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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z31
管理番号 1265966 
審判番号 取消2010-300840 
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-07-27 
確定日 2012-10-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第4323578号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成23年6月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成23年(行ケ)第10243号平成24年2月21日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4323578号商標(以下「本件商標」という。)は、「ももいちご」と「百壱五」の文字を二段に書してなり、平成10年4月10日に登録出願、第31類「いちご」を指定商品として、同11年10月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、別紙1-1ないし別紙3-2、甲第1号証ないし甲第10号証及び「品種登録出願品種の名称変更について」と題する資料を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品「いちご」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁
(1)本件商標の使用について
ア 社会通念上同一の商標について
(ア)本件商標は、「ももいちご」と「百壱五」の文字との二段併記商標であり、「ももいちご」は「百壱五」の読みを特定するルビの役割をはたしているにすぎない。二段併記商標は、上下二つで一つの商標である。
甲第1号証及び甲第2号証は、二段併記商標での取消事例の論文であり、この二つの論文に様々な取消審判事例が紹介されているが、二段併記商標で上下二つの単語が社会通念上同一といえない場合の片方だけの使用は、ことごとく取消の審決がなされている。
(イ)これを踏まえて、今回の答弁書の内容を検討する。
答弁書の「使用の事実」で、「ももいちご」の平仮名部分の使用の事実が面々と述べられているが、大半は漢字部分「百壱五」が使用されていないという事実の裏付けとなるだけの記述である。
唯一の例外が、乙第3号証として、提出された一般用のイチゴ箱であるが、虫眼鏡で見ないとわからないような小さな文字で「百壱五」と書かれているだけであり、これではそれが商標であると一般に認識することはできない。だれが見ても、これでは商品管理のための通し番号だと思うものである。
漢字「百壱五」部分は、商標として商品に使われていないのであるから、「百壱五」からはイチゴを想起することはない。仮に、使われたとしても「百壱五」という漢数字の名称のついたイチゴとなるだけで、「百壱五」から生じる観念は「100、1、5」若しくは「101、5」のままである。よって、「ももいちご」と「百壱五」が観念を同一にすることはない。国語辞典で「百壱五」を調べても、イチゴの一種類とは書かれていないし、かかる単語は掲載されていない。社会通念上「ももいちご」と「百壱五」が同一になることはない。
したがって、「ももいちご」は、「ももいちご」と「百壱五」の文字を二段併記してなる本件商標とは、社会通念上同一のものとはいえない。
イ 使用時期について
乙第3号証に写された箱は、側面に「JA徳島県本部」と印刷されているが、最近のものは写真(甲3)のとおり、「JA全農とくしま」となっていることから、今は使用されていない、かなり前のものと考えられる。
福岡県でも農協の「JA福岡県本部」が「JA全農ふくれん」のロゴにかわったのは、二十年ぐらい前だったかと思う。
加えて、箱の形状からも古いタイプのものといえる。同じ徳島県産のイチゴでも、「ももいちご」だけが、独特の底の浅い紙パックが使われ、請求人が入手したイチゴ箱(甲3)は、それに合わせて箱の高さが低くなっている。それに比べ、乙第3号証のイチゴ箱は箱の高さは高く、これはスーパーなどでよくみかける、ふつうの底の深いイチゴパック用のものである。
さらに、予冷品自体が当たり前になりイチゴ箱に予冷品などと書かないが、乙第3号証のイチゴ箱には「予冷品」と書かれ、予冷品のイチゴ箱(乙2及び乙7)には、箱を重ねた時にずれないように上部に突起部があるが、このことからも、乙第3号証の箱は古いタイプのものといえる。
いつ頃使っていたものなのかの記載もないことから、乙第3号証は証拠として採用できない。
ウ ウェブページでの使用について
徳島県産のイチゴに興味をもった人たちが、登録商標「百壱五」を調べ二段併記の事実を自分のホームページ等に書いたとしても、この人たちは商標権者でも使用権者でもないのであるから、被請求人がそれを使用したことにはならない。
エ 前述のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品「いちご」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明していない。
(2)権利濫用について
被請求人が明示する、請求人の3件の商標登録出願は、商標「百壱五」との類似性はなく、本件審判事件とは、ほぼ無関係である。
よって、権利濫用には該当しない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第43号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 被請求人などについて
被請求人は、徳島市農業協同組合(以下「JA徳島市」という。)の佐那河内支所(徳島県名東郡佐那河内村)の組合員であり、平成4年に大阪中央青果市場大阪中央青果と共同開発した該佐那河内村産のイチゴ(以下、商標と区別するため「ももいちご商品」という。)に、「ももいちご」の商標(以下、本件商標と区別するため「ももいちご商標」という。)を付して、平成5年より販売を開始し、現在に至っている(乙1及び乙2)。
また、被請求人から本件商標権の使用許諾を受けたJA徳島市及びその組合員も同様に、ももいちご商標をイチゴに付して販売している(例えば、乙3)。
なお、本件商標の名義人が被請求人個人となっている理由は、JA徳島市佐那河内支所や、同支所内に設立されJA徳島市組合員で構成された「ももいちご部会」は法人格を有しないため、同部会の中心メンバーであった被請求人の名義で、本件商標を取得したものである。よって、本件商標の使用及び管理は、被請求人本人も含めた、ももいちご部会の組合員及びJA徳島市が行っている。以下、これらを集合的に「被請求人ら」という。
2 使用の事実
(1)包装箱への使用
ア 使用の態様
(a)化粧箱には、蓋に黒色の横書きで「佐那河内の」と書した下に、左上から右下に向かって斜めに赤色で大きく「ももいちご」と表記し、さらに右下に黒色横書きで「JA徳島市」と表記している。また、化粧箱の側面にも同様に、黒色の横書きで「佐那河内の」と書した下に、赤色で大きく「ももいちご」と表記している(乙1)。また、多数のイチゴを詰めてラップしたパックに、白色で「佐那河内村の」「ももいちご」「JA徳島市」と表記し、またこのパックを4個詰めた箱の下端中央に白で縁取りした赤色の「ももいちご」と表記し、さらに箱の側面にも同様に、黒色の横書きで「佐那河内の」と書した下に、白縁の赤色で大きく「ももいちご」と表記している(乙2)。以下、これらの「ももいちご」の文字からなる商標を「使用商標1」という。
(b)同じくパックを詰めるための箱の側面に、緑色で「佐那河内の」、その下に朱色で「ももいちご」、その下段に緑色で「登録第4323578号」、「平成10年商標登録願第30450号」と二段書き、さらにその右側に「百壱五」と表記している(乙3)。以下、当該箱の側面の商標を「使用商標2」という。
イ 広告宣伝での使用
被請求人らは大阪中央青果と協力して、平成12年から同21年にかけて、ももいちご商品の数多くの宣伝広告を行った(乙4)。具体的には、朝日放送ラジオにて、平成21年1月10日から同年1月15日にかけて20秒スポットCMが放送され、毎日放送ラジオにて、平成20年1月10日から同年1月15日にかけて20秒スポットCMが放送された。
さらに、阪急梅田駅ターミナルビジョン「ビッグマン」にて、平成19年12月24日から同20年1月23日にかけて、15秒CMが放映された。
ウ 使用時期の裏付け
平成22年2月28日にテレビ朝日系列全国ネットで放送された「にっぽん菜発見 そうだ、自然に帰ろう」でももいちご商品が紹介され、ももいちご商品とその化粧箱(乙1と同じ。)が表示され(乙6)、平成21年1月19日にテレビ朝日系列全国ネットで放送された「スーパーJチャンネル」でも、ももいちご商品とその化粧箱(乙1及び乙2と同じ。)が確認できる。いずれも放送の日時から、被請求人らによるももいちご商標の使用時期が予告登録の3年以内であることは明らかである。
エ 小結
以上のように、被請求人らは「ももいちご商標」を使用している。
(2)社会通念上同一の商標の使用
ア 被請求人らの使用する商標は、前述の使用商標1及び2である。
イ 観念の同一
(ア)使用商標1は、本件においては以下のような特殊性を有するため、観念が共通するということができる。
a 「ももいちご商品」は被請求人らの生産、販売するイチゴとして周知ないし著名であるため、「ももいちご」の平仮名に触れた需要者ないし取引者は、「ももいちご商品」そのもの、すなわちJA徳島市佐那河内支所が生産するイチゴを想起する。一方、「百壱五」の漢字からは、上記平仮名がルビの役目を果たすことともあいまって「モモイチゴ」の称呼を生じることから、同様にJA徳島市佐那河内支所が生産するイチゴを想起する。
よって、本件商標を構成する「ももいちご」の平仮名と「百壱五」の漢字とは、その観念を同一にするものである。
b 加えて、本件の特殊事情として、「ももいちご商品」の周知性のみならず、該「ももいちご商品」の登録商標が、平仮名のみでなく、漢字「百壱五」の二段書きである事実自体が広く知られていることから、本件商標に触れた需要者ないし取引者が、「ももいちご商品」を想起するということもできる。
c 一方、ももいちご商品自体が広く知られた結果、「ももいちご」が商品名であるととらえられる可能性もある。このような実情からすれば、平仮名の「ももいちご」はもとより、該平仮名の下に併記された漢字の「百壱五」についても「モモイチゴ」と読めることから、イチゴの一種類である「ももいちご」を想起するということができる。
d さらに、本件の特殊事情として、仮に平仮名「ももいちご」と同一の観念で漢字表記しようとすれば、漢字部分を「百壱五」に代えて「桃苺」として出願することも考えられたが、このような構成とすると商標登録自体が不可能になるという事情があった。
具体的には、被請求人らは、本件商標出願の前、平成6年10月12日に、平仮名のみからなる商標「ももいちご」も出願したが(乙17)、「単に商品の品質を表示するにすぎない」として、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号の拒絶理由(平成8年6月21日)を受け、拒絶査定となった(乙18)。
さらに被請求人は、本件商標の出願日と同日の平成10年4月10日に、平仮名のみからなる商標「ももいちご」も出願していたが(乙19)、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないとして、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号の拒絶理由(平成11年6月18日)を受け拒絶査定となった(乙20)。
さらに加えて、上述のとおり本件商標が登録された後も、平成18年9月14日に再度、平仮名のみからなる商標「ももいちご」を第31類の指定商品「いちご」を指定して改めて出願したが(乙15)、同様に商標法第3条第1項第3号及び同第4条1項第16号の拒絶理由(平成19年5月29日)を受け、拒絶査定となった(乙16)。
このような経緯からすれば、仮に「ももいちご/桃苺」の二段書きで出願しても、同様の理由で拒絶される可能性が高かったと考えられる。すなわち、桃苺の漢字を採用できなかった事情が本件においては存在しており、このため本件商標ではやむを得ず当て字の「百壱五」を採用した経緯にかんがみれば、本件商標の使用が認められないとすれば、被請求人である出願人に酷とも考えられる。
また、被請求人らの目的とするところが、「ももいちご」の商標登録にあったことは明白であり、このような経緯にかんがみても、「百壱五」と「ももいちご」の観念を、「桃のような苺」と解することに何ら不都合はない。そして上述のとおり広く一般公衆の間でも、ももいちご商品の商標が、「ももいちご」単独でなく、「百壱五」との組み合わせであること自体が、広く知れ渡っている実情にかんがみても、「百壱五」に触れた需要者が観念として桃のような苺又はももいちご商品そのものを想起すると考える余地は大いにある。
以上のように、本件特有の特殊な事情もあいまって、本件商標に触れた需要者ないし取引者は、平仮名「ももいちご」と漢字「百壱五」から共通の観念を想起するということができる。このため、二段書きされた一方の平仮名「ももいちご」に相当するももいちご商標(使用商標1)を、被請求人らは使用しているということができる。
(イ)使用商標2は、「百壱五」の表記が他と比べて小さいものの、平仮名「ももいちご」と漢字「百壱五」とを同時に使用している。またレイアウトも本件商標と同じく、平仮名「ももいちご」の下に漢字「百壱五」が配置されている。さらに商標登録番号、出願番号も併記している。したがって、このような「ももいちご」と「百壱五」の同時に使用する使用商標2は、本件商標と社会通念上同一と見ることができる。
(3)タグへの使用の事実
乙第33号証の写真に示すように、使用商標2を表示したタグが、ももいちご商品の販売において使用されている。
この写真は、平成23年4月11日に、大阪の阪神百貨店のフルーツキング・ミズノの店頭で撮影されたものである。同店では、少なくとも5年以上前から現在に至るまで、このタグを用いて、ももいちご商品を販売している。また被請求人は、同店に対して本件商標の使用許諾を認めている(乙34)。すなわち、本件商標は通常使用権者により少なくとも5年前から現在に至るまで使用されている。
3 権利濫用
不使用取消審判の請求人適格は、「何人」にも認められているところ、当該審判の請求が被請求人らを害することを目的としていると認められる場合には、該請求は権利濫用として認められない。
本件においては、請求人は被請求人らの商標である「ももいちご」、及び姉妹品である「さくらももいちご」を模倣した「桃苺」、「桜桃苺」を、被請求人らに無断で使用しており(乙28)、これらの模倣商標について、3件の商標登録出願を行っているという事実がある(乙29?乙31)。
被請求人らは、請求人の上記3件の商標登録出願に対して、それぞれ情報提供を行い、かつ本件商標及び被請求人らの周知商標の侵害、毀損行為の中止を求める警告状の送付を行った。
このような経緯にかんがみれば、請求人による本件審判請求は、被請求人らに対する「腹いせ」であることは明白で、被請求人を害することを目的として審判請求を行っている以上、本請求は権利濫用に該当する。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、審判請求の登録前3年以内に、その指定商品「いちご」について通常使用権者によって現に使用されている。

第4 当審の判断
1 本案前の当事者の主張について
被請求人は、請求人による本件取消審判の請求は、被請求人を害することを目的として審判請求を行っている以上、本件取消審判の請求は権利濫用に該当する旨主張している。
しかしながら、被請求人も述べているように、商標法50条の商標登録の取消しの審判は、「何人も」請求することができるものであるから、当該審判の請求が、専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り、権利の濫用にはあたらないと解するのが相当であるところ、本件審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としてされたものであると認めるに足る証拠は見いだせないから、この点に関する被請求人の主張は採用できない。
2 本案の審理
(1)証拠(乙3、7の1、8、9、33、34、36、39?41)によれば、以下の事実が認められる。
ア 「ももいちご」とは、徳島県内の農家でのみ生産されているいちごで、JA徳島市佐那河内支所と大阪中央青果で作ったブランドのいちごであり、平成7年ころ販売が開始され、正式な品種名は「あかねっ娘」といい、地元の徳島と大阪の卸売市場にしか出荷せず、また、粒を大きくして贈答用のみの販売に限ったことから、高値で販売されてきた。
なお、本件商標につき、当初は単に「ももいちご」だけの出願であったが、「もも」と「いちご」の2つの果物名を組み合わせただけであるとして認められず、「百壱五」を併記することで、何とか商標登録に至った。
イ 本件商標の商標権者である被請求人は、JA徳島市管内の佐那河内支所いちご部会の前部会長であるが、「ももいちご部会」には法人格がないので、その中心メンバーである被請求人個人名義で本件商標登録がなされている。
ウ 大阪中央青果株式会社に勤務する藪中哲也は、果実部第3部に所属し、現在は部長代理の地位にある。
同社は、大阪市中央卸売市場・本場の青果部卸売業者であり、果実部第3部は、中国・四国・九州・北海道を担当する部署であって、藪中哲也は、徳島・愛媛・北海道を主に担当し、「ももいちご」を競売するせり人でもある。
藪中哲也は、入社以来、上司(上田晴彦)の指導の下、徳島県産いちごの販売に携わっており、「ももいちご」の誕生にも関わっている。
同社から、大阪市中央卸売市場本場青果仲卸、果実部5号・株式会社フルーツキングが仕入れた商品を、阪神百貨店のフルーツキングミズノ(梅田店)が販売している。
徳島以外の産地・品種で「ももいちご」の類似品が登場したこともあり、フルーツキングミズノ(梅田店)店頭での販売において佐那河内産の「ももいちご」であることを明らかにし、より多くの消費者に理解してもらうため、本件商標が登録となった平成11年ころ及びテレビで「ももいちご」が放送された平成14年ころ、被請求人と上田晴彦が相談して、果実部5号・株式会社フルーツキングを通じて、フルーツキングミズノに対し、本件商標の使用を依頼することになった。
エ フルーツキングミズノ(梅田店)果物売り場に勤務する佐藤圭二郎は、平成7年に梅田店の店長となった。
同店では、大阪市中央卸売市場青果仲卸、果実部5号・株式会社フルーツキングと、もぎたて青果の産地直送の果物を販売している。
同店において、「ももいちご」は看板商品であり、高額ではあるが、売れ行きは良好である。
前記ウのとおり、被請求人等から、商標を使用して販売するようにとの依頼を受け、佐藤圭二郎は、梅田店において、「ももいちご」箱の写真をラミネートして商品タグを作成した。当該タグは、使用商標2が表示されているものであり、佐藤圭二郎は、「ももいちご」を販売する際に当該タグを使用することがあった。
そして、藪中哲也は、5?6年前(平成17年?18年)から毎年、12月31日に、阪神百貨店の地下売り場で正月のおせち料理の買い物をしているところ、その際、フルーツキングミズノ(梅田店)において、陳列の棚4段のうち、上から2段目に「ももいちご」商品が陳列され、右側に化粧箱、左側に紙トレーが陳列され、紙トレーの前に上記商品タグが置かれている状況を目撃している。
オ 被請求人は、本件商標につき、フルーツキングミズノに対し、平成20年4月1日付けで、日本国内において、平成20年4月1日から平成24年3月31日まで、「ももいちごに標章を付し販売する行為」につき、通常使用権を許諾する旨の証書(乙34)を作成した。
もっとも、前記ウ、エのとおり、被請求人は、フルーツキングミズノ(梅田店)に対し、平成11年ころから、本件商標につき使用許諾しており、乙第34号証は、平成20年4月1日付けでその内容を書面化したにすぎない。
さらに、被請求人は、本件商標につき、JA徳島市に対し、平成22年4月1日付けで、日本国内において、本件商標の存続期間中(平成31年10月8日まで)、「ももいちごに標章を付し販売する行為」につき、通常使用権を許諾する旨の証書(乙36)を作成した。
もっとも、被請求人は、JA徳島市に対しても、当初から、本件商標につき口頭で使用許諾していた。
(2)以上のとおり、本件においては、被請求人から本件商標につき通常使用権の設定を受けたフルーツキングミズノ(梅田店)が、少なくとも取消審判請求の登録日(平成22年8月16日)前3年以内である平成19年、平成20年、平成21年の各12月31日に、使用商標2を使用して、指定商品の「いちご」を販売していたものということができる。
(3)使用商標について
使用商標2は、中央に「ももいちご」の赤色の文字を大きく表し、その上部に「佐那河内の」の文字を、下部に「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」の文字を2段に配し、これらの全体の文字の右下部分に「百壱五」の文字を書してなるものである。
そこで検討するに、使用商標2は、文字の色や大きさから、「ももいちご」の部分が最も大きな自他識別能力を有することは明らかであり、「佐那河内の」は産地名であり、「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」の部分は、登録商標であることを付記するものであって、いずれも自他識別能力を有する部分とはいえず、また、「百壱五」の部分も文字の大きさや内容からすれば、自他識別能力は非常に小さいといえる。
しかし、商標権者は、「百壱五」の部分につき、単に登録要件を充足するために本件商標に付加したものであり、客観的にみても、本件商標において漢数字である「百壱五」の部分は、「ひゃくいちご」のほか「ももいちご」とも一応読み得るものであり、ここから、数字の100と1と5、又は何らかの「いちご」との観念が生じ得るものの、あくまで平仮名の「ももいちご」を補足する部分であり、「百壱五」の部分自体が顕著な自他識別能力を有することは期待されていないと解されることからすれば、「ももいちご」「百壱五」の両方の文言が、文字の変更や欠落などなく、共に用いられていれば、字体や字の大きさに違いがあるとしても、本件商標を表す「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」も表示されていることも併せ考慮すると、社会通念上,本件商標と同一の商標が使用されていると解すべきである。
以上からすれば,使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているものと認めるのが相当である。
(3)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者と推認し得るフルーツキングミズノが本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件審判の請求に係る指定商品「いちご」について使用していたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-08-13 
結審通知日 2012-08-20 
審決日 2012-09-06 
出願番号 商願平10-30450 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z31)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 貴博内藤 順子 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
梶原 良子
登録日 1999-10-08 
登録番号 商標登録第4323578号(T4323578) 
商標の称呼 モモイチゴ、ヒャクイチゴ 
代理人 豊栖 康司 
代理人 豊栖 康弘 

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