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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201119200 審決 商標
平成24行ケ10285審決取消請求事件 判例 商標
不服201120614 審決 商標
不服201317721 審決 商標
不服201220162 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X33
管理番号 1280119 
審判番号 無効2012-890099 
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-11-13 
確定日 2013-10-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5481981号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5481981号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5481981号商標(以下「本件商標」という。)は、「ダブルレモン」の文字を標準文字で表してなり、平成22年2月2日に登録出願、第33類「レモンを使用してなる日本酒,レモンを使用してなる洋酒,レモンを使用してなる果実酒,レモンを使用してなる中国酒,レモンを使用してなる薬味酒」を指定商品として、同24年1月31日に登録をすべき旨審決がされ、同年3月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第62号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同項第6号に該当するから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきものである。
2 本件商標についての経緯
(1)本件商標は、拒絶査定不服審判を経て登録に至っている。
本件商標の登録出願を拒絶した拒絶査定の内容をみると、「インターネットの情報によれば、酒を取り扱う業界においても『ダブル○○(果実)』等と称した『異なる二つの産地の果実を使用した商品、品種や品質の異なる果実を二つ使用した商品』が一般に製造・販売されている実情を伺い知ることができ、本件商標は『異なる二つの産地のレモンを使用した商品、品種や品質の異なるレモンを使用した商品』程の意味合いを容易に想起しうる(インターネット上の参考情報を3件挙げている)。したがって、本件商標は、上記意味合いを認識するに止まり、自他商品の識別能力を発揮し得ない」から、商標法第3条第1項第3号に該当するとの結論を導き出している。
(2)上記の拒絶査定の理由を覆し、本件商標の登録を認めた審決は、その「当審の判断」において、本件商標が登録されるべき理由を、おおむね、(a)本件商標は、英語で「2重。2倍。複。」を意味する英語の「double」の表音である「ダブル」と果実の一種「レモン」を一連に「ダブルレモン」と表してなるが、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されており、「2重のレモン、複数のレモン」の意味合いを認識させる、(b)しかし、「ダブルレモン」の文字からは、「異なる二つの産地、品種や製法等の異なるレモン材料を2種使用した商品」というような具体的意味合いを認識させるということはできないから、食品の品質等を暗示ないしは間接的に表示するものとはいえても、直接的ないし具体的に表示したものとはいい難い、(c)当審において調査するも、本件商標を構成する文字が、その指定商品を取り扱う業界において、特定の商品の品質等を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実を発見することはできなかった、として、本件商標は、商標法第3条第1項第3号には該当しないと結論づけた。
(3)しかし、上記結論に至るその法律判断は、事実を強引に無視して行われたものといわざるを得ない。審決理由中、(a)の「本件商標は、・・・外観上まとまりよく一体的に表されている」という理由は、本件が、商標の類否判断に関する事案ではなく、本件商標が自他商品識別性を有するか否かに関する判断であることに鑑み、無意味な理由である。また、「本件商標は、2重のレモン、複数のレモン」という意味合いを認識させるとの判断を行っているのであるから、本件商標の指定商品には「二つのあるいは複数のレモンが使用されている」との意味合いを直感させるとの判断にたどり着くのが法律判断としては合理的と思料する。
また、(b)においては、「具体的意味合いを認識させるということはできないから、食品の品質等を暗示ないしは間接的に表示するものとはいえても、直接的ないし具体的に表示したものとはいい難い」という判断をしている。
しかし、食品の品質等を暗示ないしは間接的に表示する場合でも、それが「異なる二つの産地、品種や製法等の異なるレモン材料を2種使用した商品」を使用したものであることを示す表示として市場において現実の使用例があれば、判断は違ったものとなる。
(4)本件においては、上記拒絶査定の理由で、「インターネットの情報によれば、酒を取り扱う業界においても、ダブル○○(果実)等と称した、異なる二つの産地の果実を使用した商品、品種や品質の異なる果実を二つ使用した商品が一般に製造・販売されている実情をうかがい知ることができ、本件商標は異なる二つの産地のレモンを使用した商品、品種や品質の異なるレモンを使用した商品程の意味合いを容易に想起しうる」と判断している。そして、その3件のインターネットの情報は、1)サントリー株式会社のウェブサイトにおいて、「ストロングゼロ ダブルレモン」の見出しの下、「・・・レモン浸漬酒とレモン果汁をダブルで使用・・・」との記載、2)サントリー株式会社のウェブサイトにおいて、「ストロングゼロ ダブルグレープフルーツ」の見出しの下、「ホワイトとルビー、2種類のグレープフルーツをダブルで使用・・・」との記載、3)モルトナビのウェブサイトにおいて、「クレーム・ド・カシス(ダブルカシス)」の見出しの下、「ブルゴーニュ産のカシスに、・・・アンジェ産カシスを混ぜた・・・ダブルカシスリキュール」との記載である。
本件商標は、「異なる二つの産地、品種や製法等の異なるレモン材料を2種使用した商品」程の意味合いを認識(「連想」と言い換えてもよい:過去にはこの言葉を使って、識別性を否定した事例もある。)させるものである。上記意味合いを生じる本件商標が造語であると判断することは、法律解釈を誤ったものといわざるを得ない。
3 証拠に基づく主張
(1)有限会社ベイアトランダが運営する「InterMark」というデータベースの中に「MR3条」というデータベースがあるところ、これは、過去において、商標法第3条各号に該当するとして、特許庁の審査において拒絶された商標を示すものである。
甲第1号証は、上記データベースを利用して、「ダブル」という文字又は「W」という文字で始まる商標であって、飲食品分野の商品を指定して登録出願され、自他商品識別力に乏しいと判断された商標を抽出した一覧表である。その1頁(最初に掲載されている商標を除く。)から5頁までのすべての商標と6頁264番目までの商標とは、ほとんどすべてが「W」で始まる英語の言葉又は文字からなる商標を示すものであり、本件の事案には関係のないものであるが、約100件を超える多数の「W○○」及び「ダブル○○」(「○○」は、指定商品の普通名称又は識別性のない標章。)という構成の商標が商標法第3条第1項各号に該当するとして拒絶されている。その大部分は、「ダブル○○」という商標である。そして、その大部分は、昭和40年代から平成22年までに拒絶された商標を示すものである。
上記の拒絶された商標に関する拒絶理由通知書は、ほとんどが破棄されており、その拒絶理由の具体的な内容を知ることはできないが、商願2010-68900号「Wポリフェノール」を含め、「ダブルフォン・ド・ボー」、「ダブルベリー」、「ダブルベリージャム/DOUBLE BERRY JAM」及び「ダブルポリフェノール」については、拒絶理由通知書及び拒絶査定書を含め出願資料の写しを入手することができた(甲第2号証ないし甲第7号証。なお、括弧内の証拠番号については、以下「甲2?甲7」などのように省略して表す。)。これらの多くは、実際の使用事実を示しながら、「2種類のものを使用した商品」又は「2倍の量の商品」を意味すると結論付けている。
また、上記一覧表(甲1)の中には、その278番目以降の商標から明らかなように、「ダブル」の文字と商品の一般名称又は品質を表示する言葉を組み合わせた商標が多数存在する。
甲第8号証ないし甲第23号証は、インフォソナー株式会社が運営する「TM-SONAR」という商標検索のデータベースにおいて、書誌検索データからプリントしたものであって、2000年以降に出願された商標登録出願の審査経緯を示す書誌情報が含まれており、そこには、上記一覧表(甲1)中の「ダブルフォン・ド・ボー」、「ダブルベリー」、「ダブルベリージャム/Double Berry Jam」及び「ダブルポリフェノール」に関する書誌情報を含め、「ダブルコラーゲン」、「ダブルコンソメ」、「ダブルスープ」、「ダブルチーズ」、「ダブルチーズピザ」、「ダブルチョコ」、「ダブルバニラ」、「ダブルピーチ」、「ダブルフコイダン」、「ダブルベリー」及び「ダブルミルク」に関する書誌情報を示されている。そして、これらのすべてについて、指定商品が掲載され、それらとの関係において、「商標法第3条第1項各号」(この「各号」という表示は、これら商標の構成から、「第3号又は第6号」を意味するものと解される。)に該当するとして拒絶査定されている。
(2)甲第24号証ないし甲第30号証は、請求人のウェブサイトからのプリントであるところ、2004年には、「サントリーチューハイダブル搾り」という商標で、「レモンダブル」、「オレンジダブル」及び「グレープフルーツダブル」という3種類を市場に提供した。「レモンダブル」については、「地中海産のレモン」と「カリフォルニア産のレモン」の2種類のレモンを使用しているということを示すために「レモンダブル」と銘打っているが、本件商標「ダブルレモン」も、同様に記述的な意味合いを示す場合の普通の使い方である。2009年2月からは、「STRONG ZERO」の商標の下で、「レモン浸漬酒」と「レモン果汁」という「レモン」を使用した2種類の商品を材料として使用しているという意味合いを示すために「ダブルレモン」を使用している。その後、2009年5月には「ダブルグレープフルーツ」を、2010年8月31日には「ダブルシークワーサー」を、2011年8月30日には「ダブル完熟梅」という商品(酎ハイ)を市場に供給してきた。これらは、いずれも果実の浸漬酒と果汁(「ダブル完熟梅」については、梅酒。)の2種類を使用していることを示すために、「ダブル」の後に原材料となる果実名を付加した態様であり、「2種類」の材料を示す言葉として、この「ダブル」が使用されていることが容易に認識されるものである。そして、該商品は、その缶の上にも上述した内容の商品であることが表示されており、売れ行き好調と相まって、「ダブル○○」の意味する内容も需要者の間に浸透してきている。
(3)「ダブル○○」の使用例
飲食料品の分野において、「ダブル○○」で構成される標章が市場においてどのように使用されていたか、また、現在も使用されているかを示すために、日本食糧新聞の電子版からのプリント及びインターネットウェブサイトからのプリントを甲第33号証ないし甲第61号証として提出する。
ア アルコール飲料の分野における「ダブル○○」の使用例
(ア)「リキュール」についての「ダブルカシス」という標章の使用がある(甲33)。ヨーロッパ、特にフランスでは、複数のメーカーが「ダブルカシス」(フランス語では「double cassis」)という名前を使用した「リキュール」を製造・販売している。この商品は、カシスの実をスピリッツに漬け込んだ後、最初に取れる一番おいしいエキストラバージンカシスのみを使用して作ったリキュールである。被請求人は、本件商標に係る拒絶査定不服審判事件の請求書において、この「ダブルカシス」はフランスで周知のカシスリキュールに特有の慣用呼称であり、ほかの酒に共通する呼称とはいえない、と主張しているが、まさに、カシスリキュールに特有の呼称であり、その意味するところは、上記したように、「カシスの実をスピリッツに漬け込んだ後に、最初に取れる一番おいしいエキストラバージンカシス」を使用したという意味で、「ダブルカシス」(double cassis)が使用されているので、品質表示であるといわざるを得ない。
(イ)アサヒビールは、1995年に、2種類の酵母を使用したビールを「ダブル酵母生ビール」と銘打って発売したことがある(甲34)。
(ウ)サントリー株式会社は、2004年に、期間限定で、桃のワインと上質な桃の果汁を使った「ダブルピーチ」ワインを発売したことがある(甲35の1・2)。
イ アルコール飲料以外の飲食料品についての「ダブル○○」の使用例
(ア)ファミリーマートは、1999年に、「スーパーベーグルサンド」ハム&チーズという商品を販売したが、「チェダーチーズ」と「エレメンタールチーズ」の2種類のチーズを使用したという意味で「ダブルチーズ」という言葉を使用していることが説明されている(甲36)。
(イ)小岩井乳業は、2002年に、「ダブルキャラメルオ・レ」(乳飲料)を発売したが、それは、「甘いキャラメル」と「苦みのあるキャラメル」の2種類をブレンドしたものであるとの説明がある(甲37)。
(ウ)キリンビバレッジは、2004年に、「トロピカーナ ムースシャーベット ダブルピーチ」という氷菓を発売した。「ダブルピーチ」の意味は、「白桃の果汁に黄桃の果肉を加えた2種類の味」であるとの説明がある(甲38の1・2)。
(エ)当時のサントリー株式会社は、2006年、果汁飲料の「なっちゃん」シリーズに、「赤りんご果汁と青リンゴ果汁」の2種類をブレンドした「なっちゃん ダブルりんご」という商品を加えた(甲39の1・2)。
(オ)キューピーは、2007年に、「ダブルベリー&チェリージャム」という商品を発売したが、その「ダブルベリー」の意味合いは、「ラズベリーとストロベリー」の2種類を使用していることの説明がある(甲40)。
(カ)キリンビバレッジは、2007年、「午後の紅茶スベシャルシリーズ」に、アールグレイ紅茶にイタリア産ベルガモット果汁を加えた、ベルガモットの香りと味わいがダブルで楽しめる「ダブルベルガモット」紅茶を発売した(甲41の1・2)。
(キ)江崎グリコは、2008年に、「カルフェ ダブルショコラ」というチョコレート菓子を発売した。この商品は、「ココアメレンゲとビターチョコ」のダブルのカカオ感が楽しめると説明されている(甲42)。
(ク)森永乳業は、2008年に、2種類のマンゴーを使った「南国ダブルマンゴー」というヨーグルトを発売した(甲43)。
(ケ)アサヒフードアンドヘルスケアは、2008年に、「レモンとグレープフルーツのダブル果汁入り」と「マンゴーとオレンジのダブル果汁入り」のヨーグルトを発売した(甲44)。
(コ)敷島製パンは、2009年に、「シュレッドとレッドチェザー」の2種類のチーズをトッピングしたピザを「ダブルチーズピザ」として発売した(甲45)。
(サ)ハウス食品は、2010年に、「ダブルベリークリームサンド」を発売した。この商品は、「ブルーベリー果汁とストロベリー」をサンドした商品である旨の説明がある(甲46)。
(シ)日本ハムデリニューズは、2010年に、「ダブルソース ハンバーグ」及び「ダブルソース チキン南蛮」の弁当総菜を発売した。いずれも、異なるソース2種類を使用したものである(甲47)。
(ス)江崎グリコは、2010年に、「ダブルグレープフルーツゼリークリームin」を発売した。この商品は、「ホワイトとピンクの2種類のグレープフルーツ」を使用したゼリー菓子である(甲48)。
(セ)日本クラフトフーズは、2011年に、諸々のフルーツが入った「フルーツのど飴」を発売したが、その中で、「黄桃と白桃」の2種類の桃を使用していることを表現するために、「ダブルピーチ」という言い方をしている(甲49)。
(ソ)明星食品は、2011年に発売した「究極 つけ麺 特濃魚介だれ」という商品に使用した粉末と液体の2種類のスープを「ダブルスープ」と表現している(甲50)。
(タ)江崎グリコは、2011年発売のアイスクリームに「ダブルチョコ」という表示を使用しているが、これは、「2つのチョコが折り重なる」形状を示す表現である(甲51)。
(チ)森永乳業は、2011年4月、6月及び11月に、それぞれ期間限定商品として、「ピノ W(ダブル)ストロベリー」、「ピノ W(ダブル)抹茶」及び「ピノ W(ダブル)コーヒー」というアイスクリームを発売した。これらの商品は、それぞれ、ストロベリーアイスクリームをストロベリーチョコで、抹茶アイスクリームを抹茶チョコで、コーヒーアイスクリームをコーヒーチョコでコーティングした商品である(甲52の1?3)。
(ツ)アサヒフードアンドヘルスケアは、2011年12月に、バランス栄養食品として、「GATZUN ダブルチョコ」の発売を開始し、2012年8月には、新たに「GATZUN ダブルバナナ」を追加している。これらの商品は、それぞれ、「チョコ味の生地にチョコレートクリームをサンド」したものと「バナナペーストを生地にバナナクリームをサンド」したものである(甲53の1・2)。
(テ)不二家は、2011年に、「ミルクチョコクリームとビターチョコクリーム」の2種類を使用した「ダブルチョコケーキ」と「ホイップチーズクリームとチーズクリーム」の2種類を使用した「ダブルチーズケーキ」を発売した(甲54)。
(ト)カゴメは、現在、「かつおの煮汁と鰹節」の「ダブルかつお」のうまみがきいたソースを販売している(甲55)。
(ナ)キリン協和フーズは、現在、「フリーズドライ粉末スープと粉末スープ」のダブルのスープを混合した濃厚ポタージュを販売している(甲56)。
(ニ)アオハタは、現在、「ブルーベリーとクランベリー」をミックスした「ダブルベリージャム」を販売している(甲57)。
(ヌ)ミスタードーナツは、チョコレートをコーティングし、それにチョコクランチをトッピングした「ダブルチョコレート」と銘打ったドーナツを販売している(甲58)。
(ネ)ミニストップは、カットされたマンゴーとマンゴーソースを組み合わせた「ダブルマンゴー」を販売している(甲59)。
(ノ)シャトレーゼは、「カスタードクリームと生クリーム」を詰めた「ダブルシュークリーム」を販売している(甲60)。
(ハ)敷島製パンは、各種のサンドロールパンを製造販売しているが、その中には「ダブルピーナッツ」、「ダブルミルク」、「ダブルチョコ」、「ダブルカスタード」、「ダブルいちご」、「ダブルホワイトチョコ」、「ダブルマロン」、「ダブルメープル」、「ダブル宇治茶」、「ダブル山形白桃」等がある(甲61の1?4)。
ウ 「ダブル○○」の使用例の評価について
上記イにおいて示した商品は、すべて同種商品であるが、内容の異なる2種類の原材料を使用しているという意味合いを示すために「ダブル」の文字が使用されていることは、その商品説明から明らかであり、また、「ダブルソース」、「ダブルチョコ」、「ダブルバナナ」等、同一の品質表示を使用している商品が異なるメーカーから販売されている。
被請求人は、上記査定不服審判に係る請求書において、拒絶理由通知書、拒絶査定及び請求人が提出した刊行物提出書で引用した「ダブル○○」の使用例について、概要それらの使用例は、各会社の任意の使用であって、「ダブル○○」の使用が商品の品質表示としては一般的に使用されていることを立証するものではないという主張を行なっている。そして、広辞苑に掲載された「ダブル」という言葉の使用例を挙げ、それらの言葉が定着した成熟語として使用されているのに対して、「ダブル」に「食品、植物・果実」を結合した用語・用例の定着した成熟語としての使用例は見当たらない、という点をその根拠としている。
しかし、「ダブル」に「食品、植物・果実」を結合した言葉が広く使用されていることは、既に述べたとおりであり、成熟語としての使用例があれば、自他商品の識別性があるか否かの判断をわざわざ審判事件において行う必要はない。
(4)調査報告書(甲62)
請求人は、本件審判の請求の前に、「ダブルレモン」という標章について、一般需要者がどのような認識を有しているか知るために、株式会社インテージという調査会社に依頼して、ウェブサイト上での調査を行った(甲62)。この調査は、「ダブルレモン」という言葉についての認識調査であることが分からないように、また、この調査に対して回答を行う者が、偏見を持たないで回答するように、質問事項を極めて簡単にして、各種アルコール飲料のパッケージに表示されている言葉が、商品の「ブランド」であるか、商品の「品質表示」であるかを端的に答えさせる方法で行った(「ブランド」と「品質表示」の意味合いについての説明も加えてある。)。すなわち、各種アルコール飲料のパッケージに表示されている言葉の中には、日本人でアルコール飲料を嗜む人であれば多くの人が知っているであろうと思われる「いいちこ」、「スーパードライ」、「松竹梅」及び「氷結」という商標と、「糖質ゼロ」、「辛口」、「芋焼酎」及び「まろやか」という品質表示と、「アルコール飲料」の分野においては、自他商品識別性がないとして同業他社により使用されている「プレミアム」を取り入れ、これら9件の言葉に対する認識と「ダブルレモン」に対する認識の程度にどの程度の差があるかを調査したものである。
上記調査の結果によれば、「いいちこ」、「スーパードライ」、「松竹梅」及び「氷結」という商標に対する需要者の認識の程度は、それなりに高く、「糖質ゼロ」、「辛口」、「まろやか」という品質表示についても同様である。また、普通名称の「芋焼酎」については、「ブランド名」という認識が20.6%とやや高く(「品質表示」認識は71.9%)、また、「プレミアム」については、「ブランド名」という認識が43%であり、「品質表示」との認識が48.5%と、「ブランド名」との認識がかなり高いとの結果が出ている。これに対して、「ダブルレモン」については、「ブランド名」という認識が27.6%であり、「品質表示」との認識が50.7%と、「プレミアム」に対する認識よりも、「品質表示」であるという認識が高くなっている。「ダブルレモン」を「ブランド」であると回答した者が27.6%とやや高くなっているのは、市場に出回っている商品が請求人の商品のみであり、それがかなりの売れ行きを示している結果によるものであるが、それにもまして、「品質表示」との認識がその倍近い50.7%と半数を超えているのは、請求人による上記主張が正しいものであることを裏付けるものであり、また、特許庁において、長年行われてきた審査結果の妥当性を示すものである。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品との関係において、全体として自他商品識別力を欠き、商標法第3条第1項第3号又は同項第6号に該当するものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第28号証(枝番を含む。)を提出した。
1 理由の概要
ある商標が商標法第3条第1項第3号又は同項第6号の顕著性を有するか否かについては、該商標の構成自体の記述力(self descriptivity)の度合いないし指定商品の品質に関する自己説明力(self explanativity)の有無と度合いによって個別に判断すべきであり、さらに、該商標が使用により特定品質表示としての意味理解が確立されたものかどうかについては、該品質表示語としての成熟の度合いにより判断されるべきである。
本件審判は、上記のとおり、本件商標の構成自体の記述力ないし説明力及び使用による理解内容の成熱度によって判断されるべき事案であるから、本件商標と関係のない拒絶例が100件あるからといって、これを十把一絡げに商標法第3条第1項第5号のアルファベット1文字2文字記号の顕著性のごとき類型と称して拒絶されるべきではないし、本件審判と無関係の「ダブル○○」の酒や食品の使用例があるから、本件商標は、「二種類のレモンを使用した商品」の品質表示として、その顕著性が否定されるべきであるとはいい難く、まして請求人のみが特殊なレシピの商品に「ダブルレモン」を使用しているからといって、これをもって「ダブルレモン」の普遍的品質とみなければならない理由など存しないのであるから、これらの点に関する請求人の主張は、いずれも失当であり理由がない。
2 本件商標「ダブルレモン」の構成とその理解
(1)「ダブルレモン」という既成の熟語は存在しない。そして、構成自体の記述力ないし自己説明力についてみれば、「ダブルレモン」は、「two lemons(二個のレモン)」や「two kind of lemon(二種類のレモン)」のことでない漠然たる「ダブルのレモン」程の内容の記述力ないし説明力があるというにすぎず、これを「『二重のレモン、複数のレモン』程の意味合いを暗示させる一体不可分の造語」と認定した本件商標に係る拒絶査定不服審判の審決の判断に誤りはない。
そして、使用との関係については、「ダブルレモン」が使用により特定品質表示としての意味理解が確立されたものかどうかについて、いまだ「『異なる二つの産地、品質や製法の異なるレモン材料を二種使用した商品』というような具体的な意味合いを具体的に認識させるものということは出来ない」との認定にも誤りはない。
上記本件商標の認定が正当なことについては、以下詳述する。
(2)本件商標について、請求人は、「外観上一体的に表されている」との造語認定は不必要であると拒絶査定不服審判の審決を論難するが、商標を構成する文字がどのように表示されるかによって該商標の認識が異なることがあることは自明であり、「外観上一体的に表されている」ことは、商標の類否判断のみにかかわらず顕著性判断においても必要なことであり、本件商標の造語認定に当然必要な条件として考慮された結果であるから、一体的に表された造語認定の結果導かれた帰結として本件商標が顕著性を有するとされた拒絶査定不服審判の審決は、至極妥当なものである。
(3)過去の「ダブル○○」の拒絶例の存在
請求人は、「本件の事案には関係がないものであるが」と断って、「約100件を超える多数の『W○○』及び『ダブル○○』(「○○」は指定商品の普通名称又は識別性のない標章。)という構成の商標が商標法第3条第1項各号に該当するとして拒絶されているから、本件商標も登録されるべきではないという判断を肯定せざるを得ない根拠になる。」旨主張する。
しかし、請求人もあらかじめ「本件の事案には関係がないものであるが」と断って引用するとおり、本件商標が商標法第3条第1項第3号又は同項第6号の顕著性を有するか否かは、上記のとおり、商標の構成自体の記述力ないし説明力及び使用による理解内容の成熟度によって個別に判断されるべき事案であるから、該商標と関係のない拒絶例が100件あるからといって、これを類型のごとく解して拒絶されるべきであるとの主張は理由がない。
(4)「ダブルレモン」の使用例
請求人は、請求人会社の商品「STRONG ZERO」の「ダブルレモン」の使用例をもって、その品質である「レモン浸漬酒」と「レモン果汁」を使用したチューハイの品質表示を主張しているが、この請求人会社固有のこれほど特殊な品質をもって「ダブルレモン」の一般的品質表示とは到底いい難いものであり、そして、自らその特徴的品質が特殊であることの表明は、請求人会社自らが製造販売する二種類のレモンを使用したチューハイを「レモンダブル」と称していることであり、「レモンダブル」と「ダブルレモン」を自ら言い訳しているくらいであるから、「ダブルレモン」が「二種類のレモン」を使用した酒の意の一般的品質表示とは到底いえないことは自明である。
このことからも、いまだ「ダブルレモン」は、自己記述力ないし自己説明力の程度が漠然と「ダブルのレモン」程であって「二種類のレモン」、まして「レモン浸清酒とレモン果汁を使用した酒」のごとき特殊な酒の品質を一般的に想起させるとは到底いい難く、請求人会社の使用をもって本件商標が顕著性を否定させられるべきであるとの主張は理由がない。
(5)「ダブル○○」の酒類の使用例
請求人は、「ダブル○○」の酒類について使用例が3件ある(甲33?甲35)から、本件商標は品質表示であると主張する。
しかしながら、そのうちの「ダブルカシス」は、複数者に慣用の商品名かと理解しているが、ルジェ社の商品説明にも、エギュベル社の商品説明にも、同種商品でありながら決して二種類のカシスを使用したリキュールとの説明はなされていないものであり、ルジェ社の商品説明による「カシスの最高品種といわれるノアール・ド・ブルゴーニュの『一番絞り』ともいえるエキストラバージンジュースを100%使用し」て製せられたリキュールに固有の名称として、エギュベル社も同種商品に使用しているという意味で慣用的名称といい得るとしても、どちらも二種類のカシスを使用した酒類の品質表示としての品質表示ではなく、ルジェ社のそれはノアール・ド・ブルゴーニュ種のみを100%使用されているところ、このカシスリキュールに固有の「ダブル」に「2種類の」の普遍的意味合いは存しないものである。その意味で、このカシスリキュールに固有の慣用される「ダブル」は、別の意味が込められているものと推定されるが、本件商標「ダブルレモン」の理解とは次元の異なる無関係の使用例である。
また、アサヒビールの「ダブル酵母生ビール」も、アサヒビールの商品のレシピに係る品質が同種商品の一般的品質表示とまではいえないものであり、アサヒビールの該商品の商品名とみられたことはあっても、アサヒビールの品質と同等の「二種類の酵母を使用した生ビール」の品質を表示するものとして、これが当業者に一般的に使用されることも定着もみなかったものである。
さらに、サントリーの「ダブルピーチ」ワインも、サントリー社のオリジナルレシピとしての特殊製法による「二種類の桃」ワイン(サントリー社の言い訳だと「ピーチダブル」が「二種類の桃」ワインではないかとみられるが)の任意かつ固有の商品名として理解されるところはあっても、ワインの一般的品質表示とみられることもなく、むしろ、同社の特定商品名としての理解の方が一般的であったと思料する。
そうすると、「ダブル○○」の酒を「2種類の○○」の酒の意の普遍的品質表示として限定的に理解しなければならない理由はなく、いまだこれをもって、「ダブルレモン」が顕著性を有しないとはいえないものである。上記の「ダブル○○」の酒類の使用例は、「ダブル○○」という酒類の使用例があるというだけで、これをもって、本件商標が「二種類のレモンを使用した商品」の品質に限定してみなければならない理由もないものである。
「ダブルレモン」の品質記述力ないし品質説明力は、例えば、「はちみつとレモン」を使用した商品であることを記述した「はちみつレモン」の品質記述力ないし品質説明力に比して、「ダブルレモン」の記述力・説明力のレベルに上記の使用例をあわせて考慮しても、依然「ダブルのレモン」程の漠然たる記述性しかないことにとどまるものである。
(6)「ダブル○○」の食品の使用例
請求人は、「ダブル○○」が「二種類の原材料」を使用した食品に使用されている例があるから、「ダブル○○」商標が「二種類の原材料」を使用した商品の品質表示であると主張するが、これは、「ダブル」の語が「二種類」を意味する場合があり、二種類の原材料を使用した食品についての使用例があるというに尽きるものであって、単に「ダブル○○」の「ダブル」に「二倍」、「二個」、「二重」、「二種類」の意があるというに等しく、これら「ダブル○○」の「ダブル」を「二種類の原材料」に限定してみなければならない理由はない。
さらに、二種類の原材料といっても、各商品は、各社各様の特殊なレシピの品質内容をうたって売り口上としていることをみても分かるとおり、その商品がどのような品質なのかは、その説明を聞いて初めて理解される程度で、それぞれの品質は、聞いてみなければ分からないほど任意で特徴的な固有の品質をいうものであって、その機能は、もっぱら自社商品のみが持つ特別すぐれた商品名を打ち出すためのものとして使用しているのが特徴的であり、いわば各社の「ダブル○○」商品の品質は、すべて別品質の商品と称して過言ではないし、これら各「ダブル○○」の「ダブル」の語の意味する内容は、単に「ダブル」が「2個、2重、二つ、二種類」程の意味で使用されているというにすぎず、「ダブル○○」の「ダブル」を必ずしも「二種類の」の意に限定してみなければならない理由はない。まして、「二種類の原材料」を使用した商品に限定して解しなければならない理由は全くないものであって、しかも、「二種類の原材料」を使用した商品に関しても、その品質記述力ないし品質説明力は、それのみでは備わっていないため、逆に各社自社商品としての特長的説明が売り口上となっているのであり、これらのことからみても、いまだ「ダブル○○」は、「二種類の原材料」に限定して使用される品質表示とはいえないこと明らかである。
したがって、本件商標と無関係な食品のこれら使用例をもって、本件商標「ダブルレモン」が「二種類のレモンを使用した商品」の品質表示とは到底いえないものである。
(7)「ダブル○○」と称する食品の「二種類の原材料以外」の使用例
「ダブル○○」が食品について使用されるとしても、必ずしも「二種類の○○」を使用した商品の品質表示として使用されるものでなく、また、「ダブル」が顕著性を欠くからといって、「ダブル○○」の食品は、直ちに顕著性を有しないとはいえないものである。しかも、「二種類の原材料」に限定して解すべき理由もないことは、下記使用例及び後述(8)の登録例のとおりであって、「ダブル○○」の商標は、それぞれの構成自体の記述力ないし説明力及び使用による理解内容の成熱度によって個別に判断されるべきであるところ、該商標の品質記述力ないし品質説明力及び使用による定義の定着度によれば、いまだ本件商標「ダブルレモン」が顕著性を有しないとはいえないものである。
ア 「ウィスキーのダブル」
ウィスキーの飲用量シングル(約30ミリリットル。タンブラーグラスに注いで指1本相当。)に対し、ダブル(約60ミリリットル。同指二本相当。)は、使用によって品質内容の理解の定着したものであって、「ウィスキーのダブル」が「二種類のウィスキー」のことをいうのに用いられないことは、自明である。この「ウィスキー」を「レモン」に置き換えて「レモンのダブル」と称しても意味不明であるごとく、単に「ダブル」の文字を含むとか、冠した語として共通性を有するからといって、同じ品質表示にはならず、同等品質表示の理解もないように、商標の顕著性の有無は、該商標を構成する文字による自己記述性ないし自己説明性と、その語の使用によって形成された品質内容とによって、品質表示か否か、商標として顕著性を有するか否かが判断されるべきであり、機械的方程式に値を代入して決せられるがごとき性質のものではない。
イ 「キリン淡麗 W(キリンタンレイダブル)」(乙24)
キリンビールの特定商品名であり、この「ダブル」は、「二種類」、「二倍」又は「二個」のいずれでもない。
ウ 「マルちゃん ダブルラーメン」(乙25)
二種類の原料でもなく、二種類の味表示でもない。二食分入りラーメンである。
エ 「森永 ダブルソーダ」(乙26)
二種類の原材料でも味でもない。二本入り氷菓である。
オ 「白鶴 ダブルパック」(乙27)
二種類の原材料でもなく、ブレンドでもない。一升瓶2本分(3.6L)の容量である。
(8)「ダブル○○」の酒類及び食品の商標登録
請求人の主張に反して、「ダブル○○」に関し、酒類及び食品についての商標登録が以下のとおり存在する。これらは、請求人の登録も含めて拒絶例に反しないこと、かつ、幾多の使用例があっても登録された商標であること、すなわち、商標としての自他商品の識別機能を備えた商標として登録されたものであり、請求人の類型的拒絶違反の主張は理由がない。
ア 「ダブルミント」
(ア)商標登録第1541388号「ダブルミント」第30類(ウィリアムリグレイカンパニー)(乙1)
(イ)商標登録第1541390号「ダブルミント」第30類(ウィリアムリグレイカンパニー)(乙2)
(ウ)商標登録第1782704号「DABURU MINTO/ダブルミント」第30類(ウィリアムリグレイカンパニー)(乙3)
イ 「ダブルコーラ」
商標登録第1687631号「DOUBLE-COLA」第32類(ダブル-コーラコムパニイ-ユーエスエイ)(乙4)
ウ 「ダブルソフト」
(ア)商標登録第2474078号「ダブルソフト」第30類(山崎製パン株式会社)(乙5)
(イ)商標登録第2580214号「Double Soft」第30類(山崎製パン株式会社)(乙6)
(ウ)商標登録第3019599号「ダブルソフト」第30類(山崎製パン株式会社)(乙7)
エ 「ダブルベリー」
(ア)商標登録第2582268号「ダブルベリー」第31類(鐘淵化学工業株式会社)(乙8)
(イ)商標登録第4981534号「ダブルベリー」第33類(メルシャン株式会社)(乙9)
(ウ)商標登録第3007407号「ダブルベリー」第32類(日本たばこ産業株式会社)(乙10)
オ 「ダブルグレープ」
商標登録第4093846号「Double Grape/ダブルグレープ」第30類(クラシエフーズ株式会社)(乙11)
カ 「ダブルカレー」
(ア)商標登録第4205560号「ダブルカレー」第29類(明治製菓株式会社)(乙12)
(イ)商標登録第5222031号「ダブルカレー」第29類(明治製菓株式会社)(乙13)
キ 「ダブルオリゴ」
商標登録第4868576号「ダブルオリゴ」第29類及び第32類(株式会社東洋新薬)(乙14)
ク 「ダブルウォーター」
商標登録第5308235号「ダブルウォーター」第30類(江崎グリコ株式会社)(乙15)
ケ 「ダブルじたて/W仕立て」
商標登録第5394544号「ダブルじたて/W仕立て」第30類(ヤマダイ株式会社)(乙16)
コ 「ダブルのコク」、「コクダブル」
(ア)商標登録第5498509号「ダブルのコク」第29類(森永乳業株式会社)(乙17)
(イ)商標登録第5498510号「ダブルのコク」第30類(森永乳業株式会社)(乙18)
(ウ)商標登録第5188719号「コクダブル」第30類(サントリーホールディングス株式会社)(乙19)
サ 「W WHISKY SHOP」
(ア)商標登録第5378614号「W WHISKY SHOP」第35類及び第43類(サントリーホールディングス株式会社)(乙20)
(イ)商標登録第5449597号「W WHISKY SHOP」第33類(サントリーホールディングス株式会社)(乙21)
シ 「Wの香り」
(ア)商標登録第5498511号「Wの香り」第29類(森永乳業株式会社)(乙22)
(イ)商標登録第5498512号「Wの香り」第30類(森永乳業株式会社)(乙23)
(9)「ダブルレモン」の顕著性に関するアンケート
請求人が実施したアンケートは、一般消費者を対象に実施されたものであり、必ずしも商標の顕著性について熟知し精通しているとは限らない回答者においては、自己の知っている実在の商品を想起できるか否か、また、想起した商品での使用態様において、該文字が大書使用(「芋焼酎」、「プレミアム」)されているかどうか、また、主商標表示に対し添え書き的使用(「ダブルレモン」)されているかどうかの範囲で回答している可能性が高い。参考までに、アンケートにおいて提示された語から想起される商品を例示する(乙28)。
以上を考慮すれば、「ダブルレモン」が品質表示と回答した者が50.7%あるのは、添え書き的使用されたパッケージを想起して回答していることを考えると、大書されていたら商標であると回答した者が27.6%と入れ替わっていたかもしれず、言い換えれば、「ダブルレモン」が「添え書き」されたものであっても、特定会社の商品名、すなわち、商標であると回答している者が27.6%もあることの方がむしろ当を得ている可能性があるというべきであり、ここに一般消費者が請求人のいう「二種類のレモンを使用した酒」の品質表示と理解している可能性は極めて低いといわなければならない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同項第6号のいずれにも該当しないものである。

第4 当審の判断
1 甲各号証について
請求人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)日本食糧新聞の電子版の写しによれば、以下のとおりである。
ア 1995年3月13日付けの記事(甲34)において、「アサヒビール、北海道でも『ダブル酵母生ビール』発売」の見出しの下、「【札幌】アサヒビール(株)北海道支社・・・は1日、新開発の“マリッジ製法”による“のどごしの良さ”と“口あたりの良さ”を同時に実現した新しい味わいの『アサヒダブル酵母生ビール』四品種・・・を道内でも新発売した。今回、新開発した“マリッジ製法”は、・・・同社独自の研究開発の中から実現されたもの。まず、二種類の酵母をそれぞれに最適な成分組成の麦汁で主発酵させ、それぞれの酵母の特長を充分に引き出した二つの若ビール(主発酵の終了したビール)をつくり、この二種類の酵母が新しい味わいのビールを実現させた。」と記載されている。
イ 2004年1月26日付けの記事(甲35の1)において、「サントリー、バレンタインシーズンの贈り物にハートラベルのワイン3種発売」の見出しの下、「サントリー(株)・・・は27日、『フルーツワインセレクション・ダブルピーチ〈ハートラベル〉』(写真)を数量限定で全国発売する。・・・『ダブルピーチ』は○一年3月に発売した『フルーツワインセレクション』の新アイテムで、桃のワインと上質な桃の果汁を使った“ダブルピーチ”のワイン。」と記載されている。
ウ 2002年3月8日付けの記事(甲37)において、「『小岩井牛乳』・『ダブルキャラメルオ・レ』発売(小岩井乳業)」の見出しの下、「▽『小岩井ダブルキャラメルオ・レ』(乳飲料)は、甘いキャラメルと苦みのあるキャラメルの2種類をブレンドし、ミルクを加えた新しい味わいに仕上がっている。」と記載されている。
エ 2004年6月21日付けの記事(甲38の1)において、「『トロピカーナ ムースシャーベット ダブルピーチ』発売(キリンビバレッジ)」の見出しの下、「キリンビバレッジ・・・は、氷菓『トロピカーナ ムースシャーベット〈ダブルピーチ〉』などシリーズ品3品を5月18日から関東甲信地区・・・で発売した。・・・〈ダブルピーチ〉は、白桃の果汁に黄桃の果肉を加えた2種類の味が楽しめる。」と記載されている。
オ 2007年9月26日付けの記事(甲41の1)において、「『キリン 午後の紅茶スペシャル ダブルベルガモット』発売(キリンビバレッジ)」の見出しの下、「◆会社名=キリンビバレッジ・・・アールグレイ紅茶にさらにイタリア産ベルガモット果汁を加え、アールグレイ紅茶由来のベルガモットのさわやかな香りと、果汁そのものの味わいがダブルで楽しめるぜいたくな味わい。」と記載されている。
カ 2008年5月2日付けの記事(甲42)において、「『カルフェ ダブルショコラ』発売(江崎グリコ)」の見出しの下、「ココアメレンゲとビターチョコのダブルのカカオ感が楽しめる。」と記載されている。
キ 2008年6月25日付けの記事(甲43)において、「『ぎゅっとフルーツヨーグルト 南国ダブルマンゴー』発売(森永乳業)」の見出しの下、「◆会社名=森永乳業・・・◆商品特徴=発酵乳。・・・手軽に食べられるパウチ型ヨーグルト。2種類のマンゴーを使い、マンゴーの食感・風味が楽しめる。」と記載されている。
ク 2008年10月17日付けの記事(甲44)において、「『シーズケース果実できゅっ レモン&グレープフルーツ』発売(アサヒフードアンドヘルスケア)」の見出しの下、「◆会社名=アサヒフードアンドヘルスケア・・・◆商品特徴=健康食品(錠菓)。・・・〈レモン&グレープフルーツ〉レモンとグレープフルーツのダブル果汁入りで、ジューシーで甘酸っぱい・・・」と記載されている。
ケ 2010年10月20日付けの記事(甲48)において、「『Dororich ダブルグレープフルーツゼリークリームin』発売(江崎グリコ)」の見出しの下、「◆会社名=江崎グリコ◆商品特徴=生菓子。シリーズ新アイテム。ストローで飲むゼリー。ホワイトとピンクの2種類のグレープフルーツを使用したフルーツゼリーとさわやかなクリームで、今までにない・・・飲むデザートに仕上げた。」と記載されている。
コ 2011年3月28日付けの記事(甲49)において、「『クリアイン フルーツのど飴』発売(日本クラフトフーズ)」の見出しの下、「◆会社名=日本クラフトフーズ◆商品特徴=菓子。リニューアル。フルーツのおいしさ、みずみずしさを、透き通った2色のキャンデーで表現した2層キャンデー。2層の特徴を生かし、人気のレモン、グレープ、青リンゴに加えて黄桃と白桃を重ねた“ダブルピーチ”が入った。」と記載されている。
サ 2011年9月23日付けの記事(甲51)において、「『パリッテ ダブルチョコ』発売(江崎グリコ)」の見出しの下、「◆会社名=江崎グリコ◆商品特徴=アイスクリーム類。・・・2つのチョコが折り重なる深い味わい。」と記載されている。
シ 2011年12月2日付けの記事(甲53の1)において、「アサヒフードアンドヘルスケア、20?30代男性向けバランス栄養食『ガツン』発売」の見出しの下、「アサヒフードアンドヘルスケアは・・・バランス栄養食『GATZUN(ガツン)〈ダブルチョコ〉=写真、・・・『ガツン〈ダブルチョコ〉』は、しっとりとやわらかいチョコ味の生地に、風味豊かなチョコレートクリームをサンドした。」と記載されている。
ス 2011年12月14日付けの記事(甲54)において、「『スイーツトルテ ダブルチョコケーキ』発売(不二家)」の見出しの下に、「◆会社名=不二家◆商品特徴=菓子。・・・ケーキのおいしさをチョコに閉じ込めた、“ケーキinチョコ”。・・・〈ダブルチョコケーキ〉チョコレートクリームにチョコレートビスキュイをダブルで組み合わせて、チョコケーキのおいしさを表現した。」と記載されている。
(2)ニュースリリースの写しによれば、以下のとおりである。
ア 1999年9月20日付けの「ファミリーマート」のニュースリリース(甲36)において、「ファミリーマートのバージョンアップ第10弾『スーパーベーグルサンド』ハム&ダブルチーズ 新発売!・・・」の見出しの下、「『スーパーベーグルサンド』ハム&ダブルチーズはチェダーチーズに、スイスのベルン北部のエメンタール渓谷周辺が発祥の地で酸味が少なく、くるみのような香りと甘い風味があるエメンタールチーズをプラスすることにより、コクと風味豊かな味わいに仕立て上げました。」と記載されている。
イ 2004年5月31日付けの「キリンビバレッジ」のニュースリリース(甲38の2)において、「キリンビバレッジ株式会社・・・は、ふんわりとした食感と果実のおいしさが楽しめるフルーツアイスデザート『トロピカーナ ムースシャーベット』(デザートオレンジ、ダブルピーチ、スイートミックスベリー)の販売を、関東甲信地区・・・で5月18日(火)から開始しました。」と記載されている。
ウ 2007年7月13日付けの「キューピー」のニュースリリース(キューピーアヲハタニュース)(甲40)において、「アヲハタ55/『ダブルベリー&チェリージャム(ラズベリー・ストロベリー)』/『アップル&シナモンジャム(メープルシロップ・レーズン入り)各165g』/8月17日(金)から全国に出荷/・・・『ダブルベリー&チェリージャム』は、ケーキのベースソースとしても使われるラズベリーとストロベリーのダブルベリーにチェリーをミックスしたジャムで、クリスマスなどにもぴったりです。」と記載されている。
エ 2007年8月20日付けの「キリンビバレッジ」のニュースリリース(甲41の2)において、「キリンビバレッジ株式会社・・・は、紅茶飲料のNo.1ブランド『キリン 午後の紅茶』のスペシャルラインから、ベルガモットの香りをつけた紅茶(アールグレイ)に、さらにベルガモット果汁を加えた『キリン 午後の紅茶スペシャル ダブルベルガモット』を、9月4日(火)から全国で新発売します。」と記載されている。
オ 2009年9月10日付けの「敷島製パン株式会社」のニュースリリース(甲45)において、【商品概要】として、「ダブルチーズビザ」の欄に「オニオンシートを折り込んだ生地にピザソースを塗り、シュレッド、レッドチェザーの2種類のチーズをトッピングしました。」と記載されている。
カ 2010年2月12日付けの「ハウス食品」のニュースリリース(甲46)において、「ハウス食品は、1日分のビタミン全13種類を配合した、手軽に栄養補給ができるフルーツ風味のクリームをサンドしたビスケット、ハウス『C1000 1日分のビタミン』<はちみつレモンクリームサンド><ダブルベリークリームサンド>を、2月22日から全国の全チャネルで新発売いたします。・・・【製品特徴】・・・ダブルベリー:ブルーベリー果汁0.41%、ストロベリー0.06%使用(生換算)」と記載されている。
キ 2010年8月26日付けの「日本ハム株式会社」のニュースリリース(甲47)において、「日本ハムグループの日本ハムデリニューズ・・・は、9月1日(水)より『ダブルソース ハンバーグ』と『ダブルソース チキン南蛮』の2品を新発売します。・・・この『ダブルソース ハンバーグ』と『ダブルソース チキン南蛮』は、・・・素材と相性の良い2種類のソースを合わせた‘ダブルソース’を使用した商品です。」と記載されている。
ク 2011年5月24日付け「明星食品 NEWS RELEASE」(甲50)において、「明星 究麺 つけ麺 特濃魚介だれ」の見出しの下、「明星食品株式会社・・・では、カップめん『明星 究麺 つけ麺 特濃魚介だれ』を2011年6月20日(月)から全国で新発売いたします。」の記載とともに、「商品の特徴」の項に「つけだれ:・・・極太麺に絡みつく特濃仕立てのダブルスープ(粉末、液体)で酸味、甘み、辛みをバランスよく効かせ、食べ飽きしないつけだれに仕上げました。」と記載されている。
ケ 2011年4月1日付けの「森永乳業株式会社」のニュースリリース(甲52の1)において、「森永乳業はこのたび、ストロベリーアイスクリームをストロベリーチョコでコーティングした、一口タイプアイス『ピノ W(ダブル)ストロベリー』を4月4日(月)より期間限定商品として全国にて発売いたします。」と記載されている。
コ 2011年9月28日付けの「森永乳業株式会社」のニュースリリース(甲52の3)において、「森永乳業は、コーヒーアイスクリームをコーヒーチョコでコーティングした、一口タイプアイス『ピノ W(ダブル)コーヒー』を10月3日(月)より期間限定商品として全国にて販売いたします。・・・発売35周年の今年は、アイスもコーティングチョコも同じフレーバーに統一した“W(ダブル)シリーズ”を展開しております。」と記載されている。
(3)甲第62号証は、調査目的を「請求人の依頼による、各種『アルコール飲料』のパッケージに表示されている言葉が、一般需要者が商品の『ブランド』と認識するか、商品の『品質表示』であると認識するかの意識調査を目的とする。」、調査方法を「ウエブサイトによる調査に協力することを目的に当社に、『Web調査対象者』として登録されている者に対して、調査を行うウエブサイトのURLを記載した電子メールを発信し、当該ウエブサイトにアクセスした対象者が、画面上に表示される調査事項に回答する。」、調査対象者を「『アルコール飲料を飲まれる方を対象とする調査』であることを告知し、条件を満たす20歳以上の対象者のみが回答する。」、調査実施期間を「2012年8月17日?8月19日」とするものであり、画面に表示される調査事項は、「以下に記載されている語が『アルコール飲料』のパッケージに表示されている場合、あなたは商品の『ブランド名』、商品の『品質表示』どちらに近いと思いますか。お気持ちをお答えください。」であって、その「以下に記載されている語」は「(a)いいちこ、(b)糖質ゼロ、(c)辛口、(d)スーパードライ、(e)ダブルレモン、(f)芋焼酎、(g)松竹梅、(h)まろやか、(i)氷結、(j)プレミアム」とする調査であり、その調査結果とともに、株式会社インテージから請求人あてに平成24年10月25日付けでされた「調査報告書」である。
調査結果として報告された添付書類3(4枚目)の一覧には、上記「(a)いいちこ」ないし「(j)プレミアム」の10の語の欄が設けられており、「ダブルレモン」の語については、「ブランド名(コカ・コーラのような特定の商品名)」が27.6%、「品質表示(商品の味わい、原料、産地等)」が50.7%、「分からない」が21.7%であることが記載されている。
2 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本件商標及びそれを構成する文字又は語について
本件商標は、「ダブルレモン」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「ダブル」の文字が「2重。2倍。複。」の意味を有する英語「double」の外来語として、一般に広く理解、認識されているものであり、また、「レモン」の文字が、例えば、「大辞林(第3版)」に「果肉は酸味が強く香気があり、料理の添え物・菓子・清涼飲料などに用いる。」と記載されているように、レモンの果汁・果肉は、食品に幅広く使用されているものであるから、本件商標は、「ダブル」の片仮名と「レモン」の片仮名とを結合してなるものと看取し、把握されるものである。
(2)「ダブル○○」の語の使用について
請求人の提出に係る証拠によれば、飲食料品の業界では、本件商標の登録審決時前より、2種類の原材料、品質等を有する商品であることを表すための語として、例えば、ビールに「ダブル酵母生ビール」(甲34)、ベーグルサンドに「ダブルチーズ」(甲36)、乳飲料に「ダブルキャラメルオ・レ」(甲37)、氷菓に「ムースシャーベット<ダブルピーチ>」(甲38)、ジャムに「ダブルベリー&チェリージャム」(甲40)、紅茶飲料に「ダブルベルガモット」(甲41)、チョコレート菓子に「ダブルショコラ」(甲42)、ヨーグルトに「ダブルマンゴー」(甲43)、パン・菓子において「ダブルチーズピザ」(甲45)、ビスケットに「ダブルベリークリームサンド」(甲46)、ハンバーグなどの加工食品に「ダブルソース」(甲47)、生菓子に「ダブルグレープフルーツゼリー」(甲48)、アイスクリームに「ダブルチョコ」(甲51)などのように、「ダブル○○」の語が使用されていることが認められる。
また、2011年3月28日付け日本食料新聞(電子版)において、「『クリアイン フルーツのど飴』発売(日本クラフトフーズ)」の見出しの下、「商品特徴=菓子。リニューアル。フルーツのおいしさ、みずみずしさを、透き通った2色のキャンデーで表現した2層キャンデー。2層の特徴を生かし、人気のレモン、グレープ、青いリンゴに加えて黄桃と白桃を重ねた“ダブルピーチ”が入った。」(甲49)、同年5月24日付け「明星食品 NEWS RELEASE」において、「明星 究麺 つけ麺 特濃魚介だれ」の見出しの下、「商品の特徴」の項に「つけだれ:・・・極太麺に絡みつく特濃能仕立てのダブルスープ(粉末、液体)で酸味、甘み、辛みをバランスよく効かせ、・・・」(甲50)との記載にあるように、文章中においても「ダブル○○」の語が使用されている。
(3)小括
以上よりすると、本件商標「ダブルレモン」が、本件商標に係る指定商品について使用された場合、これに接した取引者・需要者は、該商品が2種類の原材料ないし品質を有するものであることを直ちに理解し、認識するというのが相当である。
したがって、本件商標は、商品の原材料又は品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
3 被請求人の主張について
被請求人は、「『ダブル○○』の『ダブル』には多様な意味の使用例があり、これを『2種類』に限定して理解しなければならない理由はなく、辞書においても『ダブル』は、『2重。2倍。複。』など多様な意味として広く認識されており、また、『2種類』の意味についても、請求人が挙げた飲食料品の使用例でもいかなる2種類なのかは個々の商品ごとに特徴があり、その説明を聞いて初めて理解できるものばかりであるから、本件商標が顕著性を有しないとはいえない。」旨主張する。
しかしながら、2つ以上の語を結合したものが、商標として顕著性を有するか否かは、それぞれの語の意味、各語の続き具合による意味の特定、使用商品や関連商品についての各語の使用状況等により、取引者、需要者がどのように認識するかを考慮して判断されるべきところ、「ダブル」の語が多様な意味を有するとしても、該語の後に続く「レモン」の語との組み合わせにより、上記2のとおり、「ダブルレモン」の語全体として、該語が使用された商品が2種類の原材料ないし品質を有するものであることを直ちに理解、認識させるものであるといわざるを得ないものであり、また、いかなる2種類なのかは個々の商品ごとに特徴があるとしても、結局、個々の商品ごとにみれば、該商品が2種類の原材料ないし品質を有するものと認識されることに変わりはないものであるから、請求人の上記主張は、採用できない。
また、被請求人は、請求人が実施したアンケートについて、該アンケートにおいて提示された語から想起されるであろう商品を例示して(乙28)、『ダブルレモン』が品質表示と回答しているものが50.7%あるのは、添え書き的に使用されたパッケージを想起して回答していることを考えると、大書されていたら、商標であると回答した者が27.6%と入れ替わっていたかもしれず、一般消費者が請求人のいう「二種類のレモンを使用した酒」の品質表示と理解している可能性は極めて低い。」旨主張する。
しかしながら、上記アンケートは、10の語(文字のみ)について調査したものであるところ、回答者において、被請求人が例示する商品を想起したとは必ずしもいい難く、そもそも、商品に付された文字等が大書されていればブランド名であり、小さく書されていれば品質表示であると一概にいえるわけでもない。そして、アンケート結果において、「ダブルレモン」の語について、「ブランド名」が27.6%、「品質表示」が50.7%、「分からない」が21.7%との各比率は、本件商標が顕著性を有しないことを首肯することはあっても、上記認定、判断を否定する根拠にはなり得ないというのが相当である。
よって、被請求人の該主張も採用することはできない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであるから、同法第46号第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2013-08-23 
出願番号 商願2010-7167(T2010-7167) 
審決分類 T 1 11・ 13- Z (X33)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早川 真規子石井 亮 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2012-03-30 
登録番号 商標登録第5481981号(T5481981) 
商標の称呼 ダブルレモン、ダブル、レモン 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 
代理人 柳生 征男 
代理人 片山 礼介 

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