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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない X19
管理番号 1195478 
審判番号 不服2008-3852 
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-18 
確定日 2009-03-16 
事件の表示 商願2007- 19443拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は「よりよい暮らし」の文字を標準文字で表してなり,第19類「木材」を指定商品として,平成19年3月7日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由
原査定は,「本願商標は,『よりよい暮らし』の文字を標準文字で書してなるところ,本願商標構成中前半の『よりよい』は,後半の『暮らし』を修飾する語であり,全体として,『なおいっそう良い暮らし』の意味合いを看取させるものである。そして,新聞記事やインターネットの情報によれば,昨今,企業が,例えば,『よりよい暮らしの実現』『よりよい暮らしを目指す』といったように,『よりよい(良い)暮らし』の文字を使用し,『暮らしをなおいっそう良いものにする』といった企業理念・モットーを表明することが広く行われているという実情が認められる。そうすると,本願商標は上記のような多数の企業が掲げる一般的な企業の理念を端的に表したものと認識されるものであり,これをその指定商品に使用しても,その理念を体現したものである旨をアピールしたものと理解させるにすぎず,需要者が何人かの業務にかかる商品であるかを認識することができないものであり,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。」と認定,判断をして,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,次の事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定により請求人に通知し,意見を求めた。
1 辞書等の記載について
(1)「より《副》 (多く形容詞・形容動詞の上に付けて)それまでの程度を越えて。いっそう。さらに。もっと。比較の意を表す格助詞「より」から転じた語。」(広辞苑第6版 岩波書店発行)。
「より(副)〔格助詞「より」から〕 物事の程度がさらに加わるさまを表す。もっと。いっそう。」(大辞林 第二版 新装版 株式会社三省堂発行)。
(2)「よい【良い・善い・好い・佳い】《形》 1.物事が質的に他よりすぐれまさっている。1〉すぐれている。上等である。8〉快い。楽しい。」(広辞苑第6版 岩波書店発行)。
「よい【良い・善い・好い】(形) 1.品質的に上等である。4.身分・家柄が高い。経済的に恵まれている。「-・い家に生まれる」「-・い暮らし」 12.快い。快適だ。 」(大辞林 第二版 新装版 株式会社三省堂発行)。
(3)「くらし【暮し】 1.くらすこと。時日をすごすこと。2.くちすぎ。生計。暮し向き。」(広辞苑第6版 岩波書店発行)。
「くらし【暮(ら)し】 1.暮らすこと。生活すること。2.生計。暮らし向き。」(大辞林 第二版 新装版 株式会社三省堂発行)。
2 企業における使用例について
(1)インターネット情報
(a)「吉川工業株式会社/〔キャッチフレーズ〕よりよい暮らしを優しく包む」との記載(株式会社イプロスが運営するウェブページ(http://www.ipros.jp/company/091253/))。
(b)「デュポン200年の軌跡/第二部 もうひとつの闘い/[逆転の秘策]・・『化学を通して,より良い暮らしにより良いものを』。その後長くデュポンのメッセージとなるキャッチフレーズは,バートンのキャンペーンから生まれた。」との記載(デュポン株式会社のウェブページ(http://www2.dupont.com/ja_JP/history/history_05b.html))。
(c)「福岡県生活協同組合連合会/地域生協/エフコープ生活協同組合/よりよい“くらし”を協同の力で」との記載(福岡県生活協同組合連合会のウェブページ(http://www.fukuoka-coop.net/chiiki/02.html))。
(d)ダイワホーム株式会社/会社案内/企業理念/3つの誓い/「お客様への誓い」/「もっと幅広く,『より良い暮らし・住まい』をキーワードに,お客様の生涯を通じて,末永くお付き合いをすることです。」との記載(大和住宅株式会社・ダイワホーム株式会社のウェブページ(http://www.daiwajyuutaku.co.jp/kaisya/index_4.html))。
(e)「P&G/サステナビリティへの取組み/『現在の,そして未来の,すべての人々によりよい暮らしを』それがP&Gの考えるサステナビリティです。」との記載(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社のウェブページ(http://jp.pg.com/about/sustain.htm))。
(f)「Kubota/ニュースリリース/『クボタ松下電工外装株式会社』12月1日設立=クボタと松下電工の外装建材事業統合会社=/株式会社クボタと松下電工株式会社の外装建材事業統合により,12月1日に設立される新会社『クボタ松下電工外装株式会社』の概要が固まりました。/1.経営理念について/企業スローガンを『暮らしをまもる 住まいを魅せる』とし,理念とし「私たちは,よりよい『暮らしと住まい』を追求する 外装事業の先進企業として 顧客ニーズと住宅市場の変化を先取りし,さらなる顧客満足を目指します。」との記載(株式会社クボタのウェブページ(http://www.kubota.co.jp/new/2003/kmew/kmew.html))。
(g)「味の素グループ環境報告書2006/展開資料/味の素グループ環境理念・環境基本方針(改訂版)/■環境理念〈要約〉私たち味の素グループは,将来世代にわたるすべての人々が豊かな自然環境とよりよい暮らしを享受できるような持続可能な社会の実現に貢献します。」との記載(味の素株式会社のウェブページ(http://www.ajinomoto.co.jp/company/kankyo/report/pdf/additonal_document_s.pdf))。
(h)「バイエル薬品株式会社/社会貢献活動/バイエル薬品は,"Science For A Better Life(よりよい暮らしのためのサイエンス)"のスローガンのもと,人々の健康とクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上に貢献するヘルスケアカンパニーとして,企業市民としての役割を重視し,社会から信頼される企業となるため,さまざまな社会貢献を行っています。」との記載(バイエル薬品株式会社のウェブページ(http://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/corporate_profile/social_commitment/index.php))。
(i)「会社案内/大切なものマーク/人々のより良い暮らしへの貢献/今も,これからも,テトラパックは世界中の大切なものを包みます。/・・・創業以来の企業理念と『大切なものマーク』に込めた『人々のより良い暮らしへの貢献』を実現するためにテトラパックは世界中で社会と密接に関わり,その健全な成長を支援していきます。」との記載(日本テトラパック株式会社のウェブページ(http://www.tetrapak.co.jp/COMPANY/ABOUT/mark02.html))。
(j)「株式会社エスケーハウジング 埼玉県越谷市/エスケーハウジング(Safety Kindness)/親切・丁寧・安心を掲げ,生活総合プロデュース企業としてよりよい暮らしのご提案を続け,何が求められるか探求し続けて行きます。」との記載(株式会社HomeClipの運営するウェブページ(http://www.homeclip.co.jp/rifkaisya_pages/0011843_sitemap.html))。
(k)「京急電鉄/京急不動産 有力不動産会社ガイド2008年版/KEIKYU/京急電鉄/京急不動産/「『すべてはお客様のために』より心地よく,より豊かな明日をつくる/街・家・暮らしのクリエーター/京浜急行沿線を中心に,街づくりから住まいを考え,よりよい暮らしを考え続けてきた京急グループ。」との記載(株式会社リクルートが運営する住宅情報ナビのウェブページ(http://www.jj-navi.com/shuto/guide/BJGD06TOP/001981.html))。
(l)「青森STARTプロジェクト/サーパスマンション第1弾物件「サーパス松原」誕生/詳細はこちら/「より良い暮らしを創造する,研究施設をもっています。/人と未来と環境に,より良い暮らしを創造するため,私たちはマンションメーカーとして初めて住まいのための研究施設『穴吹住環境デザイン研究所』を誕生させました。」との記載(株式会社穴吹工務店のウェブページ(http://www.384.co.jp/aomori-pj/))。
(m)「0123アート引越センター/経営の方針と事業概要/基本理念/私たちの事業展開は,よりよい『暮らし方』の提案を企業コンセプトに,サービスの高品質化を推進し,環境保護や省エネルギー化を念頭に社会貢献活動を進めていきます。」との記載(アートコーポレーション株式会社のウェブページ(http://www.the0123.com/ir/keiei.html))。
(n)「『人』と『地球』に親切で優しいエコロジー商品を提供する株式会社スカイライフ/新世紀,信頼と安心を満たす/創造性豊かなライフスタイルのお手伝い/創造性豊かな健康でより良い暮らしをより多くの人々に」との記載(株式会社スカイライフのウェブページ(http://www.netdear.com/matsupura/))。
(o)「astellas/スターライトパートナー活動*(患者会支援活動)の理念/・・患者さんのより良い暮らしをサポートできるアステラスでありたい。」との記載(アステラス製薬株式会社のウェブページ(http://www.astellas.com/jp/csr/kanjakai/philosophy/index.html))。
(p)「sala 中部ガス株式会社/取り組み・活動/コンプライアンス/■企業行動憲章の策定/弊社は,都市ガス事業を通して,地域の発展とお客様のより良い暮らしの実現に貢献し,地域社会,お客さま,取引先,従業員そして株主の皆様から常に信頼され期待される企業集団であり続けることを経営の基本としています。」との記載(中部瓦斯株式会社のウェブページ(http://www.chubugas.co.jp/company/compliance.php))。
(q)「Goodリフォーム.jp/INAXリフォームLIFA/全国約250店舗のネットワークで住まいの悩みを解決。INAXが応援するリフォーム専門店/ライファはINAXが応援するリフォーム専門店。『共創の理念』のもと,お客様と共に,よりよい暮らしを創造してまいります。」との記載(株式会社リクルートが運営するGoodリフォーム.jpのウェブページ(http://www.goodreform.jp/rf/lifa/))。
(r)「基本理念(The Umicore Way)/Materials for a better life/ユミコアのスローガンです。・・『より良い暮らし』の実現には地球環境の保全は必須であり,企業の経済的活動もそれ無くしては成り立ちません。」との記載。(ユミコアジャパン株式会社のウェブページ(http://www.umicore.jp/ja/umsjInfo/ujpQmsEms/show_umicoreWay.pdf))。
(s)「川田建設株式会社/基本理念/私たちは住まいづくりを通してすべてのお客さまにより良い暮らしを提供するライフコンサルティングカンパニー」との記載(川田建設株式会社のウェブページ(http://www.kawaken.com/philosophy.html))。
(t)「株式会社関西eリモデル/経営理念・事業方針/事業方針/○関西eリモデルの3つのe 1.『いいくらし』と『いい住まい』の歩みのe/お客様のご要望にお応えして,よりよい暮らしのために,よりよい住まいづくりのご提案をさせていただく,よりよい(イイ)仕事の【e】をめざします!」との記載(株式会社関西eリモデルのウェブページ(http://www.e-remodel.jp/company.html))。
(u)「IEZUKURI-NET.com家づくりネット/細田工務店/常に顧客第一主義に徹し,住みやすく,しかも質の高い家づくりをモットーに,より良い暮らしの実現へ向けて努力してまいります。」との記載(株式会社ウィルニックの運営する家づくりネットのウェブページ(http://www.iezukuri-net.com/detail/maker/mid=62))。
(v)「Bic/会社案内/ビジョン/世界の人々がより良い暮らしができる製品を生みだすために,私たちは,新製品の開発ならびに製品の改良に日々取組んでいます。」との記載(ビック廣済堂株式会社のウェブページ(http://asia.bicworld.com/japan/about.cfm))。
(w)「ホームデザインショップ日三家具/・・・お客様の暮らしのニーズにマッチしたものを一緒に探していくというスタンスで取り組んでいます。アドバイザー的な要素もあり,基本理念は,『お客様のより良い暮らしの為のお手伝いする』『お客様の心に響くアドバイスを送る』ということです。」との記載(ホームデザインショップ日三家具のウェブページ(http://www.nissan-kagu.co.jp/recruit.html))。
(x)「ミサワ開発株式会社/私たちミサワ開発は,不動産の有効活用を通じて皆さまのより良い暮らしのサポートをしていこうと考えている会社です。」(ミサワ開発株式会社のウェブページ(http://www.misawak.co.jp/))。
(y)「JETRO日本貿易振興機構(ジェトロ)/世界のビジネスニュース(通商弘報)/記事詳細 ウォルマートが環境重視へ-サプライヤーへの影響大-(米国)/同社は07年9月,キャッチフレーズを19年間使用してきた「Every Day Low Price」から「Save Money.Live Better.(お金を節約してより良く暮らす)」へ変更すると発表した。安売りを前面に押し出すのではなく,「より良い暮らし」のために,環境に配慮した製品を含めた高品質な製品を提供する,という意味だ。」との記載(独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)のウェブページ(http://www5.jetro.go.jp/jet-bin/pro1.cgi/report-p.html?50+48279ba55ddbf))。
(z)「CureHome/キュアホーム 株式会社蔭山工務店/日本で一番住みよい家づくり/住む人,一人一人にあった家づくり・・・家造りとは,『より良い暮らしをご提案させて頂くサービス業』だと私たちは考えております。」との記載(株式会社蔭山工務店のウェブページ(http://www.cure-home.com/company/index.html))。
(2)新聞記事情報
(a)「デュポン 新たな企業創造 創業200周年(2)」の見出しのもと,「『よりよい暮らしのためによりよい製品を』から『ミラクル・オブ・サイエンス』へと変更した企業スローガンにデュポンの事業観が端的に現れている。」との記載(2002.7.11 化学工業日報 3頁)。
(b)「新コープえひめ発足 07年度に組合員25万 供給高318億目指す」の見出しのもと,「同日,松山市朝生田町三丁目のコープえひめ南支所前で記念式典があり,理事や職員約八十人が出席。大川耕三理事長が「組合員や地域社会からの期待感を感じる。『よりよい暮らしの思いをかたちに』という理念に向け,力を合わせて頑張りたい」とあいさつした。」との記載(2004.10.2 愛媛新聞 朝刊)。
(c)「欧米化学・製薬企業 バイエル」の見出しのもと,「一連の再編によって「バイエルは技術革新と成長に焦点を絞り『Science For A Better Life(よりよい暮らしのためのサイエンス)』」(ミヒャエル・ポートフ・バイエル〈日本法人〉社長)をスローガンにした事業構造に転換,日本でも三つの事業に経営資源を集中することになった。」との記載(2005.7.11 化学工業日報 24頁) 。
(d)「前進する顧客満足経営:柳沢健 大阪ガス社会全体と”共創”」の見出しのもと,「1経営姿勢の方向を示す/大阪ガスの歴史は古い。・・・・九〇年末に天然ガス転換を完了したのを機し“第二の創業”と銘打って『二〇〇一年プラン』を発表した。その基本的な考え方は『共創』である。共創とは聞き慣れない言葉だが“社会全体の利益を考慮し,お客様とともに,よりよい暮らしを創造する”ことを意味する。地域との共生を一歩進めた考え方で,ここにはコミュニティー企業・大阪ガスの経営姿勢と方向とが示されている。」との記載(FujiSankeiBusiness i.1992.5.8 日本工業新聞 16頁)。

第4 職権証拠調べに対する請求人の意見の要旨
請求人は,前記第3の証拠調べ通知に対して,平成20年10月8日付け意見書において,以下のように意見を述べている。
本願商標は,単一の造語として認識・理解される商標であり,その使用は自他商品の識別標識としての機能を十分に発揮するものであると思料する。 そもそも標語とは,「主義・主張・信条などを簡明に言い表した短い語句」,また,スローガンとは「ある団体・運動の主張を簡潔に表した標語」,さらに,キャッチフレーズとは「人の注意をひくように工夫した簡潔な宣伝文句」(いずれも「広辞苑第5版」岩波書店発行)とされており,このような定義からしても,単独で使用される「よりよい暮らし」の文言は,標語,キャッチフレーズないしスローガンのいずれにも該当するものではなく,上記証拠調べ通知書において列挙されている企業における使用例においても,例えば,「よりよい暮らしを優しく包む」,「化学を通して,よりよい暮らしにより良いものを」等のように,「よりよい暮らし」という文言だけではなく,「よりよい暮らし」をどうするのか,何によって「よりよい暮らし」を目指すのか等,それぞれの企業の特長を想起させつつその主義や主張,宣伝文句等を示す文言をも含んだ短い文章として成り立っている。これに対し,本願「よりよい暮らし」は,請求人の特長を想起させるような主義や主張,宣伝文句等は含まれていないことから,標語,キャッチフレーズないしスローガンのいずれにも該当せず,単一の造語として自他商品の識別標識としての機能を十分に発揮するものであると思料する。
なお,本願商標は,「木材」を取り扱う商品取引業界において,企業理念・モットーを表明するためにありふれて普通に使用されている事実や,不特定多数の者により普通に使用されているという事実もないから,本願商標は,十分に自他商品の識別標識として機能するものある。

第5 当審の判断
本願商標は,「よりよい暮らし」の文字を横書きにしてなるところ,「よりよい暮らし」の文字よりは「もっと上等にくらすこと」,「さらに快適にくらすこと」などの意味を理解させるものであり,一般的にそのような意味合いで理解されるというのが相当である。
そして,本願商標である「よりよい暮らし」,又は,「良い」を漢字で表した「より良い暮らし」の語は,本願指定商品を取扱う業界及びその他の業界においても,「もっと上等にくらすこと」,「さらに快適にくらすこと」を理解させる語として数多くの会社等が,その企業の理念,方針などの中で,目指すものとして,使用していることは,前記第3の2に挙げたとおりである。
ところで,商標法第3条第1項第6号については,「商標法第3条第1項6号にいう『需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標』としては,構成自体が商標としての体をなしていないなど,そもそも自他商品識別力を持ち得ないもののほか,同項1号から5号までには該当しないが,一応,その構成自体から自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないと推定されるもの,及び,その構成自体から自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものと推定はされないが,取引の実情を考慮すると,自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものがあるということができる。」(平成17年(行ケ)10651号 知財高裁 平成18年3月9日判決言渡参照)と判示されている。
これを本願商標についてみるに,前記第3の2の実情を考慮すると,「よりよい暮らし」の文字をその指定商品に使用したときは,この語句に接する取引者,需要者は,「もっと上等にくらすこと」,「さらに快適にくらすこと」といった意味合いを容易に理解するものであり, 請求人(出願人)の創作した商標として認識するというよりも,むしろ,「さらに快適にくらすための商品」という,本願指定商品に係る請求人(出願人)の業務の内容と関連づけて,請求人の業務に係る商品の理念,理想,方針等を表示したもの,すなわち,その企業の理念,指針などを端的に表現した標語又はスローガンとして認識,理解するにとどまるというべきである。そして,本願商標について上記認識,理解を妨げる特別の事情を見いだすことはできない。
そうとすれば,本願商標は,これをその指定商品に使用しても何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものというのが相当である。
なお,請求人(出願人)は,「単独で使用される『よりよい暮らし』の文言は,標語,キャッチフレーズないしスローガンのいずれにも該当するものではなく,証拠調べ通知書において列挙されている企業における使用例においてもそれぞれの企業の特長を想起させつつその主義や主張,宣伝文句等を示す文言をも含んだ短い文章として成り立っている。」旨述べて,広辞苑の標語,スローガン及びキャッチフレーズの意味などを挙げている。しかしながら,請求人(出願人)も記載のとおり,「標語」の意味は,「主義・主張・信条などを簡明に言い表した短い語句(広辞苑第5版 岩波書店発行)」であり,その意味中の「語句」とは「1.語と句。2.ことば。ことばの一まとまり。」の意である。そして,本願商標「よりよい暮らし」の語は,前述のとおり「もっと上等にくらすこと」,「さらに快適にくらすこと」などの意味を容易に理解し得る短いことばの一まとまりであり,これが主義,主張等を簡明に言い表した短い語句ではないといい得ないばかりでなく,前記第3の2の使用例が,「よりよい暮らし」の語だけでないことをもって,標語には該当しないということはできない。
また,平成13年(行ケ)第00045号(東京高裁 平成13年6月28日判決言渡参照)によれば,商標法第3条第1項第6号に該当するか否かの判断で,「問題となるのは,この語句に接した取引者,需要者がこれを自他役務の識別標識として認識するのか,それとも,これをキャッチフレーズ
として理解するのかということである。このことは,この語句がキャッチフレーズとして現に一般に使用されているか否かのみによって決せられるものではない。」と判示されていることからも,単独の語として「よりよい暮らし」の語が一般に使用されているか否かのみによって判断することはできないものといわなければならない。
そして,請求人(出願人)は,請求の理由において,過去の登録例を挙げ,本願商標も同様に登録されるべきであるとも主張しているが,請求人が挙げた登録例は,いずれも本願商標とは構成が異なるものであり,本来,当該商標が登録できるものであるかどうかは個別に判断されるべきものであるから,これらの登録商標の存在をもって,本願商標の自他識別性の有無についての前記判断を左右するものとはいうことはできない。したがって,いずれの請求人の主張も採用することはできない。
以上のとおりであるから,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は,妥当であり,取り消すことができない。 よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-12-18 
結審通知日 2009-01-09 
審決日 2009-01-21 
出願番号 商願2007-19443(T2007-19443) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (X19)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浅野 真由美早川 文宏 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 末武 久佳
清川 恵子
商標の称呼 ヨリヨイクラシ 

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