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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X30
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X30
管理番号 1272607 
審判番号 不服2012-10132 
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-31 
確定日 2013-03-27 
事件の表示 商願2011-10914拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第30類「チョコレート菓子」を指定商品とし、平成23年2月18日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、その立体的形状は、指定商品『チョコレート菓子』との関係において、商品の包装の形状を表したものと容易に認識させるにとどまるものであり、自他商品識別標識としての機能を果たし得る部分を見いだすことができないものである。そうとすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、単に商品の品質、包装の形状を普通に用いられる方法で表示したにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人は、本願商標が同法第3条第1項第3号に該当するものであるとしても、該商標に係る立体的形状は、永年の使用の結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているから、同法第3条第2項の規定により登録されるべきである旨主張し、証拠を提出しているが、その提出に係る証拠をみても、本願商標が同項に規定する要件を具備するに至ったとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、四角錐台の形状をした物体を白色無地の包装材料で覆い、その端部を該物体の下部に折りたたんで密封包装した状態を表した立体的形状からなるところ、本願の指定商品である「チョコレート菓子」などチョコレートを原材料とする菓子を取り扱う業界においては、別掲2に例示した内容に照らせば、本願商標と同様の形状(四角錐台)からなる商品が少なからずあり、また、商品の包装の仕方についても、同様のものが少なからずあるというのが実情である。
そうとすれば、本願商標に係る立体的形状は、その指定商品を取り扱う業界において、一般に用いられる商品の包装の形状を表示してなるにすぎず、取引者、需要者をして、商品の出所を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
ア 本願商標と使用に係る商標との同一性について
(ア)商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
(イ)請求人(出願人)は、原審における意見書及び審判請求書において、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるとしても、永年の使用の結果、その立体的形状によって需要者が他の商品と充分識別できるに至ったものであるから、同条第2項の要件を具備するものである旨主張し、証拠方法として、原審における平成23年12月22日付け手続補足書により、甲第1号証ないし甲第27号証(枝番を含む。)を提出し、さらに、当審における同24年5月31日付け手続補足書により、甲第28号証ないし甲第30号証(枝番を含む。)を提出している(以下において、枝番のすべてを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)。
(ウ)そこで検討するに、請求人(出願人)の提出に係る甲各号証によれば、請求人は、「チロルチョコ」と称するチョコレートを原材料とする菓子(以下「本件商品」という場合がある。)を1962年に発売したが、その形状を本願商標と同様の四角錐台に変更したのは1979年であり、その時の商品(「コーヒーヌガー」)の包装には、濃茶の色彩が施され、かつ、小さな円を線上に連ねて表された大きな「TIROL」の欧文字(該各文字は、左から順に「赤」、「橙」、「黄」、「緑」、「青」で彩色されている。)といわゆる白抜きで表された小さな「CHOCOLATE」の欧文字等が配されていた。その後、本件商品は、様々な味のものが開発、製品化されるとともに、その包装に係るデザイン(文字や図形、色彩等)も多種多様となり、その数は200以上に及ぶとされているが、請求人(出願人)の提出に係る甲各号証のいずれをみても、本願商標と同じく四角錐台の形状をした物体を白色無地の包装材料で覆ったものは見当たらない。
(エ)してみれば、本願商標と請求人(出願人)の使用に係る商標とは、上記のとおり、前者が四角錐台の形状をした物体を白色無地の包装材料で覆い、その端部を該物体の下部に折りたたんで密封包装した状態を表した立体的形状からなるのに対し、後者は、単に同様の立体的形状のみからなるものではなく、それと文字や図形等の平面標章との組合せからなるものであるから、両商標は、その構成全体において、同一のものとは認められない。
イ 請求人の主張について
(ア)請求人は、本件商品の特徴は、四角錐台の形状、味の種類の多さ及び販売における陳列方法であって、この様な特徴が揃う商品はほかに見当たらず、また、本件商品は、味の種類が異なっても、すべて同一の大きさ、形状であり、販売時にはパッケージ箱の中に収められており、需要者は、商品の側面の「チロル」の文字を読み取ることができないものであるから、需要者は、該形状のみにより本件商品を認識しており、このような本件商品の選択方法は、本件商品の類似品に接した需要者の反応からも明らかである旨主張する。
しかしながら、四角錐台の形状が、チョコレートを原材料とする菓子を取り扱う業界において、広く用いられている形状であることは、上記(1)のとおりである。
また、本件商品は、その形状が四角錐台となった以降、それを製造、販売する請求人側において、需要者の興味を惹くべく、味の種類の多様化とともに、その種類に応じた包装に係るデザイン(文字や図形、色彩等)が考案されるといった販売戦略が展開されているところ(甲第4号証の14、同19、同20、同47、同48、同52、同54ないし同56、同72、同73及び同76)、その戦略に基づく多種多様な商品の存在は、一般に広く紹介されており(甲第4号証の6、同8ないし10、同31、同33、同40、同63及び同65)、さらに、実際に発売されたすべての商品が網羅的に載録されているとされる「チロルチョコ official book」と称する単行本(甲第11号証の4-1)の販売のほか、自己収集した本件商品の包装紙の写真の公開、商品の包装(パッケージ)等に起因する類似品の購入経験の披露を内容とするブログ(甲第14号証、甲第18号証の5、同6及び同10、甲第28号証並びに甲第29号証の16)も存在する。
そうとすると、本件商品は、四角錐台の形状をもって、30余年にわたり、製造、販売されている事実は認められるものの、該商品は、発売以来、味の種類の多様化と併せて、包装に係るデザイン(文字や図形、色彩等)も多種多様なものとなっており、そのような実情は、該商品の製造、販売をする請求人のみならず、その需要者においても同様に認識しているとみるのが相当である。
してみれば、本件商品は、四角錐台の形状のみならず、その包装に係るデザイン(文字や図形、色彩等)と相まって、初めて本件商品として認識されるというべきものであるから、需要者が該形状のみにより本件商品を認識しているとする請求人の主張は、採用することができない。
(イ)請求人は、以下のa.及びb.のアンケート結果(甲第22号証及び甲第23号証)により、四角錐台の形状のみをもって本件商品であることが認識されている旨主張する。
a.「株式会社ABC Cooking Studio」が運営する料理教室の「ABC lounge GINZA」において、2010年11月29日ないし12月10日の間の来訪者(140名)に対し、本願商標と同じ四角錐台の立体的形状からなる見本を見せて、「対象物を見て何の食べ物を思い浮かべますか。商品名をお答え下さい。」との質問をしたところ、「チロルチョコ」(57%)、「チョコレート」(38%)、「キャラメル」(3%)、「Bit」(1%)、「その他」(1%)との回答を得た。
b.東京都内及び近郊の6大学、名古屋市内の1大学並びに関西の1大学において、2011年7月30日ないし10月27日の間の1日又は5日の間に、主に大学生(上記大学ごとに、184名、70名、30名、59名、30名、92名、29名及び90名)に対し、本願商標と同じ四角錐台の立体的形状からなる見本を見せて、「対象物を見て、食べ物の中で何を連想しますか?」との質問をしたところ、「チロル、チロルチョコ」(同様に、59%、73%、66%、78%、73%、77%、58%及び45%)や「チョコ、チョコレート」(同様に、29%、13%、9%、5%、3%、12%、6%及び20%)のほか、「キャラメル」、「豆腐」、「角砂糖」等といった回答結果(複数回答あり)を得た。
しかしながら、上記a.のアンケートについては、東京の銀座と思料される1箇所において、比較的少数の者を対象に実施されたものであり、また、その結果についても、「チロルチョコ」との回答が6割弱で最も多いものの、単に「チョコレート」との回答も4割弱に達しているところ、上記(1)において認定したチョコレートを原材料とする菓子についての取引の実情に照らせば、後者については、「チロルチョコ」とは別異の商品を思い浮かべて回答した場合も決して少なくないとみるのが相当であるから、これらを総合勘案すれば、四角錐台の形状のみをもって本件商品であることが認識されているとはいい得ない。
また、上記b.のアンケートについては、東京都内及び近郊、名古屋並びに関西の8大学において実施されたものであるものの、その回答者は主に大学生に限定され、かつ、その人数も多数に及ぶとまではいえないものであり、また、その結果についても、上記a.のアンケート結果に比べて「チロルチョコ(チロル)」の回答が多いとはいえるものの、「チョコレート(チョコ)」を含め、その他の食べ物の回答も決して少なくないことからすれば、該アンケートの結果により、四角錐台の形状のみをもって本件商品であることが認識されているとまではいい難い。
してみれば、上記a.及びb.のアンケート結果により、四角錐台の形状のみをもって本件商品であることが認識されているとする請求人の主張は、採用することができない。
ウ その他、請求人の提出に係る証拠を総合してみても、本願商標が、その指定商品に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
したがって、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるとする請求人の主張は、採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものでないとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1
本願商標







別掲2
チョコレートを原材料とする菓子の形状及び包装の例
(1)「株式会社ブルボン」のウェブサイトの「商品情報」の項目中に、「ミニビットアソート」と称する菓子の包装袋の写真が掲載されており、その包装袋の表面に個々の菓子の形状を表した図がある(http://www.bourbon.co.jp/catalog/item?category=27&item=808)。
(2)「食べモノガタリ」のブログ中の2011年8月30日付けの記事中に、「ミニビットアソート」の見出しの下、四角錐台の形状をした上記(1)の菓子の写真が掲載されている(http://tikuwabu01.exblog.jp/13409206/)。
(3)「amazon.co.jp」のウェブサイト中に、「デラファーレ ミニチョコ ミルク 8個×16箱」の見出しの下、四角錐台の形状をした菓子の写真が掲載されている(http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%A0-%E3%83%87%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%AC-%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%B3-%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF-8%E5%80%8B%C3%9716%E7%AE%B1/dp/B009YQI4T0)。
(4)「名糖産業株式会社」のウェブサイト中に、「アルファベットチョコレート」の見出しの下、四角錐台の形状をした菓子の写真が掲載されている(http://www5.mediagalaxy.co.jp/meito/products/choco.html)。
(5)「蒜山ジャージー牛乳製品のヒルゼンミルキー」のウェブサイト中に、「一口酪農ミルクチョコレート」の見出しの下、四角錐台の形状をした菓子の写真が掲載されている(http://www.milkyfactory.co.jp/SHOP/T-0048.html)。
(6)「チョコっと召しませ」のブログ中の2006年12月18日及び19日付けの記事中に、「アソートチョコレート 前半」及び「アソートチョコレート 後半」の見出しの下、四角錐台の形状をした菓子の写真が掲載されている(http://auster.269g.net/article/3414397.html)(http://auster.269g.net/article/3414413.html)。
(7)「森永製菓株式会社」のウェブサイト中に、「DARS.」の見出しの下、四角錐台の形状をした菓子の写真が掲載されている(http://www.morinaga.co.jp/dars/)。
(8)「洋菓子のフランセ、オンラインショップ」のウェブサイト中に、「ミルフィユFWコレクション【季節限定】」と称する菓子の写真が掲載されている(http://www.francais.co.jp/online_yf_mil_fw_col.html)。
(9)「Hime’s Diary」のブログ中の2012年1月21日付けの記事中に、「美味しいお土産&しろたえのケーキ♪」の見出しの下、折りたたみ包装された四角錐台の形状をした上記(8)の菓子の写真が掲載されている(http://ameblo.jp/hime-tmk/entry-11138604316.html)。
(10)「J-WAVEニュースルーム blog」のブログ中の2008年5月29日付けの記事中に、「vanille♪」の見出しの下、折りたたみ包装された四角錐台の形状をした菓子の写真が掲載されている(http://pod.j-wave.co.jp/blog/newsroom/2008/05/vanille.html)。
(11)「株式会社三洋堂」のウェブサイト中に、「[オーストリアお土産]シシィチョコレート6箱セット【141697】」、「[イタリアお土産]エスプレッソチョコレート【101260】」、「[エジプト土産]ピラミッドヘーゼルナッツチョコレート1箱」及び「[ポルトガルお土産]ポルトガルヘーゼルナッツチョコレート6箱セット【141672】」の見出しの下、折りたたみ包装された四角錐台の形状をした菓子の写真が掲載されている(http://www.isanyodo.com/item/30100742.html)(http://www.isanyodo.com/item/04002014.html)(http://www.isanyodo.com/item/100283.html)(http://www.isanyodo.com/item/30100867.html)。

審理終結日 2012-11-20 
結審通知日 2012-11-22 
審決日 2013-02-13 
出願番号 商願2011-10914(T2011-10914) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X30)
T 1 8・ 17- Z (X30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大渕 敏雄豊田 緋呂子 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 山田 和彦
田中 敬規
代理人 関根 光生 
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