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審決分類 |
審判 一部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効としない X25 審判 一部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない X25 |
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管理番号 | 1214500 |
審判番号 | 無効2009-890072 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-06-12 |
確定日 | 2010-03-12 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5169970号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 登録第5169970号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲第1図ないし第5図のとおりの構成からなる立体商標であり、平成20年3月3日に登録出願、第14類「キーホルダー」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」を指定商品として同年8月26日に登録査定、同年10月3日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中第25類「帽子」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証(枝番を含む。)を提出した。 1 請求の理由 (1)本件商標 本件商標の態様は、フグと思しき魚をデフォルメして立体的形状としたものである。そして、この商標の態様は、「正面図」、「斜視図」2枚、「左側面図」、「平面図」で特定されており、「底面図」は存在しない。すなわち、底面の形状は特定されていない。 意匠ではなく商標であるから、商標として識別機能を果たす部分の形状が特定されていれば商標の特定として足りる、という考えから、底面側の形状を特定することなく登録が認められたものと推測できる。 しかしながら、指定商品「帽子」との関係においては、底面側の形状が重要である。 (2)商標法第3条第1項柱書の該当性について 商標審査基準第3条1項柱書の項において、以下のように規定されている。 「7.立体商標である旨の記載があっても、願書中の商標登録を受けようとする商標を記載する欄(以下「商標記載欄」という。)への記載が立体商標としての商標の構成及び態様を特定し得るものと認められないときは、第3条第1項柱書の規定により商標登録を受けることができる商標に該当しないものとする。」 これを本件商標についてみると、上記のとおり「底面側」の構成及び態様が特定されていない。本件商標の指定商品中、「帽子」以外の商品との関係においては、本件商標の立体的形状は「商品の形状」と理解できるものではなく、本件商標は小型の「ぬいぐるみ」のようなものとして、「タグ」「下げ札」と同じように商品に付されるものと推測することができる。したがって、そのような商品との関係では、底面側の構成、態様が特定されていないことは「商標の特定」において格別問題視する必要はないと思われる。 しかしながら、指定商品「帽子」との関係では、底面側の構成・態様が大きな問題となる。すなわち、底面側か閉鎖されているのか、それとも大きく開口していて「頭に被ること」が可能なのか、という問題である。もし後者であれば、本件商標は指定商品「帽子」の形状を普通に用いられる方法で表したものにすぎず、次項に述べるように商標法第3条第1項第3号に該当するものとして拒絶されなければならないからである。 以上のように、底面側の構成態様は指定商品「帽子」との関係においてはその識別性、登録性を判断するために重要なものであるところ、本件商標においてその重要な底面側の構成態様が特定されていない。 したがって、本件商標は指定商品「帽子」との関係において、商標法第3条第1項柱書の「商標」に該当しないものである。 (3)商標法第3条第1項第3号の該当性について 商標審査基準第3条第1項第3号の項において以下のように規定されている。 「6.指定商品の形状(指定商品の包装の形状を含む。)又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない商標は、本号の規定に該当するものとする。」 上記のとおり、本件商標は底面側の構成態様が特定されていない。もし底面側に大きな開口があり「頭に被ること」が可能な形状であるならば、それは上記審査基準の規定に該当し、第3条第1項第3号に該当するものである。 「頭に被るもの」の形状を、魚や動物をモチーフとして構成することは、ごく普通に行われていることである(甲第1号証、甲第2号証)。 このような実情に基づくと、本件商標は需要者から「変わった形の帽子」と認識されることはあるとしても、「フグの形をした帽子」という認識、すなわち「商品の形状そのもの」と理解されるにとどまるものであって、出所識別標識として機能し得るものではない。 したがって、本件商標は指定商品「帽子」との関係において、商標法第3条第1項第3号の規定に該当するものである。 2 弁駁の理由 (1)商標法第3条第1項柱書の該当性について 被請求人は、本件商標は、願書中の商標記載欄に立体商標としての商標の構成及び態様を特定し得るものと認められる程度に記載されている、と主張する。 請求人が問題としているのは、本件商標で特定されている構成及び態様からでは、審査において本件商標が「帽子」の形状と捉えられた上で識別力の有無が判断されたものであるのか否かが甚だ不明確である点なのであって、この判断の前提を問うているのである。 「頭に被るもの」の形状を魚や動物をモチーフとして構成することはごく普通に行われているところ(甲第1号証、甲第2号証)、本件商標を「帽子」の形状として捉えた場合には、到底これを「特異な形状」と認めることはできないのであって、識別力の有無の判断に大きな影響を及ぼすことは明白である。また、登録商標の範囲は、願書に記載した商標及び指定商品又は指定役務に基づいて定めなければならないところ(商標法第27条)、本件商標が「帽子」の立体的形状であるか否か疑義が生じる状態にあっては、登録商標の範囲を定めることができず極めて不明確なものであって、その内容には瑕疵があるものといわざるを得ない。 しかるに、本件商標は、指定商品「帽子」との関係において、その識別性、登録性を判断するために重要な底面側の構成及び態様が特定されておらず、立体商標としての商標の構成及び態様を特定し得るものと認められないのであって、第3条第1項柱書に違反するものである。 また、被請求人は、指定商品に「帽子」を含み、何れも底面側の構成及び態様が特定されていない立体商標の登録例(乙第3号証の1ないし4)を挙げ、これを参照すれば、本件商標が立体商標としての構成及び態様が特定されていることは明らかであると主張する。 しかしながら、かかる主張も当を得たものではない。これらの登録例は一べつして「ぬいぐるみ」(乙第3号証の1及び2)若しくは「置物」(乙第3号証の3)と理解されるものであって(これら登録例の指定商品にはその商品形状と認識される「ぬいぐるみ」や「置物」は含まれていない。)、「帽子」と理解されるものではない。また、乙第3号証の3及び4に至っては文字商標と結合した立体商標であるから、立体的形状部分の識別力の有無に関わらずこの文字部分において識別力が認められるものである。そうすると、これらの登録例において、底面側の構成及び態様が特定されていなくても、指定商品「帽子」との関係では識別力の有無の判断には影響がないのである。本件商標が、乙第3号証の1及び2の登録例と同様に立体商標としての構成及び態様が特定されていると主張するならば、本件商標は「帽子」の形状ではなく「ぬいぐるみ」の形状として特定されているものと解さざるを得ない。 (2)商標法第3条第1項第3号の該当性について 本件商標の第3条第1項第3号該当性につき、被請求人は、「ギュイリアンチョコレートバー事件」(知財高裁平成20年6月30日判決 平成19年(行ケ)第10293号、乙第1号証)を挙げ、本件商標は「フグというモチーフと帽子の組み合わせにデザインとしての斬新性があり、新規かつ個性的なもの」として識別力を備えたものである旨主張する。 しかしながら、立体商標の識別性に関しては「ミニマグライト事件」(知財高裁平成19年6月27日判決 平成18年(行ケ)第10555号、甲第3号証)、「コカ・コーラボトル事件」(知財高裁平成20年5月29日判決 平成19年(行ケ)第10215号、甲第4号証)などでは、「商品の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されるものであり、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、同号に該当すると解するのが相当である。」と判示されている。 本件商標についてみるに、「頭に被るもの」の商品分野においては、魚や動物をモチーフとしたぬいぐるみ様に商品形状を構成することは普通に行われていることである(甲第1号証及び甲第2号証、甲第5号証の1ないし4)。これらの「頭に被る商品」が「帽子」の商品概念に含まれるものであるとするならば、このように様々な動物などをモチーフとしたぬいぐるみ様の商品形状が採用されている状況下にあっては、本件商標が「帽子」の立体的形状からなるものであった場合には、「機能又は美感を効果的に高めるために採用」された「帽子」の形状であり、商品の形状として「需要者において予測可能な範囲内のもの」というべきであって、商品「帽子」の識別標識として認識、理解されるものではない。 しかるに、本件商標は、指定商品「帽子」の立体的形状として理解、記憶されるにすぎないのであって、第3条第1項第3号に該当するものである。 また、被請求人は「本件商標は、タレントであるさかなクンのトレードマークであり、さかなクンが常に被っている帽子として、全国的に周知ないし著名であり(乙第2号証)、立体商標として自他商品識別力を有する点に疑問を差し挟む余地はない」旨主張する。 しかしながら、さかなクンの着用する帽子を識別標識として考えたとき、それによって識別されるものは「帽子」という商品ではなく、さかなクンによる「文化活動」や「芸能活動」(乙第2号証)であって、これを商標法上の役務に当てはめれば、主として第41類「知識の教授」等に係る役務である。したがって、本件商標に係る立体的形状が、さかなクンが常に被っている帽子として全国的に周知ないし著名であったとしても、それが「帽子」の立体商標として自他商品識別力を有するものであるということはできない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、指定商品「帽子」について、商標法第3条第1項柱書及び同項第3号の規定に該当するものであり、同法第46条第1項第1号によりその登録を無効とすべきものである。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む。)を提出した。 1 商標法第3条第1項柱書の該当性について (1)請求人は、本件商標は、指定商品「帽子」との関係では、底面側が閉鎖されているか、大きく開口していて「頭に被ること」が可能であるかという点において、本件商標の識別性、登録性を判断するために重要なものであるところ、その重要な底面側の構成態様が特定されていないので、指定商品「帽子」との関係において、商標法第3条第1項柱書の「商標」に該当しない、と主張する。 (2)しかしながら、以上の請求人の主張は当を得ないものである。 すなわち、請求人は、仮に、本件商標の底面側が大きく開口していて頭に被ることが可能な構成・態様であった場合には、指定商品「帽子」との関係で、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当するとして登録を拒絶されるべきものであるとの前提に立って、底面側の構成態様は指定商品「帽子」との関係において識別性・登録性を判断するために重要な要素である旨主張しているものであるが、その前提自体がそもそも誤りであることは、乙第1号証の知財高裁の判決に照らして明らかである。 また、商標法3第条第1項第3号の問題を持ち出すまでもなく、本件商標において、立体商標としての構成及び態様が特定されていることは、乙第3号証の1ないし4の登録例を参照すれば明らかである。 2 商標法第3条第1項第3号の該当性について (1)請求人は、本件商標は、「フグの形をした帽子」という認識、すなわち「商品の形状そのもの」と理解されるにとどまるものであって、出所識別標識として機能しないから、本件商品は指定商品「帽子」との関係においては、商標法第3条第1項第3号の規定に該当するとして、同法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきものであると主張する。 (2)しかしながら、以上の請求人の立体商標における出所識別性に対する理解は誤っており、請求人の主張に理由はない。 知財高裁平成20年6月30日判決(平成19年(行ケ)第10293号「ギュイリアンチョコレートバー事件」、乙第1号証)を踏まえて、本件商標について検討すると、本件商標については、フグというモチーフと帽子の組み合わせにデザインとしての斬新性があり、新規かつ個性的なものと認められる。 また、本件商標は、タレントであるさかなクンのトレードマークであり、さかなクンが常に被っている帽子として、全国的に周知ないし著名であり(乙第2号証)、立体商標として自他商品識別力を有する点に疑問を差し挟む余地はない。 請求人の第3条第1項第3号の解釈に関する上記主張は、上記知財高裁判決も述べるように、立体商標制度の存在意義を余りにも矮小化するものであり、到底採り得ない見解である。 (3)以上の次第であり、本件商標が登録された点に商標法第3条第1項第3号違背はない。 3 以上の次第であり、答弁の趣旨のとおりの審決を求めるものである。 第5 当審の判断 1 商標法第3条第1項柱書の該当性について 本件商標は、上述したとおり、別掲第1図ないし第5図のとおりの構成からなる立体商標であるところ、体は丸みを帯び、うろこ(鱗)はなく、ひれ(鰭)と口が小さい魚の形をしており、デザイン化されているが一見して「フグ」を想起させるものであって、布が素材として使用されていると認められるところから、容易に「布製のフグのぬいぐるみ」と認識させるものである。 そして、底面については、商標登録願に底面の図の記載がないので「布製のぬいぐるみ」の通常の形状である平面又はそれに近い形状とみるのが自然である。 請求人は、本件商標は指定商品「帽子」との関係では底面側の構成態様が特定されていないので商標法第3条第1項柱書の「商標」に該当しない、旨主張する。 しかしながら、本件商標は、上述したとおり一定の範囲内において商標の形状が認識でき、本件商標による権利行使を受ける者などが予測しえない不都合を生じたり、また、商標の調査や審査等に不都合をきたしたりするとは解されないものである。 そうとすれば、本件商標は、これに係る商標登録願の、立体商標である旨の記載及び商標記載欄の5つの図形(別掲第1図ないし第5図)の記載によって、容易に「布製のフグのぬいぐるみ」と認識させるものであって、立体商標としての構成及び態様が特定されているものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に規定する「商標登録を受けることができる商標」に該当するというべきものである。 2 商標法第3条第1項第3号の該当性について 本件商標は、「布製のフグのぬいぐるみ」と認識させるものであるから、その指定商品中の「帽子」との関係において、自他商品識別標識としての機能を有することは明らかであり、商標法第3条第1項第3号に該当しない。 請求人は、本件商標は、指定商品中の「帽子」との関係において、「頭に被るもの」の形状を魚や動物をモチーフとして構成することがごく普通に行われているので、需要者は、本件商標を「フグの形をした帽子」として認識し、「商品の形状そのもの」と理解するにとどまるものであって、出所識別機能を有せず、商標法第3条第1項第3号の規定に該当する、旨主張する。 しかしながら、「頭に被るもの」の形状を魚や動物をモチーフとして構成することがごく普通に行われているとしても、本件商標は、上述したとおり「布製のフグのぬいぐるみ」と認識させるものであるから、請求人の主張は採用できない。 3 結論 以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「帽子」について、商標法第3条1項柱書及び同項第3号に該当しないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 第1図 第2図 第3図 第4図 第5図 (いずれも、色彩については原本参照) |
審理終結日 | 2010-01-13 |
結審通知日 | 2010-01-18 |
審決日 | 2010-01-29 |
出願番号 | 商願2008-15589(T2008-15589) |
審決分類 |
T
1
12・
13-
Y
(X25)
T 1 12・ 18- Y (X25) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 正樹 |
特許庁審判長 |
森吉 正美 |
特許庁審判官 |
瀧本 佐代子 小畑 恵一 |
登録日 | 2008-10-03 |
登録番号 | 商標登録第5169970号(T5169970) |
代理人 | 坂田 洋一 |
代理人 | 堀 弘 |
代理人 | 小林 幸夫 |
代理人 | 峯 唯夫 |