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審決分類 審判 一部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y25
管理番号 1197115 
審判番号 無効2006-89045 
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-10 
確定日 2009-04-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4832063号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成19年4月3日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10172号、平成19年11月28日判決言渡)がなされ、同判決が最高裁判所の決定(平成20年(行ツ)第72号・平成20年(行ヒ)第77号、平成20年5月26日決定)により確定したので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4832063号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成16年7月12日に登録出願、第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、同年12月6日に登録査定、同17年1月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第93号証(枝番を含む。なお、平成18年11月30日付けの回答書に添付の甲第1号証ないし甲第84号証は、甲第1号証を甲第10号証とし、その後も同様に順送りの番号とした。)を提出した。
なお、請求人は、当初、本件審判請求書の「請求の趣旨」において、本件商標の指定商品中「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽及びこれらの類似商品」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めていたが、その登録を無効とすべき指定商品中「これらの類似商品」の部分を客観的で明確な表示にするよう平成20年7月22日付け審尋を発したところ、同年7月31日付け手続補正書により、「請求の趣旨」に記載した登録を無効とすべき指定商品中から「及びこれらの類似商品」の部分を削除する補正をした。
1 請求の理由
本件商標は、請求人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標「CHOOP」(以下「引用商標」という。)に類似する商標であって、その商品であるワイシャツ類、寝巻き類、その他これらに類似する商品について使用するものであって、商標法第4条第1項第10号に該当するにも拘らず登録されたものであるから、商標法第46条第1項に基づき一部無効とされるべきものである。
すなわち、本件商標の「Shoop」の英文字を含む登録第4558874号商標(以下「関連商標」という。)は、平成14年4月12日に登録されたものであったが(甲第3号証)、関連商標について、請求人は平成16年3月18日に商標登録一部無効審判の請求をした。
その審判の結果として、「以上のことから、本件商標(審決注:関連商標)は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者間に広く認識されている引用商標と類似する商標であって、その商品と同一又は類似する商品について使用するものといわなければならない。したがって、本件商標(審決注:関連商標)は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その指定商品中「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽及びこれらの類似商品」についての登録を無効とすべきものである。よって、結論のとおり審決する。」との審決(甲第4号証)を得ており、この審決は確定している(甲第5号証)。
その審決の理由として、引用商標の英文字「CHOOP」が「シュープ」の称呼を生ずるものとして、本件商標の出願前よりライセンスビジネス年鑑に記載されたり、雑誌の広告掲載、テレビコマーシャル、新聞への記事掲載、雑誌の広告等により周知であり、しかも引用商標と本件商標「Shoop」とは「シュープ」の称呼を共通にする類似の商標といわざるを得ず、さらに、本件商標の指定商品中の「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽及びこれらの類似商品」と請求人が引用商標を付して使用する商品「キッズウェア、パジャマ、レディスカジュアルウェア」等は同一又は類似の商品と認められると判断している。
このように、確定した審決により、指定商品「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽及びこれらの類似商品」について前記関連商標がその「Shoop」の文字部分においてその出願前に周知となった引用商標と「シュープ」の称呼を共通にして類似の商標として登録無効である以上、関連商標より後願で、関連商標の「Shoop」の文字部分の本件商標は当然に登録無効とならざるを得ない。
2 答弁に対する弁駁
(1)引用商標の周知性について
先ず、商標法第4条第1項第10号に規定するいわゆる周知商標とは、未登録であっても使用により業務上の信用が蓄積されて周知になった商標をいい、本件審判事件においては、請求人の引用商標、すなわち、使用により「シュープ」と称呼するようになった商標「CHOOP」が該当する。
かかる引用商標は、既に無効2004-35142審決(甲第4号証)においても明らかなように、2001年時点においてその周知性が認められている。
その後も、引用商標は、益々広告宣伝を強力に推し進め使用を継続した結果、本件商標出願時である2004年7月頃には、2001年時点よりさらに多大な周知性を獲得しており、そのことは、2004年版のAIPPI・JAPAN発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」(甲第6号証)に掲載されていることによっても証明できる。すなわち、特許庁の商標審査便覧42.14によれば、上記の「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」に掲載されている商標については、原則としてわが国における需要者の間に広く認識されている商標と推認して取扱うものとする。」とされているからである。(甲第7号証)
(2)本件商標と引用商標の類似性について
次に、本件商標は、既に一部無効とされた関連商標(甲第3号証)の文字部分と酷似した文字のみからなる商標である。
ここで、本件商標「Shoop」の称呼「シュープ」は、無効2004-35142審決においても判断されているように、引用商標「CHOOP」の称呼「シュープ」と全く同一である。
そもそも、本件商標は、関連商標から図形部分を削除して、英文字「Shoop」のみを構成要素として出願したものである。
すなわち、前記関連商標とは、本件商標と酷似した英文字「Shoop」と女性の横顔の黒いシルエット図形の結合からなる商標であるが、関連商標に対する無効審判請求が2004年3月18日に提出されたのを知った被請求人が、引用商標の存在を知り、関連商標が無効になるおそれを認識しながら、無効審判請求から4ヵ月後である2004年7月12日に、関連商標と類似する商標であって本質的には同一とも考えられる商標を出願したのが本件商標なのである。
前記審決において争われたのは、本件商標に酷似した英文字「Shoop」の部分であって図形の部分は無効の判断の対象にされてはいない。したがって、審決で無効とされた実体的な部分は本件商標とほぼ実質的に同一の文字商標「Shoop」なのである。
そして、出願後も本件商標を使用し続けることにより、不正競争の目的の下に使用の既成事実を作り上げたのである。
したがって、かかる不正競争の目的をもって引用商標にフリーライドする悪意の登録は取り消されるべきであって決して保護されるべきではない。被請求人は答弁書において、出願後に本件商標に蓄積された信用について云々しているが、そのような不正競争目的の商標に蓄積された信用を証拠として検討する余地は全く無い。
(3)取引の実情について
商標法第4条第1項第10号の適用に関し、被請求人は、「主たる需要者層や取引の実情を考慮した上で、出所の混同の有無を検討すべきである。」と主張し、種々述べている。
すなわち、商標法第4条第1項第10号における出所の混同については「取引の実情」を考慮すべきであると主張する。そして、本件商標と引用商標とは、本件商標が「セクシー系」であるのに対し、引用商標が「可愛い系」であって、その趣向性が異なる結果、市場が全く異なるので需要者をして明確に区別せしめるものであると主張する。
しかし、本条でいう「取引の実情」とは普遍的、恒常的な取引の実情をいい、本件商標が現在使用されている具体的な使用態様などの個別的、一時的な事情は意味しないのである。すなわち、商標法第4条第1項第10号においては、普遍的、恒常的な取引の実情を鑑みた上で、経験則上、一般的に出所の混同のおそれがある商標は登録すべきではないのであって、被請求人の主張は本規定の趣旨を曲解し、逸脱するものである。
なお、以下にも示すとおり、本件商標は引用商標との間では、一般的な出所の混同のみならず、具体的な出所の混同を生じるおそれもあるのでそれについても以下説明する。
(4)出所の混同について
被請求人は、本件商標と引用商標の主たる需要者が、本件商標が20代?30代であるのに対し、引用商標では少女層だから出所の混同を招来させるおそれはないと主張するがこれは全く誤った判断である。
すなわち、本件商標の指定商品である衣類は、日常的に使用される性質の商品であることや同指定商品の需要者も特別の専門知識を有するものでない一般消費者であることからすれば、その需要者がこれを購入する際に払う注意力はさほど高くないと考えられる。加えて、ファッション関連の企業は複数のブランドを展開している場合が少なくなく、一般需要者もそのことを認識していることは公知の事実である。これらの事情を総合的に鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接した需要者が引用商標のターゲットを変更したブランド展開であるかのように、その出所につき誤認を生じさせるおそれがある。
現に、請求人は引用商標のサブブランドとして、乳児や幼児層をメインターゲットにした登録商標「CHOOPLAND」や成人層をターゲットとする登録商標「CHOOP SPORTIVE」や登録商標「CHOOP CLASSIC」を有してブランド展開を行なっている(甲第8号証、甲第9号証)。
甲第8号証を見ると、「三人仲良くシュープ/CHOOPの服」のタイトルの下に、「ベビー・キッズのためのブランド、シュープランド/CHOOPLAND」、「おしゃれなママのためのカジュアルブランド、シュープスポーティブ/CHOOPSPORTIVE」、「かわいいリスがトレードマークのストリートカジュアルブランド、シュープ/CHOOP」と三つのファミリーブランドが紹介され、各々5、6歳とおもわれる女の子、及び20?30歳代の女性、そしてティーンズと称される十代の少女のモデルがそれぞれのブランドのマークが付された衣類を着用して掲載されている。
ここで、例えば、請求人の有する前述の商標「CHOOP SPORTIVE」については、引用商標の主な需要者層である少女の母親である20代から30代の女性をターゲットにしており、又、商標「CHOOP CLASSIC」についても、甲第9号証の当該商標の「特色」の欄にもあるように、ヤングミセスをターゲットにしており、本件商標の主な需要者層である20代から30代の女性である点において、本件商標と需要者層が共通している。
したがって、被請求人の主張するように、需要者層が大きく相違するので需要者は出所の混同をすることなく、被請求人の出所に係る商品と請求人の出所に係る商品とを明確に区別するなどということは全く考えられないのである。
さらに、今後のブランド展開により、引用商標と本件商標との間で、出所の混同により需要者に不測の不利益をもたらすおそれが、近い将来の現実のものとなって来るのである。
このように、本件商標が並存する結果、引用商標の信用の希釈化、あるいは需要者の引用商標に対する期待を裏切るような商品と誤認することによる信用の汚染化、ひいては請求人の業務上の信用の低下という結果を招来しかねないと考えられる。
したがって、本件商標は、引用商標との間で出所の混同を生じるおそれは十分にあるのである。
(5)このように、使用の継続により多大な周知性を獲得した引用商標が存在する状況において、既に、当該引用商標と称呼上同一の文字商標「Shoop」を含む関連商標の登録が審判により無効にされたのにもかかわらず、当該審判の継続中に、当該関連商標の文字部分のみを構成要素とする本件商標が出願され種々使用されたことにより登録されるならば、前記審判で登録を取り消した意味が消失する。
しかも、前述したように、引用商標と出所の混同を生ずるおそれのある本件商標を登録することになれば、取引者の間で競業秩序の維持を図り、あわせて需要者の利益を保護しようとする商標法の法目的にも反することとなる。
(6)以上述べてきたように、本件商標は、「シュープ」の称呼で周知な引用商標に類似するにもかかわらず登録されたものであって、取引者及び需要者に対し出所の混同を生ぜしめるものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当し、その登録を無効にすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第116号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求人の主張について
商標法第4条第1項第10号の立法趣旨は、「商品の出所の混同防止」であるところ、請求人は、本件商標と引用商標について、各商標の取引の実情について検討することなく、関連商標に関する審決を主張の主たる証拠として掲げ、「称呼」が共通することをもって直ちに「出所が混同する」として商標法第4条第1項第10号に該当すると主張しているが、かかる請求人の主張は、理由がない。
商標の出所の混同は、主たる需要者層や取引の実情を考慮した上で、出所の混同の有無を検討すべきである。
本件商標は、その出願前から被請求人の出所表示として周知性を獲得していたものであり、請求人の提出に係る審判(甲第4号証)で争われた内容とは事案が異なるものである。したがって、本件商標を無効にするについては、甲第4号証は、請求人の主張の根拠たり得ない。
2 本件商標の周知性
(1)被請求人は、本件商標を、本件商標の指定商品中「セーター類、ワイシャツ類、Tシャツ類、洋服、水着、下着類」について、本件商標の出願(平成16年7月12日)前から使用している。
(2)本件商標について
本件商標は、外観は、欧文字「Shoop」からなり、「R&B(リズム・アンド・ブルース)」、「ソウルミュージック」、「ヒップホップ」に代表されるブラックミュージック(以下「ブラックミュージック」という。)愛好者の間では「タメ息の音」を意味するものとして親しまれ、セクシーさを想起させることから、「セクシーなため息」程度の観念を生じさせるものである。
(3)本件商標にかかる商品の主たる需要者層について
1996年以降、ダンス・ブーム、クラブ・ブームと共にブラックミュージック・ファッションブームが到来し、現在においては、「Bガール」若しくは「B-GIRL」、「B系」と称されて、一つのカテゴリーとして取り扱われる程度にブラックミュージック系のファッション(以下「B系ファッション」という。)は、特別な市場として確立している(乙第2号証)。
本件商標に係る商品(B系ファッション)は、セクシーさを趣向とする特徴を有することから、成熟した女性層をターゲットとしており、DJがヒップホップやR&Bの音楽を流す、いわゆる「クラブ」は、夜10時以降から営業を始めることが多いことから、本件商標における主たる需要者として、「20代から30代」の「ブラックミュージックやクラブ文化を愛好する女性」又は「B系ファッションを愛好する層」を対象としている。
(4)刊行物による周知性の獲得について
本件商標の指定商品中「セーター類,ワイシャツ類,Tシャツ類,洋服,水着,下着類」について、「B系ファッション」雑誌において、「Shoop」、「SHOOP」との文字商標にて、継続的に被服の紹介や広告が掲載されている(乙第4号証ないし乙第17号証、乙第19号証ないし乙第37号証)。
B系有名アーティストの雑誌インタビューの際には衣装を提供し、B系ファッションのリーダー的役割を担っている(乙第39号証ないし乙第44号証)。
(5)複合的な広告宣伝戦略について
「B系ファッション」愛好者が好む地域やメディアにおいて、以下のような複合的な広告宣伝戦略を展開している(乙第45号証ないし乙第73号証)。
・大型看板の掲出(JR渋谷駅、JR新宿駅)
・大画面動画広告(JR新宿駅前)
・音楽チャンネルにおけるコマーシャル(合計150回放映)
・繁華街での広告バスの運行(東京都内:渋谷?新宿/名古屋市内:栄?引山、名古屋駅?光ヶ丘/仙台市内)
・クラブイベントの主催(2002年?2004年主要都市合計22回)
(6)周知性獲得に関する客観的事実
ア 「Shoop」ブランドの店舗展開について
本件商標の出願前から、日本の主要都市(東京・大阪・名古屋・仙台・福岡他)において、本件ブランドの被服を取扱う店舗を約20店舗をも展開しており、すべて、被請求人の直営店である(乙第75号証ないし乙第84号証)。
イ 売り上げ実績及び広告宣伝費
本件商標にかかる洋服類に関する合計売上額は、約60億5千万円(2000年?2004年までの5年間)にのぼる(乙第85号証)。
ウ 広告宣伝費
本件商標にかかる広告宣伝費として、毎年、約5千万円から約1億円近く支出している。
エ 主たる需要者層における周知性
B系ファッション愛好者層において、クラブ参加者の被服として愛用されている実績があり、人気を博するに至っている(乙第4号証ないし乙第17号証)。
3 取引の実情について
一般的に、被服の分野においては、趣向性(好み)が極めて大きく左右するところであり、需要者は充分に注意力を発揮する。そして、例えば、デパートでは販売フロアが異なる例からも明らかなように、性別のみならず、需要者の年代が異なれば、販売場所(地域、店舗)が異なるという特殊性を有する分野である。
そして、被服に関するブランドについては、それぞれに独自の趣向性があり、需要者をして明確に区別され得るものである。
これらを本件に照らし合わせてみれば、引用商標が「セーター類、ワイシャツ類、水着、下着及びこれらの類似商品」について使用されているとしても、本件商標のブランドとは、その趣向性及び需要者層が、「可愛い系」と「セクシー」、「小・中学生」と「20代から30代のブラックミュージックやクラブを愛好する女性」とのように全く相違するものである。
してみれば、その市場は全く異なるものであり、需要者をして明確に区別せしめるものである。
4 出所の混同について
上述のとおり、本件分野における特殊性を鑑みつつ、両商標の出所の混同を検討する。
引用商標は、外観は、欧文字「CHOOP」からなり、特定の観念を生じさせないものである。
そして、主たる需要者は、小・中学生といった「少女」層であり、これらは、請求人に関するブランド対象層の記載において、「9?16歳(可愛い系ストリートカジュアルを好む中高小中学生がメインターゲット)」、「1?19歳」、ライセンシーのブランド対象は「12?16歳中心」「8?14歳」との記載からも明らかであり、趣向性としては、「可愛い系」ストリートカジュアルである(乙第88号証ないし乙第91号証)。
したがって、引用商標について、仮に周知性を獲得しているとすれば、すべてのレディスウェアについて周知性を獲得しているというよりも、むしろ、「キッズウェア、少女層向けの可愛い系ストリートカジュアルウェア」に限定されて獲得していると判断することが相当かと思料される。
これに対して、本件商標は、欧文字「Shoop」からなり、ため息のようなセクシーな観念を生じさせるものである。そして、本件商標に係る被服類は、「セクシー」に分類される趣向性を有し、主たる需要者層は「20代から30代のブラックミュージックやクラブを愛好する女性」である。本件商標に関するブランドは、上述のとおり、B系ファッションを愛好する需要者層において「B系ファッション」として絶大な人気を博しており、当該分野の需要者層に広く認識されているところである。
そして、「趣向性」や「年代」が異なることで販売場所や市場が異なるとの被服分野の取引の実情を考慮すれば、引用商標と本件商標は、需要者層が相違すること(「20代?30代」に対して「少女層」)、本件商標について「B系ファッション」として周知性が獲得されていること、引用商標は「少女層の可愛い系ストリートファッション」を対象としていることの要素を総合的に鑑みれば、本件商標と請求人商標とは、彼此、相紛れるおそれはなく、需要者等に出所の混同を招来させるおそれはないと判断するのが相当である。
5 本件商標の出願の経緯について
本件商標を出願した経緯は、人気アーティストが「SHOOP」ブランド商品を愛用したことから、模倣商品が頻繁に出回るようになったこと、被請求人の「Shoop」ブランドにおいて文字商標「Shoop」を筆記体にアレンジした態様も人気を博したこと等の事情によって、文字商標「Shoop」の商標権の必要性が高まったことに由来するものである。
現在においても、模倣品が横行しているものの、模倣品が発生した際に、警察側から取締対象として被請求人が真正品確認の照会を受け(乙第86号証及び乙第87号証)、本件に係る商標権の存在により、模倣品が刑事罰の対象となった実績も看過し得ないところである。
このように、本件商標が知的財産権として存在する意義は大変大きいものであり、引用商標とは全く別個に経済的な価値が化体しているものである。
このことからも明らかなように、被請求人の商標は、B系ファッションについての周知性を獲得しているが故に、引用商標とは全く別個の識別標識として機能しているものであり、需要者は出所の混同することなく、被請求人の出所にかかる商品と請求人の出所にかかる商品とを明確に区別しているものである。
6 「ファッションブランドガイド」等における掲載の意義
請求人は、「ファッションブランドガイド」、「ライセンスビジネス年鑑」等に掲載された事実をもって周知であると主張しているが、これらのブランド年鑑は、請求人やライセンシーが回答したアンケート内容がそのまま掲載されているにすぎず、「CHOOP」は「シュープ」の称呼によって周知であることを示すものではない。
なお、被請求人の「Shoop」ブランドは、オリジナルブランドであって、直営店のみで販売しライセンス等は行わないというブランド戦略であるため、ライセンス各誌や各ブランド年鑑等にあえて掲載していない。

第4 当審の判断
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当すると主張して甲各号証を提出しているので、以下、この点について検討する。
1 引用商標の周知性について
(1)事実認定
ア 本件商標の出願前の2003年10月24日ボイス情報株式会社発行に係る「ライセンスブランド名鑑2004」(甲第9号証)によれば、ブランド名「CHOOP(シュープ)」の頁には、「ライセンス窓口」の欄に「クラウンファンシーグッヅ(株)」、当該ブランドの「開始年」の欄に「1994年」、「ライセンス状況」の欄に「雑貨小物、キッズウェア、パジャマ、レディスカジュアルウェア」等がそれぞれ記載されている。
イ 2004年版のAIPPI・JAPAN発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」(甲第6号証)に図形と「CHOOP」(「P」の文字の前の「O」はデザイン化されている。)の文字とからなる商標が掲載されている。
ウ 本件商標の出願前の1994年から2001年にかけて発行された「Zipper」、「Lemon」、「POMME」、「Olive」、「ピチレモン」、「nicola」等のティーン層の少女をターゲットとする雑誌に、「CHOOP」の文字及び「シュープ」の文字を併用した広告がされている(甲第13号証ないし甲第23号証(ただし、甲第17号証を除く。))。
エ 請求人が広告主として放映したと認め得る「テレビCM放送証明書、テレビタイム放送確認書」(甲第25号証ないし同第40号証)によれば、1995年から1999年にかけて、「CHOOP」のテレビコマーシャルが「CHOOP」の文字の映像と共に、「リスがめじるし ストリートカジュアル シュープ」、「ストリートカジュアル シュープ」など「シュープ」の音声を用いたテレビコマーシャルが各地で放映されている。
オ 請求人の提供に係るティーン層の少女を主人公とするテレビドラマ(放映日:1998年8月15日、1999年3月22日及び2000年4月1日)が新聞に取り上げられ、これらに「CHOOP」の文字及び「シュープ」の文字が併記され、又は「シュープ」の文字が記載されている(甲第41号証、同第43号証、同第47号証、同第49号証ないし同第52号証)。
カ 前記テレビドラマにおいて、「CHOOP」の文字の映像と共に、「リスがすき ストリートカジュアル シュープ」など「シュープ」の音声が用いられている(甲第42号証及び同第46号証)。
キ 請求人の提供に係る日本航空の機内番組において、「シュープ プレゼンツ」、「リスのマークでおなじみのシュープ」、「シーエイチオーオーピー シュープ」など「シュープ」の音声が用いられ、同番組の案内冊子に「CHOOP」の文字が用いられている(甲第58号証ないし同第60号証)。
ク 1997年から2001年にかけて発行された繊研新聞にファションブランドとしての「シュープ」が取り上げられている(甲第48号証ないし同第57号証)。
ケ 「ライセンスブランド名鑑2004」(甲第9号証)、「ライセンスビジネス名鑑2003〔ブランド編〕」(甲第12号証)、「ファッション・ブランド年鑑’98年版」(甲第64号証)、「ファッションブランドガイド SENKEN FB2001」(甲第65号証)、「ファッション・ブランド年鑑2001年版」(甲第66号証)に「CHOOP」の文字及び「シュープ」の文字が併記されている。
コ 引用商標を使用した請求人又はそのライセンシーの商品は、雑貨小物、キッズウェア、パジャマ、レディスカジュアルウェアなどであることが認められる。
(2)判断
前記(1)の各事実を総合すれば、請求人又はそのライセンシーの使用に係る引用商標は、本件商標の出願前から、主として「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」に関心を抱く需要者層をターゲットに、雑誌、テレビ、業界誌等において広告宣伝されるとともに、雑貨小物、キッズウェア、パジャマ、レディスカジュアルウェアなどの商品に幅広く使用されてきたということができるから、引用商標は、遅くとも本件商標の出願時には、既に請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認めるのが相当である。しかし、後記2(2)のとおり、引用商標において「シュープ」の称呼が生じ得ることは認められるが、同称呼が、あらゆる需要者層において、広く認識されていたとまで認めることはできない。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」については、商標登録を受けることができない旨規定している。
商標法第4条第1項第10号における商標の類否は、同法第4条第1項第11号の場合と同様に、対比される両商標が同一又は類似の商品・役務に使用された場合に、商品・役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり、誤認混同を生ずるおそれがあるか否かは、そのような商品・役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等を考察するとともに、その商品・役務の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に照らし、その商品・役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきものと解される(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
(2)上記の観点から、本件商標と引用商標の類否について検討する。
ア 称呼について
本件商標は、別掲に示すとおり、「Shoop」の文字からなるものであるから、その構成文字に相応して、最も自然な「シュープ」の称呼を生ずるものと認められる。
他方、引用商標は、前記1のとおり、「シュープ」の文字を併記し、また「シュープ」の音声を用いた広告宣伝活動の結果、引用商標から「シュープ」の称呼が生じ得ることが認定できる。しかし、引用商標は、「CHOOP」の文字からなるものであり、自然な称呼は、「チュープ」あるいは「チョープ」であることに照らすならば、確かに、請求人が広告宣伝を行ってきた「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」に関心を抱く需要者層に対しては、「シュープ」の称呼を想起させるものといえるが、それ以外の一般消費者に対して、「シュープ」の称呼を想起させるものとはいえないというべきである。したがって、引用商標において、「シュープ」の称呼が、あらゆる需要者層において、広く認識されていたとまで認めることはできない。
イ 観念及び外観について
本件商標を構成する「Shoop」の文字は、少なくとも、いわゆるブラックミュージックの愛好者の間では、「タメ息の音」を意味する俗語として認識されているが、必ずしも一般的な観念が生じるとまでは認定できず、他方、引用商標を構成する「CHOOP」の文字も、一般的な観念は生じないので、観念における対比をすることができない。
本件商標を構成する「Shoop」の文字がデザイン化されていることに加え、同文字と引用商標を構成する「CHOOP」の文字とは、先頭文字が「S」と「C」との点で異なり、前者は後続する「hoop」が小文字で表記されているのに対して、後者は後続する「HOOP」が大文字で表記されている点において異なる点で、本件商標と引用商標はその外観において相違する。
ウ 取引の実情等
(ア)引用商標は、前記1(1)の各事実及び前述の雑誌、新聞等に掲載された広告宣伝、記事等の内容に照らせば、アメリカ生まれの元気なブランド、あるいはおしゃれでキュートなブランドというコンセプトの下、ティーン世代の少女層をターゲットとして、請求人による引用商標の使用(請求人のライセンシーによる使用を含む。)及び広告宣伝活動が継続された結果、本件商標の出願時及び査定時には、「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッションブランド」を想起させるものとして、需要者層を開拓していたものと認められる。
(イ)他方、被請求人の提出に係る証拠及び答弁の全趣旨によれば、a)本件商標は、「Shoop」の文字からなり、「シューブ」との称呼を生じるものであること、b)「Shoop」は、少なくとも、いわゆるブラックミュージックの愛好者の間では、「タメ息の音」を意味する俗語として認識されていること、c)本件商標は、被請求人により、アフリカ系アメリカ女性のファッションをコンセプトとして、広告宣伝が行われ、平成8年に発行された雑誌にブラック系専門店などとして紹介され(乙第107号証ないし同第109号証)、平成11年に発行された雑誌に本件商標を用いたB系ファッションを趣向とする女性向け被服及びその直営店の広告が掲載され(乙第98号証)、平成15年に発行された雑誌に好きなブランドアンケートの女性部門において第1位であった旨の記事が掲載されたこと(乙第110号証及び同第111号証)を含め、平成8年及び平成11年から平成18年にかけて発行されたB系ファッション雑誌、新聞に本件商標を用いた被服や本件商標に係るブランドに関する広告、記事が多数掲載されていること(乙第2号証ないし同第44号証、同第59号証ないし同第68号証、同第74号証、同第76号証ないし同第84号証、同第98号証、同第99号証、同第107号証ないし同第112号証)、d)被請求人は、遅くとも平成11年から本件商標の出願時までに、全国に19の直営店を展開し(乙第4号証、同第14号証、同第16号証、同第23号証、同第25号証、同第27号証、同第29号証、同第30号証、同第31号証、同第33号証、同第34号証、同第37号証、同第59号証、同第74号証、同第75号証ないし同第82号証、同第98号証)、その後、これを22店舗に拡大したこと、e)被請求人は、平成15年及び平成16年には、雑誌社やアーティストのプロダクションの要請を受け、本件商標に係るブランドの服を取材用衣装として提供したこと(乙第39号証ないし同第46号証)、f)平成12年から平成16年にかけて、本件商標を付した大型看板や大型映像広告を渋谷駅や新宿駅に設置し(乙第47号証ないし同第50号証)、東京都内(渋谷?新宿)、名古屋市内(栄?引山、名古屋駅?光ヶ丘)及び仙台市内にラッピングバスを走らせ(乙第52号証ないし同第54号証)、音楽イベントを主催し(乙第56号証ないし同第66号証)、音楽専門チャンネルでコマーシャルをし(乙第70号証ないし同第73号証)、携帯電話用のモバイルサイトを設置するなど(乙第74号証)、B系ファッションを愛好する層が集まる地域やメディアをターゲットとして、積極的な広告宣伝を展開したこと、g)本件商標に類似する商標を付した模倣品が流通した際の、警察からの照会先は原告に対してであったこと(乙第86号証及び同第87号証)等の事実が認められる。
前記各事実及び前述の雑誌、新聞等に掲載された本件商標に関する広告、記事等の内容に照らせば、B系ファッションを対象とするブランドというコンセプトの下、セクシーさを趣向するものとして、20代から30代の成熟した女性層やいわゆるクラブにおけるダンス愛好者をターゲットとして、被請求人による本件商標の使用及び広告宣伝活動が継続された結果、本件商標の出願時及び査定時には、本件商標を構成する「Shoop」の欧文字は、「セクシーなB系ファッションブランド」を想起させるものとして、需要者層を開拓していたものと認められる。
(ウ)また、引用商標の使用された商品に関心を示す、「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」を好む需要者層と、本件商標の使用された商品に関心を示す、いわゆる「セクシーなB系ファッション」を好む需要者層とは、被服の趣向(好み、テイスト)や動機(着用目的、着用場所等)において相違することが認められる。
エ 商品の出所についての誤認混同のおそれ
以上によれば、引用商標から、「シュープ」の称呼が生じる旨認識している需要者は、請求人が広告宣伝を行ってきた「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」に関心を抱く需要者層であって、本件商標が使用された商品に関心を抱く「セクシーなB系ファッション」の需要者層やそれ以外の一般消費者ではないといえる。結局、請求人が広告宣伝を行ってきた需要者層以外の消費者については、引用商標から「シュープ」の称呼が生じると認識することはなく、前記認定した取引の実情等を総合すれば、称呼を共通にすることによる混同は生じないということができる。
その他、本件商標と引用商標とは、観念においては対比できないものの、外観においては相違する。
そうすると、本件商標は、その指定商品中「セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽」に使用された場合、引用商標とは異なる印象、記憶、連想等を需要者に与えるものと認められ、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれはないというべきである。
オ 小括
以上によれば、本件商標と引用商標とは、互いに非類似の商標というべきである。
3 結語
以上のとおりであるから、本件商標の登録出願時において、引用商標が、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されているものであるとしても、本件商標と引用商標とは、互いに非類似の商標というべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲

本件商標



審理終結日 2007-03-16 
結審通知日 2009-02-05 
審決日 2007-04-03 
出願番号 商願2004-64366(T2004-64366) 
審決分類 T 1 12・ 25- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井岡 賢一 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 安達 輝幸
田村 正明
登録日 2005-01-14 
登録番号 商標登録第4832063号(T4832063) 
商標の称呼 シュープ 
代理人 小山 輝晃 
代理人 吉田 芳春 

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