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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y44
管理番号 1275302 
審判番号 取消2012-300328 
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-04-23 
確定日 2013-06-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4888566号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4888566号商標の指定役務中,第44類「医業」については,その登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4888566号商標(以下「本件商標」という。)は,「なでしこ薬局」の文字と,「nadeshiko-ph」の欧文字及び記号(-)とを上下二段に書してなり,平成16年4月14日に登録出願,第44類「医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導」を指定役務として,同17年8月19日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成24年5月21日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中「医業」について,継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は答弁書において,通常使用権者である「有限会社神幸商事」が,「なでしこ薬局」を指定役務「医業」について,少なくとも平成21年から使用していたと主張するが,本件商標を第44類 医業」に使用していた証拠は,全く認められない。
(1)被請求人の通常使用権者が行っていると主張する内容は,全て医業ではなく,被請求人は,医業の意味を敢えて曲解しているにすぎない。
ア 「医業」とは,広辞苑によれば,「医者の職業(医術の業)」と記載されている。
また,現在の日本の法律では,医業について医師法(昭和23年法律第201号)の第17条に「医師でなければ,医業をなしてはならない。」と明確に記している。
したがって,「医業」を被請求人が行っていると主張するならば,まず医師免許有資格者の存在を証明しなげればならない。その証明なしに,「医業」を行っていると主張することは,自ら医師法違反行為を行っていることを宣言することになり,これに反する罰則は,同法第31条に規定している。
よって,被請求人が医業を行っていたと証明するためには,医業を行う許可を受けた医師免許有資格者(医師)が在籍し,またその医師が医業の停止期間中でないことを証明し,また医業を行うことを所属する都道府県に申請し,医業を行うための届け出および認可を受けた診療所としての許可証を証明しなければならない。
イ 商標権者は薬剤師の資格を有すると認められるものの,医師の資格を有することを確認できない。
商標権者のインターネットホームページでは,「なでしこ薬局」の本店は兵庫県神戸市に存在し,支店及び店舗が存在するとともに,社員として薬剤師12名,受付事務6名,計18名と記載され,医師の記載は全くない。また,通常使用権者と称する有限会社神幸商事に医者が存在する旨の証拠も全くない(甲第1号証)。
(2)被請求人,または,その通常使用権者が,本件商標の看板で「医業」を営むこと自体に無理がある。
本件商標は「なでしこ薬局」であり,その「なでしこ薬局」の看板またはチラシを見た需要者は,薬局の業務のみを認識し,決して医業まで行っていると認識することはなく,医業を行わない薬局に,患者が医者の行う治療等に訪れる筈がない。
このことから,本件商標を第44類「医業」に使用できる訳がない。
(3)被請求人が使用事実Aとする,通常使用権者である「有限会社神幸商事」が行った行為は,医業の内容である医療行為ではない。
乙第2号証の写真には,ハートフル薬局事業と最上段に記載され,中間には,「どこの(医療機関)処方箋でも受付します。在宅訪問致します。在宅介護の相談お受けします。薬に関するあらゆる相談受けます。福祉用具の取扱い。福祉用具購入・レンタルの相談。介護,疾患別補助食品の取扱い」,その下方に「なでしこ薬局」,「在宅介護相談薬局」,「神戸市薬剤師会」等の記載がある。
このように,ハートフル薬局事業は,神戸市薬剤師会が市内の薬局が提供できるサービスをマニュアル化しメニュー化し,統一ポスターを使って店頭に掲示する取り組み(ハートフル薬局事業)とあり,あくまで,薬局が提供可能なサービスをあげているものである。
これは,第44類のうちの「調剤,医療情報の提供,栄養指導」にあたり,「医業」にはあたらない。
このなかで,「在宅医療」とあるが,薬剤師および薬剤師会で出来る範囲は在宅服薬指導など,在宅における「調剤,服薬指導,医療情報の提供」までであり,「医業」は含まれない。もし医業を行うのであれば医師免許を有する者が神戸市薬剤師会に協力する必要があり,それを証明しなければならない。
また,神戸市薬剤師会に医師免許の有資格者が協力していたからといって,医業はその医師免許有資格者が行っているだけであり,被請求人が参加していた事業だからといって被請求人が医業を行っていたという証明にはならない。
(4)使用事実Bにあげている薬局DOTS事業とは,結核の治療成功率を改善させるために,短期化学療法による直接監視下服薬治療「包括的服薬支援」のことである。
これは,結核の治療中にきちんと服薬しない患者に対して,目の前で飲んでもらって内服を確認し,治療の成功率の向上を目指すようにするものであり,これも第44類の「調剤,医療情報の提供,栄養指導」に該当し,「医業」にはあたらない。
医薬分業において,医業と薬業(調剤)は分けて考えるべきものであり医業で,医師が診察し,診断し,処方した薬を,薬剤師が調剤して服薬指導しているものであり,薬局DOTS事業とは,まさしく第44類の「調剤,医療情報の提供,栄養指導」の内容に該当し,これらの証拠が「医業」を行っている証明にはならない。
(5)使用事実Cにあげている有限会社神幸商事が,なでしこ薬局を開設し,ハートフル薬局事業および,薬局DOTS事業調剤などに,本件登録商標を使用していたとあるが,これも上記のように,すべて第44類の「調剤,医療情報の提供,健康診断,栄養指導」に該当する部分であり,「医業」に使用していた証明にはならない。
(6)ハートフル薬局事業の「在宅医療」について,「在宅医療」とは,主治医と共に患者宅を訪れて,薬剤師が服薬指導を行うから,全体として医業に含まれるとするが,これは,医師免許の有資格者である主治医が医業をするのであって,同行した薬剤師は服薬指導をするのであり,これは,「調剤および医療情報の提供」にあたり,「医業」にはあたらない。
なぜなら,主治医が同行せずに薬剤師が患者を診察し,病状を診断するという医業を行ったならば,その時点で日本国内では,医師法第17条違反で検挙の対象となるからである。
また,使用事実Bとして,「なでしこ薬局」を通常使用権者が使用していた,この薬局DOTS事業は乙第6号証に示すように,薬局と医療機関と保健福祉部とが連携して,結核患者に対する包括的服薬支援を行なう事業で,第44類「医業」に相当すると主張するが,乙第5号証の下欄には「なでしこ薬局」の表示があり,上部には「患者の皆様へ」とし,当薬局における主なサービスとして,処方箋の受付,調剤,その他が記載されている。
そして,同第17行には「飲み忘れが多い,間違って飲んでしまう,ヒート包装から薬を取り出すことが困難,とういう患者さんには,一包化調剤(朝,昼,夕食後等の飲み方ごとに一包調剤する)を行ないます。(医師の指示が必要)。又,他(病院や他薬局)での薬もまとめて,服薬カレンダーの活用にて整理し,服薬に関する支援を行ないます。(医師の指示や実費が必要になる場合がございます)。」と記載し,医師でなければできない行為を( )書きで除外し,薬剤師が行なうことができる行為のみが記載されているものである。
また,乙第6号証によれば,DOTSとは「包括的服薬支援」と記載され,その2頁には神戸市薬局事業DOTS事業の流れ図の(1)には,主治医と患者と,患者と保健福祉部と,保健福祉部と調剤薬局とが記載されている。
しかしながら,本件商標は,乙第6号証のどこにも存在しない。主治医と患者との欄には,受診と診察・処方のみが記載されているのみであり,この受診と診療・処方に本件商標はどこにも使われていない。
(7)被請求人は,答弁書で医師でなくても「医業」を行なうことができる根拠として,「『薬局』を含む商標(多くは薬剤師が使用する商標)について『医業』を指定役務として多数登録されており,これらの登録商標は商標法第3条1項柱書に違反して登録されたものとなる。すなわち,商標権者(薬剤師等)はその商標を医者の専権事項の範囲内において使用することができないので,仮に第44類の『医業』が医者の専権事項であると判断するならば,上記商標について『医業』を指定役務とすることができないから,第44類『医業』は,医師の専権事項ではなく,例えば薬局が行なう『在宅医療』も含まれる」旨主張する。
しかしながら,医師であれば,必然的に薬剤師の資格をも有し,医業と調剤とを同時に行なうことができるので,類似群コード(42V02)に便宜上,両役務を含めたにすぎない。薬剤師に医師の資格はない。
(8)「被爆者一般疾病医療機関指定証」(乙第44号証)には,その名称として「なでしこ薬局」,開設者氏名として有限会社神幸商事,代表取締役に本商標権者が記載され,兵庫県知事の印が押印されている。
これは,甲第2号証に記載されている,「被爆者一般疾病医療機関指定申請書」の申請に基づくものであり,ここに言う「医療機関」は,兵庫県のホームページの被爆者援護の「医療機関の方へ」に記載されているが如く,「病院若しくは診療所,指定訪問介護事業者等又は薬局」と記載され,医療を行なうものと,薬局との両者が含まれているものであり,これをもって,兵庫県が「なでしこ薬局」に医業を行なうことを認めたものでは決してない。
(9)結論
したがって,被請求人の答弁書の証拠には,「なでしこ薬局」を医業に使用している根拠は,事実上全く存在しない。それと共に,医師法上も認められない。
よって,本件商標の登録は,商標法第50条第1項の規定により,第44類「医業」につき取消すべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする」と答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第44号証を提出した。
答弁の理由
本件商標は,通常使用権者である「有限会社神幸商事」が,少なくとも平成21年から「医業」(ハートフル薬局事業)について本件商標を使用しており,また平成23年から「医業」(薬局DOTS事業)について本件商標を使用している。
1 使用事実A
「有限会社神幸商事」は,平成21年度からハートフル薬局事業に参加しており,神戸市薬剤師会からポスターの納入を受け,このポスターを薬局内外に掲示していた(乙第1号証)。
そして,このポスターにおいて,「なでしこ薬局/nadeshiko-ph」を二段書きしてなる商標を,ハートフル薬局事業について使用していた(乙第2号証)。
このハートフル事業は,「在宅医療」を含む事業であり,第44類「医業」に相当する(乙第3号証)。
このため,「有限会社神幸商事」は,少なくとも平成24年4月2日に本件商標を「医業」について使用していた。
2 使用事実B
「有限会社神幸商事」は,薬局内及び薬局外に展示したポスターにおいて,「なでしこ薬局」からなる商標を薬局DOTS事業に使用していた(乙第4号証及び乙第5号証)。
この薬局DOTS事業は,薬局と医療機関と保険福祉部とが連携して結核患者に対する包括的服薬支援を行う事業(乙第6号証)で,第44類「医業」に相当する。
このため,「有限会社神幸商事」は,少なくとも平成24年4月2日に本件商標を「医業」について使用していた。
なお,この使用事実Bにおける使用商標は,「なでしこ薬局」であり,厳密には本件商標と完全同一ではないが,実質同一である。
3 使用事実C
「有限会社神幸商事」は,薬局の入り口に設置した看板において,「なでしこ薬局/nadeshiko-ph」を二段書きしてなる商標を使用していた(乙第7号証)。
なお,この使用事実Cにおいて看板には役務との関連性が明記されていない。
しかし,薬局がハートフル薬局事業及び薬局DOTS事業を行っていることが周知され,また,なでしこ薬局が平成21年度から継続してハートフル薬局事業を行っていること及び薬局DOTS事業を行っていることが周知されていることからすれば,実質的にハートフル事業及び薬局DOTS事業について本件商標を使用していたといえる。
4 役務について
(1)ハートフル薬局事業
ハートフル薬局事業とは,神戸市内の薬局が提供できるサービスをマニュアル化,メニュー化し,統一ポスターを使って店頭に掲示する取り組みであり,この事業には「在宅医療」が含まれている(乙第3号証)。
この「在宅医療」とは,主治医と共に患者宅を訪れて服薬指導等を行うもので,「医業」に含まれる。
このように,「在宅医療」が「医業」に含まれることは,商標中に「薬局」を含む商標が第44類「医業」に対して多く登録されている事例からも明らかであり(乙第8号証ないし乙第41号証),このことからも,薬剤師が行う「在宅医療」が第44類「医業」に含まれていることは明らかである。
なお,仮に請求人が「第44類の『医業』が医師の専権事項であり医師以外の者が行うことができない役務である」と主張するならば,それは到底採用できない。つまり,上記のように「薬局」を含む商標(多くは薬剤師が使用する商標)について「医業」を指定役務として多数登録されており,上記のように判断しなければならないとすると,これらの登録商標は,商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものとなる。
すなわち,商標権者(薬剤師等)は,その商標を医者の専権事項の範囲内において使用することができないので,仮に第44類の「医業」が医者の専権事項であると判断するならば,上記商標について「医業」を指定役務とすることができない。
以上のように,第44類の「医業」は医師の専権事項ではなく,例えば薬局が行う「在宅医療」も含まれるものである。
(2)薬局DOTS事業
薬局DOTS事業とは,薬局が医療機関及び保健福祉部と連携して結核患者に対して包括的服薬支援を行う事業である(乙第6号証)。
この薬局DOTS事業は,結核患者が目の前で直接内服する,及び残薬数・空き袋,服薬手帳がきちんと記入されていることなどを確認したり,副作用出現の有無や通院状況(主治医の指示・検査結果の把握)など結核治療上の問題発生の有無について確認する行為を含み,「医業」に相当する。また,「有限会社神幸商事」がこの薬局DOTS事業を実施している(乙第42号証)。
5 商標の実質的同一について
使用事実Bでは,本件商標が「なでしこ薬局/nadeshiko-ph」に対し,使用商標は「なでしこ薬局」である。
審査基準には,登録商標が二段併記の構成からなる場合であって,上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに,その一方の使用については,登録商標の使用と認められると説明されている。
これを本件商標について当てはめると,本件商標は「なでしこ薬局」及び「nadeshiko-ph」を二段併記した構成からなる商標であるところ,下段に示される「ph」は,「pharmacy」の略語であり「薬局」を示すものとして周知である。それゆえ,本件商標の上段及び下段は,共に観念を同一にするものである。
したがって,使用事実Bにおいて使用される「なでしこ薬局」の商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標であり,この「なでしこ薬局」の商標の使用は,本件商標の使用に該当する。
6 使用権者について
「有限会社神幸商事」は,被請求人を代表取締役として,なでしこ薬局を開設している(乙第43号証及び乙第44号証)。
このことから,「有限会社神幸商事」は,本件商標の通常使用権者であることが明らかである。

第4 当審の判断
商標法第50条に規定する商標登録の取消しの審判にあっては,その第2項において,その審判の請求の登録前3年以内(本件の場合,平成21年5月21日から平成24年5月20日,以下「要証期間」という。)に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての使用をしていることを被請求人が証明しない限り,使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
上記を踏まえ,以下,本案について判断する。
1 本件商標の使用について,被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)使用権者について
乙第44号証は,平成24年1月1日付けの兵庫県知事名による「被爆者一般疾病医療機関指定証」であり,「名称」には「なでしこ薬局」,「開設者氏名」には「有限会社神幸商事 代表取締薬 徐 永昌」及び「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第19条第1項の規定により被爆者一般疾病医療機関に指定する。」との記載がある。
該「被爆者一般疾病医療機関指定証」によれば,被請求人は,「有限会社神幸商事」の代表取締役であり,「有限会社神幸商事」は,「なでしこ薬局」を開設した者であることから,その関連性において,「有限会社神幸商事」が本件商標の通常使用権者ということができる。
(2)使用商標及び使用時期について
ア 乙第1号証は,平成24年7月2日付けの一般社団法人神戸市薬剤師会の会長名による被請求人宛の証明書であり,同薬剤師会は,なでしこ薬局(有限会社神幸商事)に対し,「ハートフル薬局事業に関するポスターを納入しており,平成21年度から同24年度まで継続して同事業に参加している薬局である旨,記載されている。
その2葉目は,ポスターの写真(写し)であり,そのポスターには,「ハートフル薬局事業」,「★どこの(医療機関)処方箋でも受付します★在宅訪問致します★在宅介護の相談お受けします★薬に関するあらゆる相談受けます★福祉用具の取り扱い★福祉用具購入・レンタルの相談★介護・疾患別補助食品の取り扱い」との記載があり,その下には「なでしこ薬局/nadeshiko-ph」及び「神戸市薬剤師会」等と表示されている。
イ 乙第2号証は,平成24年7月3日付けの株式会社ケーエスケー神戸第一支店,営業第1チームの者の名による被請求人宛の証明書であり,なでしこ薬局(有限会社神幸商事)の「ハートフル薬局事業のポスターが,平成24年4月2日に掲示されていた旨,記載されている。その2葉目は,乙第1号証の2葉目と同じポスターの写真(写し)である。
ウ そうとすれば,乙第1号証及び乙第2号証のポスターに表示されている「なでしこ薬局」の文字と「nadeshiko-ph」の欧文字及び記号(-)とを上下二段に書した商標(以下「使用商標」という。)は,「なでしこ薬局」の文字と,「nadeshiko-ph」の欧文字及び記号(-)とを上下二段に書してなる本件商標と同一の文字構成からなるものであるから,本件商標と社会通念上同一のものということができる。
また,乙第2号証によれば,該ポスターは,要証期間である平成24年4月2日に掲示されていたものと推認することができる。
(3)使用事実AないしCが,指定役務の「医業」に相当するか否かについて
ア 使用事実Aは,神戸市薬剤師会が行う,薬局・薬店が提供できるサービス内容を統一ポスターで表示する「ハートフル薬局事業」である。
「ハートフル薬局事業」について,乙第3号証は,2002年(平成14年)11月25日付けの「Pharmaweek」と題する新聞(写し)であり,「神戸市薬剤師会」及び「ハートフル薬局事業を開始」との記載,「薬局が提供可能なサービスを統一ポスターで店頭掲示」との記載があり,「必須項目を含め最低5項目クリアすることを義務づけ」と題して,「同事業は,各薬局で提供できるサービス内容を,統一ポスターを使って店頭でわかりやすく表示するもので,市民への薬局機能,薬剤師機能のアピールが最大の目的。」,「具体的なサービス項目は『保険調剤』『在宅介護相談薬局』『在宅医療』(中略)の12項目。参加薬局は『保険調剤』『在宅介護相談薬局』の必須項目を含め最低でも5つの項目をクリアすることが義務づけられる。」等と記載されている。
そして,被請求人は,平成21年度からハートフル薬局事業に参加しており,神戸市薬剤師会から納入を受けたポスター(乙1及び2)を掲示して本件商標を使用していたと主張するとともに,このハートフル薬局事業には「在宅医療」を含み,「在宅医療」とは,主治医と共に患者宅を訪れて服薬指導等を行うもので,「医業」に含まれる(乙3)旨,主張する。
しかしながら,なでしこ薬局は,このハートフル事業について,乙第1号証又は乙第2号証のポスターに選択したサービスを掲載しているが,その内容は,「★どこの(医療機関)処方箋でも受付します★在宅訪問致します★在宅介護の相談お受けします★薬に関するあらゆる相談受けます★福祉用具の取り扱い★福祉用具購入・レンタルの相談★介護・疾患別補助食品の取り扱い」であり,「在宅医療」は含まれていない。
また,被請求人は,神戸薬剤師会が行う「ハートフル事業」において,「主治医と共に患者宅を訪れて服薬指導等を行うもの」を「在宅医療」と主張しているが,主治医と共に看者宅において服薬指導等を行うとしても,主治医が行う部分と薬剤師が行う部分があり,薬剤師は,あくまでも「服薬指導」の範囲に限られているとみるべきであるから,これが「医業」に含まれるものと理解することはできない。
イ 使用事実Bは,薬局が医療機関及び保健福祉部と連携して結核患者に対して包括的服薬支援を行う薬局DOTS事業である。
(ア)「薬局DOTS事業」について,乙第6号証は,2011年8月に兵庫区薬剤師会が作成した,「薬局DOTSに参加しましょう」との表題の説明会配布資料であり,その1頁の左下の長方形内には,「DOTSとは」の頁があり,これには「『包括的服薬支援』ともいう。」,「結核の治療成功率を改善させるために,患者が支援者(看護師,保健師,薬剤師等)の目の前で抗結核剤を飲み込む行為を確認する方法」及び「神戸市薬局DOTS事業・・・地域の調剤薬局における服薬支援」との記載がある。また,2頁の左中段の長方形内には,「神戸市薬局DOTS事業の実施方法と注意点」の頁があり,「(1)DOTSの実施」として,「イ 患者が目の前で直接内服する,及び残薬数・空き袋,服薬手帳がきちんと記入されていることなどを確認」や「ロ 副作用出現の有無や通院状況(主治医の指示・検査結果の把握)など結核治療上の問題発生の有無についても確認」との記載がある。
そして,被請求人は,該事業は,薬局と医療機関と保険福祉部とが連携して結核患者に対する包括的服薬支援を行うもので,結核治療上の問題発生の有無について確認する行為を含み,「医業」に相当する旨,主張する。
しかしながら,該事業は,「DOTSとは」に記載されているとおり,「地域の調剤薬局における服薬支援」であって,「DOTSの実施」に記載されている各行為は,薬剤師による「服薬指導」の範囲に限られるものであるから,「医業」に相当するものということができない。
(イ)乙第4号証は,平成24年7月3日付けの株式会社ケーエスケー神戸第一支店,営業第1チームの者の名による被請求人宛の証明書であり,なでしこ薬局(有限会社神幸商事)のお知らせポスターが,平成24年4月2日より掲示されていた旨,記載され,その2葉目は,「お知らせ」と題するポスターが掲示されている状況の写真(写し)である。また,乙第5号証は,該「お知らせ」と題するポスターを拡大したものであり,該ポスターには,「当薬局における主なサービス」が記載されており,その中に,「どちらの保険医療機関の処方せんでも受付けます。」,「厚生大臣が定める基準による調剤を行っている保険薬局です。」等の記載のほか,「薬局DOTS事業実施薬局」,「処方せん等による医師の指示がある時は,在宅で療養されている患者さんのお宅まで訪問して服薬指導などを行います。」との記載があり,下部分には,「なでしこ薬局」及び「2012年4月1日作成・掲示」との記載がある。
そして,被請求人は,「有限会社神幸商事」は,薬局内及び薬局外に展示したポスターにおいて,本件商標を薬局DOTS事業に使用していた旨,主張する。
しかしながら,「お知らせ」(乙第5号証)には「薬局DOTS事業実施薬局」と記載されているとしても,「薬局DOTS事業」の実施方法等については,上記(ア)に記載のとおりであり,その他,「お知らせ」に記載された,なでしこ薬局における主なサービスの内容は,いずれも薬局において提供される「調剤」の範囲に限られるものであるから,「医業」に相当するものということができない。
ウ 使用事実Cは,薬局の入り口に設置した看板においての使用商標の使用である。
乙第7号証は,平成24年7月2日付けの四国工業株式会社代表取締薬名による被請求人宛の証明書であり,なでしこ薬局(有限会社神幸商事)からの依頼に基づき,立て看板を平成11年5月13日に納品した旨,記載されており,その2葉目は,立て看板の写真(写し)であり,その立て看板には「なでしこ薬局」と表示されている。
そして,被請求人は,薬局がハートフル薬局事業及び薬局DOTS事業を行っていること,なでしこ薬局が平成21年度から継続して該事業を行っていることが周知されていることからすれば,実質的に該事業について使用商標を使用していた旨,主張する。
しかしながら,この立て看板における該表示は,「なでしこ」という名称の「薬局」であることを表示したに止まるものであって,被請求人によって,「医業」の役務が行われていることを確認することができない。
(4)まとめ
上記のとおり,被請求人の提出に係る前記証拠によっては,取消請求に係る指定役務「医業」について,本件商標が使用されたものと認めることができない。
その他,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,本件商標が取消請求に係る指定役務について使用されていることを認めるに足る証拠はない。
2 結語
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが,取消請求に係る指定役務のいずれかについて,本件商標(社会通念上同一のものを含む。)を使用していることを証明したものと認めることができない。
また,被請求人は,本件請求に係る指定役務について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,その指定役務中「医業」について,商標法第50条第1項の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-03-18 
結審通知日 2013-03-21 
審決日 2013-04-25 
出願番号 商願2004-35315(T2004-35315) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y44)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小田 昌子 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2005-08-19 
登録番号 商標登録第4888566号(T4888566) 
商標の称呼 ナデシコヤッキョク、ナデシコピイエッチ、ナデシコピイエイチ、ナデシコ 
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 
代理人 窪田 卓美 
代理人 池田 義典 
代理人 天野 一規 

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