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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y18 |
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管理番号 | 1230077 |
審判番号 | 無効2010-890021 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-03-30 |
確定日 | 2010-12-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4776351号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4776351号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4776351号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成15年10月17日に登録出願され、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」を指定商品として、平成16年6月4日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号ないし第79号証を提出した。 1 引用商標 (1)本件商標が、商標法第4条第1項第19号に該当するとして、請求人が引用する登録第4345512号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成7年5月2日に登録出願され、第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット,レザージャケット,防寒用帽子,履物」を指定商品として、平成11年12月17日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 (2)同じく登録第4376738号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、1995年1月24日にしたアメリカ合衆国を第1国出願とするパリ条約に基づく優先権を主張して平成7年7月24日に登録出願され、第25類「パーカ,絶縁材からなるジャケット,レザージャケット,防寒用帽子,ヘッドバンド」を指定商品として、平成12年4月14日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 (3)同じく登録第4419411号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、平成8年3月6日に登録出願され、第25類「アメリカ製のパーカ,アメリカ製のジャケット,アメリカ製のティーシャツ,アメリカ製のパンツ,その他のアメリカ製の下着,アメリカ製のジャージー生地からなる長袖シャツ,アメリカ製のデニム生地からなるズボン,アメリカ製のデニム生地からなるその他の被服,アメリカ製の防寒用帽子,アメリカ製の履物」を指定商品として、平成12年9月22日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 (4)同じく登録第4419412号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲5のとおりの構成よりなり、平成8年3月6日に登録出願され、第25類「パーカ,ジャケット,ティーシャツ,パンツ,その他の下着,ジャージー生地からなる長袖シャツ,デニム生地からなるズボン,デニム生地からなるその他の被服,防寒用帽子,履物」を指定商品として、平成12年9月22日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 (5)同じく登録第4985520号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲6のとおりの構成よりなり、平成12年12月27日に登録出願され、第25類「被服,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成18年9月8日に設定登録されたものである。 (以下、一括していうときは「引用各商標」という。) 2 請求の理由 (1)本件商標と引用各商標との類否について 本件商標は、別掲1のとおり、熊の図を描いてなる構成に徴し、「クマ」「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。 これに対して、引用各商標は、別掲2ないし6のとおり、「熊の図形」と「Bear」の文字部分より「クマ」「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものである。 そうしてみると、本件商標と引用各商標とは、「クマ」「ベアー」の称呼、「熊」の観念を共通にする類似の商標である。 被請求人は、本件商標と同じ区分、第18類において、本件商標とほぼ同じ商品「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品とする「USBEAR」の文字よりなる登録第4567137号商標(甲第7号証)を保有している。 そして、後に詳述する被請求人の業務(ライセンス業)の実情、使用の実情から見て、本件商標は、「USBEAR」の文字よりなる登録第4567137号商標と組み合わせることによって、取引者、需要者者間に著名となっている請求人の商標と類似する商標又は混同を生じさせる商標の態様にて使用するという不正の目的をもって出願し、登録を受けたものというべきである。 (2)請求人の商標の著名性 請求人は、「Bear U.S.A.,Inc.」の商号にて、その商号に由来する黒の輪郭線で描いた熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用して、1994年(平成6年)より、アメリカ、日本においてジャケット、パーカ、靴等の製造、販売をしてきたところであり、その品質、デザインが若者を中心したストリートファッションのアイテムとして大いにヒットし、これがアメリカの人気音楽番組「MTV」に取り上げられたことから、爆発的な人気を博したものである(甲第8号及び第9号証)。 そして、その人気の余波は日本、イギリスにも及び当業者のみならず需要者間に広く知られるに至ったものである。 請求人の商号に由来する黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品が人気を博すにつれ、その商品そのものが「THE SOURCE MAGAZINE」(ヒップホップミュージック誌)等の各種雑誌でも掲載され、あるいは記事として取り上げられて益々その人気が高まってきたものである(甲第9号ないし第18号証)。 請求人は、その商品の普及のために、商品パンフレットを作成してアメリカ国内はもとより、日本、イギリスの商社、バイヤー等を通じて広く配布すると共に、「VIBE」、「ASAYAN」「繊研新聞」等の雑誌、新聞に積極的に広告をしてきたことから、請求人の商号に由来する黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、本件商標の出願前には、取引者、需要者間に著名となっていたものである(甲第8号ないし第40号、第43号ないし第52号証)。 請求人の黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標を使用した商品があまりに人気を博したことから、我が国において大量の偽物が出回ったため、一時日本への出荷を停止せざるを得ない状況に追い込まれたのである(甲第41号証)。 そして、平成8年4月25日には、偽商品を販売していた業者が摘発されたという新聞記事が掲載されたのである(甲第42号証)。 このような状況を打開するため、請求人は1996年4月以来、新聞、雑誌に偽商品についての「警告広告」あるいは「注意広告」を何度も掲載してきたところである(甲第28号ないし第40号、第43号ないし第52号証)。 上述したとおり、請求人の黒の輪郭線で描いたという特徴のある熊の図と商号の「Bear U.S.A」の文字とを結合した商標は、著名となり、それを取り上げた新聞、雑誌等の記事において「ベアユーエスエー」あるいは単に「ベアー」として紹介されるほどになっているのである。 請求人は、我が国において大量の偽物が出回ったことから、それまで使用していた商標が希釈化されつつあったため、商標をより商品に適した構成とすべく、また偽物対策をも含め、平成8年(1996年)より、黒の輪郭線をもって描かれたという特徴のある熊の図を描き、その輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「Bear」の文字を書し、輪郭線の外側に「USA」の文字を書した構成よりなる商標(甲第4号及び第6号証)に変更し、以来これを使用してきているものであり、需要者、取引者間に周知、著名となっているものである。 (3)本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品との関連性について 本件商標の指定商品「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」は、ファッションに関連する商品で引用各商標の指定商品とは、同じファッション関連の商品として、同じ業者又は関連業者によって取り扱われることの多い極めて密接な関連性を有する商品である。 (4)被請求人の商標の出願、登録の経過について ア 被請求人の出願・登録商標は、何れも請求人の「Bear」「USA」の商標を付した商品がヒットし、日本において偽商品が氾濫したため、請求人が偽商品対策として、日本への出荷停止措置を執ったこと、偽商品が摘発されたことが新聞で報道され(甲第41号及び第42号証)、偽商品についての「警告広告」あるいは「注意広告」(甲第28号ないし第40号、第43号ないし第52号証)が掲載された後に、出願され、登録されたものである。 イ そして、被請求人のこれらの商標の出願の経緯を見るに、当初「USBEAR」の文字よりなる登録第3340430号商標(甲第53号証)を平成7年に出願し、次いで、本件商標と同一の構成の黒塗りの熊の図形よりなる登録第4137882号商標(甲第54号証)を平成9年に出願し、「USBEAR」と「アズエーベー」の文字とを上下2段に書してなる登録第4345622号商標(甲第55号証)を平成11年に出願し、請求人の著名な登録商標と同様に、輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「USABEAR」の文字を書し、輪郭線の下に「USA」の文字を書し、その右横に小さく「アズエーベー」の文字を配してなる商願2000-43142号商標(甲第56号証)を平成12年に出願し、さらに、請求人の著名な登録商標と同様に、輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「USBEAR」の文字を書した登録第4507125号商標(甲第57号証)、同じく輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「USBEAR」の文字を書した登録第4536505号商標(甲第58号証)を平成13年に出願し、同じく輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「USBEAR」の文字を書し、その下に「USA」の文字を書した登録第4646915号商標(甲第59号証)を平成14年に出願し、輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「USBear」の文字を書した登録第4762834号商標(甲第60号証)、輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「USBear」の文字を書し、その横に「USA」の文字を書した登録第4762838号商標(甲第61号証)、輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「USBeaR」の文字を書した登録第4768545号商標(甲第62号証)、「USBear」の文字を書した登録第4762835号商標(甲第63号証)を平成15年に出願し、本件商標と同一の熊の図を描き、その右横に「USBEAR」を書し、その右側に「USA」の文字を左に90度回転した状態で配してなる構成の商願2005-5200号商標(甲第64号証)及び輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「PASCBEAR」の文字を書し、その輪郭線の右横に「USA」の文字を左に90度回転した状態で配してなる構成の商願2005-5201号商標(甲第65号証)を平成17年に出願しているというように、請求人の使用する著名な商標に段階的に似せた商標を出願し、登録を受けているというような経緯をたどっているところであり、本件商標も登録第4137882号商標(甲第54号証)とほぼ同一の構成よりなり、平成15年10月17日に出願されたものである。 ウ さらに、被請求人は、登録第3340430号商標(甲第53号証)と同一の「USBEAR」の文字よりなり、本件商標の指定商品とほぼ同じ商品を指定商品とする登録第4567137号商標(甲第7号証)をも、平成13年8月9日に出願している。 (5)被請求人の商標の模倣性等について ア 上記(4)の商標中、とりわけ登録第4507125号商標(甲第57号証)、登録第4536505号商標(甲第58号証)、登録第4646915号商標(甲第59号証)は、請求人の使用に係る著名な引用商標3ないし5の商標とは、輪郭線で描いたという特徴のある熊の図とその輪郭線を延長した輪郭内に「Bear」文字を含む文字を書してなる点において、構成の軌を一にするものである。 イ また、被請求人の「USABEAR」と「アズエーベー」の文字よりなる登録第4345622号商標(甲第55号証)は、その構成中の「USABEAR」の文字は、請求人の商号の主要部である「BEAR USA」の文字の「BEAR」と「USA」の前後を入れ替えて表示したというべきもので、かつ、そのライセンス契約においては、「アズエーベー」の片仮名文字を取り去って表示した態様で示して契約し、片仮名文字を取り去った欧文字のみの登録証を偽造して示す(甲第66号ないし第68号証)というように請求人の著名な商標に似せてフリーライドしようとする商標の出願、使用をしているといわざるを得ないものである。 ウ さらに、被請求人の輪郭線で描いた熊の図の中から輪郭線を延長した横長の輪郭線内に「USBeaR」の文字を書した登録第4768545号商標(甲第62号証)は、その構成中の「USBeaR」の文字が、熊の図との関係において、「アメリカ」を意味する「US」の文字と、「熊」を意味する「BeaR」の文字とを結合したものと容易に認識し得るものであるところ、「BeaR」の文字は、語頭部と語尾の「B」と「R」を大文字とし、中間の「ea」の文字を小文字とした極めて特異な構成となっているもので、請求人の「BeaR」の文字よりなる登録第2667318号商標(甲第69号証)をそっくり、そのままの構成、態様で取り込んだもので、明らかに請求人の特異な構成、態様の登録商標のあることを知った上で、その構成、態様を模倣したといわざるを得ないものである。 エ 被請求人が、特異な構成よりなる請求人の登録第2667318号商標(甲第69号証)のあることを知っていたか否かについては、被請求人が登録第2667318号商標に対して不使用取消審判(取消平10-30311号、取消平10-30312号)の請求をし、その審決の取消を求めた審決取消訴訟(平成11年(行ケ)361号、平成11年(行ケ)362号)を提起している事実があることから見ても、明らかに知っていたといい得るところである。 オ そして、被請求人は、登録第4507125号商標(甲第57号証)、登録第4536505号商標(甲第58号証)、登録第4646915号商標(甲第59号証)等に対する登録無効審判事件において、これらの商標は、「USBEAR」の文字よりなる登録第3340430号商標(甲第53号証)と、「黒塗りの熊の図形」よりなる登録第4137882号商標(甲第54号証)とを結合して構成し、出願し、登録されたものであると主張し、「USABEAR」と「アズエーベー」文字とを上下2段に書してなる登録第4345622号商標(甲第55号証)の使用を許諾した株式会社岐阜武に対する商標権侵害による差止め及び損害賠償を請求する訴訟「岐阜地方裁判所 平成17年(ワ)第85号商標権侵害差止等請求事件(本訴) 同年(ワ)第280号 不正競争差止等請求事件(反訴)」においても、「許諾し、使用している商標は、登録第4345622号商標(甲第55号証)と「黒塗りの熊の図形」よりなる登録第4137882号商標(甲第54号証)とを結合して使用していると述べ、その旨の見解書を被許諾者である株式会社岐阜武に交付している(甲第66号ないし第68号証)。 カ 以上で述べたように、被請求人の上記商標の出願の経緯及びその使用の実情から見れば、明らかに請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図を持って商標を出願し、登録し、使用しているものと断ぜざるを得ないものであり、登録第4137882号商標(甲第54号証)と同一の構成よりなる本件商標も、請求人の著名な商標に化体されたグッドウィル(顧客吸引力)にフリーライドする意図のもとに出願し、登録を受けた一連の商標出願・登録の一環として出願し、登録されたといわざるを得ないものである。 (6)被請求人の商標の登録後、出願後の経過等について 以下は、いずれも判決ないし審決が確定したことにより、その商標権が抹消された登録案件、もしくは拒絶査定がなされ、その処分が確定した出願案件である。 ア 登録第3340430号商標(甲第53号証) イ 登録第4137882号商標(甲第54号証) ウ 登録第4345622号商標(甲第55号証) エ 商願2000-43142号(甲第56号証) オ 登録第4507125号商標(甲第57号証) カ 登録第4536505号商標(甲第58号証) キ 登録第4646915号商標(甲第59号証) ク 登録第4762834号商標(甲第60号証) ケ 登録第4762838号商標(甲第61号証) コ 登録第4768545号商標(甲第62号証) サ 商願2005-5200号(甲第64号証) シ 商願2005-5201号(甲第65号証) (7)被請求人は、上記登録商標の登録無効審判事件、その審決の取消を求める訴訟事件において、一貫して「登録第3340430号商標(甲第53号証)と登録第4137882号商標(甲第54号証)とを組み合わせた形で登録されたものである。」などと主張している(甲第70号証)。 また、登録第4345622号商標に係る「商標使用許諾契約」により、商標を使用していた株式会社岐阜武に対する商標権侵害差止等請求事件「岐阜地方裁判所平成15年(ワ)第62号」において、証拠として提出された登録第4345622号商標の使用許諾契約に係る「見解書」においては、登録第4345622号商標と登録第4137882号商標を組み合わせた形状と見解を述べているところである(甲第68号証)。 なお、岐阜地方裁判所平成15年(ワ)第62号商標権侵害差止等請求事件は、平成18年4月27日に使用差止、損害賠償を認めた判決(甲第71号証)がなされ、この判決は確定した。 (8)また、被請求人である株式会社セント・ローランは、主として被服、靴等のファッションに関する商品のブランドライセンスを業としている会社であることから、日本を含む世界各国の著名ブランドには精通していると推測されるところであり、前述した請求人の著名商標も当然のこととして知っていたといい得るところである。 そして、その業務に係るブランドライセンスリスト(甲第72号証)に掲載されている商標は、著名な商標をその一部に取り込み、著名な商標にフリーライドする目的と見られるような商標が、多く掲載されているところである。 ア その一例を挙げれば、「DUNHILL」の前後に「I」を付した「IDUNHILLI」の文字よりなる登録第4101020号商標を取得し、ライセンスリスト上では、前後の「I」の上下に掛かるかのような輪郭線を配して、中の「DUNHILL」の文字が浮き出て見えるような商標を掲載しているところであり、これと同様の意図を持って採択して掲載したと見られる「LANCEL」の前後に「I」を付した「ILANCELI」(登録第4101024号商標)、「ARMANI」の前に「I」を付した「IARMANI」の文字を有する商標も掲載されているところである(甲第72号ないし第74号証)。 イ 我が国において著名な「スマートな犬」をモチーフとした登録第3152982号商標に類似する構成よりなる登録第4137881号商標及び著名な「adabat」の商標の前後に「i」を付した登録第4217829号商標をも取得し、これもライセンスの対象としていたものである(甲第75号ないし第77号証)。 ウ これらの商標中、「ILANCELI」の文字よりなる登録第4101024号商標は、平成10年異議第91010号において、「明らかに『LANCEL』の著名性にただ乗りする社会一般道徳に反する商標といえるものであって、かつ、国際信義に反する商標といわざるを得ない」と認定され、その登録の取消決定がなされ、その決定の取消を求めた東京高等裁判所平成11年(行ケ)217号 決定取訴訟事件においても請求が棄却された結果、登録が抹消されているものである。 エ 「IDUNHILLI」の文字よりなる登録第4101020号商標は、平成11年審判第35700号の登録無効審判事件において、「DUNHILL」と出所の混同を生じるおそれがあるとして、登録を無効とされているものである。 オ 「犬の図」よりなる登録第4137881号商標は、平成10年異議第91373号事件の異議決定において、登録第3152982号商標と類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するとして登録が取消され、「iadabati」の文字よりなる登録第4217829号商標は、平成11年異議第90362号事件の異議決定において、異議申立人の業務に係るものであるかのごとくその商品の出所について混同を生じるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるとして登録が取消されているものである。 カ また、被請求人は、「USABEAR」と「アズエーベー」の文字を2行に横書きしてなる登録第4345622号商標のライセンスにおいても、「アズエーベー」の文字の部分を取り去って「USABEAR」の文字の部分についての使用許諾契約をし、かつ、これについての被許諾人に対する平成12年4月21日付けの見解書に添付した登録証(写)において、「アズエーベー」の文字の部分を取り去った「USABEAR」の文字のみからなる商標を表示しているというように、極めて欺瞞的なライセンス事業を展開しているものである(甲第66号ないし第68号証)。 キ 前記登録第4345622号商標については、本件審判の請求人が取消2001-31307号の請求をした結果、「通常使用権者による商品ジャケットについての通常使用権者使用商標の使用は、通常使用権者が指定商品についての本件商標に類似する商標の使用であって、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるものをしたというべきであり、また、被請求人は、その事実を知っていたものと認められる。したがって、本件商標は、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきものである。」との審決がなされ、その審決の取消しを求めた東京高等裁判所 平成15年(行ケ)第375号 審決取消請求事件においてもその請求が棄却されているところである。 (9)上述したとおり、「(2)請求人の商標の著名性、(3)本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品との類似性又は関連性、(4)被請求人の商標の出願、登録の経過、(5)被請求人の商標の模倣性等、(6)被請求人の商標の登録後、出願後の経過等、(7)審判事件、訴訟事件における被請求人の主張等、(8)被請求人のライセンス事業の実情及びそのライセンスに係る商標の登録の状況及びそれらの商標についての無効審判、取消審判、異議申立、訴訟事件における判断・判決、並びに本件商標が、前述の『(6)イ』で不正使用をもって取り消された登録第4137882号商標と同一の構成よりなる商標であること」等を総合して判断すれば、被請求人は、日常的に著名な商標にフリーライドするライセンス業をしていたものであり、本件商標は、請求人の著名な商標にフリーライドするという不正の目的をもって、類似する商標を使用するために出願し、登録を受けたといわざるを得ない。 第3 被請求人の答弁 被請求人(商標権者)は、答弁していない。 第4 当審の判断 1 本件商標 本件商標は、別掲1のとおりの構成によりなるところ、これよりは、熊の図を描いてなるという構成に徴して、「クマ」及び「ベアー」の称呼、「熊」の観念を生じるものというべきであり、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」を指定商品とするものである。 2 引用各商標の著名性 (1)引用各商標が、本件商標の出願日前に使用されていたと認め得る証拠は、以下のとおりである。 ア 甲第9号証は、雑誌「BOON」1996年2月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目には、胸元や襟首あるいは襟元に引用商標2が付された黒・白・青の色違いの「ダウンジャケット」の写真が掲載されると共に、「昨年、ニューヨークのブラック達の間で大流行したのがブラック・ダウンジャケット。ノースフェイス、マーモットなどアウトドア系のビッグブランドと肩を並べるほど、広く認知されたのが、この『Bear』だ。ブラックダウン大流行のきっかけとなったのは、アメリカの人気音楽番組『MTV』でストリートファッションのマストアイテムとして取り上げられたのが大きな要因。大ヒットしたのは『Bear』のモデル『9100M』。」と記載されている。 イ 甲第10号証は、雑誌「DNR」1996年10月14日発行及び「VIBE」1995年12月号の抜粋・写しとするものであるが、ジャケットの胸の大書された「BEAR」の文字と共に、ジッパーの引き手に引用商標5が認められる。 ウ 甲第11号証は、雑誌「SPORTSWEAR INTERNATIONAL」1996年発行及び「WOMEN’S WEARDAILY」1997年7月15日発行の抜粋・写しとするものであるが、そこには「Bear USA」に関する記事が掲載されている。 エ 甲第12号証は、雑誌「seventeen」1997年9月号の抜粋・写しとするものであるが、そこには、パーカが示されており、その胸に引用商標3が付されている。 オ 甲第13号証は、雑誌「GO MAGAZINE」の11月号及び12月号の抜粋・写しとするものであるが、そこには、ダウンジャケットが示されており、その胸に引用商標2が付されている。 カ 甲第14号証は、雑誌「Details MAGAZINE」1997年9月発行の抜粋・写しとするものであるが、そこには、ダウンジャケットが示されており、その胸に引用商標3が付されており、また、広告ページには、引用商標5が掲載されている。 キ 甲第15号証は、新聞「AdvertisingAge」1997年10月6日発行及び雑誌「Details MAGAZINE」1997年10月発行の抜粋・写しとするものであるが、そこには「Bear USA」に関する記事及び「BEAR USA OUTERWEAR」が掲載されている。 ク 甲第16号証は、雑誌「SPORTSWEAR INTERNATIONAL」2000年発行の抜粋・写しとするものであるが、そこには「BEAR U.S.A.」に関する記事が記載されている。 ケ 甲第20号証は、雑誌「THE SOURCE MAGAZINE」1995年11月発行の抜粋・写しとするものであるが、そこには、パーカの頭部に引用商標2が付されている。 コ 甲第21号証は、雑誌「asayan」1996年1月号及び2月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目左上部に赤・白・黄色の「ダウンジャケット」が賞品として提供することが示されており、また、各所に広告記事が示されており、それらには引用商標2が付されている。 サ 甲第22号証は、「繊研新聞」平成9年10月22日発行の抜粋・写しとするものであるが、「グラデーションを使った『ベアーUSA』」として、ダウンジャケットが紹介されている。 シ 甲第23号証は、雑誌「SPORTSWEAR INTERNATIONAL」1999年10月、11月発行の抜粋・写しとするものであるが、「bear-usa」の文字と共にパーカが示されており、パーカには、後部内側に引用商標4が付されている。 ス 甲第24号証は、雑誌「mixer」1999年11月発行の抜粋・写しとするものであるが、甲第23号証と同様の広告が掲載されている。 セ 甲第25号証は、雑誌「DNR」2000年2月7日、2000年11月6日、1999年10月18日、1999年11月8日発行の抜粋・写しとするものであるが、甲第23号証と同様の色違いの広告が掲載されており、パーカには引用商標5が付されているものもある。 ソ 甲第26号証は、雑誌「BOON」平成8年10月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目に引用商標4を付したウエアの広告記事があり、その取扱店と共に「Bear U.S.A.のロゴ及びBear U.S.A.、Bear U.S.A.INC.、Bearの名称及びロゴは当社の商標です。」の記載がある。 タ 甲第27号証は、雑誌「COOL TRANS」平成11年11月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目に「BEAR USA」のダウンジャケットに関する記事がある。 チ 甲第28号証は、雑誌「COOL TRANS」平成11年12月号の抜粋・写しとするものであるが、その3枚目に「BEAR USA」のダウンジャケットに関する広告記事があり、そこにはダウンジャケット及び左上余白に引用商標5が付されている。 ツ 甲第29号証は、「繊研新聞」平成14年4月2日発行の抜粋・写しとするものであるが、その6ページに引用商標5を付したパーカの広告を掲載すると共に、7ページには「全面広告」を掲載し、請求人のロゴマーク、特に引用商標4及び5等を示し、「Bear USA」ブランドの歴史等が紹介されると共に、「“Bear USA”ブランドの模倣品にご注意下さい。」との謹告も掲載されている。 テ 甲第30号証は、雑誌「COOL TRANS」平成10年11月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目に引用商標5を示してダウンジャケットの広告が掲載されている。 ト 甲第31号証は、雑誌「COOL TRANS」平成10年12月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目に引用商標4を示してダウンジャケットの広告が掲載され、そこには「ニセモノに注意せよ!」の記載がある。 ナ 甲第32号証は、雑誌「COOL TRANS」平成11年1月号の抜粋・写しとするものであるが、その3枚目に引用商標5を示してダウンジャケットの広告が掲載され、そこには「ニセモノに注意せよ!」の記載がある。 ニ 甲第33号証は、雑誌「street jack」平成11年1月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目に引用商標5を示してダウンジャケットの広告が掲載され、そこには「ニセモノに注意せよ!」の記載がある。 ヌ 甲第34号証は、雑誌「BOYS RUSH」平成12年11月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目に引用商標5を付したダウンジャケットの広告が掲載され、そこには「偽物にご注意下さい。」の記載がある。 ネ 甲第35号証は、「繊研新聞」平成10年8月31日発行の抜粋・写しとするものであるが、その4ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「ニセモノにご注意!」の記載がある。 ノ 甲第36号証は、「繊研新聞」平成10年9月8日発行の抜粋・写しとするものであるが、その10ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「ニセモノにご注意!」の記載がある。 ハ 甲第37号証は、「繊研新聞」平成10年10月14日発行の抜粋・写しとするものであるが、その18ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「ニセモノにご注意!」の記載がある。 ヒ 甲第38号証は、「繊研新聞」平成11年8月30日発行の抜粋・写しとするものであるが、その5ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「BEAR USA社からのお知らせ」の記載がある。 フ 甲第39号証は、「繊研新聞」平成11年9月6日発行の抜粋・写しとするものであるが、その5ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「BEAR USA社からのお知らせ」の記載がある。 ヘ 甲第40号証は、「繊研新聞」平成9年10月17日発行の抜粋・写しとするものであるが、その6ページに全面広告として、商品「ダウンジャケット」が示されており、「ダウンジャケット」の襟ネームには引用商標5が、また、左胸には引用商標3が付されており、「この冬、Bearで差をつけろ!!」の記載がある。 ホ 甲第41号証は、「繊研新聞」平成8年4月8日発行の抜粋・写しとするものであるが、その1ページに「ベアー・U・S・A社偽物排除へ強硬手段」のタイトルの記事が示されており、そこには「『ベアー・U・S・A』の偽物が日本で大量に出回っている事態に対処するため、真正品の対日輸出を今春夏物の期間はいったん停止する。」との記載がある。 マ 甲第42号証は、「繊研新聞」平成8年4月25日発行の抜粋・写しとするものであるが、その2ページに「偽ブランド品摘発」のタイトルの記事が示されており、そこには「アメリカの『ベアー』など海外人気ブランドの偽物を販売している業者が摘発された。」との記載がある。 ミ 甲第43号証は、「繊研新聞」平成8年4月11日発行の抜粋・写しとするものであるが、その6ページに全面広告があり、「Bear U.S.A.からの警告」として、「現在日本市場で売られているBear U.S.A.のロゴが付いている商品はすべて偽物です。」旨の警告広告がなされ、そこには引用商標1が示されている。 ム 甲第44号証は、「繊研新聞」平成11年9月27日発行の抜粋・写しとするものであるが、その5ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「BEAR USA社からのお知らせ」の記載がある。 メ 甲第45号証は、「繊研新聞」平成11年10月5日発行の抜粋・写しとするものであるが、その9ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「BEAR USA社からのお知らせ」の記載がある。 モ 甲第46号証は、「繊研新聞」平成11年10月13日発行の抜粋・写しとするものであるが、その5ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「BEAR USA社からのお知らせ」の記載がある。 ヤ 甲第47号証は、「繊研新聞」平成12年9月25日発行の抜粋・写しとするものであるが、その21ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「BEAR USA社からのお知らせ 偽物にご注意下さい!!」の記載がある。 ユ 甲第48号証は、「繊研新聞」平成12年I0月23日発行の抜粋・写しとするものであるが、その15ページ下段にその取扱店と共に引用商標5が示されており、そこには「BEAR USA社からのお知らせ 偽物にご注意下さい!!」の記載がある。 ヨ 甲第49号証は、甲第33号証と同一内容の記載。 ラ 甲第50号証は、雑誌「street Jack」1998年11月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目に「ダウンジャケット」の広告記事があり、そこには引用商標5が示されており、その取扱店と共に「ニセモノの商品が氾濫しております。」の記載がある。 リ 甲第51号証は、雑誌「street Jack」1998年12月号の抜粋・写しとするものであるが、その2枚目に「ダウンジャケット及びパーカ」の広告記事があり、そこには、引用商標5が示されており、その取扱店と共に「ニセモノに注意せよ!」の記載がある。 ル 甲第52号証は、雑誌「street Jack」1999年2月号及び3月号の抜粋・写しとするものであるが、その3枚目に「ダウンジャケット」の広告記事があり、そこには、引用商標5が示されており、その取扱店と共に「ニセモノに注意せよ!」の記載がある。 (2)売上高等 請求人の国別売上げ及び広告・トレードショーの費用の一覧表の写し(甲第8号証)によれば、引用各商標を付した商品の売上高、広告宣伝費用、売上数量は、次のとおりであると認められる。 ア 日本とアメリカ合衆国における総売上高 1994年(平成6年) 86万1206ドル 1995年(平成7年) 904万9490ドル 1996年(平成8年) 2550万2784ドル 1997年(平成9年) 2022万3754ドル 1998年(平成10年) 1092万7683ドル 1999年(平成11年) 944万495ドル 2000年(平成12年) 729万1615ドル 2001年(平成13年) 314万5087ドル イ 広告・宣伝費用 1995年(平成7年) 6918ドル 1996年(平成8年) 2万7058ドル 1997年(平成9年) 52万2536ドル 1998年(平成10年) 10万2353ドル 1999年(平成11年) 62万7677ドル 2000年(平成12年) 83万3717ドル 2001年(平成13年) 27万9203ドル ウ 売上数量 1994年(平成6年) ダウンジャケット 20,000 1995年(平成7年) ダウンジャケット 110,497 パーカ、靴、アクセサリー 54,314 1996年(平成8年) ダウンジャケット 296,973 ジャケット、パッドジャケット 59,637 パーカ、靴 56,054 1997年(平成9年) ダウンジャケット 270,183 ジャケット、パッドジャケット100,623 靴、アクセサリー等 42,998 1998年(平成10年)ダウンジャケット 175,386 ジャケット、パッドジャケット 8,853 靴、アクセサリー等 72,559 1999年(平成11年)ダウンジャケット 99,587 ジャケット、パッドジャケット 70,930 靴、アクセサリー等 138,460 2000年(平成12年)ダウンジャケット 113,309 ジャケット、パッドジャケット109,791 靴、アクセサリー等 585,257 (3)小括 以上の事実によれば、引用各商標は、本件商標の登録出願時(平成15年10月17日)において、請求人の業務に係るダウンジャケット等の商品に使用される商標として、アメリカ合衆国はもとより我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は、本件商標の登録査定時(平成16年4月26日)においても継続していたものということができる。 3 本件商標と引用各商標との類否について 本件商標は、「クマ」及び「ベアー」の称呼を生じ、「熊」の観念を生ずるものというのが相当である。 他方、引用各商標は、すべて「熊の図」と「Bearの文字」を有してなるものであるから、「クマ」及び「ベアー」の称呼を生じ、「熊」の観念を生ずるものというのが相当である。 してみれば、本件商標と引用各商標とは、「クマ」及び「ベアー」の称呼、「熊」の観念を共通にする類似の商標である。 4 商品の関連性 本件商標の指定商品「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,愛玩動物被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」は、請求人も述べるとおり「ファッションに関連する商品」ということができ、引用各商標の指定商品又は引用各商標の使用商品「ダウンジャケット等」とは、同じファッション関連の商品として、同じ業者又は関連業者によって取り扱われることの多い、極めて密接な関連性を有する商品であるということができる。 5 不正の目的について (1)引用各商標に関連する被請求人の商標について ア 登録第3340430号商標(甲第53号証)について 請求人の著名な商標に、フリーライドする不正の目的をもって使用するために登録したことを理由として登録無効審判の請求(無効2006-89085号)をし、「登録無効」の審決がなされた。 この審決に対する平成19年(行ケ)第10370号審決取消請求事件は「請求棄却」の判決がなされた。この判決によって審決が確定し、当該商標権は抹消された。 イ 登録第4137882号商標(甲第54号証)について 不正使用をしたことを理由として取消審判の請求(取消2005-31237号)をし、「請求不成立」の審決がなされた。 この審決に対する平成19年(行ケ)第10341号審決取消請求事件において、「審決を取消す。」との判決がなされた。その判決を不服とする上告事件(上告提起事件番号・平成20年(行サ)第10010号、上告事件番号・平成20年(行ツ)第204号)において、上告棄却の決定がなされた結果「登録を取り消す。」との審決がなされ、当該商標権は抹消された。 ウ 登録第4345622号商標(甲第55号証)について 不正使用をしたことを理由として取消審判の請求(取消2001-31307号)がなされ、「登録は取り消す。」との審決がなされた。 この審決の取消を求めた平成15年(行ケ)第375号審決取消請求事件は、「請求棄却」の判決がなされた。判決の取消を求めた上告事件(平成16年(行ツ)第96号、平成16年(行サ)第6号)も上告棄却となり、審決が確定した。審決が確定したことにより、当該商標権は抹消された。 エ 商願2000-43142号商標(甲第56号証)について 請求人の登録第4419411号商標(甲第4号証)等と類似する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当として拒絶査定され、査定不服審判事件(不服2004-22100号)において、「請求不成立」(原審の判断は理由がある。)との審決がなされ、その拒絶査定の処分が確定している。 オ 登録第4507125号商標(甲第57号証)について 商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして無効審判の請求(無効2004-35107号)がなされ、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決がなされた。 この審決の取消を求めた平成17年(行ケ)第10362号審決取消請求事件は、「請求棄却」の判決がなされた。判決の取消を求めた上告事件(平成18年(行ツ)第23号、平成18年(行ヒ)第34号)も上告棄却となり審決が確定した。審決が確定したことにより、当該商標権は抹消された。 カ 登録第4536505号商標(甲第58号証)について 商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして無効審判の請求(無効2004-35108号)がなされ、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決がなされた。 この審決の取消を求めた平成17年(行ケ)第10361号審決取消請求事件は、「請求棄却」の判決がなされた。判決の取消を求めた上告事件(平成18年(行ツ)第22号、平成18年(行ヒ)第33号)も上告棄却となり審決が確定した。審決が確定したことにより、当該商標権は抹消された。 キ 登録第4646915号商標(甲第59号証)について 商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして無効審判の請求(無効2005-89076号)がなされ、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決がなされた。審決が確定したことにより、当該商標権は抹消された。 ク 登録第4762834号商標(甲第60号証)について 商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして無効審判の請求(無効2005-89030号)がなされ、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決がなされた。審決が確定したことにより、当該商標権は抹消された。 ケ 登録第4762838号商標(甲第61号証)について 商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして無効審判の請求(無効2005-89025号)がなされ、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決がなされた。 この審決の取消を求めた平成17年(行ケ)第10833号審決取消請求事件は、「請求棄却」の判決がなされた。この判決が確定したことにより審決が確定し、当該商標権は抹消された。 コ 登録第4768545号商標(甲第62号証)について 商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして無効審判の請求(無効2005-89039号)がなされ、商標法第4条第1項第15号に該当するとして「登録を無効とする。」との審決がなされた。 この審決の取消を求めた平成17年(行ケ)第10829号審決取消請求事件は、「請求棄却」の判決がなされ、この判決が確定したことにより審決が確定し、当該商標権は抹消された。 サ 商願2005-5200号商標(甲第64号証)について 請求人の著名な登録商標と混同を生じるおそれがあるので、商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶査定がなされ、その処分が確定した。 シ 商願2005-5201号商標(甲第65号証)について 請求人の著名な登録商標と混同を生じるおそれがあるので、商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶査定がなされ、その処分が確定した。 (2)被請求人のブランドライセンス事業について ア 被請求人の業務に係るブランドライセンスリストに掲載されている商標は、著名な商標をその一部に取り込み、著名な商標にフリーライドする目的と見られるような商標を多く扱っていることは、甲第72号証のとおりである。 イ 被請求人が、「USABEAR」と「アズエーベー」の文字とを二段に併記してなる登録第4345622号商標のライセンスにおいても、「アズエーベー」の文字の部分を取り去って「USABEAR」の文字の部分についての使用許諾契約をし、かつ、これについての被許諾人に対する平成12年4月21日付け見解書に添付した登録証(写)において、「アズエーベー」の文字の部分を取り去った「USABEAR」の文字のみからなる商標を表示したことは、甲第66号ないし第68号証に示されたとおりである。 (3)被請求人の模倣性について 被請求人が、請求人の使用する引用各商標を侵害するとされた被請求人使用(許諾)商標(甲第71号証)、又は「不正の目的」があったと判断された(甲第79号証)一連の商標の熊の図形部分と本件商標とは、構成の軌を一にするものであり、特に、登録第4137882号商標(甲第54号証)とは、ほぼ同一の構成よりなるものであるから、本件商標の出願は、他の関連商標と同様に、他人の著名な商標にフリーライドする意図のもとになされたものといわざるを得ない。 (4)小括 上記(1)ないし(3)のとおり、本件商標は、出願の経緯に照らして、「不正の目的」があったというべきである。 6 結び 以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって、不正の目的を持って使用するものといい得るから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでものある。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) ![]() 別掲2(引用商標1) ![]() 別掲3(引用商標2) ![]() 別掲4(引用商標3) ![]() 別掲5(引用商標4) ![]() 別掲6(引用商標5) ![]() |
審理終結日 | 2010-10-21 |
結審通知日 | 2010-10-26 |
審決日 | 2010-11-09 |
出願番号 | 商願2003-91421(T2003-91421) |
審決分類 |
T
1
11・
222-
Z
(Y18)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 白倉 理 |
特許庁審判長 |
佐藤 達夫 |
特許庁審判官 |
野口 美代子 田中 亨子 |
登録日 | 2004-06-04 |
登録番号 | 商標登録第4776351号(T4776351) |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 小泉 勝義 |
代理人 | 宮城 和浩 |
代理人 | 塩谷 信 |
代理人 | 高田 泰彦 |
代理人 | 黒瀬 雅志 |
代理人 | 吉武 賢次 |