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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012890045 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない X36
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X36
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X36
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない X36
管理番号 1236539 
審判番号 無効2010-890007 
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-01-22 
確定日 2011-04-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5172417号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5172417号商標(以下「本件商標」という。)は、「配当物語3M」の文字を標準文字により表してなり、平成19年8月13日に登録出願され、第36類「有価証券に係る投資顧問契約に基づく助言,投資一任契約に基づく投資,証券投資信託受益証券の発行・募集・売出し,信託財産の運用指図,証券投資信託に係る信託財産の収益分配金・償還金及び解約金の支払い,前払式証票の発行,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供」を指定役務として平成20年9月17日登録査定、同年10月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4534709号商標(以下「引用商標1」という。)は、「3M THREE-M」の文字を標準文字により表してなり、平成10年4月16日に登録出願され、第35類ないし第42類に属する別掲に記載のとおりの役務を指定役務として平成14年1月11日に設定登録されたものである。また、請求人は「3M」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)及び「スリーエム」の文字からなる商標(以下「引用商標3」という。)を引用している。
以下、引用商標1ないし3を総称するときは、単に「引用商標」という。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標が周知著名な引用商標と類似し、その指定商品(審決注:「指定役務」の誤記と認められる。)への使用により混同のおそれがあることは、甲第3号証として提出する、請求人会社の副秘書役(Assistant Secretary)である Robert Obert W. Sprague の公証付き宣誓供述書の写しによって明らかである。
(1)請求人の周知著名性
請求人は1902年に米国にて設立され、現在では、60カ国以上に139の工場を有すると共に系列会社を有し、189カ国以上に販売拠点を有し、200カ国以上で活動している。これらの系列会社では、「3M」の名称を冠し、「3M」のマーク(引用商標2)を使用してその製品を販売している(甲第3号証)。
また、5万種類以上の商品を取り扱っており、その分野は、電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通関連、産業関連、オフィス関連に亘っている。
請求人は、ニューヨーク証券取引所に上場しており、該市場ではMMMで指標されている。また、請求人は、上場会社中、主要な優良株の会社で構成されているダウジョーンズ工業株30種平均の一社となっている。
さらに、請求人は、様々な主要な国際ビジネス誌においてランキングされている。
上述のように、請求人は日本において、また、国際的にも名声を有する周知著名な企業である。
(2)商標「3M」(引用商標2)の周知著名性
引用商標2は、日本及び国際的に周知著名な優良企業である請求人の商号を構成するハウスマークであって、1906年以来使用されているものであり、請求人のかけがえのない財産である。
かかる引用商標2の価値は、2002年7月30日に発表された Corporate Brand LLC による調査では、上位50ブランド中38位にランクされ、60億米ドルに値する。また、引用商標2は、2002年8月5日に発表されたビジネスウィーク誌によれば、グローバルブランド100の内の一つであり、その価値は15億8千米ドルに値する。
引用商標2は、世界約200カ国で販売されている請求人の商品の殆どに使用されており、その商品群は多岐に亘っている。
請求人は、150カ国で引用商標2についての2000以上の商標登録を有し、日本においても、多数の商標登録を有している。
請求人及びその系列会社は、下記の売り上げをワールドワイドで上げており、その殆どは3Mの商号ないしは引用商標2が付された商品に由来するものである。
Year U.S.$
1999 $15,723,000,000
2000 $16,669,000,000
2001 $16,054,000,000
2002 $16,332,000,000
2003 $18,232,000,000
2004 $20,011,000,000
2005 $21,167,000,000
2006 $22,923,000,000
さらに、請求人は世界中で引用商標2を使用した商品について広告宣伝活動を行っており、その媒体は新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、及びトレードショー等多岐に亘る。また、ドメイン名 www.3m.com 及び www.mmm.co.jp でのウェブサイトにおいても引用商標2を使用した商品の宣伝広告を行っている。請求人のワールドワイドでの広告宣伝費用は下記のとおりである。
Year U.S.$(in millions)
1999 $484,000,000
2000 $544,000,000
2001 $407,000,000
2002 $372,000,000
2003 $405,000,000
2004 $432,000,000
2005 $459,000,000
2006 $471,000,000
また、米国では、2002年3月22日に提訴された 3M Company v. 3M Incorporated 事件において、引用商標2は著名商標であると認定され、米国以外でも、ブラジルにおいて著名商標として認定されている(以上、甲第3号証)。
さらに、WIPOの仲裁センターにおいても、以下の案件で請求人所有の引用商標2が世界的に周知・著名である旨認定されている(甲第4号証)。
・Case No. D2004-0875 re: 3mworldwide.com
・Case No. D2001-0736 re: 3mconsul.com
・Case No. D2001-0420 re: 3mk-mart.com
以上より、引用商標2は、日本国内及び国際的に周知著名商標であることは明らかである。
(3)本件商標と引用商標との類似性
本件商標と引用商標の類似性について考えると、本件商標からは「ハイトウモノガタリスリーエム」若しくは「スリーエム」、引用商標からは「スリーエム」の各称呼が生じる。引用商標1からも、引用商標2の周知著名性に鑑みれば、「スリーエム」の称呼が生じることは明らかである。また、本件商標から「スリーエム」の称呼が「3M」部分に相応して生じることは、上述の引用商標の周知著名性に鑑みて自明の理である。
周知著名商標を包含する商標は原則として該周知著名商標と類似すると判断することは、特許庁の従前の審査例と軌を一にするものである。周知著名商標は、その長年の使用によって識別力が強化されており、また、グッドウィルも化体していることから、周知著名商標を一部に含む商標においては、周知著名商標と一致する部分が要部を形成し、該要部からは全体から生じる称呼とは別に、該要部に相応する称呼が生じる。
本件においては、上述の請求人所有の引用商標の周知著名性に鑑みれば、本件商標の要部は「3M」にあることは明白である。
さらに、本件商標においては、「配当物語」と「3M」とは特に観念的に結合して新たな観念を想起させるものではなく、このことからも本件商標の「3M」の部分から全体の称呼とは別個に、引用商標1と同一の「スリーエム」の称呼が生じることは明らかである。
また、平成19(行ヒ)223審決取消請求事件「つつみのおひなっこや」平成20年9月8日最高裁判所第二小法廷判決においても示されているように、商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁)(甲第5号証)。
本件について上記を適用すると、本件商標は、「配当物語」と「3M」とを組み合わせた結合商標であり、上述の「3M」(引用商標2)の周知著名性に鑑みれば、「取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる」ものである。
さらに、本件商標の「配当物語」の部分は、本件商標の指定役務との関係では識別力が弱く、ひいては、「出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる」とも考えられる。
よって、上記最高裁判所の判例に鑑みても、本件商標は引用商標と類似すると思料する。
(4)したがって、本件商標は、周知著名である引用商標1と称呼及び観念において類似するものであり、また、本件商標の指定役務は引用商標1の指定役務と抵触するから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
本件商標が周知著名である引用商標と類似していることから、混同のおそれが生じるものであることは明らかである。混同を生じるおそれが存することについては、商標審査基準では、著名商標に他の文字、図形等を結合した商標は混同のおそれがあるものと推認する旨規定しているが、本件商標においては、著名引用商標を有する商標であるから、この点からも明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標に接した需要者は、引用商標の著名性故に、引用商標を想起するものであり、本件商標権者は明らかに請求人所有の著名引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する目的で使用するものであるといえる。かかる不正の目的は、本件商標が、周知著名な引用商標を有する構成からも明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号該当性
全国的に著名な引用商標を含んだ本件商標の使用・登録を容認することは、請求人の著名な商標が有する出所表示機能を稀釈化するばかりでなく、請求人の著名商標に化体した業務上の信用に“ただ乗り”することを認めることとなり、健全な取引秩序の維持という商標法の目的に反することになる。
さらに、請求人の引用商標には、これまで長年にわたり培ってきた「ブランド」としての顧客吸引力が備わっている。
したがって、本件商標が請求人の業務と同一の他社の商品について使用されると、請求人の商標の持つ「ブランド」としての顧客吸引力が損なわれ、これが、請求人の商標の標識としての品質保証機能の弱化につながる。
このように、本件商標が引用商標の顧客吸引力へ“ただ乗り”し、当該顧客吸引力を不当に利用するものであることは、諸般の事情を勘案すれば明白なことである。
したがって、本件商標は、取引秩序を乱すものというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号及び同第7号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。
6 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 称呼上の類似性について
被請求人は、答弁書において、本件商標からは「スリーエム」の称呼が生じない旨主張している。しかしながら、「配当物語」と「3M」との部分は一方が漢字で表記され、他方が数字と欧文字とで表記されており、外観上もまとまりよく一体的に表記されているとは言えず、むしろ、分離して認識される可能性が大きい。
さらに、被請求人は「3M」の語は「3ヵ月決算型」であることを表す「3 Months」の略記号であり(答弁書3頁)、「3M」の文字のみが独立して自他役務の識別標識としての機能を発揮するものではない(答弁書7頁)と断言している。しかしながら、本件商標の指定役務は投資信託に関する役務に必ずしも限定されない広汎なものであり、本件商標がその指定役務に使用された際には需要者は、「3M」を「3カ月決算型」を表す略記号であると一義的に認識するものであるとは、被請求人の提出した証拠のみで断ずることは到底できない。
してみれば、広範囲の分野にビジネスを展開する世界的な多角的経営企業として有名な本件請求人会社の略称として周知著名な商標と同一である本件商標の「3M」の部分に本件商標に接した需要者は着目し、該部分から、「スリーエム」の称呼が、全体から生じる称呼とは別に生じ得ると考えるのが相当と思料する。
イ 観念上の類似性について
被請求人は答弁書において、本件商標は「3ヵ月決算型の夢のある投資信託」との意味合いを暗示させるものであり、引用商標1とは観念において非類似である旨主張している。
しかしながら、上述したように「3M」の部分からは一義的に「3カ月決算型」であることを表す「3 Months」の略記号であると認識されるものではない。むしろ、広範囲の分野にビジネスを展開する世界的な多角的経営企業として有名な本件請求人会社の略称として周知著名な商標と同一である本件商標の「3M」の部分に本件商標に接した需要者は着目し、該部分から「スリーエム カンパニー」ないしは本件請求人会社を想起することも多々あると考えられる。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、近年の目覚しい業績の拡大等により頻繁に雑誌等に紹介記事が掲載され、これら雑誌の広告、或いは業界紙、一般紙での紹介記事等を通じて一般大衆に広く認識されるに至っており、本件商標と引用商標とは類似しており、引用商標は特に企業の経営情報に興味のある需要者の間で周知著名であり、引用商標の主要な需要者・消費者である投資者層は本件商標の指定商品の消費者に包含されるばかりではなく、主な需要者・消費者であって、引用商標の使用されている商品の需要者は本件商標の指定商品の需要者になり得ることは明らかであり、さらに、本件請求人会社は多角経営に積極的なことで知られている企業であり、該企業を指称する引用商標においては、新規事業参入又はライセンス等を通じて多様な分野に使用されているという取引の実情がある。
してみれば、周知著名な引用商標と類似の本件商標に接した需要者・消費者は引用商標を連想、想起し、本件商標の指定商品が本件審判請求人若しくはその商標「3M」と何らかの関係があると誤認することは必定であり、混同が生じるおそれがあるといわざるを得ない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件被請求人が引用商標である著名商標「3M」を知得することなく無関係に又は偶然に本件商標を採択・出願したとは考えられない。したがって、本件商標は、請求人所有の著名商標「3M」と類似するものであって、引用商標を流用したものと言わざるを得ない。よって、被請求人は明らかに請求人所有の著名商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する目的で本件商標登録出願をしたものと考えられる。
(4)商標法第4条第1項第7号について
本件商標に接した需要者は、請求人を想起する場面も想定でき、よって、本件商標の登録・使用は取引秩序を乱すものと言わざるを得ない。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第28号証を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標をその指定役務について使用しても、引用商標1との関係で何ら役務の出所につき混同を生ずるおそれはなく、本件商標は、外観、称呼、観念のいずれの点においても、引用商標1に類似するものではない。
なお、請求人の挙げる引用商標のうち、引用商標2及び3は、本件商標の指定役務(以下「本件指定役務」という。)と同一又は類似する役務について商標登録を受けていない。したがって、商標法第4条第1項第11号にいう「他人の登録商標又はこれに類似する商標」に該当する可能性があるのは引用商標1のみであるから、以下においては、本件商標と引用商標1とを対比して、両商標の非類似性を主張する。
(1)本件商標の採択の経緯及び取引実情について
本件商標の称呼及び観念についての主張に先立ち、これに関連する本件商標の採択の経緯及び取引実情について以下に説明する。
本件商標「配当物語3M」は、被請求人の取り扱う投資信託(ファンド)「配当物語」シリーズの名称(愛称)として使用されているものである。上記「配当物語」シリーズにおいては、「配当物語」、「配当物語3M」(本件商標)、「世界配当物語」及び「アジア配当物語」という合計4種類の商標が同一ラインの金融商品の名称(愛称)として使用されている。上記各商標の使用態様を示す「投資信託説明書(交付目論見書)」の写しを添付する(乙第1号証ないし乙第3号証)。なお、当該説明書は、投資信託の特徴、主なリスクと留意点、コストなど、投資判断に不可欠とされる重要な情報が記載されている説明書であり、当該投資信託を購入する投資家に交付することが義務付けられているものである。
上記全ての商標に使用される「配当物語」の語は、好利回りが期待できる夢のあるファンドであることをイメージさせる造語であり、正式名称を「住信 ニュー配当利回り株オープン」とする投資信託の、短く親しみやすい愛称として採択されたものである(乙第1号証)。本件商標「配当物語3M」は、正式名称を「住信ニュー配当利回り株オープン(3ヶ月決算型)」とするファンドの愛称として(乙第1号証)、また、「世界配当物語」及び「アジア配当物語」は、それぞれ、「住信 世界好配当株オープン(毎月決算型)」及び「住信 アジア・オセアニア配当利回り株オープン」の愛称として使用されている(乙第2号証及び乙第3号証)。
即ち、シリーズ商標「配当物語3M」(本件商標)、「世界配当物語」及び「アジア配当物語」は、それぞれの投資信託の特徴を表す文字を基本商標「配当物語」に付加してなるものであるが、本件商標の「3M」部分は「3ヶ月決算型」であることを表しており、該文字は「3 Months」の略記号である。
なお、被請求人は、「配当物語」(登録第5172418号)及び「世界配当物語」(登録第5083313号)についても商標登録を受けている(乙第4及び第5号証)。
以上のとおり、本件商標は特定の意味合いを有しない造語であるが、商標採択時の意図としては、「3ヶ月決算型の夢のある投資信託」という程度の意味合いを需要者に対し暗示するものである。
なお、3ヶ月決算型であることを「3M」という略記号で表すことは、本件指定役務の分野において、一般的に行なわれていることである(乙第6号証)。
(2)称呼上の非類似性について
ア 本件商標は、同一の書体をもって、同一の大きさで、スペースを介することもなく一体的に、外観上まとまりよく表されたものであるばかりでなく、上記(1)のとおり、構成全体でまとまった意味合いを暗示する造語であるから、「ハイトウモノガタリサンエム」又は「ハイトウモノガタリスリーマンス」の一連の称呼を生じる。仮に、本件商標が分離観察された場合であっても、上記(1)のとおり、本件商標の要部が「配当物語」部分にあることはその構成及び使用態様から明らかであり、「3M」部分は「3ヶ月決算型」という意味合いを表す記述的な要素であるから、「ハイトウモノガタリ」の分離称呼が生じる可能性があるとしても、「サンエム」、「スリーマンス」又は「スリーエム」の称呼は生じない。
一方、引用商標1は、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく一体的に表されており、「スリーエムスリーエム」又は「サンエムスリーエム」の称呼を生じる。また、仮に、引用商標1が分離観察された場合には、「スリーエム」の称呼が生じる可能性も否定はできない。
本件商標の一連称呼「ハイトウモノガタリサンエム」又は「ハイトウモノガタリスリーマンス」を、引用商標1から生じる「スリーエムスリーエム」又は「サンエムスリーエム」の一連称呼と比較した場合、両者は、構成音数も異なり、構成音の種類において顕著に相違し、明らかに非類似である。
上記本件商標の一連称呼「ハイトウモノガタリサンエム」又は「ハイトウモノガタリスリーマンス」を引用商標の分離称呼「スリーエム」と比較すれば、両者は構成音の数及び種類において顕著に相違し、明らかに非類似である。仮に、本件商標から「ハイトウモノガタリスリーエム」の称呼が生じるとした場合でも、引用商標1から生じる称呼「スリーエムスリーエム」又は「サンエムスリーエム」と比較した場合は、前半部において「ハイトウモノガタリ」と「スリーエム」という顕著な差異が認められ、引用商標1から生じる「スリーエム」と比較した場合は、前半部における「ハイトウモノガタリ」の有無という顕著な差異が認められるものであるから、いずれの場合も、称呼上、相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標1とは称呼上明らかに非類似である。
イ ところで、請求人は、本件商標の称呼の認定に関し、「周知著名商標を包含する商標は原則として該周知著名商標と類似すると判断することは、特許庁の従前の審査例と軌を一にするもの」であり、本件商標の構成要素中、周知著名商標と一致する「3M」部分が要部を形成し、該要部に相応する称呼「スリーエム」が生じる旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第11号の適用の有無の判断にあたっての留意事項として、特許庁商標課編「商標審査基準〔改定第9版〕」第3の九、5(6)項には、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、・・・・原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」とあるところ、請求人は引用商標2自体の登録を本件指定役務について有していない。引用商標1は、構成全体として、固有の識別力を認められて登録を受けたものであり、引用商標2と同視できるものではない上に、引用商標1は、本件指定役務について需要者の間に広く認識されていない。
したがって、そもそも、上記審査基準にいう「他人の登録商標」に該当する登録商標は存在しない。上記審査基準の商標法第4条第1項第11号の項に、他に、請求人の主張を裏付ける規定はない。特許庁の従前の審査実績に照らしても、周知商標と同一の文字を構成要素に含む商標の登録例は多数存在する(乙第7号証)。
よって、請求人の主張には理由がなく、本件商標から「スリーエム」の称呼が生じるとする根拠となり得ない。
なお、仮に、請求人の引用商標2が特定の商品分野における周知商標であるとしても、当該周知性故に本件商標に接する需要者が請求人の引用商標2を想起し混同を生じるか否かについては、商標法第4条第1項第11号ではなく、同項第15号該当性の考察において行われるべきものであると思料されるので、この点に関しては、後述する。
ウ さらに、請求人は、本件商標から「スリーエム」の分離称呼が生じる理由として、「本件商標においては、『配当物語』と『3M』とは特に観念的に結合して新たな観念を想起させるものではないこと」を挙げているが、前記(1)のとおり、本件商標は全体として「3ヶ月決算型の夢のある投資信託」との意味合いを有するものであるから、上記主張もまた、当を得たものではない。
(3)観念上の非類似性について
本件商標は、一連一体の造語であるから、同じく一連一体の造語と解される引用商標1とは、観念上比較すべくもない。両商標が需要者に想起させる意味合いを比較した場合であっても、本件商標は「3ヶ月決算型の夢のある投資信託」との意味合いを暗示するものであるから、引用商標1が請求人「スリーエムカンパニー」を想起させるとしても、両者は明らかに非類似である。
(4)外観上の非類似性について
同書同大同間隔で横書きされた「配当物語3M」(標準文字)の文字からなる本件商標は、需要者の目を引きやすい冒頭に配された漢字4文字が強い印象を与えるものであって、引用商標1「3M THREE-M」(標準文字)とは、外観上顕著に相違し、明らかに非類似である。
(5)平成19(行ヒ)223審決取消請求事件「つつみのおひなっこや事件」の判示に関する請求人の主張について
請求人は、平成19(行ヒ)223審決取消請求事件「つつみのおひなっこや事件」平成20年9月8日最高裁判所第二小法廷判決における判示を挙げて、本件商標と引用商標1が類似すると解すべき根拠としている。ところで、上記裁判例は、そもそも、「商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されない」との説示からも明らかなとおり、結合商標は、一定の例外を除き、原則として、構成全体をもって認識・把握され、構成全体をもって他の商標との類否を検討すべきものであると説くものである。そして、当該原則に基づき本件商標を全体構成により捉えれば、本件商標は引用商標1とは明らかに類似しないものというべきである。
本件商標が、上記裁判例中に示される例外に該当するものであるという請求人の主張は誤りである。本件商標中「3M」の文字は、本来的に自他商品役務識別力を有しない通常の書体で表された数字一字と欧文字一字の組み合わせであって、一般的に、商品・役務の品番・規格等を表す記号・符号として使用されており、標章の一部として頻繁に採択されている(乙第7号証ないし乙第26号証)。本件指定役務の分野においても、「3ヶ月」の略記号として金融商品一般に使用されている実情がある(乙第6号証)。
一方、請求人の引用商標2「3M」が本件指定役務について使用されているとは、一般的にも知られておらず、当業者である被請求人も知悉しない。甲各号証においても、引用商標2の周知性が本件指定役務の分野に及ぶと解すべき証左はない。「3M」の文字が本件商標中の需要者の目を引きにくい末尾に位置していることからも、これが上記裁判例にいう「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる」部分であるとは到底いうことはできない。
他方、本件商標の構成要素中、「配当物語」の文字は、これ自体被請求人の登録商標であり、需要者の目を引き易い冒頭に位置し、好配当の期待できる夢のある投資信託であることを暗示させる造語として高い識別力を発揮し、実際に請求人の投資信託の愛称として使用されている。
したがって、該「配当物語」部分の存在から「(それ以外の部分から)出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合」に当たらないことも明らかである。
以上のとおり、本件商標は、上記裁判例中に示されるいずれの例外に該当するものでないから、上記最高裁判所の判例に示される結合商標類否判断手法の原則に照らせば、2つの構成要素を組み合わせた結合商標である本件商標について、その一部である「3M」の部分のみを抽出し、この部分だけを引用商標1と比較して商標そのものの類否を判断することは、許されないというべきであり、本件商標を全体構成により捉えれば、引用商標1とは明らかに類似しないものというべきである。
(6)小括
以上の次第で、本件商標は、その構成中の「3M」の文字のみが独立して自他役務の識別標識としての機能を発揮するものではないから、本件商標よりその構成中の「3M」の文字部分のみを分離、抽出し、本件商標と引用商標1とが称呼及び観念において類似する商標であるとする請求人の主張は誤りである。その他、本件商標と引用商標1とを類似の商標とみるべき特別な事情はなく、本件商標と引用商標1とが外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)上記のとおり、本件商標は、スペースを介することもなく一体的に外観上まとまりよく表されているばかりでなく、構成全体として、「3ヶ月決算型の夢のある投資信託」なる意味合いを想起させるものであるから、その構成中の「3M」の文字部分のみが独立して自他役務の識別標識としての機能を発揮するものではない。
甲第3号証によれば、米国企業である請求人は、「5万種類以上の商品を取り扱っており、その分野は、電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通機関、産業関連、オフィス関連に亘り」、引用商標2「3M」は、「世界約200カ国で販売されている請求人の商品の殆どに使用されている」とのことであるが、本件指定役務と上記商品との間に何ら関連性は認められない。また、引用商標の日本国内における周知性については請求人提出の証拠に詳らかではない。引用商標のいずれかが実際に本件指定役務の分野において使用されているか否かは一般的に知られていないばかりでなく、当業者である被請求人も知悉しない。請求人の事業は、日本においては住友スリーエム株式会社が展開するものと理解するが、当該請求人の子会社のホームページ掲載の「製品とサービス」の頁においても、本件指定役務に該当する記載はない(乙第27号証)。したがって、本件商標の使用により請求人の業務に係る役務であるとの誤認混同を生じる可能性は認められない。
(2)さらに、「広義の混同」が生じるか否かについても、その可能性は皆無であるといえる。引用商標2又は3が請求人の名称の略称又は請求人の使用する商標として、主力製品である化学工業品や事務用品の分野において周知であり、請求人が主張するとおり多岐に亘る商品を扱う多角化企業であるとしても、本件商標の指定役務は、「有価証券に係る投資顧問契約に基づく助言、投資一任契約に基づく投資、証券投資信託受益証券の発行・募集・売出し、信託財産の運用指図、証券投資信託に係る信託財産の収益分配金・償還金及び解約金の支払い」等の投資に係る業務であるところ、上記請求人の業務に係る商品と被請求人の業務に係る役務の用途、提供場所等に照らし何らの関連性は認められず、上記役務の提供と上記商品の製造販売が同一事業者によって一般的に行なわれているという事情もない。むしろ、本件指定役務は認可を受けた事業者によって行なわれる専門性の高いサービスであり、サービスを受ける需要者も経済に関心の深い成人に限定されるから、本件指定役務と請求人商品とは取引系統において著しく相違するといえる。
(3)ここで、上記1(1)の本件商標の採択の経緯及び取引の実情を再度確認すると、本件商標「配当物語3M」は、被請求人の取り扱う投資信託(ファンド)「配当物語」シリーズの名称(愛称)として、「配当物語」、「世界配当物語」及び「アジア配当物語」という他の3件の商標と共に、同一ラインの金融商標について使用されているものである。そして、通常の書体で表示された数字一字及び欧文字一字からなる「3M」の文字は、金融商品一般について「3ヶ月配当型」を意味する「3 Months」の略記号として使用されていることは前記のとおりであり(乙第6号証)、当該投資信託を購入しようとする投資家に配布が義務付けられている投資信託説明書(交付目論見書)(乙第1号証)や、被請求人のウェブサイト上の掲載(乙第28号証)においても、本件商標「配当物語3M」には、通常、近接して「3ヶ月配当型」の文字が配されている。このような事情のもと、需要者は、当然に、本件商標の要部は「配当物語」であると認識し、また、他のシリーズ商品・商標との区別のため、本件商標を全体構成をもって認識・把握する。
(4)上記具体的な取引の実情を併せ総合的に判断すれば、需要者が本件商標に接した場合に、本件商標の構成中に「3M」の文字部分を有することのみをもって、引用商標を直ちに想起又は連想し、本件商標を使用した役務が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じるおそれがあるものとは、社会通念からみても到底認められるものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記のとおり、一連一体の造語である本件商標と引用商標とは、明確に区別し得る別異の商標であるから、本件商標は引用商標と類似するものではない。また、本件商標は、被請求人の金融商品「配当物語」と同一ラインの、「3ヶ月配当型」商品の名称(愛称)として、端的にその特色を示すべく採択されたものであって、本件商標中の「3M」の文字部分の位置・大きさ、実際の使用態様等からも明らかであるとおり、本件商標の採択・使用について、被請求人に引用商標の顧客吸引力にただ乗りしようとする不正の目的は皆無である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標の採択・使用に関して、被請求人に不正の目的は皆無であり、本件商標の本件指定役務についての使用により、請求人の業務に係る商品・役務と混同を生じるおそれは認められない。一連一体の造語として認識、把握される本件商標に接した需要者が、本件商標の構成中「3M」の文字部分にのみ着目して請求人を想起することはなく、本件商標の使用・登録は何ら取引秩序を乱すものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号及び同項第7号のいずれにも違反して登録されたものではないから、本件審判の請求は成り立たない。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するというためには、本件商標の登録出願日前の登録出願に係る他人の登録商標の存在が必要であることは、同号の規定から明らかである。しかるに、請求人が引用する引用商標のうち、引用商標2及び3は未登録であり、引用商標1のみが登録商標であって同号の対象となるものであるから、以下、本件商標と引用商標1との類否について検討する。
(2)本件商標は、上記第1のとおり、同書同大の文字を等間隔で外観上まとまりよく一体的に表してなるものである。そして、その構成中の「配当物語」の文字部分は、全体構成の三分の二を占め、看者の注意を強く惹くばかりでなく、「3M」の文字部分は、商品や役務の型式、規格、品番、種類等を表示するための記号、符号として類型的に採択、使用される数字とローマ字1字の組合せの一つとして認識し把握される場合が少なくないといえる。実際、本件商標の指定役務の分野においても、投資信託の「3ヶ月決算型」を示すために「3M」の文字が使用されている事実がある(乙第1号証及び乙第6号証)。
そうすると、本件商標の構成中の「3M」の文字部分は自他役務の識別力がないか極めて弱いものであって、本件商標の自他役務の識別標識としての機能を果たす要部は「配当物語」の文字部分というべきであり、本件商標は、構成全体から「ハイトウモノガタリサンエム」又は「ハイトウモノガタリスリーエム」の称呼を生ずるほか、「ハイトウモノガタリ」の称呼をも生ずることはあっても、「3M」の文字部分のみを捉え、「サンエム」又は「スリーエム」の称呼を生ずることはないというのが自然である。
この点に関し、請求人は、本件商標は、周知著名商標である引用商標2と一致する「3M」の文字部分が要部を形成し、該要部に相応する「スリーエム」の称呼が生ずる旨主張しているが、引用商標2自体は、本件商標の指定役務については登録されていないし、後述のとおり、その周知性が本件商標の指定役務の分野にまで及んでいるものとは必ずしもいえず、むしろ、本件商標については上記のとおり判断するのが相当であるから、請求人の主張は採用することができない。
他方、引用商標1は、上記第2のとおりの構成からなるところ、「3M」の文字と「THREE-M」の文字の間には一字分程の間隔があること、「3M」は「THREE-M」の省略形を表すものとして認識し理解される場合も少くないことなどからすると、全体として「スリーエムスリーエム」の称呼を生ずるほか、「スリーエム」の称呼をも生ずるものといえる。
しかして、本件商標から生ずる「ハイトウモノガタリサンエム」、「ハイトウモノガタリスリーエム」及び「ハイトウモノガタリ」の称呼と、引用商標1から生ずる「スリーエムスリーエム」及び「スリーエム」の称呼とは、構成音数の差、共通する音が少ないこと、相違する音の音質の差異などにより、それぞれを一連に称呼するときは全体の音感、音調が明らかに異なり明瞭に区別することができるものである。
さらに、本件商標と引用商標1とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、また、いずれも親しまれた既成の観念を有する成語を表したものとは認められないから、観念上両者を比較すべくもない。
してみれば、本件商標と引用商標1とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
前示のとおり、本件商標は、外観上まとまりよく一体的に表されているばかりでなく、構成全体をもって自他役務の識別標識としての機能を果たすほか、「3M」の文字は自他商品・役務の識別力がないか極めて弱いものであるため、「配当物語」の文字部分が自他役務の識別標識の要部として認識し把握されることはあっても、「3M」の文字部分のみを分離抽出して称呼観念されるものではない。
これに対し、請求人は、引用商標2が周知著名であるとして、その立証証拠を提出しているが、提出に係る立証証拠は、請求人会社の担当者の宣誓供述書及びWIPO仲裁センターの決定の写しのみであり、その供述を裏付ける客観的な証拠等は一切提出されていない。また、引用商標2が具体的な商品について使用されている状態をはじめ、引用商標2を使用した商品の広告宣伝等の状況については全く不明である。もとより、引用商標2を構成する「3M」の文字自体は、商品・役務の記号、符号として一般に採択使用される数字とローマ字1字の組合せであって、識別標識としての機能は極めて弱いものである。
そして、請求人は、5万種類以上の商品を取り扱い、その分野は電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通関連、産業関連、オフィス関連に亘り、引用商標2は請求人の商品の殆どに使用されている旨主張するが、その商品や引用商標2の使用の実態は明らかでない。また、引用商標2が、本件商標の指定役務の分野において、請求人の業務に係る役務を表示する商標として使用されていることを示す証左はない。
そうすると、請求人が世界的な企業であり、引用商標2が使用されていることが窺えるとしても、請求人の提出に係る証拠をもって、直ちに引用商標2が本件商標の指定役務の分野においても周知著名になっているとは認め難い。
仮に、請求人が主張するように、請求人の取り扱いに係る商品が多岐に亘るものであるとしても、上記商品と本件商標の指定役務とは直接関係するものとは認め難く、両者の関連性は弱いものといえるし、請求人もその関連性については何ら具体的に述べるところがない。
以上を総合すると、引用商標2が特定の商品の分野である程度知られているとしても、本件商標をその指定役務について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、「3M」の文字部分を該役務の記号、符号として認識し把握することはあっても、これから引用商標ないしは請求人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該役務が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
請求人は、引用商標の著名性故に本件商標に接した需要者が引用商標を想起し、本件商標は引用商標の顧客吸引力にただ乗りする不正の目的で使用するものである旨主張する。
しかしながら、本件商標は、その構成中の「3M」の文字部分のみ分離抽出されないこと前示のとおりであるから、本件商標と引用商標とは類似しないものである。
さらに、引用商標のうち、引用商標1は、その使用について具体的な主張、立証が一切されておらず、その周知性は認められないものである。同じく、引用商標2については、前示のとおり、もともと自他商品・役務の識別力の極めて弱いものであって、その周知性が本件商標の指定役務の分野にまで及ぶものとはいえないし、また、引用商標2の表音と認められる引用商標3についても、引用商標2と同様である。
そして、本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標2を連想、想起するようなことがないことは、上記2のとおりである。このことは、周知性が認められない引用商標1及び引用商標の表音と認められる引用商標3についても同様にいえる。
そうすると、請求人の主張は前提を欠くものであって、認めることはできないし、他に、本件商標が、引用商標の顧客吸引力にただ乗りしたり、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであることを認めるに足る具体的な証拠はない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
4 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないし、その指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでもない。また、本件商標は、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、特定の国若しくは国民を侮辱したり、国際信義に反するものともいえない。
そして、前示のとおり、本件商標は、引用商標の顧客吸引力にただ乗りするものではなく、当該顧客吸引力を不当に利用したり、不正の目的をもって使用するものでもないから、その使用が取引秩序を乱すものとはいえない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(引用商標1の指定役務)
第35類
広告,販売促進のための見本市の運営,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,財務書類の作成
第36類
生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,資金の貸付け及び手形の割引,金融情報の提供,財務及び投資に関する分析及び指導,株式市場情報の分析及び提供,企業の信用に関する調査
第37類
建築一式工事,土木一式工事,ガラス工事,鋼構造物工事,左官工事,大工工事,タイル・れんが又はブロックの工事,建具工事,鉄筋工事,塗装工事,内装仕上工事,防水工事,屋根工事,管工事,機械器具設置工事,電気工事,電気通信工事,熱絶縁工事,被服の修理,洗濯,自転車の修理,自動車の修理又は整備,鉄道車両の修理又は整備,二輪自動車の修理又は整備
第38類
移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与,衛星を介した通信
第39類
鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物の輸送の媒介,貨物のこん包,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く)の代理・媒介又は取次ぎ
第40類
布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む),紙の加工,ゴムの加工,石の加工,セラミックの加工,電気めっき,フライス削り,焼きなまし,焼き戻し,溶融めっき,プラスチックフィルムのコーティング加工,汚水処理
第41類
文化・教育目的の展示会の企画・運営,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,図書及び記録の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,興行場の座席の手配,映写フィルムの貸与,録画済みビデオディスク・ビデオテープの貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,家庭用テレビゲームおもちゃ用の記録媒体の貸与,企業の従業者に対する知識の教授
第42類
宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む)の貸与,電子計算機用プログラムの提供,デザインの考案,電子計算機の設計,電子計算機の設計の助言,電子計算機用プログラムの設計,電子計算機用プログラムの設計の助言

審理終結日 2010-11-16 
結審通知日 2010-11-18 
審決日 2010-12-01 
出願番号 商願2007-88463(T2007-88463) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X36)
T 1 11・ 26- Y (X36)
T 1 11・ 22- Y (X36)
T 1 11・ 222- Y (X36)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今田 三男 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2008-10-10 
登録番号 商標登録第5172417号(T5172417) 
商標の称呼 ハイトーモノガタリスリーエム、ハイトーモノガタリサンエム、ハイトーモノガタリ、モノガタリ 
代理人 福島 栄一 
代理人 大向 尚子 
代理人 中山 健一 
代理人 真保 玉緒 

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