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審決分類 |
審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) Y30 |
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管理番号 | 1216506 |
判定請求番号 | 判定2009-600042 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標判定公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 判定 |
2009-11-18 | |
確定日 | 2010-05-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5076547号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用するイ号標章は、登録第5076547号商標の商標権の効力の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5076547号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成17年1月6日に登録出願、第30類「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」を指定商品として、同19年9月14日に設定登録されたものである。 第2 イ号標章 被請求人が、商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用するイ号標章は、別掲2の構成よりなるものである。 第3 請求人の主張 請求人は、「商品『棒でドーナツ黒糖』に使用するイ号標章は、登録第5076547号の商標権の効力の範囲に属する」との判定を求める旨申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証(枝番を含む。)を提出した。 1 判定請求の必要性 請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人が商品「棒でドーナツ黒糖」に標章「棒でドーナツ」の使用をしていること(甲第1号証の1ないし3)について、平成21年11月4日に被請求人に対して、商標登録の商標権を侵害するものである等の理由から、福岡地方裁判所小倉支部に仮処分命令の申立てを行った(甲第2号証)。これに対して、被請求人は、上記の「棒でドーナツ」と本件商標とは類似するものではないとの反論をしている。仮に、このような状況が継続すれば、需要者である一般消費者が請求人の商品を被請求人の商品であると混同することにより、請求人の商品ブランドに対する信用を損なわれてしまい、その結果、請求人は大きな経済的損害を被ることになる。 そこで、請求人は、本件商標の商標権の効力の範囲について専門的知識をもって中立的立場から判断される判定を特許庁に求める必要が生じたものである。 2 イ号標章及び本件商標の説明 被請求人は、平成21年10月頃より、「棒でドーナツ」の文字からなるイ号標章を付した商品「棒でドーナツ黒糖」を製造し、その販売範囲も九州地方にとどまらず、全国に販売している(甲第3号証及び甲第4号証)。 他方で、請求人は、昭和60年頃から、商品「黒糖ドーナツ棒」について本件商標の使用を開始し、その後も使用を継続し、現在に至っている(甲第5号証)。販売範囲も本店所在地である熊本県を含む九州地方のみならず、通信販売等を通じて全国販売を展開している。同商品は、平成14年11月に第24回全国菓子大博覧会において「リッチモントクラブ賞」、同15年10月に、QVCテレビショッピングにおいて「2003年(平成15年)上半期ベストセラー賞」、同20年5月に第25回全国菓子大博覧会では最高賞である「名誉総裁賞(技術部門)」、同11月には「下半期ベストセラー賞」をそれぞれ受賞している(甲第6号証及び甲第7号証)。 本件商標は、請求人が長年使用し、かつ数多くの賞を受賞した結果、遅くとも被請求人が「棒でドーナツ黒糖」を販売し始めた同21年10月頃には、全国において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものである。その証左として、特許庁は、同19年7月11日に、拒絶査定を取り消し、商標登録の審決を下し、登録を認めている(甲第8号証ないし甲第10号証)。 3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明 本件商標は、「黒糖ドーナツ棒」の文字を書してなるから、これより「コクトードーナツボー」又は「ドーナツボー」の称呼及び「黒糖を使った棒状形のドーナツ菓子」の観念を生ずるものである。 他方、イ号標章は、「棒でドーナツ」の文字を書してなるから、これより「ボーデドーナツ」の称呼及び「棒状形のドーナツ菓子」の観念を生ずるものである。 したがって、本件商標とイ号標章とは、字体の外観が相違するとしても、称呼に関して「デ」という言葉を挟んで前後反転させただけであり、要部については全く同一のものであり、商標・標章の要部における「ドーナツボー」という称呼、「棒状形のドーナツ菓子」の観念を共通にし、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることから、極めて類似した標章というべきである。特に、本件商標は、イ号標章を付した商品が販売された時点で、既に全国的に需要者の間で請求人の商品であると認識することができるまでに至っていることから、同じ九州地方で販売された場合、その混同のおそれは著しいものとなる。 そして、本件商標に係る指定商品とイ号標章の使用商品は、同一の商品である。 以上のとおり、イ号標章は、本件商標と極めて類似する標章であり、その使用商品も本件商標の指定商品と同一の商品であるから、被請求人が商品「棒でドーナツ黒糖」に使用するイ号標章は、登録第5076547号商標の効力の範囲に属するものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、「イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属さない」旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 1 本件商標について (1)商標登録出願の経緯(概要) 商標登録出願 平成17年1月16日 拒絶理由通知 同年6月22日(起案日) 意見書 同年8月18日 手続補正書 同年8月18日 拒絶査定 同年11月21日(起案日) 査定不服審判請求書 同18年1月6日 手続補正書(実体) 同月17日 手続補正書(理由補充) 同月17日 手続補正書(証拠目録) 同年7月3日 手続補足書(証拠提出) 同年7月5日 審決 同19年7月11日(起案日) 設定登録 同年9月14日 (2)本件商標の指定商品 出願当初は、願書に記載のとおり、第30類「菓子」と記載された。そして、平成17年8月18日付け手続補正書により、第30類「黒糖入りドーナツ菓子」と補正され、さらに、同18年1月17日付け手続補正書により、最終的に、第30類「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」として、商標登録された。 (3)外観 本件商標の外観は、次の構成要素アないしオを具備する外観を呈する。 構成要素ア:「黒糖」の文字と「ドーナツ棒」の文字を二行に書してなる。 構成要素イ:「黒糖」の文字と「ドーナツ棒」の各文字は、それぞれ縦書きされている。 構成要素ウ:「黒糖」の文字は、「ドーナツ棒」の文字よりもかなり小さくかつ細身の文字で書され、「ドーナツ棒」の文字が中心に配置されると共に、「黒糖」の文字は、「ドーナツ」の文字からやや隙間をあけて右上に配置され、「黒」の文字が「ド」の文字の上から「ド」の文字の上半分までに位置し、「糖」の文字が「ド」の文字の下半分から「ー」の文字の上半分までに位置する。 構成要素エ:「黒糖」の文字及び「ドーナツ棒」の文字もいずれも通常使用されない手書きされたクセの強い字体からなり、字体の輪郭が外側にぶつぶつと点状に張り出している点が認められる。「ド」の文字の2画目(右下斜線)の起点は、1画目(真下直線)の反対側へ飛び出し、「ナ」の文字は1画目及び2画目が右下へ傾いている。さらに、「ツ」の文字は個性が特に強く、1画目、2画目が3画目に比べ異常に長く、3画目も通常よりも傾斜が少ない。そのため、「ツ」の文字は、漢字の「川」と読むこともできる。 構成要素オ:本件商標は、白黒二値表示されており、色彩は特定されていない。 そして、本件商標は、その指定商品からすれば、本件商標に係る審決の判断の前段では、「本願商標は、(中略)その構成文字より、『黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子』を認識するもの」であり、指定商品を単に文字表記したにすぎず、一般的な自他商品識別力がなく、商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第26条第1項第2号により、本件商標権の効力の範囲は制限されるものである。 (4)称呼 本件商標は、その構成態様より「コクトードーナツボー」ないし「ドーナツボー」の称呼が生ずると解するのが自然である。しかしながら、これらの称呼は、いずれも自他商品識別力を欠く文字から生ずる称呼であって、その称呼を使用しても、自他商品識別力は発揮されず商標的使用には該当しないものであるから、通常の商標権に関する称呼類似の考え方を適用できないものである。 (5)観念 称呼と同様であって、本件商標による観念は、いずれも自他商品識別力を欠く文字から生ずる観念であって、その観念を生じても、自他商品識別力は発揮されず商標的使用には該当しないものであるから、通常の商標権に関する観念類似の考え方を適用できないものである。 2 本件商標が登録されるまでになされた請求人主張に基づく禁反言 請求人は、平成17年8月18日付け意見書の2頁12行目において、「『棒状のドーナツ』をあえて『ドーナツ棒』として反転表示したところに識別力を具備する根拠がある。一般には、これを『ドーナツ棒』と敢えて表示する習慣はなく、言葉の語呂からしても『ドーナツ棒』の『棒』により完結した文字の意味合いが聴者に強く印象付けられるから、単なる菓子ではないところのドーナツで作った棍棒、すなわちドーナツ棍棒の意味を直感するのが自然である。『ドーナツ棒』は、単に商品の品質、原材料、形状を表示する商標ではなく、ドーナツ棍棒として十分に自他の商品識別機能を備えた商標である。」旨主張している。 この主張は、「(1)『棒状のドーナツ』なる文字自体は、商品の品質、原材料、形状を表示するにすぎない。(2)『棒』の文字が先で『ドーナツ』の文字が後の語順からなる表示は、商品の品質、原材料、形状を表示するにすぎないから、自他商品識別力がない。したがって、過誤登録があったとしても、商標法第26条第1項第2号により、商標権の効力は制限される。(3)本件商標は、『棒状のドーナツ』の『棒』と『ドーナツ』の語順を通常のものとは反転し、逆にしたところが識別力を具備する根拠たり得る顕著な点である。(4)本件商標は、『棒』が先で『ドーナツ』が後の語順からなる他の商標には、本件商標による商標権の効力は及ばない。」との趣旨を備えるが、上記の少なくとも1つに反する主張は、禁反言の原則に反し、到底ゆるされない。 さらに、請求人は、平成18年1月17日付け請求の理由を補充する手続補正書において、「本願商標は、国内において広く使用された結果、需要者が何人かの業務にかかる商品であることを認識することができるものとなっており、いわゆる、使用による特別顕著性を有するに至っていることから、商標法第3条第2項の規定に該当し、同法第15条の規定により拒絶されるべきものではないと思料する。」と主張している。これらのことから、請求人は、本件商標の一般的な識別力が弱い点を認めている。加えて、本件商標について商標法第3条第2項に規定される永年使用の事実があり、その結果、一般的な識別力が弱いながらも、本件商標は、全体としては識別力を具備するに至った事情がある、として、少なくともこの1つに反する主張は、禁反言の原則に反し、到底ゆるされない。 3 審決の認定 被請求人は、審決の誤りを発見しているところであるが、その指摘は追って行う本件商標の登録無効審判請求書等で明らかにしていく予定である。ここでは、審決の認定は、受賞の要件が不明確であって、一過性で信頼性が乏しいリッチモンドクラブ賞を過大評価したものである点のみを指摘しておく。 4 本件商標のまとめ 本件商標の称呼及び観念は、前記1(4)及び(5)のとおり、自他商品識別力を持たない文字部分によるものであるから、称呼類似ないし観念類似の一般的考え方は適用できない。 さらに、ある商標が使用により識別力が認められたとしても、商標法第3条第2項に該当するその商標からわずかな相違があるだけで、直ちに自他商品識別力が喪失され商標法第3条第1項第3号等あるいは同法第26条第1項第2号等に該当する商標になるものである。 以上の点と、前記1(3)で述べた外観を構成する各構成要素を照らし合わせると、本件商標の商標権の効力の範囲に属するのは、構成要素ウ及びエにより審決が述べる使用による識別力を認め得ると解するほかはないのであって、請求人が提出する各証拠に記載された本件商標もまさにこのとおりの態様であることにも妥当するところである。 まとめると、本件商標の登録無効理由が存しないと仮定する限り、本件商標の商標権の効力が及ぶ範囲は、構成要素ウ及びエの両者を満たす表示態様に限られるのであって、極めて狭い範囲である。 また、請求人は、判定請求書において、「平成20年5月に第25回全国菓子大博覧会の最高賞である『名誉総裁賞(技術部門)』、同年11月には『下半期ベストセラー賞』をそれぞれ受賞している」旨述べているが、使用による識別力の有無を審理判断する基準時は、遅くとも本件商標の審決時点(同19年7月11日)であるから、同20年以降における上記2つの受賞は、審決の判断には影響を及ぼさない。 5 イ号標章について イ号標章及びイ号標章の使用商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」は、判定請求書の2頁のとおりであることを認める。 (1)外観 別掲2のとおり、上部中央にマークを有し、その下に「棒でドーナツ」の文字を書してなり、「棒」の文字と「ドーナツ」の文字の語順は、識別力がなく請求人が商標権の効力が及ばないと意識的に効力の範囲から除外した語順である。 そして、マークは、周囲に横長の楕円を細い線で表し、その中心に「N」の文字を3本の斜線で図案化した記号が配置されている。また、「棒でドーナツ」の文字は、ゴシック体と見える通常使用される活字からなり、ほぼ一連で同じ文字の大きさ、太さで表示しており、また、イ号標章は、白黒二値表示されており、色彩は特定されていない。イ号標章の「棒でドーナツ」の文字部分は、使用商品が「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」であるから、強い自他商品識別力を有するとはいい難い。しかしながら、上部中央に付されたマークは、独特のハウスマークと考えられるものであって、一定の出所を表示できるものであると解するのが相当である。よって、イ号標章は、全体として、「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用しても、自他商品識別力を有するものと解される。 (2)称呼 イ号標章からは、「ボーデドーナツ」の称呼が生ずると解するのが自然である。しかしながら、自他商品識別力が強いとはいい難い文字から生ずる称呼である。 (3)観念 観念についても、自他商品識別力が強いとはいい難い文字から生ずる観念である。しかしながら、請求人が主張する「ドーナツ棍棒」の意味観念は生じず、観念の近似性から出所混同を生ずるおそれはない。 6 本件商標とイ号標章との対比 本件商標は、その特異な事情の下に登録されているものであるから、一般的な商標の類否の考え方をそのまま適用できない。しかしながら、以下では、予備的に適用できるものと仮定した上で検討する。 (1)外観 イ号標章の文字部分である「棒でドーナツ」は、前記5(1)のとおり、識別力がなく請求人が商標権の効力が及ばないと意識的に効力の範囲から除外された語順によるものである。また、イ号標章は、本件商標が使用による識別力を獲得したと請求人が主張される根拠となる外観を具備しない。さらに、イ号標章は、自他商品識別力を有するマークを含み、「黒糖」の文字は含まれていない。 (2)称呼 本件商標の称呼「コクトードーナツボー」又は「ドーナツボー」とイ号標章の称呼「ボーデドーナツ」とを対比するに、本件商標は7音又は4音、イ号標章は5音からなり、2音又は1音の長短の差異がある。そして、共通する音部分は、「ドーナツ」のみであり、これは指定商品の普通名称の称呼にほかならないから、需要者は、両者を十分聴別できる。 また、本件商標の指定商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」からして、「黒糖」、「ドーナツ」及び「棒」の文字は商標の要部とはなり得ない。 したがって、称呼の側面からも両者は類似しない。 (3)観念 称呼と同様であって、両者は類似しない。さらに、イ号標章からは、請求人が主張する「ドーナツ棍棒」の意味観念は生じず、観念の近似性から出所混同を生ずるおそれはない。 (4)まとめ 以上のことから、イ号標章は、本件商標に非類似の標章であって、誤認混同のおそれがないとともに、請求人の主張により効力の範囲外として除外された標章であるから、イ号標章は本件商標の商標権の効力に属さない。 第5 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、手書き風の「黒糖」の文字とその左側に「黒」の文字の半分の高さからやや大きく太い線で手書き風の「ドーナツ棒」の文字を二行に縦書きしてなり、第30類「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」を指定商品とするものである。 そして、本件商標は、以下の(1)のように商標法第3条第2項の規定に基づき登録されたものである。 (1)審決(要旨) 本願商標は、別掲1のとおり「ドーナツ棒」の文字を縦書きしてなり、その右側上部に「黒糖」の文字を細く縦書きしてなるところ、その構成文字より、「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」を認識するものであるから、原査定の判断は、妥当なものというべきである。 しかしながら、請求人が、本願商標は商標法第3条第2項の規定に該当する旨主張し、当審において提出した甲第1号証ないし甲第66号証を総合勘案すれば、本願商標を付した商品は、1994年頃から販売され、その後、第24回全国菓子博覧会にてリッチモントクラブ賞を受賞(2002年)し、継続して商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用された結果、現在においては、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認め得るところである。 してみれば、本願商標は、上記商品について、商標法第3条第2項に規定する要件を充たしているものであるから、原査定の理由によって拒絶すべき限りでない。よって、結論のとおり審決する。 (2)以上のとおり、本件商標は、「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」を認識するものであるから、商品の原材料、形状、品質を表示するにすぎず商標法第3条第1項第3号に該当すると判断されたものであるが、1994年頃から商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであるから、同法第3条第2項の規定により登録されたものである。そして、請求人は本件商標に係る審判段階において、同法第3条第1項第3号に該当することについて争うところがなく、同3条第2項を主張したものである。 そうすると、本件商標は、その構成中の「ドーナツ棒」の文字部分について自他商品の識別力を有するものではなく、このことについては、上記認定のとおり、本件請求人も争いがないものであったから、「黒糖」の文字部分を含めた構成全体をもって自他商品の識別標識としての機能を果たすというべきである。 2 イ号標章について イ号標章は、別掲2のとおり、上部中央に3本の斜線を細い線でつないだ「N」と思しき文字の周囲を細い線の横長楕円で囲った図形(以下、「図形」という。)の下に「棒でドーナツ」の文字を横書きした構成からなるものである。 そして、イ号標章は、図形と「棒でドーナツ」の文字とが常に一体不可分のものとしてみなければならないとする特段の事情を見いだせないものである。 3 本件商標とイ号標章との類否について 本件商標は、上記1のとおり、商標法第3条第2項に規定する要件を充たすとして登録されたものであるから、その構成全体をもって、自他商品識別力を発揮するものである。 したがって、本件商標は、「ドーナツ棒」の文字部分のみでは、自他商品識別力を発揮しないものであり、ほかに該「ドーナツ棒」の文字部分のみが自他商品の識別標識としての機能を果たすとみるべき格別の事情は見いだせない。 そうとすると、イ号標章は、その構成中の「棒でドーナツ」の文字部分が自他商品の識別標識として機能するか否かはさておき、「黒糖」の文字を含まないこと明らかであるから、本件商標とイ号標章は、その余の文字部分の異同について論及するまでもなく、該「黒糖」の文字の有無により、両者の外観、称呼及び観念のいずれも紛れるおそれのない非類似の商標である。 4 請求人の主張について 請求人は、本件商標は、「黒糖ドーナツ棒」の文字を書してなり、これより「コクトードーナツボー」又は「ドーナツボー」の称呼及び「黒糖を使った棒状形のドーナツ菓子」の観念を生ずるものであり、イ号標章は、「棒でドーナツ」の文字を書してなり、これより「ボーデドーナツ」の称呼及び「棒状形のドーナツ菓子」の観念を生ずるものであるから、本件商標とイ号標章とは、字体の外観が相違するとしても、商標・標章の要部における「ドーナツボー」という称呼、「棒状形のドーナツ菓子」の観念を共通にし、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることらから、極めて類似した標章というべきである旨主張する。 しかしながら、本件商標は、上記1のとおり、商標法第3条第2項の規定により登録されたものであるから、その構成全体をもって、自他商品識別力を発揮するものである。 そして、商標権の設定登録後の平成20年5月に第25回全国菓子大博覧会では最高賞である「名誉総裁賞(技術部門)」(甲第7号証)を受賞しているが、その賞においても「黒糖ドーナツ棒」の文字で受賞していることから、本件商標が「ドーナツ棒」の文字のみで、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものに至ったという証拠はない。 そうとすれば、本件商標から「黒糖」の文字と「ドーナツ棒」の文字を分断したうえで、「ドーナツ棒」の文字部分とイ号標章の「棒でドーナツ」の文字部分とを比較することは失当であるといわざるを得ない。 したがって、上記請求人の主張は、採用できない。 5 むすび 以上のとおりであるから、被請求人が商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用しているイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものといわざるを得ない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標 別掲2 イ号標章 |
判定日 | 2010-05-11 |
出願番号 | 商願2005-368(T2005-368) |
審決分類 |
T
1
2・
9-
ZB
(Y30)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清棲 保美 |
特許庁審判長 |
石田 清 |
特許庁審判官 |
末武 久佳 榎本 政実 |
登録日 | 2007-09-14 |
登録番号 | 商標登録第5076547号(T5076547) |
商標の称呼 | コクトードーナツボー、ドーナツボー |
代理人 | 田中 裕司 |
代理人 | 平野 一幸 |
代理人 | 武末 昌秀 |
代理人 | 松岡 智之 |