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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) Y03 |
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管理番号 | 1194095 |
判定請求番号 | 判定2008-600031 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標判定公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 判定 |
2008-06-18 | |
確定日 | 2009-03-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4878841号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 商品「化粧品,せっけん類」に使用するイ号標章は、登録第4878841号商標の商標権の効力の範囲に属する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4878841号商標(以下「本件商標」という。)は、「DERMA SCIENCE」の欧文字を横書きしてなり、平成16年11月1日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品として、同17年7月8日に設定登録されたものである。 第2 イ号標章 被請求人が商品「化粧品,せっけん類」に使用する標章として示したイ号標章は、「Dermal Science」の欧文字を横書きしてなるものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。 1 請求の理由 (1)判定請求の必要性 請求人は、本件商標の商標権者であり、平成14年4月頃より、クレンジング、ローション、クリーム等のスキンケアシリーズについて本件商標を付して販売を開始し、現在、同シリーズは請求人の主力商品となっている(甲第1号証及び甲第2号証)。 被請求人が自社のスキンケアシリーズにイ号標章及び「ダーマルサイエンス」の標章を使用していることを確認したので、請求人は、イ号標章及び「ダーマルサイエンス」の標章は、本件商標の商標権を侵害するものである旨の警告を発するために、当該標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するか否かについて判定を求めるものである。 (2)イ号標章の説明 被請求人は、平成19年5月7日頃、「ダーマルサイエンス」の片仮名文字を書してなる標章を冠したスキンケアシリーズ(クレンジング3種類、ローション2種類、エッセンス2種類、クリーム1種類から構成される。別称「C&C」。)の発売を展示会等で発表し(甲第3号証及び甲第4号証)、「Dermal Science」(判定注:「Sciense」とあるのは「Science」の誤記と認める。以下同じ。)の欧文字を書してなるイ号標章をパッケージ及び本体に付した当該各商品の発売を開始した(甲第5号証)。そして、現在もイ号標章を使用して当該各商品を販売中である(甲第6号証及び甲第7号証)。 (3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明 本件商標は、「ダーマサイエンス」の称呼を生じる。他方、イ号標章は、「ダーマルサイエンス」の称呼を生じる。かかる称呼を比較すると、イ号標章の称呼は、本件商標の称呼に比して「ル」の1音が多いが、称呼の音構成が長く、当該1音「ル」が中間に位置することから、全体の音感が近似する。したがって、本件商標とイ号標章は、称呼上類似するものである。 また、本件商標からは、「DERMA」すなわち「肌、皮膚」、「SCIENCE」すなわち「科学」との観念が生ずる。他方、イ号標章からは、「Dermal」すなわち「肌の、皮膚の」、「Science」すなわち「科学」との観念が生ずる。このように、本件商標とイ号標章からは、ほぼ同一の観念が生ずる。 さらに、本件商標と、同じく欧文字を書してなるイ号標章は、大文字と小文字の違いはあるものの、中間の「l」以外の文字は同一であり、外観上の差異は小さなものである。 したがって、本件商標とイ号標章とは、称呼、観念、外観のいずれにおいても類似し、相紛らわしく、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるから、類似の標章というべきである。 そして、イ号標章は、まさに本件商標に係る指定商品である「化粧品,せっけん類」に使用されている。 以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する標章であり、その使用商品は本件商標の指定商品であるから、被請求人が商品「化粧品,せっけん類」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)イ号標章は独立した標章として使用されている。 ア 被請求人は、イ号標章(Dermal Science)は商品の説明文言であり、「ダーマルサイエンススキンケアシリーズ」(Dermal Science Skin Care Series)との一連の説明文として使用していると反論する。 しかし、「Dermal Science」という言葉が「皮膚科学」という意味で国内の需要者に広く一般的に用いられているという事実は存在しない。そのため、「Dermal Science Skin Care Series」と表示されていても、需要者にとって、それがいかなるスキンケアシリーズを意味するのか不明である。したがって、このような記載は、商品の「説明文言」「説明文」としての役割を全く果たすものではなく、被請求人の上記反論が失当であることは明らかである。 イ また、被請求人は、商標(標章)は「C&C」であり、「ダーマルサイエンス」(Dermal Science)ではないと反論する。 しかし、被請求人は、「Dermal Science」と「C&C」を商品の標章として併用しているのであり、「C&C」が標章であるから、「Dermal Science」は標章ではないという論理は成り立たない。 ウ さらに、被請求人は、平成20年10月2日付けで請求人に対して「回答書」(甲第8号証)を送付しているが、同回答書は、「ダーマルサイエンススキンケアシリーズ C&C」が商品の標章であるという前提で書かれている(「商標が類似していることに関しまして貴社にご迷惑をお掛けしていることは事実です」など。甲第8号証)。 被請求人の上記反論は、かかる回答書の内容と全く整合しないものであり、被請求人が「ダーマルサイエンス」を標章として(あるいは標章の一部として)使用していること、ひいてはその英語表記であるイ号標章も商品の標章として(あるいは標章の一部として)使用していることは、かかる回答書の内容からも明らかである。 そして、被請求人は、上記回答書において「ダーマルサイエンススキンケアシリーズ」(Dermal Science Skin Care Series)と「C&C」がまとまった一つの標章であるかのごとく記載しているが、以下の理由から、「Dermal Science」はそれ自体独立した標章として認識し得るものである。 すなわち、被請求人の商品には「Dermal Science Skin Care Series」と「C&C」がともに表示されているが、前者は黒色、後者は赤色で表示され、文字の大きさや字体も異なる。また、両者は表示されている位置も離れている。したがって、「Dermal Science Skin Care Series」と「C&C」がまとまった一つの標章といえないことは明らかである。 また、「Dermal Science」の下に「Skin Care Series」の欧文字が並列的に表示されているため、「Dermal Science Skin Care Series」でひとまとまりの標章ではないかが問題となりうるものの、「Skin Care Series」(スキンケアシリーズ)は一揃いのスキンケア商品に一般的に付される用語であり、自他商品の識別機能を有するものではないことから、「Dermal Science」の文字部分がそれ自体独立して自他商品の識別機能を有するといえる。 したがって、「Dermal Science」は、それ自体独立した標章である。 (2)イ号標章は、商標権の効力の範囲に属する。 この点についての被請求人の主張は、商標法第26条第1項第2号により、イ号標章には商標権の効力が及ばないとするもののようである。 しかし、「Dermal Science Skin Care Series」の表示が、化粧品の普通名称、品質、原材料、効能等を普通に用いられる方法で表示したものということはできない。言うまでもなく、海外に「Dermal Science」社や「Dermal Science」という化粧品が存在していることをもって、「Dermal Science」が化粧品の普通名称等であるということはできず、他にも被請求人は「Dermal Science」が化粧品の普通名称、品質、原材料、効能等の表示として用いられている例を全く挙げていないのである。なお、前述のとおり「Dermal Science」が「皮膚科学」という意味で国内の需要者に広く一般的に用いられているという事実は存在せず、また、ダーマル(dermal)がダーマ(derma)に比較してより知られている英語であるか否かについては本争点に関係がない。 したがって、被請求人が使用しているイ号標章に商標法第26条第1項第2号は適用されず、イ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属する。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないとの判定を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。 1 「ダーマルサイエンス」は商品の説明文言であり、常に「ダーマルサイエンススキンケアシリーズ」との一連の説明文として使用しており、標章として使用しているものではない。また、当該商品の商標は「C&C」であり、「ダーマルサイエンス」ではない。なお、甲第7号証の「ダーマサイエンス」表記は出版社の誤植であり、有料の広告ではなく出版社側の企画であるため、被請求人の関知するところではない。 2 「ダーマルサイエンス」は、広く「皮膚科学」という意味で用いられており、「ダーマル」という言葉は、エステティックの業界においては「皮膚の」という意味(乙第3号証)で「ダーマ」よりも知られている言葉である。「ダーマ」は英語ではなく、「デルマ」から作られた造語であるが、「ダーマル」は一般的な英語である。さらに、海外にはダーマルサイエンス社(乙第1号証)やダーマルサイエンスという化粧品(乙第2号証)も存在しているように一般的な用い方をされる文言である。 3 したがって、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。 第5 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、前記第1のとおり、「DERMA SCIENCE」の欧文字からなり、第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品とするものである。 本件商標を構成する「DERMA」と「SCIENCE」との文字間には、半文字分程度の間隔が存在するものの、これら両文字は、同じ書体及び同じ大きさで表記されているものであるから、外観上一体のものとして認識されるものである。そして、本件商標は、その構成文字に相応して、「ダーマサイエンス」又は「デルマサイエンス」との称呼が生じ、また、その観念については、本件商標を構成する後半の「SCIENCE」の文字が「科学」の意味を有する英語として親しまれているとしても、前半の「DERMA」の文字は特定の意味を有する語として親しまれているとはいえないものであるから、構成全体としてみると特定の観念を生じさせないものと認められる。 2 イ号標章について (1)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 甲第5号証は、商品「クレンジングジェル(クレンジングゲル)」の包装容器とその外箱の写真と認められるところ、当該商品の包装容器とその外箱の前面左下部分には、「CLEANSING」の文字と「GEL」の文字とが同じ書体及び同じ大きさで各文字列の右端をそろえて上下二段に表示されており、当該「CLEANSING」の文字の上部に、「Dermal Science」の文字と「Skin Care Series」の文字とが同じ書体及び同じ大きさで各文字列の横幅を同じくし、前後をそろえて上下二段にやや小さく表示されている。 イ 甲第6号証は、株式会社アクテックスジャパンの製品紹介に係るウェブサイトの写し(全6枚)と認められるところ、当該写しの1枚目には、「新製品コーナー」の見出しのもと、甲第5号証の商品(クレンジングジェル)と同じシリーズの商品と推認し得るパッケージデザインからなる全8製品の写真と共に、「ビューティアクトオリジナルスキンケアシリーズ C&Cついにデビュー!! C&Cダーマルサイエンススキンケアシステムのキーワードは『C』です。」及び「自然派や天然化粧品を好む方が多い日本の化粧品業界の現状に、本当の化粧品をプロフェッショナルがお届けします。」との各記載がある。また、当該写しの3枚目ないし5枚目には、1枚目の商品の写真に掲載されていた8製品が個々に紹介されており、それらがメイク落とし(これは、商品の説明文に「クレンジングゲル」との記載もあり、甲第5号証の商品と同一の商品と推認される。)、液体洗顔、洗顔パウダー、化粧水(3種類)、美容液及びクリームであることが各製品の写真と共に説明文付きで記載されている。 (2)イ号標章は、前記第2のとおり、「Dermal Science」の欧文字からなるところ、前記ア及びイによると、イ号標章に係る「Dermal Science」の文字は、「化粧品,せっけん類」と同種商品に使用されているものと優に推認することができる。 (3)イ号標章「Dermal Science」を構成する「Dermal」と「Science」との文字間には、1文字分程度の間隔が存在し、しかも各語の頭文字がいずれも大文字で表記されているとはいえ、欧文字2語の表記としてはごく普通に見られる態様であり、これら両文字は、同じ書体及び同じ大きさで表記されているものであるから、外観上一体のものとして認識されるものである。そして、イ号標章は、その構成文字に相応して、「ダーマルサイエンス」との称呼が生じ、また、その観念については、イ号標章を構成する後半の「Science」の文字が「科学」の意味を有する英語として親しまれているとしても、前半の「Dermal」の文字は特定の意味を有する語として親しまれているとはいえないものであるから、構成全体としてみると特定の観念を生じさせないものと認められる。 なお、被請求人は、「ダーマルサイエンス」(Dermal Science)は広く「皮膚科学」という意味で一般に用いられており、「ダーマル」(dermal)という言葉は、エステティック業界においては「皮膚の」という意味(株式会社南山堂「縮刷 医学英和大辞典」1982年2月20日第11刷発行。乙第3号証)で「ダーマ」(derma)よりも知られている言葉であると主張するが、イ号標章が使用されている商品「化粧品,せっけん類」は、一般消費者をも需要者とする商品であるから、そのような専門書に意味が記載されているからといって、当該需要者にその意味が一般に知られているということはできない。 また、被請求人は、海外にはダーマルサイエンス社(「Dermal Science Corporation」 乙第1号証)やダーマルサイエンスという化粧品(「Cosmetic Dermal Science」 乙第2号証)もあり一般的な用い方をされる文言であるとの主張もしているが、その提出に係る証拠は、いずれも外国企業が外国語で作成したウェブサイト情報であって、これらによっては、「Dermal Science」の語が「皮膚科学」の意味合いを有するものとして、前記需要者に認識されているものと認めることはできない。 したがって、被請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 3 本件商標とイ号標章との類否について (1)外観について 本件商標は、前記第1のとおり、「DERMA SCIENCE」の欧文字を横書きしてなるものであり、他方、イ号標章は、前記第2のとおり、「Dermal Science」の欧文字を横書きしてなるものであるから、本件商標とイ号標章は、大文字と小文字の部分の差異、イ号標章の6文字目の「l」の有無の差異はあるものの、それ以外の欧文字12文字をその配列を含めて同じくするものであるから、両者は、外観上類似するものといえる。 (2)称呼について 本件商標は、前記1のとおり、「ダーマサイエンス」又は「デルマサイエンス」との称呼が生じるものであるところ、本件商標から生ずる「ダーマサイエンス」の称呼とイ号標章から生ずる「ダーマルサイエンス」の称呼とを比較すると、両者は、後者が4音目に「ル」の音を1音多く有しているほかは前者の8音とその音の構成及び配列をすべて共通にするものである。しかるに、該差異音である「ル」の音は、長音を伴って強く発音される語頭部分の「ダー」の音に続き、「マル」の音の部分はやや弱く一音節風に発音されるものであって、その後に「科学」の観念を生じ、比較的明瞭に発音、聴取される「サイエンス」の称呼を伴うものである。このように、該差異音である「ル」の音は、称呼の識別において比較的聴取しがたい中間に位置し、他の音をすべて共通にするものであるから、両者を一連に称呼するときは、全体としてその語感、語調が近似し、互いに紛らわしいものというべきである。 (3)観念について 本件商標とイ号標章は、前記1及び2のとおり、いずれも特定の観念を生じない造語と認められるものであるから、観念においては比較することができない。 (4)判断 してみれば、本件商標とイ号標章とは、観念において比較し得ないとしても、外観及び称呼において類似するものであるから、互いに紛らわしい類似の商標というのが相当である。また、イ号標章を使用する「化粧品,せっけん類」は、本件商標の指定商品に含まれるものである。 4 被請求人の主張について 被請求人は、イ号標章は「ダーマルサイエンススキンケアシリーズ」(Dermal Science Skin Care Series)との一連の説明文として使用していると主張する。 確かに、イ号標章は、前記2(1)のとおり、「Skin Care Series」の文字と共に二段に併記して使用されているところ、その使用に係る商品「化粧品,せっけん類」を取り扱う業界では、下段の「Skin Care Series」の文字部分は、「スキンケアシリーズ」すなわち「肌の手入れに関する一連の商品」ほどの意味合いを有する語として理解、認識されるものといえるから、それ自体は、自他商品の識別標識として機能し得ないものであるか、又はそれが極めて弱いものというべきであるのに対し、「Dermal Science」の文字部分は、前記1のとおり、特定の意味合いを有するものとして認識されるものではないから、単に商品の説明文の一部として認識されるというよりは、独立して自他商品の識別標識として認識されるものというべきである。 したがって、被請求人の上記主張は、採用することができない。 5 むすび 以上のとおりであるから、被請求人が商品「化粧品,せっけん類」に使用しているイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2009-02-18 |
出願番号 | 商願2004-99756(T2004-99756) |
審決分類 |
T
1
2・
1-
YA
(Y03)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野口 美代子 |
特許庁審判長 |
中村 謙三 |
特許庁審判官 |
田村 正明 末武 久佳 |
登録日 | 2005-07-08 |
登録番号 | 商標登録第4878841号(T4878841) |
商標の称呼 | デルマサイエンス、ダーマサイエンス |
代理人 | 飯田 潤 |
代理人 | 西村 由美子 |