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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y29
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y29
管理番号 1233417 
審判番号 無効2009-890126 
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-11-20 
確定日 2011-03-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第4920741号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4920741号の指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4920741号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハーブヨーグルトン」平成17年3月14日に登録出願、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」を指定商品として、同年11月29日に登録査定、平成18年1月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4722030号商標(以下「引用商標」という。)は、「ヨーグルトン」の片仮名を標準文字で表しててなり、平成14年10月10日に登録出願、第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」を指定商品として、平成15年10月31日に設定登録され、現に有効に存続するものである

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証(枝番を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標は、「ハーブヨーグルトン」の片仮名からなる標準文字商標である。
「ハーブヨーグルトン」には、全体として特定の意味観念が生じているわけではない。
しかも、標準文字商標であるため、外観的な一連不可分性も特徴とは認められない。したがって、本件商標は、必ずしも常に一体不可分の造語として認識されるべきではない。
(2)一方、当該商標の構成をみると、語頭に「ハーブ」なる字句があるが、ハーブとは、「薬草、香味料とする草の総称」(広辞苑)である。
そこで、「ハーブ」について指定商品との関係で調査してみると「草本性の植物のこと」とあり、これは食用として利用されたり、薬用として利用されたり、香りを利用したりする有用植物であるとされている(甲4、甲6、甲19)。しかも「ハーブ一覧」をみると、ハーブには料理用のハーブが分類されて多数あることが解る(甲5)。また、ハーブ料理というのも多数あり(甲7、甲8)、ハーブ料理専門の本が多数発行されている(甲8)。このことからハーブ料理は、料理の一分野を占めているというのが実態である。
また、「ハーブ」は家畜の飼料としても利用されており、ハーブ飼料として商品化されている(甲10?甲18)。そして、このハーブ飼料で育った豚、牛、鶏、卵、水産物などを、ハーブ豚、ハーブ牛、ハーブ鶏、ハーブ卵、ハーブ水産物と称しており、これらの食肉類や肉製品及び水産物や、これらを用いた料理や加工食品などの品質表示としてもハーブ豚、ハーブ牛、ハーブ卵、ハーブ鶏、ハーブ水産物と表示したり、「ハーブ」の文字を付けた結合表示が普通に用いられている(甲19?甲24)。
このような、一般的、恒常的な取引の実情を考慮すると、本件商標は「ハーブ」と「ヨーグルトン」とに分離観察して、要部観察をする必要性がある。
つまり、本件商標「ハーブヨーグルトン」の構成中「ハーブ」の部分は指定商品との関係では品質表示部分として認識され、「ヨーグルトン」の部分は自他商品識別力のあるいわゆる要部になると認識するのが、一般消費者や需要者の自然な認識の仕方である。
したがって、本件商標からは、構成文字の全体観察から生じる「ハーブヨーグルトン」の称呼だけでなく「ヨーグルトン」の称呼も生ずるものである。
なお、本件商標権者が本件商標をどのような使い方をしているかを確認してみると、本件商標権者は、井田養豚という豚の生産者であり、主に株式会社小林畜産という卸売り業者を通して販売している。株式会社小林畜産のホームページによると、「ハーブヨーグルトン」は、ハーブ入り発酵リキッドを食べて育った新しい豚肉です。ハーブ入り発酵リキッド飼料とは食品製造副産物(麺、豆腐、米飯)とハーブ入り穀物飼料発酵液を混合して製造した安全・高品質な飼料です。」と記載されている。
この記載から明らかなように本件商標権者は、「ハーブヨーグルトン」を意味のない造語とは考えておらず、商標構成中の「ハーブ」の字句は、ハーブで育った豚という品質表示する意味であることを明確にしている(甲26)。
また、本件商標の使用の仕方からは、権利者の養豚事業は、近年注目されている発酵リキッド飼料を給餌方式の養豚技術とハーブを食べさせて豚を飼育する方式の周知養豚技術を組み合わせた方式で行っていること。そして商標を「ハーブヨーグルトン」としたのは、ブランド化されて周知になっている本審判請求人の周知商標「ヨーグルトン」に、人気のハーブ豚であることを示す「ハーブ」を組み合わせただけのものと解するのが正しい認識・把握の仕方である。
加えて、商標構成にハーブの文字が含まれている商標(指定区分第29類)について、指定商品をハーブを用いたものに限定した記載になっている(甲27?甲34)。
(3)請求人の利害関係と引用商標の周知性
請求人である朝霧ヨーグル豚販売協同組合は、朝霧ヨーグル豚の共同購入及び組合員への販売並びに共同宣伝、共同商品開発を主業務とする肉卸売業者であり、平成15年2月に設立し、国内の食品リサイクル副産物を原料にした発酵リキッド飼料を給与して豚を育てるという環境に優しい養豚技術と、環境の良い富士山麗朝霧高原という地域特性を生かして、ブランド豚を生産し、これを地域特産品にして地域おこしをする事業を行い、生産されたブランド豚の名称を、「ヨーグル豚」、「ヨーグルトン」、「朝霧ヨーグル豚」と名付けて商標登録している。そして、当該商標を付した豚肉や肉製品は、「美味、安全、安心」であることを謳って盛大な宣伝・販売活動を継続的に繰り返しおこなってきた(甲35)。このような「朝霧ヨーグル豚による地域おこし」は、2003年に事業の環境先進性と地域ぐるみの取り組みが認められ、第9回日本計画行政学会計画賞(優秀賞)や第14回静岡ニュービジネス大賞などを受賞している。その結果、富士宮市や静岡県などの地方自治体や(財)地域活性化センターで静岡県富士宮市の特産品として認められるようになり地域ブランド化がかなり定着しつつある。また最近では、JAPANブランド育成支援事業に採択されて、世界的ブランド化に向けて事業を展開すべくブランド戦略を進めているところである。
そして、例えば、平成15年11月6日に発行された日本農業新聞に掲載された(甲42)ことにより、少なくとも業界では全国的に「ヨーグルトン」、「ヨーグル豚」、「朝霧ヨーグル豚」が広く知られるようになった。その後、財団法人日本食肉消費総合センターの「銘柄豚肉ハンドブック2005」にも掲載されるようになった。これらの事実の積み重ねによって、商標「ヨーグルトン」、「ヨーグル豚」、「朝霧ヨーグル豚」は、全国的にも周知になっているのである。
これに対し、本件商標「ハーブヨーグルトン」の出願(平成17年3月14日)は、引用商標「ヨーグルトン」の出願日(平成14年10月10日)から2年5か月後のことであり、朝霧ヨーグル豚販売協同組合が引用商標を使用開始してからでも2年後のことである。したがって、当該「ヨーグルトン」を造語商標としたのは請求人である朝霧ヨーグル豚販売協同組合であって、本件商標権者ではない。しかも、本件商標権者の養豚技術は、本件商標権者と基本的に同じ発酵リキッド飼料を食べさせる方式を採用し、これにハーブを入れて飼育する改良方法であることを表明して、事業化している(甲26)。両者は、同業者であるだけでなく、競合する同じ豚肉を基本的に同じ方式で養豚事業をする者同志である。同じ業界人として意識しないわけがない。したがって、本件商標権利者が商標を「ハーブヨーグルトン」としたのは、同業者の周知商標「ヨーグルトン」に品質表示の「ハーブ」を加えてハーブ豚であることを示そうとしたものであること明らかである。
このため、関連する一般消費者や販売業者や流通業者や飲食店業界では、両商標が商標登録になって並存するのは紛らわしいとして混乱をおこしている。また、マスコミやブログでも商標問題として話題になっているのである(甲40、甲41)。
(4)前述のとおり、本件商標は、「ヨーグルトン」の文字部分が自他商品の識別力のあるいわゆる要部であり、構成文字の全体観察から生じる「ハーブヨーグルトン」の称呼だけでなく「ヨーグルトン」の称呼も生ずるものである。
これに対し、引用商標は、「ヨーグルトン」の片仮名からなる標準文字商標である。この商標からは、「ヨーグルトン」なる称呼が生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標を離隔観察により両商標構成を比較すると、商標の要部が共通しており、称呼において類似している。
次に、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とを比較すると、本件商標の指定商品中、「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」の部分については、引用商標の指定商品と同一であり、本件商標の指定商品中、「食用油脂,乳製品」は、引用商標の指定商品と非類似である。
(5)よって、本件商標の指定商品中、「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」の部分については、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録無効にされるべきものである。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標の構成中「ハーブ」の文字は、食品の原材料を示したり、ハーブを入れた料理や食品を表示するものであり、或いはハーブ入り飼料で飼育された「ハーブ豚」、「ハーブ牛」、「ハーブ鶏」、「ハーブ卵」、「ハーブ水産物」などの食肉類や肉製品や魚介類や卵や加工食品の品質を表示するものとして普通に用いられている一般用語である。
したがって、本件商標を、指定商品に使用すると、それは上記のようなハーブを含んだ商品やハーブ入り飼料で飼育された肉類や魚類などの商品ではないかと認識するので、これ以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じせしめるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当し、登録無効にされるべきものである。
3 むすび
叙上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反して登録されたものであるので、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、「ハーブヨーグルトン」と片仮名で同書、同大、同間隔に書してなり、とくに意味のない造語である。しかも、「ハーブ」という語句が語頭にあって、「ハーブヨーグルトン」と淀みなく称呼でき、語呂、語調も良いことから、一体不可分として捉えられるべきであり、本件商標より、「ヨーグルトン」のみを取り出さなくてはならない格別な理由は存在しないと言うべきである。
また、本件商標は、上記のとおり一体不可分であって特に意味のない造語であり、また、引用商標も請求人も認めているとおり特に意味のない造語であるが、係る語頭に「ハーブ(HERB)」を付けた商標が称呼上非類似と認められることは、特許庁の過去の登録例からして明らかである(乙1の1?18,乙2)
そして、「ハーブヨーグルトン」の語句が本件商標の指定商品の業界に広く知られ、また、広く使用されている事実は、被請求人の本件商標以外に存在していない。また、引用商標の周知性については、日本農業新聞に記載されている商標の態様は、「ヨーグル豚」であって、「ヨーグルトン」、ではない上に、1回程度発行部数の限られた新聞に記載されたからといって、それだけで周知性を取得できるものではないことは、過去の審・判決例からして明らかなことである。
よって、本件商標は、「ハーブヨーグルトン」のみの称呼が発生し、引用商標は「ヨーグルトン」のみの称呼が発生することから、称呼上非類似であり、外観、観念も類似しないことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、造語で、かつ一体不可分の「ハーブヨーグルトン」であって、そこから「ハーブ」のみを取り出して商品の品質につき誤認混同を生じるおそれがあるといっても意味のないことである。また、本件商標は、「ハーブ」の語句と組み合わせて、「豚」、「牛」、「鶏」、「サーモン」などの具体的な家畜や魚類などの普通名詞を用いてはいない。したがって、「ハーブ」を具体的な豚や、牛、鶏などの家畜やサーモンのような魚類の飼料、餌として用いる使用例があったとしても、そのことから直ちに本件商標が商品の品質につき誤認混同を生じるおそれがあるとまでは言うことができない。
また、乙第1号証の1ないし18及び乙第3号証の1ないし16の登録例によれば、「ハーブ」あるいは「HERB」の語句を他の語句と組み合わせた商標であっても、指定商品に「ハーブを用いた」、「ハーブ入りの」、「ハーブを食べさせて育てた」等、「ハーブ」という語句を何らかの形で指定商品に使用するように求められてはいない。さらにその登録例には、「ハーブ」と組み合わせた商標本体に意味のある具体的な商品の普通名称(豚、牛、鶏といった)のような語句を用いていても、「ハーブ」という語句を何らかの形で指定商品に使用するように求められてはいないものが多数存在している。このことは取りも直さず、「ハーブ」を家畜や魚類等の飼料や餌、あるいは肉等に用いることが知られていても、本件商標のように、指定商品との関係で意味のない語句の前段に「ハーブ」という語句を用いたものは、そのことにより、一層指定商品の品質につき誤認混同を生ずるおそれがなく、なんら問題がないということを雄弁に物語る何よりの証拠である。また、以上のことから、本件商標は、請求人の主張するような意味合いを直ちに看取させるとは言えるものではなく、さらに、特定の商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものとして取引者、一般需要者に認識、把握されるものとも言うことができないものである。
よって、本件商標には、商標法第4条第1項第16号に規定する無効事由は存在しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に該当する無効事由は存在していない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、は、「ハーブヨーグルトン」の片仮名よりなるものである。外観上は、標準文字により、かつ、等間隔にまとまりよく表されてなるものであるが、全体が9文字とやや多いものであり、構成全体より生ずる「ハーブヨーグルトン」の称呼は、長音を含めて9音とやや冗長といえるものである。また、「ハーブヨーグルトン」は、特定の意味合いをもって知られている語とは認められない。
イ ところで、「ハーブ」について、請求人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)ハーブは、「薬草、香味料とする草の総称」を意味する語であり、薬用のほか、料理用に多数のハーブが用いられるものである(甲4?甲9)。
(イ)ハーブを加えた飼料で育てた豚等は、ハーブの持つ自然な薬効により動物を健康にするだけではなく、獣臭をなくす、風味や鮮度を長持ちさせるといった畜産物の品質を向上させる効果があり、ハーブ入りの飼料が製造、販売され、豚、牛、鶏等の家畜に使用されている(甲10?甲26)。また、ハーブ入りの飼料により育てられた家畜を「ハーブ豚」、「ハーブ牛」、「ハーブ鶏」、「ハーブさば」などと称し(甲18ほか)、その食肉等がインターネット店舗(甲20?甲22)、スーパーマーケット(甲23)、ファーストフード(甲17)を通して一般消費者に提供されていることが認められる。
(ウ)以上によれば、「ハーブ」は、「薬草、香味料とする草の総称」を意味する語として、一般に広く知られているものということができる。
ウ 本件商標は、前述のとおり、構成全体として特定の意味合いを生ずるものではなく、構成文字数は9文字とやや多いものであり、構成全体より生ずる「ハーブヨーグルトン」の称呼も冗長であること、加えて、「ハーブ」の語が上記(2)のとおり、一般に広く知られているものであることからすると、語頭部の「ハーブ」の文字より、「ハーブ(薬草、香味料とする草の総称)」を認識し、本件商標が、「ハーブ」と「ヨーグルトン」を結合してなるものと理解する場合も少なからずあるというべきである。
そして、「ハーブ」の語は、前記イのとおり、食品を取り扱う業界においては、「ハーブ」が食品の原材料として使用されているものであること及び家畜の飼料としても使用され「ハーブ」を飼料として飼育した家畜の肉は品質が良いと好評であることから、本件商標中の「ハーブ」の文字部分は、自他商品の識別力が無いか又は極めて弱い部分であると認められる。
そうすると、本件商標は、その構成中の「ヨーグルトン」の文字部分が自他商品の識別力を有する部分というべきである。
エ 被請求人は、本件商標は、まとまりよく表された造語であって、「ハーブヨーグルトン」の称呼もよどみなく称呼できることから、一体不可分として捉えられるべきである旨主張している。
しかしながら、商標は、その構成全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して類否判断をすることは許されないが、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際において、各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常にその構成全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼及び観念が生じることがあると解されるところ、本件商標は、前述のとおり、各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないから、その主張は採用できない。
また、被請求人は、特に意味のない造語の商標が一体不可分として登録された登録例をあげ、本件商標についても一体不可分としてのみ捉えられる旨主張している。
しかしながら、上記登録例は、本件商標とは構成する文字及び文字数等において事案を異にするものであるから、上記認定を左右するものではない。
さらに、被請求人は、「ハーブ」の文字を含む登録商標について、その「ハーブ」の文字に対応する指定商品の限定がなされていないことからも、「ハーブ」と結合した造語の商標は、構成全体をもって一体不可分の商標である旨主張している。
しかしながら、商標に接する需要者が、当該商標よりどのような品質の商品であるかを理解することと、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるかは、別異のことであるから、被請求人の主張はその前提において誤りである。
オ してみれば、本件商標は、構成全体より、「ハーブヨーグルトン」の称呼を生じ、その要部と認められる「ヨーグルトン」の文字部分より「ヨーグルトン」の称呼を生ずるものというのが相当である。また、本件商標は、特定の観念は生じないものと認められる。
(2)引用商標について
引用商標は、「ヨーグルトン」の片仮名文字を標準文字で書してなり、特定の意味を有しない造語よりなるものであるから、該構成文字に相応して「ヨーグルトン」の称呼を生ずるが、特定の観念を有しないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標の要部である「ヨーグルトン」の文字部分と引用商標とは、「ヨーグルトン」の文字を共通にするものであるから、外観上類似するものということができる。
また、本件商標と引用商標とは、前記のとおり、いずれも「ヨーグルトン」の称呼を生ずるものである。
さらに、観念についてみると、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないから、比較することができないものである。
してみれば、本件商標と引用商標は、観念において比較できないものであるとしても、「ヨーグルトン」の称呼を共通にし外観も類似する互いに相紛らわしい類似の商標であるというのが相当である。
(4)本件商標の指定商品中、「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」引用商標の指定商品と同一と認められる。
(5)したがって、本件商標の登録は、指定商品「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」について、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものである。
2 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、「ハーブヨーグルトン」の文字を書してなるものであり、その構成中の「ハーブ」の文字を書してなるものであるが、一般に「ハーブ」が各種料理の材料等に使用されることは認められるものの、本件指定商品がについて、その原材料にハーブが使用されることが一般的に行われる商品であるとまでは、請求人の提出した証拠によっては認めることができず、「ハーブ」との関連性がないか又は関連性の弱い商品といえるものである。
また、ハーブ入り飼料で飼育された家畜(の食肉等)を使用した商品について、「ハーブ」の語が、当該飼料で飼育されたことを表示するものとして使用されている事実も見受けられない。
そうとすると、本件商標に接する取引者、需要者が、「ハーブを含んだ商品」あるいは「ハーブ入り使用で飼育された肉類、魚類などの商品であると認識するとはいえないから、本件商標は、その指定商品に使用しても商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
3 結論
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に該当するから、商標法第46条1項の規定により、その登録を無効とし、その余の商品については、商標法第4条第1項第第16号に違反して登録されたものではないから、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2010-05-18 
結審通知日 2010-05-20 
審決日 2010-06-02 
出願番号 商願2005-21874(T2005-21874) 
審決分類 T 1 11・ 272- ZC (Y29)
T 1 11・ 262- ZC (Y29)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 深沢 美沙子 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 内山 進
井出 英一郎
登録日 2006-01-13 
登録番号 商標登録第4920741号(T4920741) 
商標の称呼 ハーブヨーグルトン、ヨーグルトン 
代理人 伊藤 捷雄 
代理人 大津 洋夫 

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