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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y03
管理番号 1269546 
審判番号 無効2011-890114 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-12-28 
確定日 2013-01-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4889087号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4889087号商標(以下「本件商標」という。)は、「シーラボ UVシャンパンゴールド」の文字を標準文字で表してなり、平成16年10月4日に登録出願、第3類「肌にシャンパンゴールド色の色調を付加する効果を有する日焼け止め用化粧品」を指定商品として、同17年5月16日に登録査定、同年8月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第120号証を提出している。
1 請求の理由
(1)無効事由
本件商標は、以下のとおり、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきである。
(2)無効原因
ア 原産地統制名称「CHAMPAGNE」(シャンパン)について
請求人は、「シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会」を意味する「COMITE INTER PROFESSIONNEL DU VIN DE CHAMPAGNE」(審決注:アクサン記号は省略した。以下も省略して記載する。)(略称「C.I.V.C.」)の名のもとに、フランス国シャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護を目的の一つとして設立されたフランス法人である(甲第14号証、甲第42号証、甲第57号証、甲第65号証ないし甲第67号証)。
原産地表示は、需要者・取引者にとって、商品の選択に際して極めて重大な意味を有することはいうまでもなく、パリ条約における原産地等の虚偽表示の取締に関する規定、及び誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定の精神は、最大限に尊重されなければならない。
フランスにおいては、原産地表示が厳格に統制されており、その中核をなすのが、1935年に制定された原産地統制呼称法(Appellation d’Origine Controlee)である(甲第4号証、甲第5号証、甲第8号証、甲第19号証、甲第42号証、甲第52号証、甲第54号証、甲第55号証、甲第65号証)。この法律は優れた産地のぶどう酒を保護・管理することを目的とし、政府の機関「Institut National des Appellation d’Origine」(略称「INAO」)によって運用されている(甲第44号証、甲第52号証、甲第53号証、甲第56号証及び甲第57号証)。
同法において原産地統制名称ぶどう酒(A.O.C.)は、原産地、品質、最低アルコール含有度、最大収穫量、醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず、その基準に合格してはじめてA.O.C.名称を使用することができる。しかし、鑑定試飲会の際に不適当であるとみなされたものは、名称使用権利を失うことになっており、厳格な品質維持が要求されている。原産地統制名称は、産地の名称を法律に基づいて管理し、生産者を保護することを第一の目標とし、また名称の使用に対する厳しい規制は、消費者に対して品質を保証するものとなっている。
「CHAMPAGNE」(シャンパン)は、同法による原産地統制名称にほかならず、シャンパーニュ地方産の発泡性ぶどう酒にのみ使用を許される名称であって、この表示を付した商品「シャンパン」は、我が国においても広く販売されており、産地を表示する標章の代表的なものの一つとして極めて著名である。
また、ヨーロッパにおいては、限られた地域で特定の材料・製法により生産される農産物等の伝統的特産物が数多く存在している。かかる伝統的特産物には、他の地域の産物との区別のため産地名が使用され、特に良質な産品については国際的に名声を得たものについて、その産地を保護する必要性が生じてきたことから、ヨーロッパ連合は、1992年に農産物の原産地表示保護のために理事会規則2081/92号を制定した。本規則で保護される原産地表示は、本規則にて定められた品目に限られ、EC委員会において審査された後、「保護地理的表示(protected geographical indication)」ないしは「保護原産地呼称(protected designation of origin)」として登録された場合、規則2081/92号の保護対象となりヨーロッパ全土で保護される。なかでも「保護原産地呼称」として認定されるためには、定められた製法で生産・加工・調整されることを要するといった非常に厳格な基準が設けられている。
上記のとおり、ヨーロッパでは、原産地表示保護のための独自の制度を設けることにより、原産地表示を手厚く保護している(甲第109号証)。「Champagne」(シャンパン)は、最も厳しい基準を要求される「保護原産地呼称」として認定され、ヨーロッパにおいて保護されている(甲第110号証)。
上記事実は、甲第2号証ないし甲第53号証に示す書籍、雑誌及び新聞等の印刷物における記載から明らかな事実である。
以上のことから、「CHAMPAGNE」「シャンパン」の語は、a)「CHAMPAGNE」の語がフランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であること、b)生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、c)「CHAMPAGNE」を表す邦語として「シャンパン」が普通に使用されていること、d)シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、e)我が国において数多くの辞書、事典、書籍、雑誌及び新聞等においてシャンパンについての説明がなされていることなどが認められ、これらを総合すると、我が国において「CHAMPAGNE」「シャンパン」は「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているというべきである。
イ 商標法第4条第1項第7号該当性について
(ア)商標法第4条第1項第7号の趣旨
商標法第4条第1項第7号は、その商標の構成自体が矯激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念に従って検討した場合に、当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反する場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標、若しくは国際信義に反するような商標である場合も含まれるものとみるのが相当と解されている(甲第96号証)。
また、知財高等裁判所により、いかなる商標が商標法第4条第1項第7号公序良俗に反するかは、以下のとおり、5つの具体的事情を考慮して検討すべきとの指針を示している。「『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には、a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」(平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決:甲第97号証)
さらに、どのような商標登録が特定の国との国際信義に反するかどうかについても「当該商標の文字・図形等の構成、指定商品又は役務の内容、当該商標の対象とされたものがその国において有する意義や重要性、我が国とその国の関係、当該商標の登録を認めた場合にその国に及ぶ影響、当該商標登録を認めることについての我が国の公益、国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮して判断すべきである。」と当該判決の中で判示されている。
(イ)著名な原産地名称についての保護
「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字は、前記アのように著名なフランスの原産地統制名称として、その使用が厳格に管理・統制されているものであって、請求人やINAOらによる長年にわたる厳格な品質管理・品質統制の努力の結果、高い名声、信用、評判が形成されているものであり、ぶどう酒の商品分野に限られることなく一般消費者に至るまで、世界的に著名な原産地名称である。
原産地名称は、商品が産出された土地の地理的名称をいい、商標とは地理的名称に限定されること及びその商品の品質、社会的評価、その他の特性が、産出地固有の気候、地味等の自然条件又は産出地の人々が有する伝来の生産技術、経験若しくは文化等の人的条件といった地理的要因に基づくこと等の点において異なるが、商標とは、商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有する点において、共通しているものと考えられる。そうすると、原産地名称のうち、著名な標章については、著名商標の有するこれら機能が商標法によって保護されているのと同様に保護されることが望ましいというべきである(甲第80号証)。
したがって、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」には、著名な原産地名称を含む表示からなる商標を同法第4条第1項第17号によって商標登録を受けることができないとされているぶどう酒又は蒸留酒以外の商品に使用した場合に、当該表示へのただ乗り(フリーライド)又は当該表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある等、公正な取引秩序を乱すおそれがあると認められるものや国際信義に反すると認められるものも含まれると解すべきである。
故に、著名な原産地名称を原産地と離れた特定個人又は企業が自己の商標として登録し使用することは、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、認められるべきではなく、商標法の下、著名な原産地名称については保護されるべきである。
(ウ)本件商標
本件商標は、前記の著名な原産地統制名称である「シャンパン」の文字と、「シーラボ」「UV」「ゴールド」の文字からなる商標である。「シーラボ」は特段の意味を有さないが、「UV」は単に欧文字2文字にすぎず商標としての自他商品識別標識とはなり得ず、また、化粧品分野においては「UV」の文字は紫外線を意味する「Ultra Violet」を示すものとして「UV」又は「UVケア化粧品」等の言葉が一般的に使用されているため、その文字部分は、商標としての自他商品識別標識とはなり得ない(甲第114号証)。
さらに「ゴールド」については、その指定商品である化粧品の分野において、商品の色彩が「金色」であることを示すにすぎず、「ゴールド」は化粧品に関らず、広く一般的に日本人に使用されている言葉である(甲第115号証)。
そして「シーラボ」という特段の意味を有さない語と、「UV」「シャンパン」「ゴールド」はそれぞれ一体としてのみ把握されるという特段の事情もみあたらず、また、本件商標の指定商品の分野において「UV シャンパンゴールド」の語が成句として知られているなど、これらを常に一体不可分のものとして認識されなければならない事情は認められないものである。
よって、本件商標は著名な原産地統制名称である「シャンパン」の文字を含む商標という印象を与えるのみというべきである。
したがって、本件商標は、原産地統制名称である「シャンパン」の表示を含む商標であるから、その「シャンパン」の表示部分の著名性や第三者による使用による該表示の希釈化のおそれ、及び需要者における「シャンパン」の表示部分に対する注意力の高さやそれに伴う第三者の該表示へのただ乗りを生じさせるおそれにかんがみるならば、「シャンパン」表示を含む語の構成態様の如何にかかわらず、また、その語が指定商品の分野において色彩を表す言葉といった既成語として知られているかどうかにかかわらず、「シャンパン」を含む語の登録は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するというべきであり、公の秩序を害するおそれがあるものであるとして無効にされるべきである。
(エ)本件商標は国際信義に反する
甲第2号証ないし甲第53号証の事実を総合すると、本件商標の出願時及び査定時においても我が国において「シャンパン」は、著名な原産地統制名称として一般需要者の間に広く知られているものであり、また、前記したように、著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」は著名商標と同様に、商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有するため、商標法によって保護されるべきものである。
そうすると、本件商標は、著名な原産地統制名称「シャンパン」を構成に含み、かつ、その他、本件商標を構成する文字である「シーラボ」「UV」及び「ゴールド」とは、常に一体として把握しなければならないとすべき理由がないことから、本件商標においては、その構成中「シャンパン」の部分が強く印象に残るというべきである。
すなわち、本件商標中の要部は著名な原産地統制名称と同一であり、該名称は、フランス国による原産地統制名称法に基づき指定されたワインとして、厳格にその使用を規制されているものであるから、たとえ、これが食品とは異なる本件商標の指定商品について使用されるとしても、前記原産地統制名称の稀釈化をきたすおそれがあり、ひいては国際信義に反するものといわざるを得ない。
(オ)異議決定・無効審決例
「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字をその構成に含む商標については、その商品・役務を問わず、商標法第4条第1項第7号に該当するという実務が確立しているといえる。かかる過去の審決及び異議決定の例にかんがみても、このような商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあると判断されるべきである(甲第68号証ないし甲第80号証、甲第82号証ないし甲第88号証、甲第95号証及び甲第98号証ないし甲第100号証)。
さらに、近年では「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字をその構成に含む商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し国際信義に反することから、商標法第4条第1項第7号に該当するとの理由で、審査過程においても拒絶されている(甲第89号証ないし甲第93号証、甲第101号証ないし甲第108号証)。
また、「Champagne」及び「シャンパン」以外の原産地統制名称「ROMANEE-CONTI(ロマネコンチ)」「BORDEAUX(ボルドー)」及び「BEAUJOLAIS nouveau(ボジョレーヌーボー)」を含む商標についても、原産地名称の稀釈化を引き起こすおそれや公正な競業秩序を乱すおそれがあることを認められ、商標法第4条第1項第7号に該当することが認定された例が存在する(甲第61号証ないし甲第64号証、甲第112号証)。
よって、これら登録異議申立て及び無効審判でなされた判断と同様に、本件商標をその指定商品に使用すると、フランス・シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が、永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと、及び、フランスが国内法制を制定し、1935年以降、請求人やINAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきたことの結果として著名性を獲得した原産地名称である「Champagne」及び「シャンパン」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある。これに加え、同表示を発泡性ぶどう酒とは商品の性質上相容れない本件商標の指定商品に使用する場合には、本来、限定された発泡性ぶどう酒にのみ付されるべき同表示が、別の商品・役務に使用されることによって需要者に不快感を懐かせ、同表示の汚染(ポリューション)を生じされるおそれがあり、また、国を挙げてぶどう酒の原産地名称または原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあると判断されるのが相当であり、商標法第4条第1項第7号により無効とされるべき商標である。
(カ)諸外国でのケース
著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE」が、その著名標章の信用へのフリーライドから引き起こされる不利益から保護されるべきであることは、請求人らがフランス・イギリス・スイス等において提訴した事件において認められている(甲第57号証、甲第58号証、甲第66号証、甲第111号証、甲第113号証)。
(3)むすび
このように、著名な原産地統制名称「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」は、フランス国の政府機関たる請求人やINAO等による不断の努力によって、高い名声・信用・評判が維持されているのであって、これを、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し使用することは、公序良俗を害するものであるというべきである。
すなわち、本件商標は、著名な原産地名称である「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の名声をせん用し、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」に化体している高い名声・信用・評判から不正な利益を得るために使用する目的でなされたものであるから、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」という表示へのただ乗り(フリーライド)及び、同表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあり、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるため、商標法によって登録され、保護されるに値しない商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものというべきある。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第184号証を提出している。
1 答弁の理由
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第7号には該当しない
ア 原産地統制名称「CHAMPAGNE」(シャンパン)について
我が国において 「CHAMPAGNE」「シャンパン」は「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られていることは争いのない事実であり、ここで被請求人が争うような事柄ではない。
イ 本件商標について
本件商標は、「シーラボ」の文字、「UV」の文字及び「シャンパンゴールド」の文字を結合した構成からなり、このうち「シーラボ」の文字は商標登録第4698348号(乙第184号証)として被請求人が保有するように、単独で識別力を有する部分である。
一方、「UV」の文字は、請求人が主張するように、化粧品分野においては紫外線を意味する「U1traViolet」を示すものとして取引上普通に使用されている自他商品識別力を有しない文字である。
また、「シャンパンゴールド」の文字は色彩を表す用語として広く使用されている文字であり、やはり自他商品識別力を有しない文字である。
そのため、被請求人は上記の付記部分「UVシャンパンゴールド」の箇所により、品質の誤認を生じさせないように、本件商標の指定商品を「肌にシャンパンゴールド色の色調を付加する効果を有する日焼け止め用化粧品」として出願に及んでいる。
ウ 「シャンパンゴールド」の文字について
「シャンパンゴールド」の文字が色彩を表す用語として広く使用されていることは、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて登録を維持する決定がなされていることからも、その申立時点には、特許庁において顕著な事実であったはずである。また、乙第1号証ないし乙第154号証に示すように本件商標の登録査定時はもとより、それ以前及び現在に至るまで狭く化粧品の分野に止まらず、あらゆる分野において広く使用されている。
乙第1号証ないし乙第154号証における使用事例をみても明らかなように、「シャンパンゴールド」の文字は誰でもが使用できる色彩を表すための普通名詞であり、この使用をもって社会公共の利益に反したり、国際信義に反するといった性質のものではない。
一方、これらの事実から「シャンパンゴールド」の文字が識別力を欠くと共に独占適応性がない文字であることは明らかであり、故に本件商標の指定商品を「肌にシャンパンゴールド色の色調を付加する効果を有する日焼け止め用化粧品」として、これが商標の付記部分であることを明らかにしているのである。
また、「シャンパンゴールド」の文字は、我が国では色彩を表すための普通名詞として確立されている以上、仮にその由来が「シャンパン」に求められたとしても、あくまでも「シャンパンゴールド」という一体の文字と認識されるのが自然であり、著名な原産地統制名称に化体した名声や信用にフリーライドするものであったり、厳格に管理・統制されている原産地統制名称を希釈化させるものとは無縁のものである。
エ 米国における登録例について
ここ最近に限っても、我が国よりはるかにシャンパンに対する認知度が高い米国において乙第155号証ないし乙第183号証に示すように「CHAMPAGNE」の文字を含む商標の登録例がある。
オ 小括
以上の被請求人の主張を、知財高等裁判所により示されたいかなる商標が商標法第4条第1項第7号公序良俗に反するかの指針(甲第97号証)に即してみれば次のとおりである。
a)「その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合」
本件商標には「非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形」は含まれていない。
b)「当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」
本件商標中の「シーラボ」の部分は、特定の観念を有しない造語であり、「UV」は紫外線を意味する「UltraViolet」を示す略語であり、「シャンパンゴールド」部分は誰でもが使用できる色彩を表すための普通名詞である。
よって、これらを本件商標の指定商品について使用することが、社会公共の利益や一般的道徳観念に反しないことは当然である。
c)「他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合」
商品「化粧品」に関し、色彩を表す文字である「シャンパンゴールド」の文字を本件商標の指定商品に使用することを禁止する法律は存しない。
d)「特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合」
本件商標は「シーラボ UVシャンパンゴールド」と標準文字で表した構成からなり、このうち「シャンパンゴールド」部分は色彩を表す普通名詞である。
また、指定商品は「肌にシャンパンゴールド色の色調を付加する効果を有する日焼け止め用化粧品」であり、「シャンパン」が属する商品「ワイン」とは、生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途、需要者の範囲、完成品と部品の関係の全てが一致しない完全な非類似商品である。
さらに、色彩を表す普通名詞である「シャンパンゴールド」部分は自他商品識別力を有せず、しかも指定商品を「肌にシャンパンゴールド色の色調を付加する効果を有する日焼け止め用化粧品」としていることから、この箇所に排他的な権利が与えられることはあり得ない。
よって、我が国の公益、国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮しても普通名詞「シャンパンゴールド」を含む本件商標「シーラボ UVシャンパンゴールド」の登録を認めてもフランス国民が不利益を被ることはあり得ず、国際信義に反することはなんらない。
e)「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」
本件商標は普通名詞「シャンパンゴールド」を含む商標に関し指定商品を「肌にシャンパンゴールド色の色調を付加する効果を有する日焼け止め用化粧品」として出願したものであり、当初から「シャンパンゴールド」部分には独占権を請求していないものであり、その経緯は社会的相当性を欠くものではなく、また、登録を認めても「シャンパンゴールド」部分には独占権は発生しないのであるから商標法の予定する秩序に反するものではない。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標は、公正な取引の秩序を乱しひいては国際信義に反するものであって公の秩序を害するおそれがあるものではないのであるから、商標法第4条第1項第7号には該当しないものである。

第4 当審の判断
1 「シャンパン」の語の著名性について
請求人提出の甲第2号証ないし甲第53号証によれば、「Champagne」の語は、フランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であって、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、我が国において「Champagne」を表すものとして、片仮名表記による「シャンパン」が普通に使用されていること、シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、我が国において数多くの辞書、書籍、雑誌及び新聞などにおいてシャンパンの語についての説明がされ、世界の名酒事典などにおいてもシャンパンの具体的製品が紹介されていることなどの状況が認められ、これらを総合すると片仮名「シャンパン」の語は、我が国において、本件商標の(登録出願時である平成16年10月4日はもとより)登録査定時である平成17年5月16日において「フランスのシャンパーニュ地方」及び「当該地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られていたというのが相当である。
なお、この点について被請求人は争っていない。
2 「シャンパンゴールド」の語について
被請求人提出の乙第1号証ないし乙第154号証によれば、「シャンパンゴールド」の語が本件商標の登録査定日前に、次のとおり色彩を表示する語として使用されている。
(1)化粧品についての使用例
ア「@cosme」と称するウェブページに次のとおり記載がある。
(ア)乙第1号証及び乙第2号証の「イプサ ブライトアップ フォークリスマス」の商品情報には「発売日 2001/11/16」、「商品説明」の項に「【キット内容】/…ネイルエナメル 25 エレガントなシャンパンゴールド…」、「最新クチコミ」の項に「…店頭で色味の美しさにやられ、…控えめなシャンパンゴールドがステキ!…」の記載。
(イ)乙第3号証の「ミキモト コスメティックス ネイルコレクション」の商品情報には「発売日 2001/12/1」、「商品説明」の項に「…つややかなネイルカラー3色(…クリスタルベージュ/シャンパンゴールド)がセットイン。…」の記載。
(ウ)乙第4号証の「ルナソル シャイニングパウダー」の商品情報には「発売日 2002/9/1」、「商品説明」の項に「※2002年秋の新色は、…しっとりとした立体感のあるスキニー肌を演出するシャンパンゴールド。」の記載。
(エ)乙第5号証の「キス ネイルアートエナメル」の商品情報には「発売日 2003/4/21(2005/6/1追加発売)」、「追加説明」の項に「新1色」「シャンパンゴールドと、ホログラムラメの輝きを…」の記載。
(オ)乙第6号証の「キス デュアルアイペンシル」の商品情報には「発売日 2003/10/21(2005/10/5追加発売)」、「追加説明」の項に「2005年新1色・限定色1色」「…ハイライトやポイント色に使える限定色(シャンパンゴールド)が登場。」の記載。
(カ)乙第8号証の「マリークワント ネイルポリッシュ」の商品情報には「発売日 2003/9/21(2009/8/12追加発売)」、「追加説明」の項に「新3色」「秋冬の新色が登場。…M-02 シャンパンゴールド…」の記載。
(キ)その他、「シャンパンゴールド」の語が、「マニキュア、ネイルトップコート」(乙第9号証、乙第10号証及び乙第16号証)、「アイシャドウ」(乙第11号証及び乙第17号証)、「フェイスカラー、パウダーチーク」(乙第12号証及び乙第20号証)、「リップグロス」(乙第13号証)、及び「メイクアップキット」(乙第14号証)など日本ロレアル、ケサランパサラン、花王、カネボウ化粧品、CCBパリ、ポール&ジョーボーテ及びポーラなど各社の各種化粧品に色彩を表示する語として使用されている。
イ なお、本件商標の登録査定日前のものとはいえないが、平成24年2月にプリントアウトされた「プレミアムバンダイ」「ケンコーコム」「株式会社シーボン」などのウェブページにおいて、「シャンパンゴールド」の語が、色彩を表示する語として使用されている(乙第15号証、乙第21号証ないし乙第47号証、乙第52号証及び乙第54号証)。
(2)化粧品以外の商品への使用例
ア 乙第49号証は、オリンパス光学工業株式会社のウェブページであり、1999年10月19日付けの「デジタルカラープリンター」に係るニュースリリースには、「主な特長」の項に「7.ボディカラーはシャンパンゴールド…」の記載がある。
イ 乙第50号証及び乙第51号証は、同じくオリンパス光学工業株式会社のウェブページであり、1998年1月7日付け及び2003年1月28日 更新日2003年5月26日付けの「カメラ」に係るニュースリリースであって、前者の「主な特長」の項には「2.シャンパンゴールドのボディカラー」「ボディカラーは…シャンパンゴールドです。」の記載、後者の「その他の特長」の項に「(ソフトケース/シャンパンゴールド)…(ソフトケース/ブルー)」の記載がある。
ウ 乙第55号証は、株式会社東芝のウェブページであり、1998年9月28日付けの「DVDビデオプレーヤ」に係るプレスリリースであって、この記事中には「…本体色には高級感あふれるシャンパンゴールドを採用してます。…」の記載がある。
エ 乙第56号証及び乙第58号証は、サントリー株式会社のウェブページであり、1998年4月14日付け及び1999年4月14日付けの「ジャイアンツ応援生ビール」に係るニュースリリースであって、この記事中にはパッケージデザインとして「…シャンパンゴールドの地に…」の記載がある。
オ 乙第57号証は、旧株式会社ツーカーセルラー東京による、1998年3月25日付けの「携帯電話」に係るニュースリリースであって、この記事中には「カラー機種に対する需要も高まっています。…昨年5月に発売開始したTH271は当初シルバーメタリックを採用し、その後、シャンパンゴールド、ライトブルー、ライトグリーンの3タイプを加え…」の記載がある。
カ 乙第59号証は、セイコーエプソン株式会社のウェブページであり、1999年10月13日付けの「カメラ」に係る最新ニュースには、「主な特長」の項に「3.シャンパンゴールドのベーシックカラーと…」の記載がある。
キ その他、株式会社ニコン、株式会社東芝、キャノン株式会社等各社のウェブページにおいて、「シャンパンゴールド」の語が、「双眼鏡(ニコン)」(乙第60号証)、「パソコン(東芝)」(乙第61号証、乙第71号証)、「カメラ(キャノン、東芝、パナソニック、ペンタックス)」(乙第62号証、乙第64号証、乙第67号証、乙第72号証、乙第77号証)、「乗用車(トヨタ)」(乙第63号証、乙第70号証)、「ウイスキー(サントリー)」(乙第65号証)、「ルーペ(ニコン)」(乙第66号証)、「ゴルフクラブ(セイコーエスヤード)」(乙第68号証)、「ビール(サントリー)」(乙第69号証)、「オートバイ(カワサキ)」(乙第73号証)、「ビールテイスト飲料(サントリー)」(乙第74号証)、「ゲームコントローラー(セガ)」(乙第75号証)、「建材(新日本製鐵)」(乙第76号証)、「ペン(ステッドラー)」(乙第81号証)及び「MP3プレーヤー(グリーンハウス)」(乙第87号証)などの各種商品に色彩を表示する語として使用されている。
ク なお、本件商標の登録査定日前のものとはいえないが平成24年2月にプリントアウトされた各社のウェブページにおいても、「シャンパンゴールド」の語が、上記商品ほか、チョコレート、クッキングヒータ、食器洗い乾燥機、腕時計、ポータブルゲーム機、手帳カバー、掃除機、ナイフ、液晶テレビ、空気清浄機、シルバーカー、靴、消化器、自転車、手帳、ACアダプター、歩数計、美顔器、血圧計、絵具、電球、筆記具、ICレコーダー、ワンセグTV・ラジオ、ウォークマンキャリングケース、刺繍糸、名刺用紙、スーツケース、色鉛筆、オープントースター、三脚、バック、電子辞書、電子錠、及び電動ハブラシなどの多種商品について色彩を表示する語として使用されている(乙第78号証、乙第80号証、乙第82号証ないし乙第86号証、乙第88号証ないし乙第118号証、乙第120号証ないし乙第144号証、乙第146号証ないし乙第154号証)。
(3)上記(1)ア及び(2)アないしキからすれば、本件商標の登録査定日(平成17年5月16日)前において、「シャンパンゴールド」の語は、化粧品に限らず、各種商品について色彩を表示する語として広く一般に使用され、かつ、取引者・需要者に色彩を表示する語として認識されていたものと判断するのが相当である。
なお、上記(1)イ及び(2)クからすれば、その状況は現在も継続しているといえる。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するような場合、c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるものというべきである。
そして、当該商標登録が特定の国との国際信義に反するかどうかは、当該商標の文字・図形等の構成、指定商品又は指定役務の内容、当該商標の対象とされたものがその国において有する意義や重要性、我が国とその国の関係、当該商標の登録を認めた場合にその国に及ぶ影響、当該商標登録を認めることについての我が国の公益、国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮して判断すべきである。(平成17年(行ケ)第10349号:甲第97号証)。
(2)これを本件商標についてみると、次のとおり判断することができる。
ア その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形であるか
本件商標は、上記第1のとおり「シーラボ UVシャンパンゴールド」の文字からなるものであり、これが「非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字」でないこと明らかである。
イ 当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するか
本件商標中の「シーラボ」の部分は、特定の観念を有しない造語であり、「UV」は紫外線を意味する「UltraViolet」の略語であり、「シャンパンゴールド」部分は上記2のとおり、化粧品に限らず、各種商品について色彩を表示する語として広く一般に使用されているものであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものということはできない。
ウ 他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されているか
本件商標の使用について禁止する法律はみあたらない。
エ 特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するか
本件商標は「シーラボ UVシャンパンゴールド」の文字からなるものであるところ、原産地統制名称は「CHAMPAGNE」であり、その読みは「シャンパーニュ」であること、本件商標の指定商品は「ワイン」ではなく化粧品の範ちゅうに属する商品であること及び我が国においては「シャンパンゴールド」が色彩を表示する一体不可分の語として認識されるものであることをあわせみれば、本件商標は、フランス国若しくは同国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものとはいえないと判断するのが相当である。
オ 当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないか
本件商標の構成中「シャンパンゴールド」の部分は上記2のとおり、我が国においては、各種商品について色彩を表示する語として認識されているものであるから、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものであるとか、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものともいうことはできない。
また、他に本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証左は発見できない。
(3)そうとすれば、本件商標は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めることはできないといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号該当するものと認めることはできない。
4 請求人の主張について
請求人は、本件商標は「シーラボ」「UV」「シャンパン」及び「ゴールド」の文字からなるものであるとして、過去の審決、異議決定及び審査例を挙げ「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字をその構成に含む商標については、その商品・役務を問わず、商標法第4条第1項第7号に該当するという実務が確立しており、本件商標も無効にされるべきである旨主張しているが、本件商標は、その構成中「シャンパンゴールド」の文字が色彩を表示する一体不可分のものであって、公序良俗に反するものでないこと上記のとおりであるから請求人の主張は採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号によりその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-08-14 
結審通知日 2012-08-20 
審決日 2012-09-05 
出願番号 商願2004-90885(T2004-90885) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Y03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 啓之 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 梶原 良子
堀内 仁子
登録日 2005-08-19 
登録番号 商標登録第4889087号(T4889087) 
商標の称呼 シーラボユウブイシャンパンゴールド、シーラボ、ユウブイシャンパンゴールド、シャンパンゴールド 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 神保 欣正 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 田中 景子 

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