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審決分類 |
審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない X03 |
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管理番号 | 1264320 |
審判番号 | 無効2012-890007 |
総通号数 | 155 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2012-11-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-01-30 |
確定日 | 2012-09-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5446929号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5446929号商標(以下「本件商標」という。)は、「LOVE BALM」の文字を標準文字で表してなり、平成23年5月2日に登録出願、同年9月9日に登録査定、第3類「スキンケア用化粧品,ボディケア用化粧品,美容用化粧品,化粧品,肌用せっけん,非薬用化粧品,香水類,エッセンシャルオイル,頭髪用化粧品,シャンプー,ヘアコンディショナー,ハンドローション,ボディローション,入浴用化粧品,ポプリ,ベビー用泡状入浴用化粧品,ベビー用入浴用化粧品(非薬用),ベビー用ボディ用乳液,ベビー用モイスチャライザー,ベビー用シャンプー,ベビー用ボディソープ,ベビー用クリーム(非薬用),ベビー用非薬用化粧品,ベビーオイル,妊娠中に使用するための化粧品」を指定商品として、同年10月28日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中「スキンケア用化粧品,ボディケア用化粧品,美容用化粧品,化粧品,非薬用化粧品,香水類,頭髪用化粧品,ヘアコンディショナー,ハンドローション,ボディローション,入浴用化粧品,ベビー用泡状入浴用化粧品,ベビー用入浴用化粧品(非薬用),ベビー用ボディ用乳液,ベビー用モイスチャライザー,ベビー用クリーム(非薬用),ベビー用非薬用化粧品,ベビーオイル,妊娠中に使用するための化粧品」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。 1 本件商標が登録無効にされるべき理由 本件商標と類似し、かつ、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用する次の先行登録商標(以下、まとめて「引用商標」という。)が存在するため、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により登録無効とされるべきである。 2 引用商標 請求人が引用する商標は次のとおりであり、その商標権はいずれも現に有効に存続している。 ア 商標登録第2219231号(以下「引用商標1」という。) 商標 LOVE 指定商品 第3類「化粧品,歯磨き,香料類,薫料」 登録出願日 昭和46年8月5日 設定登録日 平成2年3月27日 イ 商標登録第2431617号(以下「引用商標2」という。) 商標 別掲(1)のとおり 指定商品 第3類「歯みがき,化粧品,香料類,薫料」 第30類「食品香料(精油のものを除く。)」 登録出願日 昭和48年5月10日 設定登録日 平成4年7月31日 ウ 商標登録第4277280号(以下「引用商標3」という。) 商標 別掲(2)のとおり 指定商品 第3類「歯みがき,化粧品,香料類」 登録出願日 平成9年12月22日 設定登録日 平成11年5月28日 エ 商標登録第4522976号(以下「引用商標4」という。) 商標 「 ラブ LOVE 」 指定商品 第3類「歯みがき,化粧品,香料類」 登録出願日 平成13年1月9日 設定登録日 平成13年11月16日 オ 商標登録第5095768号(以下「引用商標5」という。) 商標 別掲(3)のとおり 指定商品 第3類「化粧品,歯磨き,香料類」 登録出願日 平成18年4月18日 設定登録日 平成19年11月30日 カ 商標登録第5439655号(以下「引用商標6」という。) 商標 LOVE(標準文字) 指定役務 第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客 に対する便益の提供」 登録出願日 平成19年6月25日 設定登録日 平成23年9月16日 キ 商標登録第5441415号(以下「引用商標7」という。) 商標 Love 指定商品 第3類「化粧品,香料類,歯磨き」 登録出願日 平成20年2月1日 設定登録日 平成23年9月30日 3 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)指定商品の類否 本件商標の指定商品中、本件審判の請求に係る指定商品(以下「本件商品」という。)と、引用商標の指定商品「化粧品」とは類似する。 (2)本件商標と引用商標との類否 ア 本件商標と引用商標の構成 本件商標は、「LOVE」と「BALM」との組み合わせからなる結合商標である。一方、引用商標は、「LOVE」、「LOVE」及び「ラブ」の組み合わせ又は「Love」から構成される。 イ 本件商標の要部について 本件商標の構成文字のうち「BALM」の部分は、本件商品の品質を表すに過ぎず、本件商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能(以下「識別力」という。)を有していない。本件商標の構成要素のうち、商標としての識別力を有するのは「LOVE」の部分のみである。したがって、本件商標の要部は「LOVE」である。以下、その理由を詳述する。 (ア)「BALM」の品質表示性を示す取引実情 本件商品を取扱う化粧品業界において、「BALM」(バーム)は商品の品質を意味する表現として一般的に使用されている(甲第9号証ないし甲第23号証)。 甲第9号証は、「バーム(BALM)」が化粧品の「剤型」を表す名称として公正取引協議会に公式に認められていることを示している。したがって、「バーム(BALM)」という表示は、化粧品の「剤型」つまり「品質」を示す表示として、化粧品業界で一般的に受け入れられているといえる。 甲第10号証ないし甲第23号証は、これらには商品として「リップ バーム」「マッサージ バーム」「ボディ バーム」「アイ バーム」「全身用バーム」が紹介され、また、商品説明として「このバームのように」「スティックタイプのバーム」「うるおいとツヤを与える濃厚バーム」「ピタッと密着するバーム」などのように、多くの読者を有する美容雑誌や有名美容ジャーナリストのコラムに「バーム」という表現が多岐に亘って使用されており、有名化粧品ブランドから「○○バーム」という化粧品が複数発売されている事実を示している。したがって、「バーム」という表現が、化粧品に一般的に使用されていることは、需要者に広く知られているといえ、また、商品説明の中で商品を説明するための表現として一般的に使用されているといえる。商品説明は、商品を消費者に理解してもらうために商品を分かり易く説明する部分である。とすれば、「バーム」という表現は、商品を需要者に分かり易く説明する表現として、一般的に受け入れられているといえる。 更に、第10号証ないし第22号証によると、「バーム」は、「リップ バーム」「マッサージ バーム」「ボディ バーム」「アイ バーム」「全身用バーム」などの表現で使用されている。そして、これらの使用例とほぼ同じ目的を有する化粧品として、「リップクリーム」「リップグロス」、「マッサージオイル」「マッサージクリーム」、「ボディローション」「ボディクリーム」、「アイクリーム」等が一般的に販売されている。これらの商品の需要者は、「リップクリーム」の「クリーム」や「リップグロス」の「グロス」の部分から、「唇用の化粧品がクリーム状であるかグロス状であるか」を区別する。同様に、「マッサージオイル」の「オイル」や「マッサージクリーム」の「クリーム」の部分から、「マッサージ目的の化粧品がオイル状であるかクリーム状であるか」を区別する。更に、「ボディーローション」の「ローション」や「ボディクリーム」の「クリーム」の部分から、「ボディ用の化粧品がローション状であるかクリーム状であるか」を区別する。そうとすれば、「リップクリーム」「リップグロス」、「マッサージオイル」「マッサージクリーム」、「ボディローション」「ボディクリーム」、「アイクリーム」等と同様の目的を有する商品として雑誌に紹介されている「リップ バーム」「マッサージ バーム」「ボディ バーム」「アイ バーム」「全身用バーム」を目にする需要者は、「バーム」の部分からこれらの商品が「バーム(軟膏)状」の品質を備えていると認識することが自然である。 (イ)特許庁の判断例 無効2008-890134は、商標「B・B/BLEMISH BALM」の識別力の有無が争点となった審判であるが、審決では「BLEMISH BALM」が「BLEMISH(欠点)を補うバーム(軟膏)」の意味を有する化粧品業界で広く知られていることが認められた(甲第24号証)。この審決からも、「BALM(バーム)」が品質表示であることが裏付けられる。 (ウ)以上をまとめると、「BALM(バーム)」の表現は、本件商品の品質を表したものと認識されるにとどまり、識別力を有していないことは明らかである。 (エ)「LOVE」の識別性 本件商標の「LOVE」の部分は、本件商品の品質を表してはおらず、識別力を有している。よって、本件商標の要部は「LOVE」である。 ウ 本件商標と引用商標との類否 (ア)類否判断の対象について 上記イで述べたとおり、本件商標の要部は「LOVE」である。したがって、本件商標の構成文字のうち、類否判断の対象となるのは、「LOVE」の部分である。 加えて、上記アで述べたとおり、本件商標は「LOVE」と「BALM」との組み合わせからなる結合商標である。結合商標の類否について、特許庁商標課編「商標審査基準」における商標法第4条第1項第11号の解説では、「形容詞的文字(商品の品質、原材料等を表示する文字、又は役務の提供の場所、質等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する。」旨明示されている。 上記基準に基づくと、本件商標「LOVE BALM」について、他の商標との類否判断の対象となる部分は、本件商品の品質を表示する「BALM」の部分をのぞいた「LOVE」の部分ということになる。 (イ)本件商標と引用商標との比較 本件商標の要部「LOVE」と引用商標「LOVE」、「LOVE」及び「ラブ」の組み合わせ又は「Love」とを比較すると、両商標は称呼「ラブ」及び観念「愛」が同一である。したがって、本件商標と引用商標とは類似する。 エ むすび 以上より、本件商標「LOVE BALM」の構成要素のうち「BALM」は、本件商品が「バーム状」であることを示す品質表示に過ぎず識別力を有さず、したがって本件商標のうち商標として識別力を発揮する部分は「LOVE」である。 よって、本件商標は引用商標と類似し、商標法第4条第1項第11号に該当する。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。 1 本件商標及び引用商標並びにそれらの指定商品及び指定役務は、それぞれ上記第1及び上記第2 2のとおりである。 2 本件商標と引用商標とは指定商品が同一又は類似する商品であるため、以下に本件商標と引用商標そのものが同一又は類似でないことを述べる。 (1)まず、本件商標と引用商標の外観について検討すると、それぞれの商標は上述した態様からなり、本件商標は欧文字8文字からなるものであるのに対し、引用商標1、3、5、6及び7は、欧文字4文字のみからなるものである。また、引用商標2及び4は、欧文字4文字と片仮名2文字とからなるものである。 したがって、本件商標と引用商標とは、文字数及び文字の種類において顕著な差異を有しているので、両者は外観上明らかに相違する。 よって、本件商標と引用商標とは、外観上相紛れることのない非類似の商標である。 (2)次に、本件商標と引用商標の観念を検討すると、本件商標「LOVE BALM」は、「LOVE」が「愛、愛情、好意、恋愛」「愛する、大事にする」等を意味する英単語であり、「BALM」が「バルサム(ミルラノキなどから採る樹脂)、セイヨウヤマハッカ、香油、香膏、芳香、かぐわしさ、バルム剤」「慰め、癒すもの」「癒す、和らげる」等を意味する英単語であるので、本件商標からは「愛の芳香」「愛の癒し」等といった漠然とした観念を生じる。一方、引用商標は、その構成文字「LOVE」から、「愛、愛情、好意、恋愛」「愛する、大事にする」といった観念のみを生じる。 したがって、本件商標と引用商標とは、観念において明らかな差異を有しており、観念上相紛れることのない非類似の商標である。 (3)そして、本件商標と引用商標の称呼を検討すると、本件商標「LOVE BALM」からは、その構成文字に相応した「ラブバーム」の称呼が生じ、引用商標からは、その構成文字に相応した「ラブ」の称呼のみが生じる。 本件商標から生ずる称呼と引用商標から生ずる称呼とを比較すると、前者は長音を含め5音であり、後者は2音であり、両者は、後半部分において「バーム」の有無という明らかな差異を有するものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼した場合において、その語調、語感は著しく相違するものであって、称呼上明瞭に聴別し得るものである。 したがって、本件商標と引用商標は、称呼上相紛れるおそれのない非類似の商標である。 (4)なお、請求人は、本件商標「LOVE BALM」を「LOVE」と「BALM」とに分離して観察し、「BALM」の部分は、本件商品の品質を表すに過ぎず、本件商品との関係において自他商品の識別標識としての機能を有していないので、本件商標の要部は「LOVE」であるとして、「LOVE」の文字部分にのみ注目され、「ラブ」の称呼を抽出し、引用商標に類似すると主張している。 しかしながら、本件商標「LOVE BALM」は、一連の造語であり、外観上まとまりよく表現されており、一連一体不可分の文字列として観察されるものである。本件商標は、その構成文字全体をもって一体不可分の商標として認識され、把握されるとみるのが自然であり、その構成中の「LOVE」の文字部分のみが独立して認識され、称呼されることはない。また、本件商標は、全体として称呼しても長音を含め5音と比較的短い称呼からなる商標であるので、後半部分を省略し称呼する必然性がない。 したがって、本件商標の構成中「LOVE」の文字部分のみを抽出し、商標の類否を判断するのは妥当でない。 以上から、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。 (5)本件商標と引用商標とが互いに類似するものでないことは、特許庁において、語尾部分又は語頭部分に「BALM」又は「バーム」の有無の差異を有する商標でありながら、互いに類似すると判断されることなく併存して登録を認められている事実によっても明らかである(乙第1号証ないし乙第10号証)。 (6)また、「BALM」が商品の品質を意味する表現として一般的に使用されているとする請求人提出の証拠には、「BALM」の欧文字単独で品質表示として使用されている例はなく、「リップバーム」「マッサージバーム」「クレンジングバーム」などのように、他の語と組み合わせて使用されている。したがって、これらの証拠から、「BALM」の文字単独で品質表示として、取引上普通に使用されているとはいえない。 (7)さらに、商標「B・B/BLEMISH BALM」に係る審決は、「BLEMISH BALM」の識別性を判断したものであり、本件商標と引用商標との類否判断とは何ら関係のないものであるし、この審決より後に、「バーム」のみが、化粧品業界において、商品の品質を表すものとして、取引上普通に使用されている実情は見当たらないとした異議決定がある(乙第11号証)。また、これより以前にも、商標「ORGANIC BALM」が指定商品「化粧品」との関係において、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし、かつ商品の品質の誤認を生ずるおそれもないものであると判断されている(乙第12号証)。 したがって、本件商標中「BALM」の文字は品質表示であるので、本件商標の要部は「LOVE」の部分であり、引用商標と類似するという請求人の主張は失当である。 (8)以上に詳述したように、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、請求人が主張する無効理由はいずれも理由がない。 第4 当審の判断 1 本件商標について (1)本件商標は、上記第1のとおり、標準文字で「LOVE BALM」の文字を一体的に表してなり、該文字に相応して「ラブバーム」の称呼を生じるものである。 (2)「BALM」及び「バーム」について ア 請求人提出の証拠、同人の主張及び職権調査によれば、次のとおり本件商標の査定日前の事実を認めることができる。 (ア)「化粧品の表示に関する公正競争規約」を運用する機関として昭和47年に公正取引委員会の承認を受けて設立された、化粧品公正取引協議会が設定した化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則の別表1の備考には、「5.種類別名称等に製品の剤型を表す名称をつけることができる。剤型名称は、固形(ソリッド)、プレスト、・・・ジェル、練り(バーム)、マッド・・・等をいう。」の記載がある(甲第9号証及び職権調査(化粧品公正取引協議会のウェブページ))。 (イ)雑誌「VoCE」「美的」及びムック「@cosme official mook」において、「リップ バーム(リップバーム)」「バーム コンフォール」「マッサージ バーム」「ウォームクレンジングバーム」「ボディバーム」「バニーバームリップグロス」「ナイトバーム」が紹介され、それらの商品の容器にはそれぞれ「MASSAGE BALM」「WARM CLEANSING BALM」「BEAUTY BALM」「organic lip and cheek balm」「LIP BALM」「CLEANSING BALM」と表示されている。 また、商品説明として、「マッサージを、より楽しいものにしてくれるバームが・・・」「このバームのように・・・」「・・・このスクラブとバーム。」「・・・うるおいとツヤを与える濃厚バーム・・・」「ピタッと密着するバームで・・・」「・・・うるおいのヴェールを作り上げるふたつのバーム・・・」「バームのようなソリッドオイル。」などの記載がある。(甲第10号証ないし甲第17号証) イ 甲第18号証ないし甲第23号証は、本件商標の査定後に発行又はプリントアウトされた雑誌「美的」又はウェブページであるが、それらには、「アイバーム」「全身用バーム」「エクストラ アイ バーム(EXTRA Eye Balm)」「エクストラ リペア モイスチャライジング バーム(Extra Repair Moisturizing Balm)」「エクストラ バーム リンス(EXTRA Balm Rinse)」及び「エッセンシャル バーム」が紹介されているほか、「齋藤薫“バーム”を主役にした軟膏美容」をタイトルとするコラムには、「バームって何? というなら、化粧品のバーム=軟膏と捉えていい。・・・バーム自体が比較的広い意味をもち、明快な定義はしにくいが、“鎮痛剤”とか“心の慰め”、あるいは“香膏”といった意味もあるように・・・。“癒しの塗り薬”という意味に訳してもいいだろう。」などの記載がある。 ウ 上記ア及びイによれば、「BALM」及び「バーム」の文字が軟膏状の化粧品について使用されていることは認められるものの、「BALM」の文字が本件審判の請求に係る指定商品(本件商品)について、商品の品質を表示するものとして使用されているとは認められないと判断するが相当である。 そして、化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則の別表1の備考5.で種類別名称等に製品の剤型を表す名称をつけることができるとされている剤型名称は「BALM」ではなく「バーム」であること、種類別名称等とは「種類別名称」及び「代わるべき名称」であること(同規則別表1の備考3.)、種類別名称とは「一般消費者が商品を選択するための基準となる名称」であること(同規則第2条)、雑誌等に記載されている「リップ バーム」及び「MASSAGE BALM」などの記載は「バニーバームリップグロス」「BEAUTY BALM」(甲第13号証)を除き、いずれもその記載全体として商品名を表わすように表示されていること(甲第10号証ないし甲第12号証、甲第14号証ないし甲第22号証)、商品説明における「バーム」の文字は当該商品を示すものとして用いられていること、提出された証拠が数社の雑誌及びウェブページなどの限られていること(甲第10号証ないし甲第22号証)及び「balm(バーム)」の語が「バルサム、香油、芳香、鎮痛剤、慰め」などを意味する語であって(甲第23号証、リーダーズ英和辞典(株式会社研究社発行))、一般に親しまれた語とは認め難いことを総合してみれば、「BALM」及び「バーム」の文字は、本件審判の請求に係る指定商品の取引者・需要者をして、これらが「MASSAGE BALM」「LIP BALM」「マッサージバーム」「リップバーム」などのように用いられている場合は該文字全体として商品の名称として認識されるとしても、「BALM」及び「バーム」の文字が「軟膏状(バーム状)の商品」であるとの商品の品質を表示したものと認識されるものとも認められないと判断するのが相当である。 (3)そして、本件商標は、それ自体が「LOVE BALM」の文字を一体的に表してなるものであること、及びその称呼「ラブバーム」が5音という短い称呼であることをあわせみれば、これを本件審判の請求に係る指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者をして、該文字全体が一体不可分のものとして認識されるものというべきである。 (4)なお、請求人は、本件商標はその構成中「BALM」の部分が本件審判の請求に係る指定商品の品質を表すに過ぎず自他商品識別標識としての機能を有しないからその要部は「LOVE」である旨主張している。 しかしながら、「BALM」の文字が品質を表示したものとは認められないものであり、本件商標は「LOVE BALM」の文字全体が一体不可分のものとして取引者・需要者に認識されるものであること上述のとおりであるから、請求人のかかる主張は採用できない。 (5)してみれば、本件商標は、「LOVE BALM」の構成文字全体が一体不可分のものであって、「ラブバーム」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものといわなければならない。 2 引用商標について 引用商標は、上記第2 2のとおり、「LOVE」又は「Love」若しくはこれらと「ラブ」の文字からなるものであり、いずれも該文字に相応して「ラブ」の称呼、「愛」の観念を生じるものである。 3 本件商標と引用商標の類否について 本件商標と引用商標とを比較すると、両者は、外観においては「BALM」の文字の有無という明らかな差異を有するから、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 称呼においては、本件商標の称呼「ラブバーム」と引用商標の称呼「ラブ」とは、語尾における「バーム」の音の有無という差異を有し、該差異が5音と2音という共に短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 また、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれはない。 してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 さらに、他に本件商標と引用商標が類似するというべき事情も見いだせない。 したがって、本件審判の請求に係る指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似の商品であるとしても、本件商標と引用商標とは商標において非類似のものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものということはできない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求に係る指定商品について商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 (1)引用商標2 (2)引用商標3 (3)引用商標5 (色彩については原本参照) |
審理終結日 | 2012-07-18 |
結審通知日 | 2012-07-23 |
審決日 | 2012-08-06 |
出願番号 | 商願2011-30564(T2011-30564) |
審決分類 |
T
1
12・
26-
Y
(X03)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 幸一 |
特許庁審判長 |
森吉 正美 |
特許庁審判官 |
梶原 良子 板谷 玲子 |
登録日 | 2011-10-28 |
登録番号 | 商標登録第5446929号(T5446929) |
商標の称呼 | ラブバーム、ラブ |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 竹内 耕三 |
代理人 | 向口 浩二 |