• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012890104 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30
管理番号 1272612 
審判番号 無効2012-890003 
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-01-10 
確定日 2013-04-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5402361号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5402361号の指定商品中、第30類「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5402361号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成21年8月20日に登録出願、同23年3月4日に登録審決がされ、第30類「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子,茶,紅茶,コーヒー及びココア」を指定商品として、同23年4月1日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第97号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標
請求人の引用する登録第1474596号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、昭和52年6月29日に登録出願、第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同56年8月31日に設定登録、その後、平成3年12月24日、同13年4月24日及び同23年4月5日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同13年11月21日に指定商品を第30類「菓子,パン」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 無効事由
本件商標は、引用商標に類似する商標であって、かつ、本件商標の指定商品中の「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」は、引用商標の指定商品「菓子,パン」と同一又はこれに含まれる商品であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。
3 無効原因
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、欧文字「Mon chouchou」を飾り文字で「Mon」と「chouchou」とを上下二段に分けて横書きし、その左側にバラと思われる花のつぼみ図形を配し、当該文字の上に、右に伸びたテープに一部を接して乗せるように、「Baby」の文字を「B」の文字に蝶などの図形を描いたデザインを配置した構成からなるものであるところ、花や蝶などの図形は、オーソドックスなモチーフとして、装飾目的で頻繁に用いられるものであるから、本件商標の構成中のバラの花や蝶などの図形部分は飾りとして認識されるものである。
また、「Baby」の文字は、「Mon chouchou」の文字と同一書体とはいえ、当該「Mon chouchou」の文字の上に極細のテープに一部を接して乗せる程度のデザインをもって配されているにすぎず、外観上まとまりよく一体に表されたものとして看取されるものではない。そして、各文字の頭文字である「B」と「M」のみが大文字で書されていることから、「Mon chouchou」の文字に「Baby」の文字が組み合わされたものと認識することが容易に推測される。
さらに、「Baby」が基本的な英語(甲第38号証ないし甲第40号証)であるのに対し、「Mon chouchou」は、「私のお気に入り」の意味及び「モンシュシュ」の読みを有するフランス語であるものの、一般消費者に馴染みのないものであって、一種の造語として認識されるものであり、また、英語とフランス語とが一体の語として形成、認識されることすら一般消費者に馴染みがないことから、観念的にも両文字を一体的に捉えるべき事情は何ら見当たらない。
加えて、商品「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」の分野においては、「ベビー」及び「Baby」の文字が他の文字と結合して商品に付された場合、その商品が小さい形状であることや可愛らしいデコレーションが施されたものであることを指称するものと認識することが容易に推測される(甲第27号証ないし甲第37号証、甲第41号証ないし甲第74号証)。
以上を踏まえれば、本件商標は、「Baby」の文字部分と「Mon chouchou」の文字部分とを分離して認識される蓋然性の高いものであり、かつ、該「Baby」の文字部分は、商品の品質等を表すものであって、出所識別標識としての称呼、観念は生じないものと認められるから、本件商標の要部は、「Mon chouchou」の文字部分といえ、これより、「モンシュシュ」の称呼を生じ、また、「私のお気に入り」の観念を生じる(又は、一種の造語と認識される)ものである。
イ 引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、「MONCHOUCHOU」の欧文字とその読みである「モンシュシュ」の片仮名を上下2段に併記してなるものであるから、本件商標における場合と同様に、その構成文字に相応する「モンシュシュ」の称呼を生じ、また、「私のお気に入り」の観念を生じる(又は、一種の造語と認識される)ものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標は、上記アのとおり、その構成中の「Mon chouchou」の文字部分が要部であるところ、該「Mon chouchou」は、引用商標の上段の「MONCHOUCHOU」と同一であるから、本件商標は、外観において、引用商標と類似する。
また、本件商標の要部である「Mon chouchou」と引用商標とからは、いずれも「モンシュシュ」との称呼が生じるから、両商標から生じる称呼は、同一である。
さらに、本件商標の要部である「Mon chouchou」と引用商標とからは、いずれも「私のお気に入り」の観念を生じる(又は、一種の造語と認識される)ものであるから、両商標から生じる観念は、同一である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念の3点いずれもが非常に似通っており、全体として類似するものである。
エ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定商品中の「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」は、引用商標の指定商品と同一又はこれに含まれる商品である。
オ 小括
上記のとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標であり、かつ、引用商標の指定商品と同一又はこれに含まれる商品について使用をするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)本件商標の出願時の事情及び本件審判請求に至る背景
ア 被請求人は、平成15年9月に有限会社サンドゥルオンとして設立され、同年11月に「パティシェリーモンシュシュ」の店舗名で洋菓子の販売を開始し、同19年7月に現商号に商号変更したことにより株式会社へ移行した(甲第6号証)。
イ 被請求人は、平成20年に自らの使用する「モンシュシュ」が請求人の引用商標と抵触することを知り、同21年5月21日に請求人代理人らを訪れて謝罪し、同月29日には詫び状を提出した(甲第8号証)。
その後、平成21年7月17日に、当時の被請求人代理人である弁理士から「モンシュシュ」の使用を全面的に中止するとの書面を送り、同年8月10日付けの引継をした代理人からの連絡でも、「モンシュシュ」の使用を全面的に中止する考えには変わりがない旨の返事をし、さらに、被請求人の代表者は、同年9月10日付けの謝罪文書を送付し、引用商標の商標権侵害を明確に認めた(甲第9号証ないし甲第12号証)。
ウ 被請求人は、その代表者の個人名義により、大丸百貨店東京店内の洋菓子店舗「ベビーモンシュシュ」において現に使用する商標(平成21年6月17日に使用開始)を、「菓子及びパン」を指定商品として、平成21年6月2日に出願した(商願2009-40899、甲第17号証)。なお、該商標は、本件商標とは異なる態様のものである。
エ 被請求人は、その後、平成21年8月13日付けの請求人代理人あて書面において、洋菓子につき、商標「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」を使用しないこと、その商標についての出願を権利取得しないよう自発的に取り下げる意向を回答し、また、その回答に先立つ同年7月16日に、上記ウにいう商標出願を取り下げた(甲第18号証及び甲第19号証)。
上記のとおり、本件商標は、被請求人が権利取得しないことを約束したにもかかわらず、出願され、登録されたものである。
オ 被請求人は、引用商標の商標権侵害を認めながらも、平成21年8月以降、「モンシュシュ」又は「MONCHOUCHOU」の文字を含む(又は「モンシュシュ」の称呼を生ずる)商標を多数出願している(甲第22号証)。
カ 被請求人は、平成21年11月30日に、引用商標の商標権侵害には該当しないと主張し(甲第23号証)、さらに、「モンシュシュ」及び「ベビーモンシュシュ」を使用し続けてきたことから、請求人は、同22年1月20日に、引用商標の商標権に係る侵害訴訟を提起した(大阪地裁平成22年(ワ)第4461号)。該侵害訴訟では、平成22年6月20日に、被請求人が「baby/Mon chouchou」や「ベビーモンシュシュ」等の標章を商品「洋菓子」に使用する行為は、引用商標と同一又は類似する商標の使用であり、侵害に該当する旨の判決が言い渡された(甲第6号証)。
キ 被請求人は、平成21年6月17日に大丸百貨店東京店内、同22年12月15日に大丸百貨店梅田店内、同23年4月13日に博多大丸店内に、洋菓子店舗「ベビーモンシュシュ」を出店したが、いずれの店舗においても、本件商標そのものは使用されていない(甲第7号証における証拠資料(20)及び(21)並びに甲第13号証ないし甲第16号証)。
また、被請求人は、実店舗での店頭販売だけでなく、インターネット販売も開始しているが、そのサイトにおいて、「モンシュシュ」の文字部分のみを目立つ態様で表示している(甲第25号証)。
ク 上記カにいう訴訟中に本件商標が、拒絶査定不服審判を経て、登録されたことから、請求人は、引用商標を引用して、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することを理由とする登録異議の申立て(異議2011-900169)をしたところ、平成23年11月16日付けで本件商標の登録を維持する旨の決定がされた(甲第26号証)。
ケ 商標法第4条第1項第11号の判断基準に照らすと、上記アないしキの事情には、同号の適用において直接関係するといい得ないものもあるが、このような悪意による違法行為により獲得された「ベビーモンシュシュ」に関する知名度は、商標法が保護する「業務上の信用」ではない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その登録出願前より被請求人の悪意に基づき採択、出願された事情等が拒絶査定不服審判及び登録異議の申立てにおいて十分考慮されずに登録されたものであり、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は、取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第219号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)商標の類否判断の基準について
商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否については、「同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである。」とされている(「つつみのおひなっこや事件」最判平成20年9月8日)。
2 本件商標の一体性について
本件商標は、英語で「赤ちゃん、赤ちゃんの、(野菜・車などが)小型の」という意味の「Baby」の文字と、フランス語で「私の」という意味の「Mon」と、「お気に入り」という意味の「chouchou」の文字を上中下3段に分けて、「Baby」の文字と「Mon」を同じ大きさで、「chouchou」の文字をわずかに小さく、それぞれ同じ書体で記載し、その左側にバラの蕾の図形を配し、上段の「B」の文字の左上に羽の図形を配した文字と図形の結合商標である。また、「Mon」の文字のうち「M」の下部が蔦として伸び、バラの蕾へと一連に描かれており、構成全体が、「Baby Mon chouchou」の文字部分と図形部分との結合性を高めるようデザインされている。さらに、「Baby Mon chouchou」の文字の字体は、バラの蕾と蔓のデザインと調和し、全体で優雅で高級感のあるイメージを与えるものとなっている。
本件商標は、被請求人の洋菓子ブランド「ベビーモンシュシュ」を表したものであり、該ブランドは、「大空にはばたく羽のように、何者にもとらわれない自由な発想で織り成すロールケーキの新しい風・・・キュートに、エレガントに。」をコンセプトにしていることから、本件商標の図形部分は、大空にはばたくきらびやかな羽をデザインし、また、ブランド名の「ベビーモンシュシュ」という響きから、母体ブランドである請求人の著名な「堂島ロール」で需要者に広く認識されている「モンシュシュ」で使用しているバラのロゴを蕾に変えて、よりキュートさを強調させたマークにデザインしたものである。
このように、本件商標は、文字部分と図形部分にデザインとしての有機的な一体性が認められる独創的な商標というべきであり、全体的に優雅で高級感のある統一されたイメ-ジを有していることからすれば、バラの蕾の飾り部分も含めて不可分一体の商標として認識され、その全体が要部と認識されるというべきである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ベビーモンシュシュ」という一連の称呼のみが生じるところ、該称呼は、長音を含め7音であって、分離しなければならないほど長いものではなく、よどみなく一気に称呼されるものといえる。
また、「monchouchou」の文字は、「私の」という意味のフランス語の「mon」の文字と「お気に入り」の意味を有するフランス語の「chouchou」の文字であるから、一般的な言葉にすぎず、さらに、菓子やパンを販売する店舗やカフェの名称として好んで採択されているほか、ペット関連商品や各種雑貨といった様々な商品の商品名などで、すでに幅広く使用されているものであるから、該文字自体の自他商品識別力は、「Baby」と同様に決して強いものとはいえない(乙第1号証ないし乙第3号証)。
したがって、本件商標中の「Mon chouchou」の部分が直ちに要部となるとの請求人の主張は、誤りというべきであり、本件商標は、あくまでも文字部分とバラの蕾及び羽の飾り部分も含めて不可分一体の商標として認識され、商標全体で一つの出所識別標識として理解されるというべきである。
そして、このような一体的な構成からなる本件商標中の「Mon chouchou」の部分のみを殊更に抽出して他の商標との類否を判断することは、上記判例に照らして許されない。
3 引用商標について
引用商標は、「私の」という意味のフランス語の「MON」の文字と、「お気に入り」の意味を有するフランス語の「CHOUCHOU」の文字と、その発音を片仮名で表記した「モンシュシュ」の文字とを上下2段に表してなる商標であり、その構成文字から「モンシュシュ」という一連の称呼が生じる。
引用商標の識別力については、既成のフランス語を組み合わせたにすぎないことから、その言葉自体の識別力は、菓子業界においても格別高いとはいえない。また、一般的取引実情においても、「mon chou chou」又は「モンシュシュ」の文字は、洋菓子屋、パン屋、カフェ、レストラン、ヘアーサロン、ペットショップ、ペット美容室、まつげサロン、エステティックサロン、スナック、フラワーショップ、洋服店、セラピスト等、ファッション雑貨店、セレクトショップ、ネイルショップ、家具店、ベビーマッサージ教室の店舗名称、アクセサリー、サプリメント、ウェットテイッシュ、ポストカードブック、バッグ、雑貨等の商品名称に使用されており(乙第2証及び乙第3号証)、このような取引実情にかんがみても、引用商標を構成する文字自体の識別力は強くはない。
4 本件商標と引用商標との類否について
(1)外観、称呼及び観念上の類否について
ア 外観について
引用商標は、大文字で表された欧文字「MONCHOUCHOU」と片仮名「モンシュシュ」とを上下2段に表してなるのに対し、本件商標は、「Baby」、「Mon」、「chouchou」の文字部分とバラの蕾と羽のデザインを結合してなり、「Baby Mon chouchou」の文字部分とバラの蕾と羽の図形部分からなる全体の構成をもって1つの出所識別機能を果たしているというべきであるから、本件商標と引用商標とは、外観において顕著に相違している。
特に、本件商標は、その外観において、片仮名「モンシュシュ」の文字を有しておらず、また、「Baby」という欧文字を有する点で引用商標と全体として相違しているから、両商標は、外観上、非類似というべきである。
イ 称呼について
本件商標は、全体が一体不可分の商標であって、「ベビーモンシュシュ」と一気一連によどみなく称呼される一方、引用商標は、その構成から「モンシュシュ」との4音の称呼が生じるというべきであるから、両称呼は、全体の称呼において3音の相違があり、彼此聞き間違えられるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼上、非類似というべきである。
ウ 観念について
本件商標は、一種の造語商標として理解され、その構成全体から「小さい私のお気に入り」などといった観念が生じる。
また、平成15年(2003年)に大阪の堂島にオ-プンした被請求人の洋菓子店「パティシエリーモンシュシュ」は、「『堂島ロール』を始めとしたロールケーキや洋菓子で人気のモンシュシュという洋菓子店」としてテレビ、書籍、雑誌等のマスメディアで大々的に紹介される人気店となっており、被請求人は、かかる洋菓子店「パティシエリーモンシュシュ」の人気を背景に、姉妹ブランドである「Baby Mon chouchou(ベビーモンシュシュ)」の店舗を、平成21年7月に大丸東京店にオ-プンさせ、現在では、梅田大丸店(平成22年12月開業)、博多大丸店(平成23年4月開業)を含めた3店舗を運営しているものである。
かかる取引実情に照らせば、本件商標に接した需要者は、「堂島ロール」を始めとしたロールケーキや洋菓子で有名な被請求人の「モンシュシュ」の姉妹ブランド「ベビーモンシュシュ」であると想起する可能性が高いというべきである。
これに対し、引用商標は、その文字に相応して、フランス語の「私のお気に入り」という観念が生じる。
そうすると、引用商標と本件商標とは、「私のお気に入り」と「小さい私のお気に入り」といった観念的な相違があり、さらに、本件商標は、「『堂島ロール』を始めとしたロールケーキや洋菓子で有名な被請求人の『モンシュシュ』の姉妹ブランド」といった観念が生じるものである。
したがって、引用商標から生じる観念と本件商標から生じる観念とは明らかに異なるから、両商標は、観念上も非類似というべきである。
エ 過去の審査例及び審決例
「Baby(ベビー)」の語で相違する商標は、第30類「菓子,パン」を指定商品とするもののみならず、第30類以外でも多数併存登録されている(乙第4号証ないし乙第123号証)。
このように、「Baby(ベビー)」の文字で相違する商標について、非類似と判断している審査及び審決の実務にかんがみれば、本件商標における「Baby」の文字の識別力について、自他商品識別力を発揮しないとの請求人の主張は、特許庁の審査における類否判断の実務に照らしても妥当でない。
また、請求人は、本件商標の構成について外観上の一体性が無いと主張しているが、本件商標は「Baby」、「Mon」及び「chouchou」の各文字が上中下3段に記載されているとはいえ、同じ書体でまとまりよく表記されており、請求人の主張は、失当というべきである。この点、文字の大きさが異なり、あるいは単語の頭文字が大文字で表記されている構成各文字が上下2段又は3段に記載されている商標についても、その外観構成の一体性を重視し、全体的に観察した結果、称呼、観念、外観において他の商標と非類似と判断した審決例等(乙第135号証ないし乙第140号証)が存在することに照らせば、「Baby」、「Mon」及び「chouchou」の各構成文字が同一の書体でまとまりよく表記された本件商標においては、たとえ上中下の3段で表記されているとしても、一体不可分の造語商標として認識されるとして、引用商標とは非類似と判断されてしかるべきである。
さらに、請求人は、本件商標において、「Baby Mon chouchou」の文字部分とバラの蕾及び羽の図形部分とが一体に理解されないと述べているが、上記のとおり、本件商標は、「Baby」の文字と「Mon」を同じ大きさで、「chouchou」の左側にバラの蕾の図形を配し、上段の「B」の文字の左上に羽の図形を配し、また、「Mon」の文字のうち「M」の下部が蔦として伸び、バラの蕾へと一連に描かれ、その構成全体が「Baby Mon chouchou」の文字部分と図形部分との結合性を高めるようデザインされており、文字部分と図形部分にデザインとしての有機的な一体性が認められる独創的な商標というべきであるところ、文字と図形からなる商標に関し、その外観の構成の一体性を重視し、商標を全体的に観察し、称呼、観念、外観上において互いに類似しない商標と判断した裁判例(乙第141号証)が存在することにかんがみれば、本件商標についても、文字部分と図形部分全体で一つの商標と認識され、引用商標とは称呼、観念、外観のいずれの点においても類似しないと判断されるべきである。
オ 小括
商標の類否は、商標の全体を一体として観察する全体観察が原則であり、商標の構成部分の一部を抽出して類否の判断をする要部観察等は、その構成部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合、それ以外の構成部分からは出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合以外は認められるべきではないところ、上記のとおり、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分の商標として認識し、把握されるとみるのが相当であって、引用商標とは称呼、外観、観念において顕著に相違することから、本件商標と引用商標とは、互いに非類似の商標というべきである。
(2)取引実情について
本件商標は、以下のとおり、被請求人の洋菓子店「ベビーモンシユシュ」の店舗において、メインロゴとして使用されてきたものであり(乙第142号証、乙第133号証及び乙第134号証)、被請求人の洋菓子店「ベビーモンシュシュ」は、著名な「堂島ロール」の販売店の名称として洋菓子の取引者、需要者の間で広く知られた「パティシエリーモンシュシュ」の姉妹店として人気となっているものである。
ア 被請求人の店舗「パティシエリーモンシュシュ」及び姉妹店としての「ベビーモンシュシュ」の展開
被請求人は、平成15年(2003年)11月に、ビジネス街の堂島に「パティシエリーモンシュシュ」の名称の洋菓子店を開店し、「パティシエリーモンシュシュ」の文字を店舗名として使用してきたものである(乙第124号証及び乙第125号証の1ないし7)。被請求人が開店初期の頃から発売したロールケーキ「堂島ロール」は、全国的に著名な人気スイーツとなり、被請求人の洋菓子店「パティシエリーモンシュシュ」も有名となっていった。
上記「堂島ロール」の全国的な人気により、被請求人は、各地からの出店依頼を受け、平成18年9月には、神奈川県の大型商業施設ラゾーナ川崎に初の支店「パティシエリーモンシュシュwithトラベルカフェ」のオ-プンを許諾し、同19年7月には、自ら「パティシエリーモンシュシュ銀座三越店」を出店し、同年12月に名古屋伏見店をオープンした。その後も、札幌、広島、福岡及び中国上海での出店を行ってきており、現在までに、被請求人又はそのライセンシーが運営する「パティシエリーモンシュシュ」の店舗は、15店舗(大阪エリア:堂島本店及び阪急百貨店うめだ本店など4店舗、関東エリア:ラゾーナ川崎プラザ店及び銀座三越など5店舗、名古屋エリア:名古屋伏見店など2店舗、北海道エリア:大丸札幌など2店舗、中国エリア:広島三越、九州エリア:博多阪急店)に及んでいる。
また、被請求人は、パティシエリーモンシュシュ店舗の人気を背景に、姉妹ブランドである「Baby Mon chouchou(ベビーモンシュシュ)」の店舗を、平成21年7月に大丸東京店にオープンさせた。「ベビーモンシュシュ」では、オリジナルの小さいカップケ-キ等も販売しているが、「堂島ロール」を基本としてアレンジしたロールケーキなども販売しており、「あのモンシュシュの姉妹ブランドとして、オープンと同時に話題沸騰!」と絶賛され、情報誌「東京一週間」において特集記事で取り上げられるなど、人気の洋菓子店となっている(乙第143号証ないし乙第199号証)。
被請求人の洋菓子店「ベビーモンシュシュ」は、「パティシエリーモンシュシュ」の店舗と同様に、テレビ、雑誌、新聞等で多数報道されているが、その際には、「モンシュシュ」の姉妹ブランド等として報道されている点を指摘することができる(乙第148号証、乙第151号証、乙第152号証、乙第158号証、乙第165号証、乙第167号証、乙第169号証及び乙第174号証ないし乙第176号証)。例えば、テレビ報道においても、大丸東京店を紹介するコーナーのトップに、大丸東京店の「ベビーモンシュシュ」を紹介しているが、その際、「あの堂島ロールで有名な『モンシュシュ』の姉妹ブランド」であって、洋菓子売場の入り口正面に位置する看板店であることを、オープン2ヶ月ですでに行列ができる映像とともに、大々的に紹介している(乙第198号証)。また、福岡の地域番組においても、デパ地下スイーツを紹介するコーナーのトップに大丸福岡天神店の「ベビーモンシュシュ」を紹介しており、その際、「あの堂島ロールのモンシュシュの姉妹店」、「堂島ロールを作った名店の逸品」等とレポートしている(乙第199号証)。
イ 被請求人の洋菓子の販売数量及び売上について
被請求人の洋菓子店(「パティシエリーモンシュシュ」及び姉妹店の「ベビーモンシュシュ」及び「ルシェルモンシュシュ」等)では、「堂島ロール」以外にも、各種ロールケーキ、プリン、シュークリーム、プチケーキ、クッキーなどの洋菓子を販売している。現在、1日あたり約6,000本の「堂島ロール」と約12,000個(本)の「堂島ロール」を除くその他の洋菓子を販売しており、「堂島ロール」以外にも、プリン、シュークリーム、モンブランなどのプチケーキ等、様々な人気商品が登場している。
また、このような「堂島ロール」を始め、多数の人気商品の販売により、被請求人は、わずか7年間で年商約60億円にもなる会社に急成長した。このような急成長は、洋菓子業界で異例なことである。
ウ メディア報道等の実績について
(ア)雑誌、書籍及び新聞記事
被請求人の洋菓子店「パティシエリーモンシュシュ」及び「ベビーモンシュシュ」は、多数のスイーツの専門書籍、雑誌及びインタ-ネット情報サイトにおいて紹介されている。また、新聞記事についても、遅くとも平成18年以降、被請求人の洋菓子店「パティシエリーモンシュシュ」及び「ベビーモンシュシュ」並びに被請求人の「堂島ロール」を始めとした洋菓子についての新聞記事が多数掲載されている(乙第200号証ないし乙第209号証)。
(イ)テレビ
テレビ番組についても、平成16年10月から現在まで、被請求人が把握しているだけでも、少なくとも230件もの娯楽・情報番組やニュース番組において、被請求人の洋菓子店「ベビーモンシュシュ」や被請求人の「堂島ロール」が「大阪発の人気スイーツ」、「堂島ロールで大人気」として大々的に特集されているものである(乙第186号証及び乙第189号証)。
(ウ)インターネットでのブログ及びクチコミサイトでの掲載
被請求人の店舗「ベビーモンシュシュ」については、以前から、多数のインターネット上のブログや口コミサイトにおいて、「ロールケーキの有名な洋菓子店」として紹介されているものである(乙第190号証ないし乙第197号証)。
(エ)小括
外観、称呼、観念における商標の非類似性に加えて、以上に述べたような取引実情をも考慮すればなおさら、本件商標が「菓子及びパン」等に使用される場合、需要者によって、被請求人の「堂島ロール」を始めとする洋菓子を販売する店舗「パティシエリーモンシュシュ」の姉妹店の「ベビーモンシュシュ」として理解されるというべきであるから、引用商標と商品の出所について誤認、混同のおそれはなく、両商標は、非類似というべきである。
5 本件商標の出願時の事情及び本件審判請求に至る背景に関する請求人の主張について
請求人は、被請求人による本件商標その他の関連商標の出願及び使用、請求人と被請求人との間の商標権侵害訴訟の判決(大阪地裁平成22年(ワ)第4461号)並びに、本件商標に対する請求人の異議申立てでの登録維持決定及び拒絶査定不服審判での登録審決までの経緯について述べ、その結論として、「悪意による違法行為により獲得された『ベビーモンシュシュ』に関する知名度は、商標法が保護する『業務上の信用ではない』」とし、本件商標の登録に対する無効審判を請求するに至った旨述べている。
しかしながら、請求人が述べる上記経緯等は、請求人も認めているように、引用商標との関係で、本件商標の登録が「商標法第4条第1項第11号に該当するかどうかという問題とは直接関係がない」ものであるから、本件無効審判の審理との関係で何ら法的根拠のない主張である。
なお、事実認識としても、商標権侵害であることを熟知した被請求人が悪意で「モンシュシュ」が広く知られるようにその使用を継続したとするのは、事実を歪曲した請求人の主張といわざるを得ない。被請求人は、平成21年1月30日にコンサルタントからの指摘で請求人が有する引用商標に関する商標登録の存在を知った後、従前どおりの態様で「モンシュシュ」の標章の使用を継続することには商標権侵害が成立し得るリスクがあることを認識し、請求人からクレームを受ける前に、自発的に請求人に連絡をとり、協議を開始するようになったが、包装箱への使用など商品商標としての使用を中止するといった対応を行うも、請求人との協議が不調に終わったため、新規店舗の開設を含め店舗名としての使用を継続していたところ、被請求人の事業に対するマスコミや消費者の支持を得て、それまでに取得していた周知・著名性が順調に拡大していっただけであり、したがって、被請求人は、悪意によって「モンシュシュ」標章を使用していたわけではない。

第4 当審の判断
1 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、飾り文字で表してなる「Baby」、「Mon」及び「chouchou」の各欧文字(「chouchou」の欧文字は、前二者に比して、わずかに小さく表されている。)を3段に配したものの左側にバラのつぼみの図形を配し、さらに、該「Baby」の欧文字の左斜め上側に羽根のような図形及び交差部を太く表してなる十字図形を配してなるところ、その構成態様に照らせば、本件商標は、上記各欧文字と各図形とを組み合わせてなる結合商標といえるものであり、また、該各図形部分についてみれば、いずれも飾りとして認識されると考えられるものであるから、これより出所識別標識としての称呼、観念を生じることはないとみるのが相当である。
そうとすると、本件商標の構成中の「Baby」、「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分は、これに接する者をして、その構成中の各図形部分から分離して看取、把握され得るものである。
ところで、「baby」の文字は、「ベビー」と発音されるものであって、「赤ん坊、赤ちゃん」等の意味を有するもののみならず、他の語と結合して「小さい、小型の、子供用の」等の意味をもって複合語を形成するものとしても一般に広く慣れ親しまれた英単語(甲第38号証ないし甲第40号証)であるところ、該文字又はその表音である「ベビー」の片仮名は、菓子やパンを含む様々な商品分野において、商品が通常の大きさよりも小さなものであることを表すものとして、日常的に使用されているものであり(甲第27号証ないし甲第29号証、甲第32号証、甲第34号証、甲第36号証、甲第37号証、甲第41号証ないし甲第52号証、甲第54号証ないし甲第61号証、甲第64号証、甲第68号証及び甲第69号証)、このような使用は、被請求人の大丸百貨店東京店内の洋菓子店舗「ベビーモンシュシュ」の1周年記念として販売した洋菓子詰め合わせ商品において、通常の大きさよりも小さい「堂島ロール」について「ベビー堂島ロール」と称している(甲第74号証)ことからすれば、被請求人においても、同様に行われていると認められる。
そうすると、本件商標は、上記のとおり、その構成中の「Baby」、「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分が分離して看取、把握され得るものであるが、これをその指定商品中の「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、そのうちの「Baby」の欧文字部分について、それが該商品の大きさが通常よりも小さなものであること、すなわち、商品の品質、形状を表したものとして認識する場合も決して少なくないとみるのが相当である。
してみれば、本件商標の構成中の「Baby」の欧文字からは、出所識別標識としての称呼、観念を生じることはなく、該欧文字以外の「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきである。
そして、「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分についてみるに、これらは、仏和辞典(乙第1号証)によれば、前者が「モン」の読み及び「私の」等の意味を有するもの、後者が「シュシュ」の読み及び「お気に入り」等の意味を有するフランス語とはいえるものの、我が国におけるフランス語の普及度は決して高いものとはいえず、このことは被請求人の提出に係る乙第2号証及び乙第3号証の内容に徴しても覆ることはなく、まして一般的に知られている語であって識別力の弱いものなどということはできない。
以上を踏まえれば、本件商標は、その構成中の「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであるから、その要部は該欧文字部分であり、その構成文字に相応して、「モンシュシュ」の称呼を生じ、「私のお気に入り」程の意味合いを想起させるものといえる。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、「MONCHOUCHOU」の欧文字と「モンシュシュ」の片仮名とを上下2段に書してなるところ、その構成態様に照らせば、下段の片仮名は、上段の欧文字の読みを特定するものとして無理なく理解されるものであり、また、上段の欧文字は、文字の表し方や配置において相違する点はあるものの、本件商標の構成中の「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分と文字綴りを同じくするものであることからすれば、引用商標は、その構成文字に相応して、「モンシュシュ」の称呼を生じ、「私のお気に入り」程の意味合いを想起させるものといえる。
(3)本件商標と引用商標との類否についての検討
本件商標は、その構成中にあって出所識別標識としての要部たる「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分に相応する「モンシュシュ」の称呼を生ずるのに対し、引用商標は、その構成文字に相応する「モンシュシュ」の称呼を生ずるものであるから、両商標は、称呼を同一とするものである。
また、本件商標と引用商標とは、いずれもその構成文字に相応して、「私のお気に入り」程の意味合いを想起させるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観においては相違するものの、「モンシュシュ」の称呼を同じくし、かつ、「私のお気に入り」程の意味合いを想起させる点を共通にするものであるから、これらを総合勘案すれば、両商標は、互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(4)本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品との類否について
本件商標に係る指定商品中の「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」は、引用商標に係る指定商品「菓子,パン」と同一又は類似する商品である。
(5)被請求人の主な主張について
ア 被請求人は、本件商標については、その構成全体をもって一体不可分の商標として認識し、把握されるとみるのが相当であって、引用商標とは称呼、外観、観念において顕著に相違することから、本件商標と引用商標とは、互いに非類似の商標というべきである旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件商標は、その構成態様や菓子及びパンといった商品についての「baby(ベビー)」の文字の使用に係る取引の実情を勘案すれば、その構成中の「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分が出所識別標識としての要部たり得るのであって、このような場合には、該文字部分を分離抽出した上で、他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるものであり、そのような類否の検討をすれば、本件商標と引用商標とは、互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきものであるから、この点についての請求人の主張を採用することはできない。
イ 被請求人は、乙第133号証、乙第134号証及び乙第142号証ないし乙第209号証を提出して、本件商標は被請求人の洋菓子店「ベビーモンシュシュ」の店舗(東京大丸店(平成21年7月開業)、梅田大丸店(平成22年12月開業)及び博多大丸店(平成23年4月開業))においてメインロゴとして使用されてきたものであり、被請求人の洋菓子店「ベビーモンシュシュ」は、著名な「堂島ロール」の販売店の名称として洋菓子の取引者、需要者の間で広く知られた「パティシエリーモンシュシュ」の姉妹店として人気となっているものであることから、このような本件商標に係る取引の実情を考慮すれば、本件商標が「菓子及びパン」等に使用される場合、需要者によって、被請求人の「堂島ロール」を始めとする洋菓子を販売する店舗「パティシエリーモンシュシュ」の姉妹店の「ベビーモンシュシュ」として理解されるというべきであり、引用商標と商品の出所について誤認、混同のおそれはなく、両商標は、非類似というべきである旨主張する。
しかしながら、被請求人の提出に係る証拠のいずれをみても、本件商標と同一の構成態様からなる標章が使用された事実は見いだせず、また、本件商標の登録審決時(平成23年3月4日)において、「Baby Mon chouchou(ベビーモンシュシュ)」と称する被請求人の洋菓子店舗は、わずかに「東京大丸店」及び「梅田大丸店」の2店舗が開業しているにすぎず、かつ、開業してからの期間も前者が約1年8月、後者が3月と極めて短いものであることからすれば、本件商標がその登録審決時に被請求人の洋菓子店舗「Baby Mon chouchou(ベビーモンシュシュ)」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえないと判断するのが相当であり、よって、この点についての請求人の主張を採用することはできない。
ウ 被請求人は、「Baby(ベビー)」の文字の有無という差異を有する商標が非類似と判断されて登録されたものが、第30類「菓子,パン」を指定商品とするもののみならず、第30類以外でも多数併存している(乙第4号証ないし乙第123号証)ことからすれば、本件商標における「Baby」の文字が自他商品識別力を発揮しないとの請求人の主張は妥当でない旨主張する。
しかしながら、本件商標の構成中の「Baby」の文字が、その指定商品中の「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」との関係において、取引者、需要者をして、商品の品質、形状を表したものとして認識され得るものであることは、上記認定、判断のとおりであり、また、被請求人が挙げる登録例は、本件商標と商標の構成態様を異にするものや指定商品を異にするものであって、本件とは事案を異にするというべきものであり、本件についてすべき判断が該登録例により拘束されるべきではないから、この点についての請求人の主張を採用することはできない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の第30類「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」について、引用商標と相紛れるおそれのある類似の商標であり、かつ、その指定商品も抵触関係にあるものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
なお、請求人は、本件商標の出願時の事情及び本件審判請求に至る背景について縷々述べ、これに対し、被請求人も反論するところがあるが、これらは、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとした上記判断に影響を及ぼすものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、「結論掲記の商品」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本件商標(登録第5402361号商標)


2 引用商標(登録第1474596号商標)


審理終結日 2012-06-06 
結審通知日 2012-06-12 
審決日 2012-07-05 
出願番号 商願2009-63581(T2009-63581) 
審決分類 T 1 12・ 26- Z (X30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大森 健司薩摩 純一 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 2011-04-01 
登録番号 商標登録第5402361号(T5402361) 
商標の称呼 ベビーモンシュシュ、ベビーモンシューシュー、モンシュシュ、モンシューシュー 
代理人 大河原 遼平 
代理人 田中 克郎 
代理人 田中 景子 
代理人 中村 勝彦 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ