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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない Z0941
管理番号 1222942 
審判番号 取消2006-30961 
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2006-08-04 
確定日 2010-08-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4582074号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成20年8月18日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10347号、平成21年2月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4582074号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおり、「ELLEGARDEN」及び「エルレガーデン」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成13年3月19日に登録出願され、第9類「録音済みの磁気テープ・コンパクトディスク・光ディスクその他のレコード,録画済みのビデオディスク・ビデオテープ・コンパクトディスク・光ディスク」及び第41類「音楽の演奏」を指定商品及び指定役務として、平成14年7月5日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第81号証(枝番を含む。ただし、枝番のすべてを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
なお、甲第28号証の3と4及び甲第30号証の1と3のそれぞれの間に、内容の異なる「甲第30号証の2」が重複して存するので、便宜上、前者は「甲第30号証の2の1」、後者は「甲第30号証の2の2」の提出があったものとして取り扱う。(知的財産高等裁判所において採用された証拠のうち甲第86号証は乙第5号証に、甲第82号証ないし甲第84号証及び甲第146号証は乙第1号証ないし乙第3号証及び乙第57号証に代えた。)
1 請求の理由
(1)本件商標は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなるところ、その商標権者たる被請求人(以下「被請求人」という。)は、その指定商品中の「録音済みのコンパクトディスク」の表面、附属のブックレットの表紙、本体及び裏表紙並びに裏カードに、別掲(2)に示すとおりの商標(以下「本件使用標章」という。)を使用している(甲第2号証)。
また、被請求人は、被請求人に所属する「ELLEGARDEN」という名称のロックバンド(以下「本件ロックバンド」という。)及び本件ロックバンドが行う音楽の演奏会を紹介するホームページ上において本件使用標章を使用した(甲第3号証)。
(2)本件使用標章は、請求人の著名商標である別掲(3)に示すとおりの商標(以下「引用商標」という。)と類似する。
(3)被請求人は、引用商標が請求人の所有に係る商標であることを十分認識していながら、本件使用標章を上記「録音済みのコンパクトディスク」に付して(以下「本件コンパクトディスク」という。)販売するとともに、被請求人に所属する本件ロックバンド及び本件ロックバンドが行う音楽の演奏をそれぞれ紹介する被請求人運営のホームページ上での宣伝広告活動に、本件使用標章を使用した。
そして、被請求人は、本件商標に係る指定商品及び指定役務に、本件商標と類似する商標を使用した結果(甲第2号証及び甲第3号証)、請求人の業務にかかる商品と混同を生じさせた。
(4)よって、本件商標は、商標法第51条第1項の規定により、取り消されるべきものである。

2 本件商標と本件使用標章の類似性
本件商標は、「ELLEGARDEN」を一行に書き、その下に片仮名で「エルレガーデン」と記したものである。
本件商標が、フランス語で「彼女」を意味する「ELLE」と、英語で「庭」を意味する「GARDEN」とを組み合わせてなる商標であること、及び「ELLE」が「エル」と発音され、「GARDEN」が「ガーデン」と発音されることは、現代における外国語の普及状況から明らかである。
よって、本件商標からは、「エルレガーデン」のほか、「エルガーデン」、「エル」及び「ガーデン」の称呼が生じるものと認められる。
これに対して、本件使用標章は、「ELLE」と「GARDEN」を二段書きしてなるものであり、しかも、「ELLE」に比して「GARDEN」の文字は小さく、かつ、「ELLE」の文字中の2つの「E」の文字に挟まれるように表示されている。
このことから、本件使用標章中、顕著な部分は、「ELLE」及び「GARDEN」の部分であって、本件使用標章からは、「エル」及び「ガーデン」の称呼、並びに「エルガーデン」の称呼が生じる。
よって、本件商標と本件使用標章とは、「エル」の称呼を共通にする互いに類似の商標である。

3 引用商標の著名性
(1)請求人の引用商標の沿革
請求人は、引用商標を付した女性向けファッション雑誌(以下「請求人雑誌」という。)を、1945年(昭和20年)にフランスで創刊し、現在に至るまで発行している(甲第4号証及び甲第5号証)。引用商標は、請求人雑誌を創刊するにあたり、その表題として創作されたものである。
そして、請求人は、引用商標「ELLE」を付した各種商品の製造・販売及び各種役務の提供を全世界で展開する一方、それについて多数の登録商標を所有しており、日本においても、各種商品及び役務について、前述の引用商標のほか、「ELLE」及び「エル」の文字を含む400を超える登録商標を所有している。
(2)請求人雑誌の発行状況
ア 世界における請求人雑誌の発行状況
請求人雑誌は、1945年にフランスにおいて創刊され、2006年1月24日現在3133号を数えており、発行部数はフランス語版だけで毎刊35万冊に達している(甲第4号証ないし甲第6号証)。請求人雑誌は、被服、布製身回品、化粧品、バッグ類、履き物、装身具、時計、眼鏡、傘、寝具類、家具、テーブルウェア、食器等ファッション性のある商品に関する記事を掲載する女性向けファッション雑誌であり、女性向けの新しいファッションを紹介・普及させるファッションリーダー的雑誌として、第二次世界大戦後、世界中で人気を博し、「ELLEファッション」という言葉もその頃に生まれた。
請求人雑誌は、各国において発行されているが、それらの内、フランス版、アメリカ版及びイギリス版は、日本国内においても販売されている。
イ 日本国内における請求人雑誌の発行状況
我が国では、平凡出版株式会社が請求人の許諾のもと、昭和45年3月に雑誌「アンアン(an an)」を請求人雑誌の日本版と位置づけて創刊し、以来昭和57年に至るまで雑誌「アンアン」には、毎号フランス語版雑誌「ELLE」の記事が多数掲載されるなど、「ELLE」ファッションの紹介・普及を図り、その表紙には必ず引用商標を付してきた。
その後、昭和57年4月に株式会社マガジンハウス(現在はアシェット社の子会社である株式会社アシェット婦人画報社が出版業務を引き継いでいる)によって日本版の女性雑誌「ELLE」が創刊された。
請求人雑誌「ELLE」は一時、月2回刊行された時期を経て、現在月1回刊行されているが、毎号の発行部数は20万冊から24万冊に達しており(甲第13号証9ページ等)、請求人雑誌「ELLE」が現在に至るまで日本における女性向け雑誌の中で最も人気の高い雑誌となっていることは周知のとおりである。
(3)請求人商品の販売状況
請求人は、昭和39年以来、帝人株式会社(以下「帝人」という。)に対し、引用商標の独占使用権を許諾するとともに、「ELLE」ファッションに関する商品の販売・普及活動を推進してきた。
帝人は、自ら「ELLE」ファッションに関する洋服を製造・販売する一方、その独占使用権に基づき、婦人服は株式会社イトキン、スカーフ・ハンカチ類は川辺株式会社、水着は株式会社岸田、エプロンは中西縫製株式会社、寝装寝具類は西川産業株式会社、手袋は株式会社三大に、それぞれ請求人の引用商標の再使用権を許諾した。
その後、昭和59年7月に、請求人は、帝人との関係を解消し、自ら東洋ファッション株式会社(現在は、「株式会社エルパリス」に商号変更。)を設立し、「ELLE」ファッションの市場開発、市場調査、企画、利用を行う一方、帝人のサブライセンシーを引き続き使用権者として引用商標の普及に努めた。また、その間、新たなサブライセンシーとして甲第19号証の1ないし5に記載の各企業が同号証記載の商品について、「ELLE」ブランドビジネスに加わるなど、その活動範囲は益々広がりを見せている。
我が国の請求人のサブライセンシーの数は、2005年(平成17年)11月現在で33社に上り、その業種も、被服、布製身回品、バッグ類、履き物、装身具、眼鏡、傘、寝具類、家具、テーブルウェア、食器等、あらゆる商品に及んでいる(甲第19号証ないし甲第60号証)。
これらのサブライセンシーは、請求人のライセンス商品の出所を示すもの、すなわち、商標として、引用商標をはじめとする請求人商標をその商品に付して継続して使用している。また、引用商標の使用を通じ、その称呼「エル」も著名なものとなっている。それ故、これらの使用を通じて、引用商標「ELLE」及びその称呼「エル」は、遅くとも本件商標の登録出願日(平成13年3月19日)前には、我が国において著名となっていた。

4 混同のおそれ
本件使用標章は、「ELLE」と「GARDEN」を二段書きしてなるところ、そのうちの「ELLE」の文字は、「GARDEN」よりも大きく表示されていることから、本件使用標章中、顕著な部分は、「ELLE」及び「GARDEN」の両部分であり、その結果、本件使用標章からは、「エル」及び「ガーデン」の称呼が生ずる。
引用商標「ELLE」は、アルファベット4文字で構成される商標であって、前述のとおり「エル」の称呼をもって著名なものとなっている。
したがって、請求人の引用商標と本件使用標章とは、ともに「エル」の称呼を生ずる類似の商標である。
また、請求人は、著名商標を中心に、その商品ラインを示す表示を付加した結合商標「ELLE JAPON」、「エルスポール/ELLESPORTS」等(甲第61号証ないし甲65号証)も使用している。その結果、顧客は、著名な引用商標「ELLE」のほか、それと他の語と結合した商標も使用されていることを熟知しているものである。
かかる状況下において、「ELLE」と「GARDEN」の文字を二段書きし、しかも、「ELLE」の文字部分を大きく、「GARDEN」の文字部分を小さく表示してなる本件使用標章を目にする者は、必ず「ELLE」の部分に着目すると考えられる。
また、引用商標を付したサブライセンシーの商品を購入する需要者は、かつては若い女性が中心であったが、現在では、老若男女を問わない商品展開によって、あらゆる年令層の人々に及んでおり、これらの需要者の中には、被請求人の商品及び役務の需要者をも包含するものであるから、本件使用標章を目にするときには、それが請求人の著名な引用商標「ELLE」のバリエーションであると考え、これより、あたかも当該商品が、請求人と何らかの関連を有する者の取り扱いに係る商品又は役務であるかの如く、その出所について誤認混同することは目に見えている。

5 故意
請求人の引用商標の著名性からすれば、被請求人が「ELLE」と「GARDEN」とを二段書きしてなる本件使用標章を使用すれば、誤認混同を生じることは明らかであるため、かかる被請求人による本件使用標章の使用は、商品の出所について誤認混同が生ずることを認識しつつ、その使用が故意を伴って行われたことを強く証明している。
また、被請求人は、本件使用標章の使用が請求人の商品・役務とその出所の誤認混同を生ずるとして請求人からの警告を受けていたにもかかわらず、これを行ったものであるから、明らかに誤認混同に関する認識、すなわち、故意を有していた。
すなわち、請求人は、平成15年頃に、被請求人が本件使用標章を本件コンパクトディスク及び被請求人のホームページにおいて使用していることを把握し、これに対し、商標権侵害の警告を行った(甲第75号証)。
この時点で、被請求人は、請求人の要求に応じ、本件コンパクトディスク及びホームページにおける本件使用標章の使用を中止する旨連絡してきた。
しかし、その後、請求人は、被請求人がTシャツ等に引用商標と類似する標章を使用していることを発見したため、その差止請求訴訟を東京地方裁判所に提起した。
当該訴訟の過程で、請求人は、被請求人が中止する旨述べていた本件コンパクトディスクがその後も販売されているのではないかという疑いを持ったため、被請求人に、その事実を明らかにするべく求釈明を行ったところ(甲第67号証)、被請求人は、「一部増刷した事実はある。」と回答し、いったん本件使用標章の使用を中止すると約束した後も、本件使用標章を使用していたことを認めた(甲第68号証)。
以上のとおり、被請求人は、請求人の引用商標と類似する本件使用標章を、その指定商品及び指定役務、また、その指定商品と類似する商品に使用しているものであるから、請求人の著名な引用商標と故意に混同を生ずる行為をしたものといわざるを得ない。

6 第1弁駁
(1)請求人が、被請求人の「故意」を主張する根拠は、審判請求書の第14ページ及び第15ページに記載した事実が根拠であり、被請求人は、請求人の著名な引用商標の存在を知りながら、被請求人の「録音済みコンパクトディスク」及びホームページに本件使用標章を使用したので、請求人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずることを認識していたと認定できるから、被請求人の「故意」が認められるのである。
(2)被請求人は、請求人指摘の本件使用標章が商品の内容を証明する表示として付されており、製造・販売元の識別機能を発揮するものではないと主張する。
しかし、本件使用標章は、「ELLE」と「GARDEN」を上下に組み合わせた構成よりなるものであるが(以下「ELLE/GARDEN」と表示することがある。)、本件ロックバンド名の表示方法というには程遠いものであり、看者は、通常当該表示を出所表示(商標)と認識する。
(3)被請求人は、コンパクトディスクの商標は、商品の裏面の目立たないところに表示されるものと主張するので、手元のコンパクトディスクを調査すると、商品の表面、裏面、いずれにも表示されていることが確認できた(甲第69号証ないし甲第72号証)。
してみると、被請求人の主張は、全く世間の常識を無視したものであり、受け入れることができない。
(4)被請求人は、請求人指摘の本件コンパクトディスクには、「Dynamord Label」の表示があり、これが出所表示であると主張するが、一つの商品に複数の商標を表示することは、世間でよく行われており、その場合に、二つのうちより著名な商標が顧客の目にとまり易く、これが出所表示と理解されることが多い。
本件では、請求人の著名な引用商標「ELLE」が存することに鑑み、「ELLE/GARDEN」の文字中の「ELLE」に注目が向くのはいうまでもない。
(5)被請求人は、本件コンパクトディスクの帯部分に「エルレガーデン」と表示されていることに照らすと、本件使用標章は、音楽の演奏家の名として理解される筈だとの論理を展開するが、本件使用標章が出所表示らしく見える状況下にあって、帯部分の表示を参照するとしても、これを出所表示でないと理解するのは困難である。
(6)被請求人は、請求人の商標「ELLE」が著名なのは、雑誌や被服の分野に限られていると主張するが、請求人の引用商標が、あらゆる商品・役務の分野において著名であることは、既に提出した証拠から明らかである。
請求人は、そのライセンサーを介して、音楽を収録したコンパクトディスクにも引用商標を使用しており、該商品は、我国においても販売されている(甲第74号証)。
(7)被請求人は、引用商標の知名度のみを理由として、「ELLE」の文字を含む本件使用標章が引用商標と類似するとはいえないと主張するが、請求人の引用商標を含む商標が引用商標と類似することは、平成11年の特許庁の審査基準の改定の経緯をみても明らかである。同改定において、著名商標を含む商標登録を、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号の拒絶理由としたのは、引用商標と商標「ELLECLUB」とが類似するとした東京地方裁判所の判例が一つの契機であることからも明らかであろう(甲第73号証)。

7 第2弁駁
(1)請求人は、被請求人に対する平成15年1月30日付警告書(甲第75号証)において、本件使用標章を指摘し、これが不正競争防止法第2条第1項に違反していることを指摘した。
これに対し、被請求人は平成15年2月6日付報告書(甲第76号証)において、本件使用標章は本件登録商標の使用であることを認め、本件使用標章が請求人の商標と混同を生じさせるおそれがあるという主張も理解した旨を述べている。また、同報告書において、以後本件使用標章は使用しない、と記載している。
(2)本件使用標章の使用時期
請求人が本件使用標章の使用に気づいたのは、平成14年7月25日である。その後、平成15年1月23日に被請求人が使用していることを再度確認している。
被請求人は、本件使用標章を付した本件コンパクトディスクを最初に発売したのは、平成13年10月12日であるとし、その使用を中止する、と前記報告書中において述べている。
しかしながら、被請求人は、本件コンパクトディスクの発売を中止しないため、請求人は、平成15年3月11日付警告書(甲第77号証)において、再びその中止を求めた。
この事実から明らかなとおり、本件使用標章は、少なくとも平成13年10月12日から平成15年3月11日までの間、被請求人の故意の下に使用されていたことは明らかである(実際には、平成18年に至るまで、本件使用標章を付した本件コンパクトディスクの販売が続けられた。)。
(3)被請求人の故意
被請求人は、請求人が第1回目の警告書を郵送する前の平成15年1月23日の被請求人のウェブページ(甲第3号証の1)に、自社の音楽バンドのメンバーを「ELLEメンバー」と名づけていることからも明らかである。この事実からも、当時から、請求人の引用商標の存在を知っていて、その著名性に便乗しようとの意図が伺える。
また、請求人から被請求人宛の平成15年1月30日付警告書において、請求人の引用商標が著名商標であること、また、本件商標を「録音済みコンパクトディスク」および「音楽の演奏」に使用していることが、不正競争行為にあたる旨を伝えている。
これに対し、被請求人は、平成15年2月6日付報告書(甲第76号証)において、「一般人において、貴殿の依頼人の商標と混同を生じさせるおそれがあるという貴殿の主張も、弊社は理解いたしました」、「本件標(商)章を使用しないことを決定し」と述べている事実がある。即ち、遅くとも、被請求人は、平成15年2月6日には、引用商標の存在、および、本件使用標章と引用商標の混同のおそれについて、認識していたことは間違いのない事実である。
(4)本件使用標章の出所表示機能
被請求人は、本件コンパクトディスクおよび前記のウェブページに表示された本件使用標章は、音楽バンドの名称の表示として使用されているものであって、商標としての使用ではない、と主張する。
本件使用標章は、ELLEの4文字を横に大きく表示し、そのうち中の二文字「LL」の下側に小さく「GARDEN」の文字を挿入した構成のものである。録音済みコンパクトディスクのラベルにかかる表示をしているものがある場合、いかにも商標らしい構成であり、その表示されている場所も、商品の出所を表示するための表示がなされるのが普通であると考えられる個所であるので(甲第2号証)、これが一般に音楽の演奏者・演出者の名称および当該ディスクの製作者ないし販売者の名称を伝えようとする表示である、と理解される、と考えるのが自然である。
(5)本件に関係した訴訟
被請求人は、平成15年3月14日付報告書(甲第78号証)において、本件使用標章の使用を中止すると述べた。
ところが、被請求人は、本件商標「ELLEGARDEN」を様々な態様の商標として、これを本件商標に係る指定商品以外の各種商品にも付して販売を開始した。これに気づいた請求人は、平成17年4月27日付通知書をもって、その使用中止を求めたが、被請求人はこれを中止せず、かつ本件使用標章の使用も続けた。
そこで、請求人は、平成18年2月27日に被請求人を被告として、それらの行為の差止を求め、東京地方裁判所に訴を提起した(東京地方裁判所平成18年(ワ)第4029号)。
同訴訟は、平成19年5月16日に東京地方裁判所により判決が下されており、その中で、本件使用標章を「録音済みコンパクトディスク」に使用することが差止められている(甲第79号証 判決書主文第9(1)及び(2)項参照)。
(6)よって、被請求人の本件使用標章の使用は、引用商標と混同を生じるものであり、商標法第51条により、本件商標の商標登録は取消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第58号証を提出した。
1 第1答弁
(1)請求人は、被請求人が本件使用標章を使用して請求人の業務に係る商品と混同を生じさせていると主張しているが、請求人指摘の本件使用標章は、被請求人がその指定商品に使用しているものではなく、ましてや、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせている事実もないので、請求人の主張には全く理由がない。
(2)請求人が被請求人による本件使用標章の使用と主張する表示は、本件ロックバンド名であり、被請求人は、それを商標として使用していない。
ア 「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の由来
本件ロックバンド「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)は、1998年12月に千葉県にてメンバー4人で結成された。同年12月31日に開催されるライブのチケットの印刷のため、本件ロックバンドの名前を付す必要があり、バンドにふさわしい言葉を捜したとき、目にとまったのが、すでに明治時代に我が国に伝わっていた外来語「エルレ」(乙第4号証)であった。聞きなれないその発音の響きを、非常に心地よく個性的な言葉だと感じ、かつ、長さの単位であり、固いイメージのドイツ語である「エルレ」(Elle)が、正確・緻密で知的なイメージの性格・外見を有するバンドメンバーのイメージに一致すると考えた。
一方、野外の自由なスペースを意味する英語の「garden」もメンバーのイメージを表すと思い、これら2つの語を組み合わせて命名されたのが本件ロックバンド「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)であり、以来、本件ロックバンド「ELLEGARDEN」は、一貫して「エルレガーデン」と称し、既に100万枚以上のCDの販売実績もある有名なロックバンドである。
イ 本件使用標章は、商標として使用されたものではない。
本件使用標章は、当該商品の出所(製造元・販売元)識別機能を発揮するとして使用されたものではなく、本件ロックバンドの楽曲を収録した作品及びその商品自体の内容の説明として付されているものにすぎない。
甲第2号証を一見すれば明らかなとおり、「ELLEGARDEN」の表示は、商品「コンパクトディスク」に収録された楽曲のアーチスト名として使用されており、本件使用標章は、何ら商品「コンパクトディスク」の出所識別機能を発揮する商標として使用されているものでなく、作品の内容(音楽アルバム作品においてアーチスト「ELLEGARDEN」の楽曲が収録されていること)を示すものにほかならない。
このように、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の表示は、需要者がアーティスト名であることを一見すれば明らかな態様で本件コンパクトディスクに付されている。
請求人が指摘する本件コンパクトディスクにも、甲第2号証の4枚目にあるとおり、「Dynamord Label」という、通常のコンパクトディスク商品と同様の被請求人のレーベルブランドである「ダイナモードレーベル」が付されており、このレーベル名「Dynamord」は、登録商標である(乙第5号証)。
当該商品について、客観的にコンパクトディスクの製造・販売元を示す出所識別機能を発揮する商標は、「Dynamord」以外の何者でもなく、当該表示こそがコンパクトディスクの製造・販売元を示す出所識別機能を発揮する商標として使用されている。
また、本件使用標章のみならず、最も人目を惹きつける包装フィルム内の帯部分にも大きくカタカナ文字で「エルレガーデン」と明示されており(甲第2号証の4枚目)、本件コンパクトディスクに収録された作品の需要者に対しても、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の表示は、作品のアーティスト名であることが明らかとなるように表示されており、主観的にはもちろん、客観的にも、本件使用標章が商標として使用されているものでないことは、議論の余地がない。
したがって、本件使用標章が商標として使用されていることを前提とした請求人の主張は、その前提自体が基本的に誤っている。
ウ 請求人は、被請求人が、ホームページ上で請求人の引用商標と混同を生ずる商標の使用をしたとして、甲第3号証で被請求人のウェブサイトにおける表示を掲げているが、ここにおける表示は、何ら商標として使用されているものではなく、アーティスト名の表示であることは、一見して明白である。
請求人が商標の使用であるとする甲第3号証の2には、「ELLEGARDENのホームページにようこそ。このページはバンドの最新情報・・・」と記載されていることから明らかなように、「ELLEGARDEN」の表示はバンド名として使用されており、このウェブサイト自体、本件ロックバンドの歴史の紹介文であり、ここにおける「ELLEGARDEN」の表示は、商標として使用されたものではあり得ない。
(3)本件使用標章を付したことが、請求人の業務に係る商品と混同を生じていない。
ア 請求人は、引用商標「ELLE」には知名度があるとしているが、それはあくまで雑誌や被服の分野に限られており、引用商標「ELLE」が、音楽関連分野において使用されていることを被請求人は全く知らない。
不可解なことに、請求人は、意図的に自らが所有する引用商標の分野や、その登録番号さえ明らかにしておらず、類似と主張する商標自体を明示していない。
いずれにせよ、本件使用標章は、請求人が証拠として挙げている請求人の商品の分野とは微塵も関わりのない音楽の分野の商品について、しかも収録作品のアーティスト名の表示として付されているものである。
イ 我が国において、請求人自身はもちろん、一般の企業がミュージシャン(実演家)の名称の使用にライセンサーとして携わっているという証拠はないから、請求人が「雑誌」のほか、「衣料品」その他に係る営業を行っていることが、バンド名のライセンサーと誤認される可能性を示唆するものにはなり得ない。
したがって、音楽作品たるコンパクトディスクの需要者が、請求人指摘の本件使用標章「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の表示から、請求人がその作品の製造・販売に何らかの形で関わっていると認識する、抽象的なおそれもない。
しかも、仮に「ELLE」の知名度があるとしても、その範囲は、「ELLE」の4文字の範囲においてのみであり、「ELLE」の4文字を含んだ登録商標は、被服の分野に限っても、「ellesse」、「Elle Roman」など多数存在し、かつ、そのほかにも、「ELLEBON」、「ELLE-MOI」、「ELLEVOIE」、「Ellenite」などといった登録商標が存在する(乙第6号証ないし乙第38号証)。
これらと、「ELLE JAPON」、「ELLESPORTS」などを見比べても、どれが請求人の登録商標で、どれが他人の商標であるかは、当該商標を見た需要者からしてまったく判然としない。
このように、一般に著名商標といわれる商標と比べて、「ELLE」そのものの識別力の強さは、かなり低いものといわざるをえない。
ウ 「ELLE」の知名度のみを理由として、「ELLE」と他の語を結合した商標が、原則として請求人の商標と類似するといい得ないことは、「ELLE」を含む登録商標と、著名なブランドの登録商標を含む登録の状況のみをみても明らかである。
「ELLE」の知名度を根拠とする議論は、元来固有名詞である「PRADA」、「CHANEL」や「LOUIS VUITTON」等には当てはまるとしても、代名詞や長さの単位である「ELLE」に当てはまるものではない。
これらの商標は、他の語との結合によっても、元の商標の出所を識別する機能が減殺されないが、それは、これらの商標がそれ自体著名であるだけではなく、他の語と組合せても、日本人に馴染みがない部分から看取される極めて自他識別力の高い、いわゆる「ストロングマーク」であるからである。
エ 被請求人の商品には、「エルレガーデン」という称呼が明確に表示されており、かつ、当該商品の需要者は、その収録作品がアーティスト「ELLEGARDEN」によるものであることを十分に理解して購入する。
本件使用標章は、文字の大きさに多少の違いこそあれ、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の10文字である。
特に、本件使用標章の付された本件コンパクトディスクの最も目立つ帯には、何よりも大きく、称呼が「エルレガーデン」と7文字のカタカナで明示されている(甲第2号証の4枚目)。
当該カタカナの表示によって明確に示されているとおり、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)は、一体不可分の一連の表示であって、その要部が「ELLE」であり、称呼が「エル」であるなどということはありえない。
本件コンパクトディスクの需要者であれば、誰もが読めるように、最も目立つ帯に、アルファベットなどではなく、小学校1年生でも容易に読めるカタカナで、その称呼が大きく「エルレガーデン」と表示されているのであり、その要部は、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の全てであるから、これらが請求人の業務に係る商品と混同を生じさせる可能性は全くない。
商標の類否の判断について、最高裁判所(最高裁判所平成9年3月11日民集51巻3号1055頁)が明示的に判示しているように、混同のおそれも具体的事案に応じて具体的に判断されるべきであることは当然である。
本件においては、本件使用標章の称呼「エルレガーデン」の7文字が、甲第2号証の4枚目に大きく表示されており、請求人の引用商標の称呼「エル」とは著しく相違する。
また、取引の実情として、コンパクトディスクの取引者・需要者は、商品の性質上、当然に「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)が、アーティスト名であることを認識し、それを前提として購入するから、商品の出所を請求人と誤認混同するおそれは皆無である。
これに対して、コンパクトディスクの需要者が、アーティスト名や楽曲名を認識せずにコンパクトディスクを購入するようなことは、我が国において知られていないし、雑誌がアーティスト名と関わりがあることなど、我が国においては、まったく知られていない。
したがって、被請求人の商品が、請求人の業務に係る商品と混同される可能性は全くない。
(4)被請求人には、何ら故意は認められない。
請求人は、故意を示す事情として、いくつかの証拠を掲げるが、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の表示を、被請求人は商標として使用していない。
あくまで、「ELLEGARDEN」の表示は、本件ロックバンド名の表示であり、それはコンパクトディスクの出所識別機能と微塵も関わらず、コンパクトディスクに収録された作品が、本件ロックバンドの楽曲であることを示すために付されたものである。
被請求人は、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)がアーティスト名であり、商標として使用されたものではないという明確な認識を有している。
したがって、被請求人は、請求人が掲げる商品について、本件使用標章を商標として使用しておらず、その前提となる商標の使用自体について、商標法第51条が要件とする故意を有していない。
また、被請求人は、本件使用標章が付される商品について、何よりも大きく目立つようにカタカナにより、その称呼「エルレガーデン」を明示して使用しているのであって、故意に他人の業務に類似する商品若しくは役務と混同を生ずるように本件使用標章を使用したものではない。したがって、混同を生ずるとの点について、故意などある筈がない。

2 第2答弁
請求人は、被請求人が本件使用標章を使用し、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせていると主張する。
しかし、請求人の指摘する本件使用標章は、被請求人が本件コンパクトディスクに商標として使用をしているものではなく、ましてや、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせている事実もなく、請求人の主張には全く理由がない。
本件使用標章は、本件ロックバンド名であり、被請求人の行為は、商標としての使用ではない。
(1)甲第2号証の4枚目のとおり、CDに付されている帯には、片仮名文字の「エルレガーデン」が大きく目立つように表示されており、それはコンパクトディスクのもっとも目立つ位置に付されており、作品のアーティスト名を表示したものであることは、証拠を掲げるまでもなく公知の事実である。
(2)本件使用標章は、本件コンパクトディスクの出所(製造・販売元)識別機能を発揮する商標として使用されているのではなく、本件ロックバンドの楽曲を収録した作品であること、すなわち、商品自体の内容の説明として付されているにすぎない。
(3)「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の表示がアーティスト名でないとすれば、本件コンパクトディスクへの収録楽曲のアーティスト名が当該商品のどこにも表示されていないことになり、それがわからない音楽CD作品は、全く意味がないことになる。
(4)「ELLEGARDEN」の表示は、客観的にコンパクトディスクの製造・販売元を示すものとして表示されているものではなく、作品の主体であるアーティスト(ロックバンド)名以外の何ものでもない。「ELLEGARDEN」は、当該商品が「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の楽曲を収録したもの、すなわち、商品の内容自体の説明であるから、これが製造・販売元を示す商標として用いられていないことは明らかである。
(5)本件使用標章が、客観的に商品の出所識別機能を発揮するレーベル名として付されたものでないことは前述のとおりであるところ、アーティスト(実演家)が、その音楽活動について、雑誌出版社ないし衣服メーカーその他の企業のライセンスを受けるというような実態は、少なくとも我が国において抽象的にも知られていないし、その実演家としての性質上、一つの企業とタイアップ(提携)した名称を自らの名称として使用することも到底考えられない。
(6)被請求人は、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)がアーティスト名であり、商標として使用されたものではないという明確な認識を有しており、これは、ただ単に被請求人が確信しているにとどまらず、コンパクトディスクとして「ELLEGARDEN」の作品が100万枚を超えて販売されているにもかかわらず、「ELLE」と混同したという苦情が1件もないという客観的な事実によって支えられている。
これに対して、請求人は、本当に混同されるような表示であれば、当然に存在するはずである顧客からの問い合わせやクレームに係る証拠を一切提出していない(これは、ただ単に証拠を提出しないのではなく、そのような間い合わせやクレーム自体が存在しないからである。)。
(7)被請求人としては、本件で問題とされている商品における表示は、作品の主体である本件ロックバンド名の表示以外の何者でもなく(作品名でもありえず、音楽レーベル等、商品の出所を表示するものでもあり得ない。)、ましてや、雑誌などの「ELLE」を思い起こすことなど到底あり得ず、類似していないし、「ELLE」と出所について混同されることもない。
(8)被請求人が顧客から、そのような問い合わせやクレームを受けたことは、活動開始以来約10年を経た現在に至っても一切なかったし、そもそも、その請求が成立することなど、およそ、あり得ないと考えていたが、なお、被請求人に所属し、その名称につき正当な由来を有し、オリジナリティーあふれる最高のロックバンドとして、何ものにも代え難い大切な「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)を構成する本件ロックバンドのメンバーのブライドを守るために、石橋を叩いても渡らないような万全を期する姿勢で対応しようと、請求人指摘の本件使用標章の付されたCD作品について、全て店頭から回収したのであり(乙第45号証)、類似や混同の可能性を認識して商品を販売したことが一切あり得ないことを申し添える。
(9)以上に述べたとおり、被請求人による本件使用標章の使用は、客観的にも、主観的にも商標法第51条の要件を充足しないから、請求人の審判請求は成り立たないものである。

3 第3答弁
(1)本件で問題とされている商品について、商品の回収ができなかった原因を代理人において確認したところ、そもそも、少なくとも請求人の指摘している外装部分に関しては、厳密には、被請求人が販売しているとはいえない事実が判明した。
すなわち、本件で問題とされている商品は、被請求人が直接に製造販売等した商品ではなく、被請求人との原盤供給契約に基づいて製造販売者が製造販売したものにすぎない。
したがって、被請求人は、被請求人として本件使用標章を商標として「使用」したというものではなく、「商標権者」としての行為ではない。
すでに第2答弁において述べているとおり、被請求人としてあらぬ誤解を避けるために、代理人と協議の上、製造販売元にすでに表示を変更するように指示するとともに、回収の努力を行ってきたものでもあり(乙第45号証)、裁判所においても、今後製造販売するつもりがないことを表明してきたものでもある。
(2)請求人は、被請求人に対し、本件で問題とされている商品とともに、数十の商品の製造販売の中止を、訴訟提起をしてまで求めてきたが、請求人の「商標権」に基づく請求はすべて排斥され、本件で問題とされた商品のみに、商品等表示としての使用と認められたものである(知財高裁平成20年3月19日判決(平成19(ネ)第10057号、平成19年(ネ)第10069号))。
原審判決において請求人の請求が認容されたものについても、ほぼすべての請求が控訴審において棄却されたものであり、本件商品についても、少なくとも微妙な事案であることは間違いのない事実であった。
被請求人としては、請求人からの請求を受けた後、速やかに回収する等の措置に出たものであり、判決の結論にかかわらず、以後についても一切使用する意思などないことを、裁判所の期日においても表明していたことも前述のとおりであるし、和解交渉の場においても常にその意思を表明していた。
遺憾ながら、本件使用標章については、商品等表示として使用されているものと認定されたものの、これらを「商標」として使用したというものではないのに加え、あくまで、アーティスト名「ELLEGARDEN」の表示として表示していたものであることは、ジャケットの体裁のほか、帯を見ても疑いようのない事実であり、また、請求人が指摘し、裁判所が差し止めを認めたこのジャケットについては被請求人自身、回収されたと思っていたものであり、今後も行う意思がなかったので、特に、厳密に製造販売者が誰かについての主張はしなかった。
(3)本件で問題とされている商品には、題名のほか、本件使用標章がアーティスト名を示すものとして用いられているが、もし、これをアーティスト名としての表示でないというのであれば、アーティスト名の表示がないこととなることを裁判所で主張しているが、この点は本件でも同じである。
そのようなCDは、一般に販売されておらず、アーティスト名としてのロックバンド「ELLEGARDEN」を示すために、本件使用標章が用いられていることにかわりはない。
少なくとも、製造販売者および被請求人として、「ELLEGARDEN」の表示が「商標」として使用されているという認識など微塵もなかったし、2段表示しているのは被請求人ではない。
(4)請求人は、警告したことをもって、故意と主張するが、前記のように外装を製造しているのは被請求人ではないし、被請求人の意識は、ロックバンドとしてのアーティスト名の表示をCDに表示することに過ぎないから、請求人の警告のみにより、類似性のほか、商標としての使用、混同についてまでも「故意」が認定されるという請求人の主張は、仮に、製造者が誰かの点を除いても不合理であることは明白である。
請求人が訴訟提起をした段階において、一つの考え方として、請求人の主張を認識はしうるが、それはその段階ではあくまで請求人の考えであり、何らかの確証が得られているようなものではない。
権利関係の確定しない段階において、代理人と相談の上、微妙な事案であるから標章の使用を禁止するとともに、自ら製造販売したものではなく、あくまで、原盤を提供したに過ぎないのに、商品の回収努力を行っている被請求人に故意など認められるはずがない。
(5)特に故意の点ついて、法文に即して説明すると、被請求人としては、故意に、「商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものを」したことなどありえない。
被請求人として、「ELLEGARDEN」の商品を購入した人から、請求人にかかわりのあるものと間違ってしまったなどとクレームを受けたことなど一度もなく、また、請求人としてもそのようなクレームを受けたことなど一度もないはずである(訴訟においてもこれにかかわる証拠は一切提出されていなかったし、本件審判請求においても同じである。)。
被請求人所属の本件ロックバンドは、ロックバンドであり、請求人のブラントイメージとはまったく異なる分野に属するものであるとともに、請求人のブランドイメージを借りるつもりなどまったくなく、またそうすることにメリットなどどこにもないし、本件で問題とされる標章により、請求人に何らかの害を与えるものなどとも認識などしていなかった。
被請求人にそのような故意や害意が存在しなかったことについては、本件で問題とされる標章にかかる商品を除き、請求人より問題とされた数々の商品群につき知的財産高等裁判所がすべて非類似と判断していることによっても裏付けられる。
(6)以上のとおり、被請求人は、本件使用標章につき、「商標」として使用したことはなく、引用商標との「類似性」、「混同」についても意思も認識もなく、アーティスト名の表示がなされているのみであり、「商標」として使用されることについての意思も認識もなく、原盤を提供したに過ぎず、外装の表示部分について、製造したものでも販売したものでもないことから、客観的にも、主観的にも、商標法第51条第1項の要件を充足しないから、請求人の審判請求は成り立たないものである。

第4 当審の判断
1 商標法第51条第1項について
本件審判は、商標法第51条第1項に基づき、登録商標の取消を求めるものであるところ、同条項の趣旨は、商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標と同一又はこれに類似する商標の使用をして、商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをした場合に、商標権者に対する制裁として、その商標の登録を取り消すというものである。
したがって、同条項に基づき本件商標の登録を取り消すためには、商標権者が上記類似範囲にある商標の使用をすることにより、他人の業務に係る商品若しくは役務と出所の混同を生ずるものをしたこと、及びその使用について故意があったことが要件となるものであって、さらに、「商標の使用であって・・・他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」に当たるというためには、使用に係る商標が他人の商標と類似するだけでは足りず、その具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との混同を生じさせるおそれを有するものであることが必要と解される。
そこで、本件使用標章の使用が上記規定に該当するかについて検討する。

2 本件使用標章について
本件使用標章は、別掲(2)のとおり、黒地の横長長方形の中に四隅を丸めてなる横長長方形の輪郭を白抜きの線で描き、その輪郭内に「ELLE」と「GARDEN」の文字を2段にわたって白抜きで表記したものである。
そして、「GARDEN」の文字は、大きく表された「ELLE」の「E」と「E」の間に挟まれるとともに「LL」の下になるようにデザインされているが、「ELLE」と「GARDEN」の文字とを組み合わせたものと容易に理解させるものである。

3 引用商標及びその使用の事実について
(1)引用商標は、別掲(3)のとおり、「ELLE」の文字から成り、本件使用標章と同様に、縦線が横線よりも太く、横線の右端部分に「ひげ」が付されたローマン体風の書体によって表記されており、また、「E」「L」「L」「E」の各文字は、通常の書体と比べて若干縦幅が長くなっているため上下に細長い印象を与えるものであり、そして、隣り合う文字と文字との間隔は若干離れている。
(2)請求人による引用商標の使用に関して、提出された証拠及びその主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、引用商標をその表題に付した雑誌「ELLE」をフランスにおいて1945年(昭和20年)に創刊し、2006年(平成18年)1月16日現在までに、3133号が発行されている(甲第4号証ないし甲第6号証)。
そして、フランスでの創刊後、イギリス、アメリカをはじめ世界各国で各国版が創刊され、1997年(平成9年)までに総版数は30となり、その毎号の発行部数はフランス版で35万部、アメリカ版で97万部に達している(甲第4号証及び甲第7号証)。同誌は、女性向けのファッションを中心に掲載し、同誌によって生み出されたファッションは「エル・ファッション」と呼ばれるようになった(甲第9号証及び甲第10号証)。
また、インテリア雑誌である「ELLE DECO」(エル・デコ、甲第16号証及び第17号証)、あるいは、料理雑誌である「ELLE a table」(エル・ア・テーブル、甲第18号証)も発行され、いずれにおいても引用商標が用いられている。
イ 我が国では、昭和57年4月に、日本版「ELLE」である「ELLE JAPON」(エル・ジャポン)が創刊され、月2回刊行の時期を経て、現在は月1回刊行されており、その発行部数は、毎号22万部に達している(甲第12号証及び甲第13号証)。
ウ 請求人は、昭和39年以来、帝人に対して引用商標の独占使用権を許諾するとともに、「エル・ファッション」に関する商品の販売・普及活動を推進した。
帝人は、自ら「エル・ファッション」に係る洋服を製造販売する一方、その独占使用権(再使用許諾権)に基づき、関係各社に対して再使用権を許諾し、これらのサブライセンシーと共同して「エル・ファッション」の宣伝・販売・普及に努め、その製造販売に係る商品に引用商標を使用した。
その後、昭和59年7月に至り、請求人は、帝人との独占的使用許諾関係を解消し、自ら「東洋ファッション株式会社」(現在の商号は「株式会社エルパリス」)を設立し、帝人のサブライセンシーに引き続き引用商標を使用させてその普及に努めた。また、その間に、新たなサブライセンシーも加わり、その結果、我が国におけるサブライセンシーの数は、平成12年4月現在で37社に上り、その業種も、被服のほか、バッグ、履き物、装身具、化粧雑貨、眼鏡、寝具、食器等に及んでいる(甲第19号証の4)。
エ 雑誌「ELLE」のほか、上記サブライセンシーにより製造販売される各商品、またこれらの商品に関する販売カタログには、ほぼ統一的に引用商標が付されている。
なお、「ELLE」ブランドの派生ブランドとして、「ELLE PARIS」(「エル・パリ」)、「ELLE HOMME」(「エル・オム」)、「ELLE PETITE」(「エル・プチ」)、「ELLE SPORTS」(「エル・スポーツ」)等があるが、その殆どにおいては、引用商標を大きく書した上で、これに近接した位置又はその直下に派生ブランドに関する表示を付加するという体裁をとっており、派生ブランド部分は著しく小さな文字であるか、引用商標部分とはフォント・色・大きさ等を変えて、引用商標の部分が目立つように、デザイン上の工夫がなされている(甲第4号証、甲第22号証、甲第25号証ないし甲第58号証)。
オ 音楽CDの分野でも、引用商標を付した商品が販売されている(甲第74号証)。
(3)以上の事実によれば、引用商標は、我が国においても雑誌「ELLE」の刊行や多くのライセンスを通じてそのブランドが広く浸透しているということができ、遅くとも本件コンパクトディスクの販売が開始された平成14年4月3日当時(被請求人代表者作成の平成15年2月6日付け報告書(甲第76号証)によれば、被請求人は平成14年4月3日発売分として12646枚のコンパクトディスクを出荷していることが認められる)には著名であったということができる。
なお、「ELLE」という語はフランス語としては極めて初歩的な代名詞(「彼女」等の意)であり、請求人が「ELLE」ブランドを形成する過程においては、ライセンスをする各種の商品に引用商標を付し、派生ブランドの商標についても引用商標と結合した商標を使用するなどして統一的なブランドイメージを浸透させてきたものであり、「ELLE」ブランドの著名性は引用商標と密接不可分なものとして展開してきたものと認めることができる。

4 本件使用標章と引用商標の類否について
本件使用標章は、前記2のとおり,白抜き線で描かれた四隅を丸めた横長長方形内に「ELLE」と「GARDEN」の文字を2段に配して成るものであるところ、「GARDEN」の文字部分は「ELLE」の文字部分に囲まれるようにして小さく表記されているものであるから、本件使用標章全体に接したときには「ELLE」の部分が強く印象付けられるものである。
そして,本件使用標章中の「ELLE」の部分は、引用商標のような上下に細長い書体により表記されているものではないが、全体としてみれば引用商標と似通った印象を与えるものであり、本件使用標章と引用商標とを離れて個別に観察するならば、本件使用標章をその指定商品又は指定役務に使用した場合には「ELLE」の派生ブランドないし「ELLE」ブランドと何らかの関係を有するものと誤認混同させるおそれがあるから、本件使用標章は引用商標と類似するものというべきである。
そこで、さらに本件使用標章の具体的表示態様について検討する。

5 本件使用標章の具体的表示態様について
(1)本件使用標章は、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)という名称の本件ロックバンドの演奏を収録した「DON’T TRUST ANYONE BUT US」という本件コンパクトディスク(甲第2号証)等において表示されたものである。
(2)本件ロックバンドは、平成10年12月に結成された4人組バンドで、活動当初から「ELLEGARDEN」(カタカナ表記で「エルレガーデン」)の名称で音楽活動を行っていた。
本件ロックバンドのアルバムは、音楽業界誌「オリジナル・コンフィデンス」におけるCD、DVD等の推定週間売上数によるランキング(オリコン・チャート)において、2枚目のアルバムが平成15年7月14日に75位と初のTOP100入りを果たした以降、3枚目のアルバム(平成16年5月発売)が最高位17位、同年11月発売のシングルが最高位16位と、着実に順位を伸ばし続け、4枚目のアルバム(平成17年4月20日発売)が初動売上5.7万枚を記録して初登場3位となり、平成18年8月9日発売のDVDが1位となった。さらに、5枚目のアルバム(平成18年11月8日発売)が初登場で首位を獲得し、インディーズ・アーティストによる史上4組目の初登場首位となった(乙第1号証ないし乙第3号証及び乙第56号証)。
本件コンパクトディスクは、本件ロックバンドが発表した初めてのアルバムで、平成14年4月3日に販売が開始されたものである(甲第2号証)。
(3)本件コンパクトディスクにおける本件使用標章の具体的表示態様は、以下のようなものである(甲第2号証)。
ア 本件コンパクトディスクの表紙の表側(甲第2号証の1枚目)には、砂丘が広がる向こうに遊園地らしきものを望む風景が描かれ、その左上部分に「DON’T TRUST ANYONE BUT US」という本件コンパクトディスクの表題が記載され、本件使用標章は、上記風景画の一部として、砂丘の手前側に置かれた案内板のようなものに、遊園地の方向を示す矢印と共に描かれている。
イ そして本件コンパクトディスクの表紙の裏側(甲第2号証の8枚目)には、メリーゴーラウンドの写真を背景に、白抜きの文字で、本件コンパクトディスクの表題や、本件ロックバンドのメンバーの氏名(アルファベット表記)、収録作品の題名などが記載されており、その1番上に本件使用標章が表示されている。
ウ 本件コンパクトディスクに付される帯(甲第2号証の6枚目)には、表紙の表側に当たる部分に、本件使用標章と「エルレガーデン」というカタカナ文字が順に並んで横書きされており、「エルレガーデン」の文字は、本件使用標章と同程度の大きさにより、黒く縁取った白抜きの文字で目立つように記載されている。
エ また、上記帯のうち本件コンパクトディスクの背側に当たる部分には、「DON’T TRUST ANYONE BUT US」という本件コンパクトディスクの表題と、それよりもやや大きい「ELLEGARDEN」というアルファベット文字が、異なる書体により1行に並んで横書きされている(なお、帯をはずした場合でも、本件コンパクトディスクの背側には「DON’T TRUST ANYONE BUT US」と「ELLEGARDEN」が上記と同様に並んで表記されている(甲第2号証の6枚目及び8枚目)。)。
オ なお、上記帯の裏表紙側に当たる部分には、有限会社グローイングアップが商標権者となっている登録商標(乙第5号証)と同様の「Dynamord」の文字が、赤い眼のような形をした図形と共に表示され、同じ図形が表紙の裏側、背側等にも表示されている。また、裏表紙の1番下の部分には「Manufactured by Dynamord Label」との記載がある。
カ 以上によれば、本件コンパクトディスクを購入しようとする需要者は、本件コンパクトディスクに帯が付されて透明ビニールで包装された状態では、帯の背側に表記された「ELLEGARDEN」の文字、帯の表側に表記された「エルレガーデン」の文字を目にすることとなり、帯がはずされた中古品の場合でも、本件コンパクトディスクの背側に表記された「ELLEGARDEN」の文字を目にすることとなる。
(4)以上を前提として、本件使用標章の具体的表示態様が請求人の業務に係る商品等と混同を生じさせるおそれを有するか否かについて検討する。
需要者が本件コンパクトディスクを購入しようとするときには、本件使用標章と共に「ELLEGARDEN」や「エルレガーデン」の文字を見ることとなり、そして一般に音楽作品、特にロックバンドの演奏を収録したコンパクトディスクには、当該アーティスト名(ロックバンド名)と当該コンパクトディスクの表題が併記されるのが通常であることから、本件コンパクトディスクに表記された「ELLEGARDEN」「DON’T TRUST ANYONE BUT US」の一方がアーティスト名を示し、他方が表題を示すものであることを容易に推測できるものであり、「ELLE」と「GARDEN」を組み合わせて成る本件使用標章がアーティスト名ないしは表題である「ELLEGARDEN」を表すものであることと容易に理解される。
したがって、「ELLEGARDEN」が本件ロックバンドの名称であることを知っている需要者であればもちろんのこと、これを知らない需要者であっても、本件コンパクトディスクに接した場合に本件使用標章が「ELLE」ブランドと何らかの関係を有するものと誤認混同するおそれはないというべきである。
(5)なお、被請求人が運営するホームページ上でも本件使用標章が使用された(甲第3号証の2)が、上記ホームページには「ELLEGARDENのホームページへようこそ。このページはバンドの最新情報やスケジュールを公開するとともに、応援してくれるみんなが交流できる場を設けることを目的として運営されています。」と記載され、本件ロックバンドが平成10年(1998年)12月31日に結成されてからの活動の歩みについての説明文が掲載されている(甲第3号証)ことからすれば、本件ロックバンド及びその活動を紹介するためのものであることが明らかであり、上記ホームページ上における本件使用標章の使用も請求人の業務等に係る商品等と混同を生じさせるおそれを有するものではない。

6 以上によれば、本件使用標章は引用商標に類似するものの、本件コンパクトディスク等における具体的表示態様からは請求人の業務に係る商品等と混同を生じさせるおそれを有するものとはいえないから、商標法51条1項にいう「他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」ということはできない。

7 故意について
被請求人提出の証拠(乙第1号証ないし乙第3号証)によれば、ELLEGARDEN(エルレガーデン)」の名称を有する4名の男性で構成される被請求人に所属のロックバンドがあること、及び同バンドは、インディーズ・アーティストによる史上4組目のアルバム初登場首位を獲得するほどの人気を博していたことが認められる。
本件において、被請求人は、前記5のとおり、本件使用標章を使用していたことが認められるところ、被請求人は、本件使用標章の使用について、一貫して、本件ロックバンドの名称を表示するものであると主張し、本件コンパクトディスクに本件使用標章を使用する際には、出所表示機能を有するレーベル名である「Manufactured by Dynamord Label」又は「Dynamord」の文字、及び本件ロックバンドの名称である「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)の文字を合わせて表示していることが認められることからすれば、被請求人が出所の混同を生ずるおそれがあることを認識しつつ、故意に本件使用標章を商品「コンパクトディスク」に使用したものと認めることはできない。
したがって、被請求人による前記使用について、商標法第51条第1項にいう故意を認めることはできないというべきである。

8 結論
以上のとおり、本件使用標章の使用は、故意に他人の業務に係る商品等と混同を生ずるものをしたということはできないから、商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標




別掲(2)本件使用標章




別掲(3)引用商標



審理終結日 2010-03-17 
結審通知日 2007-04-17 
審決日 2008-08-18 
出願番号 商願2001-30790(T2001-30790) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (Z0941)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深沢 美沙子 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
久我 敬史
登録日 2002-07-05 
登録番号 商標登録第4582074号(T4582074) 
商標の称呼 エルレガーデン、エッレガーデン、エルガーデン 
代理人 関根 秀太 
代理人 高橋 史記 
代理人 関根 修一 
代理人 山田 徹 
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