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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z03
管理番号 1205248 
審判番号 取消2008-301496 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-11-28 
確定日 2009-10-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4521869号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4521869号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4521869号商標(以下「本件商標」という。)は、「エヴィデンス」の片仮名文字と「EVIDENCE」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成12年10月18日に登録出願、第3類「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として、同13年11月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権利者、専用使用権者又は常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)まず、商標法の趣旨は、第1条によれば、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」とされている。
そして、商標は、商標が付された商品についての自他識別機能をはじめとする、出所表示機能を有するとともに、当該商品についての品質保証機能や宣伝広告機能をも有するものであるとされ、これら商標の使用を通じて、市場における需要者及び取引者に当該商標の認識がなされ、それにより信用が化体する商標を保護することが商標法の趣旨であると解されている。
以上より、商標法上保護されるべき商標とは、需要者及び取引者の信用が化体しうるものであって、そのためには、自ずと前述の商標機能を満たす態様での商標使用が求められる。
そのためには、少なくとも市場での商取引を通じて商品が流通する必要があり、そのような商標の使用でなければ商標法上保護されるべき商標とはいえないと解すべきである。
(2)次に、商標法上の商標とは、標章を業として具体的商品及び役務に使用することをいう(商標法第2条第1項)。また、同法同条第3項には、商標の使用に関する定義規定が置かれており、商標の使用が認められるためにはこれらに規定される使用である必要がある。
しかし、商標法第2条第3項の使用だけでなく、前述のとおり商標機能を導く商標的態様での使用が要求され、この態様での使用がなければ商標法上の使用でないと特許庁及び判例でも示されている(東京高裁平成16年(行ケ)第404号他)。
また、「商品」についてであるが、商標法上は、「商品」について定義していない。しかし、商標法上の「商品」とは、商取引の目的物として流通性のあるもの、すなわち、一般市場で流通に供されることを目的として生産される有体物であると解されている(東高判昭和63年3月29日 天一事件控訴審)。
この定義からは、商標法上の商品といえるためには商取引の目的物、つまりそれ自体が直接の商取引の対象物になっており、市場において転々流通する有体物ということができる。
このように示されているのは前述のような態様(例えば、商標法上の商品に自他識別標識としての使用)でなければ、需要者及び取引者の信用が商標に化体することはなく、出所の混同等も起こりえず、商標法上保護しうる信用を毀損することにつながらないためこのような態様での使用が要請されていると解されている。
以上を踏まえ、以下被請求人提出の証拠書類について反論する。
ア 乙第1号証及び乙第2号証ついて
当該証拠書類は、「スキンクリーム」の包装用容器デザイン案の表示がなされている。
しかし、これらは、本件商標の一部である「EVIDENCE」を使用した包装用容器デザイン案の表示であり、これらは、未だデザインの段階であって、その商品自体が商取引の対象になっているとはいえず市場での流通が認められないものである。よって、これは、商標法上の商品とはいえないと考えるのが相当である。
また、このような包装容器のデザイン案の段階では、商品との関係で自他識別力を生じるような商標の使用でないと考えられるのが相当である。
需要者及び取引者に当該商標の認識がなされ、それにより信用が化体する前述の商標機能を満たす使用であるといえず、いわゆる商標の前段階であって商標法上保護されるべき商標の使用ではない。
また、そもそも、商品だと認められたとしても未だ実際に商品を包むのに用いられていない包装用紙等は含まれない。つまりパッケージデザインの段階では、商標法上の使用に該当しない(商標法第2条第3項各号)。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類となり得ない。
イ 乙第3号証について
当該証拠書類は、乙第1号証及び乙第2号証の作成請負者の作成した「請求書」である。
まず、これをもって「現実に」本件商標又はこれと社会通念上同一視しうる商標が本件審判の請求の登録前3年以内に「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」について使用されていたことの認識はできず証拠資料とはなり得ない。
そして、これらは、本件商標の一部である「EVIDENCE」を使用した包装用容器デザイン案の表示であり、これらは、未だデザインの段階であって、その商品自体が商取引の対象になっているとはいえず市場での流通が認められないものである。よって、これは、商標法上の商品とはいえないと考えるのが相当である。
このような包装容器のデザイン案の段階では、商品との関係で自他識別力を生じるような商標の使用でないと考えられるのが相当であり、このデザイン案作成に関する請求書も同様商標の使用でないと考えられる。
そもそも、当該証拠書類である請求書には、品名等商品を特定する表記は特段なされておらず、本件を自他識別標識として使用しているとはいえない。
つまりこれは、ブランドアイデンティティという経営を行う上での会社としての総合ブラントに関する開発であって、あくまでパッケージのデザイン開発等を行った証明にすぎず、「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」における商標の使用の証明にはならない。
なお、商品だと認められたとしても未だ実際に商品を包むのに用いられていない包装用紙等は含まれない。つまりパッケージデザインの段階では、商標法上の使用に該当しない(商標法第2条第3項各号)。
請求人の経験則によれば、通常、その商品用の商標デザイン委託をする場合等は、請求書等には、特定の品名が入るはずであり、特定の商品名等が明記されていないことはそのことを如実に表しているといえる。
そして、本件審判において被請求人の他提出書類(乙第12号証ないし乙第15号証)においては、すべて製品名や資材名が記載されていることを付言する。
加えて、これは、前記同様、いわゆる商標の前段階であり、市場での流通以前の包装容器デザインに対する請求書である。よって、これも商標機能を満たす使用であるとはいえず、いわゆる商標の前段階であって商標法上保護されるべき商標ではない。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類となり得ない。
ウ 乙第4号証及び乙第5号証について
当該証拠書類は、容器の実物が存在していたことを示す平成21年2月12日付け証明書とのことである。
しかし、まず、証明者は、被請求人と密接な関係にあるものとの強い推認がなされ、当該証明が、被請求人の依頼により作成したものと考えられるから当該証拠の証明力は乏しいといわざるを得ない。したがって、乙第4号証及び乙第5号証は証拠としての客観性を欠き、証拠資料とし証拠能力を有する証明と認められない。
そもそも、証明書の日付は、本件審判の請求の登録日後の2009年2月12日であり、本件審判の請求の登録(審判注:弁駁書には「2008年12月12日」とあるが、誤り、以下「平成20年(2008年)12月16日」とする。)前3年以内の日付でなされたものでないから、本件商標を使用したことの証拠となり得ない。
加えて、当該証拠書類は、2006年10月24日時点でデザインの包装容器の実物があったこと及び被請求人より商品説明を受けたことを証明する書面であり、前述のような商標機能を満たすような商標の使用であるといえない。
市場の流通性がない商品商標の使用を証明しているだけであって商標法上保護されるべき商標の使用とは到底いえない。乙第5号証の写真も同様のことがいえる。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類とはなり得ない。
エ 乙第6号証ないし乙第9号証について
当該証拠書類は、被請求人の内部会議における資料及びメモ書きである。
しかし、これらは、内部会議や個人的なメモ書きであって到底商標法上保護しうる商標であるといえない。
また、そもそも商標法上の商標の使用(商標法第2条第3項各号)に該当していないと考えられる。
このような態様で使用しても、当該商品は、商取引の対象になっているとはいえず市場での流通が未だ認められないものである。よって、これは、商標法上の商品とはいえないと考えるのが相当である。
加えて、市場での取引者及び需要者の認知される可能性及び当該商標に信用が化体することはなく、商標法が保護しうる商標であるとはいえないのは明らかである。
そして、当該証拠書類は、すべて手書きであり、後から日付を入れた可能性も否定できない。このような証拠書類は証明力を有しない。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類とはなり得ない。
オ 乙第10号証について
当該証拠書類は、本件商標の使用計画についての2009年2月9日付け証明書である。
しかし、まず、商標法上の商標の使用(商標法第2条第3項各号)に該当していないと考えられる。
また、このような態様で使用しても、市場での取引者及び需要者の認知される可能性及び当該商標に信用が化体することはなく、商標法が保護しうる商標であるとはいえないのは明らかである。
そもそも、証明書の日付は、本件審判の請求の登録日後の2009年2月9日であり、本件審判の請求の登録(2008年12月16日)前3年以内の日付でなされたものでないから、本件商標を使用したことの証拠なり得ない。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類とはなり得ない。
カ 乙第11号証及び乙第12号証について
当該証拠書類は、本件商標を使用した「スキンローション」に対するデザインに対する見積もり依頼書(乙第11号証)及び見積書(乙第12号証)とのことである。
しかし、これら証拠書類は、包装容器のデザイン案に対する見積もり依頼であり、包装容器のデザイン案の段階では、商品との関係で自他識別力を生じるような商標の使用でないと考えられるのが相当である。
また、そもそも商標法上の商標の使用(商標法第2条第3項各号)に該当していないと考えられる。
これらは、未だデザインの段階であって、その商品自体が商取引の対象になっているとはいえず市場での流通が認められないものである。よって、これは、商標法上の商品とはいえないと考えるのが相当である。
なお、乙第11号証には、「商品サンプル及び企画書をお送りさせていただきます。」との記載があり、当該段階では、デザイン案及び企画段階であることを表しているといえる。
乙第12号証は、デザイン受託者の見積書であるとのことである。
しかし、これは、被請求人のデザイン依頼によりかかる費用をデザイン受託者より出された見積書であって被請求人より出された取引書類ではなく、証拠書類となり得ない。
加えて、当該証拠書類も同様にデザイン案及び企画段階であって、商品との関係で自他識別力を生じるような商標の使用でないと考えられるのが相当である。
そもそも商標法上の商標の使用(商標法第2条第3項各号)に該当していないと考えられる。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類とはなり得ない。
キ 乙第13号証について
当該証拠書類は、見積依頼書であるとのことである。
しかし、当該証拠書類は、明らかに内部文書であり、第三者に提示されていることを証明したものでなく証拠書類となり得ない。
加えて、当該証拠書類も同様にデザイン案及び企画段階のものであって、その商品自体が商取引の対象になっているとはいえず市場での流通が認められないものである。よって、これは、商標法上の商品とはいえないと考えるのが相当であり、商品との関係で自他識別力を生じるような商標の使用でないと考えられるのが相当である。
また、そもそも商標法上の商標の使用(商標法第2条第3項各号)に該当していないと考えられる。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類とはなり得ない。
ク 乙第14号証について
当該証拠書類は、乙第13号証の「見積依頼書」に対する応答文書となる「見積回答書」とのことであるが、本件商標「エヴィデンス\EVIDENCE」が使用されている事実は見受けられない。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類とはなり得ない。
ケ 乙第15号証について
当該証拠書類は、本件商標を使用した「スキンローション」の2008年12月16日付け注文書である。
しかし、当該注文書の日付は、本件審判の請求の登録日後2008年12月16日であり、本件審判の予告日登録前(2008年12月16日)3年以内の日付でなされたものでないから、本件商標を使用したことの証拠なり得ない。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類とはなり得ない。
コ 乙第16号証について
当該証拠書類は、「スキンローション」の容器とのことだが、商標が本件審判の請求の登録前3年以内に「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」について使用されていたことの認識はできず証拠資料とはなり得ない。
当該証拠書類も、使用証明として採用されるべき証拠書類とはなり得ない。
(3)商標法第50条第3項但書き「正当な理由」該当性について
次に、被請求人は、答弁書にて「明確な使用意図があり、計画及び準備を行っていた旨」主張及び証拠書類を提出する。
商標法第50条第3項には「正当な理由」があれば、使用の証明がなされなくても取消を免れる旨規定する。
そこで、以下被請求人が使用できない「正当な理由」が存在するか否かについて検討する。
被請求人は、請求人と同様化粧品メーカーとして経営活動を営むものである。請求人の経験則からも通常であれば、化粧品の研究開発から市場への商品流通までの所要期間は、遅くとも6ヶ月?1年である。また、化粧品業界においては、通常、研究開発を終了し、その商品の特性を把握した上で購買対象者を定める等して最終段階でブランドデザイン等を委託するのが通例である。
そのため、ブランドデザインを委託し、それが採用されれば速やかに商品の市場への流通段階に移行するはずである。
しかし、答弁書で被請求人より市場での販売実績証拠書類等は、一切提出されていない。
被請求人は、例えば、乙第1号証及び乙第2号証において2006年9月及び10月に包装容器のデザインをしているにもかかわらず、その後本件審判の請求の登録前(2008年12月16日)まで市場での販売実績がないというのは、積極的な使用意思がないということであると考えざるを得ない。
必ずしも本答弁書で被請求人は、現在準備段階ではあり、使用がなされていなことに対する「正当な理由」については、述べていない。
しかし、もし主張がされていたとしても、この「正当な理由」が認められる場合として、商標法は、商標権者による商標の現実的使用を重視していることからすると商標権者において登録商標を使用できなかったことが真にやむを得ないと認められる特別の事情がある場合に限られるとされている。
なぜなら、商標法第1条の規定に照らすと、同法は、使用商標の保護を本来の目的としていて、商標権者が登録商標を使用することを保護の前提としているものと解される。
つまり、「正当な理由」による例外は、厳格に解するのが相当であり、例えば正当な理由としては「天災」や「商標の使用を一時的に制限する時限立法」などごく限られた場合のみ認められると判例では示されている。(知財高裁平成17年(行ケ)第10095号)
繰り返しになるが、被請求人より答弁書で現在準備段階ではあり、使用がなされていなことに対する「正当な理由」に関する主張及び証拠書類は、提出されていない。
また、請求人も被請求人と同様化粧品業界に身を置くものであるが特段前述のような「正当な理由」に該当するような事実はなく、使用できなかったことに対する「正当な理由」は存在しないものと確信する。
(4)よって、被請求人の答弁の内容は、特許庁の審決例及び判例に示されるものに反するものであり、本件商標の使用を証明するとは到底いえるものではない。商標の使用というのは、商標法上の商品の出所を指摘するものとして現実に用いられることであるから、純然たる事実問題である。本件答弁において証拠方法としての乙号各証拠は信憑性を欠き、被請求人の主張は失当であり、特段使用できなかったことに「正当な理由」もないから取消しは免れない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。
1 本件商標の使用事実の要点
被請求人「株式会社マーナーコスメチックス」は、本件審判の請求の登録前3年以内に我が国においてその請求に係る指定商品中「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」について、本件商標を使用している。本答弁書においては、「化粧品」についての使用を証明する。
2 本件商標の使用の事実
(1)本件商標の商標法第50条第1項の非該当性について
被請求人は、本件商標の指定商品中の「化粧品」について、商標法第50条第1項に該当しないとの証拠として、乙第1号証ないし乙第16号証を提出する。
ア 乙第1号証は、製品名「EVIDENCE Asitaxanhin Cream」(品番「Fomula No.1 HCL-263」)に係る「包装容器デザイン」である。本製品は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンケアクリーム」に属する。
この「包装容器デザイン」は、2006年9月29日に本デザインの作成請負者「Inter Design」により作成された。なお、作成日2006年9月29日は、「060929」で示される。
この「包装容器デザイン」には、本件商標「EVIDENCE」が記載され、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」を示す「マーナーコスメチックス」の表示がある。
イ 乙第2号証は、製品名「EVIDENCE Asitaxanhin Cream」(品番「Fomula No.1 HCL-263」、「Fomula No.2 HCL-263」、「Fomula No.3 HCL-263」)に係る「包装容器デザイン」である。本製品は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンケアクリーム」に属する。
この「包装容器デザイン」は、2006年10月31日に本デザインの作成請負者「Inter Design」により作成された。なお、作成日2006年10月31日は、「061031」で示される。
この「包装容器デザイン」には、本件商標「EVIDENCE」が記載され、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」を示す「マーナーコスメチックス」の表示がある。
ウ 乙第3号証は、乙第1号証及び乙第2号証の作成請負者「株式会社インターデザイン(Inter Design)」の作成した「請求書」であり、平成18年12月5日に発行された。
この「請求書」には、本件商標「EVIDENCE」が記載され、乙第1号証及び乙第2号証の「包装容器デザイン」の作成依頼者である商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の表示がある。
このように乙第1号証、乙第2号証、乙第3号証は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」から外部の会社に本件商標「EVIDENCE」に係る商品の包装容器デザインが依頼された事実を表し、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」による本件商標「EVIDENCE」の明確な使用意図を示すものである。
エ 乙第4号証は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンケアクリーム」の製品名「EVIDENCE Asitaxanhin Cream」に係る商品の実物が2006年10月24日時点で存在していたことを証明する「証明書」である。
この「証明書」は、有限会社タカラアドを経営する丸山雅万によって作成されたものであり、実際に本件商標を付した容器の実物を商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」から見せられて商品説明を受けた事実を示す。
オ 乙第5号証は、製品名「EVIDENCE Asitaxanhin Cream」(品番「Fomula No.1 HCL-263」)に係る「容器の写真」である。本製品は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンケアクリーム」に属する。
この「容器の写真」は、乙第4号証の証明人である丸山に商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」が見せた商品の実物の写真である。
この「容器の写真」には、本件商標「EVIDENCE」が明確に表示される。必要であれば、実物を提出することも可能である。
このように、乙第1号証ないし乙第5号証は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により指定商品中「化粧品」について具体的かつ明確に使用計画、準備し、使用した商標であることを示す。
カ 乙第6号証は、本件商標のブランドコンセプトを示す「EVIDENCE・エヴィデンス・デザインコンセプト」であり、2006年10月6日に作成された。
この「EVIDENCE・エヴィデンス・デザインコンセプト」の会議出席者は、「小山(作成者)」、「鹿郷、工藤、松田、小林(外部顧問)」である。なお、小山、鹿郷、工藤、松田は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の社員であり、小林は外部顧問である。
この「EVIDENCE・エヴィデンス・デザインコンセプト」には、シール1で示すように、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンケアクリーム」の製品名「アスタキサンチン クリーム」に商標「EVIDENCE\エヴィデンス」を使用することが示される。
また、シール2で示すように、メディカル、ケミカル、サイエンスといった観点から「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」全てに属するブランドとして具体的に商標「EVIDENCE\エヴィデンス」を使用することも示される。
キ 乙第7号証は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」が作成した「第46期政策発表会(全体会議)資料」であり、2008年9月5日に作成された。
この「第46期政策発表会(全体会議)資料」は、第46期における具体的な本件商標「EVIDENCE」の使用計画が記載されている。なお、第46期とは、株式会社マーナーコスメチックスにおける事業年度を意味し、2008年8月21日から2009年8月20日までの期間を示す。
この「第46期政策発表会(全体会議)資料」のうち「46期NB部門方針」は、「小出・大藤・西山・中島・兼松」が作成した。なお、小出、大藤、西山、中島、兼松は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の社員であり、営業部第1グループ(NB部門)に所属する。
シール3で示す「月別売上目標」及びシール4で示す「商品販売スケジュール」には、製品名「EVIDENCE UVケア」及び製品名「EVIDENCE アスタキサンチン」に関する第46期の販売計画及び売上目標が記載されている。なお、製品名「EVIDENCE アスタキサンチン」については、内容物の改良を重ねているため、当該時における売上目標は明記されていない。
製品名「EVIDENCE UVケア」は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンローション」に属する。また、製品名「EVIDENCE アスタキサンチン」は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンケアクリーム」に属する。
このように、株式会社マーナーコスメチックスの第46期において、本件商標「EVIDENCE」の具体的な使用計画があったことが示される。
ク 乙第8号証は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の企画会議「Mana Meeting」において、外部顧問である小林智子が作成した「メモ(平成20年7月24日)のコピー」である。必要があれば、現物を提出することも可能である。
この「メモ(平成20年7月24日)のコピー」には、本件商標「EVIDENCE\エヴィデンス」と社会通念上同一であると認められる商標「エビデンス」が記載されている。
また、製品名「エビデンス シリコン リセット シャンプー」及び製品名「エビデンス キューティクル リフィル」が記載されている。製品名「エビデンス シリコン リセット シャンプー」は請求に係る指定商品「せっけん類」に含まれる「シャンプー」に属し、製品名「エビデンス キューティクル リフィル」は請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「ヘアトリートメント」に属する。
なお、本メモには、「7/24」と記載され、乙第10号証によると平成20年7月24日を示す。
ケ 乙第9号証は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の企画会議「Mana Meeting」において、外部顧問である小林智子が作成した「ノート(平成20年8月6日)のコピー」である。必要であれば、現物を提出することも可能である。
この「ノート(平成20年8月6日)のコピー」には、本件商標「EVIDENCE\エヴィデンス」と社会通念上同一であると認められる商標「エビデンス」が記載されている。
すなわち、第1頁目には、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンローション」の製品名「エビデンス UV カット ローション」が記載されている。なお、「エビデンス UV ヘッド プロテクター」は愛称名を示し、「エビデンス UV カット ローション」は化粧品販売届出名(製品名)を示し、両者は同一の商品を示すものである。また、第2頁目には、請求に係る指定商品「化粧品,せっけん類」の愛称名「エビデンス H.P シリーズ」が記載されている。
なお、本ノートには、「8/6」と記載され、乙第10号証によると平成20年8月6日を示す。
コ 乙第10号証は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンローション」の製品名「エビデンス UV Cut Lotion」に係る商標「エビデンス」の具体的な使用計画が2008年7月24日及び2008年8月6日にあったことを証明する「証明書」である。
本証明書は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の社内会議に参加した外部顧問である小林智子によって作成されたものであり、商標「エビデンス」の具体的な使用計画の事実を示す。
サ 乙第11号証は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンローション」の製品名「エビデンス UV Cut Lotion」に係る「包装容器デザイン見積依頼書」であり、平成20年11月25日に作成された。
この「包装容器デザイン見積依頼書」には、本件商標「EVIDENCE\エヴィデンス」と社会通念上同一であると認められる商標「エビデンス」が記載され、依頼者である商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」、「営業部中島」、及び「TEL:047-318-8610 FAX:047-318-8630」の表示がある。なお、中島は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の社員であり営業部第1グループに所属している。また、本デザイン作成請負者である「KPLUS 片岡様」の表示もある。
シ 乙第12号証は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンローション」の製品名「エビデンスUVカットローション」に係る「包装容器デザイン見積書」であり、平成20年11月27日に作成された。
この「包装容器デザイン見積書」は、乙第11号証の「包装容器デザイン見積依頼書」に対する応答文書である。
この「包装容器デザイン見積書」には、本件商標「EVIDENCE\エヴィデンス」と社会通念上同一であると認められる商標「エビデンス」が記載され、依頼者である商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」を示す「マーナーコスメチックス」及び「中島」の表示がある。なお、中島は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の社員である。また、本デザイン作成請負者である「KPLUS」の表示もある。
ス 乙第13号証は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンローション」の製品名「エビデンス UV カット ローション」の「見積依頼書」であり、平成20年12月4日に作成された。
この「見積依頼書」には、本件商標「EVIDENCE\エヴィデンス」と社会通念上同一であると認められる商標「エビデンス」が記載され、依頼者である商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」、「営業部担当:中島」の表示がある。なお、中島は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の社員である。また、請負者である「椿加工」、「日本フィルム」、「ユーシン社」、「鎌田ダンボール」の表示もある。
セ 乙第14号証は、乙第13号証の「見積依頼書」に対する応答文書となる「見積回答書」であり、平成20年12月4日に作成された。
この「見積回答書」には、本件商標「EVIDENCE\エヴィデンス」と社会通念上同一であると認められる商標「エビデンス」が記載され、商標権者「(株)マーナーコスメチックス」、「開発担当者根本」、「営業担当者中島」の表示がある。なお、根本及び中島は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」の社員である。
ソ 乙第15号証は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンローション」の製品名「エビデンスUVカットL」に係る「注文書」であり、2008年12月16日に作成された。
この「注文書」には、本件商標「EVIDENCE\エヴィデンス」と社会通念上同一であると認められる商標「エビデンス」が記載され、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」、「千葉県市川市原木1丁目3番31号」、「Tel 047-318-8610」、「Fax 047-318-8630」の表示がある。また、資材請負者である「椿加工(株)」の表示もある。
このように、本件審判の請求の登録日「平成20年12月16日」(審判注:答弁書も予告登録日「平成20年12月12日」としているが、誤り。本件審判の請求の登録日は「平成20年12月16日」である。)前に、本件商標の具体的な使用計画があり、商品化に向けて準備がされていたことが示される。
タ 乙第16号証は、請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる「スキンローション」の愛称名「UV Head Protector」に係る「容器の写真」である。
この「容器の写真」には、本件商標「evidence」が記載されている。必要であれば、実物を提出することも可能である。
(2)上述のように、乙第1号証ないし乙第16号証によって、本件商標は、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」が指定商品「せっけん類,化粧品」に属する様々なブランドとして使用することが明らかであり、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により指定商品中「化粧品」について、ブランドコンセプトや包装デザインなど、細部にわたって、具体的かつ明確に使用計画を立て、資材購買など化粧品の製造に関わる準備を行い、使用した商標であることは事実である。
したがって、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国において「化粧品」について使用されていない、との請求人の主張は、理由がなく、失当であるといわざるを得ない。
3 以上のとおり、本件商標の取消審判請求は、その理由がなく、根拠がないことから、本件商標は、その指定商品「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」について、商標法第50条第1項の規定に該当するものではないというべきである。

第4 当審の判断
商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消の審判が請求された場合には、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消を免れないことは、同条第2項の規定から明らかである。
1 そこで、被請求人が、本件商標をその指定商品「化粧品」(「スキンケアクリーム、スキンローション、シャンプー、トリートメント」)について使用しているとして、提出した乙第1号証ないし乙第16号証について、以下検討する。
(1)乙第1号証は、1枚目が左上部角に大きく「マーナーコスメチックス EVIDENCE A」、その右下部分に三分の一程度の大きさで「Inter Design 060929」の表示がある化粧品の包装容器と思しきデザインが施されている横長の用紙で、化粧品の包装容器と思しきデザイン中に「EVIDENCE」、「Asitaxanhin Cream」、「Fomula No.1」、「HCL-263」の各表示がなされており、2枚目から6枚目は、「マーナーコスメチックス EVIDENCE B」、「マーナーコスメチックス EVIDENCE C」、「マーナーコスメチックス EVIDENCE D」、「マーナーコスメチックス EVIDENCE E」及び「マーナーコスメチックス EVIDENCE F」の表題とそれに相応する化粧品の包装容器と思しきデザインが認められ、各容器には「Evidence」と認識できるものの、書体が異なる態様で表示されている。
(2)乙第2号証は、ほぼ乙第1号証と同様の化粧品の包装容器と思しきデザインが施されている横長の用紙で、1枚目が「マーナーコスメチックス EVIDENCE サイエンス‐D」、その右下部分に三分の一程度の大きさで「Inter Design 061031」の表示、化粧品の包装容器と思しきデザイン中に「Fomula No.1」、「HCL-263」、「Asitaxanhin Cream」、「EVIDENCE」他の各表示がなされており、2枚目から5枚目は、「マーナーコスメチックス ケミカル‐F」、「マーナーコスメチックス EVIDENCE ケミカル‐G」、「マーナーコスメチックス EVIDENCE メディカル‐I」及び「マーナーコスメチックス EVIDENCE メディカル‐H」の表題とそれに相応する化粧品の包装容器と思しきデザインが認められ、各容器には書体が異なる態様で表示されている。
(3)乙第3号証は、平成18年12月5日付けの「株式会社インターデザイン」から被請求人「株式会社マーナーコスメチックス」宛の「請求書」で、件名の欄に「EVIDENCE/ブランドアイデンティティ(BI)開発」、作業の欄の1の作業内容の項に「・EVIDENCEブランドアイデンティティ(BI)開発」、作業の欄の3に「ブランド開発」、その作業内容の項に「EVIDENCEブランドロゴタイプの開発」、同数量の項に「一式」、同単価の項に「300,000」、同金額の項に「300,000」、作業の欄の6から7にかけて「パッケージ開発」、その作業内容の項に「カンプ制作/9パターン」、同数量の項に「一式」、同単価の項に「150,000」、同金額の項に「150,000」の各記載、及び下段部分に銀行口座名、銀行名、科目、口座番号が表示され、二つの押印がなされている。
(4)乙第4号証は、平成21年2月12日の日付が表示されている書面で、「有限会社タカラアド」の経営者が「2006年10月24日に株式会社マーナーコスメチックスより、『EVIDENCE Asitaxanhin Cream』について容器の実物を見せられ商品説明を受けたことに相違ありません。」とする内容で、証明人の住所、氏名、押印がなされている。
(5)乙第5号証は、化粧品のクリーム容器とその包装箱と思しき写真で、クリーム容器に大きく「EVIDENCE」及び小さく「Asitaxanhin Cream」、包装箱に大きく「EVIDENCE」、小さく「Asitaxanhin Cream」、「Fomula No.1」及び「HCL-263」の各表示がなされている。
なお、撮影者、撮影場所、その日時等の表記は見当たらない。
(6)乙第6号証は、1枚目に「EVIDENCE/エヴィデンス/デザインコンセプト」の表題、「2006年10月6日」の日付、「会議出席者:藤沢工場 営業部 小山(作成者)」、「本社 営業部 鹿郷、工藤、松田、小林(外部顧問)」の表示がある5枚からなる資料で、2枚目に「1.はじめに EVIDENCE:エヴィデンス・ブランドコンセプト」と表記され、その下に「■ブランド名称」、「■ブランドの方向性」、「■今回開発商品」の項に「EVIDENCE…」、「ハウスブランドのような方向性/・EVIDENCEは、高品質で…『低刺激スキンケア』を処方コンセプトします。/・新規成分を…・スキンケアの処方開発を長年培ってきたマーナーコスメチックスのラボ発信となります」等の各表示がなされ、3枚目以降に「EVIDENCE、エヴィデンス」他、デザインに関する説明記述がなされているものである。
(7)乙第7号証は、表紙に「第46期政策発表会(全体会議)」の議事次第があり、「マーナーコスメチックス46期経営方針策定会/2008年9月5日」(1頁ないし9頁)、「46期OEM部門方針」(10ないし15頁)、「46期NB部門方針」(16頁ないし22頁)等の表題からなる資料で構成され、合計50頁の資料であるが、第3番目の表題「46期NB部門方針」の3頁目「月別売上目標」には、「EVIDENCE UVケア」の項目には、12月度から「100」、同「EVIDENCE アスタキサンチン」の項目には、8月度に「0」が記載されている。
(8)乙第8号証及び乙第9号証は、前者が「7/24 Mana Meeting」、後者が「8/6 Mana Meeting」と手書きされているメモで、「エヴィデンス」に関する記述、「容器の図」などが手書きされている。
(9)乙第10号証は、平成21年2月9日の日付が表示されている書面で、「コスメゾン」の経営者が「2006年10月6日に株式会社マーナーコスメチックスの社内会議に参加し、『EVIDENCE\エヴィデンス』についての企画説明を受けたことに相違ありません。2008年7月24日及び2008年8月6日に株式会社マーナーコスメチックスの企画会議に第三者として参加し、7/24のメモ及び8/6のノートを私が作成したことに相違ありません。7/24のメモ及び8/6は、2008年です。2008年8月6日時点で『エビデンス UV Cut Lotion』の企画を確認し、確認時点で株式会社マーナーコスメチックスの商標『エビデンス』明確な使用計画があったことに相違ありません。」とする内容で、証明人の住所、氏名、押印がなされている。
(10)乙第11号証は、平成20年11月25日の日付のある「株式会社マーナーコスメチックス」の営業部の担当者から「KPLUS 片岡様」と宛先が表記されている見積の依頼と思しき書面で、手書きのメモが部分に表記され、2枚目に「商品企画案:UV Head Protector(登録名:エビデンス UV Cut Lotion)」の表題、その下に「■商品コンセプト」、「■イメージ&ストーリー」、「■機能」等の項目が設けられ、それぞれの項目に説明記述されている。
(11)乙第12号証は、平成20年11月27日付けの「KPLUS ケイプラス」から被請求人「マーナーコスメチックス」の担当者宛の「見積書」で、中央部の欄に「エビデンスUVカットローション容器デザイン制作費見積」の表示、その下の品名の欄に「エビデンスUVカットローション」、カテゴリーの欄、数量の欄単価の欄にそれぞれの表示、数字が記載されている。
(12)乙第13号証は、依頼年月日が平成20年12月4日付けの被請求人「マーナーコスメチックス」の営業部の担当者が作成した「見積依頼書」で、製品面の欄に「エビデンス UV カット ローション」、発売予定日の欄「平成21年2月下旬」、処方/製品開発依頼書NO.の欄に「14020-2」、メーカーの欄に「椿加工、日本フィルム、ユーシン社、鎌田ダンボール」の数字と各表示がある。
(13)乙第14号証は、試作年月日の欄に「2008/11/27」の数字、品名の欄に「UVカットローション 1,2」の表示、依頼先の欄に「(株)マーナーコスメチックス」、依頼書NO.の欄に「14020-2」、開発担当者の欄に「根本」、営業担当者の欄に「中島」、及び提出年月日の欄に「2008/12/4」の各数字と各表示が上部にあり、その欄の下には、「成分名」「原料名」「W/W%」「原価単価」「kg単価」の40行の記入欄が設けられた一枚紙の書面である。
(14)乙第15号証は、2008年12月16日付けの「椿加工(株)」から被請求人「株式会社マーナーコスメチックス」宛の「注文書」のFaxの写しで、コードの欄に「29050」、資材名の欄に「(容器120ml)エビデンスUVカットL」等、右下角部に「ご注文ありがとうございます。 2/6着となりますよろしくお願いします。担当者の押印 …」の表示がある。
(15)乙第16号証は、化粧品の容器と思しき写真で、容器の正面のラベルに「UV Head Protector ・・・evidence」の表示がある。
2 以上の乙各号証によれば、以下のとおりである。
(1)乙第1号証及び乙第2号証について
乙第1号証及び乙第2号証は、化粧品の包装容器と思しきデザインが施されている横長の用紙であり、そのデサイン日と推認できる「Inter Design 060929」(2006年9月29日)、「Inter Design 061031」(2006年10月31日)の各表示からすると、この化粧品の包装容器がデザインされた日は、本件審判の請求の登録前三年以内であることは認められるが、あくまでも化粧品の包装容器と思しき商品のデザインであり、実際の商取引における商標の使用の前段階といえ、商標法第2条第3項各号にいう商標法上の使用とはいえないというべきである。
(2)乙第3号証ないし乙第5号証について
乙第3号証は、前記した「作業内容」の各表示からすると、商品、「EVIDENCE」についての開発段階におけるブランド開発の作業内容に関する請求書であって、これも実際の商取引における商標の使用の前段階といえ、商標法第2条第3項各号にいう商標法上の使用とはいえないというのが相当である。
また、乙第4号証は、「容器の実物を見せられ商品説明を受けた。」旨の証明人の記述は認められるとしても、ここでいう商品の実物の写真である甲第5号証には、何時、何所で、誰がこの写真を撮ったか等の表示がなく、これらを関連づける証拠も見当たらないものである。
(3)乙第6号証ないし乙第14号証について
乙第6号証ないし乙第14号証は、商標「EVIDENCE」に付す商品「化粧クリーム」等に関する会議資料(乙第6号証)、第46期政策発表会(全体会議)資料(乙第7号証)、会議メモ・ノート(乙第8号証及び乙第9号証)、証明記述書(乙第10号証)、包装容器デザインの仕様と見積依頼(乙第11号証)、包装容器デザイン見積書(乙第12号証)、見積依頼書(乙第13号証)、見積依頼に係る資料(乙第14号証)であって、これらの証拠はすべて、実際の商取引における商標の使用の前段階における商品の制作の準備段階の事実を証するものであって、商標法第2条第3項各号にいう商標法上の使用とはいえないというのが相当である。
(4)乙第15号証について
乙第15号証は、2008年12月16日付けの「椿加工(株)」から被請求人「株式会社マーナーコスメチックス」宛の「注文書」のFaxの写しであるが、FAXの通信日時は「2008年12月19日13時46分」とあることから、本件審判の請求の登録日は平成20年12月16日であり、この「注文書」は本件審判の請求の登録前三年以内の期間内のものではない。
(5)乙第16号証について
乙第16号証は、化粧品の容器と思しき写真で、容器の正面のラベルに「UV Head Protector ・・・evidence」の表示は認められるが、撮影者、撮影場所、その日時等の表記は見当たらないし、撮影者等との関係を裏付ける直接的証拠の提出も見当たらない。
3 以上を総合すると、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」が指定商品「せっけん類,化粧品」に属する「化粧用クリーム」に商標「EVIDENCE」付して、製造、販売する使用計画を立て、準備を行っていたことは認められる。
しかしながら、商標権者「株式会社マーナーコスメチックス」が本件要証期間内に、現実に商標「EVIDENCE」付し商品「化粧用クリーム」等を製造、販売していたとはいい難いものであって、しかも、本件商標の設定登録日は上記第1のとおり、平成13年(2001年)11月16日であって、上記乙第16号証の「注文書」の2008年12月16日からは7年以上も経ているものである。
また、乙第7号証の「月別売上目標」に記載の「EVIDENCE UVケア」の項目には、平成20年(2008年)12月度から100個、「EVIDENCE スタキサンチン」にあっては、平成21年(2009年)8月度から0個と記入されているから、実際には要証期間内に商品の取引がされていないことは明らかである。
その他、被請求人が本件商標をその指定商品たる「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」について使用していたことを認めるに足る証拠の提出はない。
なお、被請求人は、本件商標の使用について、商標法第50条第3項ただし書きの「正当な理由」に該当する旨主張しているものではないが、以下、念のため補足する。
商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」としては、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等、厳格に解すべきものと考えられ(特許庁編「工業所有権法逐条解説」参照)、仮に被請求人が本件商標の使用について「正当な理由」を主張したとしても、上記被請求人主張の使用に関する理由は、単に商品化の企画や開発再開計画等があることを述べるに止まるものであるから、採用の限りでない。
4 以上のとおり、被請求人が指定商品「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」の範疇に属する商品「化粧用クリーム」等に使用している主張する商標と本件商標とが、仮に社会通念上同一の商標といえるものであるとしても、乙第1号証ないし乙第16号証をもってしては、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその指定商品について、本件商標を使用していることを証明したものと認めることはできない。また、被請求人は、本件商標をその指定商品について使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
5 したがって、本件商標は、その指定商品「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」についての登録は、商標法第50条により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-07-31 
結審通知日 2009-08-05 
審決日 2009-08-20 
出願番号 商願2000-119012(T2000-119012) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 正和 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 2001-11-16 
登録番号 商標登録第4521869号(T4521869) 
商標の称呼 エビデンス 
代理人 中村 政美 
代理人 堀 城之 

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