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審決分類 審判 査定不服 商3条1項4号 ありふれた氏、名称 登録しない X09
管理番号 1228239 
審判番号 不服2009-8017 
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-26 
確定日 2010-11-08 
事件の表示 商願2008- 26383拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第9類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成20年3月24日に登録出願され、指定商品については、同年10月23日付け手続補正書及び平成21年6月3日付け手続補正書により、第9類「雲台」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、ありふれた氏の一つと認められる『梅本』に通じる『UMEMOTO』の文字を書してなるものであるから、ありふれた氏普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。また、提出された証拠によって、本願商標をその指定商品に使用していることは認められるものの、本願商標が使用された結果、需要者が出願人の業務に係る商標であることを認識することができるほどの識別力を有するに至っているとは認めることができない。自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとは認められないから、同法第3条第2項の要件を具備しない。」と認定、判断して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条1項第3号について
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、構成中の「U」の文字の湾曲部の外側部分を角状にして、該文字を略正方形状に表し、やや図案化されてはいるが、「UMEMOTO」の文字を表したものと認められるものである。
この点について、請求人は、本願商標の「U」の文字がロゴマークの代わりになるほどの高度な図案化がされ、かつ、各文字の外形を略正方形に図案化し力強い機械らしい印象を与えるから、本願商標は需要者が出願人の業務に係る商品であることを容易に認識できる旨主張している。
しかしながら、文字の図案化が盛んに行われている昨今の実情からすると、「U」の文字がやや図案化されているとしてもこの程度の図案化をして、格別特異な書体、特殊な文字を表したものとはいい難く、普通に用いられる方法の域を出ない態様で表してなるものといわざるを得ない。また、本願商標は、「U」の文字を除く他の文字がゴシック体様の日常一般に用いられている書体といい得るものであるから、請求人の 本願商標の制作意図がどのようなものであったにせよ、これを全体としてみた場合、容易に、「UMEMOTO」のローマ字を表したと理解・認識し得るものであって、格別、需要者等に顕著な印象を与える程に特異な態様とはいえず、普通に用いられる方法で書してなるものというべきである。
しかして、「UMEMOTO」の文字は、氏の「梅本」に通じるものであって、他に該文字より想起し得る用語は見あたらず、電話帳「50音別 個人名 ハローページ(東京都23区全区版 1996.3?1997.2) 日本電信電話株式会社発行」によれば、「梅本」の氏を有する者が189名掲載されている。
また、「日本の苗字7000傑」のサイト(http://www.myj7000.jp-biz.net/1000/0100f.htm)によれば、「梅本」の姓は、約26,800人存在し、全国で第732位に位置づけられていることが認められる。
そして、日常、氏を表す場合、必ずしも漢字のみに限らず、ローマ文字で表す場合も決して少なくないものである。
そうとすれば、本願商標に接する取引者、需要者は、これをありふれた氏の「梅本」をローマ文字で表したものと理解し得るというのが相当であるから、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
ア 商標登録出願された商標(以下「出願商標」という。)が、商標法3条2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、実際に使用している商標(以下「使用商標」という。)及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる「自他商品識別力(特別顕著性)」の獲得の有無)によって決すべきものである。また、商標法第3条第2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願商標と同一であることを要し、出願商標と類似のもの(例えば、文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら、同条項は、本来的には自他商品識別力がなく、特定人の独占にもなじまない商標について、特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり、実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして、登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると、同条項は、厳格に解釈し適用されるべきものである(平成18年(行ケ)第10054号 知的財産高等裁判所平成18年6月12日言渡 参照)。
イ 請求人は、本願商標を「雲台」に使用した結果、本願商標は、自他商品の識別力を有するに至った旨主張しているので、上記見解に立って、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったか否かを検討する。
(ア)請求人主張(原審における平成20年10月23日付け意見書(以下「原審意見書」という。)及び当審における平成21年8月18日付け意見書(以下「当審意見書」という。)における主張を含む。)及び提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。なお、提出された証拠番号が重複しているので、以下、原審意見書に添付の証拠については、「原審意見書第○号」のように記載する。
a 請求人(その前身を含む。)は、昭和10年にカメラ製造業として「梅本製造所」の屋号で開業し、昭和30年からはカメラ用三脚を製造し、平成9年からカメラ用雲台(自由雲台)の製造を開始し、現在、その自由雲台が主力商品である。なお、請求人の主張によれば、請求人はこの間、略称として「梅本」を使用した。
b 請求人作成の「UMEMOTO商標入り商品売上記録一覧表」(原審意見書第26号証)及び「本商標出願に係る商標付きの雲台の売上記録一覧表」(第1号証)によれば、平成20年10月20日までの売上は、商品に本願商標を表示したものについては252台(ただし、このほか商品には本願商標を表示していないものの取扱説明書等に本願商標を表示して販売したものが195台ある。)、平成20年11月1日から平成21年4月30日までの6か月間の本願商標に係る雲台の売上総数は、583台である。当審意見書によれば、平成20年7月7日から平成21年4月30日間の売上総数は835台である。
なお、東京都中野区在のフジヤカメラ店が平成20年9月26日から本願商標に係る雲台の店頭販売及びインターネットショップ「フジヤカメラオンラインショップ」による販売を開始した(原審意見書第48号)。上記原審意見書第26号証の一覧表の売上先欄はマスキングされてはいるものの、売上先は2か所で、それぞれ200台及び52台を売り上げているものであり、これらの販売は、請求人及び上記フジヤカメラ店による販売と推認される。
c 請求人は、平成18年2月24日から、請求人のホームページを開設し、平成20年4月8日より、請求人ホームページの各ページの上部、バナー広告に本願商標を使用し、また、掲載されている写真の商品(雲台)には、本件商標を使用した銘板がはり付けられている。また、平成20年7月から、上記ホームページ内に「梅本製作所ネットショップ」を開設し、上記商品写真を掲載している(第2号証)。そして、第3号証によれば、該ホームページへの2008年11月1日から2009年4月30日までのユニークIP(新規なIPアドレス)数は、合計65,717(10,952/月)である。
d 株式会社Impressがインターネット上に開設している「BB Watch」のスタパ齋藤氏による「スタパブログ」2009年2月6日付け記事に請求人の自由雲台「SL-60ZSC」が紹介され、本願商標を記載した銘板が見える当該雲台の写真(なお、記事中の写真は小さく銘板の内容まで把握できないが、写真をクリックすると写真が拡大表示される。)が掲載され(第6号証)、その閲覧数は、掲載当日(2月6日)が9,835であり、掲載後1週間の合計閲覧数は6,0736である(第8号証)。
また、同社が開設している「ケータイWatch」内の「スタパ齋藤の週間スタパトロニクスmobile」の2009年3月2日付けに請求人の自由雲台の紹介記事及び商品の写真(なお、写真をクリックすると写真が拡大表示される。)が掲載され(第7号証)、その閲覧数は、掲載当日(3月2日)が20,749であり、掲載後1週間の合計閲覧数は32,685である(第8号証)。
e 同社の開設する「デジカメWatch」の2009年4月20日付け記事の一つに「“高精度自由雲台”を生み出した『梅本製作所』とは ?設計者の梅本晶夫氏にきく」と題した記事及び複数の商品の写真(なお、写真をクリックすると写真が拡大表示される。)が掲載され、当該記事の上下に請求人による広告が掲載され、いずれの広告も上部には、本願商標が表示され、また本願商標を表示した雲台の写真が掲載されている(第12号証)。なお、同記事の閲覧数は明らかでないが、第9号証によれば、「デジカメWatch」の2009年1月のユニークユーザー数は約128万であり、上記記事は、その掲載週(2009年4月20日から同月26日)における記事中第6位のアクセス数があり(第13号証)、また、上記2つの広告の同期間の総インプレッション数(表示回数)は、上部に掲載された広告が30,357、下部に掲載された広告が30,415である(第14号証)。
f 請求人は、雲台用クイックシュー(着脱装置)「SG-80」を「CAPA」オリジナル商品として開発し、平成20年8月20日より予約受付を開始する旨の広告が、CAPA2008年9月号(学習研究社発行)に掲載され、当該広告(122ページ)の上段に本願商標が使用され、123ページの「CAPAネットショップ」の広告には、クイックシューSG-80及び当該クイックシュー用カメラプレートについて、それぞれ本願商標を使用し掲載されている(原審第43号証)。また、同2008年10月号にも「9月30日まで予約受付中」として、同様の広告(CAPAネットショップの広告も含む。)が掲載されている(原審意見書第44号証)。
(イ)以上によれば、請求人が本願商標を雲台を扱う請求人のホームページに使用を開始したのは、平成20年4月8日からであり、また、請求人が取り扱う雲台には、当初「Umemoto Works」の表示が付され、本願商標を表示した商品の販売開始日は定かでないものの平成20年4月1日ころ以降の製造によるものと推認される(原審意見書において、請求人は、平成20年4月1日出荷分から、取扱説明書や保証書に本願商標を付したと述べている。)。そして、本願商標を付した商品の販売数は、請求人の主張が事実であるとしても、平成20年7月7日から平成21年4月30日間の売上総数は835台である。また、販売ルートも主には請求人による販売及びフジヤカメラ店による販売(いずれもインターネットショップによる販売を含む。)と認められる。なお、クイックシューについては「CAPAネットショップ』での販売の事実が認められる。
そして、請求人は、本願商標を請求人のホームページ及び請求人のインターネットショップに使用したほか、2008年9月号及び同年10月号に本願商標を表示して広告(商品はクイックシュー)し、「デジカメWatch」の2009年4月20日付け請求人の雲台に係る記事に関連して同日頃に当該ページ2か所に広告をしたことが認められる。また、インターネット上の情報記事として、本願商標に係る雲台の紹介記事が3回取り上げられたことが認められる。
(ウ)しかしながら、上記認定によれば、本願商標は、請求人によりその使用を開始されてから僅か2年数か月にすぎず、本願商標に係る雲台の販売数量も平成20年7月7日からの約9か月間で835台と決して多いものとはいえないものであり、販売ルートも限定されたものである。
また、本願商標に係る商品(クイックシューを含む。)の広告も請求人のホームページ及びインターネットショップ中に表示されているほか、雑誌に2回(ただし、掲載商品はクイックシュー)、インターネット上の広告に1回(2か所)行ったことが認められるにすぎない。
さらに、商品請求人の雲台については、インターネット記事情報の記事として、「BB Watch」に2009年2月6日、「ケータイWatch」に2009年3月2日、「デジカメWatch」に2009年4月20日の3回取り上げられたことが認められるものの、これらの記事中には、上記商品についての説明等がなされているものの、本願商標の表示は一切ないものである。なお、当該記事中の商品写真をクリックすることにより、商品を拡大表示し、当該商品にある銘板には本願商標が表示されていることは認められるものの、当該ページにアクセスした者が必ずしも商品の写真を拡大して見るとは限らないし、このような商品の説明中にある商品写真を見る場合は、一般的には、その商品の機能等に係る形状等に注意が行くというべきであり、必ずしも商品に表示されている商標及びその態様まで注意し認識するものとはいえないところである。
そうとすると、請求人の提出した証拠によっては、本願商標は、雲台に使用され、請求人の業務に係るものとして、需要者間に広く認識されるに至っているものであるとは、認められない。
(エ)請求人は、雲台に係る需要者数について写真用品を取り扱う団体である「日本映像写真協会」の関係者の証言をもとに推定しておおよそ4万人であるし、請求人ホームページや上記本願商標に係る雲台の記事情報のユニークIP数等を根拠に本願商標が周知になっていると主張している。
しかしながら、前記アで述べたとおり、商標法3条2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、使用商標及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮すべきであり、一般的には、当該商標に接した取引者、需要者が直ちにその商標を記憶するともいえないから、仮に雲台に係る需要者の相当数が上記広告等により本願商標に接したとしても、上記に認定した程度の広告は、それほど多いといえるものではない。また、写真用品販売の大手販売店では複数の雲台製造企業の商品を取り扱っていることは認められるものの(例えば、ヨドバシカメラ(http://www.yodobashi.com/ec/category/index.html?cate=19328_500000000000000301&ch=0001&count=10&page=7&sorttyp=NEW_ARRIVAL_RANKING)、ビッグカメラ(http://www.biccamera.com/bicbic/jsp/w/catalog/list.jsp?DISP_CATEGORY_ID=033031&PARENT_CATEGORY_ID=03&BACK_URL=camera/index.jsp&NUMBER_SELECT=50&SORT=2)、請求人商品の取扱いはなく、上記認定のとおり、請求人の商品は主に請求人とフジヤカメラ店による販売であって、その販売ルートは広くはなく、雲台の需要者には、請求人の主張のごとくマニアックな者が多いとしても、本願商標に接する機会は限られるといえるから、上記認定の事実によっては、前記のとおり、本願商標が需要者に広く認識されたとまでは認めることができない。なお、需要者数については、上記協会では雲台の需要者を把握しているわけでなく請求人の推認によるものであり、請求人主張のとおりの需要者数が雲台に係る需要者数であるとまでは認定できない。また、仮にその需要者数が確かなものであるとしても、例えば、「ケータイWatch」は「携帯電話やPHSに加え、モバイル情報もカバー」するインターネット記事情報サイトであり、「BB Watch」は「インターネットによって個人の生活をより豊にする製品やサービスを紹介」するインターネット記事情報サイトであって(以上、第9号証)、カメラに関するサイトでないことはもちろん、雲台に関するサイトではないことは明らかであるから、上記インターネット記事情報についてのユニークIP数が前記のとおりであるとしても、これより直ちに雲台に係る需要者の閲覧数を推認することはできない。
したがって、本願商標は、その指定商品に使用され、請求人の業務に係るものとして、需要者間に広く認識されるにいたっているものであるとは、認められないものであるから、本願商標が商標法第3条第2項に該当するものであるとする請求人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものであって、かつ、同条第2項の要件を具備しないものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本願商標


審理終結日 2010-08-26 
結審通知日 2010-09-03 
審決日 2010-09-16 
出願番号 商願2008-26383(T2008-26383) 
審決分類 T 1 8・ 14- Z (X09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今田 尊恵薩摩 純一佐藤 丈晴 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 馬場 秀敏
瀧本 佐代子
商標の称呼 ウメモト 

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