商標権者の商標として周知性を獲得してきたところ、平成17年5月18日に、中央三井信託銀行と本件信託契約(乙3)を締結し、同日付で本件信託受益権を他社に譲渡する信託受益権売買契約(以下「本件受益権売買契約」といい、同契約書を「本件受益権売買契約書」という。)を締結した(乙4の1)。なお、その後も本件商標権者は、プロパティーマネージャーとして、本件施設のテナント・地権者との賃貸借契約等の管理運営に携わってきた。その後、中央三井信託銀行との間で、平成23年2月に、PM変更契約が解約されるが、本件商標権者は、現在も自己の業務に本件商標を使用している(乙2、乙5?乙7)。
ここで、本件信託契約(乙3)は、不動産の管理に関するもので、大型総合商業施設としての経営資産そのものを信託の対象としたものではないから、本件商標についての商標権その他の正当使用権限は本件商標権者に留保されている。このことは、本件商標権者が所有していた商標権が受託者に譲渡された事実のないことからも明らかである。
他方、本件受益権売買契約書(乙4の1)第6条によれば、「甲(本件商標権者)は、本物件において甲が営む商業施設『トリアス久山』において甲又は甲の関連会社が所有し又は使用する、商標、サービス・マークを含む全ての営業表示又は商品表示(以下「本件商標等」という。)に関する権利を使用する権限を乙(トリアスホールディングス)に付与する。・・」と明記されている。
加えて、本件受益権売買契約の別紙2-2「甲の表明保証事項(物件)」(乙4の2)の(2)には、「・・甲は、何らの負担等なしに、本件商標等を適法に保有している。甲はいかなる第三者に対しても本件商標等を使用するいかなる権限も許諾していない。乙が本件商標等を取得し(ここで「取得」とは契約書第6条による使用権限の取得の意と解すべき)、かつ、これを利用することは、営業秘密その他の第三者の権利を侵害するものではない。甲は、本件商標等を、甲の営業を通常通りかつ現在甲が行っている態様で行うために必要かつ十分な商品及び役務について登録済みである。甲は本件商標等の使用についてこれまでに一切異議、クレーム、警告その他の請求を受けたことがない。本件商標等に類似する商標等を自己の営業又はサービスのために使用し、或いは使用する権利を有する第三者は存在しない。」と記載されている。
すなわち、乙第4号証は、本件商標権者に、本件商標の正当使用権限が帰属することを確認し、トリアスHDがその使用許諾を受けた事実を証明している。
その後、平成19年12月10日に、トリアスHDは、本件受益権売買契約上の地位を請求人の100%親会社であるラサール不動産ファンドの100%出資会社である久山プロパティーに譲渡している(甲5、甲6)。
したがって、請求人等は、契約上本件商標権者からの許諾を得ずして引用商標を使用することはできない立場のはずである。
また、これら3社の資本関係からみて、ライセンシーと密接な関係にある請求人による本件審判は、信義誠実の原則に反する行為である。
本件商標の正当使用権限が本件商標権者に帰属することは契約法上明らかである。
(2)本件商標の出願の目的について
本件商標は、当該契約上の権利義務を履行するために必要な商標権者としての地位を回復するためのものである。
ラサール社が本件施設の保有者となった後も、一般顧客に「TORIUS」ブランドを浸透させるべく、イベント実施・広告宣伝・チラシ製作折込計画指示といった販売・営業促進策の企画は、全て本件商標権者にて検討され、その内容は本件商標権者の判断に委ねられていた。
付言すれば、テナントの全てが本件商標権者にてこうした販売・営業促進行為が計画作成され、一定の予算内であれば、その展開判断は本件商標権者に委ねられていたことを周知している。また、一般顧客からの問い合わせがあった場合には、本件商標権者がトリアス管理事務所にて対応していたため、ラサールの社名など一般顧客には全く知られていないといっても過言ではない。
本件商標は、あくまでもPM変更契約の解約通知から想定される新規経営展開を予期して、ブランド確立を行う必要があることに加え、請求人等により本件商標が無断で使用されることのないよう検討した結果である。
また、本件商標権者は、PM変更契約が解約されたことにより、中核的事業を一時的にせよ失うこととなったため、他のショッピングモール向けに商業施設の管理・運営又はコンサルタントといった業務支援サービスを提供することとし、九州各地の商業施設等に対して再開発・活性化の提案を行い事業の管理・運営業務の受託を目指して活動している(乙5?乙7)。本件商標はショッピングモール等の管理・運営業務について使用する予定である。
また、こうしたプレゼンテーション活動に際して、本件商標権者は、過去の実績・経緯を示す資料として「トリアス」、「TORIUS」のロゴの入った会社案内パンフレット(乙2)を参加者に配布している。
なお、本件商標の出願の不正目的を言うのであれば、請求人の出願に係る商願2013-31008(乙9)こそ、指定役務は本件商標の指定役務と一言一句違わないから、真正な使用の意思を持って自己が使用しようとする役務を指定するものではなく、ただ本件商標に取って代わろうとする狙いのみによる出願であることは明らかである。
(3)引用商標について
請求人の提出する新聞記事、例えば、2009年10月29日付け毎日新聞(甲23)及び2009年12月2日付け西日本新聞(甲25)は、それを読む業界の人達は関心を持つことがあるにしても、本件施設を利用する一般需要者は、平成11年4月に開業された本件商標権者のショッピングモールとして利用しているのであって、以上の記事は従来の一般需要者の認識を変えるものではない。
逆に、例えば、2008年8月29日付け日本経済新聞地方経済面九州(甲7)及び同日の日経産業新聞(甲8)には、「トリアスは敷地面積二十七万四千平方メートルで約百六十の店舗が入居するショッピングモール。・・施設は引き続きトリアス(福岡県久山町)が管理する。」と報道されている。このトリアスとは、本件商標権者のことである。すなわち、当該新聞記事は、本件商標の指定役務について、本件商標が本件商標権者を指標する出所識別標識であることを示している。
甲各号証がいずれも本件商標の出願時及び登録審決時において、引用商標が請求人等の表示として、取引者・需要者間で全国的な周知性を獲得していた事実を示すものでないことは明らかである。
本件商標権者は、平成11年の「トリアス久山」開業から平成17年5月までは施設の運営者として、その後も平成23年2月までプロパティーマネジメント事業者として施設を管理する立場にあり、これら業務について本件商標を使用していたのであるから、少なくとも指定役務との関係において、本件商標は本件商標権者の商標として取引者・需要者間に広く認知されていたはずである。
平成23年2月から同年8月8日までのわずか半年足らずの間で、本件商標権者の商標と認知されていたものが請求人の商標と認知されるに至るなどということは、特段の事情がない限り経験則上あり得ないものと思料する。
3 むすび
以上の理由から、本件商標は、真正な使用の意思に基づいて出願されたもので、出願に不正な目的や反社会性はなく、引用商標は他人の周知表示に該当しないためこれとの出所の混同を惹起するおそれもないものと考える。
したがって、本件商標は、法第3条第1項柱書の要件を具備し、また、法第4条第1項第15号、同第19号及び同第7号のいずれの規定にも該当しないため、法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とされるべきものでない。

第4 当審の判断
請求人が、本件審判を請求する法律上の利益を有することについて、当事者間に争いがないので、本案に入って審理する。
1 本件施設及びこれを巡る権利関係
(1)当事者が提出した証拠(各項の括弧内に掲記)並びに請求及び答弁の理由(当事者間に争いがない事実)によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 本件施設
本件商標権者は、平成11年4月に、本件施設を「トリアス久山」の名称で、福岡県粕屋郡久山町大字山田1111に開業し、運営していた。本件施設は、敷地面積を約27万4000平方メートル、開業当初の入居テナント数を約140店舗とする複合商業施設であり(平成15年7月現在においては入居テナント数約180店舗(乙2))、九州で初めて米国の大手会社「COSTCO(コストコ)」をテナントとした。「トリアス」の名称の採択理由について、開業当時の本件商標権者の代表取締役は、「トリアスとはギリシャ語で『三位一体』を意味します。つまり『トリアス』とは地域・お客様・商業者各位が三位一体となって、新たな商業を創造し、発展させていくという願いを込めてネーミングしたものです。」と述べている(以上、乙1等)。
本件施設は、平成18年4月に、「TORIUS(トリアス)」の名称に変更された(当事者間に争いのない事実)。
イ 本件信託契約の締結
本件商標権者は、平成17年5月18日に、資金調達の目的で、中央三井信託銀行との間で、本件施設の建物及びその土地(賃借権)並びにこれらに附帯する一切の権利(以下「本件信託不動産」という。)を、本件商標権者を当初委託者とし、中央三井信託銀行を受託者とする本件信託契約を締結し、本件信託受益権を取得した(乙3)。本件信託契約に基づく信託の期間は、信託設定日(平成17年5月18日)から平成27年5月末日までである(本件信託契約書第3条)。その結果、本件信託不動産は、平成17年5月18日に、中央三井信託銀行に移転登記がされた(同第6条)。
ウ 本件信託受益権の譲渡
本件商標権者は、平成17年5月18日に、JWP社が設立したトリアスHDとの間で、上記イにおける本件信託受益権をトリアスHDに譲渡する旨の本件受益権売買契約を締結した(乙4の1)。
本件受益権売買契約書第6条において、本件商標権者は、トリアスHDに対し、本件施設において本件商標権者及びその関連会社が所有し又は使用する商標等(以下「本件商標権者等の使用商標等」という。)に関する権利を使用する権限を付与した。
また、本件商標権者等の使用商標等に関し、本件受益権売買契約書の別紙2-2の「甲(審決注:本件商標権者)の表明保証事項(物件)」(乙4の2)の(2)には、本件商標権者は、いかなる第三者に対しても上記商標等を使用するいかなる権利も許諾していない、などと記載されている。
なお、本件商標権者は、本件受益権売買契約の締結時には、「TORIUS」の文字と図形とを結合した構成よりなる4件の登録商標(登録第4171814号(平成20年7月31日存続期間満了により商標権消滅)、同4176973号(平成20年8月14日存続期間満了により商標権消滅)、同4181268号(平成20年8月28日存続期間満了により商標権消滅)、同4221640号(平成20年12月18日存続期間満了により商標権消滅))を有していた。
エ 本件信託受益権の再譲渡
トリアスHDは、平成19年12月10日に、ラサール社の関連会社であるラサール不動産ファンドが100%出資した特定目的会社である久山プロパティーとの間で、本件商標権者より譲渡された本件信託受益権を久山プロパティーに譲渡する旨の信託受益権売買契約を締結し、中央三井信託銀行は、平成20年8月28日に、当該譲渡を承諾した(甲6)。
久山プロパティーは、ラサール社との間で、アセットマネジメント契約(資産管理契約)を締結しており、ラサール社は、久山プロパティーに対し資産管理業務の提供を行っている(当事者間に争いのない事実)。
オ PM契約等
(ア)本件商標権者は、平成17年5月18日に、中央三井信託銀行との間で、本件信託契約第15条第4項(信託不動産の管理・運用業務の委託)に基づき、本件信託不動産に関し、中央三井信託銀行を委託者とし、本件商標権者を受託者とするプロパティマネジメント業務契約(PM契約)を締結した(乙3、甲4)。当該契約の期間は、平成17年5月18日から平成18年5月31日までとするものである(ただし、更新される場合がある。)。
本件商標権者の業務は、以下のとおりである(PM契約書第6条第1項(甲4)。ただし、以下のa.及びb.における「別紙3」は、本件審判において提出されていない。)。
a.マネジメント業務(詳細は別紙3「マネジメント業務」に定めるものとする)
b.賃貸業務(詳細は別紙3「賃貸業務」に定めるものとする)
c.工事管理業務
d.テナント同意取り付け業務
e.防災・防火業務
f.本件信託不動産に係る会計業務(基調、証憑整理、決算書の作成等)
g.上記に関わる付帯業務
(イ)本件商標権者は、平成20年8月28日に、中央三井信託銀行との間で、上記平成17年5月18日に締結したPM契約を変更したプロパティマネジメント業務契約変更契約(PM変更契約)を締結した(甲20)。
なお、PM変更契約における本件商標権者の業務は、上記(ア)の業務に、「地権者対応業務」が加わった(PM変更契約書第6条第1項)。
(ウ)中央三井信託銀行は、平成22年8月31日に、本件商標権者に対し、平成17年5月18日に締結したPM契約及び平成20年8月28日に締結したPM変更契約が、平成23年2月23日をもって解約により終了する旨を通知した(甲48)。
本件商標権者は、上記通知がされたことに対し、平成22年11月18日に、契約関係確認請求訴訟を東京地裁に提起した(平成22年(ワ)第42975号)が、平成24年11月26日に請求棄却の判決が言い渡され、その後、東京高裁に控訴(平成24年(ネ)第8248号)し、平成25年4月11日に控訴棄却の判決が言い渡された。その後、上記契約関係確認請求事件は、上告され、平成25年10月1日付けで、その上告を棄却する旨の決定がされた(甲49、甲50及び甲58)。
カ 請求人
請求人は、ラサール社の関連会社であるラサール不動産ファンドが100%出資した会社であり、平成17年5月18日に、中央三井信託銀行との間で、本件信託契約第15条第3項(マスターリース)に基づき、請求人をマスターレッシーとして、本件施設を一括して賃借するマスターリース契約を締結し、本件施設に入居しているテナントの間でサブリース契約を締結した(乙3)。
キ ラサール社が本件施設を取得したこと等に関する新聞報道等
(ア)平成20年8月29日付け日本経済新聞(九州)には、「福岡のトリアス/ラサールが買収/信託受益権を購入」の見出しのもと、「不動産投資顧問会社のラサール・インベストメント・マネージメントは28日、同社が組成する特別目的会社を通じて大型商業施設、トリアス(福岡県久山町)を取得したと発表した。・・ラサールは現在の不動産所有会社、トリアスホールディングスから信託受益権を購入する形で物件を取得した。今後既存施設の改装などで集客力を高める予定。」と掲載された(甲7)。
その他、平成20年8月29日付け日経産業新聞(大阪)、同日付け読売新聞(福岡)、同日付け毎日新聞(福岡・山口)、同日付け朝日新聞(福岡・山口)、同日付け西日本新聞、平成20年8月30日付け繊研新聞、平成20年9月1日付け日経不動産マーケット情報、平成20年9月1日付け日経流通新聞、平成20年9月2日付け日刊工業新聞、平成20年9月3日付け日本海事新聞、平成20年9月16日付け商業施設新聞に同様の記事が掲載された(甲8?甲19)。
(イ)ウェブページ「ネットアイビーニュース」掲載の経済小説「トリアス久山物語『夢の始終』(38)」(2011年(平成23年)9月30日)には、「・・トリアスの場合も、これまでは土地地上権と建物所有権、それに営業権を株式会社トリアスが保有していた。つまり、トリアスは、不動産を所有して店子にそれを貸しながらショッピングセンターの運営を行っていた。・・しかし、05年5月、地上権・建物所有権・営業権をすべてジェイウィルパートナーズというファンドに売却したのである。」と記載され、同(40)(2011年(平成23年)10月4日)には、「プロパティマネジャーとなった株式会社トリアスによるショッピングセンターの運営は、その懸命な努力にもかかわらず実を結ぶことがなかった。・・08年8月、奇しくもリーマンショックの直前だったが、アメリカ系の不動産ファンドであるラサールインベストメントは、トリアスの買収を発表、またトリアスは新たな時代に突入することになった。」と記載された(甲27の1及び2)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、以下のとおり認定するのが相当である。
本件施設は、平成11年4月の開業から平成17年5月18日までは、本件商標権者がその所有者として、その運営に当たっていた。しかし、平成17年5月18日以降は、本件信託契約の締結により、本件施設の建物を含む本件信託不動産は、その所有権等が中央三井信託銀行に移転された。また、本件商標権者は、平成17年5月18日に、本件信託契約より生じた本件信託受益権をトリアスHDに譲渡し、さらに、トリアスHDは、平成19年12月10日付け信託受益権売買契約をもって、本件信託受益権を、特定目的会社であり、ラサール社より資産管理業務の提供を受けている久山プロパティーに譲渡し、中央三井信託銀行は、平成20年8月28日に、これを承諾した。
一方、請求人は、平成17年5月18日に、中央三井信託銀行との間で締結したマスターリース契約により、本件信託不動産のうち、本件施設の建物について一括賃貸され、本件施設に入居するテナントとの間で、サブリース契約を締結した。
また、本件商標権者は、中央三井信託銀行との間で締結した平成17年5月18日付けPM契約及び平成20年8月28日付けPM変更契約により、請求人が一括賃借した本件施設の建物を含む本件信託不動産のプロパティマネジメント業務を受託したが、平成22年8月31日に、中央三井信託銀行より、PM契約及びPM変更契約が平成23年2月23日をもって解約により終了する旨の通知を受けた。
以上の結果、本件施設の実質的な運営は、平成20年8月28日以降、本件信託受益権を譲り受けた久山プロパティーの資産管理業務を行っているラサール社に移行し(当事者間に争いのない事実)、そのもとで、平成17年5月18日より本件施設のマスターレッシーであった請求人は、そのままマスターレッシーとしての地位を継続した。本件商標権者は、本件信託受益権をトリアスHDに売り渡した平成17年5月18日以降は、本件施設を含む本件信託不動産に係るPM契約及びPM変更契約上の管理等に関わる業務を行うプロパティマネジャーの地位にあったにすぎず、さらに、PM契約及びPM変更契約が解約された平成23年2月23日以降は、本件施設の運営並びにPM契約及びPM変更契約上の管理等に関わる業務とは、何らの関係を有しない第三者的立場にある者ということができる。
2 本件施設における商標の使用等について
(1)前記1(1)アのとおり、「TORIUS」、「トリアス」の文字よりなる商標は、本件施設が開業された当初に、本件商標権者によって採択され、平成17年5月18日まで本件商標権者が「トリアス久山」として本件施設の名称に使用していたものである(乙1、乙2)。なお、乙1(本件施設の開業に先立って作成されたとみられるテナント募集用パンフレット)には、本件施設の名称であった「トリアス久山」のほか、「トリアス」の文字が多数表示され、また、本件商標中の「TORIUS」と同一の構成態様よりなる表示も散見される。また、乙2(平成15年7月ころに作成されたとみられる本件商標権者の会社案内)には、その表紙に、本件商標中の「TORIUS」に酷似する「TORIUS」の文字が表示されているほか、本件施設の名称であった「トリアス久山」、「トリアス」の文字が散見される。
(2)本件商標権者が本件信託受益権をトリアスHDに譲渡した平成17年5月18日以降は、本件商標権者は、本件商標権者等の使用商標等をトリアスHDに使用する権限を付与した(乙4の1)。
しかし、本件商標権者等の使用商標等が具体的にいかなる商標であったのか、本件審判において提出された全証拠によっても明らかではない。
本件商標権者が本件信託受益権をトリアスHDに譲渡した平成17年5月18日時点において、本件施設の名称は「トリアス久山」であったことから、本件商標権者等の使用商標等には、少なくとも本件施設の名称であった「トリアス久山」ないし開業場所を表す「久山」を省略した「トリアス」や「TORIUS」が含まれていたこと、かつて本件商標権者が有していた4件の登録商標が含まれていたことは推測し得るところであるが、これは、あくまでも推測の域を出ないものである。
しかし、いずれにしても、本件商標権者等の使用商標等に本件商標が含まれていないことは、本件受益権売買契約締結の日付(平成17年5月18日)と本件商標の登録出願日(平成23年8月8日)とを勘案すれば明らかであるといえる。
そうすると、本件受益権売買契約書(第6条)及びその別紙2-2をもって、本件商標権者が本件商標の正当使用権限を有する旨をいう被請求人の主張は失当というべきである。
(3)平成18年4月に、本件施設の名称が「TORIUS(トリアス)」に変更され、平成19年12月10日に、久山プロパティーがトリアスHDより本件信託受益権を譲り受け、中央三井信託銀行が当該譲渡を承諾した平成20年8月28日以降は、本件施設の実質的な運営者となったラサール社が、本件商標権者より、本件商標権者等の使用商標等の使用許諾を受けていたか否か、あるいは、本件商標権者等の使用商標等を含めた本件施設の営業権の一切を譲り受けたのか否かは本件審判において提出された全証拠によっても明らかではない。また、トリアスHDと久山プロパティーとの間の平成19年12月10日付け信託受益権売買契約は、その内容がどのようなものであったのかを認めるに足りる証拠の提出はなく、当該契約が、本件信託不動産に関し、中央三井信託銀行を受託者とする本件信託契約から発生した本件信託受益権に関するものであるから、当該契約そのものに、無体財産権たる商標権の譲渡等が定められていないことは推認することができる。したがって、久山プロパティーがトリアスHDより本件信託受益権を譲り受け、中央三井信託銀行が当該譲渡を承諾した平成20年8月28日以降に、ラサール社が本件施設の実質的な運営者となったとしても、これをもって直ちにラサール社が「TORIUS」、「トリアス」の文字よりなる商標をも有していたと認めることはできない。
しかし、本件施設の名称が「TORIUS(トリアス)」である以上、ラサール社及びその関連会社が、平成20年8月28日以降、「TORIUS」、「トリアス」の文字よりなる商標を使用していたことは、チラシやテレビCMからも認めることができる(甲28?甲30、甲34、甲35、甲40?甲43)のみならず、後記3(1)認定のとおり、「TORIUS」及び「トリアス」の表示は、ラサール社及びその関連会社の提供に係る役務「商業施設の事業の管理及び運営,小売事業の管理,ショッピングモール事業の管理及び運営」等を表示するものとして、遅くとも平成22年4月ころには既に、福岡県及びその近隣県の取引者、一般の需要者の間にも広く認識されていたものということができる。
そして、本件商標権者は、平成17年5月18日から平成23年2月23日まで、本件施設を含む本件信託不動産に係るPM契約及びPM変更契約上の管理等に関わる業務を行うプロパティマネジャーの地位にあったのであるから、ラサール社及びその関連会社が、「TORIUS」、「トリアス」の文字よりなる商標を使用していたことを黙示的に許諾していたとみるのが相当である。
このように解することは、平成17年5月18日から平成23年2月23日までは、ラサール社及び請求人を含むその関連会社をはじめ、本件商標権者のいずれもが、本件施設の運営を行う上で、それぞれ重要な役割を担っていたのであるから、本件商標権者と新たな本件施設の運営者等との間に、本件施設の名称の使用を巡って紛争が生ずる余地を残すことは、本件施設の運営上の価値を損なう結果にも結びつくといえるからである。
3 そこで、次に、本件商標権者が、平成23年8月8日に本件商標を登録出願した背景的事情について検討する。
(1)本件施設等の周知性
ア 当事者が提出した証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)本件施設は、前記1(1)ア認定のとおり、敷地面積が約27万4000平方メートル、開業当初の入居テナント数を約140店舗とする大型の複合商業施設であり、九州で初めて米国の大手会社「COSTCO(コストコ)」をテナントとした(乙1)ことなどから、本件施設の開業当時は、少なくとも福岡県及びその近隣県においては、その主たる需要者である一般の消費者をはじめ、各種商品の小売業者、その他の流通業者には、関心の高いものであったと推認することができる。
(イ)本件施設の実質的な運営者がラサール社に移行する旨の発表がされた平成20年8月28日ころには、全国紙や経済新聞等10紙以上に、その旨の記事及び本件施設に関する記事が掲載された(甲7?甲19)。
(ウ)本件施設の実質的な運営がラサール社に移行した後の平成21年10月ころには、ラサール社が本件施設内の一部を改装する旨の記事が西日本新聞、日経産業新聞、毎日新聞(北九州)、読売新聞(北九州)に掲載された(甲21?甲25)。
(エ)本件施設の実質的な運営がラサール社に移行した後は、チラシやテレビを介して本件施設に関する広告をした。例えば、平成22年度の広告についてみると、新聞の折り込みチラシの頒布数は、定期的に毎月頒布するチラシがおよそ10万部であり、その他、特別売り出しや開業記念セールなどのチラシが、2月と5月を除いて、毎月約20万部から25万部頒布された。これらのチラシには、カラフルな「TORIUS」の文字が表示されている。また、本件施設内で毎月様々なイベントが行われた(以上、甲28?甲31)。
さらに、平成23年4月から5月にかけての広告において、テレビを介してのコマーシャルの費用は、540万円(甲32?甲34)であり、4月に頒布した開業12周年のチラシ数は25万部であった(甲35?甲38)。その他、本件施設内の生鮮食料品店に関するチラシも4月中に22万部頒布された(甲39?甲45)。これらチラシには、カラフルな「TORIUS」の文字又は「トリアス」の文字が表示されている。
(オ)前出経済小説「トリアス久山物語『夢の始終』(41)」(2011年(平成23年)10月5日)には、「ラサールがトリアスの買収を発表したのは2008年8月28日だった。・・そして、取得するとともに、新たなバリューアップの戦略を推進し始めた。・・これらの成果として、09年10月には11店舗からなる新ゾーンをオープンした。新たに集客の目玉となるテナントとして、アメリカのカジュアル衣料の『GAP』の新型店舗や、安価なイタリアンレストランのチェーンとして人気のある『サイゼリヤ』などをオープンした。とくに『サイゼリヤ』は、九州1号店であり、福岡の若者の話題をさらった。これらの努力の結果、トリアスの業績は初めて回復に転じた。08年以降の商業施設全体の売上高および来場者数はともに大きく上がり、10年12月期では売上高254億9,600万円(前年比17億1,800万円増)、来場者数1,057万4,000人(同比42万8,000人増)であった。」と記載されている(甲27の3)。
イ 以上によれば、本件施設は、敷地面積、入居テナント数など規模の大きさ等から、その開業当初より、一般の消費者をはじめ、各種商品の小売業者その他の流通業者の関心を集めたことが推認され、本件施設の名称である「トリアス久山」の名称ないし開業場所を表す「久山」を省略した「トリアス」の略称は、少なくとも福岡県を中心にその近隣県の需要者、取引者の間に広く認識されていたものと認めることができる。そして、その後、ラサール社が本件施設を取得し、実質的な運営者がラサール社になったとの新聞記事が10紙以上に掲載され、また、インターネットに本件施設及びその運営者の変更等に関する小説が連載されるなどしたこと、さらに、ラサール社の運営のもと、本件施設内の改装が行われたことが新聞に取り上げられ、その結果、本件施設全体の売上げ及び来客数が増大したことがインターネットに掲載された小説に取り上げられたこと、本件施設に関し、チラシやテレビ等を通じて盛んに広告をしたこと、これらに、上記のとおり、本件施設の名称が開業当初より周知であったことも併せ考慮すると、本件商標の登録出願日前である平成22年の年の初めころ、遅くとも4月ころには既に、「TORIUS」及び「トリアス」の表示は、ラサール社及びその関連会社の提供に係る役務「商業施設の事業の管理及び運営,小売事業の管理,ショッピングモール事業の管理及び運営」等を表示するものとして、福岡県及びその近隣県の取引者はいうまでもなく、同地域の一般の需要者の間にも広く認識されていたものということができ、その周知性は、本件商標の審決日である平成25年2月20日においても継続していたものと認めることができる。
(2)本件商標権者による本件商標等の登録出願等について
ア 前記(1)イ認定のとおり、「TORIUS」及び「トリアス」の表示は、本件商標の登録出願日前である平成22年4月ころには既に、ラサール社及びその関連会社の提供に係る役務「商業施設の事業の管理及び運営,小売事業の管理,ショッピングモール事業の管理及び運営」等を表示するものとして、福岡県及びその近隣県の取引者、一般の需要者の間に広く認識されていたところ、本件商標権者は、前記1(2)認定のとおり、平成22年8月31日に、中央三井信託銀行より、平成23年2月23日をもってPM契約及びPM変更契約が解約されることを通知され、その結果、平成23年2月23日以降は、本件施設の運営並びにPM契約及びPM変更契約上の管理等に関わる業務とは、何らの関係を有しない第三者的立場にあった。
イ 前記1(1)オ(ウ)のとおり、本件商標権者は、上記PM契約及びPM変更契約の解約通知がされたことに対し、平成22年11月18日に東京地裁に契約関係確認請求訴訟を提起したが、平成24年11月26日に請求棄却の判決が言い渡され、その後、東京高裁に控訴し、平成25年4月11日に控訴棄却の判決が言い渡された。さらに、上記契約関係確認請求事件は、上告され、平成25年10月1日付けで、その上告を棄却する旨の決定がされた。
ウ 本件商標権者は、上記ア及びイの状況において、平成22年12月15日に、本件商標と同一の構成よりなる商標の登録出願(商願2010-97223:第1出願)をし、平成23年8月8日には、本件商標の登録出願をした。
なお、第1出願に係る商標は、概要、ラサール社が保有し、ケーファがプロパティマネジャーとして管理運営し、取引者、需要者に広く認識されている本件施設の名称と同一又は類似するものであり、これをその指定役務に使用するときは、出所の混同を生ずるおそれがあるから、法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するとして、平成24年2月13日付けで拒絶査定がされ(甲47)、これが確定した。また、本件商標は、概要、第1出願に係る商標と同様の理由により、法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するとして平成24年6月15日付けで拒絶査定がされたが、本件商標権者は、該拒絶査定を不服として、平成24年9月18日に審判を請求したところ、審理の結果、本件施設の名称として使用されている標章は、ケーファ等の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願前より我が国の取引者、需要者に広く認識されていないから、本件商標は、法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しないとして、その登録を認めたものである。
エ 本件商標権者は、上記イの訴訟係属中であった平成23年12月9日に、「和解メモ」を提出し、さらに、同じく上記訴訟の係属中であった平成24年1月11日に「和解提案について(改訂版)」を提出し、これらの中で、本件商標権者は、第1出願と本件商標の登録出願にかかった費用の支払いと引換えにこれらの出願を取り下げることを提案した(甲51、甲52)。
オ 一方、平成20年8月28日以降、本件施設の実質的な運営者となったラサール社及びその関連会社は、本件施設の運営を中心とした役務について、本件商標を含む「TORIUS」、「トリアス」の文字よりなる商標を使用していたにもかかわらず、これら商標の登録出願をしていなかった。
4 法第4条第1項第19号該当性について
前記1?3を踏まえ、本件商標が法第4条第1項第19号に該当するか否かについて検討する。
(1)「TORIUS」及び「トリアス」の表示の周知性
前記3(1)認定のとおり、「TORIUS」及び「トリアス」の表示(これらをまとめて、以下「本件使用商標」という。)は、本件商標の登録出願日前である平成22年4月ころには既に、ラサール社及びその関連会社の提供に係る役務「商業施設の事業の管理及び運営,小売事業の管理,ショッピングモール事業の管理及び運営」等を表示するものとして、福岡県及びその近隣県の取引者、一般の需要者の間に広く認識されていたと認めることができる。
(2)本件商標と本件使用商標との類似性
ア 本件商標
本件商標は、別掲のとおり、その構成中の「TORIUS」の文字部分において、「TRIUS」の各文字については、太字で同書同大に表し、「O」の文字部分は、やや細めの円輪郭と円輪郭内を桃色で塗りつぶして表してなるものであるところ、文字全体が極めて大きく表され、全体として統一感のあるものとして看取されるといえる。また、「TORIUS」の文字部分の上段に横書きされた「トリアス」の文字部分は、細字で小さく表されており、「TORIUS」の文字部分の読みを特定したものと容易に理解されるものである。
してみると、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「トリアス」の称呼を生ずるものである。また、「TORIUS」の語は、「三位一体」の意味を有するギリシア語であるとしても、我が国においては馴染みの薄い語であり、これに接する取引者、需要者は特定の観念を有しない造語を表したと理解するか、あるいは、福岡県及びその近隣県の取引者、需要者は、本件施設を観念するとみるのが相当である。
イ 本件使用商標
本件使用商標は、「TORIUS」及び「トリアス」の文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して、「トリアス」の称呼を生ずるものである。また、観念については、本件商標と同様の理由により、これに接する取引者、需要者は、特定の観念を有しない造語を表したと理解するか、あるいは、福岡県及びその近隣県の取引者、需要者は、本件施設を観念するとみるのが相当である。
ウ 本件商標と本件使用商標との対比
本件商標と本件使用商標は、いずれも「トリアス」の称呼を生ずるものであって、観念においても、同一の文字よりなり同一の称呼が生ずるものであるから、造語を表したと理解される場合においても、観念上明らかに相違するということはできないし、また、本件施設を観念する場合は、観念同一である。
さらに、本件商標と本件使用商標は、同一の綴り文字である「TORIUS」及び「トリアス」の文字より構成されるものであるから、外観上類似するものというべきである。
したがって、本件商標と本件使用商標は、称呼、観念及び外観のいずれの点についても互いに紛れるおそれのある極めて類似性の高い商標というべきである。
(3)不正の目的
ア 前記3(2)認定のとおり、本件商標権者は、平成22年8月31日に、中央三井信託銀行より、平成23年2月23日をもってPM契約及びPM変更契約が解約されることを通知され、同通知がされたことに対し、平成22年11月18日に、契約関係確認請求訴訟を東京地裁に提起した。本件商標権者は、上記訴訟提起日から約1か月後の平成22年12月15日に第1出願の登録出願をし、また、同じく訴訟係属中であった平成23年8月8日に本件商標の登録出願をした。そして、本件商標権者は、上記訴訟において、「和解メモ」及び「和解提案について(改訂版)」をもって、第1出願と本件商標の登録出願にかかった費用の支払いと引換えにこれらの出願を取り下げることを提案した。
以上によると、本件商標権者は、本件施設を開業したものの、資金調達のため、平成17年5月18日に、中央三井信託銀行との間で本件信託契約を締結し、本件信託受益権を得、同日に、本件信託受益権をトリアスHDに譲渡し、中央三井信託銀行の委託を受けてPM契約及びPM変更契約を締結して、本件信託不動産の管理等を行っていたが、中央三井信託銀行より、平成23年2月23日をもってPM契約及びPM変更契約が解約により終了する旨の通知を受けたことにより、本件施設及びその管理等とは、一切無関係な立場におかれることを察知し、契約関係確認請求訴訟を提起し、その係属中に登録出願した第1出願及び本件商標を担保にして、当該訴訟を自己に有利に導こうとした意図があったと推認せざるを得ない。
このような経緯からすれば、本件商標権者は、そもそも本件商標を使用する意思がなく、かつ、本件商標を登録出願をする必要性がなかったにもかかわらず、本件商標の登録出願当時既に、本件使用商標がラサール社及びその関連会社の提供に係る役務「商業施設の事業の管理及び運営,小売事業の管理,ショッピングモール事業の管理及び運営」等を表示するものとして、福岡県及びその近隣県の取引者、一般の需要者の間に広く認識されていたことを知りながら、本件使用商標がラサール社及びその関連会社により商標登録がされていないことを奇貨として、本件使用商標と極めて類似性の高い本件商標の登録出願をしたものであって、その行為は、本件施設の実質的な運営者であるラサール社及びその関連会社の営業上の利益を害し、商取引上の信義則に反するものであると判断するの相当である。
したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標というべきである。
(4)以上によれば、本件商標は、ラサール社及びその関連会社の業務に係る役務を表示するものとして、取引者、需要者に広く認識されていた本件使用商標と類似する商標であって、不正の目的をもって使用する商標というべきである。
したがって、本件商標は、法第4条第1項第19号に該当する商標といわなければならない。
(5)被請求人の主張について
ア 被請求人は、本件商標は本件商標権者の社名の要部であり、本件商標権者は不正の目的で本件商標の登録を得たものではない旨主張する。
確かに、本件商標権者の会社案内(乙2)の表紙には、本件商標中の欧文字部分に酷似する商標が大きく表示され、「トリアス」の文字は、本件商標権者の名称である「トリアス株式会社」より法人組織を表す「株式会社」の文字部分を除いたものと認められる。しかし、本件商標中の欧文字部分は、開業当初より本件施設の目立つ場所に表示されていたばかりか、「トリアス」の文字は、本件施設の名称の略称として多用され(乙1、乙2)、「TORIUS」及び「トリアス」は、本件施設を表示するものとして、その開業当初より福岡県及びその近隣県の取引者、需要者に広く認識されていたことに加え、平成22年4月ころには既に、本件施設に関連したラサール社及びその関連会社の業務に係る役務を表示するものとして、福岡県及びその近隣県の取引者、需要者に広く認識されていたものであるから、本件商標に接するこれらの取引者及び需要者は、直ちに本件施設ないしこれに関連するラサール社及びその関連会社の業務に係る役務を表したと認識するというべきであって、本件施設ないしラサール社及びその関連会社と何ら関係を有しない本件商標権者が本件商標を登録出願し、登録を得ることは、前記(3)認定のとおり、不正の利益を得る目的があったと推認せざるを得ない。したがって、上記被請求人の主張は理由がない。
イ 被請求人は、本件商標権者が本件商標を登録出願した目的について、種々述べているが、要するに、(ア)本件商標は、本件受益権売買契約書第6条(乙4の1)及び同契約書の別紙2-2(乙4の2)における本件商標権者等の使用商標等の使用許諾に関連して、商標権者としての地位を回復するためのものであること、(イ)本件商標は、PM契約等の解約に伴う本件商標権者の新規事業について使用されるものであり、かつ、請求人等が本件商標を無断で使用することのないようにとられた措置であること、を主として主張したものと解される。
しかし、以下のとおり、被請求人の主張はいずれも理由がない。
(ア)について、前記2(2)のとおり、本件商標権者等の使用商標等が具体的にいかなる商標であったのかは明らかではないから、本件商標権者等の使用商標等と本件商標との関係が不明であるといわざるを得ない。仮に本件商標権者等の使用商標等に、本件商標権者がかつて有していた4件の登録商標が含まれていたとしても、当該4件の登録商標の商標権は、平成20年7月31日から同年12月18日の間にいずれも存続期間の満了により消滅したものであり、本件商標は、これより約3年から3年半の間隔をおいて出願されたものであって、その間に「TORIUS」等の文字を含む商標の登録出願をしていなかったにもかかわらず、PM契約及びPM変更契約が解約により終了する旨の通知を受け、契約関係確認請求訴訟の係属中に、本件商標を登録出願し、同訴訟を自己に有利に導こうとした意図があったといわざるを得ないのであるから、上記被請求人の「本件商標権者等の使用商標等の使用許諾に関連して、商標権者としての地位を回復するためのものである」との主張は、直ちに信用することができない。また、(イ)については、上記アのとおり、本件商標権者が本件商標を登録出願し、登録を得ることは、不正の利益を得る目的があったと推認せざるを得ない。
ウ 被請求人は、請求人の提出した証拠は、いずれも本件商標の登録出願時及び登録審決時において、本件使用商標が請求人等の表示として、取引者、需要者に全国的な周知性を獲得していた事実を示すものでない。これに対し、本件商標権者は、平成11年の「トリアス久山」開業から平成17年5月までは本件施設の運営者として、その後も平成23年2月までプロパティーマネジメント業者として施設を管理する立場にあり、これら業務について本件商標を使用していたのであるから、少なくとも指定役務との関係において、本件商標は、本件商標権者の商標として取引者・需要者間に広く認知されていた旨を主張する。
しかし、法第4条第1項第19号にいう「需要者の間に広く認識されている商標」とは、全国的に著名であることは要しないと解されるところ、前記認定のとおり、請求人の提出した証拠によれば、本件使用商標は、ラサール社及びその関連会社(請求人を含む。)の業務に係る役務を表示するものとして、遅くとも平成22年4月ころには既に、福岡県及びその近隣県の取引者、需要者に広く認識されていたものと認めることができる。これに対し、本件施設は、平成11年4月に、本件商標権者により開業され、その規模の大きさ等から福岡県及びその近隣県の取引者、需要者の関心を集め、その名称である「トリアス久山」ないし「トリアス」は、同地域の取引者、需要者に広く認識されていたものと推認されるものの、本件施設が本件商標権者によって運営されていたことが、これら取引者、需要者に広く認識されていたと認めるに足りる証拠の提出はない。また、本件商標権者が本件信託不動産のプロパティーマネジメント業者としてPM契約及びPM変更契約上の管理等を行っていたことは認められるが、それはあくまでも、ラサール社が実質的に運営する本件施設のもとで行われたにすぎず、その事実は、新聞紙上やインターネットの経済小説において掲載され、取引者、需要者の目に触れるものであった。したがって、上記に関する被請求人の主張は理由がない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、法第4条第1項第19号に違反してされたものと認めることができるから、法第46条第1項第1号により無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

(色彩については原本参照のこと。)

審理終結日 2013-12-18 
結審通知日 2013-12-24 
審決日 2014-01-17 
出願番号 商願2011-56363(T2011-56363) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (X35)
最終処分 成立 
前審関与審査官 平澤 芳行大房 真弓 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小川 きみえ
井出 英一郎
登録日 2013-03-22 
登録番号 商標登録第5567538号(T5567538) 
商標の称呼 トリアス、トリウス 
代理人 小林 十四雄 
代理人 岡村 信一 
代理人 一色国際特許業務法人 
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