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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない Y29
管理番号 1208272 
審判番号 無効2008-890034 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-04-28 
確定日 2009-11-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第5020651号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5020651号商標(以下「本件商標」という。)は、「こくうま」の平仮名文字を縦書きしてなり、平成17年6月21日に登録出願、第29類「キムチ」を指定商品として、同18年11月30日に登録査定がなされ、同19年1月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証の1ないし同第23号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)請求の利益について
請求人は、請求人の製品である「こく旨キムチ」、「こく旨キムチミックス」、「ゴールドキムチこく旨」及び「こく旨キムチミニ」に対して、被請求人から、本件商標の商標権に対する侵害を構成することを根拠として、上記製品の販売の中止、販売数量及び金額の報告を要求することを内容とする内容証明郵便の送達を受けた(甲第2号証)。このように、請求人は、本件商標の存在により不利益を被っているから、その登録の無効を求める本件審判請求について、法律上の利害関係がある。

(2)無効理由について
本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。
ア 「こくうま」の語は、本件商標の商標登録査定時(平成18年11月30日)以前から現在に至るまで引き続いて、「キムチ」の品質を普通に表示する語として使用され、取引者及び需要者に認識されている。
(ア)本件商標の登録査定時以前から、「こくうま」の語が「こくがあって旨い」という食品の品質を示す語として使用されている事実を甲第3号証の1ないし14(インターネットのウエブページの写し)として提出する。
これらの証拠は、2005年10月12日におけるインターネットのウエブページの写しであるから、本件商標の登録査定の日以前から、「こくうま」の語が食品に「こくがあって旨い」ことを意味する語として広く使用されていたこと明らかである。
(イ)「こくうま」の語は、現在においても引き続いて、食品に「こくがあって旨い」という品質を示す語として使用されているので、この事実を示す証拠として、甲第4号証の1ないし18(インターネットのウエブページの写し)を提出する。
(ウ)市井のスーパーマーケット等の店頭に陳列され販売されている食品について表示されているものを見ることができるので、この事実を示すために、市井の店舗で購入した食品の写真を甲第5号証の1ないし3として提出する。
イ 上掲の証拠から、「こくうま」の語は、食品について「こくがあって旨い」ことを意味する語として広く使用され、かつ、認識されていることが明らかであるが、これと併行して、「こく旨」(「うま」を「旨」と表示)の語も「こくがあって旨い」という食品の品質を示す語として広く使用され、認識されているので、この事実を示す証拠として甲第6号証の1ないし19(インターネットのウエブページの写し)を提出する。
また、「こく旨」の語は、街のスーパーマーケット等の店頭に陳列されている食品に表示されているものを容易に見ることができるので、この事実を示すために、市井の店舗で購入した食品の写真を甲第7号証の1ないし9として提出する。
ウ 本件商標の指定商品である「キムチ」は、上記甲各号証で示された商品又はレシピと食品である点で同じであり、これら食品の需要者は、年齢、性別、職種等を問わない一般消費者と認められるところから、上記各証拠で示した食品について、「こくうま」又は「こく旨」の表示が「こくがあって旨い」ことを意味する語であるという認識は、キムチについても同様であるといえる。
更に、キムチは、各種の食品に中にあって、栄養より需要者の嗜好によって選択し購入される醗酵食品であるから、「こくがあって旨い」ことが需要者の選択項目となり、その売れ行きに大きく影響を与える。
したがって、「こくうま」の表示がキムチの味の表示として需要者に認識されることは、他の食品より一層大であるといえる。このことは、キムチについて、「こく旨辛味 キムチ」と表示して使用されている事例(平成20年4月21日 大阪市都島区東野田町2丁目1番38号 京阪モール地下1階京阪百貨店モール食品館にて購入 甲第8号証)からも確認することができる。
エ 甲第3号証の1ないし14は、2005年10月12日におけるインターネット上の表示状況を示しており、甲第4号証の1ないし甲第8号証は、平成20年4月のインターネットウエブページ及び購入した商品に表示されている状況を示している。本件商標の登録査定時(平成18年11月30日)は、上記の両時点の中間であるから、登録査定時においても、「こくうま」の語が「こくがあって旨い」ことを意味する語として需要者に認識されていたことは明らかであるといえる。
そして、このことは、商願2000-61610号の審査例(甲第9号証)からも首肯し得ることである。
オ むすび
上述のとおり、本件商標は、その指定商品「キムチ」の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであり、また、商標法第3条第2項の規定に該当するものでもない。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、こくがあって旨いことを表示する場合は、「こくがあって旨い」と表示するのが一般であり、「こくうま」と表示するのは品質等の間接的な表示に過ぎない旨主張している。
しかし、商品の包装については、需要者に内容を一見して認識してもらうために通常の用語を短くして簡潔に表示するのが常態であるから、上記の主張は失当である。
(2)被請求人は、「こくうま」と同一または「こく旨」「コクうま」を含む商標登録が多数存在しており(乙第1号証)、このことは、「こくうま」と同一又は類似の商標が品質の間接的な表示に過ぎない証左である旨主張している。
しかし、乙第1号証に列記されている商標は、「こくうま」「こく旨」「コクうま」の表示の他に自他商品識別力のある表示のあるものが殆どであるから、これらの商標が商標登録されていることを根拠として、本件商標について無効の判断がなされることが不合理であるということはできない。
しかも、乙第1号証中の項番14「商願2007-56031 こくうま」、項番15「商願2007-56032 コクうま」及び項番16「商願2007-56033 こく旨」の審査状況によれば、いずれも、商標法第3条第1項第3号に該当する旨の拒絶理由通知書が発せられているものである。
また、被請求人は、「ぴりうま」、「やわうま/柔旨」及び「からうま」の商標が登録されていることを根拠として、本件商標についてのみ、無効の判断がなされるのは不合理である旨主張しているが、上記の3件の商標は、本件商標とは商標の構成が異なっているから、上記主張は成り立たない。
(3)被請求人は、「こくうま」の語は辞書に掲載されているものでもないことから、商品の品質等を直接的に形容する言葉であるとはいえない旨主張している。
しかし、出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号又は同条第2項に該当するか否かは、指定商品の分野に属する取引者・需要者の認識如何に係るものであり、辞書に掲載されているか否かによって判断されるものではない。
(4)被請求人は、商標法第3条第1項第3号の趣旨について述べているが、被請求人の主張している解釈は、公益上の適切性に基づく見地を見落しているものであって、商標法第3条第1項第3号の趣旨を適切に理解したものとはいえない(東京高等裁判所平成13年(行ケ)第207号参照)。
上記判例の趣旨に則して本件商標をみると、本件商標は、多種の食品について、こくがあって旨いという品質を表示するものとして現実に使用されていたものであるから、かかる語に被請求人によるその独占的使用を認めることは公益上適当ではない。「キムチ」と販売場所、需要者及び消費場所を同じくする多種の食品の品質表示として使用されている語については、食品の一種であるキムチについて本条項の適用のために、現実に使用されている事実の存在は必ずしも必要でなく、他の食品と同様に取り扱われることとなる。したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
(5)被請求人は、キムチの味については一般的に「辛い」「ぴり辛」など、辛さに関連する形容は用いられるが、「こくがある」「旨みがある」といった形容がなされることは少ない旨述べている。
しかし、「こくがある」「旨みがある」といった語は、食品について広く使用されている語であり、これがキムチについてのみ例外となるものではなく、現に、被請求人自身も製造・販売するキムチに「こくと旨み」と表示しており、上記主張は失当である。
(6)被請求人は、甲第3号証ないし甲第7号証の中には、キムチに関して「こくうま」「こく旨」の表示が使用されているものは一切なく、反証にならない旨主張している。
しかし、上記判例から明らかなとおり、本件商標に商標法第3条第1項第3号を適用するにあたって、本件商標が他の多種の食品に品質表示として「こくうま」が使用されている以上、キムチについて「こくうま」「こく旨」の表示が現実に使用されていることは必要ではない。
(7)被請求人は、甲第8号証をもって、本件商標の無効理由存在の直接証拠とはならない旨主張している。
しかし、甲第13号証の1ないし6に示すとおり、「コーライ食品」の表示と「こく旨キムチ」の表示をしたキムチは、本件商標の出願前から現在に至るまで永年にわたって請求人によって販売されている。この商品が現在も引き続き販売されていることを証するために、現在販売されているキムチの写真を甲第14号証及び甲第15号証として提出する。
(8)被請求人は、甲第3号証ないし甲第7号証の中には、当該商標の商標権者により、または、同人からライセンスを受けた者によって販売等がなされている事例が多数を占めている旨述べている。
しかし、ライセンスを受けているといえるためには、その根拠となる契約内容が示されるべきであり、上記主張には、その契約内容が示されておらず、根拠のないものである。
また、商標権に基づく使用である旨の主張については、登録商標「伊藤ハム こく旨」(乙第7号証)は、「伊藤ハム」の部分に顕著な自他商品識別力があるものであり、登録商標「こく旨マカダミア」(乙第8号証)は、「こく旨」には自他商品識別力がない旨の出願人の主張のもとで登録されたものである。
(9)被請求人は、本件商標は商標法第3条第2項によっても商標登録を受けることができるものである旨主張している。
しかし、被請求人が販売したキムチ製品は、「こくうま」のみを表示したものは皆無であり、被請求人の著名な商号商標「東海漬物」が併せて表示されており、さらに、「安心ブランド」と強調されて表示されているものが大部分である。このような表示に係る商品は、この表示によって需要が喚起されるものであるから、このような表示に係る商品販売をしても、自他商品識別力のない「こくうま」の表示部分について、需要者が被請求人の業務に係る商品であると認識するに至ったということはできない。
加えて、これら乙各号証は、本件商標の登録査定後の資料であったり(例えば、乙第9号証、同第31号証及び同第32号証等)、写真については撮影者、撮影場所、撮影年月日の記載がなかったり(例えば、乙第10号証の1ないし同第15号証等)、被請求人の内部における状況を示す資料であるから(例えば、乙第9号証及び同第16号証等)、本件審判においては、証拠価値のないものである。
以上のとおり、被請求人の答弁は、いずれも理由のないものである。

第3 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第37号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第3条第1項第3号について
(1)「こくうま」は、品質を間接的に表示するものであること
ア 審査基準の考え方
指定商品の品質等を間接的に表示する商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しないものと解されるところ、こくがあって旨いことを表示する場合は、「こくがあって旨い」と表示するのが一般であり、「こくうま」と表示することは、品質等の間接的な表示に過ぎない。
イ 同一又は類似の商標の存在
「こくうま」と同一又は「こく旨」「コクうま」を含む商標登録は多数存在しており(乙第1号証)、例えば、明星食品株式会社は、調味料等を指定商品として、「コクウマ」の商標を登録している(商標登録第4182197号、乙第2号証)。
また、本件商標の指定商品「キムチ」を含む指定商品「加工野菜及び加工果物」の範囲において、「ぴりうま」(商標登録第4251959号、乙第3号証)、「やわうま/柔旨」(商標登録第4912574号、乙第4号証)、「からうま」(商標登録第4008822号、乙第5号証)、「こくから」(商標登録第4210315号、乙第6号証)等の商標が登録されている。これらの商標は、それぞれ、「ぴりっと旨い」、「柔らかくて旨い」、「辛くて旨い」、「こくがあって辛い」と表示されるのが直接的であるところ、それを間接的に表示するに過ぎないために、商標登録がなされているのであり、本件商標についてのみ、無効の判断がなされるのは不合理である。
ウ 辞書での定義不存在
「こくうま」の語は、辞書に掲載されているものでもないことから、商品の品質等を直接的に形容する言葉であるとは到底いえない。
(2)「こくうま」は、特にキムチについて、品質を普通に表示するものとはいえないこと
ア 本件商標について
本件商標は、「キムチ」を指定商品とする商標であるが、キムチの味については、一般的に「辛い」「ぴり辛」等、辛さに関連する形容は用いられるが、「こくがある」「旨みがある」といった形容がなされることは少なく、かつ、上述したとおり、「こくうま」という表現は、キムチに限らず、食品の品質を普通に表示したものとはいい難い。
また、後述するとおり、被請求人の「こくうま」は、キムチの商品名として、一般消費者及び取引先に広く知れ渡っており、十分に自他識別機能が存することから、キムチに関して「こくうま」と表示することは、「普通に用いられる方法での表示」とはいえない。
なお、インターネット検索サイトGoogleで「こくうま」「キムチ」と検索した場合、被請求人の「こくうま」キムチが一番上位にランクされ、サイトの大半が被請求人の「こくうま」キムチに関するサイトであることからもこのことは明らかである。
イ 請求人の列挙する証拠について
請求人は、甲第3号証ないし甲第7号証を提出しているが、これらの中には、キムチに関して「こくうま」、「こく旨」の表示が使用されているものは一切なく、反証にならない。なお、請求人が提出している唯一のキムチ関係の証拠は甲第8号証であり、「こく旨辛味 キムチ」の表示のある商品が存在する旨主張するが、同商品の購入時点は2008年4月21日であり、本件商標の無効理由存在の直接証拠とはならない。
請求人は、「こくうま」が品質の普通表示であることの論拠として、これらの証拠を列挙しているが、これらの中には、商標権を取得した者により、または同人よりライセンスを受けている者によって販売等が行なわれている商品が多数を占めている。例えば、伊藤ハム株式会社の「こく旨」ウィンナー(甲第6号証の11及び14、同第7号証の6)は、同社が「伊藤ハム こく旨」の商標権(商標登録第4989418号、乙第7号証)を持つものであり、明治製菓株式会社のきのこの山「こく旨」マカダミア(甲第6号証の17)は、同社が「こく旨マカダミア」の商標権を持つものである(商標登録第5069512号、乙第8号証)。また、商品を形容する語として「コク旨」を使用する明星食品株式会社は(甲第7号証の3及び4、同第7号証の8)、「コクウマ」の商標を有している(商標登録第4182197号、乙第2号証)。さらに、味の素株式会社の販売する「コクうま」マヨネーズ(甲第5号証の3)は、「コクウマ」の商標を登録している明星食品株式会社からライセンスを受けて販売されているものである。
これらの商品についての「こくうま」と同一又は類似の表示の使用は、商標権に基づく使用がなされていることを示す証拠に他ならず、何ら請求人の論拠とはならない。
ウ 商願2000-61610の拒絶理由について
請求人は、商願2000-61610の審査例を挙げているが、該審査における拒絶理由は、キムチについては何ら言及されておらず、本件無効審判請求における無効理由の論拠にはならない。
(3)小括
よって、本件商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものではないから、商標法第3条第1項第3号には該当しない。
2 商標法第3条第2項について
本件商標は、本件商標の登録時点である2007年1月26日の時点において、被請求人の出所表示として、被請求人の商品の需要者の間で全国的に認識されているものである。よって、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当する場合であっても、本件商標は、同条第2項により、商標登録を受けることができるものである。
(1)被請求人について
被請求人は、漬物・佃煮その他の食料品の製造及び販売、その他これらの業務に付随する一切の業務を行うことを目的として、昭和16年9月2日に設立された株式会社であり、創業以来、特に漬物類とその関連商品に重点をおいて製造・販売の業を営んでいる(乙第9号証)。
被請求人が製造販売するきゅうりの醤油漬「きゅうりのキューちゃん(商標登録第793131号、同第4130698号)」は、昭和30年代の製造販売の開始以来、「キューちゃん(商標登録第1451729号)」の愛称をもって売上を維持している商品であり、漬物業界における代表的商品としての地位を獲得している(乙第9号証)。
(2)本件商標を付した商品について
被請求人は、2000年には、本格白菜キムチの製造販売を開始し、2004年5月には、「こくうま」内容量320g、200g等の販売を開始し、小分け包装のなされた新商品「プチこくうま」内容量100g等の販売も開始した(乙第10号証ないし同第15号証)。これらの商品のパッケージの正面には、本件商標と同一の「こくうま」の文字が大きく表示されている(以下、これらの商品を「こくうま」キムチという。)。
ア 「こくうま」キムチの販売状況について
「こくうま」キムチは、販売当初より、北は北海道、南は沖縄まで日本全国の主としてスーパーマーケットやコンビニエンスストア、その他全国各地の食品小売店舗での販売がなされている(乙第16号証)。
また、「こくうま」キムチの出荷額は、出荷開始直後の2004年6月以降上昇の一途を辿り、2007年1月の時点では4億5968万6000円もの金額に達しており、2004年9月1日以降2007年1月までの間の出荷額合計は、72億6412万6000円となっている(乙第17号証)。
更に、株式会社チャネルマネジメントによる日経POSデータに基づく市場状況の調査分析結果(乙第18号証)によれば、被請求人の「こくうま」キムチは、2005年12月の時点で売上個数・売上金額ともに第1位となっており、2007年1月の時点においても、全国の全スーパーにおける日経POSデータに基づくキムチ商品のランキングにおいて、被請求人の「こくうま」の各キムチは1位、8位、32位を占めており、全国の全業態における同ランキングにおいても、被請求人の「こくうま」の各キムチは1位、7位、16位を占めている(乙第19号証)。
上記のとおり、被請求人は、発売以降現在に至るまで、莫大な数量の「こくうま」キムチを全国各地において製造し、流通させ、販売している。
よって、本件商標は、2004年5月以降、2007年1月26日時点に至るまで、日本全国において継続的に使用されることによって、キムチという商品分類において識別力を有するに至ったといえる。
イ 「こくうま」キムチの広告・宣伝状況等について
(ア)キャンペーンの開催
被請求人は、2004年7月に「こくうま新発売キャンペーン」においてオリジナルキッチンマグネットの配布を行い(乙第23号証)、2006年1月には「増量セール感謝祭」を行った。また、2006年から2008年の冬季における「近江和牛肉プレゼント」キャンペーンを広く展開したところ、全国各地から多数の応募があり、「こくうま」キムチが全国各地の消費者へと浸透していることが窺われる(乙第24号証)。
(イ)新聞・雑誌における広告
被請求人は、これまでに多数回にわたり、日本経済新聞、日経MJ、サンデー毎日等の雑誌、新聞における宣伝広告を行っており、種々の独自のキャッチコピーを使用しながら、「こくうま」キムチの特性を消費者に訴えかけてきた(乙第25号証ないし同第30号証)。
(ウ)自社ウェブサイトにおける広告
被請求人は、自社ウェブサイトにおいて、2004年6月以降現在に至るまで、「こくうま」キムチシリーズを詳しく紹介するページを常設しており、「こくうま」キムチの基本情報やそのコンセプトを詳しく説明すると共にに、キムチを使用した料理レシピを紹介して、「こくうま」キムチを継続的にアピールしてきており、2006年9月頃には、一日あたりの平均アクセス数は220件にのぼり、消費者に広く浸透している状況が窺われる(乙第31号証及び同第32号証)。
(エ)「こくうま」キムチの記事掲載等
2005年5月18日付け中部経済新聞には、「東海漬物がキムチを強化」と題した記事が掲載され、「こくうま」シリーズの売上が順調に伸びていること等が記載されており(乙第33号証)、2006年2月25日付け食品経済新聞には、日本漬物商品群のPOSデータ分析が第1面に掲げられ、「1位こくうま」の見出しの下に、「こくうま」が1ヶ月で5億円もの売上を計上し、キムチを含めた全潰物商品における第1位の販売金額をあげていることが記載されており(乙第34号証)、月刊の食品総合雑誌であるフードリサーチには、「エクセレントカンパニーを目指す東海漬物」と題して特集され、「こくうま」キムチが商品パッケージの掲載とともに取り上げられており(乙第35号証)、NTTコムウェアが提供する雑誌型ウェブサイト「COMZINE」のニッポン・ロングセラー考2005年5月号においては、被請求人の看板商品である「きゅうりのキューちゃん」と共に、「こくうま」キムチが第2の基幹商品として紹介されている(乙第36号証)。
(オ)アンケート結果
2008年1月に株式会社東急エージェンシーによって実施された首都圏、東海圏、関西圏の主婦を調査対象とした被請求人のイメージ調査アンケートによれば、25.7%が「こくうま」キムチを認知しているとの調査結果が出されている(乙第37号証)。
ウ 小括
以上のとおり、「こくうま」キムチは、キムチ商品のトップブランドとして、一般消費者・取引者に広く受入れられた結果、ほとんどのスーパーマーケットにおいていつでもみかけるキムチの定番商品となっているのであり、このような使用状況等を勘案すれば、本件商標は、被請求人の業務にかかるキムチ商品として識別力を有するに至っていることは明らかである。
よって、被請求人は、本件商標について、商標法第3条第2項によっても、商標登録を受けることができるものである。
3 結論
以上に述べたとおり、本件商標は、キムチ商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものではないから、商標法第3条第1項第3号に該当するものではなく、仮に、同号に該当すると判断されたとしても、本件商標は、使用の結果、本件商標登録時には、被請求人のキムチ商品の商標として識別性を有するに至っており、同法第3条第2項に該当するものである。
よって、本件無効審判請求には理由がない。

第4 当審の判断
1 請求人は、本件審判を請求することの利益について述べているが、この点については、被請求人も争っていないので、本案に入って判断する。
本件商標は、前記のとおり、「こくうま」の文字を縦書きしてなるところ、請求人は、本件商標は「こくがあって旨い」ことを意味するものであるから、指定商品である「キムチ」に使用するときは、当該商品の品質を認識させるにすぎないものである旨主張して、甲各号証を提出している。
2 そこでまず、請求人の提出に係る甲各号証について検討する。
ア 甲第3号証の1ないし14は、本件商標の登録査定時(平成18年11月30日)以前からの「こくうま」の使用例として提出されたインターネットウエブページの写しである(いずれも2005年10月12日に打ち出されたものである。)。
(ア)甲第3号証の1には、「大絶賛されちゃうお菓子の本」の表題の下に、レシピとして、「こくうま♪チョコチップクッキー」と表示されている。
(イ)甲第3号証の2には、「龍や」の表題の下に、主なメニューとして、「こくうま肉入り」、「こくうまラーメン」と表示されている。
(ウ)甲第3号証の3には、「炭火ダイニング 月の虎 本家」の表題の下に、メニュー中のたれについて「こくうまダレ」の表示がある。
(エ)甲第3号証の4には、「ハニーのいいものみつけた」の表題の下に、店舗で提供されているコーヒーについて、「季節の手作りケーキとこくうまコーヒー」、「ブラジル豆をベースにこくうま(450円)」と表示されている。
(オ)甲第3号証の5には、「I LOVE 遊・赤羽西口店」の表題の下に、店舗で提供されているカレーライスについて、「こくうまビーフカレーライスをご提供します!」と記載されている。
(カ)甲第3号証の6には、「信州自然村から」の表題の下に、調味料について、「ペプチド雑穀酵素こくうま食の素」と表示されている。
(キ)甲第3号証の7には、「レシピ大百科」の表題の下に、カレーのレシピに、「ポークコクうまカレー」と表示されている。
(ク)甲第3号証の8には、「体にみなぎるマイナスパワー!!」の表題の下に、「朝食に、お酒のおつまみに・・・こくうまチーズ味は近日発売予定です」と記載されている。
(ケ)甲第3号証の9には、「都会を離れて猪苗代の大自然でくつろぎたい/ホテルリステル猪苗代」の表題の下に、おすすめメニューとして、「こくうま珈琲」と記載されている。
(コ)甲第3号証の10には、菓子について、「カールこくうま塩味」と表示されている。
(サ)甲第3号証の11には、「室戸海洋深層水の専門店/室戸」の表題の下に、たれについて、「生姜ダレこくうま」と表示されている。
(シ)甲第3号証の12には、個人のホームページであり、パスタについて、「前回行った時にリクエストした渡り蟹のパスタはこくうまで絶品です。」と記載されている。
(ス)甲第3号証の13には、「ぐるなびラーメン/猿喜 小手指本店」の表題の下に、「極上のこくうまスープは一口瞭然!一度飲んだらもっと飲みたくなるスープ!」と記載されている。
(セ)甲第3号証の14には、「らーめん・得道」の表題の下に、ラーメンのメニューの説明書きに、「これはこくうまとんこつの醤油味となっています。」と記載されている。
イ 甲第4号証の1ないし18は、現在においても引き続き「こくうま」の語が使用されている例として提出されたインターネットウエブページの写しである。
甲第4号証の1には「具入り調味ソース」について「こくうま醤油いため」と表示されており、甲第4号証の2には「生チョコ」のレシピ中に「こくうま♪チョコホイップで生チョコ」、甲第4号証の3には「参考にして生まれたレシピ2品」中に「こくうま とろとろ プリプリたまご」、甲第4号証の4には料理レシピ中に「こくうまエビマヨ炒め(こくうま調味料を作っておく)」、甲第4号証の5にはレシピ中に「こくうま中華味噌妙め」、甲第4号証の6には「そうざいの素」について「こくうま醤油炒め」、甲第4号証の7から11には「ラーメン」のメニュー中に「こくうまラーメン」、「こくうま醤油ラーメン」、「こくうま醤油とろ玉ラーメン」「こくうま醤油チャーシュー」、「こくうまひびきらぁめん」及び「こくうま塩ラーメン」、甲第4号証の12には「餃子」について「ピリ辛 こくうま」、甲第4号証の13には「ハンバーグ」のメニュー中に「こくうま倍増」、甲第4号証の14には「ハンバーグ」のレシピに対する感想として「こくうまジューシーなハンバーグが作れました。」、甲第4号証の15には「ナポリタン」のレシピ中に「こくうま ナポリタン」、甲第4号証の16にはブログの記載中に「こくうまあさりカレー・・・」、甲第4号証の17にはブログの記載中に「こくうまカレーうどん♪」、そして、甲第4号証の18には「絹豆腐」について「こくうま絹豆富」と表示されている。
ウ 甲第5号証の1ないし3は、「こくうま」の語がスーパーマーケット等の店頭に陳列され販売されている食品について表示されている例として提出されたものであって、2008年4月1日ないし12日に、市井の店舗で購入した食品の写真であり、甲第5号証の1には、「総菜の素」について「こくうま醤油炒め」、甲第5号証の2には、「スープ茶づけ」について「コクうまスープが決め手!」、甲第5号証の3には、「マヨネーズ」について「コクうま」と表示されている。
エ 甲第8号証、甲第13号証の1ないし6、甲第14号証及び甲第15号証は、「キムチ」についての使用例として提出されたものである。
甲第8号証は、平成20年4月1日に京阪百貨店モール食品館にて購入された「キムチ」の写真であり、容器の蓋部分には「こく旨辛味/キムチ」と大きく表示されている。
甲第13号証の1ないし5は、いずれも、平成15年12月1日から平成18年5月26日にかけて発行された「食料新聞」であり、コーライ食品株式会社の製造に係る「こく旨キムチ」と表示したキムチについての紹介記事や広告であり、「こく旨キムチは、ほどよく熟成した甘みと酸味、そして旨さを感じるキムチ」等と記載されている(甲第13号証の2、3)。
甲第13号証の6は、2004年9月から2005年4月までの間に市民生活協同組合「ならコープ」が発行した広告であって、コーライ食品株式会社の製造に係る「大阪鶴橋/こく旨キムチ」と表示したキムチについての広告が掲載されており、「辛さの中にも深い旨みがあります。」、「韓国産唐辛子を使った、メーカー秘伝のキムチタレ仕上げ。コクと旨みが生きています。」と記載されている。
甲第14号証及び甲第15号証は、上記の「大阪鶴橋/こく旨キムチ」が現在も引き続き販売されている事実を示すものとして提出された該キムチの写真である。
オ その他にも、請求人は、甲第6号証の1ないし19及び甲第7号証の1ないし9を提出しているが、これらは、いずれも「キムチ」以外の食品(例えば、ラーメンやスープ等)についての「こく旨」の表示からなる使用例である。
3 上記において認定した甲各号証によれば、「こくうま」の語が店舗において提供されているラーメン(スープを含む)やカレー、コーヒー、あるいは、商品としてのソースやタレ等について使用されている例のあることは認められるが、本件商標の指定商品である「キムチ」について使用されている例は提出されていない。
また、請求人が「キムチ」についての使用例として提出している甲号証は、いずれも、「こく旨」の表示からなる使用例であって、「こくうま」の表示からなるものではない。
4 食品業界においては、商品の品目が極めて多いことやその需要者層が老若男女を問わず極めて広汎にわたることなどとも相俟って、消費者に記憶され易く、かつ、商品の品質等に関連する標章が好まれて採択される傾向にあり、識別標識たり得る標章であるのか否か微妙なケースが決して少なくない実情にあるといえる。そのため、そのような商標における識別力の有無は、個別具体的な商品についての取引の実情をも含めて総合的に考慮・判断されるべきものである。
そして、商標法第3条第1項第3号の判断基準としても、商品の品質等を間接的に表示する商標は、同号に該当しないものとされている。
5 「こくうま」の文字を食品との関係において分析してみるに、例えば、岩波書店発行の広辞苑(1998年11月11日 第五版第一刷)には、「こく」の文字については、「酒などの深みのある濃い味わい」の意味合いを表す「酷」の語が掲載されており、また、「うま」の文字については、「味がうまい」の意を表す「うま(甘)」(ウマシの語幹)、「味がよい、甘い」の意を表す「美い、甘い、旨い」の語が掲載されている。
これらの記載からみれば、「こくうま」の文字(語)を分析して観察した場合には、「深みのある濃い味わい」の意を表す「酷」と「味がうまい」の意を表す「甘、旨」の各表音を平仮名文字をもって結合したものと一応解することはできる。しかし、これを一連に表した「こくうま」の文字(語)自体は、広辞苑をはじめ講談社発行の日本語大辞典(1989年11月6日 第一刷)や小学館発行の国語大辞典(1990年1月20日 第一版新装版第三刷)にも掲載されてはおらず、請求人も、「こくうま」の文字(語)が「こくがあって旨い」ことを意味するものであることが掲載されている辞典類や文献等を提出していない。
そうとすれば、「こくうま」の語(文字)は、食品の品質等を暗示ないしは間接的に表示するものとはいえても、直接的に表示したものということはできない。そして、上記した取引の実情によれば、「こくうま」の語は、店舗において提供されているラーメン(スープを含む)やカレー、コーヒー、あるいは、商品としてのソースやタレ等について使用されている例はあるが、本件商標の指定商品である「キムチ」について使用されている例は提出されていない。
しかして、「こくうま」の語が使用されているラーメン(スープを含む)、カレー、コーヒー、ソースやタレ等の商品は、元々、「コク(酷)」と「旨み」の要素が重視される商品であることから、このような商品の表示に「こくうま」の語が使用された場合には、「コク(酷)があって旨い」という意味合いに結び付き易いということはできる。しかしながら、「キムチ」については、「コク(酷)」と「旨み」の要素を否定するものではないが(現に、請求人も被請求人もその取扱い商品について、「コク」と「旨み」を謳っているが)、本来的には、「辛さ」の度合いと「旨み」が主要な要素となっている商品といえるものであるから、「こくうま」の語(文字)がラーメン(スープを含む)やカレー等の商品について使用されている例があるとしても、また、これらの商品とキムチとが、いずれも食品の概念に属する商品であるとしても、商品「キムチ」との関係においては、「こくうま」の語の識別力の有無を同一に論ずることはできない。
また、請求人が「キムチ」についての使用例として提出している甲号証は、いずれも、「こく旨」の表示からなる使用例であって、「こくうま」の表示からなるものではない。この「こく旨」の表示は、外観の点から見た場合には、平仮名文字の「こく」と漢字の「旨」とからなることから、各文字の不可分一体性はさほど強いものとはいえない。しかも、「旨」の漢字からは「旨い」の意味合いを直ちに看取し得ることから、「旨」の語との関連において、前半の「こく」の文字についても「酷がある」の「酷」を容易に想起させるものであり、その結果、全体として、「コク(酷)があって旨い」という意味合いを理解・認識させるものということができる。
そうとすれば、商品「キムチ」との関係においてみた場合において、「こく旨」の語(文字)がキムチについて使用されている例があるとしても、「こくうま」の語(文字)と「こく旨」の語(文字)との識別力の有無を同一に論ずることはできない。
6 請求人は、本件商標の独占不適応性についても言及しているが、「キムチ」について、「コク(酷)があって旨い」ことを表す場合には、「コクと旨み」あるいは「こく旨」、「コク旨」等の語が一般的に使用されているものと認められるから、「こくうま」の文字からなる登録商標の存在により、商取引において支障を来すとは考え難く、本件商標が独占適応性を欠く語であるということはできない。
なお、被請求人の提出に係る乙第9号証(被請求人の会社案内)によれば、被請求人は、2004年には「こくうま/東海漬物」のキムチの販売を開始しており、乙第18号証(株式会社チャネルマネジメントによる日経POSデータに基づく市場状況の調査分析結果)及び乙第19号証(日経POSデータ キムチカテゴリー売上ランキングデータ)によれば、被請求人の「東海/こくうま」キムチは、2005年12月の時点において、日経POSデータに基づくキムチ商品のランキングにおいて売上個数・売上金額ともに第1位となっており、2007年1月の時点においても、全国の全スーパーにおけるキムチ商品のランキングにおいて第1位を占めていることを認めることができる。
7 まとめ
以上を総合してみれば、本件商標は、「こくうま」の文字を縦書きに一連一体に表してなるものであり、外観の点から見た場合には、各文字の不可分一体性が極めて強いものであって、これに接する取引者・需要者が直ちに「こく」の部分と「うま」の部分にわけて印象付けられ、そこから「コク(酷)があって旨い」という観念を持つに至るほど、強い観念表示力を備えた語であるとはいい難いものである。そして、取引の実情に照らしてみても、本件商標の指定商品である「キムチ」について、「こくうま」の語(文字)が同業者により、取引上普通に使用されていたとする事実も認められない。
そうとすれば、本件商標は、その指定商品である「キムチ」との関係においては、商品の品質を暗示する要素を持ちつつも、なお、商品の出所表示力を具備する一連の構成からなる造語と判断するのが相当である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものということはできないから、同法第46条第1項第1号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-12-02 
結審通知日 2008-12-08 
審決日 2008-12-19 
出願番号 商願2005-55847(T2005-55847) 
審決分類 T 1 11・ 13- Y (Y29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深沢 美沙子 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 小林 由美子
久我 敬史
登録日 2007-01-26 
登録番号 商標登録第5020651号(T5020651) 
商標の称呼 コクウマ 
代理人 平野 謙二 
復代理人 三木 亨 
代理人 藤田 隆 
代理人 横井 知理 
代理人 飯島 歩 
代理人 大南 匡史 
代理人 田中 亜希 
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