ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない X14 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X14 審判 全部無効 外観類似 無効としない X14 審判 全部無効 観念類似 無効としない X14 審判 全部無効 商3条1項5号 簡単でありふれたもの 無効としない X14 |
---|---|
管理番号 | 1277844 |
審判番号 | 無効2012-890052 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-06-15 |
確定日 | 2013-07-22 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5361516号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5361516号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成22年7月6日に登録出願され、第14類「時計」を指定商品として、同年10月15日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する登録第4730932号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成15年3月4日に登録出願され、第14類「時計,時計の部品及び附属品,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,キーホルダー,貴金属製宝石箱,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」を指定商品として、同年12月5日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第3 請求人の主張 1 請求の趣旨 請求人は、本件商標の登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。との審決を求め、請求の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証を提出している。 2 請求の理由 (1)本件商標の商標法第3条第1項第5号の該当性について 本件商標は、一体なものと把握されるのではなくして、「Z」と、商品を示す「watch」とに分離されて把握され、理解されるものである。 本件商標中の「watch」の部分は、本件商標の指定商品「時計」との関連では、自他商品の識別機能をもたない部分である。 そうすると、本件商標中の「Z」の部分が自他商品の識別機能を有するかどうか、が問題となる。 審査基準によると、「ローマ字の1字若しくは2字からなるとき・・・は〔商標法第3条第1項第5号〕の規定に該当するものとする」となっている。装飾を施した「ローマ字の1字若しくは2字」はこれに該当しないこととされているが、本件商標の「Z」の文字は「その下の横線を向かって右側に伸ばした」態様になってはいるものの、この程度では十分に装飾された文字になっているとはとても言い難いものである。ことから、結論として、本件商標中の「Z」の部分は、極めて簡単でありふれた標章で、自他商品の識別機能が無いこととなる。 よって、本件商標は、自他商品の識別機能を有する部分が存在せず、商標法第3条第1項第5号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第16号の該当性について 日本語では「時計」と総称しているが、英語では「携帯用の小さな時計」のことは「watch」といい、また、「置き時計」とか「掛け時計」といった「携帯することはない大きな時計」のことは「clock」といって明確に区別されている。 本件商標は、その構成中に「watch」の文字を有するものであり、本件商標に接する需要者・取引者は、本件商標の「watch」から実に容易に「腕時計」とか「懐中時計」とかいった「携帯用の小さな時計」を想起するから、本件商標が「置き時計」とか「掛け時計」などといった「携帯することがない時計」や「携帯することがない時計の部品及び附属品」に使用されるとなると、その商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがある。 よって、本件商標は、その指定商品中「置き時計,掛け時計,その他の携帯することがない時計,置き時計・掛け時計・その他の携帯することがない時計の部品及び附属品」については、商標法第4条第1項第16号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第11号の該当性について ア 指定商品の類否について 本件商標の指定商品「時計」は、引用商標の指定商品中の「時計,時計の部品及び附属品」と抵触している。 イ 商標の類否について (ア)称呼 本件商標からは、「ゼット・ウォッチ」又は「ズウォッチ」との称呼が生じる。他方、引用商標からは、「スウォッチ」との称呼が生じる。 称呼「ズウォッチ」と称呼「スウォッチ」とを比較すると、両者は、母音「u」を共通にし、かつ、舌端を前硬口蓋に寄せて発する摩擦音である「ズ」と「ス」の音を相違するという微差にすぎないから、その語調・語感が近似しており、相紛れてしまうものである。 よって、本件商標と引用商標は、称呼を類似にする商標であり、本件商標と引用商標は類似する。 (イ)外観 本件商標「Zwatch」と引用商標「swatch」とを外観の見地から比較すると、冒頭の第1文字が「Z」か「s」かの相違はある。しかしながら、「Z」と「s」とは鏡面に写した状態でほぼ同一に覚知される対称文字であり、商品「時計」ことに「watch」と称される「(携帯用の小さな)時計」の場合には、商標は時計の文字盤上に小さく表示されるのが商慣行となっていることから、本件商標と引用商標とを見間違える需要者・取引者は少なからずいるものと思われる。 よって、本件商標と引用商標は、外観を類似にする商標であり、本件商標と引用商標は類似する。 ウ 結論 本件商標は、商標法第3条第1項第5号、同法第4条第1項第11号及び同法同条第16号に該当するから、同法第46条第1項第1号にしたがって本件商標の登録は無効とされてしかるべきである。 第4 被請求人の主張 1 答弁の趣旨 被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出している。 2 答弁の理由 (1)商標法第3条第1項第5号の該当性について 本件商標は、構成全体をもって一体不可分の造語と認識すべきである。 また、本件商標の構成中「Z」と「watch」の文字は、その文字の大きさに差異があるとはいえ、バランスよく一体的にやや図案化してなるものである。そのため、たとえ「watch」の文字が、「(携帯用の小さな)時計」の意味を有する語であるとしても、それぞれの文字は、視覚的に無理なく一体のものとして把握し得る。 加えて、語頭のアルファベット文字「Z」からは、「ゼット」又は「ジー」との称呼が生じるため(乙第1号証)、本件商標全体から「ゼットウォッチ」又は「ジーウォッチ」との称呼が生じるが、これらの称呼はいずれも4音と短く、無理なく一連に称呼できる。 そうとすれば、本件商標を「Z」及び「watch」とに分離して観察されることなく、全体として、被請求人の創作に係る造語として認識されると考えるのが自然である。 そして、本件商標は、大きく書された「Z」と看取される文字の底辺の線を左から右に引き延ばして跳ね上げ、その線の上部に筆記体風の「watch」の文字を配してなるものである。 そのため、本件商標は、普通に用いられる方法で表示したものの範囲を脱し、全体として看者の注意を惹く特異な構成よりなるものということができる。 したがって、本件商標が、「極めて簡単でありふれた標章のみからなる商標」に該当するとも到底いえない。 以上より、本件商標は、商標法第3条第1項第5号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第16号の該当性について 本件商標は、前述のとおり、全体として、特に観念の生じない造語よりなると認められるものであるから、これを殊更に「Z」と「watch」とに分離して観察し得ないものである。 そのため、たとえ本件商標を「携帯することがない時計の部品及び付属品」について使用したとしても、本件商標自体がそもそも品質を表示しないものであるから、品質誤認のおそれは全く考えることができない。 また、仮に、「Z」と「watch」とに分離して観察されたとしても、本件商標に接する需要者は、必ずしも携帯用の時計を「watch」、柱時計、置き時計などを「clock」の如く、その意味を辞書に記載されているように正確に理解し、使い分けているものではない。実際、被請求人が、インターネットで簡易検索したところ、使用例からも、「watch」の語を単に「時計」と認識している場合も決して少なくないことは明らかである。 なお、請求人は、甲第6号証及び甲第7号証のとおり、「watch」の文字が含まれた引用商標について、指定商品を限定することなく登録を受けている。 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第11号の該当性について ア 引用商標の出願日が本件商標の出願日より前であること、引用商標の指定商品の一部が本件商標と抵触していることについては、被請求人も認める。 イ 本件商標と引用商標の類否 (ア)称呼 本件商標の称呼についてみると、英和・和英データベース「英辞郎」には、「Z:アルファベットのゼット、ジー」との記載がある(乙第1号証)。また、知識検索Q&Aサイト「YAHOO!知恵袋」や「OKWave」から、平均的な日本人が、「Z」の発音を「ズィー」又は「ゼッド」と認識していることは明らかである(乙第9号証及び甲第10号証)。そして、被請求人は、取引者、需要者に対し、本件商標を「ジーウォッチ」との称呼をもって、2010年11月より訴求してきた(乙第11号証)。そうとすれば、取引の実際において、本件商標から「ズウォッチ」との称呼が生じる余地はない。 一方、引用商標は、やや丸みを帯びた「swatch」の欧文字よりなるところ、その構成に照らして「スウォッチ」の称呼が生じる。 そこで、「ゼットウォッチ」と「スウォッチ」との比較においてはもとより、「ジーウォッチ」と「スウォッチ」を比較すると、両者はともに、識別上重要な要素を占める語頭部分において「ジ」と「ス」の差異を有するのみならず、長音の有無という相違を有する。その上、両商標の全体としての称呼の音数は、長音を含めて4音又は3音と極めて短い称呼である。このため、該差異音が、両者の全体的称呼に及ぼす影響は極めて大きく、両者を全体として一連に称呼され、聴覚された場合には、語調、語感を相違ならしめ、これに接する聴者をして、決して彼此の称呼を互いに聞き誤らせるおそれのない、称呼上非類似の商標であることは明らかである。 また、仮に、本件商標を「ズウォッチ」と称呼した場合であっても、本件商標と引用商標には、識別上重要な要素を占める語頭部分に、「ズ」と「ス」の差異を有する。両者の全体としての称呼の音数は3音と極めて短いことから、該差異音が全体的称呼に及ぼす影響は極めて大きい。そのため、両者を全体として一連に称呼され、聴覚された場合には、決して彼此の称呼を互いに聞き誤らせるおそれのない、称呼上非類似の商標であるといわざるを得ない。 (イ)外観 本件商標と引用商標とを外観において比較すると、語頭における本件商標の「Z」と引用商標の「s」の文字とは、構成上明白な差異を有するものであって、請求人が言うようなほぼ同一に知覚される対称文字ということはできない。 また、本件商標は、前述のとおり、大きく書された「Z」と看取される文字の底辺の線を左から右に引き延ばして跳ね上げ、その線の上部に筆記体風の「watch」の文字を配してなるものである。このため、やや丸みを帯びた文字からなる引用商標とは、その態様において顕著に相違する、外観上非類似の商標であることは明らかである。 ウ 小括 本件商標と引用商標は、称呼・外観・観念のいずれにおいて相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 第5 当審の判断 1 商標法第3条第1項第5号の該当性について 本件商標は、別掲1のとおり、大きく書された「Z」と看取される文字の底辺の線を左から右に引き延ばして跳ね上げ、その線の上部に筆記体風の「watch」の文字を配してなるものであり、これよりは「Zwatch」の欧文字を表したものと容易に理解されるところ、構成文字全体より生ずる称呼「ゼットウォッチ」「ズィーウォッチ」及び「ジーウォッチ」も一連によどみなく称呼し得るものであり、また構成全体としてまとまりよく表されており、これらを分離して認識しなければならない事由は認められないから、特定の意味を有しない一体不可分の造語として認識されるものである。 そうすると、本件商標は、上述したとおりの構成からなるものであるから、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」とは認められないものである。 2 商標法第4条第1項第16号の該当性について 本件商標は、その構成中の「watch」の文字部分が「腕時計、懐中時計」などの「携帯用時計」の意味を有する英語であるとしても、我が国においては「watch」の語を単に「時計」の意味で認識され、使用されている場合も少なくないと推認される(乙第4号証ないし乙第7号証)ほか、上述したとおり、そもそも構成全体としてまとまりよく表されており、一体不可分の造語として認識されるというべきものであるから、「watch」の部分のみを分離抽出して認識されるものではないというのが相当である。 そうすると、本件商標は、その構成中に「watch」の文字を有するとしても、これに接する取引者・需要者は該文字部分のみを分離抽出して認識せず、構成全体を特定の意味を有しない一体不可分の造語として認識するというべきであるから、これをその指定商品中の「置き時計、掛け時計、その他の携帯することがない時計、これらの部品及び附属品」について使用しても、その商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがないというのが相当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第11号の該当性について 本件商標は、上述したとおり、「Zwatch」の欧文字を書してなると容易に理解される構成であり、特定の意味を有しない造語と認められるものであるから、該構成文字に相応して「ゼットウォッチ」、「ズィーウォッチ」及び「ジーウォッチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 他方、引用商標は、別掲2のとおりの構成からなるところ、やや丸みを帯びた「swatch」の欧文字を横書きしたものであって、特定の意味を有しない造語と認められるものであるから、その構成文字に相応して「スウォッチ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 そこで、まず本件商標の外観と引用商標の外観とを対比すると、両者は、語頭部分以外において「watch」の構成文字を共通にしているが、本件商標の語頭が「Z」であるのに対して引用商標の語頭が「s」と相違し、また本件商標は語頭の「Z」の文字が大文字で大きく書かれ、そのほか「Z」の底辺の線を左から右に引き延ばして跳ね上げ、その線の上部に筆記体風の「watch」の小文字を配してなるのに対し、引用商標は「swatch」の小文字全体がやや丸みを帯びて表されているものであって、構成全体の印象が相当異なるものであるから、時と所を異にして観察しても十分区別することができ、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。 次に、本件商標から生ずる称呼「ズィーウォッチ」と引用商標から生ずる称呼「スウォッチ」とを対比すると、両者は、称呼上、語尾において「ウォッチ」の音を共通にしているが、称呼の識別上において重要な位置を占める語頭において「ズィー」と「ス」との音の差異を有し、いずれも4音又は5音と比較的短い構成音数であること、及び聴別しやすい語頭部分における相違であることから、これらを一連に称呼し、時と所を異にして観察しても十分聴別することができ、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。 また、本件商標から生ずる称呼「ゼットウォッチ」又は「ジーウォッチ」と引用商標から生ずる称呼「スウォッチ」とを対比すると、両者は、語尾において「ウォッチ」の音を共通にしているが、称呼の識別上において重要な位置を占める語頭において「ゼット」又は「ジー」と「ス」との音の顕著な差異を有するので、これらを一連に称呼し、時と所を異にして観察しても十分聴別することができ、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。 さらに、本件商標と引用商標とは、いずれも観念を生じないものであるから、観念上においては比較することができない。 そうすると、本件商標は、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない、非類似の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (4)結論 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第5号、第4条第1項第11号及び第16号に違反してされたときに該当しないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標(登録第5361516号商標) 別掲2 引用商標(登録第4730932号商標) |
審理終結日 | 2013-02-22 |
結審通知日 | 2013-02-27 |
審決日 | 2013-03-13 |
出願番号 | 商願2010-53372(T2010-53372) |
審決分類 |
T
1
11・
15-
Y
(X14)
T 1 11・ 263- Y (X14) T 1 11・ 261- Y (X14) T 1 11・ 262- Y (X14) T 1 11・ 272- Y (X14) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金子 尚人、白鳥 幹周 |
特許庁審判長 |
大橋 信彦 |
特許庁審判官 |
渡邉 健司 前山 るり子 |
登録日 | 2010-10-15 |
登録番号 | 商標登録第5361516号(T5361516) |
商標の称呼 | ズウオッチ、ゼットウオッチ |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 森川 邦子 |
代理人 | 吉村 仁 |
代理人 | 小暮 君平 |
代理人 | 工藤 莞司 |