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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 125
管理番号 1206789 
審判番号 取消2008-301033 
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-08-12 
確定日 2009-11-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第1796925号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1796925号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和55年2月22日に登録出願され、後掲のとおり、「CONSCIOUS」の欧文字と、その下段に小さく「コンシャス」の片仮名文字とを二段に表した構成からなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、昭和60年7月29日に設定登録がされたものである。
本件商標の指定商品については、平成10年2月18日付けの商標権一部取消し審判の確定登録及び平成17年9月7日付けの指定商品の書換登録により、最終的に第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」ほか、第9類、第20類、第22類及び第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品となったものである。
また、当該商標権は、2回に亘り存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成20年8月25日である。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品のうち、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
請求人が調査したところによれば、本件商標は、その書換登録後の指定商品のうち、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」について、継続して3年以上日本国内において商標権者により使用された事実は発見されなかった。
また、本件商標について、専用使用権又は通常使用権の登録もされておらず、使用権者による使用の事実も認められない。

2 弁駁の理由
被請求人の提出に係る使用証拠には、商標法第50条第1項所定の要件である指定商品についての登録商標又は登録商標と社会通念上同一の商標の使用を証明するものとはいえない。
以下、答弁書の記載に即して答弁に対する認否も含め、具体的に述べる。
(1)本件商標について
本件商標の使用の事実及び使用時期についての被請求人の主張は、その使用証拠(乙第2号証ないし乙第6号証)とともに疑義があり、請求人はこれを争う。
被請求人は、本件商標が商標権者の製造・販売する「洋服、コート」のプライベートブランドとして長年に亘り使用し続けているものである旨述べるが、請求人の調査によれば、「CONSCIOUS」ブランドは約5年前に廃盤となり、その後は商品展開されていないことが判明している。
(2)使用証拠について
(ア)乙第2号証の1の「生産指示書」には発行者の記載がなく、誰が誰に生産を指示するものかについては答弁書にも説明されておらず、おそらく商標権者の内部文書であると解される。しかし、内部文書に本件商標が記入されたとしても何ら業務上の信用が蓄積するものではなく、商標法上の商標の使用には該当しない。
乙第2号証の1において、本件商標に関する部分は左下の「摘要欄」に「コンシャスネーム」の手書き文字、その下の「販促区分」の欄に「モリエ別注(コンシャス) 納品商標CONSCIOUS」の手書き文字、また右上の「デザイン画のりしろ」の欄のデザイン画の下部分に「CONSCIOUS」と手書き文字が記されている。ところが、左上の「ブランド名」の部分には「Nouque」とあるところ、これは、商標権者の登録商標(登録第4834740号商標:甲第2号証)であり、この登録商標が商標権者のブランドとして使用されていることは、インターネットのショッピングサイト「MONICAオンラインショップ」のホームページ(甲第3号証)の記載からも裏付けられる。
ブランド名が商標権者の自社ブランド「Nouque」である洋服を生産するのに、生産指示書に何故「コンシャス」「CONSCIOUS」の手書き文字が散見されるのか不可解である。また、「モリエ別注(コンシャス) 納品商標CONSCIOUS」の手書き文字が何故「販促区分」の欄に記載されているのかも不可解である。これらの文字は、筆跡を見る限り、同一人によって記入されたものと見受けられるが、記入欄や記入位置を見ても必然性がなく唐突であって、とってつけたような印象を免れない。
そして、「取引書類」に注文書や納品書、領収書、請求書等が含まれると解されるのは、これらの書類にあらかじめ商標が印刷等されているような場合をいうのであり、後から個別的に記入された文字は広告的使用の対象となる商標とはいえないことはいうまでもない。このことは乙第2号証の2、乙第3号証の1及び2についても同様である。
(イ)乙第2号証の2の計算伝票は、商標権者から株式会社モリエに交付されたものとされる。ここでは「コンシャス」の文字が「受注番号」の欄に記載されていることも不可解であるが、答弁書にもこの点について何ら説明されていない。「コンシャス」の文字が「受注番号」として記入されている以上、「洋服」等について商標として使用されたという証拠とはなり得ないことは明らかである。
(ウ)乙第2号証の3の意見書においては「下札商標」という言葉が使用されているところ、「下札商標」なる語がいかなるものを意味するのかは不明であり、また説明もされていない。あえて「下札商標」なる語を使用している点に疑問がある。
そもそも、納品された当該洋服は上述のとおり「Nouque」のブランド商品である以上、本件商標の記載された襟ネームやラベルが実際に縫い付けられていたとすれば、それをわざわざ剥離して別の襟ネーム等を縫い付けるのは不自然であるばかりか、何よりも「Nouque」は商標権者自らのブランドであるのだから、自ら縫い付ければすむはずである。
このような文書は、通常、当事者(商標権者)の側で用意作成し、依頼を受けた第三者が記名・押印するものであって、当該第三者の側で自ら作成するものではない。真に本件商標が使用されたのであればそのとおりに記載すれば足りるにもかかわらず、何故「下札商標」なる文言が使用されたかは不明である。
(エ)乙第3号証の1は防寒コートに係る生産指示書とされ、乙第2号証の1と同様の内部文書と解される。乙第3号証の2は2枚の生産指示書から構成されるが、いずれも左上部の「ブランド名」には「レリアン」との記載があり、レリアンブランドの衣料の生産指示書であると推察される。そして2枚とも、左下部の「販促区分」の欄に「小売ネーム CONSCIOUS」の手書き文字があるが、乙第2号証の1のように、「摘要欄」や「デザイン画のりしろ」の部分には記入されておらず、両者の間にまったく整合性・一貫性がない。いずれにせよ、乙第3号証の1も乙第2号証の1と同様の内部文書であり、前記と同様の理由で使用証拠とはなり得ない。
(オ)乙第3号証の2も乙第2号証の2と同様の計算伝票であるが、「コンシャス」の文字が「受注番号」の項目に記入されているのみであり、同様の理由で使用証拠とはなり得ない。なお、「ヌーク」とは乙第2号証の1に示された商標権者のブランド名「Nouque」のことであると思われる。
(カ)乙第4号証の1ないし3は、「CONSCIOUS」ブランドを表示した織りネーム及び下げ札を付した「防寒コート」(実物)の写真とされ、それを見る限りそのとおりであることは理解されるものの、これらがいつ使用されたのかは一切明らかでなく、撮影日・撮影者の説明もない。
また、乙第4号証の1に示されたコートは乙第3号証の1の生産指示書のデザイン画のもののようにも見えるが、答弁書にはその旨の説明はされていない。
なお、乙第3号証の1の商品は「レリアン」ブランドで販売されるはずのものであるから「CONSCIOUS」ブランドが付されていることは却って不自然である。また、商標権者が「CONSCIOUS」ブランドの商品を約5年前まで製造販売していたことは請求人も確認しているのであり、その当時の商品の写真である可能性が高いものと解される。
(キ)乙第5号証は「CONSCIOUS」ブランドを表示した下げ札の実物とされるが、かつて使用していた当時の下げ札が残存していても何ら不思議ではない。
(ク)乙第6号証の1は、商標権者が2007年に販売した「CONSCIOUS」ブランドのシフォンスカートが、インターネットのYAHOOオークションに出品されたものとされるが、当該シフォンスカートが2007年に販売されたと主張するのはいかにも無理がある。なお、この商品は現時点でも入札されずに売れ残っており、出品が自動延長されていることから、このような事態を延々と繰り返して時間が経過したものとも考えられる。
(ケ)乙第6号証の2は、商標権者販売の「CONSCIOUS」ブランドのジャケットがオークションに出品されたことを示すものとされるが、オークションへの出品行為は商品の譲渡のための展示に該当し得るとしても、当該行為のすべてが商標の使用に該当するわけではない。とりわけYAHOOオークションをはじめとするインターネットオークションでは、業者が現金調達目的で出品することもあるが、最終消費者である一般個人の手元にある不用品が換金目的で気軽に出品されることが非常に多く、ブームになっているほどである。一般消費者が使用権者であると主張するのであれば、それは無理な理屈である。
(3)結論
上述のとおり、提出された使用証拠を総合すれば、所定の期間内に本件商標の使用はなかったと判断されるべきものと思料する。

第3 当審における被請求人に対する審尋
1 平成20年10月7日付け審判事件答弁書に添付された乙第4号証の2及び乙第4号証の3に対応する取引書類(注文伝票、納入伝票、請求書、領収書等)を提出されたい。
なお、同日付け審判事件答弁書に添付された乙第3号証の1(特に、1枚目)は、乙第4号証の1に対応するものと認められるが、乙第4号証の2及び乙第4号証の3に対応する取引書類の提出がない。

2 同日付け審判事件答弁書に添付された乙第5号証の「CONSCIOUS」の文字を表した商標を表示した下げ札についての注文書、納品書、請求書、領収書等を提出されたい。

3 同日付け審判事件答弁書に添付された乙第2号証の1及び乙第3号証の1について、商標が2つあるのは何故かについて説明されたい。
すなわち、乙第2号証の1の左上のブランド名の欄に「Nouque」とあるのに、左下の摘要欄に「コンシャスネーム・・・」、販促区分の欄に「モリエ別注(コンシャス) 納品商標 CONSCIOUS」、右側のデザイン画のりしろの欄に「CONSCIOUS」と記載されている点について説明されたい。
また、乙第3号証の1の1枚目、生産指示書(管理No.8068003)について、左上のブランド名の欄に「レリアン」、左下の摘要欄に「レリアンオリジナルネーム・・・レリアンNo・・・」とあるのに、左下の販促区分の欄に「小売ネームCONSCIOUS」と記載されている点について説明されたい。なお、乙第3号証の1の2枚目、生産指示書(管理No.8068006)についても同様である。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 第1回答弁の要旨
本件商標については、これと社会通念上同一と認められる商標を取消請求に係る指定商品中の「洋服、コート」について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が使用していたものである。
(1)本件商標について
本件商標は、商標権者が、同人の製造・販売する「洋服、コート」のプライベートブランドとして、本件審判請求の登録前3年以内はもとより、長年に亘り使用し続けているものである。
(2)本件商標の使用の事実および使用時期について
乙第2号証の1は、「洋服」の生産指示書であり、乙第2号証の2は、当該生産指示書に従って製造した洋服を、2008年5月21日に「株式会社モリエ」(愛知県稲沢市天池五反田町1番地)に納品した納品伝票である。
また、乙第2号証の3は、個別の受領書が発行されていないため、「CONSCIOUS」ブランドを付した上記「洋服」が、上記期日に「株式会社モリエ」に納品されたことを同人が証明するものである。
乙第3号証の1は、「防寒コート」の生産指示書であり、乙第3号証の2は、2007年11月5日に、当該「防寒コート」を商標権者の直営販売店に納品した納品伝票である。
乙第4号証の1ないし3は、「CONSCIOUS」ブランドを表示した織りネーム及び下げ札を付した「防寒コート」(実物)の写真である。
乙第5号証は、「CONSCIOUS」ブランドを表示した下げ札の実物である。
乙第6号証の1は、商標権者が2007年(昨年)販売した「CONSCIOUS」ブランドのシフォンスカートが、インターネットオークションに出品されたものであり、乙第6号証の2は、前記オークションのほか、商標権者販売の「CONSCIOUS」ブランドのジャケットがオークションに出品されたことを示すものである。
(3)小括
乙第1号証ないし同第6号証を総合すれば、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標「コンシャス」「CONSCIOUS」を「洋服、コート」について使用していたことは明かである。
(4)結論
本件商標は、取消請求に係る指定商品中の「洋服、コート」について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者により使用されていたものであるから、その登録を商標法第50条の規定により取り消すべきものではない。

2 弁駁及び審尋に対する被請求人の第2回答弁の要旨
(1)乙第2号証1ないし4について
乙第2号証の商品「ブラウス」は、もともとは「Nouque」商標の商品として被請求人が製造、販売しているものであるが、これと同一の商品について、得意先の「株式会社モリエ」より生産の依頼を受けたものである。
そして、当該「ブラウス」は、「Nouque」商標の商品と価格設定(安価)が異なるため、「Nouque」は使用せず、「CONSCIOUS(コンシャス)」商標を付すこととしたものである。
したがって、生産指示書(乙第2号証の1)における「コンシャスネーム&下札」、「モリエ別注(コンシャス)納品商標CONSCIOUS」及びデザイン画の欄の「CONSCIOUS」の文字の記載は、「Nouque」商標の使用をする「ブラウス」と同じものを生産し、その商品の織りネームや下げ札に、「Nouque」に替えて「CONSCIOUS」商標を付すように指示したものである。
本件商標の使用の事実は、「CONSCIOUS」商標を付した「ブラウス」の生産を、「生産指示書」(乙第2号証の1)に基づいて、「株式会社アオキ繊維」に平成20年3月25日に発注し、その「ブラウス」が被請求人に平成20年5月7日に納品(第2答弁書に添付の乙第2号証の4)され、さらに、当該「ブラウス」が、被請求人により「株式会社モリエ」に平成20年5月21日に納品(乙第2号証の2)されたことで証明される(当該「ブラウス」は、買取商品であるため返品はなく、現品又はその写真の保管はない。)。
なお、「意見書」(乙第2号証の3)は、「CONSCIOUS」商標を使用した「ブラウス」が、被請求人により「株式会社モリエ」に、平成20年5月21日に納品された事実を証明するものであるが、その事実を証するものとして文面が不明確であるならば、再度「証明書」を提出する用意がある。
(2)乙第3号証の1及び2について
(ア)乙第3号証の商品「防寒コート」は、「株式会社レリアン」(東京都世田谷区瀬田5-39-20)の委託により、被請求人がOEM商品として製造し、納品したものである。
当該「防寒コート」は、季節商品であるため、販売シーズンが終了すると売れ残った商品の返品がある。そして、被請求人は、この返品された商品を主に在庫処理として販売するものであるが、その際、「株式会社レリアン」との取り決めで「レリアン」商標を使用することが出来ないため、「CONSCIOUS」商標の織りネーム・下げ札に付け替えて販売するものである。
したがって、上記のような方法で在庫品を販売することは、この種業界においては、普通に行われているところであり、工場に織りネーム・洗濯ネーム・下げ札などの取り替えを指示するため、「生産指示書」に返品商品の商標を「小売ネーム/CONSCIOUS」と表示することは何ら不自然なものではない。
また、乙第3号証の2及び乙第8号証の2(計算伝票)は、被請求人の直営店「U・NET(ユーネット)」(東京都文京区大塚4-48-7)で一般消費者に販売した売上げを、被請求人の売上げとして計上するために発行している売上伝票であるが、当該「計算伝票」の「受注番号」の欄に商標が記載されているのは、他の「品名」等の欄との広さの関係によるものであるから、それが特に問題とされるようなものではない。
なお、乙第3号証と乙第4号証(「防寒コート」の実物写真)の対応関係が必ずしも明確ではなかったため、新たに乙第3号証の3として、下げ札の表裏及び洗濯ネーム部分を撮影した「防寒コート」の実物写真を提出する。
以上を総合すれば、「CONSCIOUS」商標を付した、「管理No.8068003」とする「防寒コート」(乙第3号証の3)が、被請求人により、2007年(平成19年)11月5日と2008年(平成20年)1月31日に販売されたことが証明される。
(イ)乙第3号証の1(2枚目)については、実物が見当たらないため写真を提出できないが、前記(ア)の「防寒コート」と同様の商品として販売されたものであって、「計算伝票」(乙第3号証の2、乙第8号証の2)を併せみれば、「CONSCIOUS」商標を付した、「管理No.8068006」とする「防寒コート」が、被請求人により、2007年(平成19年)11月5日と2008年(平成20年)1月31日に販売されたことは明らかである。
(ウ)被請求人は、「CONSCIOUS」商標の使用の事実を証明するため、さらに、乙第7号証の1ないし3、乙第8号証の1ないし3を提出する。
乙第7号証及び同第8号証の「防寒コート」は、前記(ア)の「防寒コート」と同様の商品として販売されたものであるが、「CONSCIOUS」商標を付した、「管理No.8068013」とする「防寒コート」(乙第7号証の3)及び「管理No.8068025」とする「防寒コート」(乙第8号証の3)が、被請求人により、2007年(平成19年)11月5日(前者)と、2008年(平成20年)1月31日(後者)に販売されたことが証明される。
(3)乙第5号証について
乙第5号証における「CONSCIOUS」商標を表示した下げ札は、数年前に、「株式会社三景」(東京都江東区東雲1-7-12)に依頼し、約30,000枚作成したものである。
そして、「株式会社三景」が作成する、上記下げ札を含めた被請求人の衣料・服飾資材は、同社により保管及び在庫管理がなされ、必要に応じ各工場(例えば、乙第2号証における「株式会社アオキ繊維」の工場)に納品されるものであり、その在庫状況は被請求人に定期的に報告されるものである。
乙第9号証は、「株式会社三景」より被請求人に報告された在庫表(棚卸表)であるが、この在庫表により、「CONSCIOUS(コンシャス)」商標を表示した「下げ札」の在庫が、平成20年8月時点で11,900枚、同年9月時点で11,869枚、同年10月時点で11,759枚、平成21年3月時点で9,113枚、同年4月時点で8,923枚であり、「CONSCIOUS(コンシャス)」商標の織りネームの在庫が、平成20年8月時点で5,739枚、同年9月時点で4,737枚、同年10月時点で4,235枚、平成21年4月時点で3,933枚であることが認められる。
(4)乙第10号証について
被請求人の直営店たる「U・NET(ユーネット)」(東京都文京区大塚4-48-7)の店頭と内部を撮影した写真を参考資料として提出する。
当該店舗の写真は、被請求人が平成21年5月14日に撮影したものであって、既に夏物の商品に入れ替わっているため、店舗内に乙第3号証、同第7号証及び同第8号証に対応する「防寒コート」は展示されていないが、「CONSCIOUS(コンシャス)」商標を付した「洋服、ブラウス」等の夏物の商品が展示、販売されていることがわかる。
(5)結論
「CONSCIOUS(コンシャス)」商標は、新規商品の商標として使用されるものではなく、主に返品された商品を在庫処理のために販売する際に、その商品の商標(時には、乙第2号証における商品の商標として使用するような場合もある。)として使用するものであるが、乙第1号証ないし同第10号証により、当該「CONSCIOUS(コンシャス)」商標が「洋服,コート,ブラウス」等について、本件審判請求の登録前3年以内はもとより、現在まで長年に亘り被請求人により使用されているものであることは明らかである。
したがって、「請求人の調査によれば、『CONSCIOUS』ブランドは約5年前に廃盤となり、その後は商品展開されていないことが判明している。」旨の請求人の主張は、何ら根拠のないものであり到底認めることはできない。

第5 当審の判断
1 提出された証拠について
(1)乙第2号証の1は、生産指示書と認められるところ、左上の「管理No.」の欄に「5783007」の文字、「工場名」の欄に「アオキ繊維」の文字、ブランド名の欄に「Nouque」の文字、デザインNo.の欄に「BB38307」の文字、数量の欄に「300」の文字、品名の欄に「C/S」の文字、納期の欄に「5/8」の文字が記載されている。
また、その下の、カラーの欄に「A」「B」「C」の各文字が表示され、「A」の欄には「01」の文字、「B」の欄には「26」の文字、「C」の欄には「67」の文字が記載されており、サイズ別指示数の欄には、カラーのA、B及びCともに「9-46」「11-46」「13-8」の各文字が記載され、数量の欄にはカラーのA、B及びCともに、「100」の文字が記載されている。
左下の摘要欄には、「納期:5/8」の文字、「サイズ:9:11:13」の文字、「4404」の文字、「コンシャスネーム&下札」の文字、「A41/41/6 B41/41/6 C41/41/6」の文字及び二段に表され円で囲まれた「残」及び「ヌーク」の文字が記載されている。
販促区分の欄には、「モリエ別注(コンシャス)」の文字及び「納品商標CONSCIOUS」の文字が記載されている。
中央から右側にかけて「20年3月25日」の文字、伝票No.の欄に「29084」の文字、管理No.の欄に「5783007」の文字及び工場コードの欄に「1505」の文字が記載されている。
右側のデザイン画のりしろの欄には、「BB38307」の文字、商品「ブラウス」のデザイン画、「CONSCIOUS」の文字及び「5783007」の文字が記載されている。
(2)乙第2号証の2は、2枚の計算伝票と認められるところ、1枚目の上段左から「(株)モリエ 殿」の文字、「日付080521」の文字、「株式会社一珠」の名称、住所、郵便番号、電話番号が記載されている。1枚目の中段左から管理番号の欄に「5783007」の文字、受注番号の欄に「コンシャス」の文字、数量の欄に「176」の文字、単価の欄に「4070」の文字が記載されている。
乙第2号証の2の2枚目については、1枚目と同様であるが、数量の欄に「88」の文字が記載されている。
(3)乙第2号証の4は、加工上り伝票控と認められるところ、左上から「20年5月7日」の文字、工場名の欄に「株式会社アオキ繊維」の文字、職出No.の欄に「29084」の文字、品名の欄に「C/S」の文字、品番の欄に「5783007」の文字及び総枚数の欄に「300」の文字が記載されている。乙第2号証の4の摘要には、「モリエ別注」の文字及び「4404」の文字が記載され、「’08.5.07」の文字及び「株式会社一珠」の文字が記載された受領印並びに「(株)一珠」の文字、「’20.5.07」の文字及び「坪田」の文字が記載された受領印が押印されている。
(4)乙第3号証の1は、生産指示書と認められるところ、1枚目の左上の「管理No.」の欄に「8068003」の文字、ブランド名の欄に「レリアン」の文字、数量の欄に「331」の文字、納期の欄に「11/13 12/5」の文字が記載されている。
また、その下のカラーの欄には、「A」「B」「C」の各文字が記載されている。
左下の摘要欄には、「レリアンオリジナルネーム(黒・大)」の文字、「検品ラベル、残布袋(大)、タグピン」の文字、「レリアンNo」の文字、「9、11-0790153」の文字「13+(記号の+は数字の13の右肩に小さく表されている。)、15+(記号の+は数字の15の右肩に小さく表されている。)-1790153」の文字が記載されている。販促区分の欄には、「フォロー企画(91W)」の文字、「小売ネーム」の文字、「CONSCIOUS」の文字が記載されている。
中央から右側にかけて「18年10月24日」の日付け、管理No.の欄に「8068003」の文字及び工場コードの欄に「1631」の文字が記載されている。中央には、表地の品質の欄に「ポリエステル100%」の文字、裏地の欄に「キュプラ100%」「中わた」「ポリエステル100%」の各文字が記載されており、その右側には、「11/10(金)検品分 9、13+各1点 一珠着」の文字が記載されている。
(5)乙第3号証の2は、計算伝票と認められるところ、上段左から「U・NET(新大塚) 殿」の文字、日付「071105」の文字、「株式会社一珠」の名称、住所、郵便番号、電話番号が記載されている。中段4行目の左から管理番号の欄に「8068003」の文字、受注番号の欄に「コンシャス」の文字、数量の欄に「1」の文字、単価の欄に「19000」の文字が記載されている。
(6)乙第3号証の3は、商品「防寒コート」の写真(3枚)と認められるところ、1枚目の「防寒コート」の襟首には、商標「CONSCIOUS(最後のSの文字は、半分以上隠れている。)」が表示されており、下げ札の表面には商標「CONSCIOUS」が表示されている。
2枚目の「防寒コート」の襟首には、商標「CONSCIOUS(最後のSの文字は、半分以上隠れている。)」が表示されており、下げ札の裏面には、「NO. 8068003」の文字、「サイズ 13+」の文字、「カラー B」の文字、「表地 ポリエステル 100%」の文字、「裏地 キュプラ 100%」の文字、「中わた ポリエステル 100%」の文字、「(株)一珠 日本製 1631」の文字が記載されている。
3枚目の「防寒コート」の内側には、「MADE IN JAPAN」の文字、「IC-1790153」の文字、「8068003」の文字、「13+SIZE」の文字及び「1631」の文字が記載された布が縫い付けられており、下げ札の裏面には、1枚目と同様の表示がされている。
(7)乙第7号証の1は、生産指示書と認められるところ、左上の「管理No.」の欄に「8068013」の文字、「工場名」の欄に「藤沼縫製栃木工場」の文字、ブランド名の欄に「レリアン」の文字、数量の欄に「240」の文字、納期の欄に「11/13 12/5」の文字が記載されている。
また、その下のカラーの欄には、「A」「B」「C」の各文字が記載されている。
左下の摘要欄には、「レリアンオリジナルネーム(黒・大)」の文字、「検品ラベル、残布袋(大)、タグピン」の文字、「レリアンNo」の文字、「9、11-0790291」の文字「13+(記号の+は数字の13の右肩に小さく表されている。)、15+(記号の+は数字の15の右肩に小さく表されている。)-1790291」の文字が記載されている。販促区分の欄には、「フォロー企画(91W)」の文字、「小売ネーム」の文字、「CONSCIOUS」の文字が記載されている。
中央から右側上部にかけて「18年11月7日」の日付け、管理No.の欄に「8068013」の文字及び工場コードの欄に「1623」の文字が記載されている。中央には、表地の品質の欄に「ポリエステル100%」の文字、「テープ レーヨン75% 麻25%」の文字、裏地の欄に「ポリエステル100%」「中わた」「ポリエステル100%」の各文字が記載されており、その右側には、「11/11一珠着」及び「(プレス済みで)」の各文字が記載されている。
(8)乙第7号証の2は、計算伝票と認められるところ、上段左から「U・NET(新大塚) 殿」の文字、日付「071115」の文字、「株式会社一珠」の名称、住所、郵便番号、電話番号が記載されている。中段5行目の左から管理番号の欄に「8068013」の文字、受注番号の欄に「コンシャス」の文字、数量の欄に「1」の文字、単価の欄に「15000」の文字が記載されている。
(9)乙第7号証の3は、商品「防寒コート」の写真(3枚)と認められるところ、1枚目の「防寒コート」の襟首には、商標「CONSCIOUS」が表示されており、下げ札の表面にも商標「CONSCIOUS」が表示されている。
2枚目の「防寒コート」の襟首には、商標「CONSCIOUS」が表示されており、下げ札の裏面には、「NO. 8068013」の文字、「サイズ 9」の文字、「カラー A」の文字、「表地 ポリエステル 100%」の文字、「テープ レーヨン 75%」の文字、「麻 25%」の文字、「裏地 ポリエステル 100%」の文字、「中わた ポリエステル 100%」の文字、「(株)一珠 日本製 1623」の文字が記載されている。
3枚目の「防寒コート」の内側には、「MADE IN JAPAN」の文字、「ICー0790291」の文字、「8068013」の文字、「9 SIZE」の文字及び「1623」の文字が記載された布が縫い付けられており、下げ札の裏面には、1枚目と同様の表示がされている。
(10)乙第9号証は、(株)三景から商標権者に報告されたブランド「コンシャス」に関する下げ札等の在庫表(棚卸表)」と認められるところ、コードNo.1008908の下げ札の在庫は、平成20年8月から同年10月までは11,618枚で変わらないものの、平成21年3月には9,113枚、同年4月には8,923枚になっている。
コードNo.1000698の下げ札の在庫は、平成20年8月には282枚、同年9月には251枚、同年10月には141枚、平成21年4月には0枚になっている。
コードNo.1000697のネームの在庫は、平成20年8月には5,739枚、同年9月には4,737枚、同年10月には4,235枚、平成21年3月及び同年4月には3,933枚になっている。
なお、乙第9号証には、「Nouque」や「レリアン」の下げ札やネームの在庫の推移についても、「コンシャス」と同様に記載されている。

2 証拠の認定・判断
(1)そこで、商品「ブラウス」について検討すると、乙第2号証の1の「管理No.」、乙第2号証の2の「管理番号」及び乙第2号証の4の「品番」は、いずれも「5783007」となっており一致している。したがって、これらの証拠は、同一商品の取引を表しているものと認めることができる。
乙第2号証の1のサイズ別指示数の欄には、カラーのA、B及びCともに「9-46」「11-46」「13-8」の各文字が記載され、摘要欄には、「コンシャスネーム&下札」の文字、「A41/41/6 B41/41/6 C41/41/6」の文字並びに二段に表され円で囲まれた「残」及び「ヌーク」の文字が記載されている。
ここで、「9-46」「11-46」「13-8」の各文字は、商標権者が生産指示した商品「ブラウス」の9号が46枚、11号が46枚、13号が8枚であることを表すものと認めることができる。
そして、A、B及びCの文字はカラーを表し、摘要欄の「41/41/6」の文字は、9号が41枚、11号が41枚、13号が6枚であることを表すものと認めることができる。
また、「A41/41/6 B41/41/6 C41/41/6」の文字は、「コンシャスネーム&下札」の文字とともに表されており、その下には、「納品商標CONSCIOUS」の文字が存在することから、上記枚数の商品「ブラウス」に「コンシャス」の文字を欧文字で表した「CONSCIOUS」の商標を付するように指示したものと認めることができる。
なお、二段に表され円で囲まれた「残」及び「ヌーク」の文字は、残余の商品に「ヌーク」の文字を欧文字で表した「Nouque」の商標を付するように指示したものと推認することができる。
そして、乙第2号証の1の摘要欄に記載された「A41/41/6 B41/41/6 C41/41/6」の数字を合計した264(41+41+6+41+41+6+41+41+6)は、乙第2号証の2の2枚の計算伝票の数量を合計した264(176+88)と一致する。
したがって、乙2号証の1、乙第2号証の2及び乙第2号証の4を総合すれば、商標権者は、平成20年3月25日付けで株式会社アオキ繊維に対し、「管理No.5783007」の商品「ブラウス」300枚の生産を指示し、生産された商品「ブラウス」を平成20年5月7日に同社から受領し、平成20年5月21日に株式会社モリエに対し、300枚のブラウスうち264枚について、「CONSCIOUS」の商標を付して販売したものと認めることができる。
(2)次に、商品「防寒コート」について検討すると、乙第3号証の1、乙第3号証の2、乙第3号証の3及び乙第8号証の2によれば、「管理No.」、「管理番号」及び「NO.」は、いずれも「8068003」となっており一致していること、材質が「表地 ポリエステル 100%」、「裏地 キュプラ 100%」及び「中わた ポリエステル 100%」となっており一致していること、工場名コード「1631」が一致していること、乙第3号証の1(1枚目)の摘要欄に記載された「1790153」と乙第3号証の3(3枚目)の防寒コート(サイズ13+)の内側に縫い付けられた「IC-1790153」の数字部分が一致していることから、これらの証拠は、同一商品の取引を表しているものと認めることができる。
乙第3号証の1に記載された「11/10(金)検品分」の文字は、「防寒コート」が生産された平成18年以降で11月10日が金曜日であるのが、平成18年以外に存在しないことから、平成18年11月10日を表したものと認めることができる。
したがって、乙第3号証の1、乙第3号証の2、乙第3号証の3及び乙第8号証の2によれば、商標権者は、平成18年10月24日付けで「管理No.8068003」の商品「防寒コート」の生産を指示し、当該商品を平成18年11月10日に検品し、平成19年(2007年)11月5日と平成20年(2008年)1月31日にU・NET(新大塚)へ各1着ずつ販売しているものと認めることができる。
(3)乙第7号証の1、乙第7号証の2及び乙第7号証の3によれば、「管理No.」、「管理番号」及び「NO.」は、いずれも「8068013」となっており一致していること、材質が「表地 ポリエステル 100%」、「テープ レーヨン 75%」、「麻 25%」、「裏地 ポリエステル 100%」、「中わた ポリエステル 100%」となっており一致していること、工場名コード「1623」が一致していること、乙第7号証の1の摘要欄に記載された「0790291」と乙第7号証の3(3枚目)の防寒コート(サイズ9)の内側に縫い付けられた「IC-0790291」の数字部分が一致していることから、これらの証拠は、同一商品の取引を表しているものと認めることができる。
これらの証拠によれば、商標権者は、平成18年11月7日付けで藤沼縫製栃木工場に「管理No.8068013」の商品「防寒コート」の生産を指示し、当該商品を同年11月11日に受領し、平成19年(2007年)11月15日にU・NET(新大塚)へ1着販売しているものと認めることができる。
(4)また、乙第3号証の1、乙第3号証の2、乙第3号証の3、乙第7号証の1、乙第7号証の2、乙第7号証の3及び乙第8号証の2によれば、平成18年秋に生産された商品「防寒コート」が、平成19年11月と平成20年1月に販売されていることから、これらの商品「防寒コート」は、売れ残った商品(在庫品)を翌シーズンに販売したものと認めることができる。
(5)「商標コンシャスに関する下げ札等の在庫表(棚卸表)」(乙第9号証)によれば、「コンシャス」の商標を付した下げ札やネームの在庫は、少しずつ減っていることからも、本件商標の使用を否定できないものである。
(6)商標の同一性
乙第2号証の1、乙第3号証の1(1枚目)、乙第3号証の3(1枚目)、乙第7号証の1及び乙第7号証の3(1枚目及び2枚目)に表された「CONSCIOUS」の文字は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができる。
また、乙第2号証の1、乙第2号証の2(1枚目及び2枚目)、乙第3号証の1(1枚目)、乙第3号証の2、乙第7号証の2及び乙第8号証の2に表された「コンシャス」の文字も本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができる。

3 結論
そうしてみると、被請求人は、商標権者が本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る商品中の「洋服」に属する「ブラウス」及び「コート」に属する「防寒コート」について、その使用を証明し得たものというべきである。
なお、請求人は、被請求人又は株式会社モリエについて証人尋問の申請を行う用意がある旨述べているが、被請求人より提出された各文書により上記のとおり判断し得るところであるから、これを採用しなかった。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 後掲
本件商標(色彩については原本を参照)




審理終結日 2009-06-05 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-23 
出願番号 商願昭55-12088 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (125)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 鈴木 修
井出 英一郎
登録日 1985-07-29 
登録番号 商標登録第1796925号(T1796925) 
商標の称呼 コンシャス 
代理人 青木 篤 
代理人 原 隆 
代理人 田島 壽 
代理人 為谷 博 
代理人 成合 清 

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