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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2012900259 審決 商標
異議2012685009 審決 商標
異議2012900254 審決 商標
異議2012900319 審決 商標
異議2013900044 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1274058 
異議申立番号 異議2012-900305 
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-10-19 
確定日 2013-04-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第5508983号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5508983号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5508983号商標(以下「本件商標」という。)は,平成24年1月18日に登録出願,別掲(1)のとおりの構成からなり,第35類「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,建具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,手動利器・手動工具及び金具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,写真機械器具及び写真材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として,同24年7月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は以下の(1)ないし(21)のとおりであり,その商標権は,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3133869号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲(2)のとおり
登録出願日:平成5年4月26日
設定登録日:平成8年3月29日
指定商品 :第29類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(2)登録第3338363号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲(2)のとおり
登録出願日:平成5年4月26日
設定登録日:平成9年8月8日
指定商品 :第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(3)登録第3349918号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲(2)のとおり
登録出願日:平成5年4月26日
設定登録日:平成9年10月3日
指定商品 :第20類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(4)登録第4009543号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成9年6月6日
指定商品 :第5類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(5)登録第4071102号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成9年10月17日
指定商品 :第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(6)登録第4109181号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成10年1月30日
指定商品 :第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(7)登録第4131884号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成10年4月3日
指定商品 :第29類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(8)登録第4131885号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成10年4月3日
指定商品 :第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(9)登録第4137195号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成10年4月17日
指定商品 :第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(10)登録第4139945号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成10年4月24日
指定商品 :第27類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(11)登録第4139946号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成10年4月24日
指定商品 :第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(12)登録第4172969号商標(以下「引用商標12」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成10年7月31日
指定商品 :第20類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(13)登録第4191759号商標(以下「引用商標13」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成10年9月25日
指定商品 :第8類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(14)登録第4255441号商標(以下「引用商標14」という。)
商標の構成:別掲(3)のとおり
登録出願日:平成6年5月11日
設定登録日:平成11年3月26日
指定商品 :第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(15)登録第4501988号商標(以下「引用商標15」という。)
商標の構成:ウォルマート(標準文字)
登録出願日:平成12年7月31日
設定登録日:平成13年8月31日
指定商品 :第5類,第8類,第16類,第20類,第21類,第24類,第25類,第27類ないし第30類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(16)登録第4502009号商標(以下「引用商標16」という。)
商標の構成:別掲(4)のとおり
登録出願日:平成12年7月31日
設定登録日:平成13年8月31日
指定商品 :第5類,第8類,第16類,第20類,第21類,第24類,第25類,第27類ないし第30類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(17)登録第4876910号商標(以下「引用商標17」という。)
商標の構成:WAL-MART NEIGHBORHOOD MARKET
登録出願日:平成16年10月4日
設定登録日:平成17年7月1日
指定商品 :第3類,第5類,第16類,第29類ないし第32類,第34類,第40類及び第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(18)登録第4876911号商標(以下「引用商標18」という。)
商標の構成:別掲(5)のとおり
登録出願日:平成16年10月4日
優先権主張:アメリカ合衆国,2004年8月19日
設定登録日:平成17年7月1日
指定商品 :第3類,第5類,第16類,第29類ないし第32類,第34類,第40類及び第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(19)登録第5180760号商標(以下「引用商標19」という。)
商標の構成:WAL-MART(標準文字)
登録出願日:平成19年9月10日
設定登録日:平成20年11月14日
指定役務 :第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(20)登録第5272204号商標(以下「引用商標20」という。)
商標の構成:別掲(6)のとおり
登録出願日:平成21年5月7日
設定登録日:平成21年10月9日
指定役務 :第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(21)登録第5272205号商標(以下「引用商標21」という。)
商標の構成:WALMART(標準文字)
登録出願日:平成21年5月7日
設定登録日:平成21年10月9日
指定役務 :第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
以上,引用商標(1)ないし(21)を,併せて「引用商標」ということがある。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標が,商標法第4条第1項第11号,第15号,第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきものであると主張し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 申立人及び「WAL-MART」商標の著名性について
申立人は,1962年に創業した,米国アーカンソー州に本部を置くスーパーマーケットチェーンであり,2012年1月期の売上高は40兆円を超えており,現在,売上額で世界最大の企業である(甲第3号証-1)。現在,「アルゼンチン,ブラジル,チリ,カナダ,中国,コスタリカ,エルサルバドル,グアテマラ,ホンジュラス,日本,メキシコ,ニカラグア,英国,インド,アフリカ(12ヶ国),アメリカの27の国で,毎週2億人以上のお客様に利用され」る事業規模を誇っている(甲第3号証-2)。
申立人は,世界最大の小売業であることから,その日本進出以前から今日に至るまで,わが国の雑誌等でも度々特集が組まれて,大々的に取り上げられてきた(甲第4ないし14号証)。
こうした長年にわたる数多くの特集記事からしても,申立人の名声が我が国を含む世界で広く知れ渡っていることは明白であり,引用著名商標が,申立人の社名,商標として世界的に著名であることは論を俟たない(甲第15号証)。
我が国においても,審決(異議2002-90140)(甲第16号証)の認定内容からすれば,この審決対象商標の出願時である平成12年(2000年)には既に,「WAL-MART」商標が,申立人の著名な略称の表記又は店舗名の表記として,我が国で認識されていたことが明らかであり,その後の申立人と西友との提携,西友の子会社化に係る報道と相俟って,当該商標の著名性はますます高まっていると考えられる。
また,申立人は2009年に,「従来から子会社であった西友の事業,及び今後日本で新事業を展開する可能性を含め,日本での事業成長を更に促進・支援していく目的で,」ウォルマート・ジャパンHDを新たに設立している(甲第17号証)。そして,西友店舗に引用著名商標の看板を併設する(甲第14号証)等し,引用著名商標のさらなる浸透を図っている最中である(甲第18号証ないし甲第21号証)。今後,我が国において,申立人の事業はより拡大していくことが予想され,引用著名商標の著名性及び重要性は一層高まることが予見される。
2 商標法第4条第1第11号について
(1)本件商標と引用商標の対比
ア 称呼
本件商標は,その構成中の欧文字から「ウィルマート」の称呼をもって取引に資されるものと認められる。
一方,各引用商標は,その欧文字又は片仮名文字及びメディアでの称呼実情から,「ウォルマート」の称呼を生じると認められる。
そこで,本件商標の「ウィルマート」と引用商標の「ウォルマート」を比較すると,両商標は語頭において「ウィ」と「ウォ」が相異するものの,これ以外の「ルマート」の音及び全体の音数を共通にするものである。
そして,その差異音「ウィ」と「ウォ」とは,頭子音を共通としており,近似した音として聴取されるから,この音の差異があっても,両称呼をそれぞれ一連に称呼したときは,その語調及び語感が相紛らわしいものとなる。
イ 外観
本件商標は,青色のグラデーションを背景に「WIL-MART」と思しき欧文字を書すものであり,その要部が「WIL-MART」の欧文字部分にあることは明らかである。一方,引用商標中,片仮名書きの商標「ウォルマート」を除く各商標は,「WAL-MART」又はこれに近似する態様から構成されており,「WAL-MART」が要部となっている。本件商標要部「WIL-MART」と当該「WAL-MART」を対比すると,両者はそれぞれ2文字めの欧文字である「A」と「I」が異なるのみであり,その他冒頭の「W」及び語尾の「-MART」部分は共通している。このように,差異は,同じ位置に存する欧文字1字のみのであって,語頭及び語尾を共通とする両商標は,その外観において相紛らわしいものといえる。
また,本件商標においては,「WIL-MART」の文字自体に配色されている青色が,背景の青色と同系であるため,一瞥して「WIL-MART」の文字全体を把握することは困難であり,登録商標「WAL-MART」との相違が,外観上,一層判別しにくくなっている。
ウ 観念
「WIL-MART」の語は,辞書等に掲載のない商標権者の造語であると考えられ,特定の観念を生じないものと認められる。
また,「WAL-MART」も,申立人の造語であって,特定の観念を生じないものである。
エ 商標についての小括
そうすると,本件商標と引用商標は,その称呼及び外観が類似し,観念において両者はいずれも特定の観念を生じないから比較することはできないものである。
よって本件商標と引用商標は称呼及び外観が極めて近似した,互いに類似する商標である。
(2)指定役務について
本件商標の指定役務は,第35類の特定小売等役務である。本件指定役務と,引用商標の指定商品と互いに類似の関係にある。
また,特定小売が多岐にわたって指定された場合,その指定役務は全体として,総合小売に類似するので,本件商標の指定役務は全体として,総合小売を指定する引用商標の指定役務に類似する。
(3)小括
上述のとおり,本件商標は引用商標と類似し,また,その指定役務は,引用商標の指定商品又は指定役務と類似するから,本件商標は,第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1第15号について
(1)本件商標と引用著名商標について
本件商標は,前記のとおり,青色のグラデーションによる横長方形を背景に「WIL-MART」と思しき欧文字を青色で横書きしてなるものである。一方,前述したとおり,本件商標出願当時,引用著名商標は,申立人業務の表示として,世界及び我が国で周知著名であったことは明白である。本件商標中の欧文字と,申立人著名商標の「WAL-MART」との差異は,2文字めの「I」と「A」のみの僅かなものである。また申立人は,2008年に新ロゴ[Walmart]を導入するまでは,ハウスマークを青色又は,青色に白抜きで表示していた(甲第4号証)。我が国で大きく報道されたウォルマートの日本進出時の記者会見も,青色の引用著名商標を背景に行われている(甲第12号証)。ウォルマートからの個人輸入のやり方を案内したサイトの写しには,2006年当時の申立人のオンラインウェブサイトをみることができる(甲第22号証)。このサイトにおいて申立人は,「WAL-MART」ロゴをサイト左上に青色で掲載しているところ,この申立人の使用する商標は,本件商標とその印象が近似している。
このように,本件商標は,申立人が従来使用してきた青色のWAL-MART商標と誤認混同される可能性が極めて高い商標であるといえる。
(2)本件商標の指定役務と申立人業務の関連性
本件商標は第35類の複数の特定小売等役務を指定しているところ,その小売業務の役務範囲に係る商品は,極めて多岐にわたっており,総合小売に近い形となっている。
実際に,複数の特定小売を扱うオンラインショッピングサイトと,総合小売のショッピングサイトは,その構成が極めて類似するのが一般的である。
以上より,本件商標の指定役務と,申立人の業務とは,その関連性が極めて高いものであるうえ,その商標がオンラインショッピングサイトで使用される場合には,その類似性が更に高まる(甲第23号証及び甲第24号証)。
(3)混同を生じるおそれについて
本件商標は,申立人の引用著名商標と近似するものであるうえ,本件商標出願当時,申立人の商標は,申立人の業務を意味するもとのとして広く知られていたものであり,また,本件商標の指定役務が申立人の業務と極めて高い関連性を有することなどを併せ考慮すると,本件商標をその指定役務に使用した場合,その需要者及び取引者において,本件商標が使用された役務が,例えば,申立人から本件商標についての使用許諾を受けた者など,申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し,役務の出所につき混同を生ずるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条1項15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は,前述したとおり,本件商標の出願日である2012(平成24年)年1月18日より以前に申立人の業務を表すものとして,日本国内及び外国において周知著名であった引用著名商標に類似している。
前述のとおり,申立人は,2008年まで使用していた大文字でのハウスマーク,「WAL-MART」商標について,主に青色で表示していた(甲第4号証,甲第22号証)。2002年度に行われたウォルマートの日本進出時の記者会見においても,引用著名商標が青色で表示されている(甲第12号証)。
このような事情を鑑みると,商標権者は,申立人が,自己の商標を第35類の総合小売役務についてのみ登録し,特定小売等役務には登録しなかったことを奇貨として,申立人商標の確立された名声にただ乗り等して不正の利益を得る目的で,申立人の著名商標を想起させる文字及び青色を用いた商標を出願したものである。
申立人は現在,我が国においては,「西友」を通じて業務を行っているが,徐々に自己の名称を浸透させる方針をとってきており,今後,店名を「ウォルマート」に変更する可能性のあることは,常に取りざたされている(甲第14号証)。
そうとすれば,本件商標の商標権者が,申立人の著名商標「WAL-MART」にきわめて類似する本件商標をその指定役務たる小売業務について横取り的に登録し,使用をすることは,申立人が,我が国において特定小売業務を行うことを阻むことになるとともに,引用著名商標に化体した信用や名声等にただ乗り(フリーライド)し,又はその信用や名声等を希釈化(ダイリューション),汚染(ポリューション)させることによって申立人に損害を与えるものと認められるものである。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,別掲(1)のとおり,青色のグラデーションを施した横長の長方形様図形(以下,単に「図形」という。)を背景に,同じく,青色のグラデーションを施した「WIL-MART」とみてとれる文字とハイフンを配してなるものである。
そして,図形は,左から右に向かって色が薄く変化し,その右の縦線は,はっきりとした輪郭にはなっていない。
また,当該文字は,各文字の上方から下方に向かって,色が濃く変化し,中央の文字部分は,その一部を背景の色と同じ色をしているものの,右下方から光を当てたように各文字部分に白く縁取りがされることによって,「WIL-MART」からなるものとみてとれるものである。
そうしてみると,本件商標は,その構成文字部分に相応し,「ウィルマート」の称呼を生じ,また,該文字は既成の意味を有しない造語といえるから,特定の観念は生じない。
一方,引用商標は,「WAL-MART」「WAL★MART」「ウォルマート」「Walmart」及び「WALMART」の文字部分に相応し,「ウォルマート」の称呼を生じ,該文字は既成の意味を有しない造語といえるから,特定の観念は生じないが,後記2からすれば,ブランドとしての「ウォルマート」の観念を生ずる場合もあるといえる。
そこで,本件商標と引用商標との類否について検討するに,本件商標の構成は,上記のとおり,青色のグラデーションを施した図形と文字とハイフンとの組み合わせよりなるのに対し,前記第2の構成(別掲(2)ないし(6))からなる引用商標とは,文字等の背景としての色彩を施した図形の有無,文字の表示方法等を全く異にするものであるから,本件商標と引用商標とは,外観上明らかに区別し得るものである。
この点について,申立人は,両者はそれぞれ2文字めの欧文字である「A」と「I」が異なるのみであること,また,本件商標においては,「WIL-MART」の文字自体に配色されている青色が,背景の青色と同系であるため,一瞥して「WIL-MART」の文字全体を把握することは困難であり,登録商標「WAL-MART」との相違が,外観上,一層判別しにくくなっていることを前提に,両者は外観上相紛らわしい旨主張する。
しかしながら,本件商標は,構成する文字及び背景の図形が青色と同系であって,「WIL-MART」の文字全体を把握することは困難であれば,それを構成する「I」の文字部分を分離抽出するのも困難と言わざるを得ず,申立人の主張自体矛盾するものであって,両者は,上記のとおり,外観上明らかに区別し得るものである。
また,本件商標から生ずる「ウィルマート」の称呼と引用商標から生ずる「ウォルマート」の称呼は,ともに,比較的短い5音から構成され,後半部の「ルマート」の音を共通にするものの,称呼の識別上重要な位置を占める語頭において「ウィ」と「ウォ」の音が相違するものである。
しかして,該差異音は,前者が「ウィ(ui)」と二重母音であり,あたかも1音「イ」のように強く発音され聴取されるのに対し,後者が「ウォ(uo)」と二重母音であり,あたかも1音「オ」のように強く発音され聴取される音であって,「イ」と「オ」とは,その音質を異にするものであるから,いずれも5音という比較的短い音構成よりなる両称呼の全体に及ぼす影響は大きく,両称呼を一連に称呼しても,その語調,語感を異にし,聞き誤るおそれはないものというのが相当である。
さらに,本件商標は,特定の観念が生じない以上,両商標は,比較することができないものであり,類似するとはいえない。
したがって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
申立人は,申立ての理由において,申立人が著名であると主張する商標は,たとえば,引用商標のうちのいずれをいうのか必ずしも明らかでないが,以下のとおり判断される。
申立人の提出した証拠によれば,申立人は,1962年に創業した,米国のスーパーマーケットチェーンであること,我が国においては,2002年に西友と包括提携を行ない,2008年には,西友を完全子会社化するとともに,小売業に使用する「WAL-MART」等のロゴからハイフンのない「Walmart」の新ロゴを採用したこと,2010年には西友店舗に,引用商標21を表示した看板を併設したこと,2010年度には,引用商標21が「最も価値のある世界のトップブランド100」において,第13位,「Walmart」が小売業では第1位となったこと,2010年度に全国の西友等店舗に配布された店内ポスター,天井ポップ,懸垂幕,バッジ,カード等には,いずれも,図形部分の着色(黄色)の有無以外,引用商標21と同じ構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されていることが認められる。
してみると,申立人は、2008年(平成20年)に,ハイフンを含まない新ロゴ(使用商標)に変更し,以後約4年,これを宣伝,広告等に統一的に使用していることから,使用商標は,本件商標の出願時及び登録査定時には,申立人の小売りの業務に係る商標として,我が国の需要者の間に広く認識されていたということができる。
しかしながら,本件商標と使用商標との類否については,前記1の商標法第4条第1項第11号の判断において記載した理由のとおり,本件商標は,使用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても,相紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。
そうとすると,商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても,これに接する取引者・需要者をして,申立人あるいは使用商標を連想又は想起させるものとは認められず,その役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く,その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 商標法第4条第1項第19号について
前述のとおり,使用商標は,申立人の小売りの業務に係る商標として,我が国の需要者間において広く認識されていたものと認めることができるとしても,本件商標と使用商標とは,別異の商標である。
そうとすれば,本件商標は,使用商標に化体した信用や名声等にただ乗りし,またはその信用や名声等を希釈化させることによって申立人に損害を与えるものである等の不正の目的は認められず,他に不正の事実を認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号にも該当しない。
4 結論
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものとする。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲(1)
本件商標

(色彩については原本参照のこと)

別掲(2)
引用商標(1)ないし引用商標(3)


別掲(3)
引用商標(4)ないし引用商標(14)


別掲(4)
引用商標(16)


別掲(5)
引用商標(18)


別掲(6)
引用商標(20)


異議決定日 2013-04-08 
出願番号 商願2012-2654(T2012-2654) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W35)
T 1 651・ 262- Y (W35)
T 1 651・ 261- Y (W35)
T 1 651・ 263- Y (W35)
T 1 651・ 222- Y (W35)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大森 健司 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
冨澤 武志
登録日 2012-07-20 
登録番号 商標登録第5508983号(T5508983) 
権利者 谷原 敦
商標の称呼 ウイルマート、ダブリュウアイエルマート、ウイル、ダブリュウアイエル、マート 
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 

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