• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 観念類似 無効としない W03
審判 一部無効 外観類似 無効としない W03
審判 一部無効 称呼類似 無効としない W03
管理番号 1278991 
審判番号 無効2013-890007 
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-02-05 
確定日 2013-09-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5519734号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5519734号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成24年3月22日に登録出願、第3類「化粧品,爪用化粧品,つめ用ジェル,爪用美容液,爪用ローション,爪用美容オイル,爪用保湿クリーム,爪用トップコート,ネイルエナメル,ネイルエナメル除去液,爪用リムーバー,爪用キューティクルリムーバー,つめ磨き用化粧品,爪強化用の化粧品,マッサージ用ジェル,爪用接着剤,ネイルアート用接着剤,ネイルシール用ジェル状接着剤,つけづめ」並びに第8類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年8月1日に登録査定、同年9月7日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下の(1)ないし(29)のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第211135号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和3年7月12日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同4年11月21日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(2)登録第229929号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、昭和5年9月13日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同6年11月14日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(3)登録第250611号商標(以下「引用商標3」という。)は、「固拉普」の文字を縦書きし、その右に「クラブ」の文字を小さく縦書きしてなり、昭和8年2月16日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同9年1月31日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(4)登録第428813号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、昭和27年3月3日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同28年7月30日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(5)登録第428814号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲5のとおりの構成よりなり、昭和27年3月3日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同28年7月30日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(6)登録第875587号商標(以下「引用商標6」という。)は、「クラブ≪ママ≫クリーム」の文字を横書きしてなり、昭和42年4月25日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同45年10月9日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(7)登録第875588号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲6のとおりの構成よりなり、昭和42年12月16日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同45年10月9日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(8)登録第920789号商標(以下「引用商標8」という。)は、「クラブ化粧品」の文字を横書きしてなり、昭和44年8月22日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同46年8月9日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(9)登録第1047458号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲7のとおりの構成よりなり、昭和46年3月22日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同48年12月14日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(10)登録第1082493号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲8のとおりの構成よりなり、昭和44年9月6日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同49年8月15日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(11)登録第1082494号商標(以下「引用商標11」という。)は、「クラブ」の文字を横書きしてなり、昭和44年9月18日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同49年8月15日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(12)登録第1082495号商標(以下「引用商標12」という。)は、「club」の文字を筆記体で横書きしてなり、昭和44年9月18日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同49年8月15日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(13)登録第1082496号商標(以下「引用商標13」という。)は、別掲9のとおりの構成よりなり、昭和44年9月18日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同49年8月15日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(14)登録第1109988号商標(以下「引用商標14」という。)は、「CLUB COSMETICS」の文字を横書きしてなり、昭和45年4月4日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同50年3月10日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(15)登録第1109989号商標(以下「引用商標15」という。)は、「クラブ コスメチックス」の文字を横書きしてなり、昭和45年4月4日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同50年3月10日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(16)登録第1188007号商標(以下「引用商標16」という。)は、「CLUB」の文字を横書きしてなり、昭和48年3月28日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同51年3月8日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(17)登録第1203758号商標(以下「引用商標17」という。)は、「可楽美」の文字を横書きし、その下に「クラブ」の文字を小さく横書きしてなり、昭和47年9月7日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同51年6月10日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(18)登録第1208882号商標(以下「引用商標18」という。)は、「CLUB COSMETICS」の文字を横書きしてなり、昭和45年4月4日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同51年7月12日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び商標権一部取消し審判(取消3-24213)の確定登録並びに指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類、第8類、第10類、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(19)登録第1208883号商標(以下「引用商標19」という。)は、「クラブ コスメチックス」の文字を横書きしてなり、昭和45年4月4日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同51年7月12日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び商標権一部取消し審判(取消3-24214)の確定登録並びに指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類、第8類、第10類、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(20)登録第1270784号商標(以下「引用商標20」という。)は、「クラブ」の文字を横書きしてなり、昭和45年11月10日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同52年5月16日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び商標権一部取消し審判(取消3-24215)の確定登録並びに指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類、第8類、第10類、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(21)登録第1270785号商標(以下「引用商標21」という。)は、「CLUB」の文字を横書きしてなり、昭和45年11月10日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同52年5月16日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び商標権一部取消し審判(取消3-24216)の確定登録並びに指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第3類、第8類、第10類、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(22)登録第1508731号商標(以下「引用商標22」という。)は、別掲7のとおりの構成よりなり、昭和46年3月22日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同57年4月30日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録及び商標権一部取消し審判(取消3-24219)の確定登録並びに指定商品の書換登録がされた結果、指定商品については、第8類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
(23)登録第5077743号商標(以下「引用商標23」という。)は、別掲10のとおりの構成よりなり、平成19年3月29日に登録出願、第3類、第5類、第14類、第16類、第18類、第21類、第25類、第29類、第30類、第35類、第41類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同19年9月14日に設定登録されたものである。
(24)登録第5121738号商標(以下「引用商標24」という。)は、別掲11のとおりの構成よりなり、平成19年4月2日に登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同20年3月21日に設定登録されたものである。
(25)登録第5121740号商標(以下「引用商標25」という。)は、「CLUB」の文字を横書きしてなり、平成19年4月2日に登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同20年3月21日に設定登録されたものである。
(26)登録第5121741号商標(以下「引用商標26」という。)は、「CLUB cosmetics」の文字を横書きしてなり、平成19年4月2日に登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同20年3月21日に設定登録されたものである。
(27)登録第5121742号商標(以下「引用商標27」という。)は、「クラブコスメチックス」の文字(「コスメチックス」の文字部分は、「クラブ」の文字部分に比べ、やや小さく表されている。)を横書きしてなり、平成19年4月2日に登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同20年3月21日に設定登録されたものである。
(28)登録第5178440号商標(以下「引用商標28」という。)は、「クラブコスメ」の文字を標準文字で表してなり、平成20年4月17日に登録出願、第3類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同20年11月7日に設定登録されたものである。
(29)登録第5178441号商標(以下「引用商標29」という。)は、「Club Cosme」の文字を標準文字で表してなり、平成20年4月17日に登録出願、第3類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同20年11月7日に設定登録されたものである。
(以下、引用商標1ないし引用商標29をまとめていうときは、単に「引用商標」という。)

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中、第3類『化粧品,爪用化粧品,つめ用ジェル,爪用美容液,爪用ローション,爪用美容オイル,爪用保湿クリーム,爪用トップコート,ネイルエナメル,ネイルエナメル除去液,爪用リムーバー,爪用キューティクルリムーバー,つめ磨き用化粧品,爪強化用の化粧品,マッサージ用ジェル,爪用接着剤,ネイルアート用接着剤,ネイルシール用ジェル状接着剤,つけづめ』についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第31号証を提出した。
【請求の理由】
(1)本件商標と引用商標との類似性
ア 称呼について
(ア)本件商標は、王冠の図形と、その下に、「CLUB NAIL」の文字を書してなる商標であって、その文字部分から「クラブネイル」の称呼が生じると考えられる。さらに、本件商標からは、以下の理由により、「クラブ」の称呼も生じる。
すなわち、本件商標の構成文字中「NAIL」は、近年、「ネイルアート」(手足の爪に施す化粧や装飾)や「ネイルサロン」(ネイルアートを施す店)のように、「つめ(爪)」を「ネイル」と呼ぶことが一般的となっていることから、「NAIL」の語に接した需要者は、これが「つめ(爪)」を意味する語であることを容易に認識する。そして、本件商標の指定商品中、第3類に属する指定商品(以下「本件請求に係る指定商品」という。)には、爪用の商品が指定されている。したがって、本件商標の構成文字中「NAIL」は、指定商品の品質や内容を表示する形容詞的文字であり、識別力のない文字である。これに対し、他の構成文字「CLUB」は、指定商品との関係で、特に品質や内容を表示する語ではなく識別力を有する。
よって、本件商標からは、文字全体の称呼「クラブネイル」のほかに、識別力のない文字「NAIL」を省いた「CLUB」の文字から「クラブ」の略称も生じる。
また、特許庁商標課編「商標審査基準」では、形容詞的文字(商品の品質等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する、としており、本件商標は、この原則が当てはまる事例であり、例外を考慮すべき特段の事情はない。よって、本件商標の文字部分「CLUB NAIL」は、形容詞的文字「NAIL」が付加結合されていない「CLUB」と類似するというべきである。
(イ)前記2に示す引用商標は、「club」、「CLUB」若しくは「クラブ」の文字のみからなる商標又は上記文字に図形が付された商標若しくは他の文字が付された商標である。引用商標のうち、「club」、「CLUB」又は「クラブ」の文字のみからなる商標からは、これらの文字に相応して「クラブ」の称呼が生じる。また、「club」、「CLUB」又は「クラブ」の文字に図形が付された商標についても、称呼を生じ得る要素は文字のみであり、これらの文字に相応して「クラブ」の称呼が生じる。さらに、「club」、「CLUB」又は「クラブ」の文字に他の文字が付された商標は、付された文字が、商品の普通名称(化粧品、クリーム、コスメチックスなど)であったり、識別力のない2文字のアルファベット(SP)であったり、上記文字と観念上の一体性がない文字(請求人の会社名や「固拉普」等のような特定の観念が生じない文字)であったりすることから、これらの商標は、称呼上、「クラブ」と略称されるか、あるいは「クラブ」と他の構成文字に相応した称呼とに分断され得る。よって、「club」、「CLUB」又は「クラブ」の文字に他の文字が付された商標についても、「クラブ」の称呼が生じる。
(ウ)両商標の称呼の比較
以上のとおり、本件商標と引用商標は、「クラブ」の称呼を同じくし、称呼上互いに類似することは明らかである。
イ 請求人と「CLUB」、「クラブ」の関係について
「CLUB」、「クラブ」については、請求人の関連会社である株式会社クラブコスメチックス(以下「クラブコスメチックス社」という。)が明治39年に「クラブ洗粉」、同43年に「クラブ白粉」を発売して以降(当時の社名は「株式会社中山太陽堂」)、同社が自らの重要ブランドの一つとして、さらに、昭和46年に現社名に変更してからは、ハウスマークとして永年にわたり使用してきた。このことは、同社の会社沿革(甲31)からも明らかである。また、「CLUB」、「クラブ」は、同社にとって極めて重要な商標であり、そのことは、前記2にあるように、多数の商標登録が存在することからも明らかである。
以上のような使用実績より、特に化粧品関連に「CLUB」の文字が付されていた場合、需要者は、その商品がクラブコスメチックス社が製造・販売したものであるかのように誤認・混同する。ましてや、本件商標のように、「CLUB+商品の内容・品質」からなる商標の場合は、クラブコスメチックス社の数ある化粧品ラインナップの一つと誤認することは明らかである。この意味でも、本件商標が引用商標と相紛らわしく類似する商標である。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似し、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。

4 被請求人の主張
被請求人は、前記3の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。

5 当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、金色の王冠の図形(以下「王冠図形」という。)の下に、黒色で「CLUB NAIL」の欧文字を横書きしてなるところ、構成中の王冠図形部分と「CLUB NAIL」の文字部分とを常に一体のものとして把握、認識しなければならない特段の理由は見当たらない。したがって、本件商標において、その構成中の「CLUB NAIL」の文字部分は、それ自体独立して自他商品の識別標識としての機能を有するものといえる。
そして、該「CLUB NAIL」の文字部分は、「CLUB」の文字と「NAIL」の文字との間に1字程度の間隔を有するものであるとしても、同一の書体をもって、同一の大きさでまとまりよく表され、両文字の間に外観上の軽重の差は見いだせないばかりか、これより生ずると認められる「クラブネイル」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。
また、「CLUB」の文字部分は、「?クラブ(CLUB)」、「クラブ(CLUB)?」のように団体の名称を表示するものとして、社会一般に広く用いられている実情に照らし、「NAIL」の文字との外観及び称呼上の一体性を併せ考慮すると、観念においても、「NAIL」の文字部分と一体のものとして捉え、構成する文字全体をもって、団体の名称を表したものと認識されるというのが相当であって、上記「CLUB NAIL」の文字部分の構成態様にあっては、その構成中の「CLUB」の文字部分のみを分離、抽出して、これを独立した自他商品の識別標識として把握、認識することはないというべきである。
したがって、本件商標は、その構成中の文字部分より、「クラブネイル」の一連の称呼のみを生ずるものであって、単に「クラブ」の称呼は生じないものといわなければならない。他に、本件商標より「クラブ」の称呼が生ずるとみるべき事情は存しない。
また、「CLUB NAIL」の文字部分からは、「クラブネイル」なる団体の名称の観念が生ずるものということができる。
イ 引用商標
(ア)引用商標11、12、16、20、21及び25は、「CLUB」、「club」(筆記体)又は「クラブ」のいずれかの文字のみよりなる商標であるから、その構成文字に相応して、いずれも「クラブ」の称呼を生ずるものである。
(イ)引用商標1、2、4、5、9、10、13、22ないし24は、「CLUB」、「club」(筆記体)又は「クラブ」のいずれかの文字あるいはこれらの文字を組み合わせたものを含む図形商標であって、これらの文字は、いずれも独立して自他商品の識別機能を有するものと認められるから、これらの文字より、いずれも「クラブ」の称呼を生ずるものである。
(ウ)引用商標3、6ないし8、14、15、17ないし19、26ないし29は、「CLUB」、「club」(筆記体)又は「クラブ」のいずれかの文字と他の文字とを結合した商標である。そして、そのうちの引用商標3及び17は、その構成中の「クラブ」の文字が、「固拉普」あるいは「可楽美」の文字の読みを表したと理解されるから、該「クラブ」の文字より、いずれも「クラブ」の称呼を生ずるものである。また、引用商標6における「≪ママ≫クリーム」及び引用商標7における「〈SP〉化粧品」の各文字部分は、商品の品質・普通名称等を表示するものであって、自他商品の識別機能を有しない部分といえるから、これらの文字の前に位置する「クラブ」の文字より、いずれも「クラブ」の称呼を生ずるものである。さらに、「クラブ化粧品」の文字よりなる引用商標8、「CLUB COSMETICS」の文字よりなる引用商標14及び18、「CLUB cometics」の文字よりなる引用商標26、「クラブ コスメチックス」の文字よりなる引用商標15及び19、「クラブコスメチックス」の文字よりなる引用商標27、「クラブコスメ」の文字よりなる引用商標28、「Club Cosme」の文字よりなる引用商標29は、いずれも構成上一体のものとして把握、認識されるとみるのが相当であるから、引用商標8は「クラブケショウヒン」の称呼を生ずるものであり、引用商標14、15、18、19、26及び27は、いずれも「クラブコスメチックス」の称呼を生じ、また、引用商標28及び29は、いずれも「クラブコスメ」の称呼を生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標の対比
(ア)外観
本件商標と引用商標は、それぞれ前記のとおりの構成よりなるものであるから、外観上明らかに区別し得る非類似のものである。
(イ)称呼
本件商標より生ずる「クラブネイル」の称呼と、引用商標1ないし7、9ないし13、16、17、20ないし25より生ずる「クラブ」の称呼、引用商標8より生ずる「クラブケショウヒン」の称呼、引用商標14、15、18、19、26及び27より生ずる「クラブコスメチックス」の称呼、引用商標28及び29より生ずる「クラブコスメ」の称呼は、構成する音の数・音質・音感等の差異により、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、互いに紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似する商標ということはできない。
(ウ)観念
本件商標は、その構成中の王冠図形部分より「王冠」の観念を生ずるものであり、また、「CLUB NAIL」の文字より、「クラブネイル」なる団体の名称の観念を生ずるものである。
そして、引用商標からは、本件商標と同一又は類似の観念が生ずるとみるべき理由は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標は、観念上類似する商標ということはできない。
(エ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、商標審査基準を引用して、本件商標中の「CLUB NAIL」は、形容詞的文字「NAIL」が付加結合されていない「CLUB」と類似するというべきである旨主張する。
しかし、商標審査基準は、審査の際の一つの目安、指針を示したものであり、商標の類否は、あくまで個別具体的に判断すべきものであって、本件商標は、前記認定のとおり、その構成態様から考察すれば、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれについても非類似の商標であるから、審査基準に記載の類否判断を根拠に、本件商標が引用商標に類似するとする請求人の主張は失当である。
イ 請求人は、その関連会社であるクラブコスメチックス社が明治39年に「クラブ洗粉」を発売して以来、「CLUB」、「クラブ」の商標は、同社の重要ブランドの一つとして、さらに、昭和46年に現社名に変更してからは、ハウスマークとして永年にわたり使用してきたものであるから、化粧品及びその関連商品に、「CLUB」の文字が使用されれば、その商品がクラブコスメチックス社が製造・販売した商品であるかのように、需要者が誤認・混同する旨主張する。
しかし、クラブコスメチックス社の使用に係る「CLUB」、「club」(筆記体)又は「クラブ」のいずれかの文字と2人の女性の図形とを結合した商標、「クラブ化粧品」及び「CLUB COSMETICS/クラブコスメチックス」の文字よりなる商標が、化粧品の需要者の間にある程度知られていたことは認め得るとしても、「CLUB」、「club」(筆記体)又は「クラブ」の文字よりなる商標が、それぞれ単独で、クラブコスメチックス社の業務に係る化粧品等を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、化粧品等の分野で広く認識されていたと認めるに足りる証拠の提出はない。加えて、前記(1)認定のとおり、本件商標は、「CLUB」、「club」(筆記体)又は「クラブ」の文字よりなる商標及びこれらを含む商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても非類似の商標であるから、商品の出所について誤認、混同を生じさせるおそれはないというべきであり、他に、商品の出所について誤認、混同を生じさせるおそれがあるとみるべき特段の事情も見いだせない。
したがって、上記に関する請求人の主張は理由がない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲


別掲1(本件商標)(色彩は原本参照)





別掲2(引用商標1)(色彩は原本参照)



別掲3(引用商標2)(色彩は原本参照)



別掲4(引用商標4)(色彩は原本参照)


別掲5(引用商標5)(色彩は原本参照)


別掲6(引用商標7)


別掲7(引用商標9及び引用商標22)


別掲8(引用商標10)


別掲9(引用商標13)



別掲10(引用商標23)(色彩は原本参照)


別掲11(引用商標24)



審理終結日 2013-07-08 
結審通知日 2013-07-10 
審決日 2013-07-24 
出願番号 商願2012-21662(T2012-21662) 
審決分類 T 1 12・ 261- Y (W03)
T 1 12・ 263- Y (W03)
T 1 12・ 262- Y (W03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人渡辺 航平 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 村上 照美
大森 健司
登録日 2012-09-07 
登録番号 商標登録第5519734号(T5519734) 
商標の称呼 クラブネイル 
代理人 森田 俊雄 
代理人 村上 智司 
代理人 向口 浩二 
代理人 深見 久郎 
代理人 竹内 耕三 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ