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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
管理番号 1203838 
審判番号 無効2008-890016 
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2009-08-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第5050827号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5050827号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5050827号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成よりなり、平成15年8月21日に登録出願、第28類「スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム、チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として、同19年6月1日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標
1 本件商標が、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(49)であって、(4)、(15)、(27)ないし(31)を除き、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4160820号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成9年4月1日に登録出願、第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,紙製幼児用おしめ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,印刷用インテル,活字,装飾塗工用ブラシ,封ろう,マーキング用孔開型板,観賞魚用水槽及びその附属品」を指定商品として、同10年6月26日に立体商標として設定登録され、その後、同20年6月24日に存続期間の更新登録がされたものである。

(2)登録第4211214号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成9年4月1日に登録出願、第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,スキーワックス,釣り具」を指定商品として、同10年11月13日に立体商標として設定登録され、その後、同20年8月12日に存続期間の更新登録がされたものである。

(3)登録第4673443号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成14年12月4日に登録出願、第28類「スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として、同15年5月16日に設定登録されたものである。

(4)登録第1544380号商標(以下「引用商標4」という。)は、「KEWPIE」の文字よりなり、昭和53年3月8日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同57年10月27日に設定登録されたものである。
しかして、引用商標4の商標権は、その商標登録原簿の記載に徴すれば、平成19年10月27日に、分割(後期分)登録料不納により消滅し、その登録の抹消が同20年7月16日になされているものである。

(5)登録第4642165号商標(以下「引用商標5」という。)は、「KEWPIE」の文字を標準文字で書してなり、平成14年5月2日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年1月31日に設定登録されたものである。

(6)登録第1592154号商標(以下「引用商標6」という。)は、「キューピー」の文字よりなり、昭和54年5月30日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同58年5月26日に設定登録され、その後、同5年10月28日及び同15年1月21日に存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、平成15年6月11日に、第9類、第15類、第20類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がされたものである。

(7)登録第4455273号商標(以下「引用商標7」という。)は、「キューピー」の文字よりなり、平成11年5月10日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年2月23日に設定登録されたものである。

(8)登録第4564585号商標(以下「引用商標8」という。)は、「キューピー」の文字よりなり、平成13年7月18日に登録出願、第5類及び第29類ないし第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年4月26日に設定登録されたものである。

(9)登録第4203968号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成9年4月1日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同10年10月23日に立体商標として設定登録され、その後、同20年8月12日に存続期間の更新登録がされたものである。

(10)登録第4211212号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成9年4月1日に登録出願、第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同10年11月13日に立体商標として設定登録され、その後、同20年8月12日に存続期間の更新登録がされたものである。

(11)登録第4211213号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成9年4月1日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同10年11月13日に立体商標として設定登録され、その後、同20年8月12日に存続期間の更新登録がされたものである。

(12)登録第4240003号商標(以下「引用商標12」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成9年4月1日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年2月12日に立体商標として設定登録され、その後、同21年2月17日に存続期間の更新登録がされたものである。

(13)登録第4343327号商標(以下「引用商標13」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成9年4月1日に登録出願、第8類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年12月10日に立体商標として設定登録されたものである。

(14)登録第4575560号商標(以下「引用商標14」という。)は、別掲(2)の構成よりなり、平成9年4月1日に登録出願、第29類ないし第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年6月7日に立体商標として設定登録されたものである。

(15)登録第4600278号商標(以下「引用商標15」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成13年12月4日に登録出願、第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年8月30日に設定登録されたものである。
しかして、引用商標15の商標権は、その商標登録原簿の記載に徴すれば、平成19年8月30日に、分割(後期分)登録料不納により消滅し、その登録の抹消が同20年5月21日になされているものである。

(16)登録第4608815号商標(以下「引用商標16」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成13年12月4日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年9月27日に設定登録されたものである。

(17)登録第4621651号商標(以下「引用商標17」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成13年12月4日に登録出願、第6類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年11月15日に設定登録されたものである。

(18)登録第4621653号商標(以下「引用商標18」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成13年12月4日に登録出願、第8類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年11月15日に設定登録されたものである。

(19)登録第4621654号商標(以下「引用商標19」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成13年12月4日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年11月15日に設定登録されたものである。

(20)登録第4621659号商標(以下「引用商標20」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成13年12月4日に登録出願、第19類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年11月15日に設定登録されたものである。

(21)登録第4673441号商標(以下「引用商標21」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成14年12月4日に登録出願、第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年5月16日に設定登録されたものである。

(22)登録第4673442号商標(以下「引用商標22」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成14年12月4日に登録出願、第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年5月16日に設定登録されたものである。

(23)登録第4697645号商標(以下「引用商標23」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成14年12月4日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年8月1日に設定登録されたものである。

(24)登録第4697646号商標(以下「引用商標24」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成14年12月4日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年8月1日に設定登録されたものである。

(25)登録第4697647号商標(以下「引用商標25」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成14年12月4日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年8月1日に設定登録されたものである。

(26)登録第4726488号商標(以下「引用商標26」という。)は、別掲(3)の構成よりなり、平成14年12月4日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年11月14日に設定登録されたものである。

(27)登録第4635211号商標(以下「引用商標27」という。)は、別掲(4)の構成よりなり、平成13年2月7日に登録出願、第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年1月10日に設定登録されたものである。
しかして、引用商標27の商標権は、その商標登録原簿の記載に徴すれば、平成20年1月10日に、分割(後期分)登録料不納により消滅し、その登録の抹消が同年10月8日になされているものである。

(28)登録第4635212号商標(以下「引用商標28」という。)は、別掲(4)の構成よりなり、平成13年2月7日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年1月10日に設定登録されたものである。
しかして、引用商標28の商標権は、その商標登録原簿の記載に徴すれば、平成20年1月10日に、分割(後期分)登録料不納により消滅し、その登録の抹消が同年10月8日になされているものである。

(29)登録第4635213号商標(以下「引用商標29」という。)は、別掲(4)の構成よりなり、平成13年2月7日に登録出願、第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年1月10日に設定登録されたものである。
しかして、引用商標29の商標権は、その商標登録原簿の記載に徴すれば、平成20年1月10日に、分割(後期分)登録料不納により消滅し、その登録の抹消が同年10月8日になされているものである。

(30)登録第4635214号商標(以下「引用商標30」という。)は、別掲(4)の構成よりなり、平成13年2月7日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年1月10日に設定登録されたものである。
しかして、引用商標30の商標権は、その商標登録原簿の記載に徴すれば、平成20年1月10日に、分割(後期分)登録料不納により消滅し、その登録の抹消が同年10月8日になされているものである。

(31)登録第4641503号商標(以下「引用商標31」という。)は、別掲(4)の構成よりなり、平成12年1月27日に登録出願、第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同15年1月31日に設定登録されたものである。
しかして、引用商標31の商標権は、その商標登録原簿の記載に徴すれば、平成20年1月31日に、分割(後期分)登録料不納により消滅し、その登録の抹消が同年10月8日になされているものである。

(32)登録第4841547号商標(以下「引用商標32」という。)は、別掲(4)の構成よりなり、平成13年2月7日に登録出願、第19類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同17年2月25日に設定登録されたものである。

(33)登録第4272954号商標(以下「引用商標33」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成10年2月20日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年5月14日に設定登録され、その後、同21年3月17日に存続期間の更新登録がされたものである。

(34)登録第4275749号商標(以下「引用商標34」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成10年2月20日に登録出願、第8類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年5月21日に設定登録され、その後、同21年3月17日に存続期間の更新登録がされたものである。

(35)登録第4278358号商標(以下「引用商標35」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成10年2月20日に登録出願、第6類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年5月28日に設定登録され、その後、同21年3月17日に存続期間の更新登録がされたものである。

(36)登録第4278359号商標(以下「引用商標36」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成10年2月20日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年5月8日に設定登録され、その後、同21年3月17日に存続期間の更新登録がされたものである。

(37)登録第4312606号商標(以下「引用商標37」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成10年2月20日に登録出願、第19類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年9月3日に設定登録されたものである。

(38)登録第4343450号商標(以下「引用商標38」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成11年1月22日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年12月10日に設定登録されたものである。

(39)登録第4343451号商標(以下「引用商標39」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成11年1月22日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年12月10日に設定登録されたものである。

(40)登録第4367653号商標(以下「引用商標40」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成11年1月22日に登録出願、第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年3月10日に設定登録されたものである。

(41)登録第4367654号商標(以下「引用商標41」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成11年1月22日に登録出願、第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年3月10日に設定登録されたものである。

(42)登録第4367655号商標(以下「引用商標42」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成11年1月22日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年3月10日に設定登録されたものである。

(43)登録第4372111号商標(以下「引用商標43」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成10年2月20日に登録出願、第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年3月31日に設定登録されたものである。

(44)登録第4372209号商標(以下「引用商標44」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成11年1月22日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年3月31日に設定登録されたものである。

(45)登録第4372210号商標(以下「引用商標45」という。)は、別掲(5)の構成よりなり、平成11年1月22日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年3月31日に設定登録されたものである。

(46)登録第4230810号商標(以下「引用商標46」という。)は、別掲(6)の構成よりなり、平成9年7月8日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年1月14日に設定登録され、その後、同21年1月20日に存続期間の更新登録がされたものである。

(47)登録第4600642号商標(以下「引用商標47」という。)は、別掲(7)の構成よりなり、平成14年1月7日に登録出願、第5類及び第29類ないし第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年8月30日に設定登録されたものである。

(48)登録第4445316号商標(以下「引用商標48」という。)は、別掲(7)の構成よりなり、平成11年5月13日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年1月12日に設定登録されたものである。

(49)登録第4005325号商標(以下「引用商標49」という。)は、別掲(8)の構成よりなり、平成7年7月28日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同9年5月30日に設定登録されたものである。

2 本件商標が、商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(3)であって、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第595694号商標(以下「引用商標50」という。)は、別掲(7)の構成よりなり、昭和35年5月31日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同37年8月24日に設定登録され、その後、同48年1月12日、同57年10月26日、平成5年1月28日及び同14年5月21日に存続期間の更新登録がされ、また、指定商品については、同15年7月23日に、第30類「調味料,香辛料」を指定商品とする指定商品の書換登録がされたものである。

(2)登録第832283号商標(以下「引用商標51」という。)は、「キューピー」の文字よりなり、昭和41年8月11日に登録出願、第31類「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品として、同44年9月24日に設定登録され、その後、同55年6月27日、平成元年11月21日、同11年10月19日及び同21年4月21日に存続期間の更新登録がされたものである。

(3)登録第4575560号商標(以下「引用商標52」という。)の商標の構成及び指定商品は、上記1(14)のとおりである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第102号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、(a)乳幼児の体型であり、頭部が全身と比較して大きい。(b)裸である。(c)全体的にふっくらとしている。(d)性別がはっきりしない。(e)頭頂部に尖ったような突起があり、全体的には髪の毛が生えていない等の特徴(以下、上記(a)ないし(e)の特徴をまとめて「キューピー人形の基本的特徴」という。)を有するキューピー人形よりなるものである。
したがって、本件商標は「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を生ずるものである。

イ 引用商標1、2及び9ないし14と本件商標との類似について
引用商標1、2及び9ないし14(以下、まとめて「引用立体商標」という。)は、キューピー人形の基本的特徴を有するキューピー人形よりなるものである。
よって、引用立体商標は、「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用立体商標は、「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を共通にする類似の商標である。
次に、立体商標間における外観の類否判断について、商標審査基準は、「特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を共通にする立体商標(近似する場合を含む。)は、原則として、外観において類似する。」としている(甲第55号証)。
そして、キューピー人形よりなる本件商標及び引用立体商標について、看者がこれを観察する場合、顔面に正対する方向がその立体商標の特徴的な部分を視認し得るものとなるから、各々これが所定(特定)方向の一つに当たるものである(以下、「正面外観図」という。)。
そこで、引用立体商標と本件商標の外観について検討するに、両者は、キューピー人形の基本的特徴を共通にするものであって、さらに、両耳の上にわずかに髪の毛があること、胴部分が所謂ずんどうであり、膨れており、体長に比べ手足が短いこと等の特徴を共通にするものである。
よって、本件商標と引用立体商標とは、外観において、これら多数の共通点を有するものであるから、これを時と処を異にする離隔的観察をした場合、看者をして見誤らせるおそれのある、外観上類似する商標である。
そして、本件商標の指定商品と引用立体商標の指定商品は、同一若しくは類似の商品である。
したがって、本件商標は、引用立体商標と「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を共通にする類似の商標であるのみならず、外観においても類似する商標であって、同一若しくは類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

ウ 引用商標3及び15ないし49と本件商標との類似について
引用商標3及び15ないし49(以下、まとめて「引用図形・結合商標」という。)は、「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を生ずるものである。
よって、本件商標は、引用図形・結合商標と「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を共通にする類似の商標である。
次に、引用図形・結合商標(平面商標)の図形部分と本件商標(立体商標)の外観の類似については次のとおりである。
立体商標と平面商標の外観について検討するに、キューピー人形よりなる本件商標については、看者がこれを観察する場合、顔面に正対する方向がその立体商標の特徴的な部分を視認し得るものとなるから、かかる方向から観た場合に視覚に映る姿をもって、平面商標である引用図形・結合商標と対比すべきである。
そこで、顔面に正対する方向から見た場合に視覚に映る姿をもって対比すると、引用図形・結合商標の図形部分と本件商標は、キューピー人形の基本的特徴を共通にするキューピー人形よりなるものであって、さらに、胴部分が所謂ずんどうであり、膨れており、体長に比べ手足が短い等の特徴を共通にするものである。
よって、引用図形・結合商標と本件商標は、外観において多数の共通点を有するものであるから、これを時と処を異にする離隔的観察をした場合、看者をして見誤らせるおそれのある、外観上類似する商標である。
そして、引用図形・結合商標の指定商品と本件商標の指定商品は、同一若しくは類似の商品である。
したがって、本件商標は、引用図形・結合商標と「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を共通にする類似の商標であるのみならず、外観においても類似する商標であって、同一若しくは類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

エ 引用商標4ないし8と本件商標との類似について
引用商標4ないし8(以下、まとめて「引用文字商標」という。)は、「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を生ずるものである。
そして、本件商標の指定商品と引用文字商標の指定商品は、同一若しくは類似の商品である。
したがって、本件商標は、引用文字商標と「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を共通にする類似の商標であって同一若しくは類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

オ 結論
以上述べたとおり、本件商標は、引用立体商標、引用図形・結合商標及び引用文字商標と類似する商標であって、その指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し登録を受けることのできない商標である。
したがって、本件商標は商標法第46条第1項により無効とされるべきである。

(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標50ないし52との類似について
本件商標は、キューピー人形よりなるものであり、これより「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を生ずることは、すでに詳述したとおりである。
そこで、顔面に正対する方向から見た場合に視覚に映る姿をもって対比すると、本件商標及び引用商標50は、キューピー人形の基本的特徴を共通にするキューピー人形よりなるものであって、さらに、胴部分が所謂ずんどうであり、膨れており、体長に比べ手足が短い等の特徴を共通にするものである。
よって、本件商標と引用商標50とは、外観において多数の共通点を有するものであるから、これを時と処を異にする離隔的観察をした場合、看者をして見誤らせるおそれのある、外観上類似する商標である。
したがって、本件商標は、引用商標50と「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を共通にする類似の商標であるのみならず、外観においても類似する商標である。
引用に係る引用商標51は、「キューピー」の片仮名文字を書してなるものであるから、「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標51は、「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を同一にする類似の商標である。
引用商標52は、キューピー人形の基本的特徴を有するキューピー人形よりなるものである。
したがって、引用商標52は「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を生ずるものである。
そこで、引用商標52と本件商標の外観について検討するに、両者は、キューピー人形の基本的特徴を共通にするものであって、さらに、両耳の上にわずかに髪の毛があること、胴部分が所謂ずんどうであり、膨れていること、体長に比べ手足が短いこと等の特徴を共通にするものである。
よって、引用商標52と本件商標とは、外観において、これら多数の共通点を有するものであるから、これを時と処を異にする離隔的観察をした場合、看者をして見誤らせるおそれのある、外観上類似する商標である。
したがって、本件商標と引用商標52は、「キューピー」(キューピー人形)の称呼・観念を共通にするものであるのみならず、外観においても類似する商標である。

イ 引用商標50ないし52の周知著名性について
(ア)経緯
請求人「キューピー株式会社」は、大正8年(1919年)に設立された会社であり、大正14年に我が国初の国産マヨネーズの製造を開始し、「キューピー」の文字及び「キューピー人形」よりなる商標を付して発売してから今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきたものである(甲第60号証及び甲第61号証)。
そして、戦後の国民の食生活の欧風化に伴い、欧風食に合うマヨネーズが爆発的に売れるようになったことにより、「キューピー」「キューピー人形」の商標は、日本全国津々浦々にまで知れ渡るに至ったものである。
請求人は、「キューピー」「キューピー人形」の商標を付したマヨネーズが全国的なシェアーを持つに至ったことから、昭和32年に社名を「キューピー株式会社」に変更し、以来、今日までその社名を使用し続けてきたものである。
また、請求人は、欧風食に合うマヨネーズ、各種ドレッシング、タルタルソース、マスタード等の調味料に加え、パスタソース、ベビーフード等の加工食品についても「キューピー」、「キューピー人形」の商標を使用し発売し、これらの商品が全国的規模で売れたことから、本件商標の登録出願前には、「キューピー」といえば、直ちにマヨネーズをはじめとする上記商品或いは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである(甲第62号証及び甲第63号証)。
上記事実は、雑誌に「日本のマヨネーズの代名詞、キューピー。実はドレッシング、介護食など14分野でトップシェア商品を持つ。」として紹介されていることより確認することができる(甲第64号証)。

(イ)商標「キューピー」、「キューピー人形」の使用に係る商品のシェアー及び順位
請求人の取り扱いに係る商品は単に多種多様にわたるものであるのみならず、例えば、商標「キューピー」、「キューピー人形」の使用に係るソース類缶詰等の商品の日本国内における請求人の年度別シェアー及び順位は、甲第65号証及び甲第66号証のとおり、第1位(33回)、第2位(10回)、第3位(3回)と非常に高いものである。

(ウ)企業ブランド「キューピー」
「キューピー」は企業ブランドとしても、需要者から極めて高い評価を得ているものである。
例えば、企業ブランド知覚指数・消費者版ランキング等の第三者が行ったアンケート調査において、第1位(5回)、第2位(1回)、第3位(2回)、第4位(1回)と非常に高い評価結果を得ており、このことは、上記事実を裏付けるものでもある。

(エ)引用商標50の宣伝・広告
請求人は、引用商標50を付した商品広告を1968年から現在まで継続的に多数の雑誌に掲載してきたところである(甲第76号証の1及び2)。
さらに、上記以前の引用商標50を付した商品広告については、1968年から2005年の商品広告が「キューピー広告傑作選 1968-2005」と題して、「広告批評」2005年5月号に、商品広告そのものが掲載されている(甲第76号証の3)。
上記のように、引用商標50は、本件商標の登録出願の遙か以前から現在にいたるまで、膨大な発行部数を誇る多数の雑誌に長期間にわたり請求人により商品広告に使用されてきたことにより、極めて高い著名性を有するに至ったものであることは明白である。
さらに、引用商標50を付した商品広告は、それ自体が雑誌記事として取り上げられいる事実からも、その著名度が判るものである。

(オ)引用商標50及び51の防護標章登録等
特許庁において、引用商標50及び51は、需要者の間に広く認識されている著名な商標であって、他人がその登録商標の指定商品及びこれに類似する以外の商品又は役務について他人が使用することにより混同を生ずるおそれがあるものとして、防護標章の登録が認められているものである。
すなわち、引用商標50は、旧区分に関してはその指定商品の属する区分(旧第31類)を除く全ての区分について、現行区分に関しては全区分について出所の混同のおそれがあるとして防護標章の登録がなされているものである(甲第57号証)。
同じく、引用商標51は、旧区分に関しては22の区分について、現行区分に関して商品は2区分、役務は全区分について出所の混同のおそれがあるとして防護標章の登録がなされているものである(甲第58号証)。
また、引用商標50及び51は、特許電子図書館(IPDL)に日本国の周知・著名商標として収録されているものである(甲第77号証)。
さらに、引用商標50及び51は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN THIRD EDITION」に日本の著名商標として掲載されているものでもある(甲第78号証)。

(カ)引用商標52の宣伝・広告
請求人は、引用商標52について、そのタイトルを「Deli」編(2004年10月?2005年5月)、「Market」編(2004年9月?2004年12月)、「80周年キャンペーン」編(2005年3月?2005年5月)、「変身」編(2005年9月?2006年3月)、「パクパク・ぐんぐん」編(2001年5月?2002年2月)とする所謂テレビコマーシャルの全国放映を行ってきたところである(甲第79号証)。
さらに、請求人は、商品の販売及び宣伝広告を目的として、引用商標52を、全国の多くの小売店舗内に積極的に展示し使用している。具体的には、小売店舗において、請求人の取り扱いに係る各種商品(指定商品)を大量に陳列した特売(大量陳列フェア)を行う際に、それらの特売商品とともに、引用商標52を顧客の目に留まる態様で展示し使用している。1回の展示期間は、通常は大量陳列された商品の特売期間(1週間ないし2週間程度)である。このように引用商標52を使用する方法は、請求人が、人形メーカー(株式会社ナカジマコーポレーション)に、請求人専用のキューピー人形の製造を初めて委託した1971年頃から現在に至るまで、日本全国津々浦々のスーパーマーケットにおいて、反復継続的に頻繁に実施されている(甲第80号証の1、6及び7)。
引用商標52を使用した大量陳列フェアの総開催回数は定かではないが、甲第80号証の1に示すとおり、請求人は、1987年7月以降に開催された多くの大量陳列フェアのうちの一部の写真を保管しており、かかる写真のみで立証可能な大量陳列フェア開催期間内の来店客数について試算すると、延べ3,559,563人である。
すなわち、現時点で立証可能な範囲のみの大量陳列フェア開催期間中においてですら、延べ3,559,563人という非常に多数の消費者(需要者)が、引用商標52に接し、これを認識したことになる。
また、請求人は、商品の宣伝、事業内容の紹介等にあたり、引用商標52を積極的に使用しているところである。
例えば、2001年以降では、「キューピー記者懇談試食会(通称:キューピーブランチ)」(雑誌の編集者、新聞記者、テレビ関係者等のマスコミ関係者にキューピーグループの業務に係る新商品やリニューアル商品を紹介する商品説明会)、「外食産業フェア」、「キューピーズキッチン」(請求人の大規模なメーカーフェア)、「お客様試食会」、「業務用新製品試食説明会」(雑誌の編集者、新聞記者などの報道関係者にキューピーグループの業務に係る業務用の新製品を紹介する商品説明会)、「総合プレゼンテーション」等の形式で行われており、それらの会場には必ず引用商標52が、請求人の取り扱いに係る各種商品や事業内容を示す展示物と共に展示して使用されている。
上記については、「電子かわら版iQp」(キューピーグループ従業員専用ホームページ)に記事としてアップロードされており、その事実を確認することができる(甲第81号証の1ないし17)。
そして、これらが新聞に引用商標52の写真入り記事となったものでもある(甲第82号証の1ないし6)。
さらに、引用商標52は、それ自体がテーマとして雑誌、書籍にとりあげられたものでもあり、これらの事実からも、その著名度が判るものである(甲第82号証の7及び8)。

(キ)結論
引用商標50ないし52は、上述の商品別シェアーの高さ、企業ブランドの高い評価、宣伝・広告の実績、新聞・雑誌における記事掲載、書籍のテーマ、防護標章登録の状況等から、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者・需要者間に広く認識されている周知・著名商標であることは明白である。

ウ 食品とトランプ・縄跳び用の縄の近似性
雪印乳業株式会社、日本ミルクコミュニティ株式会社、カルビー株式会社、サントリー株式会社、日清食品株式会社等の食品メーカー、販売業者がトランプをプレゼントするとの消費者キャンペーンを行ってきた事実がある(甲第85号証)。
請求人も、1970年頃に他の食品メーカーと同様にトランプをプレゼントするとの消費者キャンペーンを行ったことがある(甲第86号証)。
このように多数の食品メーカーや販売業者等が、消費者キャンペーンのプレゼント商品としてトランプを選択する事実は、食品の需要者とトランプの需要者が相当程度重なっていると一般的に認識されていることを示すものである。
そして、YAHOO オークションにおいて、食品についての商標が背面若しくはケースに表示されたトランプが多数出品されている事実がある。これらオークションサイトに出品されたトランプは、販売用に製造されたものか消費者キャンペーンのプレゼント用に製造されたものかは定かではないが、いずれにしても、食品の需要者とトランプの需要者が相当程度重なっているとの認識の下で製造され頒布されたものであると推察される(甲第87号証)。
さらに、食品とトランプ・縄跳び用の縄は、飲食料品・生活用品の小売を主としたスーパーマケットの同一店舗において販売されているものである(甲第88号証)。
このように商品の販売店を共通にするという事実は、その商品の需要者が相当程度共通であることを示すものである。
したがって、食品とトランプ・縄跳び用の縄は、その需要者層を相当程度共通にする商品であり、近似する商品といわざるを得ないものである。
さらに、本件商標に係る指定商品中、トランプ・縄跳び用の縄以外の商品についても、トランプ・縄跳び用の縄と同様に食品と需要者層を相当程度共通にするもの若しくは一般の需要者が使用するものであって、近似する商品といわざるを得ないものである。

エ 本件商標をその指定商品について使用した場合の混同のおそれについて
本件商標は、引用商標50ないし52と類似する商標であること。
引用商標50ないし52が、周知著名な商標であること。
引用商標50ないし52の指定商品「食品」と「トランプ・縄跳びの縄」をはじめとする本件商標の指定商品が近似する商品であること。
上記により、本件商標は、その指定商品について使用した場合、その商品が請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品であるかの如く混同を生じさせるおそれのある商標であって、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

オ 結論
以上述べたとおり本件商標は、請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当し登録を受けることができない商標である。
したがって、本件商標は商標法第46条第1項により無効とされるべきである。

2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項11号について
ア 被請求人は、引用商標を幼児の一般的特徴と要部に分けた上で、幼児の一般的特徴を除いた引用商標の要部のみと本件商標とを比較している。
しかしながら、商標の類否は、需要者の通常有する注意力を基準として、商標の称呼・外観・観念によって全体的に考察して判断するべきというのが、商標法・審査基準及び判例の考え方である。
この基準によって本件を検討するに、本件商標又は引用商標に接する需要者が、その通常の注意力によって、キューピーの図形や立体的形状等からなる引用商標について、その構成をわざわざ幼児の一般的特徴部分とその他の部分(被請求人が指摘する「要部」)に分けて認識することは到底考えられないものである。
したがって、被請求人の上記の考え方は的外れといわざるを得ない。

イ 被請求人は、図形の標章はウイーン分類に従って分類され、本件商標と引用商標(図形商標および結合商標の図形部分)が「裸の子供」に分類されることを理由に、「裸(の子供)であるというだけでは、同一ないし類似の標章であると考えることはできない。」と主張する。
請求人は、上記の被請求人の主張の意図を正確には理解しかねるが、請求人は、裸(の子供)であるというだけの理由で本件商標と引用商標が類似していると主張しているわけではない。
また、そもそも、ウイーン分類は図形要素を含む商標の検索処理の促進等を目的とするものであり、我が国における商標の類否判断とは無関係のものである。
したがって、被請求人の上記の主張は的外れといわざるを得ない。

ウ 被請求人は、「本件商標には、『キューピー』という称呼は使用されていないから、引用商標(文字商標および結合商標)との間にも類似性はない。」と主張する。
しかしながら、被請求人は、本件商標の審査において提出した平成16年3月10日付け意見書において、「本願商標が表す『キューピー』は『キューピッド』とは異なるものであり・・」等のように、本件商標が「キューピー」を表したものであることを自認しているものである(甲第91号証)。 また、請求人が調べたところ、被請求人は、本件商標と同一形状と思われる人形を「Kewpie」の文字が大きく表示された包装に入れて販売していた事実がある(甲第92号証)。
これらの事実がありながら、本件審判の段階になって本件商標から「キューピー」の称呼・観念が生じないとする被請求人の主張は到底認められるものではない。
また、被請求人は、「本件商標がキューピーと呼ばれたとしても、ローズ・オニールの創作した著作物であるキューピー人形を指す名称として用いられているにすぎない」と主張する。
しかし、後述するように、「ローズ・オニールの創作した著作物であるキューピー人形」自体が本件商標の指定商品の取引者又は需要者において一般的に知られているとはいえないため、そのような状況においては、本件商標から「キューピー」の称呼が生じれば、同じく「キューピー」の称呼を生じる引用商標との間で混同が生じることは明らかである。
さらに、被請求人は、「引用商標によって請求人の有する識別力の範囲は、せいぜい『キューピー・マヨネーズ』という称呼や『キューピー・マヨネーズ』という観念にとどまる。」と主張するが、引用商標は「マヨネーズ」に関連する文字・図形等を含むものではないため、引用商標から上記称呼及び観念が生じる根拠は全くない。引用商標からは、その構成する図形又は文字から「キューピー」の称呼・観念が生じることは明らかである。

エ 被請求人は、「請求人には『キューピーの基本的特徴』に対する独占権はない。」と主張するが、請求人が問題としているのは、本件商標のように、請求人の登録商標である引用商標との間で出所の混同が生じるおそれがある第三者の商標である。

オ 被請求人は、「請求人も、キューピーの人気にただ乗りした者の一人である。請求人が、キューピー・ブームに便乗し、ローズ・オニールの創作したキャラクターや名称を剽窃して商標登録した…。」と主張する。
請求人と被請求人との間では、過去に、ローズ・オニールの創作に係るキューピーのイラスト・人形及びその二次的著作物について被請求人が所有する著作権に関し、複数の著作権侵害訴訟を争った経緯があり、当該訴訟においては、いずれも請求人の行為が被請求人の著作権を侵害したとは認定されなかった(甲第93号証ないし甲第96号証)。
そして、これらの判決はすでに確定している。
そもそも、被請求人が自認しているとおり、ローズ・オニールが創作したキューピーに関する著作権は2005年5月で消滅している。
また、ローズ・オニールの創作に係るキューピーのイラスト・人形の著作物に基づき、被請求人が請求人の「キューピー」の文字よりなる商標の登録第763185号に対して請求した無効審判の審決(平成10年審判第35271号、甲第97号証)及びその審決に対する審決取消訴訟の判決(平成12年(行ケ)第387号、甲第98号証)並びに被請求人が請求人の「キューピーの人形」の図形よりなる商標の登録第595694号に対して請求した無効審判の審決(平成10年審判第35270号、甲第99号証)及びその審決に対する審決取消訴訟の判決(平成12年(行ケ)第386号、甲第100号証)においても、請求人の商標は商標法第4条第1項第7号には該当しないとの認定を受けている。
したがって、請求人の行為がローズ・オニールの創作したキャラクターや名称の剽窃と指摘されるいわれはなく、被請求人の主張には根拠がないものである。

カ 被請求人は、キューピーをモチーフとした他社及び被請求人の商標が複数登録されている点を指摘する。
これによって何を主張することを被請求人が意図しているのかは不明だが、いずれの商標も本件商標とは構成態様又は指定商品等を異にするものであり、本件とは事案を異にするものである。
したがって、これらの登録例の存在は、本件商標と引用商標の類否に影響を及ぼすものではない。

キ 結論
上に述べてきたとおり、答弁書における被請求人の主張は不当又は根拠がないものであり、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものであると確信する。

(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 被請求人は、引用商標の著名性に関し、東京高等裁判所平成15年(行ケ)第192号審決取消請求事件判決及び同平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件判決を引用し、「上記裁判例は、引用商標の著名性は、『マヨネーズ、ドレッシング、その他の加工食品』の範囲に限られると判断している。」と指摘する。
これに関しては、被請求人自身が答弁書にも判例の記述を引用して記載しているとおり、請求人の引用商標が広く知られていると認定された分野は、正確には、「マヨネーズ、ドレッシング、その他の加工食品及びこれと密接に関連する分野」であるので、上記の被請求人の主張は誤りである。

イ 被請求人は、「ローズ・オニールの創作したキューピーは、ローズ・オニールの著作物として著名性を有する」として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出する。
しかし、これらの乙号証は、ローズ・オニールのイラストが掲載された雑誌の抜粋、ローズ・オニールの著作とされるキューピー人形の写真、書籍の抜粋等であるが、これらの証拠によっては、我が国の取引者又は需要者において「ローズ・オニールの創作したキューピーは、ローズ・オニールの著作物として著名性」を有することは立証されないことは明らかである。
また、被請求人は、「請求人は、本件商標の指定商品である『スキーワックス、遊園地用機械器具』等の分野において商品の取引を行っていない。したがって、引用商標の著名性は、『マヨネーズ、ドレッシング、その他の加工商品』の範囲に限られ、本件商標の指定商品に及ばない。」と主張する。
しかしながら、請求人は、本件指定商品に含まれる「トランプ」を消費者に過去にプレゼントしたことがあり、食品各社が消費者キャンペーン等でトランプを使用しており、「トランプ」等と食品は密接に関連するという事情は、現在の取引市場においてもあてはまるものである。
よって、引用商標の著名性は、本件商標の指定商品の範囲にまで及ぶとするのが相当である。
さらに、被請求人は、請求人(広報室)の「キューピーはみんなのもの」と述べたという新聞記事を指摘し、「これは引用商標の存在にもかかわらず「キューピーの基本的特徴」を独占しないことを公言したものである。」とするが、乙第47号証をみれば分かるとおり、そもそも上記の請求人(広報室)の発言は、「ご当地キューピー人形」を歓迎する趣旨のものであり、引用商標の権利とは無関係のものである。

ウ 被請求人は、「『キューピー』という名称は、本来的には、ローズ・オニールのキューピー・キャラクターを意味するが、現在では、請求人が主張するキューピーの基本的特徴を有するキューピー・キャラクターを示す名称として一般名称化している。」と主張する。
しかしながら、被請求人は、上記の主張の根拠となる証拠を一切提出していない。
一般名称化しているか否かは当該名称が使用される商品との関係によって判断されるべきであるところ、例えば、商品「キューピー人形」については「キューピー」という名称は一般化していると思われるが、それ以外の本件商標の指定商品「スキーワックス、遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。)、囲碁用具」他については、「キューピー」の名称が一般名称化しているとは決していえないものである。
また、被請求人は、「引用商標には、『キューピー』との称呼を生じる文字が図形とともに記載されている結合商標があるが、『キューピー』の名称はキューピー・キャラクターの一般名称として全国的に使用されているのであるから、その称呼自体に識別力はない。請求人は、引用商標の称呼の識別力を主張していないが、識別力は、『キューピー』という称呼以外の部分、つまり、イラストとの組み合わせにのみ生じると思われる。」と主張する。 この被請求人の主張は、引用商標5に加えて、標準文字・普通書体によるものを含む「キューピー」「KEWPIE」の文字のみによる商標が、自他商品識別力を有することを前提に古くから最近に至るまで幅広い商品分野において多数登録されている事実(甲第2号証、甲第3号証、甲第27号証、甲第28号証、甲第42号証)を根底から否定するものであって、明らかに不当である。

エ 結論
以上に述べてきたとおり、答弁書における被請求人の主張は不当又は根拠がないものであり、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものであると確信する。

(3)被請求人は、「請求人は、ローズ・オニールの創作した『キューピー』の名称やキャラクターの著名性にただ乗りする目的で、キューピーの図柄やキューピーの名称を剽窃して出願した(乙第10号証)。したがって、引用商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に反して登録された公序良俗違反の商標である。」と主張する。
これについては、請求人の行為がローズ・オニールの創作したキャラクターや名称を剽窃であると指摘されるいわれはないことは、前記2(1)オのとおりであるから、本件無効審判の請求は請求人の権利濫用であるとする被請求人の主張は根拠がない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第103号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号に該当するとの主張について
(1)引用商標1ないし49と本件商標との類似性
ア 請求人の主張する「キューピー人形の基本的特徴」は幼児の特徴を主張するものにすぎない。
請求人は、「キューピー人形の基本的特徴」として、(a)乳幼児の体型であり、頭部が全身と比較して大きい。(b)裸である。(c)全体的にふっくらとしている。(d)性別がはっきりしない。(e)頭頂部に尖ったような突起があり、全体的には髪の毛が生えていない、との各特徴を挙げる。 ところで、標章の図形は、「ウイーン分類」に従って分類されている。ウイーン分類によれば、本件商標および引用商標は、「人間」のうち、「子供」に分類される。「子供」は、さらに細かく分類されている。
本件商標と引用商標(図形商標および結合商標の図形部分)の場合、双方とも、「乳児」、「裸の子供」に該当する。したがって、(b)裸(の子供)であるというだけでは、同一ないし類似の標章であると考えることはできない。
さらに、(a)乳幼児の体型であり、頭部が全身と比較して大きい。(c)全体的にふっくらとしている。(d)性別がはっきりしない。(e)頭頂部に尖ったような突起があり、全体的には髪の毛が生えていない、という請求人が主張する「キューピー人形の基本的特徴」も、乳児の一般的特徴にすぎない。立体商標についても同様である。
以上より、引用商標(図形商標、結合商標の図形部分および立体商標)の要部は、請求人が主張する乳児の一般的特徴にあるのではなく、裸の子供に付け加えられた特徴を除いた部分である表情と姿勢(手足の位置)に存在する。しかし、請求人は、「引用商標の基本的特徴」を主張していない。

イ 引用商標1ないし49
(ア)引用立体商標
引用立体商標の要部は、表情につき、(a)眉毛は目に近い位置に細長く描かれていること、(b)目はまつげが非常に長く、白目部分の面積が少ないこと、(c)口元は左右に引かれているが微笑みはないこと、(d)上記の各要素の組合せによりシリアスな表情であることにあり、姿勢につき、(e)股下からつま先まで脚を揃え直立したポーズであること、(f)腕を斜め上にあげ、手のひらを正面向きに広げていることにある。

(イ)引用商標3及び15ないし48
図形商標・結合商標の要部は、表情につき、(a)眉毛は描かれていないこと、(b)まつげはないこと、(c)目の形は円形であり、黒目部分の面積が白め部分に比べて小さいこと、(d)口は閉じているが特徴はないこと、(e)上記の各要素の組合せにより無表情であること、姿勢につき、(f)股下からつま先まで脚を揃え直立したポーズであること、(g)腕を斜め上にあげ、手のひらを正面向きに広げていることにある。

(ウ)引用商標49
引用商標49の要部は、表情につき、(a)眉毛は目に近い位置に細長く描かれていること、(b)目はまつげが非常に長く、白目部分の面積が少ないこと、(c)口元は左右に引かれているが微笑みはないこと、(d)上記の各要素の組合せによりシリアスな表情であることにあり、姿勢につき、(e)股下からつま先まで脚を揃え直立したポーズであること、(f)腕を斜め上にあげ、手のひらを正面向きに広げていることに認められる。

(エ)本件商標との類似性
本件商標の要部は、表情につき、(a)眉毛は、目から離れた位置に点状に描かれていること、(b)まつげは短めで、くりくりした目であり、白目部分が目立つこと、(c)口は閉じられ、唇は横に強く引かれ口角が上に上がっていること、(d)上記の各要素の組合せによりおどけた表情であること、姿勢につき、(e)股下からつま先まで脚を接触することなく、足のつま先部分をやや内側に向けて立っていること、(f)両腕の位置も斜め下に下げ、手のひらを下向きにしていることにある。
したがって、引用商標1、2、9ないし14及び47ないし49(引用立体商標)が、無表情またはシリアスな表情で、股下からつま先まで脚を揃え、腕を斜め上にあげ、手のひらを正面向きに広げて直立したポーズをとっている幼児であるのに対して、本件商標は、おどけた表情で、股下からつま先まで脚が接触している部分はなく、両腕の位置も斜め下に下げ、手のひらを下向きにしているポーズをとっている幼児である点において、完全に異なっているのであって、両商標との間には類似性はない。
また、本件商標には、「キューピー」という称呼は使用されていないから、引用商標3ないし8及び15ないし46(文字商標および結合商標)との間にも類似性はない。なお、本件商標がキューピーと呼ばれたとしても、ローズ・オニールの創作した著作物であるキューピー人形を指す名称として用いられているにすぎない。
さらに、引用商標1ないし49に「キューピー」という観念が生じたとしても、キューピーは本来、ローズ・オニールの創作した著作物であるキューピー人形を指す名称であって、請求人は引用商標1ないし49の識別力が生じる部分を主張していない。これについて、判断するならば、引用商標1ないし49によって請求人の有する識別力の範囲は、せいぜい「キューピー・マヨネーズ」という称呼や「キューピー・マヨネーズ」という観念にとどまる。

(2)請求人には「キューピーの基本的特徴」に対する独占権はない。
請求人は、キューピー人形があたかも請求人の所有物であるかのような前提で、「キューピー人形の基本的特徴」すべてに独占権があるかのような主張をしている。
しかしながら、請求人には、「キューピーの基本的特徴」に対する独占権はない。

ア ローズ・オニールによるキューピー人形の創作
米国人ローズ・オニールは、1909年、「レディース・ホーム・ジャーナル」誌クリスマス特集号に初めて「クリスマスでのキューピーたちの戯れ」でキューピーのイラストを発表した(乙第3号証)。以後ローズ・オニールは、「レディース・ホーム・ジャーナル」誌及び「ウーマンズ・ホーム・コンパニオン」誌などにキューピー・シリーズを連載した(乙第4号証)。ローズ・オニールは、このキューピーのイラストのヒットに引き続いて、イラストを立体化し(乙第5号証)、1913年11月20日、その創作した「キューピー」(Kewpie)人形を発行した(乙第6号証ないし乙第8号証、乙第9号証の24頁、乙第10号証)。
東京高等裁判所平成15年(行ケ)第192号審決取消請求事件は、「キューピー人形」の由来について、乙第1号証のとおり認定した。
上記判決において認定されているとおり、「キューピー」とは、本来、米国の女流画家であるローズ・オニールが創作したキャラクターである。すなわち、「キューピー」とは、本来、ローズ・オニールの創作したイラスト中のキャラクターやそれを立体化したキューピー人形を示す称呼および観念である。つまり、「キューピー」とは、引用商標1ないし49を示す称呼および概念ではない。

イ 請求人による商標登録の経緯
ローズ・オニールの創作したキューピーは、1913年に日本に入るや、たちまち大人気となり「キューピー・ブーム」を生じた。キューピーの歌が二つも作られ、小説にも登場するほど、著名なものとなった(乙第9号証の24?25頁)。そのため、日本においてキューピーの人気にただ乗りして、これを商標登録したり、商品開発したりする者がでてきた(乙第10号証の45頁)。
請求人も、キューピーの人気にただ乗りした者の一人である。請求人が、キューピー・ブームに便乗し、ローズ・オニールの創作したキャラクターや名称を剽窃して商標登録した経緯は、乙第10号証の46頁のとおりである。
引用商標1ないし49が、日本においてキューピーの人気にただ乗りして、商標登録されたものであるとの事実は、原告を請求人とする東京高等裁判所平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件においても、乙第2号証のように判断されているとおりである。

ウ キューピーに着想を得た他社商標
キューピーをモチーフとした商標は、請求人だけではなく、多数の者が登録を行っている。東京高等裁判所平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件判決(乙第2号証)が認定した一例として、「キューピー人形」が日本人に広く知られていたことを示すものとして、「キューピー人形」をモチーフとした商標を採用し、これを商標登録している会社は、原告Aのほかにもいくつか存在するという事実(乙第15号証ないし乙第31号証)がある。
ところで、ローズ・オニールの死後、ローズ・オニールの創作したキューピーの著作権は、ローズ・オニールの遺産の管理を目的とする米国ミズーリ州法人であるローズ・オニール遺産財団(法定代理人デビッド・オニール)に承継された(乙第11号証、乙第12号証)。被請求人は、平成10年5月1日、ローズ・オニール遺産財団からローズ・オニールが創作した全てのキューピー作品に対する日本における著作権を譲り受けた(乙第13号証)。その上で、被請求人は、キューピーをモチーフとし、あるいはキューピーの名称を用いて、多数の商標を登録し(乙第14号証の1ないし12)、この中には本件商標の指定商品と指定商品を同じくして登録しているものもある(乙第14号証の1ないし7)。
その他、請求人だけではなく多数の者が、引用商標1ないし49の指定商品と同一または類似の商品を指定商品として、キューピーをモチーフとした商標の登録を行っている。

エ 請求人以外の者による「キューピー」の使用
ローズ・オニールが創作したキューピーの著作権は2005年5月まで存続していた(乙第43号証、36頁)。現在では、著作権は消滅したが、キューピー・ブームは続き、請求人以外の多数の者がキューピー関連商品を発売しキューピー関連マークを使用している(乙第44号証ないし乙第78号証)。
したがって、請求人は、「キューピー人形の基本的特徴」を独占できないのであって、引用商標の要部は、ローズ・オニールの創作したオリジナルの「キューピーの基本的特徴」に請求人が独自に付加した部分にのみ存在する。
(3)引用商標1ないし3及び9ないし49の要部および本件商標との類似性
以上より、引用商標1ないし3及び9ないし49の要部は、請求人の主張する「キューピーの基本的特徴」ではなく、ローズ・オニールの創作したオリジナルのキューピーに請求人が付加した部分に認められることとなるが、請求人はこれを主張していない。
敢えて引用商標1ないし3及び9ないし49の要部となりうる特徴を挙げれば、ローズ・オニールが創作したキューピーを変更して、無表情またはシリアスな表情で、股下からつま先まで脚を揃え、腕を斜め上にあげ、手のひらを正面向きに広げて直立したポーズをとっている幼児であることに限定される。
これに対して、本件商標は、おどけた表情で、股下からつま先まで脚が接触している部分はなく、両腕の位置も斜め下に下げ、手のひらを下向きにしているポーズをとっている幼児である点において、完全に異なっているのであって、両商標との間には類似性はない。
また、本件商標には、「キューピー」という称呼は使用されていないから、引用商標3ないし8及び15ないし46(文字商標および結合商標)との間にも類似性はない。
さらに、引用商標1ないし49に「キューピー」という観念が生じたとしても、キューピーは本来、ローズ・オニールの創作した著作物であるキューピー人形を指す名称であって、請求人は引用商標1ないし49の識別力が生じる部分を主張していない。
これについて、判断するならば、引用商標1ないし49によって請求人の有する識別力の範囲は、せいぜい「キューピー・マヨネーズ」という観念にとどまる。

(4)結論
本件商標には「引用商標1ないし3及び9ないし49の基本的特徴」は存在しないから、引用商標1ないし49と本件商標との間に同一性・類似性はなく、商標第4条第1項第11号に該当しない。

2 商標法第4条第1項第15号に該当するとの主張について
(1)本件商標と引用商標50ないし52の同一性・類似性
本件商標と引用商標50ないし52との間に同一性・類似性がないことはすでに主張したとおりである。

(2)引用商標の著名性
請求人は、引用商標50ないし52の著名性について主張するが、東京高等裁判所平成15年(行ケ)第192号審決取消請求事件判決は、引用商標の著名性について、乙第1号証のように判断している。
また、東京高等裁判所平成15年(行ケ)第103号審決取消請求事件判決においても、乙第2号証のように判断されている。
以上より、上記裁判例は、引用商標の著名性は、「マヨネーズ,ドレッシング,その他の加工食品」の範囲に限られると判断している。

(3)ローズ・オニールの創作したキューピーの普及
ローズ・オニールの創作したキューピーは、ローズ・オニールの著作物として著名性を有する(乙第1号証ないし乙第10号証)。現在では、著作物の著作権保護期間が経過したため、多数の者がキューピーをモチーフとした商品を販売している(乙第44号証ないし乙第80号証)。しかし、請求人は、本件商標の指定商品である「スキーワックス、遊園地用機械器具」等の分野において商品の取引を行っていない。したがって、引用商標の著名性は、「マヨネーズ,ドレッシング,その他の加工食品」の範囲に限られ、本件商標の指定商品に及ばない。
なお、請求人(広報室)は、「キューピーはみんなのもの」である旨述べているが(乙第47号証)、これは引用商標の存在にもかかわらず「キューピーの基本的特徴」を独占しないことを公言したものである。

(4)「キューピー」の名称の普及
キューピーという名称は、本来的には、ローズ・オニールのキューピー・キャラクターを意味するが、現在では、請求人が主張するキューピーの基本的特徴を有するキューピー・キャラクターを示す名称として一般名称化している(乙第44号証ないし乙第80号証)。
引用商標50ないし52には、「キューピー」との称呼を生じる文字が図形とともに記載されている結合商標があるが、「キューピー」の名称はキューピー・キャラクター一般名称として全国的に使用されているのであるから、その称呼自体に識別力はない。請求人は、引用商標50ないし52の称呼の識別力を主張していないが、自他商品識別力は、「キューピー」という称呼以外の部分、つまり、イラストとの組み合わせにのみ生じると思われる。

(5)結論
したがって、本件商標と引用商標50ないし52は、称呼・外観・概念のいずれにおいても異なり、さらに、引用商標50ないし52の著名性は、「マヨネーズ,ドレッシング,その他の加工食品」の範囲に限られ、請求人の商品と本件商標を付した被請求人の商品との間に混同を生じるおそれはないのであるから、本件商標に商標法第4条第1項第15号は適用されない。

3 権利濫用について
(1)商標法第4条第1項第7号について
引用商標1ないし52は、国際信義に反する商標として、商標法第4条第1項第7号により無効とされるべきであるから、正式に権利を取得し、オリジナルを商標登録した商標権者との関係において、剽窃した商標登録を理由として無効を主張することは、権利濫用として認められない。

(2)権利濫用について
請求人は、ほぼ同一の標章でかつほぼ同一の商品または役務を指定した商標出願をほぼ3年毎に繰り返すことによって、たとえ不使用取り消しを受けても、他方で未だ不使用取り消しの要件にかからない商標権を保持し、第三者による当該商標の使用を排除しようとしている。
このような請求人による使用の実績も使用の意思も存在しない引用商標1ないし52は、単に他の商標使用希望者による使用を排除することに目的があり、また国民一般の利益を侵害するものである。
このようにして登録されている一連の商標は、まさに公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であり、本来商標登録を受けることはできな
いものである。
このようにして登録されている商標に基づき無効審判請求を認めることは、不使用による取消制度を骨抜きにし、本来商標法により保護されるべきでない商標を不当に維持するだけに止まらず、登録商標を使用する第三者の正当な利益をも積極的に害するものであって、商標権の濫用として許されない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲(1)のとおり立体形状よりなるところ、これは、裸の乳幼児を表現した人形であって、頭が丸く、髪は中央が突出した形であること、ふっくらとした頬や丸く大きな目、その表情等が我が国においてよく知られている「キューピー人形」の特徴を備えているものといえるから、本件商標は、その立体形状に相応して「キューピー」(キューピー人形)の称呼及び観念を生ずるものと認められる。
他方、引用商標1及び2は、別掲(2)のとおりの構成よりなるところ、いずれも立体形状よりなるものであって、これらは、本件商標と同様な「キューピー人形」の特徴を備えているものといえるから、引用商標1及び2は、その立体形状に相応して「キューピー」(キューピー人形)の称呼及び観念を生ずるものと認められる。
同じく、引用商標3は、別掲(3)のとおり図形と文字との組合せよりなるものであって、その構成中の図形部分は、本件商標と同様な「キューピー人形」の特徴を備えているものであり、「キューピー」又は「KEWPIE」の文字部分とあいまって、引用商標3は、その構成に相応して「キューピー」(キューピー人形)の称呼及び観念を生ずるものと認められる。
また、本件商標と引用商標1及び2は、いずれも立体形状よりなるものであって、前記のとおり、裸の乳幼児を表現した人形であり、頭が丸く、髪は中央が突出した形であること、ふっくらとした頬や丸く大きな目等の特徴をほぼ同じくするものであるから、本件商標は、引用商標1及び2と時と処を異にする離隔的観察をした場合、彼此見誤るおそれがある外観において類似する商標とみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、引用商標1ないし3と「キューピー」(キューピー人形)の称呼及び観念を共通にする類似の商標であるのみならず、本件商標は、引用商標1及び2と外観においても類似する商標であって、本件商標の指定商品は、引用商標1ないし3の指定商品と同一又は類似の商品と認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

2 被請求人の主張について
(1)被請求人は、乙第1号証の判決例を示し、「上記判決において認定されているとおり、『キューピー』とは、本来、ローズ・オニールの創作したイラスト中のキャラクターやそれを立体化したキューピー人形を示す称呼及び観念である。つまり、『キューピー』とは、引用商標を示す称呼及び概念ではない。」旨主張する。
しかし、「キューピー」が米国の女流画家であるローズ・オニールが創作したキャラクターであるとしても、本件については、前記認定どおり、本件商標及び引用商標1ないし3より「キューピー」(キューピー人形)の称呼及び観念を生じないとまではいえない。
したがって、この点に関する被請求人の主張は採用の限りでない。

(2)被請求人は、請求人が、引用商標1ないし52を使用しておらず使用の意思もないことを理由として、本件無効審判の請求は、請求人による権利の濫用である旨主張する。
しかしながら、「商標権者は、その登録商標を使用していなければ、他人の登録商標について無効審判の請求をすることができない。」とする理由はなんら見いだせない。
したがって、仮に、請求人が引用商標1ないし52を使用していなかったとしても、本件無効審判の請求が権利の濫用であるということはできない。
したがって、この点に関する被請求人の主張も採用の限りでない。

3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について言及するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲


(1)本件商標


(色彩は原本参照)

(2)引用商標1、2、9ないし14及び52










(3)引用商標3及び15ないし26




(4)引用商標27ないし32




(5)引用商標33ないし45




(6)引用商標46




(7)引用商標47、48及び50




(8)引用商標49


(色彩は原本参照)


審理終結日 2009-05-21 
結審通知日 2009-05-25 
審決日 2009-07-13 
出願番号 商願2003-76675(T2003-76675) 
審決分類 T 1 11・ 261- Z (Y28)
T 1 11・ 263- Z (Y28)
T 1 11・ 262- Z (Y28)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野上 サトル前山 るり子篠原 純子鈴木 修 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 末武 久佳
田村 正明
登録日 2007-06-01 
登録番号 商標登録第5050827号(T5050827) 
代理人 山本 隆司 
代理人 宇梶 暁貴 
代理人 井奈波 朋子 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 佐藤 邦茂 
代理人 宮嶋 学 
代理人 吉武 賢次 
代理人 小泉 勝義 

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