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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) X09 |
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管理番号 | 1255304 |
異議申立番号 | 異議2010-900410 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2010-12-24 |
確定日 | 2012-03-13 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5355263号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5355263号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5355263号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成22年2月16日に登録出願、第9類「眼鏡」を指定商品として、同年8月4日に登録査定、同年9月24日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証を提出している。 (1)申立人の使用に係る商標について 申立人である「マツケリー 1849 エッセ ピ ア」は、1849年に創設されたイタリア国の法人であり、プラスチック(アセテート)の企画・製造を主たる業務とし、1942年には、眼鏡部門を創設している(甲6の1ないし甲6の4)。 申立人は、別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び「mazzucchelli」の欧文字を横書きしてなる商標(以下「引用商標2」という。)を申立人の業務に係る「プラスチック(アセテート)」について使用している。なお、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは「申立人商標」という。 (2)商標法第4条第1項第7号について 異議申立人の業務に係る商品(眼鏡フレーム用プラスチック)の出所表示である周知著名な商標「mazzucchelli」と酷似する本性商標「mazzucchelli」を、申立人とは何らの関係も有しない他人である本件商標権者が使用することは、本来自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、申立人の広く知られている商標の著名性にただ乗り(フリーライド)することにより得ようとすることにほかならず、申立人商標に化体した価値を希釈化させるおそれがある。かかる行為は、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反することから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものであるため、取り消されるべきである。 (3)商標法第4条第1項第10号について 本件商標は、申立人の周知商標「mazzucchelli」に類似する商標であって、「眼鏡」と同一・類似する商品について使用をするものであることから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してなされたものであるため、取り消されるべきである。 (4)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、これがその指定商品「眼鏡」に使用された場合、これに接する取引者、需要者に申立人又はこれと緊密な関係にある営業主の業務に係る商品であることを連想、想起させ、その商品の出所について誤認混司を生じさせるものであり(広義の混同のおそれ)、ひいては、本件商標の登録が申立人の周知商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリュージョン)を招来するものといわなければならない。 よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。 (5)商標法第4条第1項第19号について 申立人の商標「mazzucchelli」は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に極めて広く認識されている。そして、本件商標は、申立人の著名商標「mazzucchelli」と類似しており、かつ、不正の目的をもって使用をするものである。 よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。 3 取消理由通知 当審において、平成23年8月12日付けで、商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。 (1)申立人商標の周知・著名性について ア 申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。 (ア)申立人の業務に係る「プラスチック(アセテート)」は、色鮮やかで模様に富んだ独特な風合いのプラスチックであり、眼鏡用フレームやアクセサリーの素材として世界各地において広く使用され、眼鏡用フレームのプラスチック素材として、世界第1位のシェアを占めるに至っており(甲7の1)、眼鏡用フレームの生地の新色の90%以上は、申立人の業務に係るものである(甲8)。 (イ)申立人商標は、我が国においては、少なくとも1997年より継続して「眼鏡フレーム用プラスチック」に使用されており、申立人の商品の日本への輸出売上高は、毎年約1億円を超えており、2002年から2009年までの間における累計額も約18億4000万円に達している(甲22ないし甲30)。 (ウ)申立人の業務に係る商品については、販売店等のウェブページにおいて、以下のように紹介されている。 a 「株式会社キッソオ」のウェブページ中の「現代プラスチック生地事情(KISSO)」において、「今回は、メガネのプラ枠(セル枠とも)の素材に注目します。(株)KISSOは、メガネのメタル材・プラスチック材といった材料を扱う会社。メガネの色々なプラスチック生地を紹介されています。・・・一番のシェアを持っているのがイタリアのマッケリー社です。・・・マッケリー社は、約160年間作ってきた在来の柄が約2万種くらいありますし、・・・」の記載がある(甲7の1ないし3)。 また、同社のウェブページには、「マッケリー社」の特集頁が2003年に開設されており、「MAZZUCCHELLI」の見出しのもとに、「メガネとコスチュームジュエリーの市場において使われる、セルロースアセテートシートの製造で、世界のトップリーダーであるマツケリー社はその業界において製品の差別化をするために最先端技術を活用して、研究開発を行っています。」の記載がある(甲41)。 b 「めがねびと」のウェブページ中の「マッケリー社とは(2)」の記事(2006年4月10日)において、「同社製、セル生地のサンプル。新しいテキスタイルは、さすが世界最高峰の素材メーカーだ。」の記載がある(甲31)。 また、「マッケリー社とは(1)」の記事(2006年4月9日)において、「アラン・ミクリやアイワークスを始めとする多くのブランドを顧客に持つイタリアの生地メーカー、マツケリ社。この会社の生地が、各ブランドの製品となって現れるわけで、マツケリ社の新作生地こそがセルフレームのトレンドを左右するといっても過言ではないのである。」の記載がある(甲38)。 c 「めがね工房ハトヤ」のウェブページ中の「イタリアの名門『マツケリ』」の記事(2007年7月13日)において、「名門『マツケリ社』は創業160年。イタリアの老舗生地(めがねの生地はアセテート)メーカーです。発色が違う、配色が違う。この素材はもはや芸術品です。」の記載がある(甲32)。 d 「カモヤ眼鏡店」のウェブページ中の記事(2007年9月30日)において、「テンプル生地はマッケリ製でとっても綺麗でおしゃれ?です。」の記載がある(甲33)。 e 「eyewearshop 北斗」のウェブページ中の記事(2008年5月31日)において、「イタリアのマツケリ社の生地! ウットリするほどの色あいです。マツケリの生地は本当に発色が綺麗です。」の記載がある(甲34)。 f 「メガネフレームショップ曽我」のウェブページ中の記事(2009年10月23日)において、「イタリア・マツケリー社のきれいな生地を使っていて、丁寧に日本の工場で仕上げをした美しい色と模様と質感が自慢なのです。」の記載がある(甲35)。 g 「眼鏡の新作&人気モデル情報」と題するウェブページ中の記事(2010年1月21日)において、「眼鏡の一流のハウスブランドとして超有名な「アランミクリ」の新作が少量ですが入荷して参りましたので紹介いたします! マツケリー社の色鮮やかな生地を使ったセル部分はやはり最高の仕上がりです!」の記載がある(甲36)。 h 「眼鏡屋ムーラ」のスタッフの「さばえ体験記」の記事(2009年11月22日)において、「・・・美しいプラスチックフレーム生地、と言えばなんといってもイタリアのマツケリ社!!・・・マツケリ社の生地は、その村の産業となっていて、世界中のブランドに愛用されています。・・・」の記載がある(甲37)。 i 「めがね工房Kamuro銀座店」の店員のブログの記事(2008年5月19日)において、「今年はオフ返上で念願のマツケリ社へ視察に行って参りました。マツケリ社とはこの業界で働いている方ならほとんどの方がご存知のプラスチック生地メーカーさんです。今回の新作セルフレーム達の生地もほとんどコチラでつくられたモノです。」の記載がある(甲39)。 j また、サングラスの通信販売においても、商品説明において、「マツケリー社製アセテート」、「マツケリ社製」、「マツケリーの生地」等のように、マツケリ社製の生地が使用されていることを強調した記載がなされていることが認められる(甲42ないし甲47)。 イ 以上の事実からすると、申立人商標は、本件商標の登録出願時には既に、我が国においても、眼鏡フレーム用プラスチックの需要者、取引者の間において広く知られていたばかりでなく、眼鏡やサングラスの一般需要者の間においても相当程度広く知られていたものと認められ、その周知、著名性は登録査定時においても継続していたものということができる。 (2)本件商標と申立人商標との類否について 本件商標は、別掲1のとおり、特徴のある書体をもって「mazzucchelli(「m」の文字は大きく表されている)」の欧文字を表してなるものである。 一方、引用商標1は、別掲2のとおり、特徴のある書体をもって「mazzucchelli(「m」の文字は大きく表されている)」の欧文字を表し、「m」の文字の前部に「1849」の数字を横向きに配した構成からなるものであり、引用商標2は、「mazzucchelli」の欧文字を表してなるものである。 そこで、本件商標と申立人商標の類否についてみるに、本件商標と引用商標1とは、いずれも、特徴のある書体をもって「mazzucchelli(「m」の文字は大きく表されている)」の欧文字を表したものであって、その差異は、「1849」の数字の有無のみである。 しかして、引用商標1の構成中の「1849」の数字は、申立人の創設年を表したものと認められるから、その要部は、欧文字部分にあるものということができる。 そうとすれば、本件商標と引用商標1とは、「m」の文字を大きく表したほぼ同一といえるデザイン態様からなる「mazzucchelli」の欧文字部分を共通にするものであり、外観において酷似する商標といわなければならない。 また、本件商標と引用商標2との類否についても、いずれも、「mazzucchelli」の綴り字を同じくするものであるから、外観において類似するものである。 次に、本件商標と申立人商標との称呼及び観念についてみるに、「mazzucchelli」の欧文字は、英和辞典、仏和辞典、独和辞典等の辞典類には掲載されていない語であり、しかも、その綴り字もこれに類した親しまれた語を想起し得るものでもないことから、これより直ちに一定の称呼及び観念が生ずるものとはいえないが、申立人の提出に係る甲各号証によれば、本件商標の指定商品である「眼鏡」やその素材である「眼鏡フレーム用プラスチック」の商品分野においては、「mazzucchelli」の語は、申立人及び申立人の業務に係る商品を指称するものとして、「マツケリ、マツケリー、マッケリ、マッケリー」の呼び名をもって取引に供されていることが認められる。 そうとすれば、「mazzucchelli」の綴り字からなる申立人商標及び本件商標は、いずれも、「マツケリ、マツケリー」あるいは「マッケリ、マッケリー」の称呼を生じ、「イタリアのmazzucchelli社」の観念を想起せしめるものとみるのが相当である。 してみれば、本件商標と申立人商標とは、外観及び称呼において類似し、観念においても相紛らわしい類似の商標というべきものであり、しかも、申立人商標は、独創性の強い商標であるということができる。 (3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性について 本件商標の指定商品は「眼鏡」であるのに対して、申立人商標は「眼鏡フレーム用プラスチック」について使用されているものであるところ、本件商標の指定商品の「眼鏡」は、いわゆる包括(概念)表示であって、完成品としての「眼鏡」ばかりでなく、眼鏡フレームやテンプル(つる)等の部品及び付属品をも包含する表示であり、かかる点をも考慮すると、本件商標の指定商品と申立人商標が使用されている「眼鏡フレーム用プラスチック」は、完成品と素材との関係にあるものであって、互いに密接に関連するものといわなければならない。 (4)不正の目的について 申立人の提出に係る甲第52号証(鯖江市のホームページ)によれば、鯖江市は、メガネフレームの国内シェアが96%であり、世界シェアでも約20%を占めており、そのため、就業者の6人に1人はメガネ産業に従事しているめがねの町として知られている旨記載されている。また、甲第4号証(商標権者の履歴事項全部証明書)及び甲第5号証(商標権者の求人情報)によれば、商標権者(株式会社アオヤギ)は、その鯖江市に本店の住所を置き、「眼鏡枠の製造販売、眼鏡企画製造及び輸入販売」を事業内容とする企業であって、昭和57年10月21日に設立されたものであることが認められる。 そうとすれば、鯖江市において永年に亘って眼鏡に関わる企画・製造販売・輸入販売の業務を行っている商標権者が、眼鏡フレーム等の素材となる申立人の商品の商標である周知、著名な「mazzucchelli」を全く知らなかったものとは考え難く、しかも、商標権者による本件商標の採択が特殊な文字列からなる造語商標にして特徴のある構成態様からなる引用商標1と偶然に一致したものとは到底認め難いところである。 してみれば、商標権者は、本件商標が申立人の業務に係る商品「眼鏡フレーム用プラスチック」を表示するものとして、イタリアをはじめ我が国における需要者の間に広く認識されている申立人商標と同一又は類似の商標であることを承知のうえ、申立人商標が未だ我が国において登録されていないことを奇貨として、申立人商標に化体されている信用、名声を利用して、不正の利益を得る等の不正の目的をもって、本件商標を先取り的に出願し、登録を受けたものといわざるを得ない。 (5)まとめ したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものといわなければならない。 4 商標権者の意見 商標権者は、上記3の取消理由に対し、何ら意見を述べるところがない。 5 当審の判断 本件商標についてした先の取消理由は、妥当なものと認められる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたといわざるを得ないから、他の申立ての理由について論及するまでもなく、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1) |
異議決定日 | 2011-10-25 |
出願番号 | 商願2010-10964(T2010-10964) |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Z
(X09)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 瀬戸 俊晶 |
特許庁審判長 |
水茎 弥 |
特許庁審判官 |
井出 英一郎 渡邉 健司 |
登録日 | 2010-09-24 |
登録番号 | 商標登録第5355263号(T5355263) |
権利者 | 株式会社アオヤギ |
商標の称呼 | マッツッケッリ、マッズッケッリ、マツケリ、マズケリ |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 村松 由布子 |