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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
管理番号 1209878 
審判番号 無効2009-890028 
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-04-07 
確定日 2009-12-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5089505号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5089505号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5089505号商標(以下「本件商標」という。)は、「桃源郷」の漢字、「とうげんきょう」の平仮名文字、「トウゲンキョウ」の片仮名文字、及び、「TOUGENKYOU」の欧文字を上下四段に横書きしてなり、平成19年3月21日に登録出願、第35類「広告,広告に関する情報の提供,電話帳による広告の代理,商品の販売促進及び役務の提供促進を目的とした懸賞及びプレゼントの実施や応募に関する情報の提供(携帯電話及びその他の通信端末による通信を利用して提供する場合を含む。),商品の販売促進及び役務の提供促進を目的としたクーポンの発行(携帯電話及びその他の通信端末による通信を利用して提供する場合を含む。),コンピュータネットワークを利用した商品の売買契約の媒介又は取次ぎ,コンピュータシステムの操作に関する運行管理,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供(携帯電話及びその他の通信端末による通信を利用して提供する場合を含む。),ホテルの事業の管理,財務書類の作成,職業の斡旋,競売の運営(携帯電話及びその他の通信端末による通信を利用して提供する場合を含む。),輸出入に関する事務の代理又は代行並びにこれらに関する情報の提供,新聞の予約講読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,電話受付代行,電話発信代行,電話の取次ぎ代行,電話交換,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,インターネットによる広告,インターネットのホームページにおける広告用スペースの提供,求人情報の提供,自動販売機の貸与」を指定役務として、同19年9月10日に登録査定、同年11月9日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第54号証(枝番号を含む。)を提出した。
2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第8号について
ア 請求人会社について
(ア)請求人である桃源郷株式会社は、「1.竹材・杭・縄類等造園工事用資材の輸出入業務、2.竹製家具・インテリア用品及び日用雑貨品等の輸入販売業務、3.生鮮食品、加工食品、冷凍食品の輸入販売業務、4.インターネットシステムに関するコンサルタント業務、5.インターネットのホームページの企画・立案・制作、6.コンピュータソフトウェアの開発、販売及び輸出入、7.前各号に附帯関連する一切の業務」を目的として、平成4年(1992年)7月15日に設立された会社であり、平成16年(2004年)6月1日に有限会社恵門コーポレーションを組織変更したものである(甲第3号証の1及び2)。
(イ)請求人は、近年におけるIT産業の発展、インターネットの普及等に伴い、直近の数年間における事業の発展ぶりはめざましく、特に、インターネットを通じた通販、オークション等の分野においては、組織変更前の有限会社恵門コーポレーションの時代から「ガーデン資材の卸屋さん 桃源郷」として注目されており、さらに組織変更して株式会社となった現在に至るまで、年商において、
2001年:3,000万円
2002年:1億円
2003年:3億8,000万円
2004年:11億4,000万円
2005年:19億5,000万円
2006年:24億円
2007年:26億4,000万円
と順調に業績を伸ばし、短期間に驚異的に飛躍し、成長している企業として業界で著名な存在となっている(甲第4号証)。
(ウ)具体的には、請求人は、インターネットショッピングモール楽天市場において、オークションを開催するほか、巷で話題になっているHOTアイテムを案内・販売する「特売マーケット」、ガーデン・エクステリア資材を案内・販売する「ガーデニング」、取扱アイテム5000点を超える品揃えでソファからオフィス家具までを扱う「理想の暮らし館・リラックスファニチャー」、赤ちゃんのギフトグッズを扱う「アイラブベビー桃源郷子供館」、ペットのフード・アイテム等を扱う「ペットユー桃源郷」及びオフィシヤルオークションサイト「桃オク!」の各部門を設け、幅広い商品、役務、情報を提供している(甲第5号証)。
イ 請求人の周知著名性について
(ア)請求人(前身の有限会社恵門コーポレーション)は、2001年8月にインターネットショッピングモール楽天市場に「ガーデン資材の卸屋さん 桃源郷」として出店したところ、たちまち人気となり、出店2年目にして早くも上記楽天市場の「SHOP OF THE YEAR 2002」の「フラワー・ガーデンジャンル賞」を受賞した(甲第6号証の1及び2、甲第7号証)。
請求人のWEBページには、当初より常に、ページトップの目立つ位置に「桃源郷」の文字が大きく顕著に表示されていた。ちなみに、2002年9月時点において既に会員メールアドレス保有数は50,000件を超えていた(甲第8号証)。
(イ)請求人は、インターネットショッピングモール楽天市場において瞬く間に大人気となり、現在の株式会社に組織変更した後の2004年6月期の年間売上高は3億円を超え、月刊雑誌「商業界」2005年5月号の巻頭特集において大きく取り上げられ、ネットショップ「桃源郷」として紹介されている(甲第9号証)。その紹介記事では、企業概要として「企業名/桃源郷(株)・・・代表者/大橋淳、従業員数/10人、年商/10億円(2004年度6月決算見込み)」とされ、「現在同社は月に2万件以上のオークションを開催。月に20万件の入札を集めている。」、「04年12月には、オークションをメインとする店舗で楽天市場初の売上高1億円を達成した。」、「桃源郷のメンバー。大半が20代という若者ばかりで年商10億をたたき出す。」などと記述され、業界でも新進気鋭の会社として大いに注目されていることがわかる。
(ウ)請求人は、楽天の機関雑誌「楽天ドリーム」に度々大きく取り上げられ(2005年5月号、同年7月楽天ドリーム特別号、2006年1月号、同年10月号)、いずれの記事においても「ガーデン資材の卸屋さん 桃源郷」、「桃源郷」として紹介されると共に、「桃源郷」の文字が顕著に表示された請求人のWEBページの写真が掲載されており(甲第10号証ないし甲第13号証)、売上高及び賞についても、「2004年12月には月商1億円を突破。2年連続でSOYジャンル賞にも輝く。」、「2004年から、毎月ほぼ1000万円ずつのペースで売上を伸ばしていく」(2005年5月号、甲第10号証)、「出店2年目の2003年、早くもショップ・オブ・ザ・イヤーでジャンル賞を獲得する。」、「2003.12 ショップ・オブ・ザ・イヤー2003 ジャンル賞」、「2004.12 月商ギネス1億2004万達成(うち1億1千万以上がオークション) ショップ・オブ・ザ・イヤー2004 ジャンル賞」(2005年7月特別号、甲第11号証)、「スーパーオークション賞桃源郷楽天市場店」(2006年1月号、甲第12号証)としてそれぞれ掲載されている。また、「ビジネスチャンス2005年11月号」には、請求人の代表者である大橋淳が、有名WEBショップのオーナーたちが集う「EC考察会」の会長として、WEBショップ業界をリードする若手オーナーたちの代表となっている旨が紹介され、さらに、「ガーデニング資材販売の『桃源郷』、オークション販売サイト『桃源郷オークション』等をヤフー、ビッダーズ、楽天に出店、月商1億を叩き出しているのが桃源郷(東京都渋谷区)だ。」と掲載されている(甲第14号証)。
(エ)請求人は、2006年1月には、インターネットショッピングモール楽天市場の「Shop of the Year 2005 オークション賞」を受賞し、続いて2007年1月には、同市場の「Shop of the Year 2006 スーパーオークション賞」、「Shop of the Year 2006 百貨店・総合通販・ギフトジャンル大賞」を受賞した(甲第15号証及び甲第16号証の1ないし3)。
このスーパーオークション賞受賞記念として行った「桃源郷オークション」は、2007年1月30日の「楽天スーパーオークションニュース」で紹介され、80万人の会員に配信された(甲第17号証)。また、2007年1月16日配信の「楽天市場ニュース」でも、ジャンル別受賞ショップの百貨店・総合通販・ギフトの項目に「大賞:桃源郷 楽天市場店」として、部門賞・特別賞受賞ショップの項目に「スーパーオークション賞:桃源郷 楽天市場店」としてそれぞれ掲載されており、上記「楽天市場ニュース」は、900万人の会員に配信された(甲第18号証)。
また、2007年1月15日から1年間にわたって、楽天市場のトップベージ(1日アクセス数300万PV)にリンクする「ショップ・オブ・ザ・イヤー2006」の百貨店・総合通販・ギフトのジャンルに大賞「桃源郷 楽天市場店」として掲載された(甲第19号証)。
(オ)請求人は、2007年1月25日、別冊楽天MAGAZINE「楽オク」で誌上オークションを開催し、同誌に「会員数100万人 総入札900万件を誇る人気オークションサイト 桃源郷さんが誌上オークションを開催!」との見出しの下に「100万人以上の会員に支持される人気ショップ『桃源郷』さんが、楽マガのために特別オークションを開催してくれました。」として紹介されている(甲第20号証)。
なお、桃源郷楽天市場店の会員数については、2007年3月時点で「PCアクセス数3,032,958」、「モバイルアクセス数1,292,805」、「PCR-mail保有数(顧客人数)496,318」、「モバイルR-mail保有数226,515」、「PCR-mail配信数44,668,620」、「モバイルR-mail配信数3,171,210」となっている(甲第21号証)。
(カ)月刊誌「日経ベンチャー」2007年1月号に掲載された、日経ベンチャー・帝国データバンクの共同調査「第1回目本の急成長企業ランキング」において、請求人は、今最も勢いのある会社として30位にランクされた(甲第22号証)。このことからも、請求人がいかに急激に大きく成長し、一般社会の注目を浴びているかが分かる。
(キ)一方、請求人は、2006年から2008年まで毎年、プロサッカーチームの「ヴィッセル神戸」のオフィシャルスポンサーになっており、「桃源郷」の名を前面に押し出している(甲第23号証の1及び2)。
(ク)請求人の2005年度ないし2008年度の落札件数・・・(A)、アクセス数・・・(B)、メールマガジン配信通数・・・(C)、楽天からのメールに掲載された通数・・・(D)、上記楽天メール配信に対する広告費・・・(E)は、甲第24号証の1のとおりである。
また、請求人の2005年度ないし2008年度の年間広告費合計は、甲第24号証の1のとおりであり、因みに2006年度は、約1億2千万円である。
(ケ)以上は、本件商標の登録出願前における状況であるが、請求人は、その後も現在に至るまで躍進を続けており、各種賞の受賞をはじめ、各種メディアで紹介されている(甲第25号証ないし甲第40号証)。また、請求人の代表者大橋淳は、Eコマース通信講座も立ち上げ、関連のセミナーにおいて「桃源郷」社長として講師を務めている(甲第41号証ないし甲第43号証)。
(コ)以上の事情からして、インターネットを通じた通販及びオークションの分野をはじめとする各種商品の取引分野において、「桃源郷」といえば、直ちに請求人を連想、想起するほどに、請求人の名称は広く知られ、「桃源郷」は、本件商標の登録出願時には、既に請求人の名称「桃源郷株式会社」の略称として周知著名になっていたものであり、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものである。
ウ 小括
本件商標は、甲第1号証のとおりの構成からなり、請求人の名称の著名な略称である「桃源郷」を含むことが明らかである。そして、本件商標は請求人の承諾を得たものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 「桃源郷」の周知著名性について
既に述べたように、請求人は、2001年8月にインターネットショッピングモール楽天市場に出店して以来現在に至るまで、自己のWEBページの目立つ位置に「桃源郷」の文字からなる標章(以下「引用商標」という。)を常に表示して使用し、インターネットを通じたオークションの開催、各種商品の販売等を行っている(甲第4号証及び甲第5号証、甲第8号証ないし甲第14号証、甲第44号証ないし甲第47号証)。そして、WEBページに掲載すること自体が広告宣伝効果を有することは明らかであり、2007年3月時点において、PCアクセス数が3,032,958件、モバイルアクセス数が1,292,805件であったこと(甲第21号証)は、とりもなおさずそれだけ多くの者が引用商標を目にしたことになる。
また、各種賞の受賞を報道する記事において、引用商標を明示した請求人のWEBページの写真が掲載されている(甲第12号証、甲第19号証、甲第27号証の1ないし3、甲第29号証、甲第34号証の2、甲第35号証及び甲第40号証)。
加えて、請求人は、甲第24号証の1及び2に示すように、多額の広告費を用いて宣伝広告し、また、甲第21号証に示すように、PCR-mailにつき44,668,620件、モバイルR-mailにつき3,171,210件をそれぞれ配信しているのである。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時には、既に請求人の名称の周知著名性と相まって、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものというべきである。
イ 小括
本件商標は、甲第1号証のとおりの構成からなるところ、引用商標とは、「桃源郷」の文字を同じくするものであり、社会通念上同一といえるものである。
また、本件商標の指定役務には、請求人が引用商標を使用して行っている「インターネットを通じたオークションの運営・開催、各種商品の総合通販、商品の販売促進を目的としたクーポンの発行」等と類似する役務である「商品の販売促進及び役務の提供促進を目的としたクーポンの発行(携帯電話及びその他の通信端末による通信を利用して提供する場合を含む。)、コンピュータネットワークを利用した商品の売買契約の媒介又は取次ぎ、競売の運営(携帯電話及びその他の通信端末による通信を利用して提供する場合を含む。)」が含まれている。
したがって、本件商標は、その指定役務中の上記役務については、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知著名性について
上記「(2)ア」のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時には、既に申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものであり、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものである。
イ 本件商標とその指定役務について
本件商標は、甲第1号証のとおりの構成からなり、引用商標と社会通念上同一といえるものであることは、既に述べたとおりである。
そして、本件商標の指定役務は、その多くがインターネットを通じても提供されるものであり、請求人が引用商標を使用して行っている「インターネットを通じたオークションの運営・開催、各種商品の総合通販、商品の販売促進を目的としたクーポンの発行」等とは、提供の手段・方法、需要者等を共通にし、密接な関係を有するものである。
ウ 役務の出所混同のおそれについて
商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号、平成12年7月11日判決)。
これを本件についてみるに、上記ア及びイの状況の下において、本件商標をその指定役務中「請求人の業務に係る商品及び役務と同一又は類似でない役務」について使用した場合であっても、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該役務が請求人又は請求人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 被請求人の不正目的について
(ア)請求人が調査したところによると、被請求人は、本件商標の登録出願前後に、本件商標以外にも多数の商標登録出願を行っている(甲第48号証の1ないし20)。
(イ)これら一連の商標登録出願は、出願人が本件被請求人「世古政弘」個人であること、これら出願の指定商品又は指定役務は多岐にわたり、それぞれの関連性に合理的根拠が乏しく、出願人にこれら全ての商標を業務上使用する意思があるとは考え難いこと、出願に係る商標が明らかに第三者の使用に係る商標と同一又は類似のものであること、などからすると、出願人自ら使用する意思のない、いわゆる「商標ブローカー」的な出願であり、本来の商標使用者が商標登録出願していないことを奇貨として先取り的に出願したものであって、本来の商標使用者に対する妨害行為を行うという不正目的の意図を有するものであることは明らかである。
その結果、当然にも上記出願に係る商標の多くは、拒絶査定となり、中でも、商願2006-109299は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号によって、商願2007-015777は、商標法第4条第1項第8号及び同項第15号によって、商願2007-022924は商標法第4条第1項第8号によってそれぞれ拒絶査定となり(甲第49号証及び甲第48号証の9、甲第50号証及び甲第48号証の11、甲第51号証及び甲第48号証の12)、また、商願2007-028946及び商願2007-108024については、商標法第4条第1項第8号に該当する旨の刊行物等提出書が提出されているのである(甲第52号証及び甲第53号証)。
かかる実情にもかかわらず、被請求人は、稀に上記出願に係る商標の登録を受けるや否や、甲第54号証の1及び2に見られるように、それぞれの本来の商標使用者に対し、次々に当該商標の使用等が商標権侵害に当たる旨の警告を発し、本来の商標使用者の使用を妨害しているのである。
イ 本件商標について
(ア)既に述べたように、本件商標は、請求人の名称の著名な略称及び取引者・需要者間に広く認識されている引用商標と社会通念上同一のものであり、インターネットが普及し、インターネットを通じた通販、オークション等が身近なものとなっている昨今にあって、被請求人は、当該業界において急成長し話題となっている請求人及び引用商標の存在を知っていたものと考えるのがむしろ自然である。
(イ)そうすると、被請求人は、周知著名な請求人ないしは引用商標の存在を知りながら、引用商標が登録されていないことを奇貨として、不正の利益を得る目的又は他人たる請求人に損害を加える目的等の不正の目的をもって、登録出願し登録を受けたものといわざるを得ない。
(ウ)商標法第4条第1項第19号は、もともとただ乗り(フリーライド)のみならず、希釈化(ダイリューション)や汚染(ポリューション)の防止をも目的とする規定であり、そこでは、例えば、15号が出所の誤認混同のおそれを要件として規定しているのとは異なり、これを要件として規定することはしていない(東京高裁平成14年(行ケ)第97号、平成14年8月22日判決)。
したがって、仮に本件商標が商標法第4条第1項第8号、同項第10号及び同項第15号に該当しないものであるとしても、上記実情に照らし、本件商標は、同法第4条第1項第19号に該当するものである。
(5)結び
以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号及び同項第15号又は同項第19号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、答弁しない。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)請求人の提出した証拠によれば以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、平成4(1992年)年7月15日に設立された有限会社恵門コーポレーションを平成16(2004年)年6月1日に組織変更し設立された会社である(甲第3号証の1)。そして、2001年8月31日には、インターネットショッピングモール楽天市場に「ガーデン資材の卸屋さん 桃源郷」を出店し、ガーデン資材の販売とオークションを行った。2002年の出店ページのアクセス数、売上げなどが総合的に評価され、楽天株式会社より、フラワー・ガーデンジャンルにおいて、「SHOP OF THE YEAR 2002」の一つとして表彰された(甲第6号証ないし甲第10号証)。その後、更に楽天市場での出店ジャンルを広げ、「桃源郷 楽天市場店(オークション)」、「桃源郷 楽天市場店(ガーデニング)」のほか、「桃源郷 楽天市場店(特売マーケット)」「桃源郷 理想の暮らし館・リラックスファニチャー」、「アイラブベビー桃源郷子供館」、「ペットユー桃源郷」及び「桃オク!」を運営(甲第5号証)している。
(イ)請求人のWebページには、そのトップページの目立つ位置に「桃源郷」(引用商標)の文字が大きく顕著に掲載され(甲第8号証、甲第9号証ほか)、請求人Webサイトへのアクセス数は、2005年:2435万件、2006年:3888万件、2007年:4978万件であり、メールマガジン配信数は、2005年:1億4349万件、2006年:2億4307万件、2007年:4億3891万件である(甲第24号証の1)。
(ウ)請求人の売上げは、2003年には3億8千万円となり、2006年は24億円、2007年は26億4千万円であり(甲第4号証)、その多くが上記ウェブサイトによるものである。また、請求人の広告費は、2005年:8308万円、2006年:1億2059万円、2007年:1億6201万円である(甲第24号証の1)。
(エ)インターネットショッピングモール楽天市場による各種受賞により、楽天市場からその会員向けにニュース配信されるところ、例えば、「桃源郷オークションの2006年スーパーオークション賞に際しては、2007年1月30日に約80万人の会員に「桃源郷オークション」が配信されている(甲第17号証)。楽天市場からのメールに掲載された通数は、2005年:4020万件、2006年:3630万件、2007年:5572万件である(甲第24号証の1)。
(オ)請求人は、2006年からプロサッカーチーム「ヴィッセル神戸」のオフィシャルサポーターになっている(甲第23号証)。
(2)以上の事実を総合すれば、引用商標は、本件商標の出願時及び査定時において、既に請求人の業務を表すものとして、相当程度広く知られるに至っていたものというべきである。
2 本件商標と引用商標の類否
本件商標は、「桃源郷」「とうげんきょう」「トウゲンキョウ」及び「TOUGENKYOU」の文字よりなるものであり、引用商標は、「桃源郷」の文字よりなるものであるから、両商標は、同一又は類似の商標である。
3 「不正の目的」について
被請求人は、本件商標以外にも多数の商標登録出願を行っている(甲第48号証の1ないし20、甲第49号証ないし甲第53号証)が、これら出願の指定商品又は指定役務は多岐にわたり、請求人が言うように、それぞれの関連性に合理的根拠が乏しく、出願人にこれら全ての商標を業務上使用する意思があるとは考え難く、出願に係る商標がおおむね第三者の使用に係る商標と同一性のあるものなどからすると、出願人自ら使用する意思のない出願であると理解され、商標使用者が商標登録出願していないことを奇貨として先取り的に出願したものと推認でき、本来の使用者に対する妨害行為を行う不正の目的の意図を有するものというべきである。
そして、このことは、請求外登録5020931号商標が平成19年1月26日に登録なるやいなや同19年2月11日に警告文書を送付している(甲第54号証の1)ことからも首骨でき、本件についても、平成19年11月9日の登録後同20年5月11日に警告文書を発送している(甲第2号証の1)ことにかんがみれば、被請求人は、引用商標「桃源郷」についての事情をあらかじめ了知した上で出願に及んだものと推認できるから、本件商標は、引用商標が登録されていないことを奇貨として、不正の利益を得る目的又は請求人に損害を加える目的等の不正の目的をもって、登録出願され、登録を受けたものと推認できる。
4 小括
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 結び
以上のとおり、請求人の主張するその余の無効理由について論及するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-09-18 
結審通知日 2009-10-02 
審決日 2009-10-30 
出願番号 商願2007-32517(T2007-32517) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (X35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村上 照美土井 敬子田中 亨子 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内山 進
岩崎 良子
登録日 2007-11-09 
登録番号 商標登録第5089505号(T5089505) 
商標の称呼 トウゲンキョウ、トーゲンキョー 
代理人 早川 裕司 
代理人 岩内 三夫 

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