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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900257 審決 商標
異議2013900125 審決 商標
異議2013900258 審決 商標
異議2013900261 審決 商標
異議2013900175 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X32
審判 全部申立て  登録を維持 X32
管理番号 1284383 
異議申立番号 異議2013-900079 
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-03-19 
確定日 2014-01-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第5543111号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5543111号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5543111号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成23年9月30日に登録出願され、第32類「アルコール分を含まない飲料,飲料水,食卓用水,容器入りの水,炭酸水(医療用のものを除く。),ミネラルウォーター,天然ミネラルウォーター(医療用のものを除く。),天然の湧き水(医療用のものを除く。),天然水(医療用のものを除く。),非薬用の天然の湧き水,ノンアルコール香料を含んだ飲料水,フルーツジュースを含んだ飲料水,炭酸ノンアルコール飲料,ノンアルコールの炭酸水,スパークリングウォーター,ソーダ水,炭酸ミネラルウォーター,炭酸の湧き水,ノンアルコール香料を含んだ炭酸ノンアルコール飲料,フルーツジュースを含んだ炭酸ノンアルコール飲料,炭酸水製造用調製品,ミネラルウォーター製造用調製品,清涼飲料,果実飲料,乳清飲料」を指定商品として、同24年11月5日に登録査定、同年12月14日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の1ないし6のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。なお、これらを一括して、以下「引用商標」という場合がある。
1 登録第3233713号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成4年10月30日
設定登録日:平成8年12月25日
更新登録日:平成18年9月5日
指定商品:
第9類「理化学機械器具,測定機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),レコード,ロケット,消防車,消防艇,自動車用シガーライター,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,計算尺,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮き袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,犬笛,家庭用テレビゲームおもちゃ,メトロノーム」
2 登録第3214442号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成4年10月30日
設定登録日:平成8年10月31日
更新登録日:平成18年7月18日
指定商品:
第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,型紙,紙製テ?ブルクロス,紙製タオル,紙製手ふき,紙製のぼり,紙製旗,紙製ハンカチ,紙製ブラインド,裁縫用チャコ,荷札,テレビ番組のガイドブック,その他の印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カ?ド,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,装飾塗工用ブラシ,封ろう,観賞魚用水槽及びその附属品」
3 登録第3200337号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成4年10月22日
設定登録日:平成8年9月30日
更新登録日:平成18年6月20日
指定役務:
第41類「放送番組の制作」
4 登録第4996354号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成17年8月18日
設定登録日:平成18年10月20日
指定役務:
第41類「ケーブルテレビの番組の制作及び配給,ペイテレビの番組の制作及び配給,テレビ番組の制作及び配給,知識又は技芸の教授,娯楽の提供,世界的なコンピュータネットワークによる双方向通信を利用したグラフィックイメージの提供,世界的なコンピュータネットワークによる双方向通信を利用した娯楽情報の提供,当せん金付証票の発売,技芸・スポーツ又は知識の教授,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」
5 登録第4996355商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成17年8月18日
設定登録日:平成18年10月20日
指定役務:
第41類「ケーブルテレビの番組の制作及び配給,ペイテレビの番組の制作及び配給,テレビ番組の制作及び配給,知識又は技芸の教授,娯楽の提供,世界的なコンピュータネットワークによる双方向通信を利用したグラフィックイメージの提供,世界的なコンピュータネットワークによる双方向通信を利用した娯楽情報の提供,当せん金付証票の発売,技芸・スポーツ又は知識の教授,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」
6 登録第5361940商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成22年4月2日
設定登録日:平成22年10月22日
指定役務:
第38類「電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」
第41類「ストリーミング方式によるインターネットを利用した画像及び音楽の提供,移動体電話による通信を用いて行う音楽及び画像の提供,娯楽の提供,コンピュータネットワークによる画像・映像・音声・音楽・ゲームの提供,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,セミナーの企画・運営又は開催」

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第23号証(枝番を含む。なお、括弧内における証拠番号は、以下「甲1」のように省略して記載する。)を提出した。
1 申立人について
申立人は、雑誌「タイム」、映画会社「ワーナー・ブラザーズ」、ニュース専門チャンネル「CNN」などを擁する米国の複合企業体で著名な「タイム・ワーナー」の子会社に属し、1972年に開局されたケーブルテレビ局である。
申立人が制作した映画、ドラマ、スポーツ、ドキュメンタリーなど多くのメディア作品は、「HBO」のブランドの下に、世界中の多くの国でオンエアされており、現在では、ヨーロッパや南米、アジア諸国など150か国以上の国々で放送、配信、販売されている。
米国内では、既に約3000万世帯の契約者にHBOの作品が届けられており、特に人気のHBOのドラマ「ザ・ソプラノズ哀愁のマフィア、セックス・アンド・ザ・シティ、ザ・ワイヤー、アントラージュ・俺たちのハリウッド、トゥルー・ブラッド、ゲーム・オブ・スローン等」は、世界中で絶賛され、多数のテレビシリーズを通じて、テレビ放送やネット配信、DVDやBLU-RAY等のメディア販売などによって、多くの視聴者や需要者が「HBO」作品を目にしている。
我が国では、2007年10月からケーブルテレビの統括運営・番組供給事業統括会社で著名な「J:COM」や、2005年頃から、大手衛星テレビ局「Star Channel(東北新社)」、「FOXテレビ(FOX インターナショナル・チャンネルズ株式会社)」、「スーパードラマTV(株式会社スーパーネットワーク)」などによって、上記人気の「HBO」作品が、毎年増加傾向にある多くの契約者、視聴者に届けられている(甲9、甲19及び甲22の資料MC-1)。
また、昨今では、インターネットを通じた動画配信サービスの普及によって、海外の映画やドラマ、各種スポーツの試合など瞬時に入手することが可能になり、「HBO」作品も米国の大手動画配信サービス事業者「Hulu」などを通じて、我が国の需要者にとっても容易に入手することが可能となっている(甲10)。
最近では、衛星放送チャンネルの最大手「WOWOW」で、米国の人気歌手ビヨンセのドキュメント作品やゴールデングローブ賞ノミネート作品ドラマ「ニュースルーム」など、話題性の高い申立人の作品がテレビ放送のみならず、インターネットなどを通じて配信され、また、小学館漫画賞、アイズナー賞(アメリカ)国際賞海外アジア部門最優秀作品「20世紀少年」で話題の漫画家「浦沢直樹」氏の著名な漫画「MONSTER」が申立人によって実写化されるとの話題(テレビドラマ)が、多くの反響を呼んでいる(甲11及び甲12)。
申立人が制作、放送、配信等する作品や商品に付されている「HBO」は、申立人の著名な略称であって社標であるとともに、上記メディア作品等に使用されるメインブランドでもあり、我が国でもこのことは広く認識されている(甲13)。
特に、申立人のブランド「HBO」を、我が国で広く知らしめたのは、WOWOWを始めとする全国の地上・衛星・ケーブルテレビ各局で繰り返し放送された、HBOの大人気シリーズ作品「Sex and the city」(以下「SATC」という。)の記録的なヒットによるところが大きい。そして、2008年に公開された映画版「SATC1」は、日本興行収入17億円(全世界興行収入:約415億円)で、日本初登場第3位の金字塔を打ち立て、続編の「SATC2」でも、2010年度の日本興行収入第11位という好成績を収めている。
さらに、「SATC」の出演者による映画の宣伝やインタビューなど特番は、多くのメディアで取り上げられ、特に、続編「SATC2」のジャパンプレミアでは、招待客1000人に対して非招待客2000人もが同会場外で出演者に熱い声援を送っていた様子がライブ配信されていたことからも、我が国でいかに人気があった作品かが容易に認識できる(甲14)。
「HBO」ブランドが付された同作品の関連グッズは、多くの国々で多数販売されており、特に、我が国では、公式ライセンス商品のほか、コラボレーション企画やファッション研究家による企画商品、ひいては、旅行会社主催のロケ現場ツアー企画など商品以外のジャンルが多数販売され、同作品は、ライフスタイルなどの社会現象となっている(甲14及び甲15)。
近年、「STAR CHANNEL」で放送されたHBO作品のヒット作「ゲーム・オブ・スローンズ」も「SATC」同様、高い評価を得ており、東京お台場のダイバーシティ前の公園の巨大モニュメント「機動戦士ガンダム」跡に「ゲーム・オブ・スローンズ」の氷の試写室が完成し、そのニュースが我が国のみならず諸外国にも配信されたことも大きな話題を呼んでおり、HBOが制作する作品は、米国を始め我が国を含む世界中で高い評価を受け、売上げの上昇が示すように、ドラマ、映画制作業界のトップとして牽引している(甲17、甲18及び甲22の資料MC-4)。
2 引用商標について
申立人は、「SATC」を始めとする多くの作品及び関連商品において、引用商標を使用している。例えば、「SATC」のドラマ・映画のオープニング及びエンドロールを含む本編及び同作品の予告編にも、必ず、引用商標が掲出されており、役務の提供を通じて多くの需要者が引用商標を看取し、強く記憶に刻まれるはずである。
また、引用商標が付された作品を収録したDVDなど、多くの商品や包装にも引用商標が付されており、加えて、申立人の多くのウェブサイト、映画チラシやパンフレットなど広告宣伝物にも引用商標が付されている。
さらに、昨今では、インターネット上におけるSNSサービスも充実しており、申立人のフェイスブック、ツィッター、動画サイトのユーチューブでも引用商標が使用されている(甲19、甲20、甲22の資料MC-5ないし10及び12)。
そして、「SATC」など視聴者、需要者のライフスタイルに影響を与えるような申立人の作品については、その反響に応じた関連グッズも世界中で多数販売され、ヴァンパイアを題材にしたドラマ「トゥルー・ブラッド」では、「人工の血液」を模したジュース、イタリアマフィアを題材のドラマ「ザ・ソプラノズ」では、イタリア産のワインが本件商標の登録出願時前から販売され、いずれも引用商標が使用されている(甲20及び甲22の資料MC-17ないし23)。
その他、申立人は、現在まで30を超える世界中の国々でHBO商標とこれに関連する商標の使用を許諾するライセンスを第三者に付与しており、アパレルを始め、雑貨、宝石類など様々な商品が、申立人のウェブサイト「HBO.COM」を始め、多くの販売拠点で取引され、引用商標が使用されている(甲21及び甲22のMC-13、14、16)。
このように、我が国を始め世界中で、引用商標が申立人の本来の業務以外の商品にも使用されており、申立人の多くの作品やメディア、継続的な引用商標の使用実績等を鑑みれば、引用商標は、我が国の需要者、取引者の間で広く知られていたということができる。
なお、申立人は、引用商標を始めとする申立人の商標の積極的な保護を図るため、100か国以上に商標「HBO」の登録出願及び商標登録(以下「海外商標」という。)を行い、加えて、商標「HBO」と出所混同を生じるおそれのある第三者の商標の使用等を積極的に排除している(甲22資料MC-15)。
そして、申立人は、本件商標の本国の登録商標についても異議申立を行ったところである(甲22)。
3 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、欧文字「H」及び「O」と思しき図形の間に、黒塗りの正方形を右45度ほど傾けた図形内に一見して「動物であるカンガルー」の絵と、その左下に欧文字「B」を白抜きにした構成要素からなる図形を結合させた態様からなるものであるが、当該「H」と「O」の間に欧文字「B」を含む図形部分が重なるように構成されていることから、本件商標全体の外観から、欧文字「HBO」が看取でき、該態様から、「エイチビイオオ」の称呼が生じる。
一方、引用商標は、外観上、欧文字「HB」部分に比して「◎」部分が図形と判断できるが、商標全体から欧文字「HBO」が無理なく看取でき、これから「エイチビイオオ」の称呼が生じ得る。
また、引用商標は、映画、放送業界では高い名声を獲得しており、本件商標からは、アメリカの著名なケーブルテレビの放送局「Home Box Office」の著名な略称であって、ブランド「HBO」が観念できる。
したがって、本件商標をその指定商品に使用する場合は、引用商標の商品及び役務と出所混同が生じる可能性があることは明らかである。
加えて、申立人は、人気作品の関連商品や企画商品などの如く、引用商標をジュースやワインなどの様々な商品に使用し、多角化経営の可能性は十分考えられる。
このように、申立人が引用商標を、本来の業務以外の商品等に使用して製造、販売していることが明らかであるから、例えば、申立人と何ら関係のない本件商標の商標権者が、本件商標をその指定商品に使用することは、申立人の引用商標に対して、いわゆる広義の混同が生じる可能性もある。
4 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、上記のとおり、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間で広く認識されている商標であることは、提出する証拠(甲3ないし甲19)により明らかである。
甲第23号証は、本件商標の商標権者の運営するウェブサイトのプリントアウトの写しであるが、該サイト内で商品に使用されている商標は、いずれも、やや図案化した欧文字「BROO」の上部に、「動物であるカンガルー」の絵と欧文字「B」を組み合わせた四角図形を配した態様からなる結合商標(以下「B+カンガルー図形」という。)の使用のみが確認できる。
しかしながら、本件商標の構成態様は、欧文字「HB」の間に「B+カンガルー図形」を結合させて「HBO」と取引者、需要者に認識させなければならない理由は、該サイトからは確認できず、あたかも申立人の引用商標の高い業務上の信用にただ乗りをするために本件商標を登録出願したとしか考えられないものである。
そして、本件商標は、引用商標と同一の「エイチビイオオ」の称呼が生じ、観念上もアメリカの著名なケーブルテレビの放送局「Home Box Office」の著名な略称であって、申立人の商標「HBO」が想起できるため、本件商標は、引用商標と類似するものである。
したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用するものである。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、籠文字風に図案化された「H」と「O」の間に、該文字に左右の角がかかるように黒色菱形を配し、その内にカンガルー様の白抜き図形を表し、該図の下に白抜きの「B」の文字を配してなるところ、各図形構成部分が結合し、構成全体がまとまりよく表されているものである。
そうとすると、本件商標は、その構成中の文字に着目されるというよりは、構成全体が不可分一体の図形として認識されるものというべきであるから、特定の称呼及び観念を生じることのないものといえる。
2 引用商標
引用商標1ないし3及び6は、別掲2のとおり、太字の「HB」に続く「◎」が図案化されているものの、最近の文字のデザイン化傾向からすれば、容易に「HBO」の欧文字を表したものと理解されるから、その構成文字に相応して、「エイチビイオオ」の称呼を生じ、特定の観念を生じることのないものというのが相当である。
また、引用商標4及び5は、別掲3及び4のとおり、太字の「HB◎」とその下段に左右先端を先細りにした横線を配し、或いは、「S」の上部部分を横長に表し一種の図形のような線を配し、そして、その下段に「HiTS」及び「Ignature」の文字を3段に書してなるところ、その構成文字の書体が相違していることに加え、中央に横線を配してなることにより上段に表された「HB◎」と下段の文字が視覚的に分離して看取されるというべきであり、該構成態様からは、上段の「HB◎」部分に着目して取引されるといえるから、上記引用商標1ないし3及び6と同様に、太字の「HB」に続く「◎」が図案化されているものの、最近の文字のデザイン化傾向からすれば、容易に「HBO」の欧文字を表したものと理解されるから、その構成文字に相応して、「エイチビイオオ」の称呼を生じ、特定の観念を生じることのないものというのが相当である。
3 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とは、それぞれ上記のとおりの構成からなるものであるから、外観上、これらが互いに紛れるおそれはない。
また、本件商標からは、特定の称呼は生じるとはいえなく、引用商標からは、「エイチビイオオ」の称呼が生じるものであるから、両者は、称呼上、類似するとはいえない。
さらに、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じることのないものであるから、観念上、両商標を比較することはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較することのできないものであるとしても、称呼において類似するとはいえなく、外観において著しい差異を有し、十分に区別できるものであるから、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
申立人の提出した証拠によれば、申立人は、米国タイム・ワーナー傘下の1972年に開局されたケーブルテレビ局「Home Box Office」であって、その略称が「HBO」と認められる。
そして、申立人は、アメリカの連続テレビドラマ「SATC」を1998年から2004年に放送し、また、「シックス・フィート・アンダー」を2001年から2005年にかけて放送し、エミー賞やゴールデングローブ賞を受賞しており、該テレビドラマは、全米でヒットしたものといえる(甲14及び甲19)。
さらに、米メディア企業の2010年10月ないし12月期の決算について、タイム・ワーナーが発表したところによると、同社の純利益は、前年同期比22%増となり、特に有料チャンネルHBO、総合編成局TBSやTNTなどを含むテレビ部門の売上高は、加入者数の増加に加え、広告収入やコンテンツ収入の拡大がある。また、2011年3月日本貿易振興機構作成に係る「米国におけるコンテンツ市場の実態」中、「テレビ番組製作会社」の項(23頁)には、「米国には約500社のテレビ製作会社があり、2010年の年間総売上高は550億ドルで、この2年間で約4.3倍増えている。・・・主要な事業者はNBCユニバーサル、CBSテレビジョンスタジオ、ディズニーABC、20世紀フォックス・テレビジョン、ワーナー・ブラザーズ・テレビジョングループ、ソニー・ピクチャーズテレビジョンで、この6社だけで番組製作とその二次利用流通によるテレビ番組総収入の30%を占めている。」との記載、「ホームビデオ」の項(24頁)には、「DVDが最も売れたテレビ番組は、スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスがプロデュースしたペイテレビ局HBOのミニシリーズドラマ『ザ・パシフィック』である。」との記載がある(甲18)。
一方、HBOのテレビドラマ「シックス・フィート・アンダー」は、我が国において、2005年7月から、Super!dramaTVにて放映が開始され(甲19の9)、株式会社ジュピターテレコム(J:COM)が2007年10月1日からHBOの作品を配信すること及びその当時には、HBOのドラマシリーズを毎月4本程度放送する予定であったことが認められる(甲9)。
そして、HBOは、PCへオンデマンド配信する「HBO GO」というCatch-up TVサービスを行っていたところ、2011年5月からiOS及びAndroid端末向けに番組配信サービスを開始し、配信先を拡大した(甲10の1)。
また、HBO作品は、2012年6月には、定額制オンライン動画配信サービスのHuluにより「SATC」や「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」などの全米でヒットしているドラマが配信されている(甲10)。
さらに、海外ドラマ情報ページの「SEX AND THE CITY-番組データ」には、2000年12月8日から2010年6月17日間において、WOWOWを始め、近畿ABC、北海道TVhなどのテレビ各局で放映されているといえ、該番組は、制作が「Home Box Office(HBO)」、DVD発売が「パラマウント」、日本語版制作が「ムービーテレビジョン/WOWOW」と記載がある(甲14の2)。
以上からすると、「HBO」は、アメリカにおいて、ケーブルテレビ局として一定程度知られ、HBO制作に係るテレビドラマ「SATC」が全米でヒットとなったことが伺えるとしても、「HBO」は、全米で約500社のテレビ製作会社の主要な事業者の1つであるともいい難く(甲18)、我が国において、該ヒットしたテレビドラマは、WOWOWやテレビ各局で放映されるときには、「ムービーテレビジョン/WOWOW」が日本語版制作したものとなったり、DVDにおいては、パラマウントにより発売されているといえる。そして、申立人の提出に係る証拠は、該ドラマの紹介文や出演者が注目されている内容のものであり(甲19ないし甲22)、引用商標が常に表されていることが見いだせないものであるから(甲11)、本件商標の登録出願時(平成23年9月30日)及び登録査定時(同24年11月5日)に、外国又は我が国における需要者の間において、引用商標が申立人の業務に係るケーブルテレビ局に関する役務を表示するものとして広く認識されるに至っていたということはできない。
(2)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務との関連性
本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、アルコール分を含まない飲料等である一方、引用商標の使用に係る役務は、「放送,放送番組の制作」などであるところ、両者は、販売場所及び提供場所、用途及び目的、需要者などが一致するとはいえないものであることから、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る役務との関連性はないというべきである。
また、引用商標の指定商品及び指定役務は、前記第2のとおり、本件商標の指定商品とは、類似するとはいえない。
(3)商品の出所の混同を生ずるおそれ
上記(1)及び(2)のとおり、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る役務についての関連性がなく、また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務は、同一又は類似するともいえないものであって、外国又は我が国においては、引用商標の周知性は認めることができないものであるばかりでなく、前記3のとおり、本件商標と引用商標とは類似するものではないから、これらを総合して考察すれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、申立人又は引用商標を想起、連想させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
5 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
前記4(1)のとおり、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は同人の業務に係る役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていると認めることはできないものであり、また、前記3のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。
そして、申立人の提出に係る証拠を勘案しても、本件商標権者が、不正の目的をもって本件商標を登録出願し、商標登録を受けたと認めるに足る具体的な事実を見いだすことはできない。
そうとすれば、本件商標は、引用商標の出所表示機能を希釈化させ、申立人の名声を毀損させる目的、その他不正の目的をもって使用するものとは認め難いものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1ないし3及び6)


別掲3(引用商標4)


別掲4(引用商標5)




異議決定日 2014-01-21 
出願番号 商願2011-70242(T2011-70242) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (X32)
T 1 651・ 222- Y (X32)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 厚子茂木 祐輔 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 根岸 克弘
手塚 義明
登録日 2012-12-14 
登録番号 商標登録第5543111号(T5543111) 
権利者 ブルー リミテッド
商標の称呼 エイチビイオオ、エッチビイオオ、エイチオオ、エッチオオ 
代理人 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 

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