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審決分類 |
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35 |
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管理番号 | 1228494 |
審判番号 | 無効2010-890039 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-05-12 |
確定日 | 2010-12-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5267022号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5267022号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5267022号商標(以下「本件商標」という。)は、「主婦トモ」と「主婦友」の各文字を上下二段に横書きしてなり、平成21年3月5日に登録出願、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,輸出入に関する事務の代理又は代行,建築物における来訪者の受付及び案内,建築材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入あっせん,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品代金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等精算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,中古自動車の評価」、第37類「建築一式工事,その他の建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備,暖冷房装置の修理又は保守,バーナーの修理又は保守,ボイラーの修理又は保守,ポンプの修理又は保守,冷凍機械器具の修理又は保守,照明用器具の修理又は保守,浴槽類の修理又は保守,建築物の外壁の清掃,窓の清掃,床敷物の清掃,床磨き」及び第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設計,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,製図用具の貸与」を指定役務として、平成21年8月5日に登録査定、同年9月18日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人は、本件商標の登録無効の理由に、次の(1)及び(2)の登録商標(防護標章を含む。)を引用している。 (1)登録第3207401号商標(以下「引用商標A」という。)は、「主婦の友」の文字を横書きしてなり、平成4年7月8日に登録出願、第16類「印刷物」を指定商品として、平成8年10月31日に設定登録されたものである。 また、当該商標権には、防護標章登録第1号として、第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,財務書類の作成又は監査若しくは証明,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,書類の複製,速記,筆耕,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」について、平成9年6月20日に設定登録され、防護標章登録第3号として、第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,当せん金付証票の発売,企業の信用に関する調査,税務相談,税務代理,慈善のための募金」について、平成9年10月24日に設定登録され、防護標章登録第5号として、第37類「建築一式工事,しゅんせつ工事,土木一式工事,舗装工事,石工事,ガラス工事,鋼構造物工事,左官工事,大工工事,タイル・れんが又はブロックの工事,建具工事,鉄筋工事,塗装工事,とび・土工又はコンクリートの工事,内装仕上工事,板金工事,防水工事,屋根工事,管工事,機械器具設置工事,さく井工事,電気工事,電気通信工事,熱絶縁工事,船舶の修理又は整備,船舶の建造,航空機の修理又は整備,自転車の修理,自動車の修理又は整備,鉄道車両の修理又は整備,二輪自動車の修理又は整備,映写機の修理又は保守,エレベーターの修理又は保守,火災報知機の修理又は保守,写真機械器具の修理又は保守,事務用機械器具の修理又は保守,暖冷房装置の修理又は保守,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守,電話機の修理,土木機械器具の修理又は保守,バーナーの修理又は保守,ボイラーの修理又は保守,ポンプの修理又は保守,ラジオ受信機又はテレビジョン受信機の修理,冷凍機械器具の修理又は保守,家具の修理,傘の修理,楽器の修理又は保守,金庫の修理又は保守,靴の修理,時計の修理又は保守,はさみ研ぎ及びほうちょう研ぎ,毛皮製品の手入れ又は修理,洗濯,被服の修理,被服のプレス,煙突の清掃,建築物の外壁の清掃,し尿処理槽の清掃,窓の清掃,床敷物の清掃,床磨き,浴槽又は浴槽がまの清掃,電話機の消毒,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものを除く。),土木機械器具の貸与,床洗浄機の貸与,モップの貸与」について、平成9年12月19日に設定登録されているほか、第38類ないし第41類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務とする防護標章登録第2号、同第4号、同第6号及び同第7号が登録されている。 そして、当該商標権及び防護標章登録は存続期間の更新登録がされて、いずれも現に有効に存続している。 (2)登録第4121391号商標(以下「引用商標B」という。)は、「主婦の友」の文字を横書きしてなり、平成4年8月14日に登録出願された防護標章登録出願(商願平4-157268)に係る商標法第12条第1項の規定による商標登録出願として、平成9年10月14日に登録出願、第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,写真の撮影,オフセット印刷,グラビア印刷,スクリーン印刷,石版印刷,凸版印刷,気象情報の提供,求人情報の提供,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,一般廃棄物の収集及び処分,産業廃棄物の収集及び処分,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),建築物の設計,測量,地質の調査,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,通訳,翻訳,施設の警備,身辺の警備,個人の身元又は行動に関する調査,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり,医業,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,編機の貸与,ミシンの貸与,衣服の貸与,植木の貸与,計測器の貸与,コンバインの貸与,祭壇の貸与,自動販売機の貸与,消火器の貸与,超音波診断装置の貸与,展示施設の貸与,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与,布団の貸与,ルームクーラーの貸与」を指定役務として、平成10年3月6日に設定登録されたものである。 そして、当該商標権は存続期間の更新登録がされて、現に有効に存続している。 第3 請求人の主張 請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証(枝番を含む。但し、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。 〈請求の理由〉 本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。 1 審判請求の利益について 請求人は、91年間にわたり、雑誌の創刊時は「主婦之友」、その後は「主婦の友」としてなる商標を使用しており、請求人の略称としての「主婦の友」としての使用は現在も継続している結果、請求人の商標「主婦の友」は、取引者、需要者において極めて著名なものとなっているから、その状況下において、本件商標がその指定役務について使用された場合には、その役務の出所につき混同を生ずるおそれがあり、かつ、請求人の著名商標の指標力を稀釈化させるおそれもあるから、請求人は、本件審判を請求することにつき利害関係を有する。 2 引用商標の著名性等について (1)請求人の前身である「東京家政研究会」は、大正6年2月14日から雑誌「主婦之友」を発行し、大正9年には10万部を越えて発行部数第1位の婦人誌となった。そして、大正13年には、「株式会社主婦之友社」を設立、「主婦之友」昭和18年7月号は、163万8800部を発行している。昭和28年に雑誌名を「主婦の友」に、社名を「株式会社主婦の友社」とし、その後、「主婦の友」は、長く四大婦人雑誌(「主婦の友」「婦人倶楽部」「婦人生活」「主婦と生活」)の草分けとして盛大に発行され、日本を代表する婦人月刊誌の地位にあって、昭和33年には「新しい型の婦人誌を創造確立した」として菊池寛賞を受賞しているのである(甲1?甲15)。 その後、請求人は社会状況の変化により雑誌「主婦の友」は平成20年に休刊したものの(甲16、甲17)、請求人が発行する広範な分野における雑誌・書籍・ムック等を平成11年にはグループ内に「株式会社主婦の友ダイレクト」を設立することにより、創刊当時から続いている通信販売事業をさらに拡大し、事業領域を広げているものである(甲18)。 ア 請求人は、現在も広範な分野における雑誌・書籍・ムック等を発行するものであるが、本件商標に関係する住居等に関する雑誌としては、次のa)ないしk)を発行している。 a)「PLUS1 LIVING」(甲19) 居住空間づくりの手本となる実例を紹介する雑誌であり、昭和61年創刊、現在、平成22年5月7日第67号発売中。 b)「雑貨カタログ」(甲20) 居住空間に用いる雑貨を紹介する雑誌であり、昭和63年創刊、現在、平成22年2月16日第105号発売中。 c)「はじめてでも満足する家が建てられる本」(甲21) 発売日:平成20(2008)年3月15日 d)「人気の建築家が設計した 本当にいい間取り 357選」(甲22) 発売日:平成20(2008)年8月29日 e)「mina 特別編集 ひとり暮らしのおしゃれ部屋」(甲23) 発売日:平成21(2009)年1月30日 f)「最新版 快適なリフォーム&模様がえ」(甲24) 発売日:平成21(2009)年5月15日 g)「住みよい家づくりがすべてわかる! 最新版 はじめての家づくり基本レッスン」(甲25) 発売日:平成21(2009)年9月9日 h)「自分スタイルのマンション暮らしを手に入れる 中古マンションのリフォームと部屋づくり」(甲26) 発売日:平成21(2009)年10月3日 i)「はじめての家づくり No.15」(甲27)、発売日:平成21(2009)年12月12日 j)「美しい暮らしとリフォームの情報誌 BonChic VOL.2」(甲28) 発売日:平成22(2010)年3月15日 k)「白を楽しむスタイルブック WHITE INTERIOR」(甲29) 発売日:平成22(2010)年4月17日 イ さらに、「株式会社主婦の友ダイレクト」が取り扱う住居関係の商品を挙げると、「Lido2灯式シャンデリア」(甲30)、「キャナピィ シャンデリア」(甲31)、「6灯式シャンデリア」(甲32)、「ホワイトアンティーク風シャンデリア」(甲33)、「フィンケ ペンダントランプ」(甲34)、「リネンリーフ刺繍スタイルカーテン」(甲35)、「リネンスクリーンシェード トレッチャ」(甲36)、「アンティコ スクリーン」(甲37)及び「スリムキャビネット」(甲38)の通信販売をしている。 (2)そして、請求人は、商標「主婦の友」(大正6年?昭和28年までは「主婦之友」)を今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきたものであって、かかる請求人の実績を受けて、特許庁は、引用商標Aが需要者の間に広く認識されている著名な商標であって、他人がその登録商標の指定役務及びこれに類似する以外の商品又は役務について使用することにより混同を生ずるおそれがあるものとして、防護標章の登録を認めているのである(甲2、甲4?甲10)。 殊に、防護標章登録第1号は第35類、防護標章登録第3号は第36類、及び防護標章登録第5号は第37類の指定役務についての防護標章が認められたものであって、本件商標と同一又は類似する役務に係るものといえる。 また、第42類については防護標章の登録が認められていないが、そもそも、引用商標Aは、著名商標であって、その著名性は役務全般にすべからく及ぶものである。さらに、商標「主婦の友」は、「日本有名商標集」にも掲載されている(甲42)。 (3)小括 したがって、引用商標Aは、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者間に広く認識されている周知・著名商標であることは明白である。 3 商標法第4条第1項第11号について 商標の類否は、対比される両商標がその商品・役務の出所につき誤認、混同を生ずるおそれがあるかどうかによって決定されるべきであって、係る判断に際して、当該商品・役務の取引の実情が充分に考慮されるべきである。 しかして、上述のとおり、引用商標Aが雑誌名及び請求人の略称として極めて高い著名性を獲得している本件の場合、商品・役務の出所の混同が生ずるおそれは増幅されるものであるから、引用商標Aが著名商標であることは、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情といえるのである。 しかして、本項は商標法第4条第1項第11号に関する項であるから、本件商標と引用商標Bとを比較する。 (1)指定役務について 本件商標の指定役務中、第42類の「建築物の設計,測量,地質の調査,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」は、引用商標Bの指定役務中「建築物の設計,測量,地質の調査,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」と類似するものである。 (2)称呼について 本件商標は、上段に「主婦トモ」、下段に「主婦友」と横書きしてなり、本件商標を構成する上下いずれの語からも、「シュフトモ」との自然な称呼が生ずるものである。 これに対し、引用商標Bは、「主婦の友」と横書きしてなるものであるから、その文字に相応して「シュフノトモ」の称呼を生ずるものである。 してみれば、両商標の称呼上の差異は、第3音目において、所属を示す助詞「ノ」の音の有無という微差に過ぎず、聴者の印象に残り難い中間に位置するものであるから、この差異が、両称呼の全体に及ぼす影響は決して大きいものということはできず、それぞれを一連に称呼するときには、全体の語感、語調が極めて近似したものとなり、彼此聴き誤るおそれが少なからずあるものである。 (3)観念について 本件商標と引用商標Bに共通する「主婦」の語には「一家の主人の妻」の意味があり、「友」は「常に親しく交わるなかま」等の意味がある。また、引用商標B中の「の」は所属を示す助詞であって(甲39)、さらに、「?友」とする表現についてみると、「同じ学校で学ぶ友。学問上の友」を意味する表現に「学友」があり、最近では「メールを交わす友だち」を「メル友」とする実情にある。 そうとすると、本件商標「主婦友」は、「主婦ともだち」「主婦友だち」といった意味合いを想起させるものであって、正確には「一家の主人の妻で常に親しく交わるなかま」という観念が生じるものである。 一方、引用商標Bは、「主婦」と「友」の間に上記の所属を示す助詞「の」を配してなるものであるが、「の」を含むことでは引用商標B全体の意味に大きな影響は及ぼさないから、結局、引用商標Bは、本件商標と同じ観念を生ずるものである。 (4)したがって、本件商標は、引用商標Bの称呼において類似し、また、観念においても共通する商標であって、同一又は類似の役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号について (1)出所混同のおそれについて 本件商標は、上述のとおり、その構成中に著名商標「主婦の友」のうちの「主」「婦」「友」の文字を含むものであるから、本件商標と引用商標Aとは称呼及び観念が類似するものである。そして、本件商標と引用商標Aとでは、その取引者、需要者を共通にすることがあり、かつ、引用商標Aの著名性に鑑みれば、被請求人が本件商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、「主婦友」の文字に注意が惹かれ、請求人の著名商標「主婦の友」を連想、想起し、該役務が請求人又は請求人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。 (2)したがって、本件商標は、その指定役務に使用した場合、その商品が請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品であるかの如く混同を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 被請求人の主張 被請求人(商標権者)は、前記第3の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。 第5 当審の判断 1 引用商標の著名性について (1)請求人の提出した証拠によれば以下の事実が認められる。 ア 請求人は、大正6(1917)年2月に「主婦之友」を創刊し、昭和28(1953)年12月の昭和29年新年号よりタイトルを「主婦の友」に改めると共に、「株式会社主婦之友社」の社名を「株式会社主婦の友社」とした。そして、同誌は主婦向けに生活情報や教養を提供する婦人総合誌として、平成20年(2008)年5月に休刊するまでの間、日本の代表的な婦人雑誌の一つであった(甲11?甲17)。また、請求人は、住居等に関する雑誌についても、a)「PLUS1 LIVING」(昭和61年創刊、平成22年5月7日第67号発売中)ほか、平成20年ないし平成22年ころにおいて、多数の雑誌を発行している(甲19?甲29)。 イ また、請求人は、雑誌・書籍・ムックの発行などを事業内容とするほか、「主婦の友」を含んだ社名からなる「主婦の友図書株式会社」、「株式会社 主婦の友ダイレクト」、「株式会社 主婦の友セールスプローモーション」、「株式会社 主婦の友インフォス情報社」及び「株式会社 主婦の友リトルランド」の関連会社を有している(甲11の1)。 そして、上記の関連会社の一つである「株式会社 主婦の友ダイレクト」は、大正6(1917)年「主婦之友」誌上での通販開始から80年以上にわたり、請求人の通販事業部として継続してきた事業を1999年3月分社化された会社であって、「PLUS1 LIVING」(甲19)、「雑貨カタログ」(甲20)などのインテリア誌など、請求人の発行する雑誌群との連動による通販事業を継続しつつ、また他業種との業務提携による通販事業の拡大や、EC事業、広告事業分野にも進出し事業領域を広げ(甲18の2)、住居関係の商品としては、「シャンデリア」、「ペンダントランプ」、「カーテン」、「スクリーンシェード トレッチャ」、「アンティコ スクリーン」「キャビネット」等の商品をいわゆる通販サイトで販売をしている(甲30?甲38)。 ウ さらに、引用商標Aについては、第35類ないし第37類に属する指定役務ほか、防護標章登録第1号ないし同第7号の登録がされ(甲2、甲4?甲10)、また、「日本有名商標集」(AIPPI・JAPAN発行)に「主婦の友」に係る商標が掲載されている(甲42)。 (2)以上の事実によれば、請求人は、大正6年2月に「主婦之友」を創刊し、昭和29年新年号よりタイトルを「主婦の友」に改めてから、平成20年5月に休刊するまでの間、「主婦の友」を日本の代表的な婦人総合誌のタイトルとして使用してきたこと、かつ、同誌上において通販事業をもしていたところであり、その事業を分社化した「株式会社 主婦の友ダイレクト」においては、主婦の友社の雑誌群との連動による通販事業のほかに、「主婦の友」を含んだ社名からなる関連会社の事業を含め、各種事業の領域を広げていることが認められる。 してみると、「主婦の友」の表示(以下「引用商標」という。)は、少なくとも、本件商標の出願時(平成21年3月5日)には、請求人の出版に係る婦人総合誌のタイトルとしての著名性が認められるばかりでなく、請求人らの商号としても使用された結果、その婦人総合誌の購買者層に限定されず、我が国の一般消費者の間にも広く認識されていたものというのが相当であり、当該婦人総合誌が平成20年に休刊されているとしても、その周知著名性は、本件商標の登録査定時においても継続しているということができる。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標は、前記第1のとおり「主婦トモ」と「主婦友」の文字を上下二段に横書きしてなり、冒頭の「主婦」の文字部分は共に漢字で表し、これに続く文字部分は上段が「トモ」の片仮名、下段が「友」の漢字からなるものである。一方、引用商標Bは、上記第2のとおり「主婦の友」の文字からなり、その構成中「の」の文字は、所有・所属・同格・属性等を表す格助詞である。 (2)そこで、本件商標と引用商標Bとの類否についてみるに、両商標は「主婦」と「友(トモ)」の各文字を主たる構成要素とするものであり、格助詞「の」の有無にかかわらず、いずれからも「主婦の仲間・友だち」の如き意味合いが生じるものであって、両者はその観念を同一にするものである。 また、それぞれからは、前者が「シュフトモ」の称呼が生じ、後者からは「シュフノトモ」の称呼が生じるものであるところ、両称呼の差異は比較的聴別し難い中間に位置する「ノ」の音の有無であり、それ自体が格助詞「の」の音として聴取されて、両者の観念における同一性とも相俟って、彼此相紛らわしく、両者は混同を生じさせるおそれがあるというべきである。 そして、本件商標構成中の下段に書された「主婦友」と、引用商標「主婦の友」とは、上記したように、主たる構成要素である「主婦」と「友」の各文字を共通にするものであり、これを対比すると外観においても近似するということができる。 (3)してみれば、本件商標と引用商標Bとは、その観念、称呼及び外観において、互いに相紛らわしい類似の商標であって、本件商標の指定役務のうち、第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」については、引用商標Bの指定役務と同一又は類似するものである。 したがって、本件商標は、上記指定役務については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものというべきである。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)上記1及び2のとおり、本件商標と「主婦の友」からなる引用商標とは、その観念、称呼及び外観において、互いに相紛らわしい類似性は高いものと認められ、また、引用商標は、本件商標の出願時及びその査定時においても、婦人総合誌のタイトルとして周知著名であり、これを含む請求人らの商号としても使用され、請求人の事業を分社化した関連会社においては、請求人との業務提携による通販事業の拡大や、EC事業、広告事業分野にも進出してることが認められる。 また、本件商標の指定役務には、一般需要者を対象とする役務も含まれているものと認められる。 これらの事情を総合考慮すると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者が、周知著名な商標である引用商標を連想・想起して、これらの役務が請求人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る役務であると誤信するおそれがあるものと認められる。 (2)したがって、本件商標の指定役務中、前記の商標法第4条第1項第11号に該当するとした指定役務を除く、その余の指定役務についての登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわなければならない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-04 |
結審通知日 | 2010-10-06 |
審決日 | 2010-10-26 |
出願番号 | 商願2009-15865(T2009-15865) |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Z
(X35)
T 1 11・ 262- Z (X35) T 1 11・ 261- Z (X35) T 1 11・ 263- Z (X35) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 津金 純子 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
内山 進 井出 英一郎 |
登録日 | 2009-09-18 |
登録番号 | 商標登録第5267022号(T5267022) |
商標の称呼 | シュフトモ |
代理人 | 白井 恵 |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 小堀 益 |
代理人 | 堤 隆人 |
代理人 | 山田 清治 |