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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効としない 042
管理番号 1280077 
審判番号 取消2011-300123 
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-02-04 
確定日 2013-10-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第3084129号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3084129号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張し、平成4年9月29日に登録出願、第42類「電子計算機による計算処理,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守の助言,コンピュ?タデ?タベ?スへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テ?プその他の周辺機器を含む。)の貸与」を指定役務として、平成7年10月31日に特例商標として設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第53条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標の商標的使用態様における使用であること
甲第3号証は、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下「参加人」という。)のサービス等を示すウェブページの2010年7月27日時点における複製である。甲第3号証の左上隅には、別掲(2)のとおり、青色の矩形の図形中に「NTT/DaTa」の文字が示されており、当該文字は、本件商標と同一である(別掲(2)の標章を、以下「使用標章」という。)。
さらに、甲第3号証には、参加人が提供するサービスが示されており、その中には、「セキュリティ」や「WEBシステム」等、本件商標の指定役務又は類似する役務を含む。このため、参加人が、本件商標を指定商品(審決注:「指定役務」の誤記と思われる。)又は類似する役務との具体的関係において使用していること、すなわち、商標的使用態様において使用していることは明らかである。
(2)参加人が通常使用権者であること
甲第4号証は、参加人の沿革を示す同人のウェブページの2010年7月27日時点における複製である。甲第4号証に示すように、参加人は、被請求人の内部組織であったデータ通信事業本部を前身とし、被請求人から分離独立した後、1998年8月1日に、現在の商号に社名変更したことが記載されている。
したがって、参加人は、被請求人の内部組織を前身とし、そのウェブサイトにおいて本件商標又は類似商標を商標的使用態様において使用しており、しかも、被請求人が本件商標に係る商標権に基づいて、参加人に本件商標又は類似商標の使用の差止を求めた事実も存在しないから、参加人は本件商標の事実上の通常使用権者であることは明らかである。
(3)参加人の本件商標の使用による品質誤認
参加人は、本件商標の指定役務に含まれる第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関して、甲第5号証の広告を実施した。
ア 甲第5号証(NTTデータCSR報告書2009)は、参加人のウェブページに公開されている同名の報告書の一部である。甲第5号証には、「グループ倫理綱領の浸透などを中心に法令遵守の強化に努めています。」という記載があり、また、「法令や企業倫理などに逸脱する行為を早期に発見し、リスクの発生を未然に防止するため、社員・協働者・お取引先などNTTデータグループで働く全ての方から相談・申告を受ける内部通報制度『ホイッスルライン』を2003年4月から設置・運用しています。」という記載がある。
上記記載において、参加人の役務の質として、法令に反する行為をしないことが広告されている。また、日本電信電話株式会社という世界的に優良と目される企業の著名な略称であるNTTが付された商標を使用している以上、参加人の役務の質として、法令に反する行為をしないというのは、需要者が抱く当然の認識である。
なお、役務の提供に際して法令に反する行為をしないことが、商標法第53条に規定する役務の質の重要な要素であることは当然である。
イ 甲第6号証(2010年6月23日付け日本経済新聞の記事)には、参加人の従業員が役務の提供に際して、役務の提供先に賄賂を送付していた事実が記載されている。
上記記載により、参加人が役務の提供にあたり、法令に反する行為を行っていたことは明らかである。
ウ 参加人のウェブサイトにおける広告には、参加人の役務の質として、法令に反する行為がないことを謳っているのに対して、実際には、参加人はその役務の提供に際して、法令に反する行為を行っていた。
また、参加人が使用する商標は、被請求人の著名な略称NTTを含む以上、参加人の役務の質として、法令に反する行為がないという印象を与えるが、実際には、参加人はその役務の提供にあって、法令に反する行為を行っていた。
このため、参加人による本件商標の使用が役務の質の誤認を生ずるものであることは明らかである。
(4)注意義務の懈怠
上述のように、参加人は、被請求人の内部組織をその前身としており、また、被請求人は、参加人の最大の株主である(甲第8号証)から、被請求人が参加人に本件商標の使用を許容していることは明らかである。そして、被請求人は、本件商標を参加人に使用させているにもかかわらず、上記のような品質誤認を生ずる使用を放置したのであるから、「相当の注意をしていた」(商標法第53条第1項ただし書)事実はない。
(5)むすび
以上のように、参加人は本件商標を使用しており、本件商標又は類似商標が付された上記の広告等により、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の役務の質として、法令に反することはないという印象を、需要者に対して与えていた。これに対して、事実上の通常使用権者である参加人が提供した役務の質は、上記にて説明したように法令に反するものであった。
したがって、参加人による本件商標又は類似商標の使用は、役務の質の誤認を生ずるものであることは明白である。
そして、被請求人が、相当の注意をしていた事実はない。
よって、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、請求人は、本件商標の商標権者の別の商標権である登録第3303268号に係る審決に対する取消訴訟である平成22年(行ケ)第10279号事件における被告(本件商標の商標権者)作成の書面中の以下の記載に接し、本件商標の商標権も当然に取り消されるべきであることの教示を受け、本件審判の請求に至ったものである。
すなわち、上記事件における被告準備書面(甲第9号証、26頁)には、「本件商標は、登録第3303268号に係る登録商標であるのに対して、NTT/DaTaは、NTTとDaTaとを独特のデザイン化された文字書体で上下二段に表示した登録第3084129号にかかる登録商標であるから・・・両者は別個の登録商標であるところ、原告は、登録第3084129号にかかる登録商標であるNTT/DaTaのつき不正使用がなされたと主張することにより・・・これとは異なる登録第3303268号にかかる本件登録商標の取消を請求している。」と記載されている。
2 回答書による主張の補充
(1)本件商標の使用に関する主張の補充
参加人が本件商標をその指定役務又はこれに類似する役務との関係において使用しているとの主張を補充する。
参加人の作成に係る2009年度のIRプレゼンテーション資料のAPPENDIX(甲第10号証)の第1ページ目の左上隅の青色矩形の図形中に本件商標と同一または類似の文字が記載されているから、この資料が頒布された平成21年(2009年)2月を含み、少なくとも平成20年から平成21年にかけて、本件商標を、官公庁向けの電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守又はこれに類似する役務との関係において、継続的に使用していた(甲第10号証ないし甲第12号証)。
(2)本件の役務の質の誤認に関する主張の補充
ア 役務の質の誤認の主体について
商標法第53条第1項の取消審判が一般需要者への弊害防止の手段として位置づけられていることを考慮すれば、役務の質の誤認の主体は、需要者であり、これを本件の指定役務との関係でみると、参加人が官公庁向けに電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守を提供していること(甲第10号証)等を考慮すると、官公庁が、本件商標の指定役務についての需要者である。
イ 役務の質の誤認に関して
本件についてみると、官公庁の政府調達(一般競争入札)の競争参加資格として、「指名停止措置が講じられている者ではないこと」の要件が課されることは広く知られているところであるが、例えば、工事請負契約に係る指名停止等の措置要領(甲第13号証)によれば、指名停止措置を行う際の基準として、贈賄の容疑により入札者の使用人が公訴提起された場合が含まれているため、官公庁は、ある商標を使用した役務の提供者を選択する際に、当該商標を使用した役務の提供者の使用人として「贈賄を行う使用人を有しない」との事実を役務の提供者の選択を行うための判断要素としており、契約を受注させるのにふさわしくない業者を迅速に排除するための要件として用いている。
そして、需要者たる官公庁において、参加人が本件商標を指定役務に使用していた、少なくとも平成20年から平成21年を含む期間、参加人が「贈賄を行う使用人を有する」との事実を誤認しなければ、当該役務の提供者を選択することはありえなかったといえるところ、参加人は、「贈賄を行う使用人を有する」との事実について、官公庁に誤認を生じさせた。この参加人による行為は、当該商標の持つ品質保証機能(利用者が取引を敏速に行うために役立つ機能)を著しく減殺させる行為であるといえ、官公庁が誤った役務提供者の選択を行わせたことになるから、商標法第53条第1項の「役務の質の誤認を生ずるものをした」ものとなる。

第3 被請求人及び参加人の主張
被請求人及び参加人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。
1 請求人は、甲第3号証を引用した上で、参加人のウェブサイト(ホームページ)上に、使用標章が表示されているとして、使用標章中の「NTT/DaTa」の部分において、本件商標が使用されていると主張するが、請求人の主張は、以下に述べるとおり理由がない。
すなわち、使用標章は、参加人の企業グループを示すシンボル表示であるところ、請求人が、使用標章が表示されていると主張する甲第3号証のウェブページ上には、「マーケット分野から探す」、「キーワードから探す」として、検索のための各種検索用語が列挙されているだけであるから、個別の商品や役務と共に使用標章が表示されているわけではない。
したがって、甲第3号証に、使用標章がされていたとしても、これが直ちに商標として使用されていることを示すものとは、何ら言えない。
これと共に、請求人は、本件で、商標法53条1項に基づき登録商標の取消を求めているものであるから、同条同項の適用との関係では、商標は、役務の質につき誤認を来すと主張するところの具体的な役務の提供に関連して使用されていることを要することは、いうまでもない。
この点からすると、使用標章は、上述のとおり、商標として使用されているものでないことが明らかであるから、本件審判の請求は、そもそもその前提において失当というべきである。
2 請求人は、甲第5号証に記載の「グループ倫理綱領の浸透などを中心に法令遵守の強化に努めています。」、「法令や企業倫理などに逸脱する行為を早期に発見し、リスクの発生を未然に防止するため、社員・協働者・お取引先などNTTデータグループで働く全ての方から相談・申告を受ける内部通報制度『ホイッスル・ライン』を2003年4月から設置・運用しています。」を引用した上で、参加人の役務の質として、法令に反する行為をしないことが広告されていると主張する。
しかし、上記は、参加人が企業として法令遵守に努め、そのための体制を整えているとの記載に止まり、これが直ちに本件商標の指定役務である第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の具体的内容や質を特定することになるものでないことは明らかである。
加えて、甲第5号証は、参加人の2009年度のCSR報告書であるところ、CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の略語であり、対社会に向けて、企業の理念や目標を掲げているものである。
このことからも明らかなとおり、CSR報告書は、個別の取引において顧客に提供する役務の内容や質を特定するものでないことは言うまでもなく、一般論としても、企業が発行するCSR報告書に基づき、当該企業が顧客に対して提供する個別の役務の内容や質を特定しようとすることには無理があり、主張自体において失当というべきである。
3 請求人は、甲第6号証及び甲第7号証を引用して、参加人の従業員が役務の提供にあたり、法令違反を行ったとも主張する。
しかし、甲第6号証及び甲第7号証の内容を検討するも、参加人が具体的な役務を提供していた事実はなく、これと共に、当該従業員の行為とされるものと、参加人が顧客に提供したと主張している役務(そのような役務が提供されていたものでないことは、上述したとおりである。)の内容や質自体とは何らの関係もなく、さらには、上述のとおり、本件商標が、請求人の主張に係る役務の提供なるものとの関連において使用されたとの事実も認められないのであるから、具体的な役務の質の誤認などおよそ生じ得るものでないことは、ここで指摘するまでもないことである。
したがって、請求人の主張は、商標法第53条第1項の適用に関する主張としては、主張自体において失当というほかない。
4 請求人は、商標法第53条第1項ただし書の適用との関係において、被請求人が参加人に対する監督義務を怠っていたと主張する。
しかし、本件では、そもそも役務の質の誤認を生ずる態様での商標の使用が存在していない。したがって、被請求人が監督義務を懈怠したのか否かについては、およそ問題となり得ない。上記のとおりであるから、請求人の上記主張は全て失当である。
なお、付言すれば、請求人は、取消2009-300987事件の審決に対する審決取消訴訟(知財高裁平成22年(行ヶ)第10279号)についても言及しているが、同事件については、平成23年2月28日に知財高裁で判決が言い渡され、請求人の請求が全て排斥されたものであることを付言しておく(なお、同事件の関連事件である平成22年(行ヶ)第10127号、同第10157号の各事件においても、同一日の平成23年2月28日に判決が言い渡され、請求人の請求は、上記同様に全て排斥されている)。
5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張は全て失当であり、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
商標法第53条第1項は、「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれらに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。」と規定するところ、参加人が本件商標の商標権の通常使用権者であることについては、当事者間に争いがない(平成23年6月9日付け参加許否の決定参照。)。
そして、平成22年(行ケ)第10279号判決(平成23年2月28日判決言渡)においては「商標法第53条第1項の要件として、登録商標又はこれに類似する商標の使用がされること、及び役務の質の誤認を生ずるものをしたことが挙げられる。したがって、同項の要件に該当するというためには、一般的抽象的に、登録商標又はこれに類似する商標の使用がされた事実が存在するのみでは足りず、役務の質の誤認を生じさせると主張されている具体的な役務との関連において、登録商標又はこれに類似する商標の使用がされた事実が存在することが必要といえる。」旨記載されている。
1 参加人による使用標章の使用について
(1)請求人は、甲第3号証ないし甲第8号証及び甲第10号証ないし甲第15号証を提出し、参加人が本件商標の商標権の通常使用権者であること及び参加人が同人のウェブページ上で表示する使用標章が商標の使用であり、かつ、使用標章は本件商標と同一又は類似の商標であることを前提とした上で、参加人の従業員が、法令に反する行為をしたことから、参加人がウェブページ上で表示する使用標章の使用行為は商標法第53条第1項に規定する「役務の質の誤認を生ずるものをした」に該当し、かつ、被請求人は、参加人の上記行為を放置したから、「相当の注意をして」いなかった旨主張する。
(2)そこで、参加人による使用標章の使用行為が商標法第53条第1項の規定する「役務の質の誤認を生ずるものをした」に該当するものであるか否かについて、以下検討する。
ア 甲第3号証ないし甲第8号証及び甲第10号証ないし甲第15号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)甲第3号証は、「サービスやソリューションを探す」との表題のある参加人のウェブページであるところ、ここには、「NTTデータはお客様のビジネスパートナーとして、ITによる新しい価値を創造していきます。」と記載され、「フリーワード検索」、「マーケット分野から探す」等、種々の検索方法が示されている検索ページであり、当該ページの左上に、「変える力を、ともに生み出す。/NTTDATAグループ」の文字と共に使用標章が表示されている。
(イ)甲第4号証は、参加人の「沿革」が記載されたウェブページであり、当該ページの左上に、「変える力を、ともに生み出す。/NTTDATAグループ」の文字と共に使用標章が表示されている。
(ウ)甲第5号証は、「CSRを果たしていくための基礎/コンプライアンス」の表題のもと、「法令や社会的規範を遵守し、ステークホルダーの皆様から信頼される企業グループであり続けるために、社員のコンプライアンス意識の向上を促し、不正な行為を防ぐためのさまざまな活動を展開しています。」等と記載され、参加人の理念や目標を掲げているウェブページである。
(エ)甲第6号証は、2010年(平成22年)6月23日付け日本経済新聞であるところ、「特許庁技官、収賄の疑い/NTTデータ部長から」の見出しの下、その内容が記載されている。
(オ)甲第7号証及び甲第15号証は、2010年(平成22年)7月14日及び同年9月14日発信のIP-NEWSであるところ、「特許庁汚職で同庁技官とNTTデータ部長を起訴、東京地検」の見出し及び「特許庁汚職、同庁技官とNTTデータ部長に猶予付き有罪判決」の見出しの下、その内容が記載されている。
(カ)甲第8号証は、参加人の株式情報のウェブページであり、当該ページの左上に、「変える力を、ともに生み出す。/NTTDATAグループ」の文字と共に使用標章が表示されている。
(キ)甲第10号証は、参加人作成に係る2009年2月の「APPENDIX」と表題のあるIRプレゼンテーション資料とするものであり、参加人の業務一般に関するものを内容とし、1ページの左上に、「変える力を、ともに生み出す。/NTTDATAグループ」の文字と共に使用標章が表示されている。
(ク)甲第11号証は、「政府調達事例データベースの検索結果」、甲第12号証は、平成22年8月30日参加人の社内調査委員会作成の「社内調査委員会報告書」、甲第13号証は、「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」、甲第14号証は、平成22年8月20日特許庁情報システムに関する調査委員会作成の「調査報告書」とするものである。
イ 前記アの事実によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
使用標章は、「変える力を、ともに生み出す。/NTTDATAグループ」の文字と共に各ページの左上に小さく表示されているところからすると、参加人のいわゆる社章として使用されているものと理解される。
そして、使用標章は、その構成中の「NTT/DaTa」の文字部分が本件商標と同一の構成よりなり、「エヌティティデータ」の称呼を同じくするものであるから、本件商標と使用標章とは類似の商標というべきである。
そこで、本件における使用標章の使用について、甲第3号証、甲第4号証、甲第8号証及び甲第10号証によれば、参加人のウェブページには、参加人の業務である情報システムの構築に関する説明、紹介、沿革、株式情報等が記載されていたこと、使用標章は,同ウェブページの上端に表示されたことが認められるが、同ウェブページは、参加人の製品、サービス等を公衆に向けて一般的に紹介したものであり、具体的なコンピュータシステムの開発,作成業務に関連するものではない。
そうすると、参加人のウェブページにおいて使用標章が表示された態様は、参加人が提供した具体的な役務との関連において使用標章が使用されたものということはできないから、商標法53条1項本文の要件に該当しない。
その他、参加人が提供した役務と具体的な関連性を有する態様で使用標章を商標として使用していたことを認めるに足りる証拠はない。
以上のとおり、使用標章の使用は、仮に商標的使用に当たるという余地があるとしても、役務の質の誤認を生ずるものとはいえず、商標法53条1項の「登録商標・・・に類似する商標の使用であつて・・・役務の質の誤認・・・を生ずるもの」との要件を充たすものとはいえない。
なお、請求人は、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第15号証を提出し、被請求人は法令に反する行為をしないことを広告しておきながら、本件商標の指定役務の需要者である官公庁に対し法令に反する行為を行ったことが明らかであり、かかる行為は商標法53条に規定する役務の質の誤認を生ずる旨、主張するが、上記のとおり、使用標章について、参加人が提供した役務と具体的な関連性を有する態様で商標としての使用があったとは認められないから、商標法53条1項の「登録商標又はこれに類似する商標の使用」との要件を欠くものというべきである。
2 むすび
以上のとおり、参加人による使用標章の使用は、商標法第53条第1項の要件を欠くというべきであるから、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標



(2)使用標章


(色彩は、甲第3号証を参照。)


審理終結日 2012-10-17 
結審通知日 2012-10-19 
審決日 2012-11-06 
出願番号 商願平4-274037 
審決分類 T 1 31・ 5- Y (042)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芦葉 松美水茎 弥野口 美代子 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 寺光 幸子
田中 亨子
登録日 1995-10-31 
登録番号 商標登録第3084129号(T3084129) 
商標の称呼 エヌテイテイデータ 
代理人 曽我部 高志 
代理人 正林 真之 
代理人 水谷 直樹 
代理人 曽我部 高志 
代理人 高野 芳徳 
代理人 八木澤 史彦 
代理人 水谷 直樹 

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