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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
管理番号 1202049 
審判番号 取消2008-300990 
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-08-01 
確定日 2009-07-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4872696号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4872696号商標の指定商品中「薬剤」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4872696号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成16年6月10日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,はえ取り紙,防虫紙,人工受精用精液」を指定商品として、平成17年6月17日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「結論同旨の審決を求める」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号ないし第11号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、請求人の調査したところによれば、商標権者である被請求人が本件商標をその指定商品中の「薬剤」について使用している事実は、発見できなかった。また、本件商標に係る登録原簿上、専用使用権及び通常使用権の登録もないところである。
したがって、本件商標は、その指定商品中上記商品について、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても継続して3年以上、日本国内において使用をしていないと推認されるものであるから、その登録は、上記「薬剤」について、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)答弁に対する弁駁
被請求人提出の平成20年9月29日付け答弁書及び乙第1号の1ないし第3号証を精査したところ、本件商標を商品「薬剤」について過去3年以内に使用しているとの被請求人の主張は、以下の理由により失当である。
ア 乙第1号証の1によれば、本件商標が、湿布薬の包装箱に記載されていることが確認できる。また、乙第2号証によれば、湿布薬のカタログにおいて記載されていることが確認できる。
しかしながら、これらは、いずれも湿布薬の効能に関する特徴を説明する文章中に記載されているものであり、商標法第50条にいう、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用の事実を証明するに足るものではない。
イ 「商標の使用」の定義は、商標法第2条第3項各号に列挙されているものであるところ、これらの規定に該当するものであれば、形式的には「商標の使用」に該当するものである。
しかし、形式的には「商標の使用」に該当するとしても、自他商品の識別機能を果たす使用態様でない場合には、商標の使用には該当しないとするのが判例通説である(最高裁平成9年7月1日、東京高裁平成8年12月19日:甲第1号証及び甲第2号証)。
すなわち、商標の本質的機能は自他商品の識別機能にあるところ、商標の使用といい得るためには、使用態様や使用方法等具体的な事実関係からみて、それが自他商品を識別するために使用されていること、すなわち「商標的使用」が必要である。
ウ これを本件商標が表示されている乙第1号の1及び第2号証について検討する。
乙第1号証の1は、使用商品の包装箱であるが、「肩の奥までじんじん刺激」と使用商品の特徴を説明する文章中に用いられている。また、乙第2号証は、使用商品の商品カタログであるが、「商品の特長」として、「浸透した薬の作用で肩の奥まで/じんじん刺激」と商品の特長を表す文章中に記載されている。
エ そもそも、「じんじん」なる語は、「薬剤」との関係において、その効能や症状を表す言葉として、普通に使用されている言葉である(甲第3号ないし第11号証)から、通常は、自他商品の識別標識とはなりえないものである。例えば、甲第3号証は、小林製薬株式会社の薬剤についての商品紹介であるが、商品の効能感・使用感を表示する語として「ジンジン」の語が用いられている。また、甲第4号証は、ノバルティスファーマ株式会社が製造販売する薬剤の商品紹介のホームページであるが、商品の使用感を表示する語として「ジンジン」の語が用いられている。被請求人自身も、自らが製造販売する医薬品の添付文書において、症状の一例として「ジンジン」の語を使用している(甲第6号証)。
このように、「じんじん」なる語は、自他商品の識別標識とはなりえないものではあるが、本件商標が登録を認められているのは、その使用態様によっては、自他商品の識別標識となりうる場合もあると判断されたものと思料する。そして、本件商標が自他商品の識別標識として機能する使用態様であるという場合は、限定的に解釈されるべきであって、使用態様によっては、単なる商品の内容を記述的に表示するにすぎない場合も多くあるというべきである。
この点、乙第1号の1及び第2号証における本件商標の表示は、前半には、「肩の奥まで」、後半には、「刺激」の言葉を伴ったことによって、記述的な使用となり、使用商品が単に「肩の奥まで薬効がじんじんと浸透する」商品であることを説明する自他商品の識別機能を発揮しないものとなっている。
オ また、商品の効能などをより分かりやすく取引者や需要者に訴求するために、該部分の文字を大きくしたり、太くしたり、色や枠などを用いて装飾することで目立たせることは、ごく一般的に用いられる方法である。これは、被請求人提出の証拠において、使用商品の効能や特徴等を示す言葉は、文字の大きさや色を異にしていることからも明らかである。例えば、乙第2号証は、使用商品のカタログであるが、商品の特長を示す「つらい肩コリ」「じんじん」(なお、本件商標と同一ではない)「スーッスーッ」「ジェル」「冷却力」「温度が5℃下がり」「かぶれにくい」「小サイズ」「天然自然成分」の文字についてフォントや色を変え、商品の効能などを取引者や需要者に訴求している。
カ このような取引の実情から見ても、使用商品に表示されている「じんじん」の文字は、単なる商品の品質を表示するものと理解されるものである。すなわち、これらは、自他商品の識別標識として使用されているとはいえず、商標的使用には、該当しないということが明らかである。
キ また、乙第1号証の2及び3において、本件商標と態様を異にする「じんじん」の文字が記載されているが、これらは、いずれも、乙第1号の1及び第2号証と同様に、商品の品質や特徴を表すものと理解されるものである。よって、これらも自他商品の識別標識として使用されているとはいえず、商標的使用には、該当しない。
ク 結論
以上により、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者である被請求人によって、その指定商品である「薬剤」について、使用されたものとは認められない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号ないし第3号証(枝番を含む。以下、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出している。
(1)商標の使用者
乙第1号証の1ないし4は、本件商品の包装箱の表裏及びこの包装箱1つ当り5袋入っている内袋の表裏の各写真である。これらのうち乙第1号証の2及び4には、本商品の販売者としての被請求人の名称及び住所が表示されている。
乙第2号証は、薬局・薬店向けに頒布された平成16年5月作成に係る本商品のリーフレットであるが、その最終頁に被請求人の名称及び住所が表示されている。
乙第3号証は、平成20年8月21日(平成20年7月23日の間違いと思われる)に発行された被請求人から件外株式会社パルタックKS近畿支社(東京支社の間違いと思われる)あての出荷明細書(控)であるが、これにも被請求人の名称が表示されている。
(2)使用に係る商品
乙第1号の1ないし4及び第2号証には、「しっぷ薬」「ハイシップU」「医薬品」の表示があり、本商品が請求に係る指定商品「薬剤」に属する販売名を「ハイシップU」とする湿布薬であることが分かる。
乙第2号証の最終頁「価格・包装」欄の3段目の包装単位(1梱:40個入)の統一商品コードが「174-69135-6」であるところ、乙第3号証の出荷明細書(控)の最上段に、統一商品コード「691356」、品名「ハイシップU」、容量「10枚入×40」と表示されている。したがって、乙第2号証は、乙第1号証の1ないし2に係る本商品40個の入った包装単位(1梱)にて、被請求人から株式会社パルタックKS近畿支社(東京支社の間違いと思われる)に譲渡されたことを示すものであることが明らかである。
(3)使用に係る商標
乙第1号の1及び第2号証には、本件商標と同一の商標、すなわち、やや濃淡のある青色の二重線で線書きした平仮名文字の「じんじん」(以下「使用商標」という。)を、さらに淡い紫色の線で縁取りすると共に、「じ」の文字が「ん」の文字より少し上に出るように横書きしてなる商標が付されている。
(4)使用時期
乙第2号証(乙第3号証の間違いと思われる)は、発行年月日が「20.07.23」(平成20年7月23日)と記載されている。
(5)結び
以上のとおり、被請求人は、本件商標を本件審判請求の予告登録日前3年以内に、日本国内において、その指定商品「薬剤」につき使用している。すなわち、被請求人は、本件商標を、「薬剤」に属する本商品(湿布薬)の包装に付し(商標法2条3項1号)、また、包装に本件商標を付した本商品を譲渡した(同2条3項2号)ことが明らかである。

4 当審の判断
(1)請求人は、本件審判において、使用商標が本件商標と社会通念上同一の範囲内のものであること、使用に係る商品「しっぷ薬」(以下「使用商品」という。)が請求に係る本件商標の指定商品「薬剤」の範疇に属するものであること及び使用の時期が本件審判の請求の登録(平成20年8月19日)前3年以内であることについては、争うことを明らかにしていない。
そこで、争点である使用商品の包装箱に表示された「じんじん」の文字が、本件商標の使用、すなわち、商標の本質的機能である自他商品の識別標識としての機能を果たすべき使用に当たるか否かについて、以下検討する。
(2)乙各号証について
ア 乙第1号証の1ないし4は、使用商品「しっぷ薬」の包装箱の表裏の写真及びその包装箱に入っている内袋の表裏の写真と認められるところ、包装箱の表面及び内袋の表面には、商品を示す「小サイズしっぷ薬」の文字のほか、「ハイシップU」、「肩の奥まで」、「じんじん」、「刺激」、「10枚入」、「医薬品」等の文字が表示され、また、同裏面には、「つらい肩コリ」、「小サイズしっぷ薬」、「ハイシップU」の文字のほか、販売者として被請求人の名称、住所等が表示されている。
イ 乙第2号証は、左側上部に「薬局・薬店様用」と表示された使用商品に係る「折りたたみ式リーフレット」であるが、そこには、前記アと同様の表示のほか、その最終頁には、「価格・包装」、「平成16年5月作成」及び被請求人の名称、住所等が表示されている。
ウ 乙第3号証は、発行年月日が「20.07.23」付け、被請求人から(株)パルタックKS東京支社宛の「出荷明細書(控)」と認められるところ、「ハイシップ」の表示はあるが、本件商標の表示はない。
(3)使用商標の使用態様
乙第1号証の1ないし3及び乙第2号証の表紙における使用商標の使用態様をみるに、いずれも使用商標の上には「肩の奥まで」の文字とその右横には「刺激」の文字が配されているところ、これらを一連に続けて表記すれば「肩の奥までじんじん刺激」と記述的な文言となるものであって、実際、乙第1号証の2の文章中にも「肩の奥までじんじんとした気持ちよい刺激が・・・」と記述されていることからしても、「じんじん」の文字の使用態様が本件の使用商品の効能(刺激)を、音で表した一種の擬音語としての機能を果たすにすぎないものであるから、結局、「肩の奥まで」と「刺激」の文字が、本件商標の出所識別標識としての機能を打ち消しているものというべきである。
また、「じんじん」の語にしても、請求人が甲第3号ないし第11号証で示すとおり、商品「薬剤」の効能、使用感等を表示する語として普通に用いられているものであるから、使用商標の使用態様は、その他の「じんじん」の文字の使用を含めて本件商標の使用とは認められず、これをもって本件商標の使用があったものとは、いい得ない。
さらに、乙第1号証の1ないし3及び乙第2号証の包装箱の上段には、太字で大きく「ハイシップU」の文字が表示されているところ、その構成中の「プ」の字の右肩に小さいながら登録商標であることを示す「マルR記号」が付されていることからすれば、本件の使用商品に接する取引者、需要者は、該「ハイシップ」の文字こそが、自他商品の識別標識としての機能を有する商標であると理解するというべきであり、他方、下段に表示された「じんじん」の文字については、人の背中を描いた図形並びに「肩の奥まで」及び「刺激」の文字と相まって、単に該商品の特徴を表示したもの、すなわち、商品の品質,効能を表示したものと認識するに止まるものというべきであるから、自他商品の識別標識としての機能を果たすものとは認識しないというべきである。
なお、実際の取引においても、被請求人が「じんじん」の商標でなく、「ハイシップ」の商標を使用していることは、乙第3号証「出荷明細書(控)」からも明らかである。
(4)結語
以上のとおりであるから、被請求人提出の各証拠によっては、その請求に係る指定商品「薬剤」についての本件商標の使用を立証してはいないといわざるを得ない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中「結論掲記の指定商品」について、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (本件商標)

(色彩については原本参照のこと。)


審理終結日 2009-05-22 
結審通知日 2009-05-29 
審決日 2009-06-16 
出願番号 商願2004-53844(T2004-53844) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y05)
最終処分 成立  
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 野口 美代子
小川 きみえ
登録日 2005-06-17 
登録番号 商標登録第4872696号(T4872696) 
商標の称呼 ジンジン 
代理人 藤井 郁郎 

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