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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1281437 
審判番号 取消2013-300013 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-01-10 
確定日 2013-10-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第4692398号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4692398号商標の指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4692398号商標(以下「本件商標」という。)は、「NeST」の欧文字を書してなり、平成13年3月27日に登録出願された商願2001-33820に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として,同14年9月3日に登録出願され、第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,オゾン発生器,電解槽,ロケット,遊園地用機械器具,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,鉄道用信号機,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,消防艇,保安用ヘルメット,防火被服,磁心,抵抗線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,計算尺,ウエイトベルト,ウェットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,潜水用機械器具,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,検卵器,電動式扉自動開閉装置」を指定商品として、同15年7月18日に設定登録、その後、指定商品については、商標権一部取消し審判があった結果、本件商標の指定商品中、第9類「ウエイトベルト,ウェットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター」については、その登録を取り消す旨の審決がされ、その確定登録が同21年11月13日にされ、また、同25年4月2日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成25年1月31日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「電子応用機械器具及びその部品」(以下「本件商品」という場合がある。)について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者または通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 第1答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証について
ア 乙第1号証のカタログの表紙には2001年6月の記載があるため、同時期に同書類が存在していたと推定できる。しかしながら、2001年6月は、本件商標の使用証明する期間外である。
この点につき、被請求人は答弁書において、同書類を「以後自動車販売会社への導入説明用に」使用していたと述べている。
しかしながら、同事実を説得的に証明する証拠は何一つ提出されていない。また、技術革新が頻繁に行われるIT業界において10年以上前のカタログを現在も使用しているということは、にわかには信じがたい。
したがって、カタログが現在も使用されている旨の被請求人の主張は認められない。
イ 被請求人は、答弁書において、乙第1号証の2頁目に「本件商標が指定商品(ショールーム設置用パソコン)との関連を明確にして表示されて」いると述べている。
しかしながら、乙第1号証の2頁目には「NeST」の表示、その右隣に「お客さまが自由に情報検索できるショールーム設置用パソコン」及び「NeST」の文字が写った写真が掲載されているだけで、本件商標と本件商品との関連は明確とはいえない。
むしろ、答弁書において乙第1号証は「コンピュータネットワークシステム(PROFIT-SI CAP)に関する商品説明カタログの写し」、「ネットワークシステムを構築」と説明し、「システム」という語句を用いている。
このような答弁書及び乙第1号証の記載をみると、「NeST」とは本当に「ショールーム設置用パソコン」の名称であるか、それとも顧客に車関連情報を提供する情報システム(サービス)の名称なのか(正式名称は「PROFIT-SI CAP」又は「PROFIT-4th」であると考えられる)判然としない。
ウ 乙第1号証の2頁目の写真には、「NeST」の文字を見て取れる。
しかしながら、モニター自体には「NeST」の文字が付されていることは窺われない。
モニター右上の「NeST」の文字は、商品(モニター)に付されているというよりは、同モニターを設置している机の一部又は壁に付されているように見え、この場合には、「NeST」は商品(モニター)について使用されているというよりも、情報提供システム(サービス)を表示しているとも把握・認識できる。
さらに、写真中の左上の「NeST」の文字は、後から追加したような不自然な印象を受ける。
エ 被請求人は答弁書において、「このようなカタログが対象となる需要者たる自動車販売会社に対して頒布された」と述べている。
しかしながら、乙第1号証のカタログの表紙の左上には、「社外秘」と記載されており、「社外秘」たる書類が頒布されるのか、との疑念を抱かざるを得ない。
オ 以上より、乙第1号証によっては、審判の請求の登録前3年以内に本件商標が本件商品に使用されたことは証明されない。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、「PROFIT-4th」に係るデスクトップPC及びノートPCの機種変更を知らせる書面であり、本件商標が使用されている事実について何も述べていない。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は「コンピュータネットワークシステム」について参考資料であり、本件商標が本件商品に使用されていることの証明とは無関係である。
(4)乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証について
ア 被請求人は、乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証は、その関連会社である東京日産コンピュータシステムと熊本日産自動車株式会社(以下「熊本日産」という。)との間で収受された書類(注文書付の御見積書、注文書及び請求書)であり、これら書類の頒布により、本件商標は使用されたことは証明される旨述べている。
「頒布」についての知財高裁判決によると、「商標法2条3項8号所定の標章を付した広告等の『頒布』とは、同号に並列して掲げられている『展示』及び『電磁的方法により提供する行為』と同視できる態様のもの、すなわち、標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれること」をいう(甲2)。
乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証は、東京日産コンピュータシステム及び熊本日産間という特定人間において、上記取引書類が収受されたことを証明するに過ぎず、一般公衆による閲覧可能な状態に置かれていることを証明していない。
イ 被請求人は、乙第4号証には、件名「NeST機器」、項目(名称)「NeST用UPS Smart-UP500」及び「NeST PCキッティング」と記載されているため、本件商標が本件商品に使用されていることが示されている旨述べている。
また、乙第7号証には「NeST」が明記されている旨述べている。
しかしながら、主に上記(1)イで述べたとおり、「NeST(機器)」とは何を指しているのか不明確であり、また「NeST用 UPS Smart-UP500」の「UPS Smart-UP500」も如何なるものを指しているのか不明確である。
さらに、「キッティング」は、「コンピュータや周辺機器等の導入作業」を意味するので、サービスであることは明確である。
ウ 乙第4号証の御見積書中の品目欄には、「新NeST PC」という記載と「新ショールームPC」という記載がある。
被請求人の答弁書における説明によると「NeST」とは「ショールーム設置用パソコン」を指していると思われるが、これは上記御見積書における記載と一致しない。
つまり、上記御見積書によると、「ショールーム設置用パソコン」として「新NeST PC」以外に「新ショールームPC」というものが存在するようにも考えられる。
以上より、被請求人が使用していると主張する商品は、具体的に何であるか、そもそも「NeST」は商品についての商標なのか(前述のとおり、サービスの名称とも考えられる)不明といわざるを得ない。
エ 被請求人は、上記乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証を頒布したのは、その関連会社である東京日産コンピュータシステムと述べるだけで、東京日産コンピュータシステムが使用権を有することを証明していない。
オ 以上より、乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証によっては、本件商標が、その商標権に係る使用権者により、本件商品に使用されていることは証明されない。
(5)乙第5号証について
乙第5号証は、本件商標が使用されている事実について何も述べていないので、本件商標の使用を証明するものではない。
(6)乙第8号証ないし乙第10号証について
乙第8号証ないし乙第10号証は、「キッティング作業」(サービス)についての請求書であるので、本件商品についての、本件商標の使用を証明するものではない。
(7)乙第11号証及び乙第12号証について
乙第11号証及び乙第12号証の写真の撮影日は、証拠からは明らかでない。
なお、乙第11号証及び乙第12号証についての答弁書における説明(「ショールーム設置用パソコンと同様の機能がソフトウェアにてインストールされているトレーニング用の端末を提供している」)を読むと、「NEST」とは情報提供システムというサービスを指しているように理解でき、被請求人が主張するように「コンピュータ端末」を指しているのか不明と感じざるを得ない。
(8)本件商標の使用状況について
請求人は、「NeST」及び「日産自動車」をキーワードにして本件商標の使用状況をインターネット検索エンジンを用いて調べたところ、使用が窺われるサイトは発見されなかった(甲3)。
被請求人提出の取引書類にも関わらず、本件商標が使用されているか疑義がある。
(9)まとめ
被請求人の提出した証拠によっては、本件商標が、審判請求登録前3年以内に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって本件商品に使用されていることの証明はなされていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 第1答弁
被請求人は、本件審判の予告登録前3年以内に、指定商品中、「電子応用機械器具及びその部品」に本件商標を使用しており、請求は成り立たない。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人が自動車販売会社に対して販売しているコンピュータネットワークシステム(PROFIT-SI CAP)に関する商品説明カタログの写しである。表紙に記載のとおり2001年6月に発行され、以後自動車販売会社への導入説明用に被請求人が使用していたものである。上記のシステムは、乙第1号証の4頁に記載のとおり、販売会社と各店舗間とにネットワークシステムを構築し、情報共有等を行うことで販売促進を行うことを意図している。本件商標に係る商品は、ショールーム設置用パソコン(以下「使用商品」という。)として位置づけられており、具体的な商品紹介は2頁目に、ネットワーク上の位置づけは4頁目に示され、具体的な販売価格も4頁目下部の「販社概算コストモデル」において「NeST一式(含む筐体)」として示されている。乙第1号証の2頁目には本件商標が使用商品との関連を明確にして表示されており、このようなカタログが対象となる需要者たる自動車販売会社に対して頒布されたことは、指定商品に関する取引書類に登録商標を付して頒布するという行為であり、登録商標の指定商品についての「使用」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、PROFIT-SI CAPの現行バージョン、すなわちPROFIT-4thについて、被請求人が顧客たる自動車販売会社に対して使用機種の変更を連絡する書面の写しである。2011年10月19日付けで被請求人から販売会社向けに頒布されている。機器発注については、被請求人の許諾の下に、関連会社の東京日産コンピュータシステム(株)(以下「東京日産コンピュータシステム」という。)が受注を受けていることが、2頁目の記載から明らかである。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、株式会社日立システムズのウェブサイト写しであり、PROFIT-SIがバージョンアップしてPROFIT-4thになったことが、2頁目「電子帳票システム選定の経緯と日産グループでの導入状況」において説明されている。乙第3号証は、現行のPROFIT-4thは、乙第1号証において示されたPROFIT-SIを基礎とし、同様の機能・ネットワーク構造を有する上位バージョンのコンピュータネットワークシステムであることを示すための参考資料である。
(4)乙第4号証及び乙第5号証について
乙第4号証は、2012年10月25日付けで被請求人の関連会社である東京日産コンピュータシステムが、被請求人の許諾の下、熊本日産に対して頒布した注文書付きの見積書である。本件商標は、件名「NeST機器」、項目(名称)「NeST用 UPS Smart-UPS500」及び「NeST PCキッティング」としていずれも明記されている。特に、一般的にパソコンの略称として使用されるPCの文字と、コンピュータや周辺機器等の導入作業のことを意味する「キッティング」の語(乙5)とともに本件商標が表示された「NeST PCキッティング」については、本件商標が電子応用機械器具に属する商品について使用されていることを示すものである。見積書は、商標法第2条第3項第8号の取引書類に該当し、指定商品に関する取引書類に商標を付して頒布する行為は、登録商標の指定商品についての「使用」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(5)乙第6号証について
乙第6号証は、平成24年10月31日に被請求人の関連会社である東京日産コンピュータシステムに対して、需要者たる熊本日産が提出した注文書である。
(6)乙第7号証について
乙第7号証は、2013年1月23日に被請求人の関連会社である東京日産コンピュータシステムが、被請求人の許諾の下、熊本日産に対して頒布した請求書である。本件商標と社会通念上同一の商標「NEST」及び「キッティング作業」が明記されている。「キッティング」は、IT分野において、コンピュータや周辺機器等の導入作業のことを意味する。請求書は商標法第2条第3項第8号の取引書類に該当し、指定商品に関する取引書類に商標を付して頒布する行為は、登録商標の指定商品についての「使用」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証には、いずれも管理番号として「1210-117-1」の数字が記載されており、見積、発注、費用請求という一連の取引が成立していることを示している。
(7)乙第8号証ないし乙第10号証について
乙第8号証ないし乙第10号証は、それぞれ2012年3月22日、2012年8月31日及び2012年9月18日に、被請求人の関連会社である東京日産コンピュータシステムが、被請求人の許諾の下、それぞれ千葉日産自動車株式会社、徳島日産自動車株式会社、及び日産プリンス山梨販売株式会社に対して頒布した請求書である。本件商標と社会通念上同一の商標「NEST」及び「キッティング作業」が明記されている。「キッティング」は、IT分野において、コンピュータや周辺機器等の導入作業のことを意味する。請求書は商標法第2条第3項第8号の取引書類に該当し、指定商品に関する取引書類に商標を付して頒布する行為は、登録商標の指定商品についての「使用」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(8)乙第11号証及び乙第12号証について
乙第11号証及び乙第12号証は、被請求人の本社内に設置した、自動車販売会社向けトレーニング用の端末の写真である。需要者たる販売会社へのサービスとして、ショールーム設置用パソコンと同様の機能がソフトウェアにてインストールされているトレーニング用の端末を提供している。乙第11号証及び乙第12号証は、現在も継続的に購入者たる販売会社に対してフォローアップサービスを提供していることを示す参考資料である。本件商標に係る商品の対象となる需要者は自動車販売会社であり、最終ユーザー、すなわちショールームを訪れた自動車購入検討者が需要者ではないため、実際にショールームに設置された端末本体等にはあえて本件商標を表示していない。
2 第2答弁
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、主としてシステム構成と、システム内の「NeST」の位置づけがどのようなものであるかを示すためのものである。したがって、その発行日は審判請求前3年以内には該当しないが、他の証拠と併せて検討すれば、現在も本件商標を指定商品について使用していることが明らかになるはずである。ちなみに、被請求人は、乙第3号証において示すとおり、現行のバージョンはPROFIT-4thであることを明示している。
請求人は「システム」という言葉に拘泥し、「役務」に使用していると主張しているようであるが、コンピュータネットワークシステム(PROFIT-SI CAP、現行バージョンはPROFIT-4th)の一部を占める電子計算機端末の表示として本件商標を本件商品に使用していることは明らかである。
請求人は乙第1号証に「社外秘」の記載があることを指摘しているが、被請求人は、自動車の生産を行う企業であり、その販売は、別法人たる販売会社(自動車ディーラー)を通じて通常行われる。被請求人の生産した自動車の販売動向は、販売会社の営業努力により大きく左右され、被請求人のビジネスにも大きな影響がある。そのため、被請求人の社内にも販売活動をサポートするための部署があり(乙第1号証に記載の「営業開発部」)、販売会社と密接に協力して営業活動を支援している。当然ながら、その支援手法については、競合他社等には知られるべきものではないので、乙第1号証には「社外秘」の記載がある。しかしながら、顧客にあたる販売会社はここでいう「社外」には含まれないことは、営業開発部の業務目的及び業界慣行から明らかである。したがって、「社外秘」の記載があることと、乙第1号証が顧客たる販売会社に頒布されたという事実は、何ら矛盾するものではない。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、2011年10月19日付けで被請求人から販売会社向けに頒布されている。「NeST」の表示はないが、コンピュータネットワークシステム(PROFIT-SI CAP、現行バージョンはPROFIT-4th)の機器販売に関する通知であり、システムの一部を占める電子計算機端末「NeST」が含まれていることは、乙第1号証、乙第3号証と併せて検討すれば明らかである。
(3)乙第3号証について
乙第3号証はあくまで参考資料であり、現行のPROFIT-4thは、乙第1号証において示されたPROFIT-SIを基礎とし、同様の機能・ネットワーク構造を有する上位バージョンのコンピュータネットワークシステムであることを示すため資料である。
(4)乙第4号証について
乙第4号証に記載された件名「NeST機器」が不明であると請求人は述べているが、乙第1号証を参照すればその指すところは明らかである。項目(名称)「NeST用 UPS Smart-UPS500」については、NeST電子計算機端末用の無停電電源装置である(乙13及び乙14)。「NeST PCキッティング」の項目について、請求人は「役務である」という指摘をしているが、これは文字どおり、NeST PC(電子計算機端末)のキッティング(設定作業)であり、端末購入に伴う付随サービスであるため、なんら被請求人の当初主張との矛盾はない。
(5)乙第5号証について
キッティングの意味を示すための参考資料であることは明らかである。
(6)乙第4号証、乙第6号証、乙第7号証について
請求人は最高裁判例を示して「頒布」について述べているが、これは、明らかに最高裁判例の意味を取り違えている。判例においては、情報誌が小売店に配達された事実を持って「頒布」とはいえない、「頒布」とするにはアクセス可能な状態におかれなければならない、という当然のことを言っているに過ぎない。判例において問題となった物が「情報誌」であるから「一般公衆」の語が出てくるのであって、それを本件に当てはめるのは明らかに失当である。
すなわち、乙第4号証、乙第6号証、乙第7号証については、被請求人の関連会社である東京日産コンピュータシステムと各販売店間において収受された取引書類の写しであり、そのような法人間の取引に関する書類が「一般公衆による閲覧可能な状態」におかれるというのは、通常のビジネス慣行において、想定しがたい事態である。むしろ、そのような取引書類は、当事者間においてのみ閲覧可能な状態とするのが普通である。「一般公衆による閲覧可能な状態」を以って初めて「頒布」とするという請求人の判例解釈によれば、取引書類の頒布(商標法第2条第3項第8号)は成立しえないことになる。したがって、請求人の「頒布」要件に関する主張については、全面的に否認する。
請求人は、被請求人の関連会社たる東京日産コンピュータシステムが使用権を有することを証明していないと主張しているが、被請求人による許諾のあった旨の自認のほか、乙第2号証において請求人発行の書面の「機器発注関係」として「東京日産コンピュータシステム(株)」が指定されていることで、両者の間に明らかに使用権に関する合意があることの立証を被請求人は果たしている。それでもなお請求人が使用権の不存在を主張するのであれば、その根拠を示すべきである。
(7)乙第8号証ないし乙第10号証について
請求人は、乙第8号証ないし乙第10号証は「キッティング作業」(サービス)についての請求書であり、本件商標の使用をするものではないと主張しているが、同号証には、件名に「P-4th 端末一式」の表示があり、PROFIT-4thの端末一式(NeST電子計算機端末を含む)の売買に関する書類であることは明らかであり、NeST電子計算機端末の設置作業(キッティング)を付随作業として含むことは、なんら被請求人の当初主張との矛盾はない。
(8)乙第11号証及び乙第12号証について
乙第11号証及び乙第12号証について撮影日が示されていないことは被請求人も認める。被請求人が答弁書においてトレーニング用端末を提供していると申し述べた趣旨は、今でも販売会社に対するNeST電子計算機端末を含む機器の販売を行っており、現にフォローアップサービスも行っていることを示すための記述である。
(9)本件商標の使用状況に関する請求人の主張について
請求人は、検索エンジンを用いた調査結果を以って、被請求人の使用について疑義を示しているが、単なる憶測に過ぎない。
(10)乙第15号証について
乙第15号証は、「NeST/SR導入編」(2013年3月1日付 日産ビジネスサービス(株)発行)であり、当該資料の発行日は、審判請求後の日付であるが、2010年?2013年の電子計算機端末「NeST」の導入・更新に関する説明のために提出する。
日産ビジネスサービス株式会社(以下「日産ビジネスサービス」という。)については、被請求人の関連会社であり、乙第2号証において記載のあるとおり、被請求人の許諾の下、端末申請関連の窓口業務を行っている。
乙第15号証に表示された「NBS Confidential」の記載については、既に述べたとおり、自動車業界の慣行により、被請求人及び自動車販売会社への頒布等を妨げる記載ではない。
被請求人が提出した平成25年3月15日付けの答弁書において述べたとおり、「NeST」は、ショールーム設置用パソコンとして位置づけられており、その基本的構成は、乙第15号証の5頁に「現行NeST構成」(設置場所:ショールーム)として示されている。電子通信機械器具に属する「電子計算機端末」等を含むものであることが明らかである。
近年、CAP機能、すなわち自動車の営業活動支援機能に特化した電子計算機端末と、ショールームに来場した一般ユーザー向けの端末を分ける傾向にあり、前者には「NeST」の名称が引き継がれ(「新NeST構成」)、後者には「ショールームPC」とされている(乙15)。前者、すなわち現行のNeST電子計算機端末は、導入に当たって必須とされており、一方、後者、すなわちショールーム用PCは任意選択とされている。また、乙第15号証の3頁に、NeST老朽化による更新に関する言及がある。旧来のショールーム設置用パソコンとしてのNeSTが老朽化した場合、現在のNeST、すなわち自動車の営業活動支援機能に特化した電子計算機端末に移行していくことが想定されている。
請求人は、弁駁書において、乙第4号証に「新NeST PC」という記載と「新ショールーム PC」という記載があり、商品についての商標なのか不明であると主張しているが、前段落に述べた状況から、同号証の記載は、被請求人の当初主張と何ら矛盾するものではなく、本件商標を指定商品「電子応用機械器具及びその部品」に使用していることを立証するものであるからである。
請求人は、使用状況を示す写真が提出されていない旨の指摘をしているが、被請求人としては、販売会社の各ショールームにおける写真の提供は、プライバシーの問題や営業秘密に関わる問題も生じるため、提供できない。被請求人としては、乙第1号証ないし乙第15号証において十分に本件商標を指定商品について使用したことを立証したと考えている。特に、乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証には、いずれも管理番号として「1210-117-1」の数字が記載されており、見積、発注、費用請求という一連の取引が成立していることを示している。
(11)まとめ
被請求人が、過去3年以内に、本件商標を指定商品中、「電子応用機械器具及びその部品」に使用しているのは明らかであるから、本件審判請求は成り立たないものである。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及びその提出に係る乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人が自動車販売会社に対して販売しているコンピュータネットワークシステムの「PROFIT-SI CAP(Carlife adviser Assist Program)」(Ver.4.0.0)に関する商品説明カタログの写しである。その表紙の右下部には、「2001年6月 日産自動車株式会社 営業開発部」の記載がある。
また、1頁中央部には、「店舗の姿」として、「NeST(ショールームパソコン/既展開)等により、お客さま自身が気軽に日産最新情報を取得できる。」の記載がある。
そして、2頁上部には、「お客さまが自由に情報検索できるショールーム設置用パソコン」の文字及び3箇所に「NeST」の文字の記載がある。
さらに、4頁には、「PROFIT-SI CAPシステム構造図」と「PROFIT-SI CAPデータ連携」の図中に「NeST(ショールーム)」、「販社概算コストモデル」の表記の下に、「NeST14台」、「NeST一式(含む筐体)」、及び「月額単価×台数」と「費用」の欄に、「17.0千円×14台」と「238.0千円」の記載がある。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、2011年10月19日付けの「日産自動車株式会社」(以下「日産自動車」という。)から「PROFIT-4th導入販売会社」あての、「PROFIT-4th販売会社 デスクトップPC、ノートPC機種変更のご案内」を文書の件名とする書面である。
また、2頁下部には、「本件問合せ先」として、「端末申請関係 日産ビジネスサービス(株)」及び「機器発注関係 東京日産コンピュータシステム(株)」の記載がある。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、「株式会社日立システムズ」のウェブサイトであって、2007年7月に掲載された日産ビジネスサービスについての記事に関するウェブページの写しである。
(4)乙第4号証について
乙第4号証は、「東京日産コンピュータシステム」が、「熊本日産」に対して頒布した注文書付きの「御見積書」(2012年10月25日付、管理No.1210-117-1)である。
その「御見積書」の左上部には、「件名」として「Profit-4th PC,NeST機器」、中央部の表中には、「品目」の欄に「新NeST PC」、「名称」の欄に「NeST用UPS Smart-UPS 500(ブラック)」、「NeST PCキッティング」の記載がある。
また、「注文書」の中央部の表中には、「品目」の欄に「端末(PC)」、「名称」の欄に「NeST用UPS Smart-UPS 500(ブラック)」、「NeST PCキッティング」の記載がある。
(5)乙第5号証について
乙第5号証は、IT用語辞典(e-Words)の「キッティング【kitting】」の語に関するウェブページの写しである。
(6)乙第6号証について
乙第6号証は、「熊本日産」から「営業部Profit-4th担当」に対して提出した「注文書」(平成24年10月31日付、管理No.1210-117-1)である。
その中央部の表中には、「品目」の欄に「端末(PC)」、「名称」の欄に「NeST用UPS Smart-UPS 500(ブラック)」、「NeST PCキッティング」の記載がある。そして、その内容は、乙第4号証の注文書と一致することから、かかる商品についての注文ということができる。
(7)乙第7号証ないし乙第10号証について
乙第7号証は、「東京日産コンピュータシステム」から「熊本日産」あての「請求書」(2013年1月23日付、申請書 NO,1210-117-1)、乙第8号証は、同じく「千葉日産自動車株式会社」あての「請求書」(2012年3月22日付、申請書 NO,1111-145-1)、乙第9号証は、同じく「徳島日産自動車株式会社」あての「請求書」(2012年8月31日付、申請書 NO,1206-078-1)、乙第10号証は、同じく「日産プリンス山梨販売株式会社」あての「請求書」(2012年9月18日付、申請書 NO,1207-100-1)である。
そして、上記乙各号証の「商品名」の欄には、「NESTキッティング作業」及び「NEST 更新作業」の記載がある。また、乙第7号証の「備考」の欄に記載された「申請書NO」は、乙第4号証及び乙第6号証の「管理No」と一致している。
(8)乙第11号証及び乙第12号証について
乙第11号証及び乙第12号証は、被請求人の主張によれば、本社内に設置した、自動車販売会社向けトレーニング用端末の写真である。
(9)乙第13号証及び乙第14号証について
乙第13号証は、APC公式オンラインショップに係る「Smart-UPS 500」に関するウェブページの写しであり、乙第14号証は、IT用語辞典(e-Words)の「UPS」の語に関するウェブページの写しである。
(10)乙第15号証について
乙第15号証は、「日産ビジネスサービス」が作成した資料「PROFIT-4th NeST/SR導入編」(2013年3月1日付)である。その2頁には、「NeST関係」の表題のもと、「(2010年1月リリース)」、「(2012年2月修正版)」、その下部に、「『新NeST設置時の留意点』」及び「『新NeST導入に伴う設置場所の現地調査について』」の記載がある。
また、3頁には、「NeST老朽化更新対象機種」、その下部の「機器」欄に「NeST」、「NeST老朽化更新の考え方」、「基本的には、NeSTとしての利用は想定しておりません。」の記載がある。
そして、4頁には、「参考)NeSTについて」、「NeST とは?」、「NeST導入の経緯」、「・・・NeSTをデータ中継サーバとして使用することとなった。」の記載がある。
さらに、5頁には、「1)NeST機器構成の変更」の表記の下部に、「【現行NeST構成】」、「【新NeST構成】」及び「新NeST(代替)」の記載がある。
また、6頁には、「2)NeST設置場所の変更」の表記の下部に、「新NeST」、「現在ショールームにNeSTを設置していない店舗については、ショールームPCは不要となります。・・・」及び「ショールーム(NeSTボックス内)」の記載がある。
2 以上の認定事実及び被請求人の主張に基づき、以下、判断する。
(1)本件商標の使用権者等について
乙第1号証の表紙の右下部の「日産自動車株式会社」は、本件商標の商標権者と認められる。
また、乙第2号証は、2011年10月19日付けの商標権者から「PROFIT-4th導入販売会社」あての「PROFIT-4th販売会社 デスクトップPC、ノートPC機種変更のご案内」を文書の件名とする書面であるところ、その2頁下部には、「本件問合せ先」として、「端末申請関係 日産ビジネスサービス(株)」及び「機器発注関係 東京日産コンピュータシステム(株)」の記載があることから、両社は、商標権者の業務上の密接な関連会社と認められるものである。
そして、グループ企業ともいえる関連会社において、商標権の使用許諾をすることが一般に行われていることからすれば、該両社は、本件商標に係る商標権について、商標権者から黙示の使用許諾を得ていたものということができるから、通常使用権者と推認することができるものである。
(2)本件商標の使用方法とその使用商品及び使用時期について
ア 乙第1号証
乙第1号証において記載されている「NeST」の文字と本件商標とは、社会通念上同一のものと認められる。
しかしながら、被請求人が「NeST」をパーソナルコンピューターの名称としてカタログに使用していることは認められるものの、本件商標が商品「パーソナルコンピューター」に付して使用されている事実を確認することはできないものである。そして、被請求人も、「パーソナルコンピューター」に本件商標を付していないことを自認している(平成25年3月15日付け答弁書4頁)。
してみれば、乙第1号証をもってしては、商品に標章を付する行為がなされていないことから、本件商標について、商標法第2条第3項第1号及び第2号でいう「使用」に該当するものではない。
他方、乙第1号証は、被請求人が自動車販売会社に対して販売しているコンピュータネットワークシステム(PROFIT-SI CAP)に関する商品説明カタログの写しであって、パーソナルコンピューターの名称として、本件商標を使用しているものであるから、本件商標について、同法第2条第3項第8号でいう広告としての「使用」に該当するものである。
しかしながら、乙第1号証の表紙の右下部には、「2001年6月 日産自動車株式会社 営業開発部」の記載があり、2001年6月に被請求人が該カタログを作成したものと認められるものの、これが本件審判の請求登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に、自動車販売会社に対して頒布された証拠は提出されていないものである。そして、被請求人の主張によれば、現在は、上位バーションのコンピュータネットワークシステムとなっているから、同カタログの使用は推認できない。
してみれば、同号証による要証期間内における本件商標の「パーソナルコンピューター」への広告としての「使用」は、認められない。
イ 乙第4号証及び乙第6号証ないし乙第10号証
乙第4号証及び乙第6号証ないし乙第10号証は、通常使用権者である東京日産コンピュータシステムと自動車販売会社との間で交わされた取引書類であり、要証期間内に「NeST」の名称のパーソナルコンピューターが取引されていたことが認められる。
しかしながら、上記乙各号証においては、「NeST」の名称のパーソナルコンピューターが取引されていた事実を示すにすぎないものである。
すなわち、取引書類に商標が付されていて、これを用いた取引行為による頒布が、商標の広告としての「使用」と考えられるところ、本件については、取引書類に「NeST」の文字が記載されているにすぎず、かつ、取引書類に商標を付して頒布した事実も確認できないものである。
そうとすれば、上記取引書類に「NeST」、「NEST」の文字を記載する行為は、本件商標について、商品「パーソナルコンピューター」に関する取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布する行為ということができない。
してみれば、上記乙各号証をもってしては、要証期間内における「パーソナルコンピューター」への本件商標の商標としての使用行為ということができないから、商標法第2条第3項各号でいう「使用」に該当するものではない。
ウ 乙第15号証
乙第15号証において記載されている「NeST」の文字と本件商標とは、社会通念上同一のものと認められる。
乙第15号証は、通常使用権者である日産ビジネスサービスが作成した「NeST」に関する資料であって、「パーソナルコンピューター」の名称として、本件商標を使用しているものであるから、該資料を自動車販売会社に対して頒布しているならば、同法第2条第3項第8号でいう広告としての「使用」に該当するものである。
しかしながら、乙第15号証の1頁右下部には、「2013年3月1日」の日付の記載があり、2013年3月1日に日産ビジネスサービスが該資料を作成したものと認められ、また、第2答弁書において、「・・・『NBS Confidential』の記載については、・・・自動車業界の慣行により、被請求人及び自動車販売会社への頒布等を妨げる記載ではない。」と述べているものの、これが要証期間内に、自動車販売会社に対して頒布された証拠は提出されていないものである。
してみれば、同号証による要証期間内における本件商標の「パーソナルコンピューター」への広告としての「使用」は、認められない。
エ 小括
上記のとおり、商標権者及び通常使用権者は、「PROFIT-SI CAP」システムにおける「パーソナルコンピューター」について、「NeST」の名称で取引しており、また、「パーソナルコンピューター」は、本件商品の範疇に含まれるものと認められる。
しかしながら、被請求人の提出に係る証拠によっては、日産自動車、東京日産コンピュータシステム及び日産ビジネスサービスが、本件商品について、要証期間内に、商標法第2条第3項各号でいう本件商標の使用をしていたものと認めることができない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、取消請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したものとは認められず、また、被請求人は、使用をしていないことについて正当な理由があると述べるものでもない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」について、商標法第50条の規定に基づき、取り消すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-08-09 
結審通知日 2013-08-13 
審決日 2013-09-02 
出願番号 商願2002-75061(T2002-75061) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z09)
最終処分 成立  
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 田中 亨子
谷村 浩幸
登録日 2003-07-18 
登録番号 商標登録第4692398号(T4692398) 
商標の称呼 ネスト 
代理人 三好 秀和 
代理人 高橋 俊一 
代理人 高松 俊雄 

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