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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X44
管理番号 1266076 
審判番号 無効2011-890098 
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-11-09 
確定日 2012-11-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5442536号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5442536号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5442536号商標(以下「本件商標」という。)は、「雄琴 丸の内商事」の文字を標準文字で表してなり、平成23年4月5日に登録出願、第44類「個室付浴場施設の提供」を指定役務として、同年8月25日に登録査定、同年10月7日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)商標法第3条第1項柱書について
商標審査基準では、「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をしないことが明らかであるときは、原則として、商標法第3条第1項柱書の規定により登録を受けることができる商標に該当しないとされ、その典型例として、指定商品又は指定役務に係る業務を行うことができる者が法令上制限されているため、出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合が挙げられている(甲2)。
ここで、本件商標の指定役務である第44類「個室付浴場施設の提供」を、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風適法」という。)第2条第6項1号に規定する店舗型性風俗特殊営業(いわゆる「ソープランド」)を示したものだとすれば(甲3)、公衆浴場法第2条第1項に規定する都道府県知事の許可を受けなければならず(甲4)、かつ、風適法第27条第1項に規定する公安委員会への届出が必要であり(甲3)、当該届出があったときは、風適法第27条第4項に規定により、その旨を記載した書類が交付される(以下、この書類を「届出確認書」という。)。
また、本件商標の指定役務を、一般の浴場業を示したものだとしても、同様に公衆浴場法第2条第1項に規定する都道府県知事の許可を受けなければならない(甲4)。いずれにしても、法令上、指定役務に係る業務を行い得る者の範囲が限定されている場合に該当する。
ところで、被請求人の現在事項全部証明書(登記簿謄本)によると、「1 経営コンサルタント業務、2 各種イベントの企画、構成、3 広告代理店業務 4 前各号に付帯する一切の業務」を事業の目的としている(甲5)。これらの事業の目的を広く解釈しても、指定役務に係る業務を示すものは一切含まれておらず、本件商標の登録査定時において、被請求人(出願人)が近い将来において本件商標を使用する業務を行うであろう蓋然性を否定するものである。
特に、被請求人の所在地である京都府では実質的にソープランド業を営むことはできないとされている地域であることからしても(甲6)、実質的に業務を行うことができない。
以上の理由から、被請求人が自己の業務に係る商品又は役務について登録商標を使用するものとは認められないことから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書に違反してなされたものである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号の適用に関しては、「特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も、この規定に該当すると解するのが相当である。」とされている(東京高等裁判所平成16年(行ケ)第7号平成16年12月21日判決。甲7)。
請求人は、滋賀県大津市苗鹿三丁目6番13号で、いわゆるソープランド業を営んでおり(甲8)、公衆浴場法第2条第1項に規定する都道府県知事の許可を受けており(甲9)、かつ風適法第27条第1項に規定する公安委員会への届出も済ませ、届出確認書が交付されている(甲10)。
なお、公衆浴場法第2条第1項に規定する都道府県知事の許可にあっては、事業を開始する最初に許可を得れば、その後に営業所の名称や代表者が変更になっても、再度の許可は必要ないので、「施設の名称」の欄は創業当時の名称になっている。
一方、風適法第27条第1項に規定する公安委員会への届出は、営業所の名称や代表者が変更になる度に届出が必要なので(風適法第27条第2項。甲5)、届出確認書の「営業所の名称」の欄には、現在の名称が記載されている。
この届出確認書によると、請求人の営業所の名称は、本件商標そのものであり、届出書に記載された日付が本件登録の出願日よりも早い平成21年5月20日である。
実際にこの営業所の名称で営業を開始したのは、平成21年5月23日であり(甲11)、現在に至るまで、同一の名称で使用を続けている(甲12)。
ところで、請求人と被請求人とは以前、請求人の経理業務について業務委託の関係にあり、被請求人の代表取締役が中心となり、請求人の経理業務を行っていた(甲13)。ところが、被請求人は請求人の売上げや経費を誤魔化していることが発覚したため、両社はトラブルになった経緯がある。
甲第14号証は、平成23年3月に、被請求人が請求人に郵送した封筒及び経理関係書類の写しである。これによると、封筒の宛名は請求人であり、差出人の表示は被請求人である。その封筒に同封されていた書類は、経理処理に関するものであり、特に関西電力株式会社の電気料金請求書によると、当該請求書を関西電力株式会社から請求人を介さずに被請求人へ郵送するようにしていた経緯がある。
また、この封筒の宛名部分には会社名以外に、本件商標がしっかりと記載されていて、被請求人は、会社名に店名を併記すれば、確実に郵便物が届くと認識しており、その住所地においてその店名が使用されていること、すなわち本件商標と同一又は類似の商標が使用されていることを熟知していたことが容易に推測される。
また、本件商標は、被請求人の所在地が京都府でありながら、滋賀県大津市の雄琴地区の名称を含む文字まで含まれており、偶然に同一の商標を出願したとは到底考えられず、出願日が、両社がトラブルになった直後の平成23年4月5日であることからしても、本件登録に係る出願が不正の目的であったことが裏付けられる。
そして、被請求人は請求人に対し、平成23年11月4日付けで、商標の使用中止の請求を行った(甲15)。被請求人は登録日から1ヶ月(登録証の発送日が平成23年10月18日であることから、登録番号を知ってから約2週間)という短期間で商標の使用の中止を求めることは、明らかに請求人を意識したものであり、狙い撃ちで攻撃している。
さらに、請求人が使用を中止しない場合には、1日に10万円という常識ではあり得ない商標使用料を請求していることからしても、被請求人が本件商標を出願した真の理由が、この金銭を要求することにあったと推測される。
したがって、被請求人は、本件商標を使用していないにもかかわらず、不当な利益を得るためだけに本件商標を剽窃したものである。
一方、請求人の店舗では、従業員が多数在籍しており、平成21年5月から現在に至るまで本件商標と同一の商標を使用し続けた結果、一定の業務上の信用を獲得している。このままでは請求人が築き上げた商標に対する信用を失墜させることになり、商標の使用をする者の業務上の信用の維持と、需要者の利益を保護する商標法の目的に反することにもつながるものである。
このように、被請求人は、本件に関する事情を熟知していたものであり、このような事情を知りながら、商標登録がないことを奇貨として、不当な要求をするためだけに商標登録を受けたものである。
したがって、出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くもので、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に相当することから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)むすび
したがって、本件商標に係る商標は、商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標は、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。

2 答弁に対する弁駁(平成24年4月20日付け)
(1)商標法第3条第1項柱書について
ア 「被請求人とその代表取締役である宮田司氏とが実質的に同一視することができること」について
乙第1号証は被請求人の履歴事項全部証明書であることは認めるが、そこには、宮田司氏が発行済株式の100%を所有する旨の記載はないばかりか、被請求人は、取締役として同氏以外に、宮田麻由美氏及び長谷川博巳氏の2名も登記され、さらに監査役まで設置された、取締役設置会社及び監査役設置会社である。
したがって、被請求人と宮田司氏を実質的に同一視することは、法人と自然人とが別人格であるという大前提を無視したものであり、たとえ実質的に同一視できるほどの個人経営に類するオーナー会社だと解したとしても、複数の取締役、それに監査役まで設置している事実からしても、矛盾した主張である。
イ 「被請求人は、個室付浴場業(いわゆるソープランド業)を営む有限会社大昌商事(以下「大昌商事」という場合がある。)を実質上支配下においていること」について
乙第4号証によると、取締役として、宮田司氏以外に、中野圭介氏も取締役として登記されており、同氏は被請求人の取締役を兼任していない事実がある。
また、乙第5号証によると、法人である被請求人が大昌商事を事実上支配下に置いている旨の根拠は、乙第5号証の「甲社(被請求人)は、資金・取引等の経営全般を通じて、乙社の財務・営業等の方針に対して重要な影響を与えている。」との記載だけであって、これは主観的なものにすぎず、被請求人が大昌商事に対し具体的に行っている客観的な事実が何ら示されていない。本当に、両社に何らかの関係があり、資金の流れがあるのならば、契約書や取引履歴があるはずであり、たとえ契約書がないとしても、少なくとも銀行取引口座の履歴がなければならず、それすら提出できていないのは、単なる代表取締役が同一であるだけの別法人に過ぎないことを示しているものである。
なお、乙第5号証の「甲社代表取締役宮田司氏は、平成23年7月に乙社を買収し」た旨の記載があるが、宮田司氏が大昌商事を買収したことはどの証拠を見ても読み取れないばかりか、本当に買収していたとしても、単に宮田司氏個人が大昌商事(乙社)を買収しただけであって、被請求人(甲社)が買収した根拠とはならない。
ウ 「本件の登録査定時には本件商標とは別の商標を使用しているが、今後本件商標の使用を開始する計画があること」について
乙第10号証の事業計画書によると、平成23年3月に新事業(店舗)の計画を開始し、同年4月に本件の商標登録出願を行っている旨の記載がある。そうすると、少なくとも出願時には、被請求人が本件商標を使用する意思があったものと推認される。
それにもかかわらず、同年7月に「雄琴大手町商事」の店舗名で営業を開始し、その後、平成23年9月2日に登録査定になっている事実がある。
この点について、答弁書によると、「新事業を開始した平成23年7月当時、本件商標について商標登録出願を完了していたが、商標登録前であり、未だ商標権は発生していないため、「雄琴大手町商事」の名称で公安委員会に届出を行い、新事業を開始した。」旨の記載がある。
出願時には本件商標の使用意思があったにもかかわらず、商標登録前だという理由だけで、本件商標と異なる商標を使用している。もちろん、商標登録後に商標の使用を開始することはビジネス上行われていることであるが、それを理由にするならば、役務の提供そのものが行われないか、役務の提供が行われるとしても普通名称等の自他役務の識別機能を発揮し得ない態様で使用するのが通常であって、明らかに識別力を有する「雄琴大手町商事」を商標として採択し店名とすることについても同様に当てはまることである。それにもかかわらず、大昌商事又は被請求人は、現在使用している「雄琴大手町商事」なる商標について、現在においても商標登録出願すらなされていない(甲16)。
すなわち、被請求人の主張は、「本件の登録査定時には本件商標とは別の商標を使用していること」の理由を、本件商標が未登録だったという理由が示されているにすぎず、本件の登録査定時において、本件商標を使用する意思があった理由が示されていない。
したがって、本件の登録査定時において、本件商標を使用する意思はなかったというべきである。
(2)商標法第4条第1項第7号の解釈における「特定の商標の使用者と一定の関係のある者」について
ア 「平成21年5月より、徳久博氏と請求人の取締役である垣花則明とで営業を再開し、本件商標の使用を開始したこと」について
商標は自他商品・役務の出所識別標識であるところ、本件請求に係る商標は、本件商標の構成や当事者の主張からしても、滋賀県大津市雄琴地区のいわゆるソープランド街に存在する店名を表示するものとして使用しているものであり、本件商標は、その店名で許可を得て営業している請求人である法人が使用しているのであって(甲10)、徳久博氏や宮田司氏の個人が許可を得て使用しているものではない。
なお、本件商標を出所識別標識として使用している主体が、自然人ではなく、請求人である法人であるとする根拠は、店舗型性風俗特殊営業届出確認書(甲10)の「氏名又は名称」が法人として届出・確認されていること及び「営業所の名称」に本件商標を構成する文字を有することからしても、法人として商標を使用する意思表示であることが裏付けられる。
イ 「徳久博氏は請求人の経営管理者(オーナー)であって、垣花則明は徳久博氏から月給を受けている所謂雇われ社長であったこと」について
答弁書によると、「徳久博が、請求人の会社の事業経営の意思決定を行う経営管理者であり、オーナーであるのに対して、垣花則明は、オーナーである徳久博から50万円程の月給を受けている所謂雇われ社長であった。」と主張する。
しかし、被請求人は単に主張するだけで、何ら立証されていない。請求人の履歴事項全部証明書(甲8)によると、平成18年12月18日に取締役に就任し登記されて以来、現在に至るまで、同社の取締役は、垣花則明だけである。特例有限会社の取締役は、会社の業務を執行する際に故意または重大なる過失によって第三者に損害を与えた場合にそれを賠償する責任が生じる(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条1項、会社法429条)ところ、垣花則明が請求人である法人としての責任を負っていることは間違いない事実であり、登記もされてない徳久博氏の名前を出し、請求人の経営者だと突然に主張されても、請求人としては、そのような事実は存在しないとしか反論できない。
仮に、答弁書の主張の内容から、徳久博氏が請求人の未登記に過ぎない「事実上の取締役」の地位を主張していると解釈したとしても、そのような事実は存在しないとしか言いようがない。
以上のように、そのような事実は存在しないし、そもそも、請求人の取締役である垣花則明は請求人である会社から報酬を得ているのであって、なぜ徳久博氏個人から月給を受けている関係であったのか全く理解できない。
ウ 「平成22年6月に宮田司氏が徳久博氏からその経営を引き継ぎ、本件商標の使用等を含む一切の取扱についても引き継いだこと」について
商標は創作物ではなく選択物であるところ、商標登録出願もされていない時期(本件出願日は平成23年4月5日)にもかかわらず(つまり、「商標登録出願により生じた権利」を有することなく)、本件商標の使用について、徳久博氏から宮田司氏に引継ぐことはできず、論理的に矛盾している。
仮に百歩譲って、徳久博氏が実質的な経営者と評価される程に経営に関与していたと評価されたとしても、徳久博氏が宮田司氏に商標の使用を引き継いだ旨の証拠は一切提出されていない。
もし、徳久博氏から宮田司氏に引き継いでいると解釈できたとしたならば、請求人の店舗型性風俗特殊営業届出確認書(甲10)の「氏名又は名称」の欄が「宮田司氏」になっているはずである。
エ 「その後も本件商標は使用されているから、宮田司氏は本件商標の使用者であること」について
被請求人の主張によると、被請求人は、平成23年3月に新店舗の計画を開始し、平成24年7月から大昌商事が本件商標を使用する計画であるので(乙10)、本件商標を宮田司氏が使っていることはありえず、答弁書の記載の中で矛盾が生じている。
そもそも、その後も本件商標を使用しているのは請求人である法人であって宮田司氏ではない。被請求人も、甲第15号証の通知書で「貴社(ここでは請求人を示している)が滋賀県大津市苗鹿3丁目6-13で丸の内商事と称する屋号を使用していますが、」との記述をしており、使用しているのが請求人であることを認めていて、明らかに矛盾した主張が行われている。
オ その他
被請求人は、答弁書で、「なお、この時点でも、宮田司がオーナーとして経理業務を含む事業経営全般の意思決定を行い、垣花則明は、オーナーである宮田司から35万円程の月給を受けている雇われ社長という関係であった。」と主張している。
しかし、そもそも徳久博氏がオーナーでもないのに、なぜ宮田司氏が請求人のオーナーなのか理解できないばかりか、本当にオーナーであったならば、請求人の一方的な追放の宣告を受けることはあり得ない(すなわち、被請求人の言葉を借りるならば、請求人とオーナーは実質同一視できるのであるから、請求人であるオーナー(ここでは宮田司氏が相当する)が、自分自身(宮田司氏)を一方的に追放したことになり、明らかに矛盾が生じている。)。
その一方で、被請求人は、答弁書において、甲第14号証の被請求人が請求人に送付した経理書類について一切言及していない。甲第14号証のタオル類などについての請求書において、被請求人が本件商標を表示した上で請求人に対し、請求書を発行している。これがなぜ「特定の商標の使用者と一定の関係にある者」に該当しないのかを明確にされておらず、逆に言えば、一定の関係があるからこそ、言及することができないのであって、虚偽の話を創出せざるを得なかったものと思慮される。
カ したがって、被請求人の主張は失当である。
(3)商標法第4条第1項第7号の解釈における「他人の使用する商標を剽窃したと認めるべき事情」について
ア 「宮田司氏が海外出張中に、請求人の一方的な追放の宣告により退いたこと」について
被請求人は一方的な主張のみで、何ら立証されていない。海外出張中だったならば、少なくともパスポートの海外渡航履歴を提出できるはずである。
そもそも、請求人が提出した甲第14号証の一連の経理書類からしても、請求人と被請求人とは法人間の契約関係にあり、平成23年3月に請求人と被請求人との契約関係が解消しただけの話であって、宮田司氏個人の問題とは関係のない話である。
イ 「平成23年4月に、宮田司氏が、徳久博氏の意思を引き継ぎ、本件商標を使用するため、商標登録出願を行い、登録を受け、平成24年7月より、大昌商事による使用を計画中であること」について
まず、宮田司氏が徳久博氏の意思を引き継いだという根拠が明確にされていない。また、法人と自然人とが別人格であること、被請求人が大昌商事を事実上支配下に置いている旨の根拠が明確でないことは、前述したとおりである。さらにいえば、出願後に買収した大昌商事の使用意思を、今になって被請求人の使用意思だと主張しており、判断する主体と時期が全く合っていない。
そして、宮田司氏が、商標登録出願を行い、登録を受けたように主張しているが、商標登録出願をし、登録を受けたのは、被請求人である法人である。宮田司氏が本件商標の使用者であるとするならば、なぜ被請求人の名義で出願し登録を受けたのか理解に苦しむばかりである。これはおそらく、商標登録さえ受ければ自己が使用していなくても金銭を請求できると勘違いしたものである。また、被請求人による商標の使用の中止の請求については、被請求人は答弁書で認めているが、これは差止請求についてのみの記載であって、なぜ、自己が使用もしていない商標について、高額の金銭を要求しているのかを明確にしていない。なお、本審判請求書を提出した平成23年11月9日と同日に、被請求人は請求人に対し、商標登録証の写しと振込先を記載した書面を郵送した。この振込先の記載からしても、金銭を要求することが目的であるといえる。
ウ その他
商標法第4条第1項第7号の適用に関する「特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情」や「当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くもの」の東京高裁の判決は、剽窃した時期を明確にはしていないが、前記の「当該商標の登録出願の経緯」の文言と、商標登録出願がなければ商標登録はあり得ないことを鑑みると、出願時において「剽窃する」又は「剽窃した」意思が必要であり、そうとすると、少なくとも、乙第10号証の事業計画書に記載された、「平成23年3月に新事業(店舗)の計画を開始し、同年4月に本件の商標登録出願を行った」行為が、ここでいう「剽窃」行為に該当する。
また、請求人の所在地と大昌商事の所在地は、ほんの数十メートルしか離れていない事実がある(甲19)。このような近距離で、同じ店名が2店舗も存在すれば、需要者は出所の混同を生ずるばかりか、大きな道路に、より接近している大昌商事の店舗へ入って行くのは確実である。
そして、このような剽窃行為が適法だと認められるとするならば、第三者が築き上げた商標に化体された信用を合法的に奪い取ることが可能となり、結果的に、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、あわせて需要者の利益を保護する商標法の目的にも反する結果となる。
(4)利害関係について
審判請求書には「利害関係」について独立の項分け記載をしなかったが、少なくとも、被請求人が請求人へ送付した甲第15号証の内容からしても、利害関係を有することは当然であることを確認しておく。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第24号証を提出している。
1 答弁の理由
(1)商標法第3条第1項柱書について
ア 本審判の被請求人である株式会社リアル・ポリテックス(以下「リアル・ポリテックス」という。)は、同社の代表取締役宮田司が、発行済株式の100%を所有する宮田司の所謂オーナー会社であり、宮田司が会社の意思決定を支配している(乙1)。したがって、リアル・ポリテックスは代表取締役宮田司と実質的に同一視することができる。
イ 宮田司は、平成23年7月に大昌商事を買収し、同月に店舗型性風俗特殊営業の届出を行い、確認書を入手した(乙2)。
大昌商事は、所在地が滋賀県大津市苗鹿三丁目6番9号であり、事業の目的が特殊公衆浴場の経営及び付帯関連する一切の業務であり、「雄琴大手町商事」という名称で現在も営業を行っている(乙2ないし乙4)。
また、宮田司は、平成23年7月の大昌商事の買収に際して改装工事に4,000万円という多額の資本を投入し、宮田司は平成23年7月から、同社の代表取締役を兼務し、同社の事業活動を事実上支配下におき、現在に至っている(乙4ないし乙6)。
したがって、大昌商事の行っている業務を、被請求人の自己の業務とみることができる(乙7)。
ウ 大昌商事は、現在、役務「個室付浴場施設の提供」(特殊浴場)に商標「雄琴大手町商事」を使用している(乙3)。新事業を開始した平成23年7月当時、本件商標について商標登録出願を完了していたが、商標登録前であり、未だ商標権は発生していないため、「雄琴大手町商事」の名称で公安委員会に届出を行い、新事業を開始した(乙2)。その後、平成23年10月に商標登録されたので、新事業を開始した平成23年7月から1年後の平成24年7月に商標を、独占排他的な使用権のある本件商標に変更し、本件商標の使用を開始する計画である(乙8ないし乙10)。
エ したがって、被請求人は、指定役務について本件商標の使用意思を有するため、商標法第3条第1項柱書に規定する要件を満たす。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 平成21年4月以前、営業所「ENZO」を経営していた請求人は経営破綻に陥っていた。そこで、これを打開するため、徳久博が、本件商標を案出し、業者リガホンに製作させた。さらに、約7,000万円を投じて店舗ビルを改修し、平成21年5月より、徳久博と、請求人の取締役である垣花則明とて営業を再開し、製作した本件商標の使用を開始した。
なお、両者の関係は、徳久博が、請求人の会社の事業経営の意思決定を行う経営管理者であり、オーナーであるのに対して、垣花則明は、オーナーである徳久博から50万円程の月給を受けている所謂雇われ社長であった。
イ その後、平成22年6月に、経営管理者(オーナー)を徳久博から宮田司が引き継ぎ、本件商標の使用等を含む一切の取扱についても宮田司が引き継いだ。そして、その後も本件商標は使用されているから、宮田司は本件商標の使用者であり、「特定の商標の使用者と一定の関係にある者」に該当しない。
なお、この時点でも、宮田司がオーナーとして経理業務を含む事業経営全般の意思決定を行い、垣花則明は、オーナーである宮田司から35万円程の月給を受けている雇われ社長という関係であった。
ウ 平成23年3月、宮田司の海外出張中に、宮田司は請求人より一方的な追放の宣告を受けたが、宮田司が京都市内で行っている他の事業への影響を考慮し、争いを避け、退いた。
エ 平成23年4月に、宮田司は、徳久博の意思を引き継ぎ、本件商標を使用するため、商標登録出願を行い、同年10月に商標登録を受けた。平成24年7月より、宮田司が代表取締役を務める大昌商事による本件商標の使用を計画中である。
オ したがって、被請求人が他人の使用する商標を剽窃した等の事情はなく、被請求人による本件商標の出願の経緯は社会的に正当なものである。一方、請求人による本件商標の使用は、商標の使用許可を得ていない、無断使用である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
カ なお、請求人は、「被請求人は、請求人の売上げや経費を誤魔化していることが発覚した・・・」と主張するが、誤りである。請求人の取締役である垣花則明は、徳久博が事業経営をしていた当時より、売上金を頻繁に横領し、宮田司が事業経営を引き継いだ後も、同様のトラブルが絶えなかった。
また、平成23年11月に、被請求人は請求人に対して本件商標の使用の中止の請求を行っているが、これは、独占排他的な使用権である商標権が発生した後、将来において本件商標の使用を開始するに先立ち、出所混同等を防止するために必要な措置である。
(3)むすび
したがって、被請求人は、指定役務について本件商標の使用意思を有するため、商標法第3条第1項柱書に規定する要件を満たす。また、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

2 弁駁に対する答弁(平成24年8月21日付け)
(1)商標法第3条第1項柱書について
ア 被請求人は、大昌商事の事業活動を事実上支配下においている点について
「自己の業務に関する事情説明書」(乙第5号証)では、「1.本件商標の使用に関する証明書類などにおける本件商標の使用者は乙社(大昌商事)であるが、商標権者甲社(被請求人)と乙社とは、」とあり、被請求人と大昌商事との関係について述べている。
そして、乙第1号証、乙第4号証ないし乙第6号証、第11号証及び乙第12号証などによれば、被請求人は、経営・資金・人事などの各方面において大昌商事の財務・営業の方針に対して重要な影響を与えている。このような事情があるため、大昌商事の事業活動が事実上被請求人の影響下にあって、実質的に親子会社と同等の関係にある。したがって、大昌商事の行っている業務は、被請求人の自己の業務とみることができるから、被請求人は、本件商標を自己の業務に係る役務に使用するものである。
イ 大昌商事は、本件商標の使用を計画している点について
(ア)大昌商事は、店舗型性風俗特殊営業届出確認書を人手し(乙2)、現在、役務「個室付浴場施設の提供」(特殊浴場)に商標「雄琴大手町商事」を使用し、営業を継続している(乙3)。また、大昌商事は、商標「雄琴大手町商事」を、独占排他的な使用権のある本件商標に変更し、本件商標の使用を開始する計画を有する。このことは、次のことから明らかである。「商標の使用を開始する意思」についての乙第9号証には、大昌商事の代表取締役である宮田司が記名し、捺印している。
したがって、大昌商事の代表取締役としての宮田司の法律行為の効果は、大昌商事に帰属する。同様に、事業計画書についての乙第10号証には、大昌商事の代表取締役である宮田司が記名し、捺印しているから、有限会壮大昌商事の代表取締役である宮田司の法律行為の効果は、大昌商事に帰属する。
(イ)したがって、被請求人は指定役務について本件商標の使用意思を有するため、商標法第3条第1項柱書に規定する要件を満たす。
(ウ)なお、事業計画書(乙10)にあるとおり、平成24年7月に本件商標へ変更する計画で進めていた。しかし、甲第15号証のとおり、被請求人は、請求人に対して、昨年の平成23年11月4日付で本件商標の使用の中止の申し入れをしたが、請求人は本件商標の使用を中止しないため、出所混同が生じ、需要者に不測の不利益が生じる事態を回避する趣旨で、本件商標への変更を延期している。また、本件商標登録無効審判の審決を確認する意味でも、本件商標への変更を延期せざるを得ない状況にある。
(エ)本審判事件では、商標の使用を開始する意思を明らかにし(乙9)、具体的な事業計画書をもって本件商標の使用を計画している(乙10)。
また、事業計画書(乙第10号証)中にある、「平成23年7月店舗型性風俗特殊営業届出確認書の入手営業所名『雄琴大手町商事』で営業開始」は、客観的事実であり、現に営業を行っているから(乙2及び乙3)、事業計画書の具体性及び客観性が裏付けられている。
したがって、本審判事件では、本件商標の使用を開始する具体的な予定が存在し、近い将来における本件商標の使用の蓋然性があるため、本件商標を自己の業務に使用する意思があるというべきである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 過去の経緯
(ア)平成21年4月以前、請求人は経営破綻に陥っていたので、これを打開するため、徳久博が、本件商標を案出し、株式会社リカオンプレスに製作させた。(平成24年1月7日付で提出した答弁書では、「業者リガホン」とあるが、「株式会社リカオンプレス」が正しい。)
乙第14号証は、本件商標の製作に係る株式会社リカオンプレスから請求人(有限会社宝観光、以下「宝観光」という場合がある。)に対する請求明細書である。これによれば、株式会社リカオンプレスは、請求人のホームページとロゴ(本件商標)の製作について徳久博から依頼を受け、製作費用を請求している。乙第15号証は、徳久博の宣誓書である。これによれば、徳久博が本件商標を案出し、株式会社リカオンプレスに製作させたことが明らかである。
そして、約7,000万円を投じて店舗ビルを改修し、平成21年5月より、徳久博と、請求人の取締役である垣花則明とで営業を再開し、製作した本件商標の使用を開始した。ここに、両者の関係は、徳久博が、請求人の会社の事業経営の意思決定を行う経営管理者であり、垣花則明は、徳久博から50万円程の月給を受けている所謂雇われ社長であった。これらの点は、乙第15号証(徳久博の宣誓書)から明らかである。
(イ)平成22年6月に、宮田司は請求人の社内に入り、事業経営全般の意思決定権と、本件商標の使用を含む一切の取り扱いについて徳久博から引き継ぎ、本件商標を引き続き採用した。これらの点については、乙第15号証(徳久博の宣誓書)の3から明らかである。
なお、この時点でも、宮田司が経理業務を含む事業経営全般の意思決定を行い、垣花則明は、35万円程の月給を受けている雇われ社長という関係であった。
乙第16号証は、請求人の社内における平成22年9月分の宮田司と垣花則明の給与支給明細書であり、乙第17号証は、請求人の社内における平成23年2月分の宮田司と垣花則明の給与支給明細書である。これらから、当時、宮田司及び垣花則明が請求人の会社に在籍していたことが明らかである。また、この当時の垣花則明の月給は30万円であった。
乙第18号証は、請求人の社内における平成22年12月分の中野圭介の給与支給明細書である。中野圭介は、現在、大昌商事に在籍し、店舗「雄琴大手町商事」の店長をしているが(乙12及び乙13)、平成22年12月当時は、請求人の会社に在籍していた。乙第19号証は、中野圭介の宣誓書である。乙第19号証によれば、平成22年12月当時、中野圭介は、請求人の店舗「雄琴丸の内商事」で店長として勤務し、請求人の社内では宮田司が会長として事業経営全般の意思決定をしていたことが明らかである。
乙第20号証は、請求人の社内における平成23年2月分の栗本和則の給与支給明細書である。栗本和則は、現在、被請求人の会社に在籍しているが、平成23年2月当時は、請求人の会社に在籍していた。
乙第21号証は、栗本和則の宣誓書である。これによれば、平成23年2月当時、請求人の社内では宮田司会長が事業経営全般について意思決定をしていたことが明らかである。
乙第22号証は、請求人の社内における平成22年10月分の傍嶋利雄の給与支給明細書である。傍嶋利雄は、現在、被請求人の会社に在籍しているが、平成22年10月当時は、請求人の会社で広報部に在籍していた。乙第23号証は、傍嶋利雄の宣誓書である。これによれば、平成22年10月当時、請求人の社内では宮田司会長が事業経営全般について意思決定をしていたことが明らかである。
なお、乙第18号証、乙第20号証及び乙第22号証は、請求人の社内における給与支給明細書であり、当時、宮田司会長が人事面でも請求人の社内を掌握していたことから提出できる証拠である。かかる点からも、請求人の社内では宮田司会長が事業経営全般について意思決定をしていたことが窺える。
乙第24号証は、請求人の店舗「雄琴丸の内商事」における改修工事の請求書と領収書である。乙第24号証によれば、平成22年11月30日付の請求書の宛名は、「丸の内商事 御中 宮田社長」であり、平成22年12月27日付の領収書の宛名は「(有)宝観光」であることから、当時、請求人に対しては社外からも、宮田司が事業経営の意思決定をする者として認められていたことが明らかである。乙第24号証の請求書の宛名は「丸の内商事 御中 宮田社長」とあるが、宮田会長の誤記である。
(ウ)平成23年3月、宮田司の海外出張中に、宮田司は請求人より一方的な追放の宣告を受けたが、宮田司が京都市内で行っている他の事業への影響を考慮し、争いを避け、退いた。
(エ)平成23年4月に、宮田司は、徳久博の意思を引き継ぎ、本件商標を使用するため、商標登録出願を行い、同年10月に商標登録を受けた。そこで、近い将来において、宮田司が代表取締役を務める大昌商事による本件商標の使用を計画中である。
イ 甲第7号証の適用要件について
(ア)特定の商標の使用者と一定の取引関係などにある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の商標について
特定の商標の使用者は、本事件の請求人(宝観光)であるが、平成22年6月に、請求人の事業経営全般の意思決定権と本件商標に関する一切の取り扱いを引き継ぎ、使用商標を採択したのは請求人における宮田司会長である。一方、被請求人(リアル・ポリテックス)における商標採択の意思を決定する者は、被請求人の代表取締役宮田司であり、請求人の社内における宮田司会長と同一人物である。このため、被請求人の代表取締役宮田司は、請求人の社内において平成22年6月に本件商標を引き継ぎ、使用する商標を採択した時点より本件商標を知っていた。したがって、それ以降における請求人と被請求人との取引関係などの有無に拘わらず、本件商標は、特定の商標の使用者と一定の取引関係などにある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の商標に該当しない。
(イ)剽窃について
平成22年6月に、請求人の社内において宮田司会長は、徳久博が案出した成果である本件商標についての一切の取り扱いを引き継ぎ、本件商標を採択した。一方、被請求人における商標採択の意思を決定する者は、被請求人の代表取締役宮田司であり、本件商標を採択した請求人の宮田司会長と同一人物である。したがって、同一人が譲り受け、採択した自分の成果を、同一人が同一人から盗み取り、自分の成果とするということはあり得ないから、本件商標を剽窃したなどの事情はない。
(ウ)当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるかという点について
平成22年6月に宮田司は、本件商標の使用などを含む一切の取り扱いについて徳久博から引き継ぎ、平成23年4月に宮田司は、徳久博の意思を引き継ぎ、徳久博との約束を守り、本件商標の使用をするために、商標登録出願を行った。したがって、本件商標の登録出願の経緯は社会的に妥当なものである。
ウ その他
請求書において、請求人は次のような主張をしているので、反論する。
(ア)請求人は、「ところで、請求人と被請求人とは以前、請求人の経理業務について業務委託の関係にあり、被請求人の代表取締役が中心となり、請求人の経理業務を行っていた(甲13)。」と主張し、甲第14号証を提出する。
甲第13号証には、被請求人は平成23年3月まで請求人の経理業務を行っていたとあるが、経理業務を行っていたとする期間の始期が明らかでない。また、甲第14号証の書類はいずれも平成23年3月に作成されている。
しかし、上述のとおり、被請求人の代表取締役宮田司は、請求人の社内において平成22年6月に本件商標を引き継いだ時点で本件商標を知っていた。したがって、それ以降における請求人と被請求人との取引関係の有無に拘わらず、本件商標は、特定の商標の使用者(請求人)と一定の取引関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の商標に該当しない。
(イ)請求人は、「また、本件商標は、被請求人の所在地が京都府でありながら、滋賀県大津市の雄琴地区の名称を含む文字まで含まれており、偶然に同一の商標を出願したとは到底考えられず、出願日が、両社がトラブルになった直後の平成23年4月5日であることからしても、本件登録に係る出願が不正の目的であったことが裏付けられる。」と主張する。
本件商標については、事業計画書(乙10)のとおり平成23年3月に新事業(店舗)の計画を開始し、同年5月に計画どおり滋賀県大津市雄琴地区にある新店舗を決定した後、同年7月に当該新店舗を買収し、店舗型性風俗特殊営業届出確認書を入手し、営業を開始した。そして、滋賀県大津市雄琴地区にある新店舗を決定するに先立ち、本件商標の使用についての徳久博の意思を引き継ぎ、平成23年4月に新店舗で使用する商標について商標登録出願を行った。
したがって、本件商標には「雄琴」の文字が含まれるのであり、商標登録出願に不正の目的があるなどとする請求人の主張には根拠がない。

第4 当審の判断
1 利害関係について
請求人が本件審判を請求する法律上の利害関係を有することについては、当事者間に争いはないので、以下、本案に入って審理する。

2 商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人及び被請求人の主張並びにその提出に係る甲乙各号証によれば、次のとおりである。
(1)請求人及び被請求人について
請求人は、「有限会社宝観光」であり、甲第8号証の「履歴事項全部証明書」によれば、「垣花則明」氏を代表取締役としており、同社は、その目的を「個室付公衆浴場の経営」等とするものである。
そして、宝観光は、平成21年5月23日より、現在に至るまで、滋賀県大津市苗鹿三丁目6番13号において、「雄琴 丸の内商事」の店名で「店舗型性風俗特殊営業」(いわゆる「ソープランド業」)を営んでおり、別掲2のとおりの商標(以下「請求人使用商標」という。)を使用している(甲10ないし甲12)。
一方、被請求人の「株式会社リアル・ポリテックス」は、乙第1号証の「履歴事項全部証明書」によれば、「宮田司」氏を代表取締役としており、同社は、その目的を「経営コンサルタント業務」等とするものである。
また、宮田司氏は、「有限会社大昌商事」の代表取締役であり(乙4)、同社の「履歴事項全部証明書」によれば、その目的を「特殊公衆浴場の経営」等とするものである。そして、大昌商事は、平成23年7月頃より、現在に至るまで、滋賀県大津市苗鹿三丁目6番9号において、「雄琴大手町商事」の店名で「店舗型性風俗特殊営業」を営んでおり、「雄琴大手町商事」の文字よりなる商標を使用している(乙2、乙3、乙10)。
(2)リアル・ポリテックス及び宮田司氏と宝観光との関係について
リアル・ポリテックスは、宝観光の経理業務を行っていたものであり(甲13)、さらに、両社は、甲第14号証中の「請求書」によれば、「バスタオル、フェイスタオル、タオルケット」についての取引が平成23年2月にあったものである。
また、宮田司氏は、同22年6月頃から同23年2月頃まで、宝観光と何等かの関係があり、給与も支払われていたことが推認できる(乙15ないし乙17)。
そして、請求人及び被請求人の主張によれば、平成23年3月頃、宮田司氏と宝観光との間でなんらかの問題が起こり、取引関係が壊れたものである。
(3)本件商標と請求人の使用商標との近似性について
本件商標は、「雄琴 丸の内商事」の文字よりなり、請求人使用商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、両商標は、請求人使用商標の要部として看取され得る「雄琴」「丸の内商事」の文字を共通にするものである。
したがって、本件商標は、請求人使用商標とは、上記した文字部分を共通にする近似性の極めて高い類似の商標というべきである。
(4)不正の目的について
本件商標は、被請求人と請求人の両社がトラブルになった直後の平成23年4月5日に商標登録出願がされたものであり、また、設定登録された同年10月7日から1ヶ月以内に、被請求人から請求人に宛てた平成23年11月4日付け「通知書」が送付されている(甲15)。
その通知書には、「貴社が滋賀県大津市・・・で丸の内商事と称する屋号を使用していますが、本使用している屋号(丸の内商事及び同ロゴ)は当方で商標登録されている商標であり商標権者である。よって、貴社におかれましては商標権侵害行為に値するので、即刻の使用差止を申し上げます。本書到達後10日以内に使用差止なき場合は損害賠償を請求し、商標権使用料を日/金10万円を請求するものである。」との記載がされており、本件商標の実質的な使用もされていないのにもかかわらず、被請求人は、使用差止め及び多額の賠償を請求しているものである。
そうとすれば、上記(1)ないし(3)を併せ考慮すれば、本件商標の出願日(平成23年4月5日)前から、請求人が使用していた請求人使用商標について、被請求人は、当然に知っていたことは明らかであり、被請求人が請求人使用商標に近似した類似の本件商標を登録出願したものであることは明白である。
してみれば、被請求人は、本件商標が請求人の業務に係る商標であることを承知のうえ、請求人に無断で、請求人の業務に係る役務と関連を有する役務を指定役務として、本件商標の商標登録出願をし、その登録を受けたものといわざるを得ない。
(5)被請求人の主張
ア 被請求人は、「平成22年6月に宮田司は、本件商標の使用などを含む一切の取り扱いについて徳久博から引き継ぎ、平成23年4月に宮田司は、徳久博の意思を引き継ぎ、徳久博との約束を守り、本件商標の使用をするために、商標登録出願を行った。したがって、本件商標の登録出願の経緯は社会的に妥当なものである。」旨の主張をしている。
しかしながら、徳久博氏がいかなる経緯により宝観光に関与してきたかは、さておき、請求人使用商標は、宝観光の「雄琴 丸の内商事」(店名)によって、平成21年5月頃より使用されてきたものである。
そして、本件商標が徳久博氏によって、使用されていた事実は見あたらないことからすれば、請求人の主張は、妥当なものとはいえず、採用することができない。
イ 被請求人は、「被請求人の代表取締役宮田司は、請求人の社内において平成22年6月に本件商標を引き継いだ時点で本件商標を知っていた。したがって、それ以降における請求人と被請求人との取引関係の有無に拘わらず、本件商標は、特定の商標の使用者(請求人)と一定の取引関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の商標に該当しない。」旨の主張をしている。
しかしながら、宮田司氏が平成22年6月に本件商標を知ることになった経緯とは関係なく、宝観光と被請求人が取引関係にあったことは明らかであり、本件商標がその関係を通じて知り得た相手方使用の商標に該当しないということはできない。
よって、被請求人の主張は採用できない。
(6)小括
以上のことからすれば、被請求人は、請求人の使用する請求人使用商標が商標登録されていないことを奇貨として、先取り的に本件商標を商標登録出願し、商標権を取得したものとみるのが相当である。
してみれば、被請求人が本件商標を商標登録出願し商標権を取得した行為は、公正な商取引秩序を乱すおそれがあり、ひいては公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。

3 まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その余の理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(請求人使用商標)




審理終結日 2012-08-31 
結審通知日 2012-09-05 
審決日 2012-09-24 
出願番号 商願2011-27209(T2011-27209) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (X44)
最終処分 成立 
前審関与審査官 清棲 保美 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 2011-10-07 
登録番号 商標登録第5442536号(T5442536) 
商標の称呼 オゴトマルノウチショージ、マルノウチショージ 
代理人 川瀬 裕之 
代理人 三觜 宏之 
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