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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消200530376 審決 商標
取消2009300037 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y09
管理番号 1205171 
審判番号 取消2008-301263 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-09-30 
確定日 2009-09-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4853147号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4853147号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成16年8月3日に登録出願され、第9類「耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。),アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,計算尺,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」を指定商品として平成17年4月1日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べている。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)答弁の項目3、4及び5について
被請求人は、本件審判請求は権利の濫用にあたる旨、及び本件審判請求の続行は不法行為を構成し得べきことは明白なので本件審判請求は取り下げられるべき旨述べている。
しかしながら、本件審判は、本件商標がその指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」について使用されているか否かを審理するものであり、したがって、被請求人の上記項目3、4及び5における主張は、本件審判に関係がないから、弁駁の対象ではない。
(2)答弁の項目1及び2に対する反論
被請求人が提出している証拠からは、本件商標が、(a)本件審判の請求の登録前3年以内に、(b)その指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」について、(c)登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の商標的な使用がされていることの証明がなされていない。以下、その論拠を示す。
(ア)本件審判の請求の登録前3年以内の使用ではないことについて
・乙第1号証について
乙第1号証について、被請求人は答弁書において「第2頁下端には、『2007年3月現在』と記載されている。」と述べているが、被請求人の提出に係る答弁書からは、上記記載を確認することはできない。
したがって、乙第1号証によっては、上記(2)(a)の要件が証明されない。
・乙第6、第7及び第9号証について
上記各乙号証は、いずれもEメールの写しであるところ、乙第6号証に係るEメールの送信日時は2004年4月26日、乙第7号証に係るEメールの送信日時は2004年4月27日、乙第9号証に係るEメールの送信日時は2005年8月22日であり、いずれも「審判の請求の登録前3年」よりも前の日付である。
・乙第8号証について
乙第8号証に係る営業レポートには、「訪問日」の列に4月22日から5月17日にわたる日付が記載されているが、年の記載がないため左記日付を一義的に確定することはできない。さらに、「訪問日」及び「主面談者」の記載はあるものの、作成日付、作成名義人が不明であり、その信憑性に疑義を抱かざるを得ない。
したがって、上記乙第6ないし第9号証によっても、上記(2)(a)の要件が証明されない。
(イ)本件商標の指定商品のうち、「電子応用機械器具及びその部品」について使用していないことについて
乙第6、第7、第9、第10号証並びに乙第11号証の1及び2からは、「QuickLook」が何であるかについては一切窺い知ることはできないか、もしくは、商品を明確に特定することができない。
したがって、上記各乙号証によっては、上記(2)(b)の要件が証明されない。
(ウ)登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の商標的な使用がなされていないことについて
・乙第3号証の1、第4号証、第5号証の1及び2、第6、第7、第9、第10並びに第11号証の1及び2について
上記各乙号証には、本件商標が掲載されていない。
なお、上記各乙号証の「QuickLook」との記載は、商品に関する記述的記載部分における説明にすぎず、商標的な使用態様とはいえない。
したがって、上記各乙号証によっては、上記(2)(c)の要件が証明されない。
・乙第12号証について
乙第12号証が「QuickLook」の販売を証明するものであるとしても、実際にどのような態様で「QuickLook」が使用されているかは不明であり、乙第12号証によっては、本件商標を使用していることの証明はされていない。
したがって、乙第12号証によっても、上記(2)(c)の要件が証明されない。
(エ)その他
乙第6、第7、第9、第10号証並びに第11号証の1及び2は、私人間の私的なEメールのやりとりにすぎず、その信憑性に疑義を抱かざるを得ない。
(3)まとめ
以上述べたとおり、被請求人の提出した書類によっては、本件商標が、(a)本件審判の請求の登録前3年以内に、(b)その指定商品のうち「電子応用機械器具及びその部品」について、(c)登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の商標的な使用がされていることの証明がなされていない。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第13号証(枝番を含む。)を提出している。
1 本件商標のインターネット掲載の事実
(1)本件審判請求は、2008年9月30日付けでなされ、この審判請求における不使用判断の基準日たる「審判の請求の登録時」は、2008年10月21日である。
また、本件審判請求は、本件商標の指定商品のうち、「電子応用機械及びその部品」についてなされている。
(2)乙第1号証は、2007年3月より本件商標権者(被請求人)のホームページ上に掲載し、Google及びMSNにて公開され、かつ現実に頒布されている被請求人のカタログである。このカタログには、少なくとも被請求人の作成するソフトウエアに、本件商標が使用されている事実が示されている。
即ち、本件商標が使用される商品は、上記カタログに記載されているように、プログラミングで格納されたデータベースに対し、その場で当該データを見ながら自由にデータを取り出し、見たい形で表作成を行い、かつ、表示項目の並べ替えが行えるソフトウエアである。
上記カタログの画像において、第1頁の上部及び中央やや左下、並びに、第2頁の上部には、本件商標「QuickLook」が明瞭に記載され、第2頁下端には、「2007年3月現在」と記載されている。
(3)乙第2号証は、2008年11月3日にダウンロードしたものであって、Googleにて公開され、2008年9月23日時点においてGoogleに保存されていた被請求人会社ホームページのキャッシュの画像(商品紹介ページのPDFファイル)である。
上記画像において、中央上方には、本件商標の「QuickLook」及び片仮名の「(クイックルック)」が記載され、上部の囲い枠内には、「これはGoogleに保存されている・・・のキャッシュです。このページは2008年9月23日23:55:57GMTに取得されたものです。」と記載されている。
したがって、上記画像は、2008年9月23日にGoogleにて公開されていたことは明白である。
また、上記画像は、2008年9月23日前からGoogleにて公開され、引き続き現在に至りGoogleにて公開されている。
なお、現在Googleの検索を行うと、キャッシュの日付はクローラーが回って前記日付とは異なっているところ、少なくとも前記のとおり、2008年9月23日において本件商標がGoogleにて公開されていたことは明らかである。
(4)乙第3号証は、2008年11月4日にダウンロードしたものであって、MSNにて公開され、2008年9月30日時点においてMSNに保存されていた被請求人会社ホームページのキャッシュの画像(商品紹介ページのカタログのPDFファイル)である。
上記画像において、乙第3号証の1は、MSNの検索サイトにて「QuickLook」を検索したリストで、このリストの4番目の「QuickLookで」をクリックしたものが乙第3号証の2である。この乙第3号証の2は、乙第1号証と同じものである。
上記「QuickLookで」の数行下の「キャッシュページ」をクリックしたものが乙第3号証の3である。乙第3号証の3の「1/2ページ」の紙面の上部には、本件商標と同一性のある「QuickLook」がゴシック体で明瞭に記載され、その上部の囲い枠内には、「以下は、2008/09/30(クローラーがこのサイトを検索した日付)に保存されたWebページのキャッシュ情報です。」と記載されているので、2008年9月30日にMSNにて公開されていたことは明白である。
(5)乙第4号証は、NeXgate(見積依頼先・発注先が探せるビジネスマッチングプラットフォームメディア)のサイトから2008年10月15日にダウンロードした画像である。
上記画像において、第1頁の下部には、「QuickLook」が記載され、下端左側には、この画像を取得した日時が〔2008/10/15 23:58:17〕として記載されている。
したがって、乙第4号証の画像は、2008年10月15日に「NeXgate」のホームページにて公開されていたことは明白である。
(6)乙第5号証は、2008年11月11日にダウンロードしたものであって、2008年10月20日時点においてMSNに保存されていた前記NeXgateのキャッシュの画像である。
上記画像において、乙第5号証の1は、MSNの検索サイトにて「quicklookプロサイト」を検索したリストで、このリストの4番目の「株式会社プロサイト/サービス・商品|見積依頼...」をクリックしたものが乙第5号証の2である。この乙第5号証の2は、前掲の乙第4号証と同じものである。
乙第5号証の2の紙面の下部には、本件商標と同一性のある「QuickLook」が複数記載され、紙面上部の囲い枠内には、「以下は、2008/10/20(クローラーがこのサイトを検索した日付)に保存されたWebページのキャッシュ情報です。」と記載されている。
したがって、乙第5号証の画像は、2008年10月20日に「NeXgate」のホームページにて公開されていたことは明白である。
(7)以上のとおり、本件商標は、その出願前から現在に至り、間断なく指定商品に使用されている(乙第1号証)ところ、さらに、Google、MSNなどの媒体を介して24時間継続的にあまねく公開されている(乙第2及び第3号証)。さらには、アクセス数の多いウェブ上の見積依頼サイトにおいて、本件商標及びその指定商品を全国に広く公開し(乙第4及び第5号証)、その購入を慫慂していることが明らかである。
したがって、これらの事実からして、本件商標は、実際の流通取引に供されて使用されていることは勿論、取引者に周知されていることも紛れもない事実である。
2 本件商標を用いての営業活動及び当該指定商品の販売の事実
(1)被請求人の営業活動におけるものとして、乙第6及び第7号証(電子メールのコピー)を提出する。乙第6号証は、2004(平成16)年4月26日付け被請求人会社社長Kから開発者宛の送信メール、乙第7号証は、翌4月27日付け同人から開発者宛の送信メールである。
上記各メールの内容には、本件商標「QuickLook」を示してなす本件ソフトウエアに関する問い合わせが記載されている。
このように、乙第6及び第7号証は、本件商標が、その出願直前から当該指定商品に使用されていたことを示すものである。
(2)乙第8号証は、平成16(2004)年5月18日作成の営業レポートである。
この乙第8号証は、第三者に委託して作成された表形式のレポート(エクセルにて作成)であって、本件商標「QuickLook」を示してなす本件ソフトウエアの客先別面談記録が記載されており、本件商標が、その出願直前より当該指定商品に使用されていたことを示すものである。
(3)被請求人の営業活動におけるものとして、乙第9及び第10号証(電子メールのコピー)を提出する。乙第9号証は、2005(平成17)年8月22日付け被請求人会社従業者Uから社長K宛の送信メール、乙第10号証は、2006(平成18)年10月25日付け被請求人会社従業者Uから社長K宛の送信メールである。
この乙第9及び第10号証のメール内容には、本件商標「QuickLook」及び「QUICKLOOK」を示してなす本件ソフトウエアの営業活動に関する報告事項が記載されている。
このように、乙第9及び第10号証は、本件商標が、その登録後及び2年程前に、当該指定商品に使用されていたことを示すものである。
(4)さらに、被請求人の営業活動におけるものとして、乙第11号証の1及び2(電子メールのコピー)を提出する。乙第11号証の1は、2007(平成19)年4月24日付け被請求人会社社長Kから見込み客先たる「ジェコス株式会社システム部T課長」宛の送信メール、乙第11号証の2は、翌日(4月25日)付け被請求人会社社長Kから同「ジェコス株式会社システム部T課長」宛の送信メールである。
この乙第11号証の1のメール内容には、本件商標「QuickLook」の資料を添付ファイルにて送信する旨及び、添付の欄に、「QuickLookオペマニ.pdf」、「QuickLook.pdf」が記載されている。さらに、乙第11号証の2には、乙第11号証の1のメール内容の履歴と、Tから被請求人会社社長K宛のメール内容の履歴が記載されている。
このように、乙第11号証は、本件商標が、2007(平成19年)年4月24日において当該指定商品に使用されていたことを示すものである。
(5)本件商標に関する第三者からの使用許諾等に鑑み、手元にあった「QuickLook」ソフトウエア製品の販売受領書(乙第12号証)と、従前より頒布している「QuickLook」ソフトウエアカタログ(乙第13号証)に、公証人の確定日付を得て、本件商標の使用実績の法的担保を行った。乙第12号証は、2008年3月21日に、「データベース検索ソフトQuickLook」を件外株式会社ニッコー化学研究所へ販売した受領書であり、乙第13号証は、2007年3月以来使用しているカタログである。
これら乙第12及び第13号証からも、本件商標が、請求に係る指定商品ソフトウエアに実際に使用されていたことが明らかである。
3 本件商標権の使用許諾の申し入れの事実
本件商標に関する使用許諾については、とりわけ「QuickLook」ソフトウエア(類似群:11C01)、電気通信機械器具(類似群:11B01)等に対して第三者からの申し入れがなされている。これらは、本件商標の「QuickLook」を申し入れ対象のキーワードとして、その特定がなされている。
4 本件審判請求に係る審判費用について
(1)被請求人は、本件審判の請求の趣旨において、本件審判の請求は成り立たないことは勿論、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。
この審判費用については、少なくとも本件審判に関し被請求人の出捐する代理人費用及び口頭審理に出頭する費用は、審判費用として認められるべきである。
(2)平成8年改正法は、「登録商標の使用と認める範囲の拡大」とともに、請求人適格を「何人」とした。特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室編の「平成8年改正工業所有権法の解説」には、「なお、請求人適格を『何人』とすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的をしていると認められる場合は、その請求は権利濫用として認められないこととなる。」と記載している(同書第60頁最下段)ところ、まさに、本件審判請求は、これに該当することが明らかである。
即ち、商標法第50条第1項の規定は、審判請求の前提として商標権者等が登録商標につき、「・・・の使用をしていないときは、」として、審判請求に際し当該登録商標不使用の可能性を覚知すべきことを要請している。
しかるに本件請求人は、インターネット検索により商標公報を検索して、これを登録原簿とともに審判請求書に添付して提出している。このような検索能力を持ち、かつ、書式等に些か困難を伴う審判請求手続を用意周到にこなす請求人は、一方で、被請求人のホームページを見ないわけがなく、被請求人において本件商標を使用している事実を覚知しながら、あえて本件審判請求を行ったことは見やすい道理であり、審判請求自体、権利の濫用である。
他方で、このような各能力を有する請求人は、被請求人のホームページを検索すれば極めて容易に本件商標の使用の事実を覚知し得たにも拘らずこれを怠った重大な過失があり、しかもこの重過失に起因して本件審判請求を提起したことは明らかである。
さらに、少なくとも、答弁書及び添付の証拠方法によって、本件商標が従前使用されていた事実を知ることになる。
したがって、本件商標の登録の消長に関し「何人」であって利害関係人たる身分を有しない請求人が、少なくとも上述の事実を知った以上、爾後、本件審判請求を続行する場合は、そこに徒に審判手続を長引かせる害意ないし不正の目的が客観的に認められるものであり、加えて前述使用権設定を遅延させることになるものであるから、不法行為を構成し得べきことは明白である。
(3)このように、本件審判請求は、権利の濫用であり、少なくとも本件審判について被請求人の出捐する代理人費用及び口頭審理に出頭する費用は、少なくとも金50万円を下らないから、これが審判費用として認められるべきである(商標法第56条第1項で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第62条)。
5 本件審判手続の取下げの慫慂について
(1)本件審判請求は、「一部取消2008-301263」として公示され、日本国内において遍く知り得る状態に置かれた為、上記3の使用権設定交渉が中座し、被請求人に多大なる損害が発生している。上述のとおり、審判請求自体、権利の濫用であり、また、少なくとも、本件請求人には重過失があり、しかもこれらに起因して本件審判請求を提起したことは明らかである。さらに、答弁書及び添付の証拠方法の到達以降は、確実に本件商標が従前使用されていた事実を知ることになる。したがって、爾後、本件審判請求を続行する場合は、不法行為を構成し得べきことが明白になるのであるから、本件審判請求は、速やかに取り下げられるべきである。
(2)被請求人は、進行し拡大する損害に鑑み損害賠償請求等の別訴を検討しているところ、少なくとも上記1で主張立証したことから、本件商標の使用の事実は明白である。よって、本件審判請求は、理由がないとして速やかに棄却されるべきである。
以上のとおり、本件商標は、取り消し請求に係る指定商品に使用されていることが明らかであるから、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠について
被請求人は、本件商標がその登録出願前から現在に至るまで継続して本件請求に係る指定商品について使用されている旨主張し、証拠を提出しているので、該証拠について検討する。
(1)被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)乙第1号証は、被請求人に係る商品カタログの写しと認められるところ、その1枚目の冒頭には、「エンドユーザ向けデータベースビューア『QuickLook』」の表題が付されており、以下に、当該商品について説明されている。
つまり、「■QuickLookが提供する機能・特徴」の欄には、「・操作はエンドユーザーに優しい『クリック&ドロップ』」、「・データベースのテーブル名・項目名は日本語表示可能(データベースのコメントの日本語化により実現)」、「・複数テーブルの結合・検索条件設定・表示項目設定・並び替えは自由自在」、「・カタログ(手順の登録)機能により、頻繁に使う抽出条件を定型登録」、「・結果の画面表示、CSV出力」、「・データの更新機能(情報システム部門用)」等の記載がされている。
その下方には、「データはあるのに見たい形になっていない。」、「複数の表にまたがるデータを一つの表にまとめて並びを変えて見たい・・・」、「QuickLookで ・項目Aをもとに ・項目BとYとZを ・項目Zの大きい順に並べて表示したい」の表示と共に表が掲載され、さらに、「プログラミングで対応してきたデータ検索・・・QuickLookを使うと、その場でデータを見ながら自由にデータを取り出し、見たい形で表を作成できます。・・・」等の記述がされている。
2枚目には、冒頭に「QuickLookで簡単データ検索」の表題が付され、その下方に、コンピュータの画面と共に検索方法について説明されているほか、動作環境、価格、被請求人の名称、住所等が記載されている。そして、最下段に小さく「2007年3月現在」と表示されている。
(イ)乙第2号証は、2008年11月3日にダウンロードした被請求人のウェブサイトの写しと認められるところ、「Product」の項目において、「パッケージ商品」として「QuickLook(クイックルック)」、「データベースビューアー」の表題の下に、上記(ア)のカタログとほぼ同様の説明がされ、コンピュータ画面が掲載されている。そして、最上段の囲み枠内には、「これはGoogleに保存されているhttp://www.prosite.co.jp/product/index.htmlのキャッシュです。このページは2008年9月23日23:55:57GMTに取得されたものです。」との記載がある。
(ウ)乙第3号証の1ないし3は、2008年11月4日にダウンロードしたMSNのリスト及び被請求人に係るウェブサイトの写しと認められるところ、これらにはPDFファイルとして上記(ア)と同一のカタログが添付されており(乙第3号証の2)、また、被請求人のキャッシュページには、該カタログとほぼ同内容の記述がされている(乙第3号証の3)。そして、該キャッシュページにおいて、その最上段の囲み枠内に、「以下は、2008/09/30(クローラーがこのサイトを検索した日付)に保存されたWebページのキャッシュ情報です。」との記載がある。
(エ)乙第4号証は、2008年10月15日にダウンロードした被請求人に係るNexgate(見積依頼先・発注先が探せるビジネスマッチングプラットフォームメディア)のウェブサイトの写しと認められるところ、このページには、被請求人会社の名称と共に取扱い商品が紹介されており、「エンドユーザ向けデータベースビューア『QuickLook』」として、「QuickLookが提供する機能・特徴」及びコンピュータ画面の写真が掲載されている。
(オ)乙第5号証の1及び2は、MSNのリスト及び被請求人に係るNexgateのウェブサイトの写しと認められるところ、該ウェブサイトには、上記(エ)とほぼ同様の内容が掲載されており、その最上段の囲み枠内に、「以下は、2008/10/20(クローラーがこのサイトを検索した日付)に保存されたWebページのキャッシュ情報です。」との記載がある。
(カ)乙第12号証は、株式会社ニッコー化学研究所から被請求人宛の2008年3月21日付けの受領書の写しと認められるところ、該受領書には、物件名として「QuickLook」の文字が記載され、商品名欄に「データベース検索ソフトQuickLook」の文字が記載されているほか、数量、金額等が記載されている。
(2)上記(1)の認定事実によれば、被請求人は、乙第1号証に示す商品カタログを用いて自己のウェブサイトにおいて、商品「プログラミングで格納されたデータベースに対し、その場で当該データを見ながら自由にデータを取り出し、見たい形で表作成を行い、また、表示項目の並べ替えが行えるソフトウェア」について広告宣伝を行っていたことが明らかであり、上記商品カタログ及びウェブサイトにおける説明によれば、上記商品は、本件取消請求に係る商品「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に属する商品といえるものである。
そして、上記商品カタログには、本件商標と社会通念上同一といえる商標が明示され、商品の説明がされているばかりでなく、その末尾には「2007年3月現在」と印刷されていることから、少なくとも2007年3月には上記商品カタログを用いて取引が行われていたものというべきである。また、上記ウェブサイトには、上記商品カタログ以外にも、本件商標と社会通念上同一といえる商標を使用して上記商品についての説明が行われているばかりでなく、上記ウェブサイトは、いずれも本件審判の請求の登録(2008(平成20)年10月21日)前3年以内である2008年9月23日、同月30日、同年10月15日又は同月20日に公開・保存されていたことが明らかである。
また、上記商品は、少なくとも、2008年3月21日に株式会社ニッコー化学研究所に販売されたものというべきである。
なお、上記ウェブサイトにおける掲載は、その内容に照らし、商標法第2条第3項第8号に定める「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものといえる。
(3)以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品」について、被請求人によって使用されていたものと認められるから、商標法第50条第1項の規定により上記指定商品についての登録を取り消すべき限りでない。
なお、被請求人は、上記(1)に示した証拠以外にも証拠を提出し、かつ、口頭審理の申立てを行っているが、前示のとおり、上記(1)の証拠によって本件商標の使用がされていることが明らかであるので、本件については口頭審理を行わず審理を進めた。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標




審理終結日 2009-07-14 
結審通知日 2009-07-17 
審決日 2009-08-07 
出願番号 商願2004-71684(T2004-71684) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平松 和雄木住野 勝也 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 内山 進
岩崎 良子
登録日 2005-04-01 
登録番号 商標登録第4853147号(T4853147) 
商標の称呼 クイックルック、ルック 
代理人 森 正澄 

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