• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 10609
管理番号 1258347 
審判番号 取消2011-300252 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-03-07 
確定日 2012-06-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第2138964号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2138964号商標(以下「本件商標」という。)は、「CINECITTA」の欧文字と「チネチッタ」の片仮名を上下二段に横書きしてなり、昭和61年11月7日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年5月30日に設定登録され、その後、同11年1月12日及び同20年12月9日の2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
そして、指定商品については、同21年4月1日に第6類「金属製彫刻」、第9類「映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテ-プ,電子出版物」、第16類「印刷物,書画,写真,写真立て」、第19類「石製彫刻,コンクリ-ト製彫刻,大理石製彫刻」及び第20類「額縁,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻」を指定商品とする書換登録がなされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第9類「電子出版物」及び第16類「印刷物」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、第9類「電子出版物」及び第16類「印刷物」について継続して3年以上日本国内において使用されていないのみならず、本件商標を使用していないことについて何ら正当な理由が存することも認められないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、本件商標には、他人に専用使用権を設定、若しくは通常使用権を許諾した形跡はなく、また、登録されていない通常使用権者が本件審判請求の日前3年以内に、日本国内で上記商品について本件商標を使用しているとの事実も見いだせない。
(2)答弁に対する弁駁
ア 定期刊行物への使用について(乙2ないし乙17)
(ア)商標の同一性
登録商標が二段併記の構成からなる商標であって、使用商標が一方の段のみからなる商標であった場合、使用商標が登録商標と社会通念上同一の商標と認められるためには、上段と下段の各部が観念において同一であることが必要とされる(審査便覧53-01)。加えて、多くの審決で、登録商標と使用商標における称呼の同一性も重視されている。
ここで本件についてみると、本件商標とその使用商標である「CINECITTA’」に含まれる「CINECITTA」という語は、被請求人も主張のとおり、造語であって伊和辞典等の辞書に一般的に掲載されている用語ではない。また、日本において、イタリア語は、料理の分野等で一部知られた語彙があるものの、英語のように広く一般的に親しまれた言語とはいえないから、「CINECITTA」及びその音訳である「チネチッタ」から常に同じように「映画都市」の観念が生じるとは考え難い。称呼についても、「CINECITTA」は、ロ-マ字読みが難しいため、英語風に「シネシッタ」と読まれると考えられる。一方、「チネチッタ」からは、「CHINECHITTA」の綴りが認識される可能性が高そうであり、「CINECITTA」と結びつけられるか疑問である。
また、使用商標は、「CINECITTA’」であり、「CINECITTA」の末尾に「’」が加えられている。同書、同大、等間隔の大文字による列の右側上に配置された「’」は、小さい故にインパクトがあり、「’」によっても、使用商標は、本件商標と異なる外観上の印象をもつものと考える。
したがって、使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。
なお、本件商標中、下段の片仮名「チネチッタ」からは、被請求人に係る川崎市所在のシネマコンプレックスとの観念が生じ得る。しかし、欧文字「CINECITTA」については、映画に詳しい需要者間において、上記のシネマコンプレックスの観念が生じる可能性があるほか、イタリア国ロ-マ郊外に所在するヨ-ロッパ最大の映画撮影所との観念が生じる可能性がある。
(イ)商標の使用態様
被請求人は、定期刊行物において、題号「シネコンウォーカー」の文字列の下に併記された使用商標が商標として使用されていると主張している。
乙第2号証ないし乙第16号証を見ると、表紙上部に大きな活字で「シネコン」の文字、また、その右下、文字「ン」の辺りに小さな活字で「ウォーカー」の文字が重ねて記されている。この「シネコンウォーカー」が本件定期刊行物の商標として使用されていることについて異論はない。一方、使用商標についてみると、題号かつ商標である「シネコン/ウォーカー」の下に6分の1程度の大きさで記載されており、「EDITION」の文字と共に用いられている。また、「チネチッタ版」との文字も添えられている。ここで、文字列「CINECITTA’」が「シネコン」の大きな活字に比して付記的に記されていること、「EDITION」(版)がよく知られた英単語であること、日本語訳「チネチッタ版」の文字が見えることから、この態様より感じとれるのは、本件定期刊行物の題号は、「シネコンウォーカー」であり、これが商標であり、その「CINECITTA(チネチッタ)」版であると考えられる。つまり、「シネコンウォーカー」には種類があり、本件定期刊行物は、そのうちの「チネチッタ版」であり、「CINECITTA’」に関する内容や情報が掲載されている版であると理解されるものである。また、中表紙記載の「CINECITTA’」についても、「CINECITTA’CLOSE UP[チネチッタ・クローズアップ]」と記されていることから、出所を表示する商標というよりむしろ本件定期刊行物の内容を示唆する表示と認識される。
よって、使用商標は、本件定期刊行物の商標として使用されているものではない。
(ウ)小括
上記より、乙第2号証ないし乙第17号証によっては、被請求人又は通常使用権者による商標法上の商標の使用があったとはいえない。
イ 映画パンフレットの使用について(乙18ないし乙23及び検1)
(ア)商標の同一性
商品包装用袋に記された使用商標は、株式会社角川メディアハウス(以下、「角川メディアハウス」という。)発行の本件定期刊行物に係る本件使用商標と同様の理由で、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。
(イ)包装用手提げ袋について
映画パンフレットヘの本件商標の使用の主張において、乙第19号証、乙第20号証及び検第1号証の物件が証拠として提出されている。しかし、現実に映画パンフレットが販売された際に乙第19号証及び検第1号証に係る手提げ袋に収納されたか、又は売店の店員によって収納されている事実を示す写真等の客観的な証拠が提出されていない。
(ウ)小括
上記より、乙第19号証、乙第20号証及び検第1号証によっては、被請求人又は通常使用権者による商標法上の商標の使用があったとはいえない。
ウ 結語
したがって、被請求人提出に係る証拠によっては、本件審判請求登録前3年以内に本件商標が指定商品「印刷物」について使用されていたとはいえない。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第23号証及び検第1号証を提出した。
(1)被請求人及びシネマコンプレックス「CINECITTA(チネチッタ)」の沿革
被請求人は、大正11年に創業し、昭和11年ごろに神奈川県川崎市で映画館「川崎銀星座」を開業した。昭和62年、当時日本では、まだ珍しかった複数の封切映画館を一箇所に集積したシネマコンプレックスとして「CINECITTA(チネチッタ)」を開業し、今日に至る。シネマコンプレックス「CINECITTA(チネチッタ)」は、平成22年4月から平成23年3月までの年間観客動員数が117万3千人、同時期の興行収入が14億5千万円を達成しており、我が国でも有数の大規模シネマコンプレックスとして映画ファンの間で広く親しまれている。
なお、名称である「CINECITTA(チネチッタ)」は、「CINE」がイタリア語で「映画」の意味を有する接頭語であり、「CITTA」が同じく「都市」を意味する語であり、全体として「映画都市」の意味を有する(乙1)。
(2)角川メディアハウスによる「印刷物」についての使用事実
ア 総論
被請求人の通常使用権者である角川メディアハウスは、被請求人の許諾に基づき、本件商標と社会通念上同一の商標を同社が発行する定期刊行物に使用している。
すなわち、乙第2号証ないし乙第16号証は、平成22年1月9日ないし平成23年3月12日に角川メディアハウスが発行した定期刊行物「月刊シネコンウォーカー チネチッタ」である。角川メディアハウスは、映画に関する一般的な情報・話題とともに、シネマコンプレックス毎に(例えば、チネチッタ、109シネマズ、ユナイテッド・シネマ等)お得な情報を掲載した別異の「シネコンウォーカー」を発行しており、本件定期刊行物は、そのうちの一つである。
そして、本件定期刊行物には、表紙及び中表紙に商標「CINECITTA’」が付されている。
イ 本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標である
本件商標は、上段に「CINECITTA」の欧文字を、下段に「チネチッタ」の片仮名を二段に分ち書きしてなる商標であるのに対して、本件使用商標は、「CINECITTA’」の欧文字よりなるものである。そして、「CINECITTA’」は、昭和62年に開業したシネマコンプレックスの名称として「チネチッタ」と呼ばれて全国でもトップクラスの観客動員数と興行収入を達成している周知著名な映画コンプレックスの名称でもある。そうすると、本件使用商標と本件商標からは、それぞれ「チネチッタ」の称呼が生じ、「映画都市」という同一の観念が生じるから、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。
なお、本件使用商標には、末尾に「’」が付加されているが、「’」の記号からは自他商品識別標識として有意な称呼又は観念は何ら生じない。したがって、末尾に「’」が付加された本件使用商標も、本件商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えた商標にとどまるものとして保護されることとなる(パリ条約第5条C(2)参照。)。
さらに、本件定期刊行物の表紙では、本件使用商標「CINECITTA’」の下に「チネチッタ版」の商標が併記されているが、「版」の文字部分は、印刷物に関しては、自他商品識別力を有しない文字である。そうすると、自他商品識別の機能を発揮するのは、専ら「CINECITTA’」及び「チネチッタ」の文字部分であるから、この点においても、本件使用商標は、「CINECITTA」の欧文字と「チネチッタ」の片仮名を上下二段に分かち書きしてなる本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。
ウ 本件定期刊行物は商標法上の「商品」にあたる
本件定期刊行物は、シネコンでチケットを購入した利用者に無料で配布するとともに、一般の市場でも定価200円で販売されており、また、乙第2号証ないし乙第16号証の奥付のページに「ご要望におこたえして『月刊シネコンウォーカー』の年間定期購読の受付をしております。ご希望のシネコン版をご自宅又は指定場所に毎月全国どこにでも直接お届けします。」などと記載されているとおり、年間定期購読の募集もされている。
さらに、本件定期刊行物は、現に、定期購読者に対して販売されているものであるから(乙17)、本件定期刊行物が商標法上の「商品」に該当することは明らかである。
エ 本件使用商標は商標として使用されている
本件定期刊行物には、題号として「シネコンウォーカー」の文字が付されているが、その下に併記された本件使用商標も、当該定期刊行物が被請求人又は被請求人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であることを識別し、見分けるための表示として機能する。
よって、本件使用商標は、本件使用商標が付された本件定期刊行物を他の同種商品から識別するための商標として使用されているものである。
オ 角川メディアハウスは、被請求人の通常使用権者である
乙第17号証に記載のとおり、角川メディアハウスは、被請求人の通常使用権者であり、被請求人の許諾の下で本件商標を本件定期刊行物について使用している。
カ 小括
以上より、少なくとも本件審判の請求の登録前3年以内にあたる平成22年1月9日ないし平成23年3月12日の間に、被請求人から本件商標の使用許諾を受けた通常使用権者である角川メディアハウスが、本件商標と社会通念上同一である本件使用商標を本件定期刊行物に付して、譲渡した事実があることは明らかである。
(3)株式会社チネチッタによる「映画パンフレット」についての使用
ア 総論
被請求人の通常使用権者である株式会社チネチッタは、被請求人の許諾に基づき、本件商標と社会通念上同一の商標を同社が販売する「映画パンフレット」の包装に付して使用している。
イ グッズショップにおける商品「映画パンフレット」の販売
株式会社チネチッタは、シネマコンプレックス「CINECITTA(チネチッタ)」内において営業している小売店舗「CITTA’GOODS SHOP」において「上映中パンフレットや、キャラクタ-グッズ、前売券や、往年の名作から近年のヒット作までさまざまな映画のパンフレット、ポストカ-ド、DVD、サウンドトラックなど」(乙18)を品揃え販売しているが、中でも、映画のパンフレットは、同小売店舗の売上高の大半を占める主力商品である。そして、同小売店舗で販売される印刷物「映画パンフレット」の包装用手提げ袋に本件商標と社会通念上同一の商標を付している(乙19、検1)。
シネマコンプレックスに来訪する利用者は、映画を鑑賞するのみでなく、観覧した映画や、過去の名作映画のパンフレットを購入することが多い。また、株式会社チネチッタが運営するシネマコンプレックス「CINECITTA(チネチッタ)」は、映画館のみならず、小売店、ゲ-ム施設、レストラン、ヘアサロン等を集積した総合娯楽施設であり、映画鑑賞を目的としない来訪者も多く、小売店舗「CITTA’GOODS SHOP」は、そのような来訪者も対象とする小売店舗であって、映画鑑賞者に限定された小売店舗ではないから、映画館に附属した単なる売店ではない。そして、小売店舗「CITTA’GOODS SHOP」における映画パンフレットの売上高は、同店の売上げ全体の大半(約55%)を占めており、平成22年1月から平成23年2月までの14ヶ月間の間に販売された映画パンフレットは13万6,531部にのぼり、その合計売上高は95,617,757円であった。
ウ 包装用手提げ袋への本件商標の使用
小売店舗「CITTA’GOODS SHOP」で販売された映画パンフレットは、乙第19号証(検1)の包装用手提げ袋に包装して購入者に引き渡されているところ、当該包装用手提げ袋には、本件使用商標が付されている(乙20)。
ところで、標章について使用とは、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)及び「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示・・・する行為」(同項第2号)を含むから、株式会社チネチッタが、自己が販売する商品「映画パンフレット」を、本件商標を付した包装用手提げ袋に包装して販売する行為は、商品「映画パンフレット」についての本件商標の「使用」に当たる。
本件の場合は、株式会社チネチッタが経営する小売店舗「CITTA’GOODS SHOP」において、当該小売店舗の販売員が、本件商標を表示した包装用手提げ袋(乙19、検1)に「映画パンフレット」を収納した時点で、当該商品「映画パンフレット」について本件商標の「使用」があったということになる。
エ 本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に使用された
以下の事実から、本件審判請求の登録前3年の間に、株式会社チネチッタが経営する小売店舗「CITTA’GOODS SHOP」において、本件商標の使用行為がされていたことが十分に推認される。
第一に、小売店舗「CITTA’GOODS SHOP」は、平成14年11月より神奈川県川崎市内のシネマコンプレックス「CINECITTA(チネチッタ)」内において営業しており、今日においても営業が継続していること(乙18及び20)。
第二に、本件包装用手提げ袋の現物が存在し(乙19及び検1)、本件包装用手提げ袋が株式会社富士カガワによって平成21年12月19日に100,000枚、平成22年4月21日に合計98,300枚、株式会社チネチッタに納品された事実を示す取引書類が存在すること(乙20の資料19及び20)。
以上の事実によれば、少なくとも、本件審判請求の登録前3年の間に該当する平成22年1月から平成23年2月の期間中、株式会社チネチッタが経営するシネマコンプレックス「CINECITTA(チネチッタ)」内の小売店舗「CITTA’GOODS SHOP」において、株式会社チネチッタが商品「映画パンフレット」を販売し、同期間中に同店で販売された映画パンフレット及び古パンフレットが、乙19の包装用手提げ袋に包装され、購入者に引き渡された事実を優に推認することができる。
オ 本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一である。
本件商標は、上段に「CINECITTA」の欧文字を、下段に「チネチッタ」の片仮名を二段に分ち書きしてなる商標であるのに対して、本件使用商標は「CINECITTA’」の欧文字よりなるものである。そして「CINECITTA’」は、昭和62年に開業したシネマコンプレックスの名称として「チネチッタ」と呼ばれて全国でもトップクラスの観客動員数と興行収入を達成している周知著名な映画コンプレックスの名称でもある。そうすると、本件使用商標と本件商標からは、それぞれ「チネチッタ」の称呼が生じ、「映画都市」という同一の観念が生じるから、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。
カ 株式会社チネチッタは、被請求人の通常使用権者である
株式会社チネチッタは、被請求人の完全子会社であって、被請求人が率いる企業グループ「チッタグループ」のグループ会社であり、被請求人の許諾の下に本件商標を「映画パンフレット」を含む印刷物について使用している被請求人の通常使用権者である(乙23)。
キ 小括
以上より、少なくとも、本件審判の請求の登録前3年以内にあたる平成22年1月から平成23年2月の期間中に、被請求人から本件商標の使用許諾を受けた通常使用権者である株式会社チネチッタが、本件商標と社会通念上同一である本件使用商標を付した包装用手提げ袋に商品「映画パンフレット」を包装して、これを譲渡し、引き渡した事実があることは明らかである。
(4)結論
以上より、本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標が、本件審判の請求の登録前3年以内に、被請求人から本件商標の使用許諾を受けた通常使用権者である角川メディアハウスの販売にかかる商品「定期刊行物」に使用され、かつ、同じく被請求人から本件商標の使用許諾を受けた通常使用権者である株式会社チネチッタの販売に係る商品「映画パンフレット」の包装用手提げ袋に付され、使用されたことは明らかである。

4 当審の判断
(1)事実認定
ア 被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)乙第2号証ないし乙第16号証について
乙第2号証ないし乙第16号証は、雑誌のタイトルを「シネコンウォーカー」とする2010年1月から2011年3月の定期刊行物である。
そして、本件定期刊行物の表紙には、いずれも、「シネコン」のタイトル文字の下に副題として「CINECITTA’」(以下「本件使用商標」という。)及び「チネチッタ版」の文字が併記されている。また、本件定期刊行物の奥付ともいう頁には、「定期購読のご案内」等の記載があり、裏表紙には、「定価:200円(本体価格)」の記載があって、この雑誌が販売物であることが認められる。そして、発行者には、「(株)角川メディアハウス」の記載がある。
(イ)乙第17号証について
乙17号証は、平成23年5月23日付けの「角川メディアハウス」のエンタテイメント局 局長「高須正道」氏による「陳述書」である。
これには、本件商標について、「角川メディアハウス」は、平成17年5月より商標権者から、「印刷物」について使用することを許諾された通常使用権者である旨の記載がある。
イ 上記アによれば、本件使用商標が表示された雑誌「シネコンウォーカー」が審判の請求の登録前3年以内である2010年1月から2011年3月に「角川メディアハウス」によって定期的に発行され、販売されていたものと認め得るものである。
(2)本件使用商標について
本件商標は、「CINECITTA」の欧文字と「チネチッタ」の片仮名よりなるものであるところ、「チネチッタ」の片仮名部分は、「CINECITTA」の読みを特定したものと認められるものであり、また、該欧文字部分をイタリア語風に読んだ場合には、「チネチッタ」と称呼されることに格別困難なところはないものというべきである。
そして、本件使用商標は、その下に[チネチッタ版]と併記されていることからも、「チネチッタ」と称呼されている取引の実情があるものということができ、本件使用商標よりは、「チネチッタ」の称呼を生ずるから、本件商標と本件使用商標は、同一の称呼を生ずるものといい得るものである。
また、本件使用商標には、末尾に「’」が付加されているが、これは、単なる四角い点で表されており、同一のつづりの「CINECITTA」の識別性に影響するようなものとはいえないものである。そして、観念においては、特定の観念が生じない本件商標と本件使用商標とは、観念において相違する点はないものである。
してみれば、本件商標と本件使用商標とは、「片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼(及び観念)を生ずる商標」であるといわざるを得ない。
さらに、請求人は、「EDITION」の文字が付記されており、日本語訳「チネチッタ版」との記載があるため、本件定期刊行物について商標として使用されているものといえない旨述べているが、「EDITION(版)」は、印刷物に関しては、一般的に使用される付記的部分であるところ、これが直ちに本件使用商標が商標として機能しないということはできない。
したがって、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標であるといい得るものである。
(3)本件商標の使用権者について
被請求人の主張及び上記(1)イにおける「陳述書」によれば、「角川メディアハウス」は、商標権者から本件商標の使用の許諾を受けた通常使用権者であると認められるものである。
(4)まとめ
以上によれば、本件商標は、被請求人の主張するその余の点について論及するまでもなく、審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者によってその請求に係る指定商品中「印刷物」に含まれる「雑誌」について使用されたものであって、商標法第2条第3項第2号の商品に標章を付したものを譲渡する行為があったものと認め得るものである。
したがって、本件商標の指定商品中、本件審判の請求に係る第9類「電子出版物」及び第16類「印刷物」についての登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2012-01-17 
結審通知日 2012-01-20 
審決日 2012-01-31 
出願番号 商願昭61-117386 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (10609)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
前山 るり子
登録日 1989-05-30 
登録番号 商標登録第2138964号(T2138964) 
商標の称呼 チネチッタ 
代理人 田中 克郎 
代理人 高柴 忠夫 
代理人 志賀 正武 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 渡邊 隆 
代理人 鈴木 博久 
代理人 千葉 尚路 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 廣中 健 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ