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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 042
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 042
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 042
管理番号 1267146 
審判番号 無効2011-890081 
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-27 
確定日 2012-12-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第3112185号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3112185号商標(以下「本件商標」という。)は,「モンテローザ」の片仮名文字を横書きしてなり,商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して,平成4年9月30日に登録出願,第42類「茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」を指定役務として,同7年7月6日に登録査定,同8年1月31日に特例商標及び重複商標として設定登録されたものである。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を審判請求書及び審理再開申立書において要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし同第28号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号又は同5号により無効にすべきものであり,また,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
1 審判請求の利益について
(ア)請求人が所有する商標権(商標登録第5198979号「モンテローザカフェ」)に対して,被請求人は本件商標を引用商標として無効審判(無効2010-890051)を請求している(甲第1号証)。
(イ)請求人が別途手続した商願2011-16438号出願,商願2011-16439号出願及び商願2011-16440号出願において,本件商標が拒絶の理由として引用されている(甲第2号証の1ないし3)。
(ウ)請求人は,「株式会社モンテローザ」の商号を使用して,昭和58年より多数の飲食店を運営,管理し,飲食物の提供を行う法人であり,飲食業界で「モンテローザ」は請求人の著名な略称ないし著名な商標として認識されるに至っており(甲第3号証の1ないし8,甲第4号証の1ないし13,甲第5号証の1ないし39),本件商標は,請求人の前記著名な略称ないし商標「モンテローザ」との関係から役務の質の誤認を生ずる商標であり,ひいては請求人の業務に支障が出るおそれがある。
(エ)被請求人は,平成17年11月24日付の内容証明郵便(甲第6号証)にて,請求人の前記「モンテローザ」の使用が本件商標の使用に当たり,商標権侵害である旨の主張をし,使用の停止を求めている。
(オ)以上の点から,請求人は,本件審判請求についての請求の利益を有する。
2 商標法第4条第1項第7号違反について
(1)「モンテ-ローザ(Monte Rosa)」とは,「(「ばら色の山」の意)アルプス山脈中の高峰。スイス・イタリアの国境にそびえる。標高4634メートル。」であり,「ペンニン・アルプスの主峰」を意味する語である(甲第7号証の1,2)。
「モンテローザ」高峰は,アルプス山脈中の高峰として,「モンブラン(Mont Blanc)」や「マッターホルン(Matterhorn)」と並び古くから観光地として世界的に著名であり,スイス政府観光局による日本語のパンフレットやホームページ(甲第8号証の1ないし3),現地の日本語の看板(甲第8号証の4)から明らかなように多くの日本人が訪れる観光地である。
特に,「モンテローザ」は,甲第7号証の2に示すように,「マッターホルン(4477m),リンプィッシュホルン(4199m),アルプフーベル(4206m),ドーム(4545m)」等を含めた山群を指す広域名称としても周知である。
そして,「モンテローザ」高峰の名称は,その著名性と「ばら色の山」の意から生ずるお洒落で清新なイメージから,スイス・イタリアをはじめとするヨーロッパ諸国において,「飲食物の提供」の役務を表示する商標として多く選択されている。
中でも「モンテローザ」高峰と「マッターホルン」高峰の分岐拠点であるスイスのツェルマット(Zermatt)という町には両高峰への観光客又は登山客が宿泊するホテルとして,1855年より「Monte Rosa」ホテルが存在し,観光客や登山客を通じて世界的に広く知られている(甲第9号証の1,2)。
また,外国地名としての「モンテローザ」は,サービスマーク登録制度が始まった平成4年4月当時に明らかに周知・著名であった。
大正時代には,秩父宮親王が大縦走したことで「モンテローザ」高峰の名はたびたび報道され,戦時中においてもイタリア軍の航空研究所が存する場所として幾度も報道されていた。戦後も昭和40年代にはスイスを紹介する書籍をみればアルプスを紹介する箇所には必ずモンテローザ高峰の名が記され,登山に関する書籍にもアルプス第二の高峰として記載されている(甲第20号証の1,2ないし甲第23号証)。
さらに,イタリアのキアヴァリ(Chiavari)という町には1909年より「Monte Rosa」という「三ッ星ホテル」が存在し,フランスの首都パリ(Paris)にも「Monterosa」という「三ッ星ホテル」が存在し,それぞれ世界的に広く知られている(甲第10号証及び甲第11号証)。
前記各ホテルは,いずれも権威あるミシュランの「レストラン・ホテルガイド」にも掲載されており,該各ホテルの名称が世界的に著名な商標となっていることは論を侯たない(甲第12号証の1ないし3)。
特に,スイスのツェルマットの「Monte Rosa」ホテルは,少なくとも昭和55年には日本から直接予約ができ,日本からアクセスしやすい世界一流ホテルとして知られており(甲第26号証の1,2)。当然に「マッターホルン」やその麓の「ツェルマット」を紹介する書籍でも紹介されている(甲第27号証)。
したがって,被請求人が前記「Monte Rosa」ホテルに化体した信用,名声,顧客吸引力等へのフリーライドを目的として「モンテローザ」商標を出願・登録し使用していることは疑いようがない。
前記で述べたとおり,本件商標は,前記した外国の著名商標と外国の著名な地名の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものといえ,このような商標の登録を認めることは国際社会の一員として相応しい行為とは到底いえず,国際信義に反し,公の秩序又は善良な風俗を害するものといえる。 前記のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当し,同法第46条第1項第1号又は同第5号により無効にすべきものである。
(2)前記したように,本件商標は,外国の著名な地名である「モンテローザ」高峰そのものや外国の著名商標を社会通念上同一の形態で表示する商標であり,そもそも,被請求人の商標としては自他役務識別標識としての機能を果たし得ない商標である。
また,日本においては,「モンテローザ」商標を使用して「飲食物の提供」を行っている者が多数存在し(甲第14号証の1ないし45),本件商標は,「飲食物の提供」の役務における慣用商標となっている。被請求人は,これらの商標に対しては全く権利行使せずに放置している。
よって,本件商標は,登録査定時から現在に至るまで自他役務識別標識としての機能を果たしていない。また当然に,本件商標には保護すべき信用も化体しておらず,化体しない商標というべきである。
そのため,本件商標は,自他役務識別標識としての機能を発揮できないものとして,商標法第3条第1項第3号又は同第6号の規定により拒絶されるべきであるにも拘わらず,拒絶理由通知が発せられることもなく看過されて過誤登録されている。
他方,商標登録から5年が経過した商標は,本件商標のような商標法第3条の規定に違反した過誤登録によるものであっても,公益的な見地から瑕疵が治癒したとして除斥期間が設けられている(商標法第47条)。
しかしながら,前記したように,本件商標は,登録査定時から現在に至るまで自他役務識別標識としての機能を果たし得ず,その瑕疵が治癒していない。むしろ,本件商標は,「モンテローザ」商標を使用する全国の事業者の商取引秩序を乱し我が国の産業の発達を阻害する商標である。
また,サービスマーク創設時に先使用者に対して,改正法附則第3条により「継続的使用権」が認められているとしても,この「継続的使用権」は,平成4年9月30日当時の業務の範囲内で認められるものであり,自由な商業行為が不当に阻害される。
したがって,本件商標のように瑕疵を内在したままの商標の登録状態を維持し,一私人に排他独占権である商標権を付与することは商標登録制度の目的趣旨に逆行し,衡平の理念に悖るばかりか,公の秩序又は善良な風俗を害する。
前記のとおり,本件商標は,登録査定時はもちろんのこと,登録後から現在に至るまで商標法第4条第1項第7号に該当し,同法第46条第1項第1号又は同第5号の規定により無効にすべきものである。
3 商標法第4条第1項第16号違反について
(1)請求人(モンテローザ)は,アルコール飲料の提供を主とする多数の居酒屋店(総店舗数1900店舗)を全国津々浦々に展開する経営母体として著名であり,この認識は一般来店者を含めた業界に定着している(甲第3号証の1ないし8,甲第4号証の1ないし13,甲第5号証の1ないし39,甲第28号証の1ないし10)。
他方,被請求人は,コーヒー・ケーキ等の提供を主とする飲食店(数店舗)を神奈川県を中心に出店している会社であり(甲第13号証の1等),いわゆる居酒屋業務は営んでおらず,現実に両者間には出所の混同や品質の誤認を生ずる余地がないというのが一般ユーザーの認識である。
もし,居酒屋業務において著名な請求人の「モンテローザ」の商標を,コーヒー店の業務を主としている被請求人が居酒屋業務に使用するときは役務の質の誤認を生ずるのは明らかであり,コーヒー店の業務を主としている被請求人の「モンテローザ」の権利が居酒屋店の業務にまでおよび使用を差し止める権原を有するとするのは現実から遊離した取り扱いであるというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当し,同法第46条第1項第1号又は同第5号により登録を無効にすべきものである。
(2)前記したように,本件商標は,外国の著名な地名である「モンテローザ」高峰を社会通念上同一の形態で表示する商標であり,外国の著名商標である「Monte Rosa」等と社会通念上同一の商標でもある。
そのため,本件商標は,需要者に前記した外国の著名な地名及び外国の著名商標によって表される役務の内容や役務の提供の場所等を認識させ役務の質の誤認が生ずる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当し,同法第46条第1項第1号又は同第5号により登録を無効にすべきものである。
(3)前記したように,「モンテローザ」高峰は,「ばら色(朱色)の山」との観念を生じ,このことから「モンブラン(白色の山)」ケーキのように,山の形態を模した「チーズケーキ」等の名称として周知・著名である。例えば,イタリアをはじめとするヨーロッパ諸国ではイチゴ等の朱色の果実を載せたチーズケーキが「Monterosa」チーズケーキとして周知・著名となっている(甲第16号証の1ないし3)。また,ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国では朱色の果実を載せたトルテが「MONTEROSA」トルテとして周知・著名となっている(甲第17号証の1ないし3)。
前記の事実は,インターネット等の通信技術が発達した今日において,日本における取引者・需要者も容易に接することができ,共通の認識となっている。特に「飲食物の提供」の中でも「洋菓子の提供」に従事する取引者や「洋菓子の提供」に接する需要者にとっては,洋菓子の先進国であるヨーロッパ諸国の情報を注視するのは明らかである。パティシエを含めた洋菓子業界において,前記「Monterosa」と称するチーズケーキ・トルテを知らないものはいない。本件商標を朱色の果実を載せたチーズケーキ・トルテと同種のケーキの提供に使用する場合には役務の質の誤認を生ずるものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当し,同法第46条第1項第1号又は同第5号により登録を無効にすべきものである。
4 商標法第4条第1項第19号違反について
前記したように,スイスのツェルマットには1855年より「Monte Rosa」ホテルが存在し,イタリアのキアヴァリには1909年より「Monte Rosa」という「三ッ星ホテル」が存在すると共に,フランスの首都パリ(Paris)には「Monterosa」という「三ッ星ホテル」が存在し,前記各ホテルの名称はそれぞれ世界的に著名な商標となっている。
前記各ホテルは,いずれも権威あるミシュランの「レストラン・ホテルガイド」にも掲載されており,前記各ホテルの名称が世界的な著名性を有していることは疑う余地がない。
本件商標は,前記外国の著名商標を片仮名で表示した商標であり,当然に前記外国の著名商標と類似する商標である。
被請求人は,前記外国の著名商標が日本で登録されていないことを奇貨として本件商標を出願し登録したものであり,前記外国の著名商標に化体した信用,名声,顧客吸引力等へのフリーライドを目的として使用する商標にほかならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当し,同法第46条第1項第1号により登録を無効にすべきものである。
5 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号又は同5号により無効にすべきものであり,また,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。

第3 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証及び同第3号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号違反の主張について
(1)本件商標に自他役務識別標識としての機能が備わっている理由
(ア)本件商標「モンテローザ」は,被請求人が昭和46年より,喫茶店の店舗名として現在に至るまで継続して使用しているものであり,平成4年のサービスマーク登録出願開始の際,使用に基づく特例の適用を主張し出願し,何ら拒絶理由を受けることなく商標登録され,現在も商標権が維持されているものである。
また,被請求人は,第30類「菓子,パン」について商標登録第794404号「モンテローザー」(乙第1号証),商標登録第4853906号「モンテローザ/Monte Rosa」(乙第2号証)を所有している。
つまり,本件商標「モンテローザ」は,役務と商品の両面からその権利を強固にしてきたもので,店舗開店から現在に至るまで40年以上にわたり,本件商標を継続して使用してきた結果,本件商標には「モンテローザ」商品を提供する店舗であるという信用が化体され,自他役務識別標識としての機能が備わっていることは明らかである。
(イ)請求人は,日本においては「モンテローザ」商標を使用して,「飲食物の提供」を行っているものが多数存在し,これらの店舗に対し,全く権利行使せず放置していると主張しているが,これらの店舗の中には,商標法附則(平成3年法律第65号抄)第3条(継続的使用権)の適用を受けるものが含まれていることは明らかであり,そもそも権利行使する対象にあたらない。なお,甲第6号証で提示されているとおり,平成17年11月24日付で,被請求人は請求人に対して催告書を発送しており,さらに,愛知県在の洋菓子・喫茶店「モンテローザ」に対して催告書を発送し「モンテローザ」商標の使用を中止させている(乙第3号証)ことから,被請求人が権利行使していることは明らかである。
したがって,本件商標が「飲食物の提供」の役務における慣用商標となっており自他役務識別標識としての機能がないとする請求人の主張は正当性がない。
(2)「モンテローザ/Monte Rosa」が「外国の著名な観光地名」及び「外国の著名商標」ではない理由
(ア)本件商標の使用を開始した昭和40年代の日本では,「アルプス山脈」「モンブラン」「マッターホルン」等は著名であったとしても,「モンテローザ」が「アルプス山脈中の高峰」であることを知る者はほとんど存在していなかったと考えられる。
また,本件商標は,商標法第3条第1項第3号等により拒絶されることなく登録されたものであり,サービスマーク登録が開始された平成4年頃であっても「モンテローザ」が「アルプス山脈中の高峰」の「著名な観光地」であるという認識はなかったと推認される。
したがって,本件商標の登録に何ら瑕疵はない。
(イ)請求人は,スイスのツェルマットの「Monte Rosa」ホテル,イタリアのキアヴァリの「Monte Rosa」ホテル,フランスのパリの「Monterosa」ホテルの商標の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものである旨主張しているが,そもそも,本件商標の使用開始時期である昭和46年当時,これらのホテルの名称が周知・著名であった事実は見当たらない。
さらに,本件商標の出願に際し,商標法第4条第1項第10号又は同第15号が適用されなかったことからも,平成4年頃でさえ「モンテローザ」が周知・著名だったという事実は見当たらない。
つまり,これらのホテルの存在を知ることもなかったので,これら商標の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたとする請求人の主張は,失当と言わざるを得ない。
(3)商標法第4条第1項第7号に該当しない理由
請求人は,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張しているが,具体的な内容では,本件商標が「外国の著名な地名」や「外国の著名商標」と同一であることを理由に挙げている。これらの主張は,商標法第4条第1項第7号に該当するものではなく,商標法第3条第1項第3号,同法第4条第1項第10号,同第15号の規定が該当すると考えられる。しかしながら,これらの規定を適用する場合は,除斥期間が存在するので,現時点で無効審判を提起することはできない(商標法第47条第1項)。
前述したとおり,そもそも,本件商標には,自他役務識別標識としての機能が備わっており,その権利に何ら瑕疵がないのは明らかであるのにもかかわらず,商標法第4条第1項第7号の規定をもって,無効審判を提起する請求人の姿勢は,権利の濫用であり,到底容認できないものである。
したがって,本件商標は,何ら国際信義に反せず,公の秩序又は善良な風俗を害するものでないことは明白であり,商標法第4条第1項第7号に該当するとする請求人の主張には理由がない。
2 商標法第4条第1項第16号違反の主張について
(1)指定役務の類否について
「居酒屋」と「喫茶店」は,「類似商品・役務審査基準」においても類似役務であり,具体的な判断要素からみても類似役務であることに疑いの余地はない。実際,居酒屋においてもコーヒー,ケーキ等を提供し,喫茶店においてもアルコール飲料を提供していることは周知であり,両者が同一の業務を行っていることは明らかである。
したがって,被請求人が本件商標を居酒屋業務に使用するときは役務の質の誤認を生じるとする請求人の主張は全く正当性がない。
なお,請求人が多数の居酒屋店を展開する経営母体であることは認めるが,「モンテローザ」はあくまでも会社の名称の一部に過ぎず,その店舗名である「白木屋,魚民」等が著名であるとしても,「モンテローザ」が請求人経営の飲食店名として認知されていないことは明白である。
したがって,この点からも,被請求人が本件商標を居酒屋業務に使用するときは役務の質の誤認を生じるとする請求人の主張は全く正当性がない。
(2)「モンテ ローザ/Monte Rosa」が外国の著名な観光地名及び外国の著名商標ではない理由
前記したとおり,「モンテ ローザ」がアルプス山脈中の高峰として,日本国内で著名であったという事実は見当たらず,スイスのツェルマットの「Monte Rosa」ホテル,イタリアのキアヴァリの「Monte Rosa」ホテル,フランスのパリの「Monterosa」ホテルの名称が周知・著名であった事実は見当たらない。
したがって,役務の質の誤認は生じず,本件商標に何ら瑕疵はない。
(3)「MONTE ROSA」チーズケーキ等との役務の質の誤認が生じない理由
請求人は,イタリア,イギリス,ドイツ等のヨーロッパ諸国では,イチゴ等の朱色の果実を載せたチーズケーキが,「Monterosa」チーズケーキとして周知・著名であると主張している。
しかしながら,現時点で,ブラウザの「Google」を使用し,日本語で「モンテローザチーズケーキ」を検索した結果,日本国内での情報は抽出されず,オーストリアでの情報のみが検出された。また「モンテローザトルテ」に至っては,全く抽出されなかった。
したがって,本件商標に接した需要者が,本件商標「モンテローザ」から「イチゴ等の朱色の果実を載せたチーズケーキ」を認識することは考えられず,役務の質の誤認が生ずるとする請求人の主張には正当性がない。
(4)前記のことから,本件商標は,役務の質の誤認を生じないことは明白であり,商標法第4条第1項第16号定に該当しないことは明らかである。3 商標法第4条第1項第19号違反の主張について
請求人は,被請求人がスイスのツェルマットの「Monte Rosa」ホテル,イタリアのキアヴァリの「Monte Rosa」ホテル,フランスのパリの「Monterosa」ホテルの存在を知っていて,これらの商標の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたもので,本件商標は,国際信義に反し,公の秩序又は善良な風俗を害するものである旨主張しているが,そもそも,本件商標の使用開始時期である昭和40年当時,これらのホテルの名称が周知・著名であった事実は見当たらない。さらに,本件商標の出願に際し,商標法第4条第1項第10号又は同第15号が適用されなかったことからも,平成4年頃でさえ周知・著名だったという事実は見当たらない。
つまり,被請求人は,これらのホテルの存在を知ることもなく,不正の利益を得る目的,他人に損害を与える目的,取引上の信義則に反するような目的もなく,平成4年のサービスマーク登録出願開始の際,使用に基づく特例の適用を主張して出願し,商標登録を受けたものである。
したがって,これら商標の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたとする請求人の主張は,失当と言わざるを得ず,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しないことは明らかである。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第16号及び同第19号に該当せず,何ら無効理由もないものである。

第4 当審の判断
請求人は,本件商標が商標法第4条第1項第7号,同第16号及び同第19号に違反して登録されたものであることを理由に,同法第46条第1項第1号に基づく商標登録の無効の審判を請求するとともに,本件商標は,商標登録がされた後において,同法第4条第1項第7号及び同第16号に掲げる商標に該当するものとなっていることを理由に,同法第46条第1項第5号に基づく商標登録の無効の審判を請求している。
1 審判請求の利益について
請求人は,審判請求の利益について述べているが,この点について,被請求人は争っていないので,本案に入って判断する。
2 商標法第4第1項第7号該当性(商標法第46条第1項第1号)の有無について
請求人は,本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである旨主張しているところ,請求人が主張している理由は必ずしも明確なものとはいえないが,(a)本件商標は外国の著名商標と外国の著名な地名の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものであり,国際信義に反し,公の秩序又は善良の風俗を害するものであること,(b)本件商標は外国の著名な地名を普通に用いられる方法で表示する商標であって,自他役務識別標識としての機能を果たし得ない商標であること,(c)我が国においては,「モンテローザ」商標を使用して飲食物の提供を行っている者が多数存在しており,「モンテローザ」は「飲食物の提供」の役務における慣用商標となっていること,以上の3点を挙げて,本件商標の登録を維持し排他独占権を認めることは我が国の商取引秩序を乱し,社会公共の利益に反することであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当することになる旨主張しているものと推測される。
(1)ところで,商標登録を受けることができない商標として,商標法第4条第1項第7号において規定されているのは,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」である。そして,この規定に該当する商標としては,商標の構成自体がきょう激,卑わいな商標,差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような商標,構成自体に問題がなくても,指定商品や指定役務について使用することが社会公共の利益や一般的道徳観念に反することとなる商標,あるいは,他の法律によって,その使用等が禁止されている商標,特定の国若しくはその国民を侮辱するような商標又は一般に国際信義に反する商標,更には,公正な取引秩序を乱し,ひいては公序良俗を害することとなるような商標がこれに当たるものと解されている。
(2)そこで,商標法第4条第1項第7号該当性の有無について判断するに,まず,本件商標が同号に該当するものとして請求人が主張している前記した(a)ないし(c)の理由自体の当否について判断する。
(2-1)(a)の理由の当否について
(ア)請求人が(a)の主張を裏付ける証拠として提出している甲第7号証ないし甲第12号証,甲第20号証ないし甲第23号証,甲第26号証及び甲第27号証によれば,以下の事実を認めることができる。
甲第7号証の1は,株式会社岩波書店発行の「広辞苑」(1955年5月25日第1版発行,2008年1月11日第6版発行)であり,「モンテローザ(Monte Rosa)」の項には,「『ばら色の山』の意)アルプス山脈中の高峰。スイス・イタリアの国境にそびえる。標高4634メートル」と記載されている。
甲第7号証の2は,株式会社平凡社発行の「世界大百科事典 30」(1981年4月20日初版発行)であり,「モンテローザ(Monte Rosa)」の項には,「ペンニン・アルプスの主峰・・・マッターホルン(4477m),リンプィッシュホルン(4199m),アルプフーベル(4206m),ドーム(4545m)などを含めてモンテ・ローザ山群とよぶことがある。・・・」と記載されている。
甲第8号証の1は,スイス政府観光局発行の「スイスポケットガイド」(2008年12月発行)であり,「スイスの名峰」の紹介記事の中に,「アルプス山脈とジュラ山脈で国土の7割を占める山岳国スイス。有名なマッターホルンやユングフラウ,アイガー,ピッツ,ベルニナ,モンテローザなど,アルプスを代表する4000m級の名峰がそろっています。・・・」と記載されており,「ゴルナーグラート」の紹介記事の中には「駅前の乗場から登山鉄道に乗って約40分。終点のゴルナーグラート展望台からは,モンテローザ,マッターホルン,ゴルナー氷河という雄大なパノラマが楽しめます。」と記載されている。
甲第8号証の2は,スイス政府観光局発行の「スイス花の旅」パンフレット(2010年9月発行)であり,「ツェルマット地方:シュヴァルツゼー/フーリ」の紹介記事の中に,「迫力のマッターホルンやブライトホルン,モンテローザを望むシュヴァルツゼー・パラダイス。・・・」と記載されている。
甲第8号証の3は,スイス政府観光局のホームページ(2011年8月30日打出し)であり,「ヴァレー地方ツェルマット周辺」の紹介記事の中に,周辺の山岳地図が掲載されており,連なる山並みの一つに「モンテローザ/Monte Rosa(4634m)」が表示されている。
甲第8号証の4は,「NEUE MONTE-ROSA-HUTTE SACの現地看板写真(日付不明)であり,モンテローザを望む山小屋を紹介する看板の中に,日本語で「新モンテローザ・ヒュッテ SAC」とあり,「アルプス高山地帯につくられた自給型建築」と紹介されている。
また,甲第9号証の1及び2は,スイスのツェルマットに存する「MonteRosaホテル」のパンフレット及びホテルの現地写真(日付不明)であり,甲第10号証は,イタリアのキアヴァリに存する「MonteRosaホテル」のホームページ(2011年9月21日打出し)であり,甲第11号証は,フランスのパリに存する「Monterosaホテル」のホームページ(2011年9月21日打出し)であり,甲第12号証の1ないし3は,ミシュラン「レストラン・ホテルガイド/2011」であり,これらによれば,モンテローザとマッターホルンの分岐拠点であるスイスのツェルマット(Zermatt)の町には,「Monte Rosa」ホテルがあること,イタリアのキアヴァリ(Chiavari)の町には,「Monte Rosa」というホテルがあること,フランスの首都パリ(Paris)には,「Monterosa」というホテルが存在していることが認められる。
甲第20号証の1,2は,1926年8月24日及び同年9月9日付の東京朝日新聞であり,これには,秩父宮殿下が1ヶ月にわたるアルプスの縦走を行い,9月7日にモンテローザの最高峰「デュフオウルスピッツェ」の頂上をきわめられたことなどが紹介されている。
甲第21号証の1,2は,1938年8月2日及び同年8月25日付の東京朝日新聞であり,富士山頂に陸軍が航空医学研究所を竣工するにあたり,「モンテローザ山頂のイタリア国立航空医学研究所」が紹介されている。
甲第22号証は,河出書房発行の「世界の旅13スイス/オランダ/ベルギー」(昭和43年4月25日発行)であり,「ヴァレー=アルプス」の項には,「イタリアとの国境,スイスの南部にそびえる山々をヴァレー=アルプスと呼ぶ。主峰のモンテローザ(4634メートル)を中心とする・・・」との記載がある。
甲第23号証は,日本文芸社発行の「先じゅう者」(昭和43年6月1日発行)であり,これには,「・・・彼のアルプス第二の高峰モンテローザである・・・」とモンテローザの初登頂の様子が記載されている。
甲第26号証の1,2は,KKワールドフォトプレス社発行の「世界の一流ホテル及びその2」(昭和55年1月20日及び57年1月25日発行)であり,これには,日本で予約できる世界の一流ホテル300として,スイスのツェルマットの「MONTE ROSA(Monte Rosa)」が記載されている。
甲第27号証は,中央公論社発行の「世界の旅6 イタリア/スイス」(昭和45年7月25日発行)であり,これには,「ツェルマットとマッターホルン」の項に「・・・教会までの道の中ほど右手に,一八五五年に建ったホテル,モンテ=ローザがある。」との記載がある。
(イ)前記において認定した辞書の記載(甲第7号証の1,2),新聞記事(甲第20号証の1,2及び甲第21号証の1,2),日本国内で発行されたスイスを紹介する書籍等(甲第22号証及び甲第23号証)及びスイス政府観光局発行のガイドブック等(甲第8号証の1ないし4)によれば,「モンテローザ(Monte Rosa)」がスイスとイタリアの国境にそびえるアルプス山脈中の高峰であることは認められる。
しかしながら,これらの証拠のみをもってしては,本件商標の登録査定時において,「モンテローザ(Monte Rosa)」が世界的に著名な山の名称として,かつ,何等かの料理の提供地として,我が国において広く一般に知られていたものとは認められない。
また,ホテルのパンフレットやホームページ,日本で発行されたホテルの紹介雑誌や旅行ガイド等(甲第9号証ないし甲第12号証,甲第26号証の1,2及び甲第27号証)によれば,スイスのツェルマットやイタリアのキアヴァリ,フランスのパリに,それぞれ「Monte rosa」という名称のホテルが存在しており,そのうちのスイスのツェルマット「Monte rosa」が日本で発行されたホテルの紹介雑誌や旅行ガイドに紹介されたことは認められるものの,これらの証拠のみをもってしては,本件商標の登録査定時において,「Monte rosa」が該ホテルの商標として著名なものとなっていたとは認め難く,また,「Monte rosa」がそれらホテルの商標として我が国において広く一般に知られていたものとも認められない。
(ウ)そうとすれば,「Monte rosa」は,そもそも,外国の著名商標や外国の著名な地名とはいえないから,本件商標が外国の著名商標や外国の著名な地名の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものである旨の請求人の主張は採用できない。
(2-2)(b)及び(c)の理由の当否について
次に,請求人が主張している(b)及び(c)の理由の当否について判断するに,前記において判断したとおり,「Monte rosa」は,アルプス山脈中の高峰の一つの名称であることは認められるとしても,著名な地名とはいえないものであり,何等かの料理の提供地を認識させるものでもないから,本件商標をその指定役務について使用しても,自他役務識別標識としての機能を果たし得るものと認められる。
この点について,請求人は,審判請求書(4頁16行ないし19行)において,スイスやイタリアをはじめとするヨーロッパ諸国において,「Monte rosa」の名称は,お洒落で清新なイメージから,飲食物の提供の役務を表示する商標として多く選択されている旨主張しているが,この主張は,まさに,「Monte rosa」の語が地名表示や飲食物の提供地として使用されているのではなく,請求人も主張しているように,お洒落で清新なイメージから,自他役務識別標識として採択されている実情を物語っているものである。
そうとすれば,「モンテローザ(Monte rosa)」の文字(語)が自他役務識別標識としての機能を果たし得ない旨の請求人の(b)の主張は採用できない。
また,我が国において,「モンテローザ」商標を使用して飲食物の提供を行っている者が全国各地に多数存在していたとしても,それらは,請求人がヨーロッパ諸国における事情として述べているところと同様に,あくまでも自他役務識別標識として使用されているものというべきである。
そうとすれば,請求人の提出に係る甲第14号証の1ないし45の飲食店情報(2011年2月20日ないし同年9月26日の打出し)並びに甲第24号証及び甲第25号証の雑誌記事をもって,本件商標の査定時において,「モンテローザ」の文字(語)が「飲食物の提供」の役務における慣用商標となっていたものとは到底認め難いところであるから,この点についての請求人の(c)の主張も採用できない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性の有無について
(3-1)以上のとおり,商標法第4条第1項第7号適用の理由として請求人が主張している(a)ないし(c)の各主張は,いずれも,その主張自体理由のないものといわなければならない。
そうとすれば,請求人の提出に係る証拠によるも,「Monte rosa」は,外国の著名商標や外国の著名な地名とはいえないから,本件商標が外国の著名商標や外国の著名な地名の信用,名声,顧客吸引力等にフリーライドしたものとはいえない。
そして,本件商標は,前記したとおり,「モンテローザ」の片仮名文字を書してなるものであるから,その構成態様からみて,きょう激,卑わいな商標,差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような商標に当たらないことは明らかなところである。また,本件商標をその指定役務について使用することが社会公共の利益や一般的道徳観念に反することとなるものとは認められず,他の法律によってその使用等が禁止されている商標,特定の国若しくはその国民を侮辱するような商標又は一般に国際信義に反する商標に当たるものとも認められない。更に,本件商標の出願・登録にあたって,被請求人に何らかの不正の意図があったことを認めるに足る証拠もないから,本件商標は,公正な取引秩序を乱し,ひいては公序良俗を害することとなるような商標にも該当しないものといわなければならない。
(3-2)なお,請求人は,前記した(a)ないし(c)の理由を挙げて,本件商標の登録を維持し排他独占権を認めることは我が国の商取引秩序を乱し,社会公共の利益に反することであるから,結局,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当することになる旨主張している。
しかしながら,商標法は,商標法第3条で商標としての一般的適格性をもつものとされた商標について,商標法第4条第1項において,不登録理由として第1号から第19号までの事由を規定しているところ,第7号の規定は,商標法第3条や同法第4条第1項の総括条項として規定されているものではない。
請求人の主張しているところは,実質的には,商標法第4条第1項第10号,同第15号及び同法第3条第1項第3号,同第2号に違反して登録されたことを無効理由として主張しているものであり,このような理由自体は,前記のように解される第7号の規定に該当するものとは認められない。
そして,請求人が主張しているように,本件商標が商標法に反して登録された状態になっていると仮定したとしても,また,商標法第47条(除斥期間)の関係から,前記法条を無効理由とする審判請求ができない状況になっていたとしても,そうであるからといって,第7号の解釈の幅をむやみに広げて適用することは,商標法全体の整合性の点からばかりでなく,公序良俗の解釈の観点からみても適切なこととはいえないから,この点についての請求人の主張も採用できない。
(4)以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に違反してされたものということはできない。
3 商標法第4第1項第16号該当性(商標法第46条第1項第1号)の有無について
請求人は,本件商標が商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであることの理由として3点を挙げて主張しているので,以下,順次判断する。
(1)請求人は,本件商標は外国の著名な地名及び外国の著名商標によって表される役務の内容や役務の提供の場所等を認識させ役務の質の誤認が生ずる旨主張している。
ところで,商標法第4条第1項第16号に規定されている「役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」とは,指定役務に係る取引の実情の下で,需要者において,当該商標が表示していると通常理解される質と指定役務が有する質とが異なるため,商標を付した役務の質の誤認を生じさせるおそれがある商標をいうものと解される。
これを本件についてみれば,「Monte rosa(モンテローザ)」については,前記2(2-1)において認定したとおり,アルプス山脈中の高峰の一つの名称であることは認められるとしても,外国の著名商標や外国の著名な地名あるいは何等かの料理の提供地とはいえないものであり,「Monte rosa」の語から,本件商標の指定役務である「茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」に係る何等かの役務の特質若しくは役務の提供地等を想起・認識させるものとはいい難く,これを認めるに足る証拠も見当たらない。
そうとすれば,本件商標をその指定役務について使用しても,需要者をして,役務の質について誤認を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
(2)請求人は,本件商標を朱色の果実を載せたチーズケーキやトルテと同種のケーキの提供に使用するときは役務の質の誤認を生じさせる旨主張している。
請求人の提出に係る甲第16号証の1(googleによる「monterosa」「cheesecake」をキーワードとする画像検索結果),同号証の2(イタリアの飲食店のホームページ),同号証の3(イギリスの飲食店のホームページ),甲第17号証の1(googleによる「monterosa」「torte」をキーワードとする画像検索結果),同号証の2(ドイツの飲食店のホームページ)及び同号証の3(オーストリアの飲食店のホームページ)によれば(いずれも,2011年7月14日ないし同年9月21日の打出しに係るものである),ヨーロッパ諸国においては,いちご等の朱色の果実を載せたチーズケーキを「monterosa cheesecake」と称している例があり,また,朱色の果実を載せたトルテを「torte monterosa」と称している例のあることを認めることができる。
しかしながら,これらの例は,googleによる画像検索結果とヨーロッパ諸国における数件の飲食店のホームページによるものであるから,これらの証拠のみをもって,本件商標の登録査定時において,ヨーロッパ諸国において,朱色の果実を載せたチーズケーキやトルテが取引上一般的に「monterosa cheesecake」あるいは「torte monterosa」と称されていたものと認めるに充分なものとはいい難く,しかも,これらはヨーロッパ諸国における事例であって,我が国において,朱色の果実を載せたチーズケーキやトルテを「monterosa cheesecake(モンテローザチーズケーキ)」,「monterosa torte(モンテローザトルテ)」と称していることを認めるに足る証拠はなく,そのような洋菓子が我が国において一般に知られているものとも認められない。
そして,このことは,請求人の提出に係る甲第7号証の1(株式会社岩波書店発行の「広辞苑」)によれば,「モンブラン」については,「(「白い山」の意)アルプス山脈中の最高峰」との説明とともに,「ケーキの一種。細いひも状に絞り出した栗のピューレと泡立てた生クリームで作る。」と説明されているのに対して,「モンテローザ」については,「(「ばら色の山」の意)アルプス山脈中の高峰」と記載されているのみであって,請求人が主張しているような菓子についての説明がないことからも首肯し得るものである。
そうとすれば,本件商標を朱色の果実を載せたチーズケーキやトルテと同種のケーキの提供に使用したとしても,需要者をして,役務の質について誤認を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
(3)請求人の主張は必ずしも明確なものではないが,請求人は,アルコール飲料の提供を主とする多数の居酒屋店を全国津々浦々に展開する経営母体として著名であるのに対して(甲第3号証の1ないし8,甲第4号証の1ないし13,甲第5号証の1ないし39,甲第28号証の1ないし10),被請求人は,コーヒー・ケーキ等の提供を主とする飲食店を神奈川県を中心に数店舗出店しているにすぎないから(甲第13号証の1等),居酒屋業務において著名な請求人の「モンテローザ」の商標を被請求人が居酒屋業務に使用するときは役務の質の誤認を生ずるのは明らかである旨主張しているものと推測される。
しかしながら,商標法第4条第1項第16号に該当するか否かの問題は,先にも述べたとおり,商標が表示していると通常理解される質と指定役務が有する質との間において質の誤認を生じさせるおそれがあるか否かということである。
そうとすれば,そもそも,請求人の主張は,請求人が居酒屋の業務に使用している社標であり商標でもある「モンテローザ」と被請求人がコーヒー・ケーキ等の飲食物の提供に使用している「モンテローザ」の商標との間における出所の誤認・混同の問題というべきであり,商標法第4条第1項第16号における役務の質の誤認の問題とはいえない。
したがって,この点についての請求人の主張も採用できない。
(4)以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第16号に違反してされたものということはできない。
4 商標登録後における商標法第4第1項第7号及び同第16号該当性(商標法第46条第1項第5号)の有無について
請求人は,本件商標が商標登録後において,商標法第4第1項第7号及び同第16号に掲げる商標に該当するものとなっているとして,同法第46条第1項第5号に基づく商標登録の無効の審判をも請求している。
そこで,本件商標が商標登録後において,前記法条に該当するものとなっているか否かについて判断するに,登録商標が登録後に公益的不登録事由(本件の場合は商標法第4第1項第7号及び同第16号)に該当するか否かの判断は,商標法第46条第1項第1号に基づく無効審判における判断と,その判断時期は異なるものの,判断基準については差異はないものと解される。
この点について,請求人は,本件商標が後発的無効理由に該当するものとなっていることについて,格別の主張はしておらず,別異の証拠も提出していない。
そして,請求人の提出に係る甲各号証の多くは本件商標の登録後の事情を記載しているものであるところ,これらの甲号証によるも,本件商標の登録後において,本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同第16号に掲げる商標に該当するものとなっている事実を裏付けるに足る証拠は見出し得ない。
してみれば,請求人の主張からみても,提出に係る証拠からみても,前記した商標法第46条第1項第1号に基づく同法第4条第1項第7号及び同第16号についての判断は,同法第46条第1項第5号に基づく同法第4条第1項第7号及び同第16号の判断についても,そのまま当てはまるものといえる。
したがって,本件商標は,商標登録がされた後において,商標法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するものとなっているとは認められない。
5 商標法第4第1項第19号該当性の有無について
請求人は,スイス等に存在する「Monte Rosa」のホテルの名称は世界的に著名な商標であり,被請求人は該著名商標が日本で登録となっていないことを奇貨として本件商標を出願し登録したものであるから,本件商標は商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである旨主張している。
しかしながら,前記したとおり,スイスのツェルマットやイタリアのキアヴァリ,フランスのパリに,それぞれ「Monte rosa」という名称のホテルが存在しており,それらの中には,三ッ星の格付けを受けているものがあることを認めることはできるが,請求人の提出に係る証拠のみをもってしては,本件商標の出願時(平成4年9月30日)において,該ホテルの名称である「Monte rosa」の商標が宿泊施設の提供等の役務を表示する商標として日本国内又は外国における需要者の間において広く認識されていたものとは認められない。
そして,本件商標と該ホテルの名称とが類似するものであるとしても,本件商標が不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的,その他の不正の目的をもって使用するものであることを認めるに足る証拠は提出されていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第19号に違反してされたものということはできない。
6 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第16号及び同第19号に違反してされたものではなく,また,本件商標の登録がされた後において,同法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するものとなっているものでもないから,同法第46条第1項第1号又は同第5号により,無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-05-10 
結審通知日 2012-05-16 
審決日 2012-06-01 
出願番号 商願平4-247879 
審決分類 T 1 11・ 272- Y (042)
T 1 11・ 22- Y (042)
T 1 11・ 222- Y (042)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧本 佐代子 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
大橋 良成
登録日 1996-01-31 
登録番号 商標登録第3112185号(T3112185) 
商標の称呼 モンテローザ 
代理人 中畑 孝 
代理人 西尾 美良 
代理人 三田 大智 
代理人 丹羽 宏之 
代理人 玉井 信人 
代理人 淺枝 謙太 
代理人 市橋 俊一郎 

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