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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 審決却下 Y43
管理番号 1241526 
審判番号 無効2010-890083 
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-10-09 
確定日 2011-08-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4797745号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4797745号商標(以下「本件商標」という。)は、「健遊館」の文字を標準文字で表してなり、平成15年12月1日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を指定役務として、平成16年7月21日に登録査定、同年8月27日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
「南魚沼市立ゆきぐに大和病院健友館」(以下「健友館」という。)が、新潟県南魚沼市浦佐4115に存在する(甲第1号証)。「健友館」は、1976年の「ゆきぐに大和病院」の設立に尽力し、第13回若月賞を受賞した著名人黒岩卓夫の存在と共に著名な医療機関である。
本件商標と「健友館」とを対比すると、共に「けんゆうかん」なるイントネーションまで称呼が全く同一である。
よって、本件商標は、周知の「健友館」と称呼が同一であり、かつ、外観、観念においても繋がりがあり、類似の範ちゅうを脱し得ないものであって、また、役務についても、類似の範ちゅうを脱し得ないから、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2 答弁に対する弁駁
「健友館(雪国)」は、少なくとも、医療関係者に限らず、市民病院は市営の病院であることから、新潟県内に限らず、その近隣の県でも広く市民、県民に認識されるに至っている。
「健友館」は、「南魚沼市立ゆきぐに大和病院」、「大和医療福祉センター」と一体不可分ではない。特に、「南魚沼市立ゆきぐに大和病院」、「大和医療福祉センター」の名称を記載するのは「健友館(雪国)」を特定する表現方法であり、一般に長い名称は省略して使用されるのが常套であって、かつ、地元民は分かり切った「南魚沼市立ゆきぐに大和病院」又は「大和医療福祉センター」を省略するのが普通である。
被請求人は、自ら行っている役務を「健友館(雪国)」とは非類似の役務(例えば、老人の養護)と主張しているが、「老人の養護」について、国際分類によれば、「高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)」と「介護」とは類似する役務である。
したがって、本件商標は、不正競争防止法第2条第1項第1号に該当し、商標法第4条第1項第15号に違反するものである。

第3 請求人に対する審尋
本件審判の請求は、請求人により、商標法第4条第1項第15号に該当するものであると主張されているところ、同法第47条第1項は、「商標登録が商標法第4条第1項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)は、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない。」と規定しており、商標登録が同号に違反してされたことを理由とするには、不正の目的で商標登録を受けた場合を除き、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができないと定めている。
しかるところ、本件商標の商標権の設定の登録の日は、平成16年8月27日であり、また、本件審判の請求は、平成22年10月9日にされたものであるから、本件審判の請求は、本件商標の商標権の設定の登録の日から5年以上経過していることは明らかである。
したがって、請求人は、本件商標が不正の目的で商標登録を受けた場合に該当する理由を述べるとともに、その事実を明らかにする証拠を提出されたい。

第4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
被請求人の行為は、自己の役務として他人の著名な役務と類似の役務に使用するものであるから、不正競争防止法第2条第1項第1号に該当し、不正の目的で商標登録を受けた場合に該当する。
本件商標は、商標法第4条第1項第6号の商標登録を受けることができないものにも該当し、自己の役務として他人の著名な役務(「健友館(雪国)」)と類似の役務に使用するものであるから、不正競争防止法第2条第1項第1号に該当し、不正の目的で商標登録を受けた場合に該当する。
さらに、被請求人の本件商標の使用について、その権利化の意図を明白にするものとして甲第5号証の警告書がある。審判請求人に対する警告内容から、出願当初から「介護事業」を自己の権利と認識していたことは明確である。
したがって、本件商標は、不正競争防止法第2条第1項第1号に該当し、商標法第4条第1項第15号に違反する。

第5 被請求人の主張(要旨)
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
請求人提出の証拠では、「南魚沼市立ゆきぐに大和病院」そのものについても、極めて僅かな証拠の量(甲第1号証のみ)からみて、到底周知著名な病院とは言い難いものである。「健友館」は、このように周知著名な病院とは言い難い病院の一施設の名称にすぎず、しかも、使用されている証拠の提出も極めて僅かである。
そして、「健友館」は、「南魚沼市立ゆきぐに大和病院」、「大和医療福祉センター」等の一施設名称として、これら病院、福祉センター名と一緒に使用しているのみであり、「健友館」のみを大々的に使用しているわけではない。このため、「南魚沼市立ゆきぐに大和病院」、「大和医療福祉センター」等の名称があれば、本件商標と容易に区別が可能な使用方法でもある。
そうであれば、商標権者の行っている非類似の役務(例えば、老人の養護)に使用される「健遊館」にまで、文字も異なることも相俟って同じ者の施設と誤認し、混同するようなことは考えられない。
また、本件商標「健遊館」と「健友館」は、共に造語であり、観念の上からは比較することはできないものであるため、観念的な繋がりがあるといった主張も到底受け入れることはできない。
以上述べたように、請求人の主張は妥当なものではなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号について
商標登録が同法第4条第1項第15号に違反してされたことを理由として無効審判を請求するには、前記第3のとおり、不正の目的で商標登録を受けた場合を除き、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない(同法第47条第1項)。
しかるところ、本件商標の商標権の設定の登録の日は、前記第1のとおり、平成16年8月27日であり、また、本件審判の請求は、平成22年10月9日にされたものであるから、本件審判の請求は、本件商標の商標権の設定の登録の日から5年以上経過していることは明らかである。
そこで、本件商標が、同法第47条第1項に規定する不正の目的で商標登録を受けた場合に該当するかについて検討する。
(1)請求人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
「南魚沼市立ゆきぐに大和病院のホームページ」(甲第1号証の1)の2枚目の「ご案内図」によれば、「Yukiguniyamato/General Hospital/ゆきぐに大和/総合病院」「市立ゆきぐに/鍼灸治療院」「老人ホーム/八色園」等とともに、建物の名称として、「やまとぴあ/健友館」の記載がある。
同号証の4枚目によれば、「ゆきぐに大和病院『健友館』では、平成22年度の人間ドック受診の受付を次により行います・・・」の記載がある。
南魚沼市立ゆきぐに大和病院のホームページ(甲第1号証の3)の2枚目によれば、「【平成元年5月】検診棟『健友館』完成・・・」の記載がある。
「めざせ21世紀/これからも地域とともに(大和医療福祉センター20周年記念誌)」(甲第4号証)の14頁には、「1989年(平成元)、病院健友館建設にともない、母子及び歯科検診以外は、病院健友館を利用して行われ・・・病院健友館では、住民検診・事業所検診・人間ドック・・・を行っている。」の記載がある。
甲第5号証は、被請求人が、本件商標の商標権に基づいて、請求人に対し送付した警告書である。
(2)以上の事実を総合すると、請求人の主張する「健友館」の文字は、当事者間に関係のない第三者である「ゆきぐに大和病院の検診棟」の名称を表すものであって、本件商標の指定役務と同一又は類似する役務について、商標として使用されているものではない。
また、「健友館」の文字は、「やまとぴあ/健友館」「ゆきぐに大和病院『健友館』」「病院健友館」のように使用されていることから、常に「健友館」の文字が単独で使用されているものではない。
そうとすると、「健友館」の文字は、単独で著名性を有するものではない。
してみれば、商標権者が、「健遊館」の文字からなる本件商標を、商標として採用し登録を受けたとしても、何ら不正の目的で商標登録を受けた場合に該当するということはできない。
また、一般に、商標権者が、商標権に基づいて警告書を送ることは、正当な権利の行使ということができる。
そうとすると、被請求人が、請求人に対し甲第5号証の警告書を送ることは、商標権に基づいた正当な権利の行使であって、この事実をもって、本件商標が、不正の目的で商標登録を受けた場合に該当するということはできない。
他に、本件商標が、不正の目的で商標登録を受けた場合に該当するということを立証する証拠の提出はない。
2 商標法第4条第1項第6号について
請求人は、当初審判請求書において主張していなかった「本件商標が商標法第4条第1項第6号にも該当する」旨を、平成23年5月23日付け回答書において、新たに主張しているが、その主張は、請求の理由の要旨を変更するものであるから、採用することができない(商標法第56条第1項において準用する特許法第131条の2第1項参照)。
なお、商標法第4条第1項第6号は、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」と規定しているが、「健友館」が著名なものでないことは、上記において認定したとおりである。
3 まとめ
本件審判の請求は、不正の目的で商標登録を受けた場合に該当しないものであるから、商標法第47条第1項に規定する除斥期間の要件を具備しないものであって、その期間経過後にした不適法なものであり、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により、これを却下すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-04-06 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-06-22 
出願番号 商願2003-106540(T2003-106540) 
審決分類 T 1 11・ 271- X (Y43)
最終処分 審決却下  
前審関与審査官 加園 英明 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2004-08-27 
登録番号 商標登録第4797745号(T4797745) 
商標の称呼 ケンユーカン 
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 
代理人 足立 勉 

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