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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200912366 審決 商標
不服20051651 審決 商標
不服201029677 審決 商標
不服200915782 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 取り消して登録 X28
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 X28
管理番号 1243311 
審判番号 不服2010-9379 
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-30 
確定日 2011-09-20 
事件の表示 商願2009-19970拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第28類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成21年3月19日に登録出願、その後、指定商品については、原審における同年12月9日付けの手続補正書により、第28類「ゴルフクラブ」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標を構成するゴルフクラブヘッドの特徴は、ゴルフクラブヘッドとしての機能をより効果的に発揮させたり、美感をより優れたものにするなどの目的で同種商品が一般的に採用し得る範囲内のものであって、ゴルフクラブヘッドとして予測し難いような特異な形状や特別な印象を与える装飾的形状であるということはできない。したがって、本願商標は、その指定商品(ゴルフクラブ)に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、ゴルフクラブヘッドの形状そのものと認識するにとどまるというべきである。また、出願人は、商標法第3条第2項の規定に該当する旨主張しているが、使用に係るゴルフクラブ(ゴルフクラブヘッド)には「BBD’s」、「ROYAL COLLECTION」等の平面的な商標が付されており、本願商標とはその構成を異にするものであって、他に本願商標に係る形状のゴルフクラブでこれらの平面的な商標が付されないものが製造販売されたことを認めるべき証拠もない。してみれば、ゴルフクラブが本願商標の形状のみで自他商品の識別力を獲得したものということはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における判断
(1)商標法第3条立体商標における商品等の形状について
ア 商標法第3条第1項第3号は、「その商品の・・・形状(包装の形状を含む。)・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定し、同条第2項は、「前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる」旨を規定している。その趣旨は、同条第1項第3号に該当する商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものとして、商標登録の要件を欠くが、使用をされた結果、自他商品識別力を有するに至った場合に商標登録を認めることとしたものである。
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定するが(同法第2条第1項第5条第2項)、同法第4条第1項第18号において、「商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」は、同法第3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない旨を規定していることに照らすと、商品の立体的形状のうち、その機能を確保するために不可欠な立体的形状については、特定の者に独占させることを許さないものとしたものと解される。
イ 商品の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとする等の目的で選択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識するのであって、商品等の出所を表示し、自他商品を識別するために選択されたものと認識する場合は多くない。
そうすると、客観的に見て、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当することになる。
また、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは、公益上適当でない。
よって、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するものというべきである。
ウ 他方、商標法第3条第2項は、商品の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない立体的形状については、それが商品の機能を効果的に発揮させ、商品の美感を追求する目的により選択される形状であったとしても、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられ、又は使用をされた結果、その形状が自他商品識別力を獲得した場合には、商標登録を受けることができるものと規定している(平成22年(行ケ)第10366号、知的財産高等裁判所平成23年4月21日判決言渡参照)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性について
ア 本願商標の構成について
本願商標は、別掲に示すとおり、ゴルフクラブの一種である、ウッド形(型)のゴルフクラブ(以下「ウッド形ゴルフクラブ」という。)のクラブヘッド(ゴルフボールを打つ部分)の形状を、ソール(クラブヘッドの底部、ゴルフクラブをスイングした際に、芝、地面と接する部分)を上にして、ネック(シャフトを装着する部分)を右手前にして表してなる立体図形である。そして、そのソールの略中央に、あたかも三味線の撥の如き形状の凹みを有するものである。すなわち、三味線の撥の賽尻(撥を手で握る部分の端)をクラブフェース(クラブヘッドのボールを打つ面)側(賽尻は、クラブフェース側から離間した位置にある。)に、三味線の撥の開いた側をバックフェース(クラブフェースの反対側)側(三味線の撥の開いた側は、バックフェースに開口している。)に、凹ませた形状(以下「本願形状」という。)を特徴とするものである。
イ 本願商標の識別性について
本願の指定商品は、上記1のとおり「ゴルフクラブ」である。
そうすると、本願商標は、上記アのとおり、本願形状という特徴を有しているものではあるが、本願商標の構成を全体としてみた場合、ウッド形ゴルフクラブとして容易に看取、認識されるものであり、本願の指定商品「ゴルフクラブ」の一形態と認識されるものといえる。
しかして、本願の指定商品中には、例えば、ドライバー(1番ウッド)、スプーン(3番ウッド)、クリーク(5番ウッド)等のウッド形ゴルフクラブが存する。加えて、請求人の提出に係る証拠によれば、本願の指定商品の業界においては、実に多種多様なソールの形状がゴルフクラブに採択、使用されている事実が見受けられる。
してみれば、本願の指定商品であるゴルフクラブの形状には、種々多様なものが採択、使用されている実情にかんがみると、本願形状の特徴は、その採択の意図はさておき、これに接する取引者、需要者は、それが、商品の機能又は美感をより発揮させるために施されたものと理解し、当該商品の形状を表示したものであると認識するにとどまるものといえる。
そうとすると、本願商標の立体的形状は、本件審決時を基準として、客観的に見れば、本願形状が、特徴的なものであるとしても、未だ商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当であり、ゴルフクラブの形状として、需要者において予測可能な範囲内のものというべきである。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、本願形状の特徴を有するゴルフクラブが、請求人に係る商品以外には、現在に至るまで存在しておらず、特異なものである旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断は、需要者の一般の認識をもって判断されるべきものであり、本願形状に係る特徴を有するゴルフクラブが現実に存するか否かは、同号の要件事実ではない上、本願形状が特徴的であるとしても、上記のとおり、その形状は、ウッド形ゴルフクラブの形状として、需要者において予測可能な範囲内のものというべきである。
(イ)請求人は、本願形状に係る「えぐれた部分」は、極めて斬新、かつ、独自なものであるため、取引者・需要者の目につき易く、強い印象を与えるところ、例えばイチョウの葉っぱの様な印等の何かしらの観念を想起させ、それが識別標識として機能し得る旨主張する。
しかしながら、本願形状が、需要者に何らかの印象を与え、観念を想起させうるものであるとしても、本願形状を有する本願商標は、全体として、ウッド形ゴルフクラブの形状として、需要者に容易に看取、認識されるものというのは上記のとおりであって、そのように認識される以上、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものというのが相当である。
(ウ)請求人は、本願商標は、商品の機能又は美感をより発揮させるためのみではなく、本願商標の独自性により、本願商標に自他商品識別力を持たせることを目的として採用された旨主張する。
しかしながら、本願商標の採択の意図という主観的な事情により、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの本件の判断が左右されるものではない。
よって、上記の請求人の主張は、いずれも採用することができない。
エ 小括
以上アないしウからすると、本願商標は、その指定商品との関係において、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表したにすぎないものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3項に該当する。
(3)本願商標の商標法第3条第2項の該当性について
ア 商標法第3条第2項の趣旨
商標法第3条第2項は、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として同条第1項第3号に該当する商標であっても、使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には、商標登録を受けることができることを規定している。
そして、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、(ア)当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否、(イ)当該商標が使用された期間、商品の販売数量、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合考慮して判断すべきである。なお、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するが、機能を維持するため又は新商品の販売のため、商品等の形状を変更することもあり得ることに照らすと、使用に係る商品等の立体的形状が、出願に係る商標の形状と僅かな相違が存在しても、なお、立体的形状が需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである(前掲平成22年(行ケ)第10366号、知的財産高等裁判所平成23年4月21日判決言渡参照)。
この場合、立体的形状を有する使用商品にその出所である企業等の名称や文字商標等が付されていたとしても、そのことのみで上記立体的形状について同法第3条第2項の適用を否定すべきではなく、上記文字商標等を捨象して残された立体的形状に注目して、独自の自他商品識別力を獲得するに至っているかどうかを判断すべきである(平成22年(行ケ)第10169号、知的財産高等裁判所平成22年11月16日判決言渡参照)。
イ 本願商標の商標法第3条第2項該当性
以下、本願商標が上記アの観点に照らして、商標法第3条第2項に該当するか否か検討する。
(ア)本願商標の形状及び本願形状に類似した他の商品等の存否
a 上記(2)のとおり、本願商標は、その指定商品であるウッド形ゴルフクラブの立体的形状に係るものであり、そのソールの略中央部分を凹ませた本願形状に特徴を有するものである。しかして、本願の指定商品であるゴルフクラブのソールの形状としては、上記(2)のとおり多種多様な形状があるところ、本願商標は、ウッド形ゴルフクラブの形状として通常採用されている範囲を大きく超えるものとまでは認められず、需要者において予測可能な範囲内のものというべきであることは、上記(2)のとおりである。しかしながら、本願商標のような本願形状を有するゴルフクラブの形状は、他に見当たらない。
b そして、本願形状を有するゴルフクラブが、販売開始された1995年(平成7年)以降、そのクラブヘッドの形状ないしクラブのソールの形状について、「日本ツアープロに人気がある。・・・ソールがエグれているのも特徴的」、「今ではゴルファーなら誰もが形状を見ただけで『ロイコレのクラブだ』と判る」、「ロイヤルコレクションのクラブは何と言っても独自のソール形状です」等といった評価が雑誌等に数多く採り上げられ、今日に至っている(第12号証、第14号証の1及び2、第18号証の18、第19号証、第20号証の4、第22号証の2、第23号証の5、第29号証、第30号証等)。
してみれば、上記のように、本願形状は、一定の特異性を有しているということができ、本願形状は需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものである。
(イ)本願商標の使用の実情
a 請求人は、平成7年、本願商標に係る立体的形状のゴルフクラブの販売を開始し、それ以来、本願形状と同一性のある形状を施したゴルフクラブを本件審決時まで15年以上にわたり、継続して販売している(第1号証ないし第6号証)。
b 本願商標に係る立体的形状のゴルフクラブは、たびたびゴルフ専門誌や雑誌等に掲載され、紹介されたり、広告されたりしている(第8号証、第9号証、第16号証ないし第46号証)。
c 本願商標に係る立体的形状のウッド形ゴルフクラブは、プロゴルファーの使用率が高いことでも知られ(第10号証、第16号証の2、第16号証の5)、有名なプロゴルファーとも本願商標に係るゴルフクラブの使用契約を交わした経緯もある(第3号証の3、第11号証)。また、北海道から九州地区にいたる全国の技量の優れたアマチュアゴルファーの使用率が高いことがうかがわれる(第18号証の4、第18号証の5)
d 本願商標に係る立体的形状のゴルフクラブは、発売以来現在に至るまで、本願商標及び本願形状に僅かな相違が存在するものもあるが、実質的にみて、本願形状という特異な形状を有する点においてほぼ同一の形状であって、その僅かな相違が自他商品の識別標識としての機能に影響を与えるものとは認められない。
e 本願商標に係る立体的形状の実際のゴルフクラブについては、「ROYAL COLLECTION」等の文字商標や「RC」のロゴタイプからなる図形商標等が使用されているものの、上記文字・図形商標を捨象して残された立体的形状に注目して、当該立体的形状が商品の出所識別標識としての機能を果たすものか否かを判断するときは、本願商標については、上記のとおり、本願形状という特異性を有する形状から、その立体的な形状のみで、本願の指定商品について請求人を出所とする識別標識としての機能を十分に果たしているものということができる。
(ウ)小括
上記のとおり、本願形状が、他に見当たらない特異性を有することからすると、本願商標の立体的形状は、需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものであって、平成7年以降15年以上にわたって販売され、ゴルフ専門誌や雑誌等に掲載され、使用をされてきたことに照らすならば、発売時期や派生商品により本願商標の立体的形状に相違が存することや、「ROYAL COLLECTION」等の平面的な商標の使用を考慮してもなお、本願商標の立体的形状のみが独立して自他商品識別力を獲得するに至っており、本願の指定商品「ゴルフクラブ」の取引者、需要者が、本願商標に接するときは、請求人の販売に係るゴルフクラブであることを識別することができるというのが相当である。
そうすると、本願商標は、指定商品に使用された場合、請求人の販売に係る商品であることを認識することができ、商標法第3条第2項の要件を具備するというべきである。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、その指定商品について、商標法第3条第2項の要件を具備するものであるから、同条第1項第3号の規定に該当するとして、本願を拒絶すべき限りでない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)


審決日 2011-08-29 
出願番号 商願2009-19970(T2009-19970) 
審決分類 T 1 8・ 13- WY (X28)
T 1 8・ 17- WY (X28)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内田 直樹
井出 英一郎
代理人 清水 久義 
代理人 清水 義仁 

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