ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) X43 |
---|---|
管理番号 | 1235096 |
異議申立番号 | 異議2009-900365 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2009-09-28 |
確定日 | 2011-02-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5241348号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5241348号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5241348号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成20年5月8日に登録出願され、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」を指定役務として、平成21年4月7日に登録査定され、同年6月26日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし同第56号証を提出した。 (1)申立人が引用する商標 申立人が引用する登録商標は、以下の(ア)ないし(カ)に掲げるとおりである。 (ア)登録第154553号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:MARTINI 登録出願日:大正11年11月22日 設定登録日:大正12年7月19日 書換登録日:平成17年9月14日 指定商品 :第33類「アペリティフ(ビールを除く。),ベルモット,リキユール,発泡性の洋酒,発泡性のぶどう酒,ぶどう酒,その他の洋酒」 (イ)登録第603000号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:[別掲(2)のとおり] 登録出願日:昭和35年5月24日 設定登録日:昭和37年12月25日 書換登録日:平成16年10月13日 指定商品 :第33類「ベルモット」 (ウ)国際登録第952994号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:[別掲(3)のとおり] 国際登録日:2007年9月27日 優先権主張:2007年6月1日(Liechtenstein) 設定登録日:平成21年2月6日 指定商品 :第32類「Beers; mineral and aerated waters and other non-alcoholic drinks; fruit drinks and fruit juices; syrups and other preparations for making beverages.」及び第33類「Alcoholic beverages (except beers).」 (エ)国際登録第809425号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:[別掲(4)のとおり] 国際登録日:2003年4月25日 優先権主張:2003年3月31日(Liechtenstein) 設定登録日:平成16年5月14日 指定商品 :第33類「Alcoholic beverages, namely vermouth, aromatic wines and spirits, wines, spirits and liqueurs.」 (オ)国際登録第809427号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:[別掲(5)のとおり] 国際登録日:2003年4月25日 優先権主張:2003年3月31日(Liechtenstein) 設定登録日:平成16年5月14日 指定商品 :第33類「Alcoholic beverages, namely vermouth, aromatic wines and spirits, wines, spirits and liqueurs.」 (カ)国際登録第809428号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:[別掲(6)のとおり](立体商標) 国際登録日:2003年4月25日 優先権主張:2003年3月31日(Liechtenstein) 設定登録日:平成16年5月14日 指定商品 :第33類「Alcoholic beverages, namely vermouth, aromatic wines and spirits, wines, spirits and liqueurs.」 上記の引用商標1ないし6は、いずれも現に有効に存続しており、以下、これらをまとめて単に「引用商標」ということがある。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標は、洋酒について広く一般に知られており、また、「MARTINI」のロゴは、レーシングストライプとして周知・著名である。本件商標は、それらと類似する商標であることは明らかである。 さらに、本件商標の商標権者は、日本を代表する飲料メーカーであり、申立人及びその関連会社とはその業種が同一である。 したがって、本件商標がその指定役務に使用された場合、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (3)商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標は、著名な引用商標と極めて類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。 3 取消理由通知 当審において、平成22年9月30日付けで、商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。 (1)申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 (ア)バカルディジャパン株式会社(以下「バカルディジャパン」という。)のウェブサイトには、引用商標を付したワイン、ヴェルモット、リキュール等の瓶の写真と共に、「ブランドヒストリー」の見出しの下に、「マルティーニ&ロッシ社の起源は1863年にさかのぼります。ワイン、ヴェルモット、リキュールを中心に販路を拡大、イタリア・フランスを中心に事業を広め、・・・順調に成長を遂げ、現在では世界中にネットワークを持つ歴史ある『多国籍企業』として、一貫したブランドイメージを軸に強力なネットワークを維持してきました。更なる発展の転機となったのは1993年のバカルディ・グループとの合併による『バカルディ&マルティーニ社』の誕生です。・・・バカルディ&マルティーニ社は、世界最大手酒類企業グループの内の1社に成長したのです。」と記載され、「ブランドについて」の見出しの下に、「ヴェルモットは、『スティルワインに薬草、香草や果汁などを加えて風味を付けた』アロマタイズド・ワインの一種です。中でも、マルティーニヴェルモットは、圧倒的な世界NO.1ブランドとして知られています。」と記載されている(甲第9号証)。以下、バカルディ&マルティーニ社を単に「バカルディ社」ということがある。バカルディジャパンは、2008年にバカルディ社の100%子会社となった(甲第27号証)。 (イ)バカルディジャパンの発行に係る商品パンフレット(甲第10号証)には、表紙に引用商標2とほぼ同一の標章が掲げられているほか、引用商標1又は2と社会通念上同一の標章を付したワイン等の瓶の写真と共に、「アスティ・スプマンテの世界No.1ブランドマルティーニ」、「現在35%の世界シェアを獲得し、出荷量を伸ばし続けています。」の見出しの下に、「イタリアピエモンテ州AstiDOCG」、「世界出荷量シェア」、「宮内省御用達の歴史」、「王室の信頼の証」等の項目が掲げられ、「イタリアピエモンテ州AstiDOCG」の項目には、「イタリアワイン法によるDOCGの条件である土地、畑、品質や醸造、熟成、質に至るすべての条件をクリアしたDOCG約35銘柄。」と記載され、「宮内省御用達の歴史」の項目には、「古くから日本で親しまれているマルティーニ。大正11年(1922年)に当時の宮内省から帝室御用達として許可証が発行されました。」と記載され、該許可証の写真(拡大写真は甲第19号証)が掲載されている。また、「王室の信頼の証」の項目には、「マルティーニ社の製品は、その品質を高く評価され、その証として各国の王室や団体より、数々の賞やメダルを授与されてきました。現在ではボトルのラベル上に、その一部を見ることができます。・・・マルティーニ・ブランドが幾世紀にもわたり、常に本物を求め革新を続けてきた、伝統と品質の証です。」と記載されている。 (ウ)同じく商品パンフレット(甲第11号証)にも表紙に引用商標2とほぼ同一の標章が掲げられているほか、引用商標1又は2と社会通念上同一の標章を付したワイン等の瓶の写真と共に、「History」、「Asti Spumante DOCG」、「Share」、「Communication」の各項目が掲げられ、「Asti Spumante DOCG」の項目には、「Astiはイタリアワイン法によるDOCGの条件である土地、畑、品質や醸造、熟成、質に至るすべての条件をクリアしたDOCG約35銘柄のうちの1つ。・・・”マルティーニ アスティ”は・・・スプマンテとして、世界的に評価の高いブランドです。」と記載されている。また、「Communication」の項目には、「Martini&Rossi社は、1960年代より文化面のみならず各種スポーツにおいても世界的に支援。・・・特に有名なのがモータースポーツです。ラリーでのランチアやポルシェをはじめ、F1(Fomula 1)でも参戦企業の公式スポンサーになるなど、マルティーニカラーともマルティーニストライプとも呼ばれる赤・青・紺のストライプを通して”MARTINI”の名を世界中に広め、伝えてきました。」と記載され、写真が掲載されている。 同じく甲第13号証の商品パンフレットにも、引用商標1又は2と社会通念上同一といえる標章を付したスパークリングワイン、ヴェルモットの瓶の写真が掲載されている。 (エ)研究社「英和商品名辞典」(1990年発行)には、「Martini マルティーニ,マルチニ」の項目に、「イタリアMartini & Rossi I.V.L.A.S.の略・通称,同社製のヴェルモット.bianco,rosso,dry,extra dryの4種がある。・・・同酒を基酒として、ジンまたはウォッカ・オレンジビターなどを加えたカクテルも,Martiniと呼ばれる.」と記載され(甲第30号証)、柴田書店「新版世界の酒事典」(1982年発行)には、「マルティーニ・ロッシ(Martini & Rossi)」の項目に、「ベルモットの醸造会社名.18世紀の初めにトリノに住むマルティーニ・ロッシが,アペリティフとしてベルモットの製造をはじめ,その普及をはかるため,当時まで,ジン・アンド・イットといわれていた混成飲料に,マルティーニ・ベルモットを使用してマルティーニ・カクテルと名付けて売り出した.これが1845年頃から『カクテルの王様』といわれ,愛飲されるようになった.」と記載されている(甲第31号証)。 (オ)講談社「世界の名酒事典’84?’85年度版」(昭和58年発行)には、「Martini & Rossi I.V.L.A.S.」「マルティーニ・ロッシ社」の見出しの下に、引用商標1又は2と社会通念上同一といえる標章を付したヴェルモットの瓶の写真と共に商品が紹介されている。同種の紹介は、「世界の名酒事典」の’87-’88年版、’94年版、’97年版、2000年版、2006年版、2008-09年版においても行われている(甲第20ないし第26号証)。 (カ)我が国においては、引用商標を使用したスパークリングワイン、ヴェルモット及びリキュール(以下「マルティーニ・ブランドの洋酒」という。)は、1995年以前はサッポロ洋酒、日欧商事等の代理店を通して販売されてきたが、1996年からはバカルディジャパンの前身であるビー・ビー・アール ジャパン及びイー・エス・ジャパンにより販売されており(甲第20ないし第27号証)、1998年から2009年までのマルティーニ・ブランドの洋酒の売上高は次のとおりとされる(甲第28及び第29号証)。1998年約1億8500万円、1999年約1億8200万円、2000年約1億3100万円、2001年約1億3000万円、2002年約1億4800万円、2003年約1億4700万円、2004年約1億5600万円、2005年約1億7300万円、2006年約1億9500万円、2007年約2億3400万円、2008年約2億6700万円、2009年約1億1500万円。 (キ)マルティーニ・ブランドの洋酒は、マイカル、マルエツ、トリセン、エーエムピーエム、ドンキホーテ、マインマート等のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ディスカウントストア等で取り扱われ販売され、店頭ディスプレー等も行われている(甲第32ないし第38号証)。また、多くのレストラン、居酒屋、バー等の飲食店においても提供されている(甲第39号証)。 (ク)雑誌「NAVI」2007年9月号(株式会社二玄社発行)にマルティーニ・ブランドの洋酒が特集記事で掲載され、以降計4号に掲載された(甲第40及び第42号証)。また、本件商標の登録出願後ではあるが、雑誌「WANDS(ウォンズ)」2009年10月号、雑誌「EDGE」2009年8月号、雑誌「CREA(クレア)」2009年12月号にもマルティーニ・ブランドの洋酒に係る広告・記事が掲載された(甲第40及び第43号証)。 (ケ)モータースポーツのF1(Formura1)は、日本でも人気が高くテレビ放映がされており、引用商標2とほぼ同一の標章がスポーツカーやサーキットの塀に表示されている状態が視聴者の目に付くところとなっている(甲第40号証)。 (コ)マルティーニ・ブランドの洋酒の販売に当たっては、引用商標2と社会通念上同一といえる標章を付したメモホルダー、ラッピングギフト袋、ステッカー等の販促品が用いられている(甲第45ないし第54号証)。 (2)上記(1)の認定事実によれば、引用商標1及び2は、バカルディ社及びその関連企業の業務に係る商品「スパークリングワイン、ヴェルモット及びリキュール」について使用する商標として、イタリアを始めとする外国及び我が国において、本件商標の登録出願時には既に、取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。 (3)他方、本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、左端に配された図形と「SOFT MARTINI」の文字とは、視覚上分離して看取されるばかりでなく、両者が常に不可分一体にのみ認識されるべき格別の理由は見いだすことができない。 そうすると、本件商標は、読み易い文字部分を捉え、これより生ずる称呼をもって取引に資される場合も少なくないものといえる。そして、上記文字部分のうち、「SOFT」の文字は、「口当たりのよい、軽い、甘口の<酒など>」等の意味を有する英語として親しまれており、酒類の商品はもとより、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」等についても自他商品・役務の識別力がないか極めて弱いものである。また、「MARTINI」の文字は、前示のとおり周知著名となっている引用商標1と同一の綴りである。 これらを総合すれば、本件商標がその指定役務に使用された場合、取引者・需要者は、本件商標から「MARTINI」の文字部分のみを看取し、周知著名な引用商標1又は2を観念し得るものである。また、称呼においても、本件商標の文字部分から生じる「ソフトマルティーニ」の称呼が比較的冗長であることからすると、後半部分から「マルティーニ」との称呼をも生ずるものというべきである。 これに対し、引用商標1及び2は、「MARTINI」の文字よりなる又は該文字を有するものであり、いずれも「マルティーニ」の称呼を生ずるものである。 してみれば、本件商標と引用商標1及び2とは、外観において「MARTINI」の綴りを同一にし、かつ「マルティーニ」の称呼を共通にするものであり、さらに、本件商標は引用商標1又は2を観念し得るものであるから、両商標は、類似の商標といわなければならない。 (4)ところで、本件商標の商標権者は、日本を代表する飲料メーカーであって、ウイスキー、ブランデー、リキュール、ワイン、ビール等のアルコール飲料を販売していることは周知の事実である。 そうすると、本件商標の商標権者は、バカルディ社及びその関連企業とは、共にアルコール飲料の製造販売を行う同業者といえるから、前示のとおり周知著名となっている引用商標1及び2並びにバカルディ社の存在を知らなかったものとはいい難く、引用商標1及び2と同一の「MARTINI」の文字を構成中に含み、引用商標1及び2と類似する本件商標を偶然に採択したものとはいえない。 してみれば、本件商標は、周知著名な引用商標1及び2に化体した名声、信用等にただ乗りし、不正の利益を得る目的、他人たるバカルディ社等に損害を加える目的等の不正の目的をもって使用するものといわざるを得ない。 (5)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。 4 商標権者の意見 上記3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。 5 当審の判断 本件商標についてした先の取消理由は、妥当なものと認められる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたといわざるを得ないから、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
<別掲> (1)本件商標 (2)引用商標2 (色彩は原本参照) (3)引用商標3 (4)引用商標4 (色彩は原本参照) (5)引用商標5 (色彩は原本参照) (6)引用商標6 (色彩は原本参照) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
異議決定日 | 2010-12-24 |
出願番号 | 商願2008-35449(T2008-35449) |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Z
(X43)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 大島 勉 |
特許庁審判長 |
井岡 賢一 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 末武 久佳 |
登録日 | 2009-06-26 |
登録番号 | 商標登録第5241348号(T5241348) |
権利者 | サントリーホールディングス株式会社 |
商標の称呼 | ソフトマルティーニ、ソフトマティーニ、ソフト、マルティーニ、マティーニ |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 松尾 和子 |
代理人 | 井滝 裕敬 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 藤倉 大作 |