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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X29 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X29 |
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管理番号 | 1241534 |
審判番号 | 無効2010-890103 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-12-09 |
確定日 | 2011-08-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5272568号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5272568号の指定商品中、第29類「北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚介類(生きているものを除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の肉製品,北海道白老町虎杖浜地区産のかつお節,北海道白老町虎杖浜地区産の寒天,北海道白老町虎杖浜地区産の削り節,北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚粉,北海道白老町虎杖浜地区産のとろろ昆布,北海道白老町虎杖浜地区産の干しのり,北海道白老町虎杖浜地区産の干しひじき,北海道白老町虎杖浜地区産の干しわかめ,北海道白老町虎杖浜地区産の焼きのり,北海道白老町虎杖浜地区産の食肉,北海道白老町虎杖浜地区産の加工卵,北海道白老町虎杖浜地区産のお茶漬けのり,北海道白老町虎杖浜地区産のふりかけ」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5272568号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成20年12月10日に登録出願され、第29類「北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚介類(生きているものを除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の肉製品,北海道白老町虎杖浜地区産のかつお節,北海道白老町虎杖浜地区産の寒天,北海道白老町虎杖浜地区産の削り節,北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚粉,北海道白老町虎杖浜地区産のとろろ昆布,北海道白老町虎杖浜地区産の干しのり,北海道白老町虎杖浜地区産の干しひじき,北海道白老町虎杖浜地区産の干しわかめ,北海道白老町虎杖浜地区産の焼きのり,北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂,北海道白老町虎杖浜地区産の食肉,北海道白老町虎杖浜地区産の加工卵,北海道白老町虎杖浜地区産のお茶漬けのり,北海道白老町虎杖浜地区産のふりかけ」を指定商品として、平成21年9月9日に登録査定され、同年10月9に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する登録第2409697号商標(以下「引用商標」という。)は、「海鮮工房」の文字を横書きしてなり、平成元年4月18日に登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として平成4年5月29日に設定登録され、その後、平成14年5月21日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同年6月5日に指定商品を第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」、第30類「コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,野菜,糖料作物,果実,コプラ,麦芽」及び第32類「飲料用野菜ジュース」とする書換登録がされているものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし74号証を提出している。 1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標と引用商標との類否 ア 本件商標は、上下で竹の棒に通され、下部におもり石を付した店先の日除け幕を模した図形の内部に、最上部に「海鮮工房」の文字を横書きし、幕の中央部に大きく「虎杖浜」との文字を縦書きし、その右側にやや小さな文字で「たらこ家」と縦書きし、左側に更に小さな文字で「こじょうはま」と縦書きした構成よりなるところ、全体として「カイセンコウボウタラコヤコジョウハマ」の称呼が生じる。 さらに、(ア)同商標中の構成各文字の大きさの比率は、約4(「虎杖浜」)対2(「海鮮工房」「たらこ家」)対1(「こじょうはま」)となっており、大小のある文字より構成され、(イ)「海鮮工房」の文字を横書きにし、「たらこ家」「虎杖浜」「こじょうはま」の文字を3行に構成してなるものであって、(ウ)各文字部分も離れて配置されているため、構成上一体的なものとはいえず、(エ)「カイセンコウボウタラコヤコジョウハマ」の称呼も全17音と著しく長い称呼であって、一連に称呼することもできないものであり、(オ)全体の構成から一定の観念が生ずるものともいえないものであるから、「海鮮工房」、「たらこ家」、「虎杖浜」及び「こじょうはま」のそれぞれの部分が独立して看取されるものである。 特に、「海鮮工房」の文字部分は、比較的目に付きやすい日除け幕の最上部に位置し、構成文字中、唯一横書きにより書された文字であることから、本件商標に接する取引者、需要者は、上部に視覚上顕著に表された「海鮮工房」の部分に、特に強く支配的な印象を受けるといい得るものである。 また、「虎杖浜」は、北海道白老町字虎杖浜と表記される現存する地名であり、該地区は、「たらこ」の加工業が盛んな場所として広く知られているものである(甲第3及び第4号証)。このことは、登録第5075147号商標「虎杖浜たらこ」が地域団体商標として登録されていることから窺うことができる(甲第5号証)。 そうすると、本件商標の構成中の「虎杖浜」及び「こじょうはま」の文字は、商品の産地又は販売地を表示するにすぎない識別力のない部分というべきものであり、「たらこ家」の文字も、「たらこ」が「タラの卵巣。特に、スケトウダラの卵巣を塩漬けにした食品」の意味合いを有し、「家」が商業などを営む家の屋号として慣用的に用いられる語であることから(甲第6号証)、全体として「商業として『たらこ』を扱う家(又は人)」の意味合いを認識させ、「北海道白老町虎杖浜地区」がたらこの加工業が盛んであることとも相俟って、「食用魚介類」との関係上、決して自他商品識別力が強いとはいえないものである。このことは、被請求人も本件商標の出願経過において自ら意見書で述べるとおりである。そうすると、自他商品識別標識として機能する部分は、日除け幕の図形及び「海鮮工房」の文字部分となる。 してみれば、本件商標は、上部に視覚上顕著に表された「海鮮工房」の文字部分が本件商標に接する需要者・取引者に独立した要部と認識されるため、簡易迅速を尊ぶ取引市場においては、「海鮮工房」の文字部分をもって商取引に資される場合も少なくないといい得るところである。 したがって、本件商標からは、「カイセンコウボウタラコヤコジョウハマ」の称呼のほか、「海鮮工房」の文字部分より生じる「カイセンコウボウ」の称呼をも生じるといい得るところである。 イ 引用商標は、その構成文字に照応して「カイセンコウボウ」の称呼を生じる。 ウ 以上より、本件商標と引用商標とは、「カイセンコウボウ」の称呼を共通にする類似の商標であり、全体として相互に類似する商標である。 (2)「海鮮工房」の自他商品識別力について ア 被請求人は、本件商標の出願経過において、意見書を提出し、「『海鮮工房』の文字は、『食用魚介類(生きているものを除く。)』との関係では、自他商品識別機能が弱い文字と言わざるを得ない」と主張しているので(甲第7号証)、この点について予め反論する。 「海鮮工房」の文字中の「海鮮」は、「新鮮な魚介類」との意味合いを有し(甲第8号証)、「工房」は、「画家・彫刻家・工芸家などの仕事場。アトリエ」の意味合いを有する(甲第9号証)。そして、これらを結合した「海鮮工房」の文字からは「新鮮な魚介類の作業場」程の意味合いを想起させるものであるが、もともと「工房」の語は、上記のような字義のとおり、絵画や彫刻などの美術品が創られ、又は、工芸品や民芸品等の手工業品が製造されるような、商品一点一点を手作りするごく小規模な場所を示す言葉として用いられる語であって、基本的にある程度まとまった数量を量産する飲食料品等の中規模ないし大規模な製造場所や加工場所を示すものとして使用される語ではない。 そうすると、「海鮮工房」は、「食用魚介類(生きているものを除く。)」との関係において、商品の製造場所、加工場所、販売場所等を直接的かつ具体的に表す語とはいえないものであって、構成文字全体をもって特定の意味合いを有しない一種の造語を表したものとして認識されるというべきである。 このことは、商品の品質を表示する文字と「工房」の文字とを結合した構成よりなる商標が、例えば、「のり工房」(指定商品「のり」)、「かつお工房」(指定商品「かつお」)、「チーズ工房」(指定商品「チーズ」)、「デザート工房」(指定商品「菓子及びパン」)、「ドレッシング工房」(指定商品「ドレッシング等」)等のように数多く登録されていること(甲第10ないし第34号証)から見ても妥当といい得るところである。 また、上記に述べた主張の正当性を立証すべく、「○○工房」の商標が、商品の製造・販売場所を表示するものとして理解・認識されるものとはいえないとして識別力が認められた審決例のうち、いくつかを以下に示し、これらを自己の主張に有利に援用することとする。 (ア)不服2000-18371(甲第35号証) 「生チョコ工房」は、単に「菓子及びパン」の製造場所、品質を表示するものとはいい難く、自他商品の識別標識としての機能を十分果たし得ると判断された事例 (イ)不服2000-16577(甲第36号証) 「ハンドメイドパソコンショップ/パソコン工房」は、「パーソナルコンピュータを作る作業場」の意味合いが直ちに認識されるものとはいい難く、「パソコン工房」の文字が「電子計算機」を取り扱う業界において、取引上、商品の品質等を表示するものとして普通に使用されていないから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとまではいうことができないと判断された事例 (ウ)不服2006-26855(甲第37号証) 「信州ミルク工房」は、商標全体から「長野県で乳製品を製造・販売している場所」の意味合いを看取し得るものとはいえず、直ちに「乳製品」の製造・販売場所を直接的かつ具体的に表示するものとして認識されるとはいい難いから、自他商品識別標識としての機能を十分に果たし得ると判断された事例 (エ)不服2007-14084(甲第38号証) 「染めもの工房」は、直ちに指定商品の製造場所、加工場所、販売場所等を直接的かつ具体的に表示するものとして認識されるとはいい難いから、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものではないと判断された事例 (オ)不服2007-20480(甲第39号証) 「フランスパン工房」は、直ちに指定商品の製造場所・販売場所を直接的かつ具体的に表示するものとして、これに接する取引者、需要者に理解、認識されるとまではいい難いものであるから、自他商品識別標識としての機能を十分に果たし得ると判断された事例 イ また、被請求人は、本件商標の出願経過において、意見書を提出し、「『海鮮工房』の文字は、食用魚介類を取り扱う事業者において非常に多用されており、『○○海鮮工房』、『海鮮工房○○』のように表現されて、数多くの事業者において採択・使用されているとの実情がある」と主張しているので、この点についても予め反論する。 各種検索エンジンで「海鮮工房」のキーワード検索を行ってみると、検索結果こそ多数に上るものの、そのうちの大半は、「飲食物の提供」の役務について使用されているのであって、指定商品「食用魚介類」についての使用とは認められないものである。 さらに、残る検索結果を見ても、「食用魚介類」の製造場所や販売場所を示すものとして記述的に表された例は皆無であって、取引上「食用魚介類」の製造場所や販売場所として普通に使用されているなどという事実は存在しない。 現に、引用商標「海鮮工房」は、識別力のある商標として登録が認められたのであり、後述するとおり、請求人は、引用商標「海鮮工房」の登録以来、自他商品識別標識を有する商標として使用を継続してきたのであって、現在では、請求人の業務に係る商品を示す商標として広く知られているものである。 ウ そうしてみると、本件商標の「海鮮工房」の文字部分は、「食用魚介類」を直接的、具体的に表示するものとして理解されているとはいえず、取引上普通に使用されている事実もないこと、及び請求人が自他商品識別標識として使用し、そのことが取引者・需要者に周知されていることから、自他商品識別機能を有する文字というべきものである。 (3)商品の同一及び類似性 本件商標に係る指定商品は上記第1のとおりであり、引用商標に係る指定商品は上記第2のとおりであるところ、類似商品・役務審査基準上、引用商標に係る指定商品中第29類「食肉、食用魚介類(生きているものを除く。)、肉製品、加工水産物、加工卵、お茶漬けのり、ふりかけ」及び第31類「食用魚介類(生きているものに限る。)」は、本件商標に係る指定商品中の「北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂」以外の全ての商品と同一又は類似すると考えられる。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼上及び観念上類似する商標であり、また、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品は、同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について (1)請求人について 請求人は、1911年(明治44年)5月に田村汽船漁業部として創立されたことにより創業し、1919年(大正8年)9月に株式会社に改組され、1937年(昭和12年)3月に「日本水産株式会社」に商号を変更して以来、今日までその事業を継続し、2011年には創業100周年を迎える長い歴史を持つ企業である(甲第40及び第41号証)。 請求人の事業は、水産事業、食品事業、ファインケミカル事業、物流事業と多岐に亘るが、うち食品事業は、請求人の総売上高の半分以上を占める主力事業である(甲第42ないし第44号証)。 請求人は、食品事業において、魚肉ソーセージ、ちくわ、かまぼこ等の練り製品、焼き鮭の瓶詰め、蟹やオイルサーディンの缶詰といった加工水産物や、焼きおにぎり、冷凍枝豆、冷凍麺類、米飯、惣菜等の冷凍食品、健康食品等の幅広い範囲の商品を製造、販売しているところであるが、これらの商品はいずれも一般需要者が日常生活において直接触れ、消費するものであることから、従来から精力的に営業・宣伝活動を行っており、今日では一般需要者に知らぬ者はいないといってよい程、その存在は広く知られているところである(甲第45号証)。 また、請求人は、上記のような市販商品の他、いか・いわし・えび等を主材とした天ぷら・フライ・唐揚げ等の加工水産物や、野菜・穀物等の素材を用いたコロッケ・春巻・シューマイ・餃子等の総菜等の業務用食品の製造販売にも力を入れている(甲第46及び第47号証)。 (2)引用商標の周知性について ア 請求人は、1990年中元シーズンより、引用商標「海鮮工房」を使用した「高級ギフト用の魚介製ハム」(帆立、紅鮭、鮪の三種)を日本全国で発売した(甲第48及び第49号証)。 その後、1997年3月からは、引用商標を使用した市販用の「鮭を主材とするフィッシュハム」及び「鮪を主材とするフィッシュハム」の製造、販売を行った(甲第50ないし第60号証)。該「フィッシュハム」の販売地域は、北海道と東北地方を除く、日本全国である。 なお、請求人は、1997年に、社章を、日の丸を模した「◎」記号と「ニッスイ」の文字を結合した旧ロゴから、赤色の旗を模した図形中に「◎」記号と「ニッスイ」の文字を配した現在のロゴヘと変更を行っている。甲第52ないし第55号証は、いずれも上記旧ロゴが表示されているため、1997年以前の資料である。 引用商標を使用した「フィッシュハム」は、以下のように、新聞においても大々的に取り上げられている。 (ア)「日水が高級魚介製ハムを発売」の見出しの下、「日本水産は六月から、高級ギフト用の魚介製ハム『海鮮工房』三種を新発売する。」との記事(平成2年3月28日付け読売新聞)(甲第61号証) (イ)「日本水産、高品質・安全安心・家族の和3つの"わ"を商品化」の見出しの下、「新商品の概要は次の通り。・・・3、フィッシュソーセージ・ハム(1)フィッシュハム▽海鮮工房・鮭▽同・鮪」との記事(平成9年3月5日付け日本食糧新聞)(甲第62号証) (ウ)「日本水産、スパイシー味缶詰『ザ・ステーキピリッとペッパー』など4月から発売」の見出しの下、「<フィッシュハム、1日、北海道、東北を除<全国発売。本物志向で、魚本来の味を生かした>▽海鮮工房・鮭90g×10,250円。」との記事(平成9年3月12日付け日本食糧新聞)(甲第63号証) また、引用商標を使用した「フィッシュハム」の我が国における売上数量及び売上額は、1996年度が1115ケース156万716円、1997年度が5397ケース721万7692円である(甲第64号証)。 上記データは、後述する「業務用エビフライ」の売上数量及び売上額と比較すると、やや規模は小さいものの、引用商標を使用した「フィッシュハム」は、業務用の食品とは異なり、一般の消費者に販売する、いわゆる市販商品であるため、甲第50号証の広告物が示すように、具体的な調理方法や用途の例を添えて、盛大に宣伝・広告を行っており、家庭内の食事の料理を担当する者や晩酌の肴を調達する者等、一般の需要者に広く知られる状況にあった。 イ 2002年からは、「ワンフローズン」という製造技術をエビフライに応用した新商品に、引用商標「海鮮工房」の商品名を冠し、全国的に発売を開始した(甲第65ないし第69号証)。「ワンフローズン」とは、請求人が独自に開発した冷凍食品の加工方法で、生鮮原料調達から商品になるまでの生産加工工程で、凍結を一回のみに抑えるというものである。2002年当時は、凍結された素材を解凍して加工し、再度凍結する2回凍結の製法が一般的であったところ、請求人が開発した「ワンフローズン」製法は、凍結を一回に抑えることにより、素材のうまみを閉じこめ、高い品質を維持することを可能としたものである(甲第70号証)。 「海鮮工房」(エビフライ)は、上記した「ワンフローズン」製法により引き出された美味さと鮮度により、2002年の発売以後、好調に売上げを伸ばした。2007年9月には、パン粉を大きいメッシュに変更してよりサクサクした衣の歯ごたえを感じることのできるエビフライヘとリニューアルし、商品名も「新海鮮工房」へと変更した(甲第71ないし第73号証)。 以下は、引用商標「海鮮工房」(「新海鮮工房」)を使用した「冷凍エビフライ」の2004年から2010年8月までの間における我が国における売上数量及び売上額である(甲第74号証)。 2004年度 47,036ケース 299,692,995円 2005年度 38,042ケース 244,341,416円 2006年度 25,594ケース 162,094,972円 2007年度 13,157ケース 96,820,720円 2008年度 10,970ケース 100,008,104円 2009年度 10,166ケース 90,203,510円 2010年度(?8月)3,625ケース 30,356,434円 上記データが示すように、引用商標を使用した「冷凍エビフライ」は、商品の移り変わりの激しい食品業界において、発売以来安定的に高い売上と出荷量を維持しながら、継続して販売を続けており、引用商標は、加工水産物を取り扱う業界においては、業務用の冷凍エビフライを示すものとして広く知られるに至っている。 ウ 上述したように、引用商標は、請求人の地道な営業・販売活動を通じて全国的に使用された結果、請求人の業務に係る「フィッシュハム」又は「冷凍えびフライ」(以下、まとめて「引用商品」ということがある。)を指称するものとして需要者や取引者に広く認識させるに至り、少なくとも本件商標の出願日である平成20年12月10日以前から現在に至るまで、全国の取引者・需用者の間で周知・著名となっていたものである。 (3)本件商標と引用商標の同一又は類似性について 本件商標は、上記1(1)ウのとおり、引用商標と称呼の点において相紛らわしいことが明らかであり、請求人と何らかの関係があるかの如く印象を与えるおそれを有するものである。 (4)商品の関連性 本件商標に係る指定商品中の「北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚介類(生きているものを除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の肉製品,北海道白老町虎杖浜地区産のかつお節,北海道白老町虎杖浜地区産の寒天,北海道白老町虎杖浜地区産の削り節,北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚粉,北海道白老町虎杖浜地区産のとろろ昆布,北海道白老町虎杖浜地区産の干しのり,北海道白老町虎杖浜地区産の干しひじき,北海道白老町虎杖浜地区産の干しわかめ,北海道白老町虎杖浜地区産の焼きのり,北海道白老町虎杖浜地区産の食肉,北海道白老町虎杖浜地区産の加工卵,北海道白老町虎杖浜地区産のお茶漬けのり,北海道白老町虎杖浜地区産のふりかけ」と、引用商品「フィッシュハム,冷凍えびフライ」とは、類似商品・役務審査基準のとおり、類似の商品である。 本件商標に係る指定商品中の「北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂」と、引用商品「フィッシュハム、冷凍えびフライ」とは、いずれも、食用又は保存用の処理をした動物性食品であるから、関連性の高い商品といい得るものである。 (5)混同のおそれ 「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断されるべきものと解される(最高裁平成10年(行ヒ)第85号、平成12年7月11日判決)。 これを本件についてみると、前述のとおり、本件商標と引用商標とは、いずれも「カイセンコウボウ」の称呼を生じるから、類似性の程度は極めて高い。また、前述のとおり、引用商標は、請求人の業務に係る商品を示す商標として周知である。さらに、本件商標に係る指定商品と引用商品とは、互いに関連性の高い関係にある。 そして、本件商標に係る指定商品及び引用商品、すなわち「海産物」等の食料品の需要者層は、子供から老人に至るまでの幅広い一般消費者であり、その注意力が必ずしも高くない者を含んでいる。 以上の事情を総合的に考慮すれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者が、周知商標である引用商標を連想・想起して、請求人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがあるというべきである。 また、仮に請求人の業務に係る商品であると誤認するおそれ(狭義の混同)はなくとも、企業経営の多角化が顕著な近年の趨勢においては、一つの企業グループが種々の食品を幅広く取り扱うことは広く一般に行われていることである。このような傾向に鑑みれば、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである(広義の混同)。 (6)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べている。 1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について (1)請求人は、本件商標と引用商標とは、「カイセンコウボウ」の称呼を共通にする類似の商標であり、全体として相互に類似する商標である旨主張している。 しかしながら、本件商標については、平成20年12月10日に出願し、平成21年7月21日提出の意見書により、平成21年10月9日に登録査定を受け、無事商標登録されたものである。 (2)外観については、本件商標は、上下で竹の棒に通され、下部におもり石を付した店先の懸垂幕を模した図形を配し、その内部の最上部に「海鮮工房」の文字を横書きし、幕の中央部に大きく「虎杖浜」との文字を続書きし、その右側にやや小さい文字で「たらこ家」と縦書きし、左側に更に小さな文字で「こじょうはま」と縦書きしてなるものであり、単なる文字列よりなる引用商標とは、一見して需要者層が視別できる非類似の商標であることは明らかである。 また、請求人は、甲第10ないし第34号証により、25例をあげているも、図形からなる商標は一件も含まれていない。 (3)観念についても、たらこを主にした「虎杖浜で獲れた新鮮な魚介類を取り扱う仕事場である」との観念が想起される本件商標と、単に「海で獲れた新鮮な魚介類を取り扱う仕事場」と形容する観念が生じる引用商標とは、非類似の商標であることは明らかであり、さらに引用商標では、当方からその生業を否定する意思はないものの、国外で工業的量産手法により加工された輸入冷凍水産物に用いられている商標であると認識するところである。 (4)称呼についても、本件商標は、「カイセンコウボウタラコヤコジョウハマ」の一連の称呼、さらに、一般的には「タラコヤコジョウハマ」、「タラコヤ」又は「コジョウハマ」の称呼が生じるのに対し、引用商標からは単に「カイセンコウボウ」の称呼のみが生じるのであって、両商標が類似する指定商品に使用された場合でも、一般の需要者はもちろんのこと、専門家・取引者に至っては彼我誤認・混同するおそれのない非類似の商標であることは明らかである。 (5)以上のとおり、請求人が主張している本件商標の無効はありえないと確信するところである。 2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について (1)被請求人について 被請求人は、明治年間に、初代松田作四郎が新潟県から北海道白老郡白老町虎杖浜に渡り、漁業を生業としたことが興りであって、のちの大正2年6月に、北海道長官中村純九郎より肥料製造営業ノ免許交付を受け、このときを以てカネシメ松田水産の創業年とし、以来、たらこ加工を本業として、本年創業98年を迎える企業である。 (2)混同の有無について ア 被請求人においては、本件商標が図形商標である故、「海鮮工房」の4文字だけを単独で使用したこと、また使用することもなく、上下で竹の棒に通され、下部におもり石を付した店先の懸垂幕を模した図形を配し、その内部の最上部に「海鮮工房」の文字を横書きし、幕の中央部に大きく「虎杖浜」との文字を縦書きし、その右側にやや小さい文字で「たらこ家」と縦書きし、左側に更に小さな文字で「こじょうはま」と縦書きしてなるものであり、その商品の需要者が商品の出所について請求人と、被請求人を混同することは考えられない。また、請求人の商品には必ず、赤色の旗を模した図形中に「◎」記号と「ニッスイ」の文字を配したロゴが表示されており、世界的企業である「日本水産株式会社」と、田舎の中小企業である「カネシメ松田水産株式会社」とでは、需要者が混同するわけもなく、かつ、被請求人の区分においても、白老虎杖浜地区産に限定するところであり、故に特許庁の判断により登録査定に至ったものであると確信するところである。 イ 請求人は、1997年3月から、引用商標を使用して、製造、販売を行った「フィッシュハム」(北海道、東北には販売されてないとのこと)と述べているも、本件商標の登録日である平成21年10月9日には製造、販売はされていなかった事実がある。 かつ、請求人は、2002年から、引用商標を使用した業務用のエビフライを発売したと述べているも、実態は甲第65ないし第71号証にあるとおり、「海鮮工房えびフライ」との表記であって、「海鮮工房」と「えびフライ」が一体となっているものであり、さらに請求人は2007年の業務用カタログ(甲第72号証)から現在に至るまで、「海鮮工房えびフライ」の使用を止め(「新海鮮工房えびフライ」との別名称では存在しいる。)、本件商標の登録日である平成21年10月9日においても、引用商標は使用されていなかった事実もある。 ウ 請求人は、本件商標に係る指定商品及び引用商品、すなわち「海産物」等の食料品の需要者層が子供から老人に至るまでの幅広い一般消費者であり、その注意力が必ずしも高くない者も含んでいるから、これに接する需要者が、引用商標を連想・想起して、請求人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがあるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する旨主張しているが、引用商標については、少なくとも上記のとおり、「海鮮工房」を使用していたとはいえず、業務用カタログの中に、引用商標「海鮮工房」と類似した「新海鮮工房えびフライ」の商標名があるものの、それをもって子供や老人が被請求人と請求人の商品の出所について混同が起きうることは考えられない。 また、被請求人は、本件商標を用いて業務用商品を製造、販売したことはなく、北海道白老郡白老町虎杖浜地区において水揚され又は加工されたもののみに本件商標を用いているのが実情でもある。 エ よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しないものと確信するところである。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反しておらず、その登録は有効なものである。 第5 当審の判断 1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標と引用商標との類否について ア 本件商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、下部におもり石を付した店先の日除け幕の如き図形の内部に表された「海鮮工房」、「たらこ家」、「虎杖浜」及び「こじょうはま」の各文字部分は、文字の大きさを異にし、横書きと縦書きで表され、離れて配置されていることから、視覚上それぞれが別個独立したものとして看取されるものである。 ところで、請求人提出の証拠によれば、「虎杖浜」は、北海道白老町に現存する地名であり、「たらこ」の加工業が盛んな場所として知られ、「虎杖浜たらこ」の商標が地域団体商標として登録されていることが認められる(甲第3ないし第5号証)。 そうすると、本件商標の構成中、中央に大きく縦書きされた「虎杖浜」の文字及びその左側に小さく縦書きされた「こじょうはま」の文字は、上記現存の地名を表したものであって、指定商品の産地又は販売地を表したものとして認識し理解されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。 また、本件商標の構成中の「たらこ家」の文字部分についてみると、「家」の文字が「その職業の家またはその人を表す語」(甲第6号証)である「屋」と同様の意味合いで用いられることもあることから、全体として「職業として『たらこ』を扱う家(又は人)」の如き意味合いを認識させ、「たらこ」の加工業が盛んな場所として知られる上記「虎杖浜」と相俟って、本件商標の指定商品との関係においては、自他商品の識別力が弱いものというべきである。 してみれば、本件商標は、上記日除け幕の如き図形及びそれに記載された「海鮮工房」の文字部分が自他商品識別標識として機能を果たす要部というべきであるが、該図形と「海鮮工房」の文字が常に不可分一体にのみ認識されるべき格別の理由は見出し難く、簡易迅速を尊ぶ取引場裏においては、読み易い「海鮮工房」の文字部分を捉え、これより生ずる称呼をもって取引に資される場合も少なくないものといわなければならない。 したがって、本件商標は、全体として「カイセンコウボウタラコヤコジョウハマ」の称呼を生ずるほか、「海鮮工房」の文字部分より、単に「カイセンコウボウ」の称呼をも生ずるものというのが相当である。 イ この点に関し、被請求人は、本件商標からは、「カイセンコウボウタラコヤコジョウハマ」、「タラコヤコジョウハマ」、「タラコヤ」又は「コジョウハマ」の各称呼を生ずる旨主張している。 しかしながら、上記アのとおり、本件商標中の「虎杖浜」、「こじょうはま」及び「たらこ家」の文字部分は、自他商品の識別力がないか極めて弱いものであるから、全体としての「カイセンコウボウタラコヤコジョウハマ」の称呼を生ずることがあるとしても、これら各文字部分からは、自他商品識別標識としての独立した称呼は生じないというべきである。よって、被請求人の主張は採用することができない。 ウ 他方、引用商標は、本件商標中の「海鮮工房」の文字とやや書体は異なるものの、同じ「海鮮工房」の文字を横書きしてなるものであり、「カイセンコウボウ」の称呼を生ずること明らかである。 エ したがって、本件商標と引用商標とは、全体の外観においては相違するところがあるとしても、称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。 オ 被請求人は、たらこを主にした「虎杖浜で獲れた新鮮な魚介類を取り扱う仕事場」の観念が想起される本件商標と、単に「海で獲れた新鮮な魚介類を取り扱う仕事場」の観念が生ずる引用商標とは、非類似の商標である旨主張している。 しかしながら、本件商標は、その構成中に「虎杖浜」、「海鮮工房」及び「たらこ家」の文字を有するとしても、これら各文字は別個独立に表示されており、相互の修飾関係は必ずしも明らかでなく、これらから直ちに「虎杖浜で獲れた新鮮な魚介類を取り扱う仕事場」の意味合いを想起させるものとはいえない。 なお、付言するに、「海鮮」の文字が「新鮮な海産物」を意味し、「工房」の文字が「美術家や工芸家などの仕事場。アトリエ」を意味する語である(甲第8及び第9号証)としても、両者を結合した「海鮮工房」の文字が、「新鮮な海産物を取り扱う仕事場」を意味する語として親しまれ、普通に使用されているとまではいえない。請求人提出に係る甲第7号証(被請求人が本件商標の審査段階において提出した証拠)を徴しても、「○○海鮮工房」又は「海鮮工房○○」の如くに使用されている例が散見されるものの、該使用例中の「海鮮工房」の文字が上記意味合いで用いられているかは明らかでないし、まして、本件商標及び引用商標の指定商品である「食用魚介類」等についての製造場所、販売場所を表示するものとして記述的に用いられているものということはできないから、「海鮮工房」の文字は、「食用魚介類」等の商品の品質、産地、販売地等を直接的、具体的に表示するものではなく、むしろ一種の造語として認識し理解されるものというべきである。 よって、被請求人の主張は採用することができない。 (2)商品の類否について 本件商標の指定商品中(以下「前者」という。)の「北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚介類(生きているものを除く。)」は、引用商標の指定商品中(以下「後者」という。)の第29類中の「食用魚介類(生きているものを除く。)」及び第31類中の「食用魚介類(生きているものに限る。)」と、また、前者の「北海道白老町虎杖浜地区産の加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の肉製品,北海道白老町虎杖浜地区産のかつお節,北海道白老町虎杖浜地区産の寒天,北海道白老町虎杖浜地区産の削り節,北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚粉,北海道白老町虎杖浜地区産のとろろ昆布,北海道白老町虎杖浜地区産の干しのり,北海道白老町虎杖浜地区産の干しひじき,北海道白老町虎杖浜地区産の干しわかめ,北海道白老町虎杖浜地区産の焼きのり」は、後者の第29類中の「肉製品,加工水産物」と、さらに、前者の「北海道白老町虎杖浜地区産の食肉」は後者の第29類中の「食肉」と、また、前者の「北海道白老町虎杖浜地区産の加工卵」は後者の第29類中の「加工卵」と、そして、前者の「北海道白老町虎杖浜地区産のお茶漬けのり,北海道白老町虎杖浜地区産のふりかけ」は後者の第29類中の「お茶漬けのり,ふりかけ」と、それぞれ同一又は類似の商品といえるものである。 しかしながら、本件商標の指定商品中の「北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂」は、引用商標の指定商品とは、原材料、製法、用法、用途等を異にするものであって、非類似の商品というべきものである。 結局、本件商標の指定商品は、「北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂」を除き、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件商標は、「北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂」を除く指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。 2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について (1)請求人は、引用商標が請求人の業務に係る「フィッシュハム」又は「冷凍えびフライ」(引用商品)を指称するものとして需要者・取引者間に広く認識されている旨主張し、証拠を提出しているので、該証拠について検討する。 ア 甲第1ないし第39号証は、本件商標、引用商標等の登録情報に関する資料や審決例等であって、引用商標の周知性について立証するものではない。また、甲第40ないし第45号証は、請求人の会社概要、事業概要、取扱商品を紹介するものであり、これらには引用商標は表示されていない。 イ 甲第46及び第47号証は、請求人による2009年10月又は2010年6月発行の「業務用食品主要商品のご案内」と題する冊子の抜粋写しと認められるところ、該冊子中には、「フライ」の頁に、「笹形白身魚フライ(ニュージーランド産)」、「新フレッシュえびフライ」等の各種商品と共に「新海鮮工房えびフライ」として商品の写真が掲載されているが、該冊子の発行部数、頒布方法・場所等は明らかでない。 ウ 甲第48及び第50号証は、請求人による1990年3月又は1997年2月の社外向けプレスリリース用資料の写しであり、甲第51号証は請求人の社内報「CHALLENGE 1997 SPRING No.495」の抜粋写しと認められるところ、これらには引用商標を使用した商品「ハム・ソーセージ」が他の商品と共に掲載されており、当該商品は1990年春又は1997年春から新発売される旨説明されている。また、甲第49号証は、引用商標を付したハム・ソーセージの詰め合わせを撮影した写真(写し)と認められるものの、当該商品が存在したことを証明するに過ぎない。 エ 甲第52号証は、申立人の取扱いに係る商品「フィッシュハム」に関するパンフレットと認められるところ、その発行日、発行部数、頒布の方法・地域・期間等は明らかでない。また、甲第53号証ないし第60号証は、フィッシュハムの包装用フィルムであり、これらが実際に使用されたものであるとしても、当該商品が存在したことを証明するに過ぎない。 オ 甲第61ないし第63号証は、読売新聞(平成2年3月28日付)及び日本食糧新聞(平成9年3月5日及び同月12日付)の記事検索結果の写しと認められるところ、これらには請求人が魚介製ハム「海鮮工房」を新発売する旨報道されている。また、甲第64号証は、「フィッシュハム支社別年度別実績」と題する一覧表の写しと認められるところ、これによれば、商品名「海鮮工房」の売上額は、1996年が156万円余、1997年が721万円余であって、それ程大きな額ではない。 カ 甲第65ないし第69及び第71号証は、2004年9月から2007年7月までの間に請求人によって発行された「業務用食品主要商品のご案内」と題する冊子の抜粋写しと認められるところ、いずれにも「フライ」の頁に、「笹形白身魚フライ(ニュージーランド産)」、「新フレッシュえびフライ」等の各種商品と共に「海鮮工房えびフライ」として商品の写真が掲載されているが、該冊子の発行部数、頒布の方法・地域・期間等は明らかでない。甲第70号証は、「ニッスイ『ワンフローズンえびフライ』」と題する商品チラシと認められるところ、代表商品として「ワンフローズン 海鮮工房えびフライ」との表題下に商品の写真が掲載されているが、該チラシの発行日、発行部数、頒布の方法・地域・期間等は明らかでない。甲第72号証は、「2007AUTUMN&WINTER業務食品秋冬おすすめ商品」と題する商品パンフレットと認められるところ、「やわらかチキンのクリームソース煮」、「ざっくりえびフライ活」等の各種商品と共に、「新海鮮工房えびフライ」として商品の写真が掲載されているが、その発行日、発行部数、頒布の方法・地域・期間等は明らかでない。 キ 甲第73号証は、請求人による2007年8月の社外向けプレスリリース用資料の写しと認められるところ、「デリカ・惣菜売場向け商品リニューアル品2品」の一つとして「新海鮮工房えびフライ」が掲載されている。 なお、上記甲第46、第47及び第65ないし第73号証は、いずれも引用商標を使用したえびフライのみを単独で、かつ、強調して掲載するものではなく、他の各種商品が同列に掲載されているものである。 ク 甲第74号証は、「エビフライ支社別年度別実績」と題する一覧表の写しと認められるところ、これによれば、商品名「海鮮工房えびフライ」及び「新海鮮工房えびフライ」の売上額は、2004年度が2億9千9百万円余、2005年度が2億4千4百万円余、2006年度が1億6千2百万円余、2007年度が9千6百万円余、2008年度が1億円余、2009年度が9千万円余となっている。 ケ 以上によれば、請求人は、1990年春頃から引用商標を商品「フィッシュハム」について使用し始め、2002年からは商品「冷凍エビフライ」についても使用していることが認められ、該冷凍エビフライの売上額は相当な額に達しているといえるものの、上記商品については、社外向けにプレス発表されたが、僅か数紙に紹介されるに止まるばかりでなく、各種媒体を用いて積極的に宣伝広告された具体的な事実は見当たらず、また、商品カタログ・パンフレットには他の商品と同列に掲載され、殊更看者の注意を強く惹くような状態では掲載されていないほか、その頒布の数量、地域、方法、時期、期間等が明らかでないことなどからすると、引用商標が本件商標の登録出願時において請求人の業務に係る商品「フィッシュハム」又は「冷凍えびフライ」について使用する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものということはできない。 その他、引用商標が請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めるに足る証拠はない。 (2)次に、本件商標の指定商品中の「北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂」についてみると、上記商品は、動物性油脂のみならず、植物性油脂及び加工油脂をも含むものであり、前示のとおり、引用商標の指定商品とは、非類似の商品であり、必ずしも関連性が極めて高いとまではいえない。 (3)以上からすると、本件商標と引用商標とが類似するものであるとしても、本件商標をその指定商品中の「北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂」に使用した場合、これに接する取引者、需要者が引用商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の「北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚介類(生きているものを除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),北海道白老町虎杖浜地区産の肉製品,北海道白老町虎杖浜地区産のかつお節,北海道白老町虎杖浜地区産の寒天,北海道白老町虎杖浜地区産の削り節,北海道白老町虎杖浜地区産の食用魚粉,北海道白老町虎杖浜地区産のとろろ昆布,北海道白老町虎杖浜地区産の干しのり,北海道白老町虎杖浜地区産の干しひじき,北海道白老町虎杖浜地区産の干しわかめ,北海道白老町虎杖浜地区産の焼きのり,北海道白老町虎杖浜地区産の食肉,北海道白老町虎杖浜地区産の加工卵,北海道白老町虎杖浜地区産のお茶漬けのり,北海道白老町虎杖浜地区産のふりかけ」については、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を無効にすべきものである。 しかしながら、本件商標は、上記以外の指定商品「北海道白老町虎杖浜地区産の食用油脂」については、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすべき限りではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 |
審理終結日 | 2011-06-06 |
結審通知日 | 2011-06-09 |
審決日 | 2011-06-21 |
出願番号 | 商願2008-99620(T2008-99620) |
審決分類 |
T
1
11・
262-
ZC
(X29)
T 1 11・ 271- ZC (X29) |
最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 小松 孝 |
特許庁審判長 |
野口 美代子 |
特許庁審判官 |
前山 るり子 内山 進 |
登録日 | 2009-10-09 |
登録番号 | 商標登録第5272568号(T5272568) |
商標の称呼 | カイセンコーボータラコヤコジョウハマ、カイセンコーボータラコヤコジョーハマ、カイセンコーボー、タラコヤコジョーハマ、コジョーハマタラコ、タラコヤ |
代理人 | 矢崎 和彦 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 宮城 和浩 |
代理人 | 黒瀬 雅志 |
代理人 | 和田 阿佐子 |
代理人 | 高田 泰彦 |