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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X2039 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X2039 |
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管理番号 | 1236699 |
審判番号 | 不服2010-5883 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-17 |
確定日 | 2011-05-06 |
事件の表示 | 商願2008-50064拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第20類、第39類、第41類及び第42類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成20年6月24日に立体商標として登録出願されたものである。そして、願書記載の指定商品及び指定役務については、原審における平成21年6月29日付け及び当審における平成22年4月22日付け提出の手続補正書により、第20類「プラスチック製の花卉運搬用容器,プラスチック製の花卉包装用容器」及び第39類「プラスチック製の花卉運搬用容器の貸与」と補正されたものである。 第2 原査定の理由 原査定は、「本願商標は、『花等を運搬する容器』の一形態を表示したものと容易に理解し得る立体的形状よりなるものであるから、これをその指定商品・指定役務中の『花等を運搬する容器』及びこれに関連する役務、例えば『プラスチック製の花等を運搬する容器,花運搬用容器の貸与』等に使用するときは、その商品の形状、役務の提供の用に供する物の形状を表示するにすぎず、自他商品・役務識別標識としての機能を果たし得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。また、出願人は、本願商標を、補正後の指定商品『プラスチック製の花卉運搬容器,プラスチック製の花卉包装用容器』又は指定役務『花卉運搬用容器の貸与』について長期間使用した結果、花卉業界の生産者又は取引者にとって周知著名であり、識別力を有するに至った旨主張しているが、援用する資料からは、本願商標と、同一の容器の立体的形状が使用されていることが確認できない。」として、本願を拒絶したものである。 第3 当審の判断 1 商標法第4条第1項第16号について 本願商標に係る指定商品及び指定役務は、前記第1のとおり補正された結果、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、商品の品質又は役務の質について誤認を生じるおそれはなくなった。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は解消した。 2 立体商標について 立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品、役務の出所を表示し、自他商品、自他役務を識別する標識として採択されるものではない。 そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。 そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。 3 商標法第3条第1項第3号該当性について (1)商標法第3条第1項第3号について 本願商標は、別掲第1/7図ないし第5/7図のとおり、胴部を四面からなる角柱状にし、その上部から胴部に沿って四本の脚が下部に延びて、それら四本の脚は、底の部分において四角形の枠を構成した形状よりなるものである。 ところで、商品を運搬、包装する容器においては、一般的に安定性が求められるところ、本願商標に係る立体的形状は、四本の脚が胴部の上部及び下部と一体となり、かつ、それらの脚は底の部分に向かってやや広がったあとに、一つの四角形の枠を構成しているため、設置したときに安定感のある形状となっているといえるものであるから、本願商標に係る立体的形状は、商品を運搬、包装する容器の機能を発揮させるために必要な形状を有しているというべきである。 また、請求人が援用する資料(商標登録願2008-050685において提出した資料1ないし50)には、請求人の取扱いに係る切花等を運搬したり、包装するための容器の形状が複数種類掲載されているところ、それらの形状を参酌すると、本願商標に係る立体的形状は、花卉の運搬用又は包装用の容器の一形状を表示したものと認識されるというべきである。 そうとすれば、本願商標に係る立体的形状は、未だ、「プラスチック製の花卉運搬用容器,プラスチック製の花卉包装用容器」の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域をでないとみるのが相当である。 してみれば、本願商標をその指定商品「プラスチック製の花卉運搬用容器,プラスチック製の花卉包装用容器」に使用するときは、取引者、需要者は、商品の形状を表示するにすぎないものと理解するに止まり、また、本願商標をその指定役務「プラスチック製の花卉運搬用容器の貸与」に使用するときは、役務の提供の用に供するものを表示するにすぎないものと理解するに止まるから、自他商品及び自他役務を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。 したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。 なお、本願商標を構成する図面中、第6/7図ないし第7/7図については、前記図面第1/7図ないし第5/7図の示す立体的形状と合致しないため、立体商標の構成及び態様を特定するものとは認められないことから、当審の審理においては、図面第1/7図ないし第5/7図をもって判断した。 (2)請求人の主張について 請求人は、「本願商標は出願人が発案したプラスチック製の運搬容器であって、花卉業界において一般的に使用される立体的形状でもなく、かつ、ありふれたものでもない。また、バケットによる輸送方法は、出願人等が花卉卸売市場に導入するまで存在しなかった輸送形態である。立体商標の判断は、立体的形状に独創的で、特徴的な変更、装飾等が、その商品分野において採択し得る範囲か否かに加え、取引業界において出願に係る立体的形状が使用されているか、使用されている場合であっても不特定多数の者に使用されている形状であるかを総合的に考慮して判断すべき。」である旨主張している。 しかしながら、たとえ、請求人(出願人)が、本願商標に係る「プラスチック製の花卉運搬用容器,プラスチック製の花卉包装用容器」の立体的形状を発案し、それを用いた輸送形態を導入したとしても、そのことが、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断に影響を及ぼすものではない。 商標法第3条第1項第3号の商品の品質、形状等を表示する標章とは、商品の品質、形状等を表示する標章として認識されるものであれば足り、その標章が現実に使用されていることは必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高裁昭和52年(行ケ)第82号判決参照)。 そして、本願商標に係る立体的形状は、安定感のある形状であると認められることから、本願の指定商品及び指定役務の提供の用に供するものの機能をより効果的に発揮するために採択されたものと容易に理解されるにすぎず、同種の商品が一般に採用し得る範囲内のものにすぎないものであること、前記(1)のとおりであるから、本願商標は、商品の品質、形状等を表示する標章と認識されるというべきである。 そうとすれば、本願商標に係る立体的形状が、請求人によって発案されたことなどを理由に、直ちに自他商品及び自他役務を識別する機能を果たし得るものと認めることはできない。 したがって、本願商標は、その指定商品及び指定役務の提供の用に供するものの形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当であるから、請求人の主張を採用することはできない。 4 使用による識別性について (1)商標法第3条第2項について 出願に係る商標が、指定商品(指定役務)の品質(質)等を表示するものとして商標法第3条第1項第3号から第5号までに該当する場合に、それが同条第2項に該当し、登録が認められるかどうかは、使用に係る商標及び商品(役務)、商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品(役務)の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができるものと認められるかどうかによって決すべきものであり、その場合に、使用に係る商標及び商品(役務)は、原則として出願に係る商標及びその指定商品(指定役務)と同一であることを要するものというべきである。 (2)商標法第3条第2項の該当性について 請求人は、証拠方法として、商標登録願2008-050685において提出した資料1ないし50を援用し、本願商標は、花卉業界において周知著名であるから、商標法第3条第2項に該当する旨主張している。 そこで、前記(1)の観点を踏まえて、本願商標が当該条項の要件を具備するに至っているか否かについて、以下、検討する。 請求人が援用する資料を総合判断するに、請求人は、花卉の運搬、包装、展示等に使用するバケットと称されている複数種類の容器(以下、「バケット」というときがある。)の所有者である(資料2及び4)。そして、請求人の貸与により、それらバケットは、2001年頃から、切花等を水につけたままの状態で、花卉の運搬、包装用として、北海道、本州、九州及び沖縄における花の生産地、市場、中卸、花屋等の間でリサイクルされながら流通しており(資料43、44及び45)、また、そのバケットを用いた、花卉の運搬、輸送及びそれに関するセミナー等の記事が新聞や雑誌等に掲載され (資料3ないし37、39)、さらに、各種イベント等においてバケットを用いた花卉の展示を行っていることがウェブサイトにおける記事から窺える(資料38、40ないし42)。 しかしながら、請求人が援用している資料からは、バケットの使用開始時期、使用期間、使用地域は確認できるものの、バケットの流通(出荷)量は、2001年から2009年3月末までの間に、請求人が各産地へ供給(リサイクル)したバケットの総計であって、供給、回収後再び供給(リサイクル)したものも重複してカウントされているため、実際に使用されているバケットの具体的な数量を確認することができない。 また、新聞や、雑誌に掲載されたバケットのリサイクル記事やウェブサイトにおける記事等を広告宣伝の範疇とみなしたとしても、新聞、雑誌等による記事は、日付、出所等が手書きのものを含めても、2001年から2006年の間に40件程でしかなく、さらに、イベントにおけるバケットの使用を紹介したウェブサイトの記事も、2003年から2007年までの間に10件程度であり、決して宣伝回数が多いとはいえない。 そして、資料には、請求人が原審において本願商標と同一の形状と主張していた「CF-240」のタイプのバケットが掲載されているが、それと本願商標の立体的形状が同一と認めることはできず、また、「CF-240」タイプ以外のバケットも複数種類掲載されているものの、それらの中にも本願商標と同一の立体的形状からなる使用商標を確認することはできない。 そうとすれば、使用に係る商標及び商品又は役務と、出願に係る商標及びその指定商品又は指定役務が同一とはいえないから、本願商標は商標法第3条第2項の要件を満たしているとはいえない。 したがって、本願商標が、その指定商品又は指定役務に使用された結果、請求人の業務に係るものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていると認めることはできないから、本願商標は商標法第3条第2項の適用を受けることはできないと判断するのが相当である。 (3)請求人の主張について 請求人は「本願商標に係る立体的形状のように、同一の形状を基本として使用するが、その用途や目的に応じて形状が多少なりとも変化せざるをえない立体的形状は、花卉業界の取引実情を考慮すると、実質的に同一の立体的形状と認識されてしかるべきものである。」旨主張している。 しかしながら、本願商標と使用に係る商標との同一性について、「商標法3条2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願商標と同一であることを要し、出願商標と類似のもの(例えば、文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら、同条項は、本来的には自他商品識別力がなく、特定人の独占にもなじまない商標について、特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり、実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして、登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると、同条項は、厳格に解釈し適用されるべきものである。」(知財高等裁判所 平成18年6月12日言渡 平成18年(行ケ)第10054号)と判示されていることからすれば、取引の実情を理由に、本願商標と異なる立体的形状の使用をもって、使用による識別性を立証しようとする請求人の主張を採用することはできない。 5 まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるから、これを登録することはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本願商標 第1/7図 第2/7図 第3/7図 第4/7図 第5/7図 第6/7図 第7/7図 |
審理終結日 | 2011-01-19 |
結審通知日 | 2011-01-25 |
審決日 | 2011-03-24 |
出願番号 | 商願2008-50064(T2008-50064) |
審決分類 |
T
1
8・
17-
Z
(X2039)
T 1 8・ 13- Z (X2039) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山根 まり子、長澤 祥子 |
特許庁審判長 |
佐藤 達夫 |
特許庁審判官 |
岩崎 安子 田中 亨子 |
代理人 | 特許業務法人岡田国際特許事務所 |