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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1283349 
異議申立番号 異議2013-900177 
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-05-30 
確定日 2014-01-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第5565259号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5565259号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5565259号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成24年9月13日に登録出願され、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を指定商品として、同25年2月4日に登録査定、同年3月15日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その申立ての理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証(枝番を含む。なお、括弧内における証拠番号は、以下「甲1」のように省略して記載する。)を提出した。
1 本件商標の構成について
本件商標は、「広感度地デジチューナー」の文字と風景を模した図形とからなる結合商標であり、文字部分は、本件商標の下部(約1/5)を占めている。
本件商標を構成する文字の一部である「地デジチューナー」とは、地上デジタル放送用電波を受信する回路、装置をいい、「広感度」の文字は、地デジチューナーが地上デジタル放送用電波の広いエリアで受信可能であること、また、受信精度が高いことを表し、本件商標を構成する図形は、大小2台の車両及びタワーが含まれた風景を表しており、図形中の右部にあるタワーから道を走る2台の各車両へ向けて、電波を模した複数の円弧が延びている。
本件商標を構成する文字及び図形を総合勘案すると、本件商標の図形は、「タワーから地上デジタル放送用電波が発信され、車両が該電波を受信している」様子を表していると判断される。
そして、地上デジタル放送用電波を発信している図形中のタワーは、
・その平面形状は、直線状(三角形)の足元から頂部に向かって円形へと変化している
・全体的に細身の形状である
・下半分を網目形状としている
・中腹に円柱形又はすり鉢形状を3つ有し、上の形状は、下のものよりも小さくなっている
・上部1/5は、アンテナのような細長い塔芯である
・足元に広がるビルなどの約4倍もの高さを持ち、周りの風景から突出している
という特徴を有しており、後述する著名な東京スカイツリーの外形形状の特徴とほぼ同一である。
したがって、本件商標に表されたタワーは、明らかに著名な「東京スカイツリー」であり、その公益性、著名性を勘案すれば、本件商標の要部の1つは、著名な「東京スカイツリー」というべきである。
2 東京スカイツリーについて
(1)東京スカイツリーの概要
東京スカイツリーは、東京都墨田区押上に建設された世界一の高さ634mの自立式電波塔の名称であり、その開業日は、2012年5月22日であって、その事業主体は、東武鉄道株式会社(以下「東武鉄道」という。)及びその関連会社の東武タワースカイツリー株式会社(以下「東武タワースカイツリー」という。)である。また、東京スカイツリータウンは、電波塔「東京スカイツリー」、商業施設「東京ソラマチ」、オフィス施設「東京スカイツリーイーストタワー」、教育関連施設、水族館及びドームシアターなどを含む一大複合施設の名称である(甲2-1及び2)。
東京スカイツリーは、テレビ地上波の完全デジタル化に伴い、首都圏の地上デジタル放送波を送出する役割を担うため在京放送事業者6社が2003年に創設した「在京6社新タワー推進プロジェクト」のもとで建設されたタワー(電波塔)の名称であり、公益性の高い電波塔としての役割だけでなく、それ自体が観光施設として、その内部及び足元に大規模な商業施設「東京ソラマチ」などを備える一大複合施設「東京スカイツリータウン」の核となることから、墨田区業平橋・押上地区を中心とする東東京エリアという地域経済の活性化を牽引するとともに国際観光都市東京の実現に貢献することを基本理念の1つとしている(甲2-3及び4)。
なお、後述するように「東京スカイツリー」という名称、その公益性や著名性及び特徴的な外形形状などは数多くのマスコミにて報道されるとともに、特許庁において「広く知られている」と判断されている(甲2-5及び甲4-3)。
(2)東京スカイツリーの商品化事業及び知的財産の使用について
「東京スカイツリー」の事業主体である東武鉄道及び東武タワースカイツリーは、「東京スカイツリーライセンス事務局」を設けて、東京スカイツリーの開業前から知的財産の使用に関する問い合わせを受け付けており(甲2-6)、事業主体やその許諾を受けた者による商品化事業が幅広く展開されている。
東京スカイツリー内部の1階、5階、東京スカイツリー天望デッキのフロア345及びインターネット上には、事業主体によるオフィシャルショップ「THE SKYTREE SHOP」があり、土産物として一般的な商品、例えば、せっけん、携帯電話機用ストラップ、時計、文房具類、食器類、洋服、菓子など数多くのオフィシャル商品が実際に販売されている(甲2-7)。
また、東京スカイツリーを中核としたビジネス、観光の一大名所「東京スカイツリータウン」内においては、東京スカイツリーの足元に水族館、ドームシアターなどの娯楽施設が設けられ、その中核となる商業施設「東京ソラマチ」では、レストラン、雑貨など312店が出店して広範な営業活動がなされ、オフィシャル商品、ライセンス商品の土産物が数多く販売されている(甲2-8)。
実際には、この他にも数多くの東京スカイツリーに係るオフィシャル商品及びライセンス商品や様々な役務が展開され、これらの商品には、東京スカイツリーの名称やその外形形状のデザインが、事業主体の監修のもとで適法に付されている。
東京スカイツリーライセンス事務局は、東京スカイツリーに関する知的財産に係る商標・著作物などの使用について広く門戸を開いており、甲第3号証-2によれば、東武タワースカイツリーと建設地の墨田区とが、一定条件下で区内の中小企業については、東京スカイツリーの名称使用料を無料にするということで合意し、地元優遇策がとられている。
3 商標法第4条第1項第7号違反について
本件商標の要部の1つは明らかに著名な「東京スカイツリー」を表すものであり、実際の東京スカイツリーの外形形状(以下「引用標章」という場合がある。)に関する特徴は、本件商標の特徴と比較すると(甲1)、
・その平面形状は、直線状(三角形)の足元から頂部に向かって円形へと変化している
・全体的に細身の形状である
・下半分を網目形状としている
・中腹にすり鉢形状を2つ有し(第一展望台(東京スカイツリー天望デッキ)、第二展望台(東京スカイツリー天望回廊))、上の形状は、下のものよりも小さくなっている
・上部1/5は、アンテナのような細長い塔芯(ゲイン塔、約140m)である(東京スカイツリーの高さは634mであるため、実際にゲイン塔は、上部1/5を占めている)
・足元に広がるビルなどの約4倍もの高さを持ち、周りの風景から突出している
などが挙げられ(甲2-1、3及び5など)、本件商標の要部であるタワーとは、展望台の形状とその個数が異なる以外、特徴が同じである。
上述のとおり、本件商標の要部である東京スカイツリーの外形形状は、非常に特徴的なものであり、日本及び世界各国のタワーや高層建造物をみても類似する形状はない(甲3-3)。
つまり、著名な東京スカイツリーの外形形状がなければ、本件商標は、選択されなかったというべきである。
してみれば、本件商標は、東京スカイツリーが持つ著名性及び顧客吸引力に便乗する意図のもとで登録出願されたものと推認され、公益性の高い東京スカイツリーの事業主体と何ら関係のない一私人に指定商品について、独占使用を認めることは、一般的道徳観念に照らして穏当ではなく、公の秩序又は善良の風俗を害するものであるため、商標法第4条第1項第7号に該当する。
なお、著名な図形を事業主体の承諾なしに使用する行為が一般的道徳観念に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するものであることは、特許庁の審査においても首肯されている(甲4-1ないし3)。
4 商標法第4条第1項第15号違反について
事業主体によるオフィシャルショップ「THE SKYTREE SHOP」が「東京スカイツリー」の内部に設けられて、携帯電話機用ストラップ、文房具類、印刷物、洋服、茶、菓子などがオフィシャル商品として販売されており、隣接する商業施設「東京ソラマチ」では、312の店舗が出店して広範な営業活動がなされ、携帯電話機用ストラップなどのオフィシャル商品、ライセンス商品が土産物などとして販売され、また、特に文房具類、印刷物や菓子の商品パッケージには、東京スカイツリーを模した図形が数多く付されており、これらは事業主体の許諾のもとで生産、販売されたオフィシャル商品、ライセンス商品である(甲2-7及び8)。
そして、東京スカイツリー及び東京ソラマチを含めた「東京スカイツリータウン」へは、驚異的なペースで来場者が押し寄せており、2013年3月31日までに4,476万人が来場していることから、「東京スカイツリー(東京スカイツリータウン)」は、一大名所の地位を確保しつつあるとともに(甲3-1)、その中核である引用標章もマスコミ報道や来場客によりよく知られることとなった(甲2-5)。
してみれば、「東京スカイツリー」の事業主体と何ら関係のない第三者によって、本件商標が、その指定する電気通信機械器具などに使用されれば、その商品が該商標権者に対して他人である東京スカイツリーの事業主体、又はその事業主体と組織的又は経済的に何らかの関連のある者の事業に係る商品であるかのように、一般需要者に認識されて出所の混同を生じるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 むすび
上記のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消されるべきである。

第3 当審の判断
1 「東京スカイツリー」の周知・著名性について
申立人が提出した証拠によれば、東京スカイツリーは、東京都墨田区押上に建設された世界一の高さ634mの自立式電波塔の名称であって、2003年に在京6社新タワー推進プロジェクトが発足し、2008年にネーミングが決定され、2012年5月22日に開業された。事業主体は、東武鉄道及びその関連会社の東武タワースカイツリーである。また、東京スカイツリーは、開業前から話題となっており、各種新聞に東京スカイツリーに関する記事が東京スカイツリーの写真とともに掲載されている(甲2-1ないし5及び甲3-1)。
そして、東京スカイツリーの来場者数は、開業後72日目の2012年8月1日に100万人、2013年3月31日には、約554万人(開業時の想定は400万人)と順調に推移しており、同時に東京スカイツリータウン全体の来場者数は、開業日から2013年3月31日までに約4,476万人(開業時の想定は2,750万人)である(甲3-1)。
以上からすると、東京スカイツリーは、その名称及び引用標章からなる形状をも含めて広く知られているといい得るものである。
2 本件商標と引用標章との類似性について
本件商標の構成は、別掲1のとおり、図形と「広感度地デジチューナー」の文字の組み合わせよりなるところ、構成中に描かれている図形は、その図形中の右部にあるタワーから道路上の2台の各車両へ向けて、電波のようなものを模した複数の円弧が延び、各車両の屋根には円形吹き出し内に白抜きの8分音符を表し、ビル、山や木などの形状の図形を配してなり、全体として風景図形を表しているものであって、該図形部分が本件商標の要部となり得るというべきであり、本件商標の図形部分は、特定の称呼及び観念を生じるとはいえない。
また、本件商標の構成中、「広感度地デジチューナー」の文字は、辞書等に載録のない一種の造語といえるから特定の観念を生じるとはいえず、該文字に相応して「コウカンドチデジチューナー」の称呼を生じる場合もあるというべきである。
これに対し、引用標章は、別掲2のとおりの構成からなるところ、該形状は、上記1のとおり、広く知られている東京スカイツリーの形状を表したものと認識され、「トウキョウスカイツリー」の称呼及び「東京スカイツリー」の観念を生ずるものといえる。
そうすると、本件商標の図形部分及び本件商標と引用標章とは、称呼及び観念において、類似するとはいえない。
また、本件商標の図形部分のみと引用標章、又は本件商標と引用標章との外観を対比すると、両者は、それぞれ上記のとおり、外観上の特徴において明らかな差異があることから、それぞれを時と所を異にして観察しても、外観上判然と区別し得るものである。
以上からすると、本件商標は、引用標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても類似するとはいえない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号については、同号の趣旨からすれば、当該商標の構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字、図形である場合など、その商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、他の法律によって当該商標の使用等が禁止されている場合、当該商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものである場合がこの規定に該当することは明らかであるが、それ以外にも、特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も、この規定に該当すると解するのが相当である(知的財産高裁平成16年(行ケ)第7号、平成16年12月21日判決参照)。
これを本件についてみれば、本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字、図形からなるものではないし、その使用が他の法律等によって禁止されているものでもなく、特定の国民を侮辱したり国際信義に反するものでもない。
そして、上記2で認定したとおり、本件商標は、引用標章とは非類似の商標であり、本件商標が直ちに引用標章に化体した名声・名誉等にただ乗りし、不正の利益を得るために使用する目的で本件商標を出願し、登録を受けたものということはできず、本件商標権者の行為が、直ちに信義則に反するものともいえず、たとえ本件商標権者が引用標章及び申立人の存在を知りながら本件商標を登録出願したものであるとしても、本件商標が引用標章を剽窃したものであることを窺わせるような事実はなく、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるものともいえない。
してみれば、本件商標は、一般的道徳観念に反して公正な競業秩序を害するとともに、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記2の認定のとおり、本件商標は、引用標章とは、称呼、観念及び外観のいずれの点からみても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうとすると、本件商標は、その指定商品に使用したとしても、これに接する需要者をして、申立人又は引用標章を想起させるとは認められず、当該商品を申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反したものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 引用標章



異議決定日 2014-01-07 
出願番号 商願2012-74180(T2012-74180) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W09)
T 1 651・ 271- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 手塚 義明
根岸 克弘
登録日 2013-03-15 
登録番号 商標登録第5565259号(T5565259) 
権利者 株式会社JVCケンウッド
商標の称呼 コーカンドチデジチューナー、コーカンド、チデジチューナー 
代理人 藁科 えりか 
代理人 藁科 えりか 
代理人 藁科 孝雄 
代理人 藁科 孝雄 

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