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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20099215 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない Y29 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Y29 |
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管理番号 | 1216327 |
審判番号 | 不服2009-7862 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-10 |
確定日 | 2010-04-22 |
事件の表示 | 商願2006- 19591拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、別掲(1)のとおり、「村沢牛」の文字を毛筆体風に縦書きで表してなり、第29類「牛肉」を指定商品として、平成18年3月6日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶の理由における要点 原査定は、「本願商標は、『村沢牛』の文字を毛筆体風に縦書きで表してなるところ、構成中の『村沢』の文字は、ありふれた氏と認められ、また、『牛』の文字は、『ウシ科の哺乳類』を意味するものであるため、全体として『村沢氏によって飼育、管理された牛(牛肉)』等を認識させるにすぎず、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。なお、出願人は、意見書において商標法第3条第2項(使用による識別性)を主張し、証拠資料として甲第1号証ないし甲第10号証を提出しているが、その証拠資料をもってしても、日本国内において、取引者・需要者間で広く認識されるに至ったものとは言い難く、商標法第3条第2項の要件を満たすものとは認めることができない。したがって、さきの認定を覆すことはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1)商標法第3条第1項第6号について 本願商標は、別掲(1)のとおり、「村沢牛」の文字を毛筆体風に縦書きで表してなるところ、構成中の「村沢」の文字は、「日本人の姓」(佐久間英著、1972年3月8日再版、六藝書房発行)によれば、東日本において約6千人いることが記載されており、さらに、「村沢」の姓を有する者は、「ハローページ東京都23区個人名全区版・下巻」(平成13年3月、東日本電信電話株式会社発行)によれば、54名掲載されているものである。 そうすると、「村沢」の姓は、我が国においてありふれた氏の一つであると認められ、また、構成中の「牛」の文字は、本願指定商品「牛肉」との関係においては、商品の品質、原材料であり、一般的に普通に使用されているものである。 そうすると、「村沢」の文字と「牛」の文字を一連に表してなる本願商標は、全体として「村沢氏の取り扱いに係る牛(牛肉)」ほどの意味合いを認識させるのみであり、結局、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であると認められるものである。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。 なお、請求人は、同号の適用について、原審及び当審においても、何ら具体的な反論をしていないものである。 (2)商標法第3条第2項について 本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するとして判断されたものであるから、商標法第3条第2項の適用は認められないものであるが、請求人は、商標法第3条第1項第6号について反論せず、商標法第3条第2項を主張しているので、以下に検討する。 ア 商標法第3条は、同条第1項第1号ないし第6号に該当する商標については、商標登録できない旨の規定であるが、同条第2項において、「商標法第3条第1項第3号から第五号までに該当する商標であっても、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」とされている。 そして、工業所有権法逐条解説[第17版](特許庁編集 社団法人発明協会発行 1173頁)によれば、「本条(商標法第3条)二項は、いわゆる使用による特別顕著性の発生の規定である。前述のように一項各号に掲げる商標は自他商品又は自他役務の識別力がないものとされて商標登録を受けられないのであるが、三号から五号までのものは特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標が、その商品又は役務と密接に結びついて出所表示機能をもつに至ることが経験的に認められるので、このような場合には特別顕著性が発生したと考えて商標登録をしうることにしたのである。」と説明されている。 また、商標法第3条第2項の判断に際しては、「同条項によって商標登録が認められるためには,以下のような要件を具備することが必要であると解される(知財高裁平成18年(行ケ)第10054号 平成18年6月12日判決言渡)。 (ア)使用により自他商品識別力を有すること 商標登録出願された商標(以下「出願商標」という。)が,商標法3条2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,実際に使用している商標(以下「使用商標」という。)及び商品,使用開始時期,使用期間,使用地域,当該商品の生産又は販売の数量,並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願商標が使用された結果,判断時である審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる「自他商品識別力(特別顕著性)」の獲得の有無)によって決すべきものである。 (イ)出願商標と使用商標の同一性が認められること 商標法3条2項の要件を具備するためには,使用商標は,出願商標と同一であることを要し,出願商標と類似のもの(例えば,文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。 なぜなら,同条項は,本来的には自他商品識別力がなく,特定人の独占にもなじまない商標について,特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり,実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして,登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると,同条項は,厳格に解釈し適用されるべきものである。と判示されているところである。 なお、請求人は、原審において、物件提出書により、証拠方法として甲第1号証ないし第10号証を提出している。 イ 以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて検討する。 (ア)甲各号証について (a)甲第1号証は、請求人が使用する商標(以下「使用商標1」という。)を、別掲(2)に示すとおりの構成からなる「村沢牛」の漢字で表し、これを付した商品「牛肉」の販売に用いたパンフレットであるところ、「信州・長野から幻の美味を、京都限定発売。」と記載されている。 しかしながら、使用(販売)されている地域が京都府のみであるため、使用商標1を付した商品「牛肉」(以下「使用商品」という。)が、需要者の間で全国的に認識されているとは認めることはできない。 (b)甲第2号証は、「『火曜日SPなにコレ?』関西グルメ記者が教える絶対うまい焼き肉(テレビ大阪 2003年1月28日放映)」の番組の一部を写した写真であるところ、使用商品に、「信州 村沢牛」の文字を確認することができる。 しかしながら、請求人が使用する商標(以下「使用商標2」という。)は、本願商標と、その書体、構成態様を異にするものであるから、本願商標と使用商標2とは、同一とはいえず、商標法第3条第2項の要件である、本願商標と使用商標2の同一性は認められない。 (c)甲第3号証は、「『Matthew’s Golden TV』特番(テレビ朝日 2004年7月14日放映)」の番組の一部を写した写真であるところ、「ついに村沢牛ゲット!!」の文字を確認することができる。 しかしながら、請求人が使用する商標(以下「使用商標3」という。)は、本願商標と、その書体、構成態様を異にするものであるから、本願商標と使用商標3とは、同一とはいえず、商標法第3条第2項の要件である、本願商標と使用商標3の同一性は認められない。 (d)甲第4号証は、「『爆笑おすピー大問題!!』(フジテレビ 2004年12月29日放映)」の番組の一部を写した写真であるところ、使用商品に、「国産特選村沢牛 サーロインステーキ」の文字を確認することができる。 しかしながら、請求人が使用する商標(以下「使用商標4」という。)は、本願商標と、その書体、構成態様を異にするものであるから、本願商標と使用商標4とは、同一とはいえず、商標法第3条第2項の要件である、本願商標と使用商標4の同一性は認められない。 (e)甲第5号証は、請求人が長野県から肉用牛のうち、特に「信州長野特産村沢牛」の振興に寄与したとして感謝状をもらった写しであるところ、請求人が、本願商標と同一の文字態様により使用商品を販売したか客観的に証明する証拠がないことから、これをもって使用により識別力を有した証明の証拠と判断することができない。 (f)甲第6号証は、平成7年頃から日本国内において、本願商標を請求人が製造販売する使用商品に使用し、需要者に広く認識されている周知著名商標であることが記載された証明書の写し(3通)であるところ、あらかじめ請求人が印字した同一の証明書用紙に各証明者が日付を記入し、記名押印するという形式によるものであって、証明者がいかなる根拠に基づき、需要者の間に広く認識されている周知著名商標であるかを認めたのか、その判断の客観的な過程が不明確であるため、使用により識別力を有した証明とは判断することができない。 (g)甲第7号証は、請求人が経営する本店で販売された「村沢牛」の使用商品の2005年1月から12月までの売上高を示した表の写しであるところ、前記(b)ないし(d)の実情から、本願商標と同一の文字態様からなる商標を使用して販売した牛肉の販売金額であることを客観的に証明する証拠がないことから、本願商標を使用した商品の売上高とまで認めることができない。 (h)甲第8号証は、「『とっぴもナイト』(京都テレビ 平成12年4月6日ないし現在まで)」のスポンサーとなり、広告宣伝に「村沢牛」の文字を使用した番組の一部を写した写真の写しであるところ、請求人の使用商標1が見てとれるものの、そこには調理済み料理が写され、使用商品が写されていないこと。また、該番組の放送対象地域は、京都府近隣地域であるため、使用商標1を付した使用商品が、需要者の間で全国的に認識されているとは認めることはできない。 (i)甲第9号証は、請求人が京都テレビで放映されている番組「とっぴもナイト」において、平成12年4月6日から平成19年1月20日まで、本願商標を継続的に使用していることが記載された証明書の写しであるところ、請求人欄の日付が空欄であり、証明書としては不備であること。また、該番組の放送対象地域は、京都府近隣地域であることから、該地域における証明書と判断されるものであり、本願商標を付した使用商品が、需要者の間で全国的に認識されているとは認めることはできない。 (j)甲第10号証は、請求人が経営する本店で販売された「村沢牛」の使用商品の2006年1月から12月までの売上高を示した表の写しであるところ、前記(b)ないし(d)の実情から、本願商標と同一の文字態様からなる商標を使用して販売した牛肉の販売金額であることを客観的に証明する証拠がないことから、本願商標を使用した商品の売上高とまで認めることができない。 (イ)以上のとおり、請求人が提出した甲各号証を総合して判断すると、「村沢牛」の文字を毛筆体風に表した本願商標と、請求人の提出に係る甲第2号証ないし第4号証の各使用商標とは、その書体、構成態様を異にするものであるから、本願商標と各使用商標とは、同一とはいえず、商標法第3条第2項の要件である、本願商標と各使用商標の同一性は認められない。 また、実際に使用している商標並びに商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、証明若しくは当該商品の販売の数量、広告宣伝の方法及び回数等について、請求人の提出に係る甲各号証によれば、平成7年以降、継続的に「村沢牛」の文字を使用している事実は推認することができるものの、本願商標を使用商品に使用して販売している規模(店舗数、営業地域、売上高等)、広告宣伝の方法及び回数等も、商標の周知性を客観的に示す証拠として十分なものと認めるに足りるものでなく、本願商標を、その指定商品について使用された結果、請求人の業務に係る商品であることが、需要者間で全国的に広く認識されるに至ったものであるとは認めることはできない。 してみれば、毛筆体風に表された本願商標が、その指定商品に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至ったものと認めることはできず、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものと認めることはできない。 よって、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得するに至ったとする請求人の主張は採用することはできない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないとした原査定は妥当であって、取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 別掲 (1)本願商標 (2)使用商標1 (色彩については原本参照) |
審理終結日 | 2010-02-10 |
結審通知日 | 2010-02-19 |
審決日 | 2010-03-02 |
出願番号 | 商願2006-19591(T2006-19591) |
審決分類 |
T
1
8・
17-
Z
(Y29)
T 1 8・ 16- Z (Y29) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 保坂 金彦 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
大島 康浩 小畑 恵一 |
商標の称呼 | ムラサワギュー、ムラサワ |
代理人 | 山本 拓也 |