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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X43
管理番号 1271274 
異議申立番号 異議2010-900367 
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-11-12 
確定日 2013-03-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第5346443号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5346443号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5346443号商標(以下「本件商標」という。)は、「激馬かなぎカレー」の文字を標準文字で表してなり、平成22年3月2日に登録出願、第43類「食材に馬肉を用いたカレー料理を主とする飲食物の提供」を指定役務として、同年7月14日に登録査定、同年8月20日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第6号について
本件商標は、東北整備局の所管する平成21年度「地方の元気再生事業」の採択を受け、この事業の中で生まれたものであり、この名称は、国の補助事業の成果として、公益的に使用することを申し合わせているものである。商標法第4条第1項第6号の国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの、又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって、著名なものと同一又は類似の商標である。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 申立人は、平成21年度、国土交通省東北整備局の所管する「地方の元気再生事業」の採択を受け、文化伝承・体験学習施設「かなぎ元気村?かだるべぇ?」創立事業を実施した。
本件商標は、この事業の中で同年10月に結成された新商品提案委員会(甲第5号証)において、7回にわたって協議された馬肉を使用したカレーの企画商品の名称として考案されたものである。
この企画の周知活動として、まず、平成22年2月17日、第6回新商品・新観光ルート合同委員会で「激馬かなぎカレー」の発表をした。この成果発表の模様は、翌2月18日の新聞・テレビで報道された。
その後、町内の飲食店並びに一般の参加を広く呼びかけて、同年2月20日、金木商工会にて新商品説明会(甲第6号証)を開催した。「激馬かなぎカレー」の名称を地域全体で使用することを認め、地域経済の向上を図ろうとするのが目的である。
イ 本件商標権者は、この「激馬かなぎカレー」という名称が新聞報道で広く知られるようになった平成22年2月18日以前には、同名称を使用したこともなく、説明会に参加した事実もない。
同年2月25日、本件商標権者が「太宰ミュージアム」の参加店舗として申込みをしたいと直接、申立人の事務所を訪れたため、元気再生事業の担当者であるマネージャー斉藤真紀子が対応し、商品取り扱いについて説明した。合意のもとで本件商標権者が参加申込書に記入し、申立人に提出(甲第7号証)したので、委員会で決定したレシピや共通ルール説明書(甲第5号証)を提供した。
その2日後の2月27日、本件商標権者が共通ルールの条件を無視した形で「馬肉カレー」というメニューを350円で販売したとの情報を聞き、再度、申立人のマネージャー斉藤真紀子が「激馬かなぎカレー」として参加しないかと呼びかけた。本件商標権者は、参加申込書を提出したにもかかわらず、参加店に加わることについて消極的な態度を見せていたが、3月1日、「激馬かなぎカレー」を650円で提供すると、申立人に電話で連絡があった。
ウ 上記のような経緯にもかかわらず、本件商標権者は、平成22年3月2日、申立人に断りもなく商標登録出願をした。さらに、同年3月25日、青森県西北地域県民局の主催する食産業クラスター形成推進委員会(甲第8号証及び甲第9号証)では、参加店の一人として参加し、連携を図り地域活性のために活動する姿勢に見受けられたが、出願した商標が登録査定されたとみられる同年7月26日、知人に打ち明けたことによりこの事実が発覚した。
このことについて、申立人がすぐさま話し合いを求めたが拒絶され、その後、本件商標権者から、弁理士を介し、申立人が本件商標権者へ10年間で30万円の支払いをした場合は、申立人が使用できるように通常使用権の設定をする旨の連絡があった。
エ 今後、当地域において、「地方の元気再生事業」である「激馬かなぎカレー」の参加店が増える見込みであるが、かかる事態によって地域全体が混乱するのは必定である。
本件商標権者は、当初から「地方の元気再生事業」の委員会メンバーではなく、名称決定及び商品説明会のいずれにも関与しておらず、しかも申立人が事業を遂行中であることを認識しながら、成果を独占しようとする悪意が強く感じられる。
そもそも、本件商標権者が商標登録出願をした時点では、申立人が国土交通省東北整備局から委託を受けた「地方の元気再生事業」がまだ終了しておらず、また、申立人においても、この事業の成果物は国に帰属するものと誤認し、出願することを控えていたものであるが、本件商標に係る登録出願は、申立人の新商品開発に便乗し、その商標を剽窃する形で行われたものであって、一般的な取引通念、道徳観念に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成23年6月27日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
(1)「激馬かなぎカレー」の語の由来等について
ア 申立人の提出に係る甲第2号証ないし甲第9号証、甲第11号証及び甲第12号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)甲第2号証は、委託者を支出負担行為担当官東北地方整備局長岡田光彦(甲)とし、受託者を申立人(以下「かなぎ元気倶楽部」という場合もある。)代表理事今誠康(乙)とする平成21年7月15日に締結した「委託契約書」であって、委託調査の名称を「文化伝承・体験学習施設『かなぎ元気村?かだるべぇ?』創立事業」とするものであるところ、委託契約書の要旨は、委託契約書の別冊「調査要領」に記載された内容に基づき、乙は、委託調査料をもって、平成21年7月16日から平成22年3月19日までに、上記委託調査を完了すること及びこれに附帯する事項である。また、別冊「調査要領」には、その目的として、以下の記載がある。
「五所川原市金木地区は、茅葺屋根が特徴的な古民家がいまだに多くの現存し、次世代に残すべき貴重な建築物として保存が望まれているが、古来の建築様式への理解と技術の伝承が不十分であるために修復作業を行う担い手がほとんどいない危機的な状況にある。
さらに、働く場所がないため人口流出に歯止めがかからない深刻な課題を抱える当地域において、これらの建築物を活用した文化の伝承と、各種の交流や体験活動を軸とした新たな着地型観光産業を定着させる事を目的に、伝統技術の保存と再生のための後継者育成として、かなぎ里山大学校を開催し、のべ340?400名の参加を目指す。
また、古民家を活用した新観光ルートの提案、郷土物産を活用した新商品開発として『着地型観光』新商品の開発・集客PRなどで金木地区の4月から3月の観光客45万人と、金木名物の特産品(例:野菜-ながいも、トマト、かぼちゃ)などを使った新商品の開発5種(郷土料理・伝統工芸)を目指す。」
(イ)甲第3号証は、平成22年2月18日付けの東奥日報であるところ、「『激馬カレー』うまいよ」、「NPO開発 来月デビュー」、「旧金木町」との見出しの下、「五所川原市金木町のNPO法人『かなぎ元気倶楽部』は地元の馬肉を使った『激馬(げきうま)かなぎカレー』はじめ、懐かしい米粉の菓子類など新商品4点とヒバ細工工芸品を開発。(中略)国の『地方の元気再生事業』を活用し17日、金木商工会で発表した。」と記載されている。また、同日付けの陸奥新報にも、甲第3号証と同趣旨の記事が掲載されている(甲第4号証)。
(ウ)甲第5号証は、申立人作成の「新商品」等に関する委員会に係る第1回ないし第7回までの議事録であるところ、第1回(平成21年10月21日)の議事録には、「第1回新商品委員会で出された意見」中に「(4)地場産品を活用したもの。・馬肉を使ったカレー」等と記載され、第2回(平成21年11月18日)の議事録には、「満場一致で『馬肉カレー』と決定しました。」と記載されており、第4回(平成22年1月20日)の議事録には、「売り出す際のネーミングも考えられましたが、まだ固まっていない状態です。『金木』と書いてどう読むのか分からない人がいたり、漢字だと硬い感じがするのでひらがなで『かなぎ』としようと皆で話していました。」と記載されている。そして、第6回(平成22年2月17日)の議事録には、「・激馬かなぎカレー 最低価格を設定し、(中略)500円で決定。」等と記載され、添付の「かなぎを楽しむガイドマップ」には、「かなぎの元気その1」、「激馬かなぎカレー かなぎは古くから馬肉の産地であり、この街ゆかりの馬肉の味をもっと気軽に楽しんでいただきたいという思いから『馬肉カレー』を考案しました。(後略)」等と記載されている。
(エ)甲第6号証は、「平成21年度 地方の元気再生事業 かなぎ観光セミナー」と題するパンフレットであり、当該セミナーの日付は、「2/20(土)」、「2/21(日)」(これらの日付が平成22年のものであることは、記載された曜日から推認することができる。)と記載され、「2/20(土)」の欄は、「太宰ミュージアムブランドへの参加事業者を募集します」の文字の下、「金木ならではの食材による、グルメ展開と自然素材を生かしたおみやげ品を、太宰ミュージアムブランドとしてPRします。基本的な素材を統一して、各事業者による味わいを展開していただきます。」、「新商品説明会 魅力ある商品(食品・工芸品)など、全5点を開発しました。飲食店様、お菓子店様、お土産店様など、どなた様でも是非ご参加下さい。」と記載されている。また、パンフレット中の「かなぎを元気に!プロジェクト 新商品について」の項目には、「激馬かなぎカレー」が紹介されている。
(オ)甲第7号証は、「太宰ミュージアム参加申込書」であるところ、「代表者氏名(個人・法人)」欄には「車門 白川信一」と、「商号・事業所名」欄には「お食事と喫茶 車門」と、また、「参加コンテンツ」欄には「食(レシピ カレー・しじみ汁) 3/1カレー開始」と記載されている(ただし、申込み日は記載されていない。)。
(カ)甲第8号証は、平成22年3月27日付けの東奥日報であるところ、「激馬かなぎカレー」、「ウマい!」、「町内4店自慢の味披露」の見出しの下、「五所川原市金木町で『激馬(げきうま)かなぎカレー』を提供している4店が25日、(中略)自慢の味を披露した。」、「激馬かなぎカレーは金木町のNPO法人かなぎ元気倶楽部が、地元の素材を生かした新商品を町の名物に育てたいと開発した。地元産の馬肉を使い、福神漬の代わりに高菜の漬物を添える?などを条件に町内の飲食店に参加を呼び掛けた。試食会には独自にカレーを開発した『ふくべ』、『駅舎』、『車門』、『はな』(27日から)の4店が登場。」等と記載されている。また、同日付けの陸奥新報にも、甲第8号証と同趣旨の記事が掲載されている(甲第9号証)。
(キ)甲第11号証は、申立人の職員である斎藤真紀子の平成22年12月6日付けの陳述書であるところ、その内容は、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)である白川信一が、同法人に無断で本件商標の登録出願をし、登録を取得したこと、本件商標の登録出願までの斎藤真紀子と白川信一のやりとりなどである(なお、当該陳述書には、白川信一が「太宰ミュージアム」の参加店舗として参加の申込み(甲第7号証)をした日付について、「平成22年2月25日」との記載がある。)。
(ク)甲第12号証は、「かなぎを楽しむガイドマップ」であるところ、該ガイドマップは、「新商品」等に関する第6回目の議事録(甲第5号証)に添付されたものと一部異なる部分があるが、ほぼ同一であり、「激馬かなぎカレー」が紹介されている(ただし、作成日は不明である。)。
イ 平成21年3月に内閣官房地域活性化統合事務局より公表された「平成21年度『地方の元気再生事業』募集要領」によれば、該事業は、「持続可能な地方再生の取組を抜本的に進めるため、地域住民や団体の発意を受け、地域主体の様々な取組を立ち上がり段階から包括的・総合的に支援する」政策であること、その特長として、「国が予め支援メニューを示すことをやめ、地域固有の実情に即した先導的な地域活動等、幅広い取組(地域産業振興、農村産業振興、生活交通の確保など)に関する提案を公募」し、その応募主体は、地域活性化に取り組むNPO等の法人、地方公共団体等であることなどを認めることができ、また、選定の結果によれば、「平成21年度 地方の元気再生事業(新規)」に青森県五所川原市金木町蒔田地区が、提案団体名を「特定非営利活動法人かなぎ元気倶楽部」とし、調査名を「文化伝承・体験学習施設『かなぎ元気村?かだるべぇ?』創立事業」として選定されたことを認めることができる。
ウ 上記ア及びイを総合すると、以下のとおり認定することができる。
青森県五所川原市金木町蒔田地区は、国(内閣官房)が推し進めている「地方の元気再生事業」の平成21年度(新規)の枠に選定され、申立人は、平成21年7月15日に、支出負担行為担当官東北地方整備局長岡田光彦との間で、「文化伝承・体験学習施設『かなぎ元気村?かだるべぇ?』創立事業」に関し、平成21年7月16日から平成22年3月19日までの間に、委託調査する委託契約を締結した。該契約に基づき、申立人は、五所川原市金木町の地域の特産品を活用した新商品の開発や観光ルートの開発等を検討した。検討会議を重ねた後、平成22年2月17日に、金木町の特産である馬肉を使用したカレーについて、「激馬かなぎカレー」との名称を公表し、東奥日報や東奥日報等の新聞で報じられた。申立人は、自らが開発した新商品の紹介・事業参加者の募集等についてのセミナーを平成22年2月20日に開催することを内容としたパンフレットを配布した。同パンフレットには、新商品の一つとして、「激馬かなぎカレー」が掲載された。
一方、金木町において飲食店「車門」を経営する白川信一(本件商標権者)は、遅くとも平成22年3月1日前(申立人の職員である斎藤真紀子の陳述書によれば、平成22年2月25日)に、申立人が開発した新商品の事業参加者として、参加の申込みをした。また、同「車門」は、平成22年3月25日に、申立人が開発した新商品の事業参加店の一つとして、「激馬かなぎカレー」の試食を提供した。そして、本件商標は、本件商標権者が申立人が開発した新商品の事業参加者として、参加の申込みをした日以降の平成22年3月2日に登録出願されたものである。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、前記1のとおり、「激馬かなぎカレー」の文字を標準文字で表してなるものである。
そうすると、本件商標は、申立人が開発した新商品である馬肉を使用したカレーについて使用される「激馬かなぎカレー」との名称と同一の綴り字よりなるものであるから、該名称と実質的に同一の商標というべきである。そして、本件商標権者は、金木町において飲食店を経営する者であり、しかも、申立人が開発した新商品の事業参加者として、参加の申込みをした者であることから、当然のこととして、申立人が開発した新商品である馬肉を使用したカレーについて使用される名称が「激馬かなぎカレー」であることについて熟知していたというべきである。
してみると、本件商標権者は、本件商標の登録出願前より、地方の元気再生事業の一環として、申立人が開発した新商品である馬肉を使用したカレーについて使用される名称が「激馬かなぎカレー」であることを十分に知っていながら、該名称が商標登録がなされていないことを奇貨として、これと実質的に同一の本件商標を申立人の承諾を得ずに先取り的に商標登録出願し、登録を得たものであって、本件商標権者が金木町で飲食店を経営している事実に照らせば、本件商標権者の行為は、地域の活性化を図るという地方公共団体としての政策目的に基づく公益的な施策に便乗して、その遂行を阻止し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、「激馬かなぎカレー」の名称による利益の独占を図る意図でしたものと認められる。
したがって、本件商標の登録出願の経緯には、著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることは、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、その登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

4 本件商標権者の意見
前記3の取消理由に対して、商標権者は、次のように意見を述べている。
(1)本件商標権者は、金木住民であり、申立人の開発した新商品の事業参加者でもあることから、第三者により「激馬かなぎカレー」の名称が権利化されることを心配していた。そのため、平成22年2月27日に、申立人の担当者である斎藤真紀子に対し、当事者において権利化のための出願手続を済ませているか否かを問い合わせたところ、手続済みである旨の回答を得た。
(2)県や市町村等の自治体が企画、立案して必要となる商標は、どこの自治体でも手抜かりなく対策をしてきており、そこに属する地域民の権利を守り、無関係の者からの妨害等について手立てをしてきているというのが事実である。ところが、申立人は、企画を始めた平成21年10月から5カ月を経過しても出願手続をしないばかりか、本件商標権者による質問に対し、出願手続を済ませてある旨の回答をしたのである。
(3)本件商標権者は、過去に商標の出願・権利化をした経験があることから、上記の回答を得た後、その確認をする意味で、念のため、出願の事実の有無について検索をしたところ、その事実を確認することができなかったので、第三者による「激馬かなぎカレー」の名称の権利化がされることのないように、自費を投じて、我々地域住民の権利を確保しておくようにしたものである。
(4)取消理由では、申立人が証拠として提出した議事録の記載や、それらがわずかに報道されたという事実だけで、その企画内容について、該企画・立案者に所有権が発生するとし、「申立人の承諾を得ずに」出願して登録を得たことを挙げているが、申立人の「承諾を得る必要がある」とする根拠が何ら示されていない。
(5)本件商標は、先願主義の下、特許庁の審査官による審査の結果、拒絶の理由はないとして登録されたはずのものであり、その事実には何らの相違などない。登録を得たことに問題があるのであれば、その審査をした審査官が問いただされてしかるべきである。
(6)本件商標については、申立人から、五所川原簡易裁判所に対し、本件商標の放棄に係る調停申請がされたが、和解の調停が図られたとき、本件商標権者から担当裁判官に対し、権利者として権利行使等は考えておらず、したがって町民が使うのに何ら異議も不服もなく、しかも、企画・立案したのが申立人である以上、その団体において使用する限り、先使用権があるとの釈明をした。
(7)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものではない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字、図形、又は、該商標を指定商品あるいは指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、あるいは、社会の一般道徳観念に反するような商標、(イ)特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標、(ウ)特許法以外の法律によって、その使用等が禁止されている商標等が含まれる、と解すべきであり、そして、上記「社会の一般道徳観念に反する」ような場合には、ある商標をその指定商品又は指定役務について登録し、これを排他的に使用することが、該商標をなす用語等につき該商標出願人よりもより密接な関係を有する者等の利益を害し、剽窃的行為であると評することのできる場合も含まれ、このような商標を出願し登録する行為は、商標法第4条第1項第7号に該当するというべきである(東京高裁平成14年(行ケ)第94号、同年7月16日判決参照)。
イ 本件商標は、「激馬かなぎカレー」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、前記3において認定、判断した本件商標に対する取消理由のとおり、国が推進する平成21年度「地方の元気再生事業」に係る委託契約に基づき、申立人が開発した新商品の一つであって、金木町の特産である馬肉を使用したカレーについて使用する名称「激馬かなぎカレー」と同一の綴り字からなるものであり、しかも、本件商標権者は、金木町において飲食店を経営しており、かつ、申立人が開発した新商品の事業参加者として、参加の申込みをした者であることから、該新商品について使用される名称が「激馬かなぎカレー」であることを熟知していたにもかかわらず、該名称が商標登録されていないことを奇貨として、これと実質的に同一の本件商標を、該新商品を開発した申立人の承諾を得ることなく、先取り的に商標登録出願し、登録を得たものである。
してみれば、本件商標権者による上記行為は、地域の活性化を図るという地方公共団体としての政策目的に基づく公益的な施策である「地方の元気再生事業」において申立人が開発した新商品の名称「激馬かなぎカレー」について、商標登録出願し、その登録を得たことにより、本件商標権者がこれをその指定役務について排他的に使用することができることを意味するものであり、ひいては申立人並びに該事業の関係者及びその利用者が本件商標及びこれと類似する商標をその指定役務又はこれと類似する役務若しくは商品に使用することができなくことを意味するものであるから、結局、該事業の遂行を阻止し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、「激馬かなぎカレー」の名称による利益の独占を図る意図でしたものであって、剽窃的なものといわなければならない。
したがって、本件商標は、公序良俗に反するものであり、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)本件商標権者は、前記3の取消理由に対して、意見を述べているが、以下の理由により採用することができない。
ア 本件商標権者は、本来、県や市町村等の自治体が企画、立案して必要となる商標は、その自治体が自ら第三者による妨害等に対策を講じるべきところ、申立人は、本件商標についてそのような対策を講じなかったことから、地域住民の権利を確保すべく、自費を投じて出願をした旨主張している。
しかしながら、本件商標「激馬かなぎカレー」は、上記のとおり、「地方の元気再生事業」において申立人が開発した新商品の名称「激馬かなぎカレー」と同一の商標であるばかりでなく、本件商標権者は、該事業の参加者の一にすぎないにもかかわらず、該事業についてより密接な関係を有する申立人の承諾を得ることなく、本件商標を出願し、その登録を得たことにより、これをその指定役務について排他的に使用することができるのであるから、たとえ主観的動機が本件商標権者のいうように地域住民の権利を確保することにあるとしても、客観的にみれば、本件商標権者による本件商標の出願とその登録を得た行為は、信義則に反し、穏当を欠くといわざるを得ない。
イ 本件商標権者は、本件商標は、先願主義の下、特許庁の審査官による審査を経て登録されたものであるから、何ら問題ない旨主張している。
しかしながら、商標登録の異議申立制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであるところ、本件商標については、上記のとおり、登録異議の申立てがあり、その理由を審理した結果、本件商標の出願とその登録を得た行為が、本件商標権者の主観的動機はともかくとして、客観的に剽窃行為と認められることから、公序良俗に反する旨判断したものである。
ウ 本件商標権者は、五所川原簡易裁判所において申立人との間でされた本件商標の放棄に係る調停の際に、担当裁判官に対し、権利者として権利行使等をすることは考えていないことから、町民が本件商標を使うことに何ら異議も不服もなく、しかも、企画・立案したのが申立人である以上、その団体において使用する限り、先使用権があるとの釈明をした旨述べている。
しかしながら、本件においては、本件商標権者が本件商標をその指定役務について排他的に使用することが、「激馬かなぎカレー」の語を「地方の元気再生事業」において使用する申立人並びに該事業の関係者及びその利用者の利益を害することになり、本件商標権者が上記のように該事業に関係してきたものであることも考慮すると、その行為が、客観的にみて、剽窃的であり、公序良俗に反する結果となる旨認定、判断するものであり、これが、本件商標権者の述べる上記町民による本件商標の使用に対する意思や先使用権の有無により影響を受けるものではない。
(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2011-10-05 
出願番号 商願2010-19845(T2010-19845) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (X43)
最終処分 取消  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 2010-08-20 
登録番号 商標登録第5346443号(T5346443) 
権利者 白川 信一
商標の称呼 ゲキウマカナギカレー、ゲキウマカナギ、ゲキウマ、カナギカレー 
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