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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X30
管理番号 1256604 
異議申立番号 異議2011-900092 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-03-09 
確定日 2012-03-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第5388174号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5388174号商標の指定商品中「洋菓子」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5388174号商標(以下「本件商標」という。)は、「パティシエリーモンシュシュ」の文字を横書きしてなり、平成22年9月1日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同23年2月4日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、次の(1)の登録商標を引用し、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は同法第43条第の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人が引用する商標
申立人が引用する登録第1474596号商標(以下「引用商標」という。)は、「MONCHOUCHOU」の欧文字と「モンシュシュ」の片仮名を2段に横書きしてなり、昭和52年6月29日に登録出願、同56年8月31日に設定登録されたものであり、その商標権は、第30類「菓子,パン」を指定商品として現に有効に存続しているものである。
(2)具体的な理由
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一であるところ、本件商標中の「パティシエリー」の文字部分は、指定商品との関係から自他商品識別機能を有しないものであるから、本件商標の要部は、「モンシュシュ」の文字部分と認められ、該文字部分と引用商標から生ずる外観、称呼、観念は、いずれも同一又は類似するものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。

3 本件商標の取消理由
商標権者に対して、平成23年10月27日付けで通知した本件商標の取消理由は、別掲のとおりである。

4 商標権者の意見
(1)本件商標と引用商標の類否について
商標の類否は、商標の全体を一体として観察する全体観察が原則であり、商標の構成部分の一部を抽出して類否の判断をする要部観察などは、その構成部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合、それ以外の構成部分からは出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合以外は認められるべきではなく(「つつみのおひなっこや」事件、最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決)、本件商標についても、構成各文字は、同書、同大で外観上まとまりよく、切れ目なく一体的に表されていること、「モンシュシュ」の文字は「私のお気に入り」という意味の一般的なフランス語(乙第4号証)であり、洋菓子などの店名としても比較的多く使用されており(乙第5号証、乙第6号証)、格別強い印象を与える文字ではないこと、これより生ずると認められる称呼も格別冗長というべきものではない。さらに、過去の審判決例(乙第7号証ないし乙第49号証、乙第65号証ないし乙第68号証)からみても、たとえその構成中の「パティシエリー」の文字が「洋菓子店」を連想させる場合があり、自他商品の識別標識としての機能が希薄であるとしても、「モンシュシュ」の文字部分の識別力も同様に弱いものであるから、本件商標は、前記のとおり一体的に表された構成にあっては構成全体をもって洋菓子店の名称を表すものと認識し、把握されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼、外観及び観念において顕著に相違することから、互いに非類似の商標というべきである。
(2)取引の実情について
本件商標は、商標権者の洋菓子店の店舗名として使用されており、また、商標権者の著名な「堂島ロール」(商標法第3条2項により商標登録。乙第51号証)を販売する洋菓子店として全国的に広く知られており(乙第50号証、乙第52号証ないし乙第64号証)、その著名性の程度は高いというべきである。
このような本件商標の著名性にかんがみれば、本件商標が「洋菓子」に使用される場合、需要者によって、商標権者の「堂島ロール」を始めとする洋菓子を販売する店舗「パティシエリーモンシュシュ」として理解されるというべきである。
したがって、本件商標が「洋菓子」について使用された場合、引用商標と商品の出所について誤認、混同のおそれはなく、よって、両商標は非類似というべきである。
(3)まとめ
上述のとおり、本件商標は、外観、観念及び称呼のいずれの点からも、引用商標とは非類似の商標というべきである。また、仮に、本件商標から「モンシュシュ」の称呼が生じる場合があるとしても、引用商標とは外観、観念において顕著な相違点を有し、また、本件商標は洋菓子店の名称として需要者に広く知られているなどの具体的取引の実情を考慮すれば、本件商標が「洋菓子」について使用された場合であっても、引用商標と商品の出所について混同を生ずるおそれがないことは明からである。
したがって、本件商標は、引用商標に類似する商標とはいえない。

5 当審の判断
(1)本件商標について通知した上記3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、その指定商品中「洋菓子」については商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわなければならない。
また、本件登録異議申立に係るその余の指定商品については、その登録を取り消すべき理由があるものと認めるに足る証拠は見いだせない。
(2)取消理由に対する商標権者の意見について
ア 商標権者は、商標の類否は商標の全体を一体として観察する全体観察が原則であって、本件商標はその構成文字が同書、同大で外観上一体的に表されていること、「モンシュシュ」の文字は洋菓子などの店名として比較的多く使用され格別強い印象を与える文字ではなく識別力が弱いものであること、本件商標の構成文字全体から生じる称呼も格別冗長というべきものではないこと、及び過去の審判決例から、本件商標は、その構成全体をもって洋菓子店の名称を表すものと認識し、把握されるとみるのが相当である旨主張している。
しかしながら、商標権者が提示する洋菓子・パン店の店舗名としての使用例(乙第5号証)によっては「モンシュシュ」が「洋菓子」について識別力が弱いとものというには足りず、また、本件商標全体から生じる「パティシエリーモンシュシュ」の称呼は短いものではなく、かつ「パティシエリー」と「モンシュシュ」に区切るように発音されるというのが自然であり、さらに、商標の類否の判断は査定時又は審決時における取引の実情を勘案し対比される商標について個別具体的に判断されるべきものであるから、本件商標の構成文字が同書、同大で外観上一体的に表されているとしても、取消理由通知書に記載したように「パティシェリー」「パティシエリー」が使用されている実情からすれば、上述のとおり判断するのが相当である。
イ また、本件商標は、商標権者の洋菓子店の店舗名として使用されており、商標権者の著名な「堂島ロール」を販売する洋菓子店として全国的に広く知られておりその著名性の程度は高い旨主張している。
しかしながら、「堂島ロール」の著名性と本件商標「パティシエリーモンシュシュ」の著名性は別のものであるし、また、商標権者の洋菓子店「パティシエリーモンシュシュ」を紹介する書籍・雑誌などについての証拠(乙第52号証ないし乙第64号証)は、その多くが著名と認められる「堂島ロール」の文字とともに記載されており、さらには「パティシェリーモンシュシュ」と表示されているものもあるから、これらをもって本件商標が商標権者の洋菓子店「パティシエリーモンシュシュ」を表示するものとして需要者の間で広く認識されているものとはいえないと判断するのが相当である(なお、乙第62号証は本件商標が確認できない。)。
ウ したがって、商標権者の上記主張はいずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、その指定商品中「洋菓子」については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
また、その余の指定商品については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、取り消すべき理由があるものとは認められるないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

【別掲】
1 本件商標
(1)本件登録第5388174号商標(以下「本件商標」という。)は、「パティシエリーモンシュシュ」の片仮名を横書きしてなり、平成22年9月1日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同23年1月17日に登録査定され、同年2月4日に設定登録されたものである。 (2)申立人提出の甲各号証によれば、本件商標の指定商品中「洋菓子」を取り扱う業界においては、「ケーキ、ケーキ屋」などの意味を有する仏語「patisserie」(「a」の文字にはアクサン・シルコンフレクスが付されている。)は、その表音を「パティスリー」「パティセリー」「パティシェリー」などと表記され、これらの文字は、いずれも他の語に冠し洋菓子店の名称として用いられているといえる(甲第4号証ないし甲第7号証)。
また、甲第7号証及び甲第8号証中の別記1の記載によれば、「パティシェリー」の文字(語)は、本件商標の登録査定の日前から、「洋菓子」を製造販売する事業者をして「パティシェリー○○○」のようにその店舗名の冒頭に用いられ、当該店舗が「洋菓子店」であることを表すものとして普通に使用され、かつ、需要者をして「洋菓子店」であることを表したものと認識されているものと判断するのが相当である。
さらに、仏語「patisserie」(「a」の文字にはアクサン・シルコンフレクスが付されている。)の表音の片仮名表記の一つと認められる「パティシエリー」の文字についても、別記2のとおり「パティシェリー」と同様の意味を表示するものとして使用されている事例があることからすれば、「パティシエリー」も「パティシェリー」と同様に「洋菓子店」であることを表したものと認識されるというのが相当である。
(3)そして、本件商標の指定商品中には「洋菓子」が含まれている。
そうすると、「パティシエリーモンシュシュ」の文字からなる本件商標は、これをその指定商品中「洋菓子」について使用するときは、全体として「『モンシュシュ』という名の洋菓子店」のごとき意味合いを認識させるものというのが自然である。
してみれば、本件商標は、その構成中「パティシエリー」の文字は「洋菓子店」であること、すなわち商品の販売地(販売場所)を表したものであって出所識別標識としての称呼、観念が生じないものであり、「モンシュシュ」の文字部分が、洋菓子店を特定し洋菓子の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきである。
そうとすると、本件商標は、その指定商品中「洋菓子」についてはその構成中「モンシュシュ」の文字部分を分離抽出し、他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるものであって、該文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであるから、その構成全体から「パティシエリーモンシュシュ」の称呼、「『モンシュシュ』という名の洋菓子店」の意味合い(観念)を生じるほか、「モンシュシュ」の文字部分に相応し「モンシュシュ」の称呼を生じるといわなければならない(なお、該文字から特定の観念は生じない。)。
2 申立人が引用する商標
(1)申立人が引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「MONCHOUCHOU」及び「モンシュシュ」の文字を2段に書してなり、昭和52年6月29日に登録出願、同56年8月31日に設定登録されたものであり、第30類「菓子,パン」を指定商品として、その商標権は現に有効に存続しているものである。
(2)そして、引用商標は,その構成文字に相応し「モンシュシュ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
3 本件商標と引用商標の類否
本件商標の構成中「モンシュシュ」の文字部分と引用商標とを比較すると、両者は外観において「モンシュシュ」の文字を共通にするものであり、また、称呼において「モンシュシュ」の称呼を同一にするものである。そして、両者は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念においては比較することができず、明瞭に区別することができないものといえる。
してみれば、本件商標の構成中「モンシュシュ」の文字部分と引用商標とは、外観において共通性を有すること、称呼が同一であること及び観念において明瞭に区別できないことを総合してみれば、両者は相紛らわしい類似の商標と判断するのが相当である。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、類似の商標といわなければならず、かつ、本件商標の指定商品中の「洋菓子」は、引用商標の指定商品中の「菓子」の範ちゅうに含まれる商品である。
さらに、本件商標と引用商標とが出所の混同を生じないというべき特殊な取引の実情は見いだすことはできない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、その指定商品中「洋菓子」について商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
したがって、本件商標の登録は、登録異議の申立てに係る指定商品中「洋菓子」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものといわなければならない。
別記1(「パティシェリー」の使用例)
(1)甲第7号証の9
「・・・たくさんのケーキ屋さんがあります。とくにお勧めはパティシェリージュン。」「2006/10/11」の記載。
(2)甲第8号証
ア 7ページ目の「パティシェリー『TOOTH-TOOTH』」「2009/5/17」「このパティシェリー『TOOTH-TOOTH』は、タルトがいっぱい!」の記載。
イ 9ページ目の「2009年3月17日」「パティシェリー ラ プラージュ(La plage)のケーキとエクレア!」「・・・『ラ プラージュ』というケーキ屋さんに行ってきました!」の記載。
ウ 10ページ目の「2010年12月22日」「会津柳津町、パティシェリー塔之坊に行ってきました。」の記載とケーキの写真。
エ 11ページ目の「2008/11/01」「今日で3回目の来店です。いつもながら、駐車場は車でいっぱい、テークアウトは行列、・・・メインのケーキ(今日はいちじくのシフォンケーキにしました)を選び、・・・」「パティシェリーリッチフィールドのコンセプト」の記載とケーキの写真。
オ 12ページ目の「2006年05月25日」「『パティシェリーストーブ』の『bebe』というチーズケーキです。」の記載。
カ 13ページ目の「FEBRUARY 24,2009」「Patisserie Kawamura/パティシェリーカワムラ」「・・・駅近くのパティシェリーにケーキを食べに行きました。」の記載。
キ 14ページ目の「2008年02月04日」「・・・一番好きなのはパティシェリー・ユイ。」「・・・必ず一階に立ち寄りユイさんのケーキを買う。」の記載。
ク 16ページ目の「パティシェリー ラ クレム 本日オープン」「2010年03月19日」「『ラ・クレム』ケーキ屋さんです。」の記載。
ケ 17ページ目の「2010/9/5」「パティシェリー岡本&スイート・ガーデン小浜 オープン」「9月2日に開店した『パティシェリー岡本&スイート・ガーデン小浜』に行ってきました!!」「・・・普通のケーキ屋さんを想像していたのですが・・・店内に入ると入って右手がパン屋さん、左手がケーキ屋さんになってます。」の記載。
コ 19ページ目の「2008年02月17日」「桜川市のケーキ店【パティシェリーイシカワ】」の記載。
別記2(「パティシエリー」の使用例)
甲第8号証の18ページ目の「2006年05月21日」「手土産は私のお気に入りパティシエリー ヨコヤマさんのケーキ」「谷津ロールという絶品のロールケーキは真面目にお勧め」の記載。
異議決定日 2012-02-08 
出願番号 商願2010-68894(T2010-68894) 
審決分類 T 1 651・ 26- ZC (X30)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 薩摩 純一 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 2011-02-04 
登録番号 商標登録第5388174号(T5388174) 
権利者 株式会社モンシュシュ
商標の称呼 パティシエリーモンシュシュ、パティシエリー、モンシュシュ 
代理人 大河原 遼平 
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 
代理人 田中 克郎 
代理人 田中 景子 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 中村 勝彦 

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